診療記録を取得する前に知っておきたい費用の内訳、2週間から1か月程度という期間感、請求範囲の決め方、弁護士相談を検討する場面を整理します。
診療記録を取得する前に知っておきたい費用の内訳、2週間から1か月程度という期間感、請求範囲の決め方、弁護士相談を検討する場面を整理します。
最初に、費用がどこで増え、期間がどこで延びるのかを押さえます。
カルテ開示の費用と期間は、医療機関の料金体系、請求する診療記録の範囲、紙コピーの枚数、画像データの有無、郵送の有無、本人以外による請求かどうかで大きく変わります。外来数回分のように範囲が小さい場合は数百円から数千円台、入院記録・手術記録・看護記録・画像データまで含む場合は数千円から数万円台を見込むのが現実的です。
次の重要ポイントは、このページ全体で扱う費用と期間の読み方をまとめたものです。金額だけでなく、範囲の広さや確認手続がどれだけ影響するかを先に把握すると、請求前に必要な資料を絞り込みやすくなります。
公的調査や主要医療機関の公開情報では、開示所要日数は2週間から4週間程度に集まっています。費用は手数料、コピー代、画像媒体代、郵送料などの合計で決まります。
厚生労働省調査で示された所要日数の分布を横棒グラフで整理します。割合が高いほど実務上よく見られる期間帯と読み取り、1か月前後の案内が直ちに不自然とは限らない点を確認できます。
法的には、診療情報は患者本人に関する重要な個人情報です。厚生労働省指針は診療記録の開示に原則として応じる姿勢を示し、個人情報保護法の枠組みでも保有個人データの開示は合理的期間内に行われる必要があります。ただし、第三者情報や本人の心身への重大な影響が問題になる場合など、一部非開示が検討される場面もあります。
日常語のカルテと、制度上の診療情報・診療記録を区別して理解します。
日常会話では「カルテ開示」と呼ばれますが、制度上は診療情報、診療記録、診療録、保有個人データという複数の概念が関係します。診療録だけを取得すれば足りるとは限らず、目的によっては手術記録、看護記録、検査所見、画像、紹介状、退院サマリーなども重要になります。
次の一覧は、似た用語の違いを整理したものです。請求書に何を書くかで取得できる資料が変わるため、診療録だけを指すのか、診療記録一式を指すのかを読み分けることが重要です。
診療の過程で、患者の身体状況、病状、治療内容などについて医療従事者が知り得た情報を指します。
診療録、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見、エックス線写真、紹介状、退院サマリーなどを含む広い概念です。
診療記録を閲覧に供すること、または写しを交付することです。紙コピー、PDF、CD-R、DVD-Rなどの方法があります。
医療機関が保有し、患者本人を識別できる診療録等は、個人情報保護法上の開示請求の対象になり得ます。
法的根拠を確認する表です。どの根拠も「患者側に常に無制限の取得が認められる」という意味ではありませんが、原則開示、合理的費用、合理的期間という考え方を読むための土台になります。
| 根拠 | 主な内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 厚生労働省指針 | 患者等が診療記録の開示を求めた場合、医療従事者等は原則として応じる考え方を示しています。 | カルテ開示は例外的な特別扱いではなく、診療情報共有の一環として位置づけられます。 |
| 個人情報保護法 | 保有個人データの開示請求を受けた場合、合理的期間内に遅滞なく開示する枠組みがあります。 | 検索・集約・本人確認に通常必要な期間は考慮されますが、理由のない放置は問題になり得ます。 |
| 費用徴収の考え方 | 診療記録の開示に要する費用は、実費を勘案した合理的範囲内で徴収できるとされています。 | 無料とは限りませんが、過度に高額で開示を妨げる水準なら合理性が問題になります。 |
医師の判断や評価が記載されているとしても、診療録全体が患者本人に関する保有個人データである以上、その二面性だけを理由に全部または一部を開示しないことはできないと整理されています。もっとも、第三者情報や本人への重大な影響がある場合は、個別に一部非開示の検討が行われることがあります。
開示手数料、コピー代、画像媒体代、郵送料などを分けて見積もります。
カルテ開示の費用は、医療機関ごとの料金表と請求範囲によって決まります。外来記録だけなら低額に収まることがありますが、入院記録一式、手術記録、麻酔記録、看護記録、検査データ、画像データ、リハビリ記録、説明同意書、退院サマリーまで含めると、紙枚数が数百枚から千枚を超えることがあります。
次の表は、費用を構成する主な項目を整理したものです。どの項目が発生するかを確認すれば、見積りが高い理由や、範囲を絞る余地を読み取りやすくなります。
| 費用項目 | 内容 | 実務上の見方 |
|---|---|---|
| 開示手数料・事務手数料 | 申請1件ごとにかかる基本料金 | 無料または数千円台から5,500円程度の例があります。 |
| 紙コピー代 | 診療録、看護記録、検査記録、同意書等の複写 | 白黒1枚10円、20円、22円、55円など医療機関により差があります。 |
| カラーコピー代 | 図表、カラー画像、スキャン資料等 | 1枚20円、55円、110円などの例があります。 |
| 画像データ代 | CT、MRI、X線、内視鏡、エコー等のCD-R・DVD-R | 1枚1,100円、1,650円、2,200円などの例があります。 |
| 郵送料 | 郵送受取を希望する場合 | 実費、着払い、簡易書留などの指定があり得ます。 |
| 説明料・証明書料 | 医師説明、不存在証明書など | 任意対応や別料金の例があります。 |
費用規模の違いを3つの典型例で比べます。請求範囲が広がるほど、紙枚数と画像媒体が増えるため、同じカルテ開示でも総額が大きく変わる点を読み取ってください。
開示手数料がなければ、紙コピー30枚程度で数百円から数千円台に収まることがあります。ただし、開示手数料が設定されている医療機関では、コピー枚数が少なくても総額は数千円台になることがあります。
紙コピーが200枚から800枚程度になり、画像CDまたはDVDも加わることがあります。費用は数千円から2万円台以上になる可能性があり、集中治療、周術期管理、長期入院、リハビリなどがあると増えやすくなります。
千枚単位の紙コピー、複数の画像媒体、古い記録の探索、旧システムやマイクロフィルム対応が関係することがあります。医療事故や長期治療の検討では広く取得する必要がある場面もありますが、費用面では対象期間と対象記録の整理が重要です。
公的調査と主要医療機関の公開情報から、幅のある実務を確認します。
厚生労働省が特定機能病院・大学病院87病院を対象に実施した調査では、白黒1枚を請求した場合の費用について、999円以下が67%、2,000円から2,999円が2%、3,000円から3,999円が15%、5,000円以上が16%でした。開示所要日数は、2週間程度が38%、3週間程度が37%、4週間程度が25%です。
次の表は、公開情報で確認できる医療機関の料金例を整理したものです。医療機関ごとに手数料、コピー単価、画像媒体代、古い記録の扱いが異なるため、請求前に最新の料金表を確認する必要があることを読み取れます。
| 医療機関例 | 期間の目安 | 費用例 | 読み取れるポイント |
|---|---|---|---|
| 京都大学医学部附属病院 | 1か月以内。長期・複数診療科では時間を要する場合あり | 複写物1枚20円、画像DVD1枚2,200円 | 現存する記録が対象で、古い記録は廃棄の可能性があります。 |
| 東京医科大学病院 | およそ1か月 | 手数料5,500円、白黒55円、カラー110円、画像CD-R/DVD1枚1,650円 | 申請時と受渡し時で支払いが分かれる方式の例です。 |
| 箕面市立病院 | 交付まで最大30日程度 | 白黒10円、カラー20円、検査画像CD-R1,100円 | 自治体病院では比較的低いコピー単価の例もあります。 |
| 名古屋大学医学部附属病院 | 通常2週間から4週間程度 | 電子式複写20円、画像CD-R1,100円、DVD-R1,650円、マイクロフィルム基本料5,500円+1枚220円 | 古い記録やマイクロフィルムでは費用構造が変わります。 |
| 日本医科大学千葉北総病院 | 概ね2週間程度 | 開示請求1件につき事務手数料5,500円 | 事務手数料が別途発生する例です。 |
| 坂総合病院 | 料金表中心 | 開示手数料3,850円、白黒・2色22円、カラー55円、画像コピー依頼1,100円、医師説明30分ごと5,500円 | 医師説明料や不存在証明書の料金を明示する例です。 |
| 総合東京病院 | 料金表中心 | 開示手数料5,500円、写し22円、画像CD-ROM2,200円 | 退院日または最終外来日の翌日から5年を超えた診療録等を開示できない旨を示す例です。 |
期間が延びる要因は、単に医療機関の対応が遅いという話だけではありません。記録量、診療科数、画像システム、本人確認、代理権確認、一部非開示の検討が重なるほど、確認作業が増える点が重要です。
次の一覧は、期間が長くなりやすい要因をまとめたものです。どの要因に当てはまるかを見れば、待ち時間の理由を確認し、進捗照会で何を聞くべきかを整理できます。
入院、手術、集中治療、救急搬送、リハビリがあると、抽出・確認・印刷に時間がかかります。
救急、外科、麻酔科、放射線科、病理、リハビリなどが関係すると所在確認が複雑になります。
CT、MRI、X線、内視鏡、超音波などは別システムで管理され、媒体作成に時間がかかることがあります。
代理人、親族、法定代理人、遺族の請求では、委任状や戸籍等の権限確認が必要になりやすいです。
紙カルテ、旧システム、マイクロフィルム、保存期間の問題により、確認に時間を要する場合があります。
第三者情報や本人への重大な影響が問題になる場合、院内確認や理由整理が必要になることがあります。
全部請求と絞り込みのバランスを、目的ごとに考えます。
カルテ開示では「全部」と請求する方法もありますが、費用が高くなり、期間も長くなりやすい問題があります。一方で、範囲を絞りすぎると、重要な記録を取り逃がすことがあります。目的を先に言語化し、必要な資料を段階的に考えることが大切です。
目的別に重要になりやすい資料を整理した一覧です。左の番号は優劣ではなく目的の違いを示し、どの場面で広い範囲が必要になりやすいかを読み取るためのものです。
診療情報提供書、検査結果、画像データ、画像診断レポート、病理診断報告書、手術記録、退院サマリー、投薬内容が中心です。看護記録全期間までは不要な場合があります。
範囲を絞りやすい予約期限に注意初診時記録、経過記録、検査結果、画像データと読影レポート、リハビリ記録、投薬記録、診断書作成の基礎資料、退院サマリーが重要になりやすいです。
因果関係提供範囲に注意医師診療録、看護記録、手術記録、麻酔記録、ICU・HCU記録、救急外来記録、検査結果、画像、病理報告書、説明同意書、退院サマリーなど広い範囲を検討します。
広範囲になりやすい専門判断が重要電子カルテでは、紙に印刷される診療録だけでは見えにくい情報もあります。電子カルテシステムが加筆修正履歴や付箋情報を記録する機能を持つ場合、それらも開示請求対象になり得ると整理されています。医療過誤の検討では、加筆修正履歴、付箋情報、オーダー履歴の有無を確認したい場面があります。
窓口確認、範囲特定、本人確認、院内確認、受領後確認までを順に整理します。
多くの病院では、診療情報管理室、医事課、患者相談窓口、文書受付、総合受付などが窓口になります。大学病院や大規模病院では、ホームページに開示申請書、委任状、必要書類一覧、料金表が掲載されていることがあります。
申請から受領までの行動の順番を示します。上から下へ進むほど受領に近づき、途中で書類不備や範囲不明確があると戻り作業が発生しやすい点を読み取ってください。
診療情報管理室、医事課、患者相談窓口などの担当部署と最新様式を確認します。
入院期間、手術前後、救急搬送日から退院日までなど、目的に合わせて範囲を具体化します。
本人確認書類、委任状、戸籍謄本、成年後見関係書類など、請求者の立場に応じて準備します。
医療機関が対象記録を抽出し、第三者情報や非開示事由、料金、受渡し方法を確認します。
窓口、郵送、媒体交付などの方法で受け取り、欠落や再生可否を確認します。
受領後の確認は、追加開示や専門家相談の必要性を判断するために重要です。次の時系列は、カルテを受け取った後に並べ直すべき出来事の順番を表し、どこに空白や矛盾があるかを見つける視点を与えます。
症状が出た時期、初診日、最初の説明、検査内容を確認します。
検査値、画像所見、診断名、説明同意書、代替治療やリスク説明の有無を見ます。
手術記録、麻酔記録、投薬・注射・点滴記録、看護記録、バイタルサインを並べます。
急変時の対応、転院判断、退院サマリー、死亡診断書などの整合性を確認します。
申請書に「全部」とだけ書くと確認範囲が広がり、費用も期間も増えやすくなります。医療事故の検討では広い範囲が必要な場面もありますが、迷う場合は、請求前に専門家へ相談して範囲を調整する方法もあります。
範囲の具体化、概算確認、重要資料の先行取得で無駄を減らします。
費用と期間を抑える基本は、目的を明確にし、対象期間と対象記録を具体化することです。転院目的なら画像データと紹介状が中心で足りることがあり、医療事故調査なら看護記録や手術・麻酔記録まで必要になることがあります。
次の一覧は、費用や待ち時間を抑えるための実務上の工夫を整理したものです。どれか一つで解決するというより、目的・期間・媒体・概算・相談時期を合わせて調整することが重要です。
転院、保険請求、医療事故調査など、目的によって必要な資料が異なります。目的を整理すると不要な範囲を避けやすくなります。
問題となる処置の前後1か月、入院期間、救急搬送日から退院日までなど、時系列に沿って範囲を決めます。
画像データは媒体費がかかる一方、読影レポートは文書として存在することがあります。両方が必要か確認します。
可能であれば、手数料、紙コピー単価、画像媒体代、郵送料、概算枚数を確認します。システム上、概算が出せない医療機関もあります。
弁護士相談前に全記録を取得して高額化することがあります。まず診療経過が分かる資料を取得し、不足分を追加する方法もあります。
医療機関が対応可能であれば、画像CD、退院サマリー、診療情報提供書などを先に取得できるか確認します。
期間短縮では、書類不備をなくすことが特に重要です。本人確認書類、委任状、戸籍謄本、対象期間、署名などの不備があると、受付や院内確認が進まないことがあります。保険会社提出期限、裁判関係の期限、転院予約、セカンドオピニオン予約がある場合は、申請時に事情を伝えると整理しやすくなります。
非開示、不存在、他院作成資料の扱いを分けて確認します。
診療記録の開示は原則として応じるべきものとされていますが、例外的に全部または一部が開示されないことがあります。厚生労働省指針では、第三者の利益を害するおそれがある場合や、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがある場合が典型例として示されています。
非開示や不存在の回答を受けたときの確認順序を示します。上から順に、理由、対象記録、保存状況、再検討先を切り分けることで、感情的な対立よりも必要な情報の特定に進みやすくなります。
全部非開示、一部非開示、不存在、対象外のどれに当たるかを分けます。
非開示理由、根拠、苦情申出先、再検討手続の有無を確認します。
廃棄済み、未作成、他院作成資料、旧システム、画像システムの別を確認します。
どの記録が対象外になったのか、第三者情報や本人への影響が理由かを確認します。
高額請求、長期放置、不自然な欠落、証拠保全の必要性がある場合は専門的検討が必要です。
医師法上、診療録には5年間の保存義務が定められているとされ、保険医療機関及び保険医療養担当規則でも診療録について完結の日から5年間保存する旨が規定されています。ただし、医療機関によっては法定期間を超えて保存している例もあります。
不存在と言われた場合は、どの記録が存在しないのか、廃棄済みなのか、作成していないのか、他院作成資料のため対象外なのか、画像データや検査システムには残っていないのか、不存在証明書を発行できるかを確認します。
紹介状、他院画像、他院検査結果など、別の医療機関が作成した資料は、自院で保管されていても開示対象外または別扱いとされることがあります。必要な場合は、作成元の医療機関にも請求する必要があります。
資料取得だけでなく、証拠分析や期限管理が必要になる場面を確認します。
カルテ開示自体は、患者本人が自分で申請できる手続です。ただし、医療事故、死亡事案、重い後遺障害、説明の変遷、長期放置、高額請求、時効や提出期限が関係する場合は、資料の取り方や次の手続を誤ると不利益が大きくなることがあります。
弁護士相談を検討する場面を比較表で整理します。どの場面も個別事情で結論が変わるため、表は一般的な目安として読み、具体的な対応方針は資料を整理したうえで専門家に確認する必要があります。
| 場面 | 問題になりやすい点 | 相談前に整理したい資料 |
|---|---|---|
| 医療事故・医療過誤が疑われる | どの記録を取得するか、証拠保全を検討するかが重要になります。 | 診療経過、説明書、同意書、検査結果、画像、退院サマリー |
| 死亡事案・重い後遺障害 | 因果関係、説明義務、損害額、相続人の範囲、保険や労災が絡みます。 | 死亡診断書、入院記録、急変時記録、家族説明の記録 |
| 説明が変遷している | 説明内容、同意書、看護記録、時系列の整合性を分析する必要があります。 | 会話メモ、同席者メモ、説明同意書、外来・入院記録 |
| 開示拒否・高額請求・長期放置 | 理由確認、苦情窓口、専門家からの照会、必要に応じた手続を検討します。 | 申請書控え、医療機関回答、見積り、非開示理由 |
| 時効・提出期限が迫る | 損害賠償、保険金、労災、交通事故、障害年金では期限管理が重要です。 | 期限が分かる通知、保険会社書面、労災書類、裁判関係書類 |
相談時に持参するとよい資料の一覧です。資料をそろえる目的は、弁護士に結論を急がせることではなく、追加取得すべき記録、医学鑑定の必要性、証拠保全の要否、交渉・訴訟の見通しを検討しやすくすることにあります。
| 資料 | 内容 |
|---|---|
| 時系列メモ | 初診日、入院日、手術日、急変日、退院日、説明を受けた日など |
| 医療機関一覧 | 関係する病院、診療所、薬局、リハビリ施設 |
| 既に持っている書類 | 診断書、説明書、同意書、退院時書類、検査結果、紹介状 |
| 画像CD | CT、MRI、X線、内視鏡等 |
| 会話メモ | 医師・看護師からの説明内容、日時、同席者 |
| 損害資料 | 領収書、休業損害、後遺症、介護費、死亡診断書など |
| 開示請求状況 | 申請日、請求範囲、医療機関からの回答、見積り、非開示理由 |
証拠保全は、将来の訴訟で使う証拠について、あらかじめ証拠調べをしておかなければ使用が困難となる事情がある場合に、裁判所を通じて証拠を保全する民事訴訟法上の手続です。医療事故の事案では、改ざん・廃棄・散逸のおそれが具体的に問題になる場合に検討されることがあります。
受け取った資料を、時系列・説明同意・検査値・欠落の観点から確認します。
カルテは専門用語が多く、一般の方には読みづらい文書です。ただし、まず時系列に並べ、説明と同意、検査値・画像・症状の変化、記録の欠落を確認するだけでも、追加資料が必要かどうかを見つけやすくなります。
受領後に確認する観点を一覧化します。左の観点ごとに、どの記録を見ればよいかを確認し、欠落や矛盾がある場合は追加開示や専門家相談の必要性を検討します。
症状出現、初診、検査、診断、説明、同意、処置・手術、投薬、急変、転院、退院、死亡を日付順に並べます。
血液検査、バイタルサイン、画像所見、心電図などを見て、いつ悪化し、どの対応がされたかを整理します。
手術記録、麻酔記録、画像データ、画像診断レポート、同意書、退院サマリーの漏れがないかを見ます。
作成日時、確定日時、修正履歴、付箋、オーダー履歴など、紙に印刷されない情報が問題になる場合があります。
指定様式に沿って、対象期間・対象記録・確認事項を具体的に書きます。
文例は、医療機関の指定様式に合わせて調整する前提の一般例です。重要なのは、対象期間、対象記録、開示方法、概算確認、進捗確認、非開示理由、不存在の確認を分けて書くことです。
申請書に書く内容の例を表にまとめます。文章をそのまま使うよりも、自分の目的に合わせて期間や記録名を置き換えることで、医療機関側が対象を特定しやすくなります。
| 目的 | 記載例 |
|---|---|
| 外来記録 | 開示を希望する期間 ― 2025年4月1日から2025年6月30日まで。開示を希望する記録 ― 外来診療録、検査結果、処方内容、画像診断レポート、画像データ。開示方法 ― 紙の写しおよび画像データCD-RまたはDVD-R。 |
| 入院・手術記録 | 開示を希望する期間 ― 2025年5月1日から2025年5月20日までの入院期間全体。開示を希望する記録 ― 入院診療録、看護記録、手術記録、麻酔記録、検査結果、画像データ、画像診断レポート、説明同意書、退院サマリー、投薬・注射記録。 |
| 医療事故の検討 | 開示を希望する期間 ― 2025年5月1日から2025年6月30日まで。開示を希望する記録 ― 診療記録一式。医師診療録、看護記録、手術記録、麻酔記録、救急外来記録、ICU/HCU記録、検査結果、画像データ、画像診断レポート、病理報告書、説明同意書、退院サマリー、診療情報提供書、投薬・注射・点滴記録、リハビリ記録を含む。備考 ― 電子カルテの加筆修正履歴、付箋情報、オーダー履歴の有無についても確認を希望します。 |
医療機関への問い合わせ例です。費用、進捗、非開示、不存在を分けて尋ねると、回答の焦点が明確になり、追加書類や次の手続を判断しやすくなります。
| 問い合わせ | 文例 |
|---|---|
| 費用概算 | 診療記録の開示を検討しています。対象期間は2025年5月1日から2025年5月20日までの入院期間で、診療録、看護記録、手術記録、麻酔記録、検査結果、画像データを希望しています。申請前に、開示手数料、紙コピー単価、画像CD/DVDの単価、郵送料、概算枚数が分かる場合は教えてください。 |
| 進捗確認 | 2026年○月○日に診療記録の開示申請を行いました。申請から○週間が経過しましたので、現在の進捗、開示予定時期、追加書類の要否を確認させてください。 |
| 一部非開示 | 開示資料の一部が非開示とされているようです。非開示とされた記録の種類、非開示の理由、根拠、苦情申出先、再検討の手続があれば書面でご教示ください。 |
| 不存在確認 | 対象期間の診療記録が存在しないとの回答を受けました。廃棄済みなのか、作成されていないのか、他部署・旧システム・画像システム等にも存在しないのか、不存在証明書の発行可否を確認させてください。 |
患者本人の開示請求、理由記載、費用、期間、古い記録について整理します。
カルテ開示では「病院のものだから見られない」「理由を書かないと出ない」「無料で出る」「すぐ出る」「古い記録も残っている」という誤解がよくあります。制度と実務の両方を踏まえて、過度な期待と過度な不安を避けることが重要です。
次の一覧は、誤解されやすい点と実務上の見方を対比したものです。左側の表現に心当たりがある場合は、右側の考え方に置き換えると、請求前の判断が現実的になります。
原本は医療機関が管理しますが、患者本人は自分に関する診療情報の開示を求めることができます。
申立ての理由の記載を要求したり理由を尋ねたりすることは不適切とされています。ただし目的を伝えると資料特定に役立つ場合があります。
実費を勘案して合理的と認められる範囲で、手数料やコピー代が発生することがあります。
簡単な資料なら早い場合もありますが、一般には2週間から1か月程度を見込むのが実務的です。
法定保存期間を超えた記録は廃棄されていることがあります。長期経過事案では早めの存在確認が重要です。
個別判断ではなく、一般的な制度説明として整理します。
一般的には、医療機関や請求範囲によって異なります。外来数回分なら数百円から数千円台で済むことがありますが、開示手数料がある医療機関ではコピー枚数が少なくても数千円台になる可能性があります。入院・手術・看護記録・画像データを含む場合は、数千円から数万円台を見込む場面があります。
一般的には、2週間から1か月程度が中心とされています。ただし、長期の記録、複数診療科、代理人請求、古い記録、画像データが多い場合などでは期間が延びる可能性があります。具体的な予定は医療機関に確認する必要があります。
一般的には、無料とは限りません。制度上、実費を勘案して合理的と認められる範囲内で費用や手数料を徴収できるとされています。費用の合理性は、料金体系、枚数、媒体、説明料などの具体的事情で変わります。
一般的には、申立ての理由の記載を要求したり、理由を尋ねたりすることは不適切とされています。ただし、目的を任意で伝えると必要な記録を特定しやすくなる場合があります。迷う場合は、医療機関の様式を確認したうえで記載範囲を判断します。
一般的には、原則は患者本人による請求です。ただし、法定代理人、本人から代理権を与えられた親族等、一定の遺族などが請求できる場合があります。必要書類や請求できる範囲は医療機関や本人の状況によって変わるため、個別に確認する必要があります。
一般的には、一定の遺族に対して診療情報提供が認められる場合があります。ただし、患者本人の生前の意思や名誉等への配慮、請求者の範囲、戸籍等の確認書類が問題になります。死亡事案で法的問題が関係する場合は、資料を整理して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、現存していれば開示対象になり得ますが、法定保存期間を超えた記録は廃棄されている可能性があります。医療機関によって保存年限や旧システムの扱いが異なるため、どの記録が残っているかを確認する必要があります。
一般的には、CT、MRI、X線などの画像データは診療記録に含まれ得ます。CD-RやDVD-Rで交付されることが多く、紙コピーとは別料金になるのが通常です。画像診断レポートも必要かどうかを分けて確認すると整理しやすくなります。
一般的には、電子カルテシステムが加筆修正履歴や付箋情報を記録する機能を有している場合、それらも保有個人データの開示請求対象になり得るとされています。必要な場合は、請求範囲に明記して確認する必要があります。
一般的には、時系列メモ、手元資料、説明同意書、検査結果、画像、退院サマリーなどを整理し、どの診療記録が必要かを検討します。重大な結果、説明の変遷、記録の改ざん・散逸への具体的懸念がある場合は、カルテ開示の前後を問わず、医療事件に詳しい弁護士等へ相談する必要があります。
公的資料、法令、医療機関の公開情報をもとに一般情報として整理しています。