2σ Guide

遺産と相続財産と
遺贈財産の使い分け

相続相談や文書作成で迷いやすい三つの語を、承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面に分けて整理します。

3語遺産・相続財産・遺贈財産
2類型包括遺贈と特定遺贈
3年相続登記の申請期限
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

遺産と相続財産と 遺贈財産の使い分け

相続 相談や文書作成で迷いやすい三つの語を、承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面に分けて整理します。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
遺産と相続財産と 遺贈財産の使い分け
相続 相談や文書作成で迷いやすい三つの語を、承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面に分けて整理します。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 遺産と相続財産と 遺贈財産の使い分け
  • 相続 相談や文書作成で迷いやすい三つの語を、承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面に分けて整理します。

POINT 1

  • 遺産と相続財産と遺贈財産の使い分けの全体像
  • 承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面ごとに安全な語を選びます。
  • 場面ごとの使い分けを先に押さえることが重要です。

POINT 2

  • 遺産と相続財産と遺贈財産を三つの視角で分ける
  • 相続財産
  • 遺産
  • 遺贈財産
  • 承継、分割、遺言処分という見方で、中心になる語が変わります。

POINT 3

  • 遺産と相続財産の定義を正確に分ける
  • 遺産は分割対象、相続財産は権利義務全体という違いを押さえます。
  • 一方、「相続財産」は相続によって承継される財産上の権利義務を指し、プラス財産とマイナス財産を含みます。
  • 相続財産にはマイナス財産も含まれ得ます。
  • 遺産分割の対象として自由に割り付けられる財産とは異なるため、債権者との関係も確認する必要があります。

POINT 4

  • 遺贈財産は包括遺贈と特定遺贈を分けて使う
  • 遺贈の目的財産、受遺者の地位、債務、登記、遺留分を合わせて確認します。
  • 遺贈財産は初出で定義する
  • 「遺贈財産」は、民法の中心的な条文用語というより、遺贈の対象となる財産を説明するための実務用語です。
  • 正確性を優先するなら、「遺贈の目的財産」または「遺贈により取得した財産」と表現する方が明確です。

POINT 5

  • 民法上の遺産と相続財産の外延を分ける
  • 相続財産の出発点
  • 相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。
  • 遺産分割の対象
  • 共同相続人は、遺言で禁止されているなどの事情がない限り、協議によって遺産の全部または一部を分割できます。

POINT 6

  • 相続税上の相続財産は民法上の遺産と一致しない
  • 基礎控除、みなし相続財産、死亡保険金、遺贈の税務を分けて整理します。
  • 民法上の遺産分割対象財産とは一致しないことがあります。
  • 生命保険金は、用語の使い分けを誤りやすい典型例です。
  • 問いごとに答え方が異なることを読み取ってください。

POINT 7

  • 相続登記と遺贈登記で用語を使い分ける
  • 不動産の取得原因、相続登記義務化、評価目的の違いを整理します。
  • 不動産がある相続では、用語の使い分けが登記手続に直結します。
  • 相続人が取得するのか、相続人以外の受遺者が遺贈により取得するのかで、登記原因や必要書類が変わります。
  • 取得原因、取得者、確認資料を横に読むと、文書で使うべき語が見えます。

POINT 8

  • 家庭裁判所実務では遺産の範囲を慎重に見る
  • 相続人の範囲
  • 戸籍により当事者を確認し、相続人全員が手続に関与できる状態かを整理します。
  • 遺言の有無と効力
  • 遺言で特定財産承継や遺贈がある場合、遺産分割対象が変わります。

まとめ

  • 遺産と相続財産と 遺贈財産の使い分け
  • 遺産と相続財産と遺贈財産の使い分けの全体像:承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面ごとに安全な語を選びます。
  • 遺産と相続財産の定義を正確に分ける:遺産は分割対象、相続財産は権利義務全体という違いを押さえます。
  • 遺贈財産は包括遺贈と特定遺贈を分けて使う:遺贈の目的財産、受遺者の地位、債務、登記、遺留分を合わせて確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

遺産と相続財産と遺贈財産の使い分けの全体像

承継、分割、遺言処分、税務、登記の場面ごとに安全な語を選びます。

遺産、相続財産、遺贈財産は似た言葉ですが、同じ意味に押し込めると、遺産分割、相続税、登記、遺言執行、相続放棄の判断を誤りやすくなります。場面ごとの使い分けを先に押さえることが重要です。

基本の三分法相続財産は承継される権利義務の総体、遺産は共同相続人が分ける対象、遺贈財産は遺言により受遺者へ与えられる財産または財産的地位を指す説明語として使います。

次の比較表は、三つの語をどの場面で使うかを整理したものです。左列で場面を選び、中央の推奨語と右列の理由を合わせて読むと、民法、税務、登記で意味がずれる箇所が分かります。

場面推奨される語理由
被相続人から承継される権利義務の総体をいう場面相続財産民法上の承継対象を示しやすい
共同相続人が分ける対象をいう場面遺産遺産分割協議、調停、審判との結びつきが強い
遺言で誰かに与えられる財産をいう場面遺贈の目的財産、遺贈により取得した財産遺贈財産は説明語として有用ですが、包括遺贈と特定遺贈を区別すべきです
相続税申告の対象をいう場面相続税の課税対象財産、相続税法上の相続財産民法上の相続財産と一致しないことがあります
不動産の名義変更をいう場面相続登記の対象不動産、遺贈登記の対象不動産原因が相続か遺贈かで登記原因と手続関係者が変わります
Section 01

遺産と相続財産と遺贈財産を三つの視角で分ける

承継、分割、遺言処分という見方で、中心になる語が変わります。

三つの語は、承継、分割、遺言処分という三つの視角で整理すると理解しやすくなります。どの視角で話しているかを明示すれば、同じ財産でも表現が変わる理由が見えます。

次の一覧は、三つの視角を並べて示したものです。ラベル、中心となる語、確認すべき内容を横に読むことで、相談や文書作成の入口で何を確認するかを把握できます。

承継

相続財産

亡くなった人に属していた権利義務が、誰に、どの原因で移るかを見ます。権利だけでなく義務も含めて確認します。

分割

遺産

共同相続人の間で、どの財産を誰がどのように取得するかを見ます。遺産分割協議、調停、審判の文脈です。

遺言

遺贈財産

遺言によって相続人または相続人以外へ財産を与えるかを見ます。包括遺贈と特定遺贈を分けます。

承継の視角では、預金や不動産だけでなく、売掛金、貸付金、損害賠償請求権、著作権、特許権、借入金、未払医療費、未払税金なども問題になります。分割の視角では、法定相続分、特別受益、寄与分、代償分割、換価分割、不動産評価などが中心になります。遺言処分の視角では、相続人への特定財産承継遺言か、相続人以外への遺贈か、包括遺贈か特定遺贈かを確認します。

Section 02

遺産と相続財産の定義を正確に分ける

遺産は分割対象、相続財産は権利義務全体という違いを押さえます。

「遺産」は日常語では亡くなった人が残した財産全般を指しますが、専門的には遺産分割の対象財産という意味で使われることが多い語です。一方、「相続財産」は相続によって承継される財産上の権利義務を指し、プラス財産とマイナス財産を含みます。

次の比較表は、相続財産に含まれるプラス財産の代表例です。左列の種類ごとに、右列の例を確認し、預貯金と不動産だけではないことを読み取ってください。

種類
金銭債権預貯金、貸付金、売掛金、未収賃料
不動産土地、建物、共有持分、借地権
有価証券上場株式、非上場株式、投資信託、債券
動産自動車、貴金属、美術品、家財、機械設備
知的財産著作権、特許権、商標権、意匠権
契約上の地位賃貸人の地位、事業契約上の地位など

相続財産にはマイナス財産も含まれ得ます。次の比較表は、債務や保証などの代表例を整理したものです。遺産分割の対象として自由に割り付けられる財産とは異なるため、債権者との関係も確認する必要があります。

種類
借入債務住宅ローン、事業借入、カードローン
未払債務未払医療費、未払介護費、未払家賃、未払税金
保証債務連帯保証債務、根保証債務
損害賠償債務交通事故、契約違反、不法行為による債務

ただし、一身専属的な権利義務や、系譜、祭具、墳墓などの祭祀財産は、通常の相続財産とは別の扱いになることがあります。墓地や仏壇を遺産分割の通常の対象として単純に扱うことは適切でない場合があります。

Section 03

遺贈財産は包括遺贈と特定遺贈を分けて使う

遺贈の目的財産、受遺者の地位、債務、登記、遺留分を合わせて確認します。

「遺贈財産」は、民法の中心的な条文用語というより、遺贈の対象となる財産を説明するための実務用語です。正確性を優先するなら、「遺贈の目的財産」または「遺贈により取得した財産」と表現する方が明確です。

次の比較表は、遺贈の類型ごとの典型例、受遺者の地位、使い分け上の注意を示しています。包括遺贈は割合的地位、特定遺贈は特定財産という違いを読み取ることが重要です。

類型典型例受遺者の地位使い分け上の注意
包括遺贈全財産をAに遺贈する、遺産の3分の1をBに遺贈する包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する債務、遺産分割参加、相続税、遺留分との関係を確認します
特定遺贈甲土地をCに遺贈する、D銀行預金をEに遺贈する特定財産を受ける受遺者目的物の特定、登記、引渡し、遺言執行者、遺留分への配慮が必要です
負担付遺贈自宅をAに遺贈する。ただしAはBに毎月生活費を支払う財産取得と負担が結びつく負担の内容、履行可能性、放棄の可否を確認します

包括受遺者は、単に特定の財産をもらう人ではありません。相続人に近い地位を持ち、遺産分割に参加する可能性があり、債務や相続税申告でも重要な関係者になります。

次の重要表示は、包括遺贈と特定遺贈を混同しないための読み方を示しています。遺贈財産という語を使うときは、個別財産なのか、遺産全体に対する割合的地位なのかを明示する必要があります。

遺贈財産は初出で定義する

特定遺贈では特定の目的財産を、包括遺贈では遺産全体または割合的地位を指すものとして定義してから使うと、誤解を減らせます。

Section 04

民法上の遺産と相続財産の外延を分ける

相続財産に含まれても、遺産分割対象として扱えるとは限りません。

民法上の相続財産は、相続開始時に被相続人に属していた権利義務の承継対象です。一方、遺産分割でいう遺産は、その中でも共同相続人間で分ける対象として把握される財産です。すべての相続財産が、常に遺産分割手続の対象になるわけではありません。

次の一覧は、民法上の整理で誤解しやすいポイントを並べています。権利義務の承継、遺産分割対象、遺言による処分を分けて読むことで、同じ財産を別の角度から見ていることが分かります。

相続財産の出発点

相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし一身専属的なものは除外されます。

遺産分割の対象

共同相続人は、遺言で禁止されているなどの事情がない限り、協議によって遺産の全部または一部を分割できます。

相続債務の扱い

債務は相続財産に含まれ得ますが、相続人間の協議だけで債権者に当然対抗できるとは限りません。

死亡保険金のずれ

受取人指定の死亡保険金は、民法上は受取人固有財産となる場面が多い一方、相続税上はみなし相続財産となる場合があります。

遺言による財産処分では、遺言の方式、遺言能力、対象財産の特定、包括遺贈か特定遺贈か、受遺者の承認や放棄、遺言執行者、遺留分、登記、税務を確認します。

Section 05

相続税上の相続財産は民法上の遺産と一致しない

基礎控除、みなし相続財産、死亡保険金、遺贈の税務を分けて整理します。

相続税の世界では、「相続財産」という語が、相続や遺贈により取得した財産、みなし相続財産、相続開始前の一定期間内の贈与、相続時精算課税適用財産、債務控除などと結びついて使われます。民法上の遺産分割対象財産とは一致しないことがあります。

次の比較表は、税務上の相続財産と民法上の遺産分割対象がずれやすい場面を示しています。左列の論点ごとに、中央の税務上の見方と右列の実務上の注意を横に読んでください。

論点税務上の見方使い分け上の注意
相続税の基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数を基礎に判定します正味の遺産額と民法上の遺産分割対象財産は一致しないことがあります
死亡保険金みなし相続財産として課税対象に含まれる場合があります受取人指定があると民法上の遺産分割対象ではない場面が多いです
死亡退職金みなし相続財産として扱われる場合があります支給規程や受取人の定めで民法上の扱いが変わります
債務と葬式費用一定要件のもとで控除が問題になります民法上の被相続人の債務そのものか、税務上控除される費用かを分けます
遺贈受遺者も相続税の納税義務者となる場合があります相続人以外への遺贈では2割加算なども確認します

生命保険金は、用語の使い分けを誤りやすい典型例です。次の比較表では、死亡保険金が遺産か、相続税対象か、相続財産と書いてよいかを分けています。問いごとに答え方が異なることを読み取ってください。

問い答え方
死亡保険金は遺産分割協議で分ける遺産か受取人指定の有無、契約内容、特別受益性などを確認します。原則として受取人固有財産となる場面が多いです
死亡保険金は相続税の対象か相続税法上のみなし相続財産として課税対象になる場合があります
死亡保険金を相続財産と書いてよいか民法上か税務上かを明示します。単に相続財産と書くと誤解を招きます
Section 06

相続登記と遺贈登記で用語を使い分ける

不動産の取得原因、相続登記義務化、評価目的の違いを整理します。

不動産がある相続では、用語の使い分けが登記手続に直結します。相続人が取得するのか、相続人以外の受遺者が遺贈により取得するのかで、登記原因や必要書類が変わります。

次の比較表は、不動産をめぐる相続登記と遺贈登記の違いを整理したものです。取得原因、取得者、確認資料を横に読むと、文書で使うべき語が見えます。

場面使う語確認する資料
相続人が法定相続、遺産分割、特定財産承継遺言で取得する相続登記の対象不動産戸籍、遺産分割協議書、遺言書、登記事項証明書
相続人以外の受遺者が遺贈で取得する遺贈登記の対象不動産遺言書、遺言執行者、受遺者資料、登記事項証明書
相続税申告で評価する相続税の課税対象財産としての不動産路線価図、倍率表、固定資産税評価証明書、地積測量図
遺産分割で評価する遺産としての不動産鑑定評価書、査定書、取引事例、境界資料

2024年4月1日から、相続登記の申請義務化が始まっています。相続または遺言により不動産の所有権を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負い、正当な理由なく違反した場合は10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

次の比較表は、不動産評価の目的ごとに担当専門職と資料が変わることを示しています。評価目的の列を起点に、同じ不動産でも遺産分割、税務、境界、売却で資料が異なることを読み取ってください。

評価目的主な担当専門職主な資料
遺産分割のための時価把握弁護士、不動産鑑定士、不動産仲介業者鑑定評価書、査定書、取引事例、登記事項証明書
相続税申告税理士、不動産鑑定士路線価図、倍率表、固定資産税評価証明書、地積測量図
境界、分筆、表示登記土地家屋調査士地積測量図、公図、境界確認書、現地測量資料
売却、換価分割宅地建物取引士、不動産仲介業者重要事項説明書、売買契約書、査定書
Section 07

家庭裁判所実務では遺産の範囲を慎重に見る

調停、審判、遺産確認、使い込み疑いでは、遺産と請求権を分けます。

家庭裁判所の遺産分割調停や審判で中心になるのは、「遺産の範囲」「遺産の評価」「具体的相続分」「分割方法」です。相続税申告書に載った財産が、すべて家庭裁判所の遺産分割対象になるわけではありません。

次の一覧は、家庭裁判所の遺産分割で整理されやすい項目です。項目の順番を追うことで、相続人、遺言、遺産の範囲、評価、特別受益、寄与分、分割方法を段階的に確認する必要が分かります。

相続人の範囲

戸籍により当事者を確認し、相続人全員が手続に関与できる状態かを整理します。

遺言の有無と効力

遺言で特定財産承継や遺贈がある場合、遺産分割対象が変わります。

遺産の範囲と評価

どの財産が遺産に含まれるか、どの時点の価値で見るかを確認します。

特別受益と寄与分

生前贈与や特別の貢献を、具体的相続分の調整要素として検討します。

分割方法

現物分割、代償分割、換価分割、共有などを検討します。

使い込み疑いでは、時期と法律構成を分ける必要があります。次の比較表は、相続開始前、相続開始後、遺言執行中で用語上の注意が変わることを示しています。左列の時期を起点に、現金そのものが遺産として残っているのか、請求権が相続財産になるのかを読み取ってください。

時期主な法律構成用語上の注意
相続開始前の出金本人の意思、代理権、贈与、不当利得、損害賠償、事務管理など現金自体が残っていなければ、遺産分割対象ではなく返還請求権等が相続財産になるかを検討します
相続開始後の出金共同相続財産の処分、不当利得、共有持分侵害、遺産分割上の調整など遺産分割で合意的に調整できる場合と、別途請求が必要な場合があります
遺言執行中の出金遺言執行者の権限、受遺者への引渡し、相続人による妨害禁止など遺贈財産の引渡しや管理権限を確認します
Section 08

遺言書では相続させると遺贈するを分ける

公正証書遺言、自筆証書遺言、遺言執行者、遺贈財産の特定を確認します。

遺言では、相続人に渡すのか、相続人以外に渡すのか、特定財産なのか、割合なのかを明確に書く必要があります。文言が曖昧だと、相続、遺贈、遺産分割方法の指定、相続分の指定、負担付遺贈などの区別が不明確になります。

次の比較表は、遺言でよく出る文言と主な意味、注意点を整理したものです。文言の列を見て、相続人向けか受遺者向けか、特定財産か包括的承継かを読み取ってください。

文言主な意味注意点
長男Aに甲土地を相続させる相続人に特定財産を承継させる趣旨特定財産承継遺言として扱われる可能性があります
知人Bに甲土地を遺贈する相続人以外への特定遺贈登記、遺言執行者、遺留分、税務を確認します
妻Cに全財産を相続させる相続人への包括的承継遺留分、二次相続、債務、税務を検討します
甥Dに全財産の2分の1を遺贈する包括遺贈包括受遺者としての地位、債務、遺産分割参加を確認します

遺言執行者がいる場合、遺言執行者は相続財産目録を作成し、遺言内容の実現に必要な行為を行います。遺贈の履行は、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者のみが行うとされています。

次の判断の流れは、遺言で財産を渡すときの確認順序を示しています。上から順に、誰に渡すのか、何を渡すのか、登記や税務が必要かを確認すると、遺贈財産という語の使いどころが明確になります。

遺言文言を確認する順番

取得者を確認

相続人か、相続人以外の受遺者かを確認します。

財産の特定方法を確認

特定の不動産や預金か、全財産または割合かを確認します。

遺言執行者を確認

遺贈の履行、不動産登記、預貯金払戻しを誰が行うかを整理します。

遺留分と税務を確認

遺留分侵害額請求、相続税、2割加算、納税資金を検討します。

Section 09

遺産と相続財産と遺贈財産の誤用を修正する

文書の目的に合わせて、安全な表現へ言い換える実務感覚を身につけます。

実務文書では、文書の目的ごとに中心となる語が変わります。遺産分割協議書では遺産、相続財産目録では相続財産、遺言書では相続させる財産や遺贈の目的財産、相続税申告書では課税対象財産を明確にします。

次の比較表は、誤解を招く表現と修正例をまとめたものです。左列の表現がなぜ危険かを中央列で確認し、右列のように場面に合う語へ直すことが重要です。

誤解を招く表現問題点修正例
相続人でない友人が相続した相続人以外は相続人として承継しません友人が遺贈により取得した
遺贈財産を相続人全員で分ける特定遺贈の目的物は通常の遺産分割対象とは異なります特定遺贈の効力、遺留分、遺言執行を確認する
相続財産は預金と不動産だけ債務、知的財産、請求権、契約上の地位を見落とします相続財産にはプラス財産とマイナス財産がある
保険金は遺産だから全員で分ける受取人指定があると受取人固有財産となる場合があります民法上の遺産分割対象か、相続税上のみなし相続財産かを分ける
相続税申告書の財産はすべて遺産分割対象税務上の課税対象と民法上の遺産は一致しません税務上の課税財産と遺産分割対象財産を別表で整理する
借金は遺産分割協議で長男だけにできる債権者に当然対抗できるとは限りません相続人間の内部負担と債権者に対する責任を分ける
包括遺贈は特定の財産をもらうだけ包括受遺者は相続人に近い地位を持ちます包括受遺者の権利義務、債務、遺産分割参加を確認する
相続登記は急がなくてよい相続登記は義務化されています不動産取得を知った日から3年以内の申請義務を確認する

次の一覧は、実務文書ごとの中心用語を示しています。文書の種類と目的を合わせて読むと、同じ財産でも記載欄や説明語が変わることが分かります。

協議書

遺産分割協議書

共同相続人が分ける対象を「遺産」として整理し、債務は内部負担と債権者への効力を分けます。

目録

相続財産目録

プラス財産とマイナス財産を分け、調査日、評価基準日、資料出所を明記します。

遺言

遺言書

相続人に相続させるのか、相続人以外へ遺贈するのか、包括か特定かを明確にします。

税務

相続税申告書

相続税の課税対象財産、みなし相続財産、債務控除、特例を分けます。

金融

金融機関提出書類

相続手続対象財産、受遺者、遺言執行者など、提出先の書式上の意味を確認します。

Section 10

専門職別に見る遺産と相続財産と遺贈財産

誰に相談するかで、重視する用語と資料が変わります。

専門職ごとに注目する用語の焦点は異なります。争いの有無、不動産、税務、遺言、金融、評価、境界、事業承継など、中心論点に応じて相談先と用語を分けると、話が通じやすくなります。

次の一覧は、専門職ごとの関与ポイントを整理したものです。左上から順に、紛争、登記、税務、書類、遺言執行、金融、不動産評価、境界、売却、事業承継、社会保険、公的手続へ広がることを読み取ってください。

弁護士

遺産の範囲、使い込み疑い、遺留分、遺言無効、遺産分割調停、相続債務を扱います。

紛争

司法書士

相続登記、遺贈登記、戸籍収集、法定相続情報、登記書類を確認します。

登記

税理士

相続税申告、財産評価、みなし相続財産、債務控除、特例を扱います。

税務

行政書士

争いのない書類整理、相続人関係説明図、名義変更書類を補助します。

書類

公証人

公正証書遺言で、相続させる財産、遺贈する財産、遺言執行者を明確にします。

遺言

遺言執行者

相続財産目録を作成し、遺贈の履行、不動産登記、預貯金払戻しを進めます。

執行

金融機関

相続手続対象財産、残高証明、取引履歴、受遺者単独手続の可否を確認します。

金融

不動産鑑定士

遺産評価のための時価と相続税評価額を分けて検討します。

評価

土地家屋調査士

境界確認、分筆、地積更正、表示登記を扱います。

境界

不動産仲介業者

相続不動産の売却、換価分割、重要事項説明、残置物処理を扱います。

売却

公認会計士等

非上場株式、事業用資産、知的財産、経営権の承継を整理します。

事業

社会保険労務士

遺族年金、未支給年金、健康保険、労災などを扱います。

保険
Section 11

ケースで見る遺産と相続財産と遺贈財産の使い分け

遺言なし相続、特定遺贈、包括遺贈、保険金、生前出金で言葉を分けます。

ケーススタディで見ると、同じ財産でも相続財産、遺産、遺贈財産のどれとして扱うかが変わります。事例ごとに取得原因、当事者、税務、登記、遺留分を確認する必要があります。

次の比較表は、典型的な5つのケースで中心になる語を整理したものです。ケースごとに、どの語を使うかと、どこで注意が必要かを横に読んでください。

ケース中心になる語注意点
遺言がなく、妻と子二人が相続人相続財産と遺産プラス財産とマイナス財産を調査し、その後に遺産の分け方を協議します
友人に不動産を遺贈した遺贈の目的財産相続人の遺産分割対象として単純に扱わず、遺言の有効性、遺留分、遺贈登記、税務を確認します
甥が全財産の3分の1の包括遺贈を受けた包括遺贈による割合的地位特定財産を当然に取得するのではなく、遺産全体に対する割合的地位として整理します
死亡保険金3,000万円がある受取人固有財産とみなし相続財産民法上の遺産分割対象と相続税上の課税対象を分けます
生前3年間に2,000万円の出金がある請求権としての相続財産現金が残っていなければ、返還請求権や損害賠償請求権が相続財産に含まれるかを検討します

次の判断の流れは、ある財産についてどの語を使うかを確認する順序です。上から順に、死亡時に被相続人に属していたか、共同相続人で分けるか、遺言があるか、取得者が誰か、税務や登記が必要かを確認します。

用語選択の判断手順

死亡時に被相続人に属していたか

はいなら民法上の相続財産に含まれる可能性を検討します。

共同相続人間で分ける対象か

はいなら遺産分割対象としての遺産と表現します。

遺言で誰かに与える条項があるか

相続人への特定財産承継遺言か、包括遺贈か、特定遺贈かを確認します。

取得者は相続人か

相続人以外なら遺贈、死因贈与、生命保険、信託受益権などを確認します。

税務と登記を確認

民法上の遺産と別に、相続税の課税対象財産や相続登記、遺贈登記を整理します。

Section 12

遺産と相続財産と遺贈財産の使い分けFAQ

一般情報として、借金、保険金、遺贈、登記、専門家相談の疑問を整理します。

Q1. 遺産と相続財産は同じ意味ですか。

一般的には、日常語では近い意味で使われることがあります。ただし、専門的には、相続財産は被相続人から承継される権利義務の総体、遺産は遺産分割の対象財産を指すことが多いです。債務、生命保険金、祭祀財産、特定遺贈財産などでは差が出るため、具体的な扱いは資料に基づいて専門家へ確認する必要があります。

Q2. 借金は遺産ですか。

一般的には、借金は民法上の相続財産に含まれる可能性があります。ただし、遺産分割協議で相続人間の内部負担を決めても、債権者に当然対抗できるとは限りません。借金が多い場合は、相続放棄または限定承認の期間制限を確認する必要があります。

Q3. 相続放棄を考えるときは、どの語を使うべきですか。

一般的には、相続財産という語で、プラス財産とマイナス財産を合わせて調査するのが適切です。預貯金や不動産だけでなく、借金、保証債務、未払税金、未払医療費も含めて判断します。具体的な放棄の可否は弁護士等へ相談する必要があります。

Q4. 相続人以外に財産を渡す遺言で、相続させると書いてよいですか。

一般的には、相続人以外は相続人として財産を承継するわけではないため、遺贈するという表現が使われます。相続人以外に相続させると書くと、解釈上の争いを生む可能性があります。遺言文言は専門家に確認する必要があります。

Q5. 遺贈財産は遺産分割協議の対象になりますか。

一般的には、特定遺贈の目的財産は通常の遺産分割対象財産とは異なります。他方、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、遺産分割に参加する可能性があります。遺言の有効性、遺留分、受遺者の意思で結論は変わります。

Q6. 生命保険金は相続財産ですか。

一般的には、民法上の遺産分割対象かどうかと、相続税上の課税対象かどうかを分けます。受取人指定のある死亡保険金は受取人固有財産と扱われる場面が多い一方、相続税上はみなし相続財産として課税対象に含まれる場合があります。

Q7. 相続税申告書に載る財産は、すべて遺産分割協議書にも載せますか。

一般的には、必ずしも同じではありません。相続税申告書には税務上の課税対象財産やみなし相続財産が含まれることがあり、遺産分割協議書には共同相続人が分ける対象である遺産を記載します。差がある場合は説明資料を整理する必要があります。

Q8. 相続登記義務化と用語の使い分けは関係ありますか。

一般的には関係があります。相続人が取得するのか、受遺者が遺贈により取得するのか、遺産分割により取得するのかで、登記原因や必要書類が変わります。具体的な登記は司法書士等へ確認する必要があります。

Q9. 遺言執行者がいる場合、相続人は遺贈財産を動かせますか。

一般的には、遺言執行者がいる場合、遺贈の履行は遺言執行者の権限に属します。相続人の行為が遺言執行を妨げる場合、効力が制限されることがあります。権限関係は遺言内容と財産の種類により変わります。

Q10. 専門家には誰に相談すべきですか。

一般的には、争いがあれば弁護士、不動産登記なら司法書士、相続税なら税理士、公正証書遺言なら公証人、不動産評価なら不動産鑑定士、境界や分筆なら土地家屋調査士が候補になります。複数の問題が絡む場合は、資料を整理して専門家同士の連携を確認する必要があります。

Section 13

遺産と相続財産と遺贈財産の実務チェック

相談前の資料と用語選択を整理し、誤解の少ない相続処理につなげます。

相談や依頼の前には、初回相談時の確認事項と、用語選択の確認事項を分けると整理しやすくなります。事実関係の確認と、文書で使う語の確認を分けることが重要です。

次の比較表は、用語選択のチェックポイントをまとめたものです。左列の確認事項を読み、右列の語を使うことで、相続財産、遺産、遺贈財産、祭祀財産を混同しにくくなります。

確認事項使う語
被相続人の権利義務全体を調査している相続財産
相続人全員で分ける財産を整理している遺産
遺言で受遺者に渡す財産を整理している遺贈の目的財産、遺贈財産
相続税申告の財産を整理している相続税の課税対象財産
不動産の名義変更を検討している相続登記対象不動産、遺贈登記対象不動産
借金を検討している相続債務、相続財産に属する義務
生命保険金を検討している受取人固有財産、みなし相続財産
墓地、仏壇を検討している祭祀財産

次の用語集は、このページで繰り返し使う基礎語を整理したものです。左列の語を文書や相談で使う前に、右列の意味を確認すると、遺産分割、税務、登記、遺言執行の混同を減らせます。

用語意味
被相続人亡くなった人。相続される側です
相続人民法により相続する地位を持つ人です
受遺者遺贈を受ける人です
遺産遺産分割の対象として把握される財産です
相続財産被相続人から承継される財産上の権利義務の総体です
遺贈財産遺言により受遺者に与えられる財産または財産的地位を指す便宜的表現です
包括遺贈遺産全体または割合を対象とする遺贈です
特定遺贈特定の財産を対象とする遺贈です
遺産分割共同相続人間で遺産の最終帰属を決める手続です
相続登記相続による不動産の所有権移転登記です
遺贈登記遺贈による不動産の所有権移転登記です
遺言執行者遺言内容を実現する者です
相続放棄相続人が相続による権利義務の承継を拒む手続です
限定承認相続で得た財産の限度で債務を弁済する承認方法です
みなし相続財産民法上の相続財産そのものではないが、相続税上、相続等により取得したものと扱われる財産です
祭祀財産系譜、祭具、墳墓など、通常の相続財産と別に承継される財産です

次の資料一覧は、専門家へ相談する際に準備するとよい資料を整理したものです。死亡、相続人、遺言、不動産、預貯金、保険、債務、税務、事業、使い込み疑いを広く確認するため、上から順に有無を確認してください。

資料確認する理由
死亡診断書または死体検案書の写し死亡日や死亡後手続の基礎資料になります
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式相続人の範囲を確認します
相続人全員の戸籍、住民票、印鑑証明書協議、登記、金融機関手続の資料になります
遺言書、公正証書遺言の有無、自筆証書遺言書保管制度の関係資料遺贈財産や遺言執行者を確認します
固定資産税納税通知書、名寄帳、登記事項証明書不動産の有無、登記、評価を確認します
預貯金通帳、残高証明書、取引履歴遺産、名義預金、使い込み疑いを確認します
証券口座資料、株式、投資信託資料有価証券や投資商品の相続財産性と評価を確認します
生命保険証券、死亡保険金支払通知書受取人固有財産とみなし相続財産を分けます
退職金資料、年金資料死亡退職金、企業年金、未支給年金などを確認します
借入金明細、ローン契約書、保証契約書相続債務や相続放棄の判断に使います
医療費、介護費、葬式費用の領収書未払債務、精算、税務上の控除を確認します
生前贈与契約書、贈与税申告書特別受益、生前贈与加算、税務上の確認に使います
事業関係資料、決算書、株主名簿非上場株式、事業用資産、事業債務を確認します
特許、商標、著作権等の資料知的財産が相続財産に含まれるかを確認します
不動産査定書、賃貸借契約書、境界資料不動産評価、売却、境界、賃貸借を確認します
使い込み疑いに関する通帳履歴、領収書、介護記録、診療記録返還請求権や損害賠償請求権の有無を検討します
相続税申告の有無に関する概算資料課税対象財産、基礎控除、特例の見通しを確認します
過去の遺産分割協議書、調停調書、審判書過去の相続や紛争経過を確認します
連絡可能な相続人、受遺者、関係者の一覧協議、通知、遺言執行、金融機関手続の連絡先を整理します
相談したい事項を時系列でまとめたメモ専門家が事実関係と優先順位を把握しやすくなります

最終整理として、相続財産調査の段階では広く相続財産を把握し、遺産分割の段階では遺産を特定し、遺言による財産取得の段階では遺贈の目的財産または遺贈により取得した財産を明確にします。この三段階の整理により、相続人、受遺者、遺言執行者、税理士、司法書士、弁護士、家庭裁判所、金融機関の間で誤解を減らせます。

Reference

遺産と相続財産と遺贈財産の参考資料

法令、登記、遺言

  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
  • 日本公証人連合会「遺言」
  • 日本公証人連合会「遺言公正証書作成に必要な資料」

税務

  • 国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」
  • 国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」

家庭裁判所手続

  • 裁判所「遺産分割調停」