労務を提供しなかった時間の賃金は原則として発生しません。ただし、基本給、手当、賞与、非参加者、ロックアウト、有給休暇、社会保険料まで、確認すべき論点は細かく分かれます。
労務を提供しなかった時間の賃金は原則として発生しません。
生活費に直結する論点であり、会社側にとっても賃金計算と不当労働行為リスクに関わります。
ストライキ中の賃金は、労働者にとっては手取りと生活設計の問題であり、使用者にとっては賃金規程、労働組合法、労働基準法、労使関係管理の問題です。結論からいうと、ストライキに参加して労務を提供しなかった時間・日数については、原則として賃金は発生しないと整理されます。
もっとも、この原則だけで終わるわけではありません。基本給、家族手当、住宅手当、通勤手当、皆勤手当、固定残業代、賞与、時限スト、指名スト、非参加者の休業、ロックアウト、違法ストライキ、公務員や公益事業、有給休暇、社会保険料まで、項目ごとに確認が必要です。
次の重要ポイントは、このページ全体で扱う判断の柱を表しています。なぜ重要かというと、労働者側も使用者側も「賃金が出るか出ないか」だけで考えると、過大控除、不利益取扱い、経費援助、未払賃金の問題を見落としやすいからです。まずは、不就労部分・賃金項目・当事者の区別という3点を読み取ってください。
ストライキが正当な争議行為であっても、労務を提供していない部分の賃金請求権が当然に発生するわけではありません。一方で、不就労部分を超える懲罰的な控除や、非参加者まで一律に扱う処理は別の問題を生じさせます。
次の一覧は、ストライキ中の賃金を検討するときに最初に分けるべき3つの視点を表しています。読者にとって重要なのは、同じ「賃金」と呼ばれるものでも、働かなかった時間、手当の性質、参加者と非参加者の区別で結論が変わる点です。各項目の違いを読み取ると、後半の計算例やチェックリストが理解しやすくなります。
何月何日の何時から何時まで労務を提供しなかったのかを確認します。時限ストでは時間単位、終日ストでは日単位の整理が中心になります。
基本給、通勤手当、生活補助的手当、固定残業代、賞与では性質が異なります。総支給額を一括で割る発想は慎重に見る必要があります。
ストライキ参加者、通常勤務者、業務停止で就労できなかった人、ロックアウト対象者、年休や病休の人を混同しないことが重要です。
ストライキ、争議行為、賃金、ノーワーク・ノーペイを分けて理解します。
ストライキは、労働者が労働関係上の主張を実現するため、労働組合の統一的意思に基づいて集団的に労務提供を拒否する行為です。賃上げ、労働条件の改善、解雇撤回、配置転換の撤回、団体交渉の実施などを求める場面で行われることがあります。
厚生労働省の説明では、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖など、労働関係の当事者が主張を貫くために行う行為・対抗行為で、業務の正常な運営を阻害するものが争議行為とされています。ストライキはその典型です。
次の表は、ストライキ中の賃金判断で使う基本用語を並べたものです。なぜ重要かというと、争議行為として保護されるかという問題と、賃金が発生するかという問題は別だからです。左の用語と右の意味を対応させ、どの論点が賃金計算に直接関係するのかを読み取ってください。
| 用語 | 意味 | 賃金との関係 |
|---|---|---|
| ストライキ | 労働組合の統一的意思に基づく集団的な労務提供拒否です。 | 参加して働かなかった時間は、不就労部分として扱われます。 |
| 争議行為 | 同盟罷業、怠業、作業所閉鎖など、労使の主張実現に向けた行為です。 | 正当性の有無は、責任や不利益取扱いの判断に影響します。 |
| 賃金 | 名称を問わず、労働の対償として使用者が支払うものです。 | 労働の対償であるため、労務提供の有無が中心論点になります。 |
| ノーワーク・ノーペイ | 労務提供がなければ賃金は発生しないという考え方です。 | 基本原則ですが、控除範囲や手当の性質は個別に確認します。 |
日本国憲法第28条は、団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しています。正当なストライキであれば、民事責任・刑事責任・懲戒・不利益取扱いの場面で保護が問題になります。しかし、正当なストライキであることと、ストライキ中の賃金が当然に発生することは別問題です。
使用者が、争議行為に参加して労務を提供しなかった労働者に対し、不就労部分を控除せず賃金相当額を支払う場合は、労働組合法第7条第3号の経費援助に当たり得るとする行政解釈があります。労使関係を悪化させたくないという意図があっても、ストライキ中の満額支給は慎重に検討する必要があります。
控除できるのは原則として労務が提供されなかった部分であり、懲罰とは区別します。
ストライキ中の賃金控除は、不就労部分について賃金が発生しないことに基づく処理です。これは、労働者の規律違反に対する懲戒処分として賃金を減額する減給制裁とは異なります。正当なストライキ参加を理由に懲戒処分や不利益取扱いを行うと、不当労働行為や権利侵害が問題になり得ます。
次の比較表は、不就労控除、減給制裁、不利益取扱い、経費援助の違いを示しています。なぜ重要かというと、同じ給与減額や支払であっても、法的な根拠とリスクがまったく異なるからです。読者は、控除が労務提供の欠如に対応しているのか、それとも参加への報復や組合への援助に見えるのかを読み取ってください。
| 区分 | 中心となる考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 不就労控除 | 働かなかった部分の賃金が発生しないという処理です。 | 不就労時間・日数に対応する範囲を超えないことが重要です。 |
| 減給制裁 | 懲戒処分として賃金を減らす処理です。 | 労働基準法上の制限があり、正当な組合活動を理由にすることは危険です。 |
| 不利益取扱い | ストライキ参加を理由に解雇、降格、査定低下などを行う処理です。 | 正当な組合活動への不当労働行為として争われ得ます。 |
| 経費援助 | 使用者が組合活動を経済的に支えるような支払です。 | スト中の不就労部分を満額支給する処理は行政解釈上リスクがあります。 |
たとえば午前9時から正午までの3時間だけストライキに参加し、午後は通常どおり勤務した場合、原則として控除対象は3時間分です。1日分を丸ごと差し引く処理は、就業規則や賃金規程の根拠、実際の不就労範囲との整合性を慎重に確認する必要があります。
次の注意点一覧は、賃金控除が紛争化しやすい要素を表しています。なぜ重要かというと、社内文書や給与明細の表現、計算式、対象者の分け方だけでも、不当労働行為や未払賃金の主張につながる可能性があるためです。どの要素が自社または自分の状況に当てはまるかを読み取ってください。
「罰金」「制裁」「懲罰」などの表現は、不就労控除ではなく懲戒処分と見られるおそれがあります。
時限ストなのに終日分を控除するなど、働かなかった範囲を超える処理は未払賃金の問題になり得ます。
ストライキ参加者だけに不利な端数処理や計算式を使うと、不利益取扱いと評価される可能性があります。
不就労部分を控除せず支払う処理は、労働組合への経費援助と評価されるリスクがあります。
月給制でも、欠勤控除を予定している制度か、完全月給制かで確認点が変わります。
日本の企業で月給制と呼ばれる制度の多くは、実務上、欠勤・遅刻・早退・不就労があれば控除する仕組みを含んでいます。この場合、ストライキにより労務を提供しなかった時間・日数について、賃金規程に基づき控除するのが通常です。
次の表は、賃金制度ごとの確認点をまとめたものです。なぜ重要かというと、「月給制」という名称だけではストライキ中の賃金控除の可否や計算方法が決まらないからです。制度名ではなく、規程の文言、欠勤控除の有無、過去の運用を読み取ることが大切です。
| 賃金制度 | 基本的な考え方 | 確認すべき資料 |
|---|---|---|
| 欠勤控除ありの月給制 | 月額賃金を基礎に、不就労時間・日数に応じて控除する仕組みです。 | 賃金規程、月平均所定労働時間、当月所定労働時間、端数処理。 |
| 日給月給制 | 月額で支給しつつ、欠勤日数に応じて日割控除する制度です。 | 日割計算式、所定労働日数、終日ストと時限ストの扱い。 |
| 完全月給制 | 一定の欠勤があっても月額を控除しない制度と説明されることがあります。 | 名称だけでなく、不就労控除をしない明確な合意や慣行の有無。 |
| 時間給・日給 | 労働時間や労働日数に連動しやすく、不就労部分の整理が比較的明確です。 | 勤務実績、シフト、時限ストの参加時間、割増賃金の発生有無。 |
基本給は労務提供の中心的な対価であるため、ストライキにより労務提供がなかった部分について不就労控除が認められるのが原則です。典型的な計算式は、月給を月所定労働時間で割って不就労時間を掛ける方法、または月給を月所定労働日数で割って不就労日数を掛ける方法です。
次の比較表は、4時間の時限ストと1日の終日ストの計算例を表しています。なぜ重要かというと、同じ月給30万円でも、時間単位で見るか日単位で見るかにより控除額が変わるからです。式の左から右へ、基礎賃金、所定時間・所定日数、参加時間・日数の順に読み取ってください。
| 場面 | 前提 | 計算例 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 4時間の時限スト | 基本給300,000円、月所定労働時間160時間、参加4時間。 | 300,000円 ÷ 160時間 × 4時間 = 7,500円 | 基本給について7,500円を不就労控除する考え方です。 |
| 1日の終日スト | 基本給300,000円、月所定労働日数20日、参加1日。 | 300,000円 ÷ 20日 × 1日 = 15,000円 | 基本給について15,000円を不就労控除する考え方です。 |
| 手当込みの計算 | 基本給300,000円、職務手当40,000円、住宅手当20,000円、参加4時間。 | 総支給額を単純に割るとは限りません。 | 職務手当と住宅手当の性質、規程上の控除対象を項目別に確認します。 |
完全月給制については、通常欠勤や会社都合休業と異なり、ストライキ中の賃金支払が経費援助と評価されるリスクがあります。「完全月給制だから必ず満額支給される」とは結論づけず、賃金規程、労働協約、過去の争議時の処理、制度の実質を確認する必要があります。
基本給よりも、手当や賞与のほうが紛争化しやすい領域です。
ストライキ中の賃金問題で特に注意が必要なのは各種手当です。時間外手当のように実際の労働に強く結びつくものもあれば、家族手当や住宅手当のように生活補助的な性質を持つものもあります。賞与も、支給条件や出勤率要件によって扱いが変わります。
次の比較表は、主な賃金項目ごとの考え方を表しています。なぜ重要かというと、手当の名称だけでは控除可否が決まらず、規程文言、支給目的、過去の労使慣行を合わせて読む必要があるからです。各行では、どの項目が労務提供と強く結びつくのか、どの項目が個別検討になりやすいのかを読み取ってください。
| 賃金項目 | 一般的な扱い | 確認点 |
|---|---|---|
| 時間外・休日・深夜手当 | 実際に対象労働をしていない場合、当然には発生しません。 | スト後に代替的に残業した場合は、その実労働に割増賃金が発生します。 |
| 通勤手当 | 実費弁償的な性質が強い場合、出勤しない日の扱いが問題になります。 | 実費精算か定額支給か、日割控除規定、定期券購入済みの事情。 |
| 皆勤・精勤手当 | 欠勤等がないことを条件とするため、支給条件の文言が重要です。 | 争議行為による不就労を含む規定か、通常欠勤との整合性。 |
| 家族・扶養・住宅手当 | 生活補助的性質があり、基本給より判断が難しくなります。 | 最高裁判例では、規程や長年の慣行が重視された事例があります。 |
| 固定残業代 | 一定額支給設計か、不就労時控除設計かで変わります。 | 明確区分性、差額支払、労働時間管理、不就労時の日割・時間割規定。 |
| 賞与 | 賞与規程、協定、出勤率要件、欠勤控除条項で決まります。 | 欠勤にストライキ不就労を含むか、懲罰的査定低下になっていないか。 |
賞与については、支給対象者、支給日在籍要件、出勤率要件、欠勤控除、評価期間、業績連動部分などが規程や協定で定められます。最高裁判例には、賞与協定の欠勤日数に応じた控除条項にストライキによる不就労も含まれると判断された事案があります。
次の確認項目は、手当・賞与を検討するときの順番を表しています。なぜ重要かというと、給与計算担当者が項目の性質を見ずに総支給額から機械的に差し引くと、過大控除や不利益取扱いのリスクが高まるためです。上から順に、規程、性質、過去運用、対象者の扱いを確認してください。
賃金規程、賞与規程、労働協約、個別合意に、欠勤・不就労・争議行為の扱いがあるかを確認します。
規程労務提供と密接な手当か、実費弁償か、生活補助かを整理します。名称だけで判断しないことが重要です。
性質ストライキ参加者だけに不利な計算式や端数処理を適用していないかを確認します。
整合性出勤率や欠勤控除を反映する場合でも、正当な組合活動への懲罰的な評価低下に見えない資料整理が必要です。
記録部分スト、時限スト、指名スト、怠業、非参加者の就労不能を分けて考えます。
部分ストとは業務・職場・時間帯の一部について行われるストライキで、時限ストとは始業から2時間だけ、午前中だけ、終業前1時間だけといった限定的なストライキです。指名ストでは、労働組合が特定の労働者や部署を指定して参加させることがあります。
次の判断の流れは、部分ストや非参加者がいる場合に、誰のどの時間を賃金控除の対象にするかを整理するものです。なぜ重要かというと、参加者と非参加者を混同すると、未払賃金や休業手当の問題が生じるためです。上から順に、参加の有無、労務提供の有無、使用者が就労を受け入れられたかを読み取ってください。
日時、部署、業務、対象者、参加時間を記録します。
参加者と非参加者を混同しないことが出発点です。
実際に労務を提供しなかった時間・日数に対応して控除を検討します。
通常勤務したか、業務停止で就労できなかったかを分けます。
代替業務の有無、便乗休業か不可避の操業不能かを整理します。
時限ストでは、午前9時から午前11時までの2時間だけ参加し、その後通常勤務した場合、原則として控除対象は2時間分です。ただし、部分ストでその後の工程全体が実施不能となった場合、どこまでが参加者の不就労で、どこからが会社側の休業・業務不能かが問題になります。
怠業、サボタージュ、スローダウンのように職場にいながら作業能率を意図的に低下させる争議行為では、単純な時間控除では処理しにくくなります。労働契約上予定された労務がどの程度提供されたか、通常能率との差異をどう立証するか、賃金体系や協約がどうなっているかを総合的に検討します。
次の表は、特殊場面ごとの賃金判断の違いを表しています。なぜ重要かというと、同じ職場で同じ日に起きた出来事でも、本人の参加状況や会社の対応によって賃金・休業手当の考え方が変わるからです。各行で、参加者本人の不就労なのか、非参加者の就労不能なのかを読み取ってください。
| 場面 | 賃金の考え方 | 実務上の記録 |
|---|---|---|
| 部分スト・時限スト | 不就労となった時間に対応して控除するのが基本です。 | 開始時刻、終了時刻、通常勤務に戻った時刻。 |
| 指名スト | 指定され参加した労働者の不就労部分を区別します。 | 対象者、部署、職種、参加命令・通知の範囲。 |
| 怠業・スローダウン | 労務提供の実質、作業実績、通常能率との差を検討します。 | 業務指示、作業量、通常時との比較資料。 |
| 非参加者の通常勤務 | 通常どおり労務を提供した場合、賃金は通常どおり発生します。 | 出勤記録、業務指示、作業実績。 |
| 非参加者の就労不能 | 使用者の責めに帰すべき事由や休業手当の有無を個別に検討します。 | 就労申出、代替業務、操業不能の客観的事情。 |
通常のストライキとは異なる規制や判断要素を整理します。
ロックアウトは、労働者側の争議行為に対抗して使用者が事業場を閉鎖し、労働者の就労を拒否する争議行為です。正当な対抗手段として認められる場合、使用者がロックアウト期間中の賃金支払義務を免れることがあります。ただし、攻撃的・過大なロックアウトは、賃金、休業手当、不法行為、不当労働行為の問題を生じさせる可能性があります。
次の注意点一覧は、ロックアウトや違法ストライキなど、通常より慎重な判断が必要な場面を表しています。なぜ重要かというと、これらは単なる給与計算ではなく、争議行為の正当性、施設管理権、公益性、年休制度まで絡むからです。どの場面で追加の法的検討が必要になるかを読み取ってください。
労使交渉の経過、労働者側争議行為の態様、使用者が受ける打撃、必要性・相当性が問題になります。
賃金は不就労部分について原則不発生ですが、損害賠償、懲戒、刑事責任が追加で問題になり得ます。
国家公務員や地方公務員は、民間企業の労働者とは異なる厳しい争議行為規制があります。
運輸、郵便・信書便、電気通信、水道・電気・ガス、医療・公衆衛生などでは予告義務が問題になります。
違法なストライキの場合も、労務が提供されていない以上、不就労部分の賃金は原則として発生しません。ただし、正当なストライキと異なり、損害賠償責任、懲戒処分、刑事責任、施設管理権侵害、業務妨害などが別途問題になり得ます。使用者が違法と主張すれば直ちに違法になるわけではなく、目的、手段、手続、態様、暴力・威力の有無、公益事業での予告義務などを総合的に見ます。
公益事業では、関係当事者が争議行為を行う場合、一定の範囲で少なくとも10日前までに労働委員会および厚生労働大臣または都道府県知事へ通知しなければならないと説明されています。この予告義務は賃金発生そのものを直接変えるものではありませんが、手続の適正性や責任判断に影響し得ます。
年次有給休暇をストライキの日に使えるかも、事案依存性が高い論点です。年休請求の時期、その日が本来労働義務のある日か、すでにストライキ参加による労務提供拒否が明確だったか、使用者の時季変更権、経費援助リスク、労働者間の公平性を確認します。「ストの日なら必ず有給にできる」とも「絶対に使えない」とも一概にはいえません。
賃金控除は、社会保険料、税金、家計、会社の説明資料にも影響します。
ストライキで賃金が控除されると、その月の手取り額は減少します。ただし、健康保険・厚生年金保険の保険料は標準報酬月額を基礎に計算されるため、単月のストライキ控除で直ちに下がるとは限りません。標準報酬月額が変わらない場合、賃金控除後の手取りに対して社会保険料の負担感が相対的に重くなることがあります。
所得税は実際に支払われる給与額に応じて源泉徴収額が変動することがありますが、年末調整や確定申告で最終的な税額調整が行われます。労働組合がストライキ手当や闘争資金を支給する場合は、組合規約、支給条件、税務上の扱いも確認が必要です。
次の時系列は、ストライキ前後で確認すべき実務対応の順番を表しています。なぜ重要かというと、事前の規程確認と参加時間の記録がないまま給与計算を行うと、後から根拠説明が難しくなるためです。上から下へ、発生前、当日、給与計算、事後説明の順番を読み取ってください。
賃金規程、就業規則、労働協約、賞与規程、過去の争議時の処理を確認します。
誰が、いつ、どの業務について、どの時間帯に参加したかを客観的に残します。
基本給、手当、賞与、固定残業代、通勤手当を一括処理せず、項目別に判断します。
控除期間、対象項目、計算式、端数処理を説明できる資料を残します。
ストライキ参加を検討する労働者側では、目的、日時、対象者、方法、組合規約上の手続、投票・決議、不就労時間に対応する賃金減少額、手当・賞与への影響、組合のストライキ手当、給与明細の控除内訳、不利益取扱いがあった場合の証拠保存を確認します。
使用者側では、ストライキの日時・範囲・参加者、欠勤控除の計算式、時間単位控除の可否、各種手当の控除可否、賞与の欠勤控除・出勤率要件、端数処理、休業手当、ロックアウト時の処理、非参加者・就労不能者の区別、経費援助と評価される支払の有無を確認します。
次の一覧は、労働者側と使用者側でそれぞれ優先して確認する事項を表しています。なぜ重要かというと、双方が同じ資料を見ても関心の中心が異なるため、抜けやすい確認点が変わるからです。左側は生活への影響、右側は計算根拠と説明可能性に注目して読み取ってください。
参加時間、減少見込み額、手当・賞与への影響、組合手当の有無、給与明細の内訳、不利益取扱いの証拠を確認します。
生活設計証拠保存規程、参加者区分、計算式、非参加者の扱い、給与明細の説明、労働委員会や裁判で説明できる記録を整えます。
給与計算説明資料金額が小さく見えても、将来の労使関係や全社処理に影響することがあります。
ストライキ中の賃金は、単なる給与計算ではなく、労働組合法、労働基準法、民法、就業規則、労働協約、判例、不当労働行為制度が交差する領域です。労働者側も使用者側も、ノーワーク・ノーペイという一語だけで結論を急がず、資料を整理して確認することが重要です。
次の一覧は、弁護士、社会保険労務士、労働組合、労働相談窓口などへの相談を検討しやすい場面を表しています。なぜ重要かというと、控除額そのものだけでなく、解雇、降格、配置転換、ロックアウト、公益事業の手続、和解金の性質などに波及する可能性があるからです。自分の問題が賃金計算だけで完結するのか、争議行為全体の検討が必要なのかを読み取ってください。
参加時間を超えて賃金が控除された、または控除内訳の説明がない場合です。
家族手当、住宅手当、通勤手当、賞与まで控除され、規程や慣行の説明がない場合です。
出勤した、または働く意思と能力があったのに、参加者扱いで控除された場合です。
解雇、降格、配置転換、査定低下、嫌がらせなどがストライキ参加後に生じた場合です。
会社が事業場を閉鎖し、賃金を支払わないと説明している場合です。
予告義務や争議行為の適法性が、通常の民間企業より複雑になる場合です。
よくある誤解として、「合法ストなら給料も出る」「スト参加者には何をしてもよい」「手当はすべて控除できる」「給与明細に控除と書けば足りる」「会社が温情で払えば安全」といったものがあります。いずれも一般化しすぎた理解であり、制度、規程、当日の事実、支払の性質を分けて確認する必要があります。
回答は一般的な制度説明です。個別事情により結論が変わる可能性があります。
一般的には、ストライキに参加して働かなかった時間・日数の賃金は発生しないとされています。ただし、控除できる範囲、手当や賞与の扱い、非参加者の賃金、ロックアウトの場合などによって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、正当なストライキであっても、労務を提供していない部分の賃金は原則として発生しないとされています。ただし、正当性は損害賠償責任、刑事責任、不利益取扱いの可否に関係するため、目的、手続、態様によって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、不就労部分に対応する賃金については支払義務がないとされています。ただし、不就労時間を超える過大な控除、懲罰的な控除、通常欠勤より不利な計算は問題になる可能性があります。具体的な対応は、就業規則や給与明細を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、争議行為に参加して労務を提供しなかった部分について賃金を控除せず支払うことは、労働組合法上の経費援助として不当労働行為に当たり得るとされています。ただし、解決金や協定金などの名目・目的・対象者・支給条件によって評価が変わる可能性があります。具体的な対応は、支払の性質を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、手当の性質、賃金規程、労働協約、過去の労使慣行によって判断されるとされています。最高裁判例には、家族手当についてストライキ期間中の削減が違法とはいえないとされた事例がありますが、どの会社でも当然に控除できるという意味ではありません。具体的な対応は、規程と過去運用を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、賞与規程や労使協定に、欠勤日数、出勤率、評価期間中の不就労を反映する定めがあるかによって判断されるとされています。ただし、ストライキ参加を理由とする懲罰的な査定低下は問題になる可能性があります。具体的な対応は、賞与規程、査定資料、過去の取扱いを整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、非参加者が通常どおり労務を提供した場合、その労働者には賃金が発生するとされています。ただし、非参加者が働く意思を持っていたもののストライキの影響で業務が停止した場合は、使用者の責めに帰すべき事由や休業手当の有無によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、出勤記録や就労申出の資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、年休請求の時期、その日が本来労働義務のある日か、すでにストライキ参加が明確になっていたか、使用者の時季変更権、経費援助リスクなどによって判断が変わるとされています。具体的な対応は、年休申請の時期や社内運用を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、ロックアウトが使用者の正当な対抗手段として認められる場合、使用者は賃金支払義務を免れることがあるとされています。ただし、攻撃的・過大なロックアウトや組合弱体化目的の就労拒否では、賃金、休業手当、不当労働行為などの問題が生じる可能性があります。具体的な対応は、労使交渉の経過と閉鎖範囲を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、就業規則、賃金規程、労働協約、賞与規程、組合規約、過去の給与明細、過去の争議時の取扱い、出勤記録、会社側の説明資料を確認する必要があるとされています。ただし、資料の文言や慣行の評価によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、関連資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
公的機関、法令、裁判例、社会保険制度に関する資料を中心に整理しています。