2σ Guide

配当落ち後の株価で評価する場合の
配当期待権の扱い

相続開始日が配当関係の日付のどこにあるかで、株式本体だけで評価するのか、配当期待権を別財産として足すのかが変わります。上場株式・非上場株式の通達上の処理、計算例、申告実務の確認資料を一つずつ整理します。

4日付 配当落日・基準日・効力発生日・死亡日
20.315% 通常の上場配当で確認する税率
2方式 上場株式と非上場株式で処理が分かれる
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配当落ち後の株価で評価する場合の 配当期待権の扱い

相続開始日が配当関係の日付のどこにあるかで、株式本体だけで評価するのか、配当期待権を別財産として足すのかが変わります。

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配当落ち後の株価で評価する場合の 配当期待権の扱い
相続開始日が配当関係の日付のどこにあるかで、株式本体だけで評価するのか、配当期待権を別財産として足すのかが変わります。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 配当落ち後の株価で評価する場合の 配当期待権の扱い
  • 相続開始日が配当関係の日付のどこにあるかで、株式本体だけで評価するのか、配当期待権を別財産として足すのかが変わります。

POINT 1

  • 配当期待権は株価に配当が含まれるかで判断する
  • 二重計上と申告漏れを避けるため、株式本体と配当を受ける権利を分けて確認します。
  • 死亡日と配当関係日を並べる
  • 株式本体の価額を先に確認する
  • 配当は税引後額で見る

POINT 2

  • 配当期待権で確認する日付と用語
  • 1. 株価に配当期待が織り込まれやすい期間:基準日後の配当期待権はまだ発生していないため、原則として株式評価が中心です。
  • 2. 市場価格は下がっても評価上は調整を確認:上場株式では評基通170により、配当落日前の最終価格を使う場面があります。
  • 3. 配当期待権を別途評価する中心期間:株式本体を配当落ち後の価値で見ながら、税引後予想配当額を別財産として確認します。
  • 4. 配当期待権ではなく未収配当金:金額・支払日等が確定していれば、未収債権として整理する段階になります。
  • 5. 預金・現金として評価:証券口座や銀行口座に入金済みなら、株式の付随権利ではなく預金・現金を確認します。

POINT 3

  • 配当期待権を別計上する時期としない時期
  • 1. 死亡日に株式を保有していたか:保有銘柄・株数を証券口座や株主名簿で確認します。
  • 2. 死亡日前後に配当基準日があるか:配当予想、基準日、権利落日を会社資料で確認します。
  • 3. 配当期待権を別途評価:非上場株式では株式価額の修正も確認します。
  • 4. 評基通170を確認:上場株式では配当落日前価格を使う場面があります。

POINT 4

  • 上場株式の配当期待権と配当落ち後株価の計算例
  • 評基通170の調整と、基準日後の別計上を分けて確認します。
  • 計算例1 ― 配当落日から基準日までに死亡した場合
  • 計算例2 ― 基準日の翌日から効力発生日までに死亡した場合
  • 上場株式は、原則として金融商品取引所が公表する課税時期の最終価格で評価します。

POINT 5

  • 非上場株式の配当期待権は株式価額の修正も必要になる
  • 市場が配当落ち価格を作らないため、通達上の修正と別財産評価を組み合わせます。
  • 取引相場のない株式、いわゆる非上場株式には市場終値がありません。
  • 表の上段で株式本体を900円に修正し、下段で配当期待権79,580円を足すことで、最終合計979,580円を読み取ります。
  • この例では、もともとの株式価額1,000,000円から、配当に係る源泉徴収相当額20,420円だけ低くなります。

POINT 6

  • 配当期待権の予想配当と源泉徴収相当額の確認
  • 大口株主等
  • 発行済株式総数等の一定割合以上を保有している場合は、通常の個人株主と課税関係が変わることがあります。
  • NISA・非課税口座
  • 非課税口座で保有している株式は、源泉徴収や課税関係の確認が必要です。

POINT 7

  • 配当期待権と所得税の二重課税論は別処理で考える
  • 相続税で配当期待権を評価し、実際の配当では所得税等の関係を別途処理します。
  • 配当期待権は相続財産、実際の配当は所得税等の別論点です。
  • 配当期待権は相続税の課税対象として評価されます。
  • 他方、後日、相続人が実際に配当を受け取ると、配当所得として所得税等の課税・源泉徴収が問題になります。

POINT 8

  • 配当期待権を遺産分割と遺産目録でどう扱うか
  • 税務上の評価と相続人間の取得・精算を分けて整理します。
  • 税務上、配当期待権が相続財産として評価されるとしても、相続人間の分け方は別途整理が必要です。
  • 次の記載イメージは、株式取得者と代表受領者がずれる場合に、税引後受領額の引渡しまで意識する例です。

まとめ

  • 配当落ち後の株価で評価する場合の 配当期待権の扱い
  • 配当期待権は株価に配当が含まれるかで判断する:二重計上と申告漏れを避けるため、株式本体と配当を受ける権利を分けて確認します。
  • 配当期待権で確認する日付と用語:権利付最終日、配当落日、配当基準日、効力発生日を混同しないことが出発点です。
  • 配当期待権を別計上する時期としない時期:相続開始日の位置で、株式評価と配当期待権の組み合わせを判断します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

配当期待権は株価に配当が含まれるかで判断する

二重計上と申告漏れを避けるため、株式本体と配当を受ける権利を分けて確認します。

相続税評価で問題になる配当期待権は、単に「配当がもらえそう」という期待ではありません。財産評価基本通達上は、配当金交付の基準日の翌日から配当金交付の効力が発生する日までの間における、配当金を受けることができる権利として整理されます。

結論は、株式の評価額が配当落ち後の価値を反映しており、相続開始時点で被相続人に配当を受ける権利が発生しているなら、配当期待権を株式とは別の相続財産として評価する、という考え方です。反対に、評価上の株価が配当落ち前の価値として扱われる期間では、配当期待権を別計上しません。

結論配当落ち後の株価で株式本体を評価し、配当基準日の翌日から配当効力発生日までに相続が開始している場合は、配当期待権を税引後予想配当額で別途評価します。配当落日から基準日までの上場株式では、評基通170により配当落日前価格を使う場面があるため、安易な別計上は避けます。

次の一覧は、配当期待権の扱いで最初に分けるべき三つの視点を示しています。どの視点も、株式評価に配当相当額がすでに入っているかを確かめるために重要で、読者は「日付」「株価」「別財産」の順で確認すると処理の方向を読み取りやすくなります。

POINT 01

死亡日と配当関係日を並べる

配当落日、配当基準日、配当効力発生日、相続開始日を同じ時系列に置き、どの期間に当たるかを判断します。

POINT 02

株式本体の価額を先に確認する

上場株式では最終価格や月平均額、権利落調整を確認し、非上場株式では評価額の修正が必要かを見ます。

POINT 03

配当は税引後額で見る

配当期待権は予想配当金額から源泉徴収されるべき所得税等相当額を控除して評価します。

Section 01

配当期待権で確認する日付と用語

権利付最終日、配当落日、配当基準日、効力発生日を混同しないことが出発点です。

相続税評価の課税時期は、相続の場合、原則として被相続人が死亡した日です。上場株式では市場価格、非上場株式では財産評価基本通達による評価方式が問題になりますが、配当期待権ではそれに加えて配当関係の日付を正確に並べる必要があります。

次の表は、配当期待権の判断で出てくる用語を、意味と実務上の見方に分けて整理したものです。左列で用語、中列で制度上の意味、右列で確認資料や注意点を読み、配当を受ける経済的価値が株価に残っているのか、株式から切り離されているのかを把握します。

用語意味確認のポイント
課税時期相続では原則として被相続人の死亡日です。上場株式の終値・月平均額、非上場株式の評価基準をこの時点で確認します。
配当基準日配当を受ける株主を確定する日です。3月31日、9月30日、12月31日などが多いものの、会社ごとに確認が必要です。
権利付最終日配当などの権利を得るために株式を保有しておく最終取引日です。通常は権利確定日の2営業日前と説明されます。
配当落日・権利落日権利付最終日の翌営業日で、理論上は配当相当額が株価から抜ける日です。実際の株価は需給や業績も織り込むため、配当額と同額下がるとは限りません。
配当効力発生日配当金交付の効力が発生する日です。株主総会決議日、取締役会決議日、支払開始日との関係を会社資料で確認します。

配当期待権と未収配当金は似ていますが、発生段階が違います。次の時系列は、上から下へ日付が進む順番を表しており、基準日の翌日から効力発生日までが配当期待権、効力発生日後で入金前が未収配当金という読み分けが重要です。

権利付最終日以前

株価に配当期待が織り込まれやすい期間

基準日後の配当期待権はまだ発生していないため、原則として株式評価が中心です。

配当落日から基準日まで

市場価格は下がっても評価上は調整を確認

上場株式では評基通170により、配当落日前の最終価格を使う場面があります。

基準日の翌日から効力発生日まで

配当期待権を別途評価する中心期間

株式本体を配当落ち後の価値で見ながら、税引後予想配当額を別財産として確認します。

効力発生日後から入金前

配当期待権ではなく未収配当金

金額・支払日等が確定していれば、未収債権として整理する段階になります。

死亡日前に入金済み

預金・現金として評価

証券口座や銀行口座に入金済みなら、株式の付随権利ではなく預金・現金を確認します。

Section 02

配当期待権を別計上する時期としない時期

相続開始日の位置で、株式評価と配当期待権の組み合わせを判断します。

配当期待権の別計上は、相続開始日がどの期間にあるかで決まります。もっとも誤りやすいのは、配当落日から配当基準日までの期間と、配当基準日の翌日から配当効力発生日までの期間です。前者では市場価格が配当落ち後でも、相続税評価上は配当落ち前価格に引き戻す場面があります。後者では、株式本体とは別に配当期待権を評価します。

次の表は、相続開始日の位置ごとに、株式評価、配当期待権の扱い、実務上の注意点を横並びで整理しています。行ごとに時期が進み、中央列で株式本体の評価、右側で配当の別計上の有無を読み取る構成です。

相続開始日の位置株式評価の基本配当期待権実務上の注意
権利付最終日以前通常の株式評価原則なしまだ基準日後の配当期待権は発生していません。
配当落日から配当基準日まで上場株式では評基通170の調整を確認原則なし市場価格が配当落ち後でも、評価上は配当落日前価格を使う場面があります。
配当基準日の翌日から配当効力発生日まで配当落ち後の株価・価額で評価する場面が中心あり予想配当額から源泉徴収相当額を控除して別財産として評価します。
配当効力発生日後から支払・入金前まで株式は配当落ち後の価値未収配当金として整理支払通知書、配当金計算書、口座履歴を確認します。
相続開始前に入金済み株式とは別の預金・現金なし通帳や証券口座の入金履歴で確認します。
基準日前に相続開始し、基準日に相続人側で権利取得被相続人の株式評価が中心原則なし相続開始後の配当所得や遺産分割未了財産の果実として別途整理します。

次の判断の流れは、申告前に確認する順番を表しています。上から下へ進み、分岐では「はい」と「いいえ」のどちらに当たるかを見ます。順番に確認することで、配当期待権を計上し忘れる危険と、配当前の株価にさらに配当を足す二重計上の危険を同時に避けられます。

配当期待権の判定手順

死亡日に株式を保有していたか

保有銘柄・株数を証券口座や株主名簿で確認します。

死亡日前後に配当基準日があるか

配当予想、基準日、権利落日を会社資料で確認します。

基準日翌日から効力発生日まで
配当期待権を別途評価

非上場株式では株式価額の修正も確認します。

配当落日から基準日まで
評基通170を確認

上場株式では配当落日前価格を使う場面があります。

Section 03

上場株式の配当期待権と配当落ち後株価の計算例

評基通170の調整と、基準日後の別計上を分けて確認します。

上場株式は、原則として金融商品取引所が公表する課税時期の最終価格で評価します。ただし、相続開始日の終値が、相続開始日の属する月、前月、前々月の毎日の終値平均額のうち最も低い価額を超える場合は、その低い価額を使えるとされています。負担付贈与や個人間の対価を伴う取引で取得した上場株式は通常事案と区別します。

次の表は、上場株式評価で比較する四つの価格と、配当期待権の判断で注意する点を整理したものです。左列から価格の種類、評価で見る意味、配当関係の日付との関係を読み、単に死亡日の終値だけで決めないことが重要です。

比較する価格評価での意味配当関係の注意
相続開始日の終値課税時期の市場価格です。配当落日から基準日までなら評基通170の調整を確認します。
相続開始日の属する月の終値平均月平均額の候補です。権利落調整が必要な銘柄かを併せて見ます。
前月の終値平均低い価額を選ぶ候補です。配当基準日前後の相場変動だけでなく月平均を確認します。
前々月の終値平均さらに比較する候補です。銘柄数が多い場合は資料取得を早めに行います。

計算例1 ― 配当落日から基準日までに死亡した場合

次の比較表は、A社上場株式10,000株、1株50円の配当予想、権利付最終日3月27日、配当落日3月30日、配当基準日3月31日、相続開始日3月30日という例を整理したものです。右列の評価結果を読むと、市場価格950円ではなく配当落日前の1,000円を使い、配当期待権を足さない理由が分かります。

項目数値・日付処理
保有株数10,000株株式本体の評価数量です。
配当予想1株50円この期間では別計上しません。
3月27日の終値1,000円評基通170により課税時期の最終価格として用いる場面です。
3月30日の終値950円市場価格は配当落ち後でも、そのまま使わない場面があります。
株式評価額1,000円 × 10,000株 = 10,000,000円配当落日前の価値を株式本体に含めます。
加算しない配当期待権50円 × 10,000株 × 79.685% = 398,425円加算すると配当部分を二重に評価するおそれがあります。

計算例2 ― 基準日の翌日から効力発生日までに死亡した場合

次の比較表は、同じA社株式について相続開始日だけを4月5日に変え、配当効力発生日を6月25日、採用株価を950円と仮定した例です。株式本体は配当落ち後の価値で評価し、配当期待権は税引後額として足す、という上下の合計関係を確認します。

財産計算式評価額
上場株式本体950円 × 10,000株9,500,000円
配当期待権50円 × 10,000株 × 79.685%398,425円
合計株式本体 + 配当期待権9,898,425円
注意通常の個人株主の上場株式等の配当では、20.315%、すなわち所得税および復興特別所得税15.315%と地方税5%が示されています。ただし、大口株主、NISA、外国株式、非居住者、法人株主、種類株式などでは源泉徴収や課税関係が変わることがあります。
Section 04

非上場株式の配当期待権は株式価額の修正も必要になる

市場が配当落ち価格を作らないため、通達上の修正と別財産評価を組み合わせます。

取引相場のない株式、いわゆる非上場株式には市場終値がありません。配当期待権が発生しているときは、財産評価基本通達187(評基通187)により、取引相場のない株式を評価した価額から、株式1株に対して受ける予想配当の金額を控除して株式価額を修正する処理が問題になります。

次の表は、非上場株式で株式本体と配当期待権を分離する考え方を、計算段階ごとに示しています。左列の順番に処理を進め、中央列で控除する金額、右列で別財産として足す金額を読むと、配当部分を二重に見ない構造が分かります。

段階処理意味
修正前評価評基通179等により1株当たり価額を算定類似業種比準価額、純資産価額、配当還元方式などを確認します。
株式価額の修正1株当たり価額 − 1株当たり予想配当金額株式本体から配当部分を切り離します。
配当期待権評価予想配当総額 − 源泉徴収相当額税引後の配当相当額を別財産として評価します。

次の計算例は、B社非上場株式1,000株、修正前1株評価額1,000円、1株当たり予想配当100円、源泉徴収相当税率20.42%と仮定したものです。表の上段で株式本体を900円に修正し、下段で配当期待権79,580円を足すことで、最終合計979,580円を読み取ります。

財産・処理計算式評価額
修正後の1株当たり株式価額1,000円 − 100円900円
株式本体900円 × 1,000株900,000円
配当期待権100円 × 1,000株 × 79.58%79,580円
合計900,000円 + 79,580円979,580円

この例では、もともとの株式価額1,000,000円から、配当に係る源泉徴収相当額20,420円だけ低くなります。配当が実際に支払われるときに税金が差し引かれ、相続人が受け取る経済価値は税引後額になるという構造に対応しています。

Section 05

配当期待権の予想配当と源泉徴収相当額の確認

決算短信や決議資料を集め、税率を機械的に置かないようにします。

財産評価基本通達193は、課税時期後に受けると見込まれる予想配当の金額を基礎にします。これは主観的な希望額ではなく、課税時期時点で合理的に見込まれる額を会社資料や支払資料から確認する作業です。申告時点で最終的に確定した配当額を確認できる場合、その額を用いるのが通常です。

次の一覧は、予想配当を確認するための資料を上場株式と非上場株式の両方を含めて並べたものです。各項目は資料の種類と読み取る内容を示しており、複数資料の整合を確認することが重要です。

1

決算短信・配当予想

上場会社の予想配当や配当修正の有無を確認します。

上場
2

株主総会招集通知・剰余金処分案

具体的な配当額、効力発生日、支払開始予定日を確認します。

決議資料
3

配当金計算書・支払通知書

実際の支払額、源泉徴収額、入金時期を照合します。

支払資料
4

定款・議事録・計算書類

非上場会社では配当決議、株主名簿、計算書類から予想配当を確認します。

非上場

源泉徴収相当額では、通常の上場株式配当なら20.315%を使う場面が多い一方、常に同じ税率でよいとは限りません。次の一覧は、税率・源泉徴収関係を個別確認すべき典型例を示しています。各項目は評価額の過大・過少につながりやすいため、該当がないかを一つずつ確認します。

大口株主等

発行済株式総数等の一定割合以上を保有している場合は、通常の個人株主と課税関係が変わることがあります。

NISA・非課税口座

非課税口座で保有している株式は、源泉徴収や課税関係の確認が必要です。

外国株式・非居住者

外国源泉税、国内課税、居住者性の違いにより処理が変わることがあります。

種類株式・みなし配当

優先配当、資本剰余金配当、みなし配当が絡む場合は、通常配当と分けて確認します。

Section 06

配当期待権と所得税の二重課税論は別処理で考える

相続税で配当期待権を評価し、実際の配当では所得税等の関係を別途処理します。

配当期待権は相続税の課税対象として評価されます。他方、後日、相続人が実際に配当を受け取ると、配当所得として所得税等の課税・源泉徴収が問題になります。そのため、相続税で評価されたうえに所得税も関係するなら二重課税ではないか、という疑問が生じます。

次の強調表示は、実務上の処理を一文に整理したものです。相続税評価と所得税課税は場面が異なり、配当期待権の評価では源泉徴収相当額を控除することで、配当決議前後の不均衡を避ける考え方が示されています。

配当期待権は相続財産、実際の配当は所得税等の別論点です。

二重課税論を理由に配当期待権を申告しない処理や、実際の配当の源泉徴収・申告関係を無視する処理は、一般的な実務処理としては危険です。

公表資料では、配当期待権の価額を予想配当の金額から源泉徴収されるべき所得税等相当額を控除した金額で評価する考え方が示されています。また、相続により取得した株式の配当期待権と配当所得の関係について、二重課税には当たらないと整理された裁判例情報も公表されています。

注意個別の税務処理は、相続開始日、配当決議、口座区分、居住者性、株主区分、申告方法によって変わる可能性があります。具体的な申告方針は税理士等の専門家に確認する必要があります。
Section 07

配当期待権を遺産分割と遺産目録でどう扱うか

税務上の評価と相続人間の取得・精算を分けて整理します。

税務上、配当期待権が相続財産として評価されるとしても、相続人間の分け方は別途整理が必要です。株式を取得する相続人が配当期待権も取得するのか、配当だけを一部相続人が代表受領した場合に精算するのか、遺産分割未了期間中の配当をどう扱うのかが争点になり得ます。

次の表は、遺産分割で起きやすい論点と、協議書・目録で確認する事項を対応させたものです。左列の争点を見つけたら、右列の資料や文言まで整理することで、税務申告上の取得財産と民事上の精算を混同しにくくなります。

論点起きやすい問題整理する資料・文言
株式取得者と配当取得者株式を取得する人と配当を受け取った人が違うことがあります。取得者、代表受領者、税引後受領額、引渡し方法を明記します。
未分割期間中の配当遺産の果実か、取得財産かで精算方法が争われます。相続開始日、基準日、入金日、協議成立日を並べます。
申告書第11表との対応配当期待権を遺産目録に載せ忘れることがあります。株式評価明細、その他財産の明細、配当支払資料を対応させます。

遺産分割協議書では、株式本体だけでなく、相続開始日時点で発生していた配当期待権、未収配当金、その他これに付随する金銭請求権を誰が取得するかを明記することがあります。次の記載イメージは、株式取得者と代表受領者がずれる場合に、税引後受領額の引渡しまで意識する例です。

記載例被相続人名義のA株式会社株式10,000株に係る、相続開始日時点で発生していた配当期待権、未収配当金、その他これに付随する金銭請求権は、当該株式を取得する相続人甲が取得する。ただし、既に相続人乙が代表して受領した配当金がある場合、乙は甲に対し、税引後受領額を引き渡す。
Section 08

配当期待権の申告実務で集める資料

上場株式、非上場株式、相続人間の整理資料を分けて準備します。

配当期待権を正確に処理するには、証券口座の残高だけでは足りません。配当基準日、配当落日、配当効力発生日、入金履歴、源泉徴収額、非上場会社の決議資料まで確認する必要があります。資料取得には時間がかかるため、相続税の申告期限である10か月を意識して早めに集めます。

次の一覧は、資料を三つのグループに分けて示しています。各項目は、どの資料がどの判断に使われるかを読むためのもので、上場株式では証券会社資料、非上場株式では会社内部資料、相続人間では協議・入金・申告書の対応が重要です。

上場株式の資料

死亡日時点の残高証明書、保有銘柄・株数一覧、取引履歴、配当金計算書、支払通知書、決算短信、株主総会招集通知、月平均額資料、権利付最終日・配当落日・基準日の資料を確認します。

証券口座

非上場株式の資料

定款、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録、計算書類、法人税申告書、配当決議資料、評価明細書、同族株主判定や特定会社判定の資料を確認します。

会社資料

相続人間の整理資料

遺言書、遺産分割協議書案、相続人代表口座への配当入金履歴、配当金の受領者メモ、株式取得予定者の協議メモ、申告書第11表との対応表を準備します。

分割整理

申告書や遺産目録では、株式本体と配当期待権を分けると内容が追いやすくなります。次の表は、A社上場株式とB社非上場株式の記載イメージを並べたもので、財産の種類、数量、単価、評価額、備考の対応を読み取るためのものです。

区分記載する内容評価額例
上場株式本体A株式会社普通株式、10,000株、単価950円、上場株式評価明細書参照9,500,000円
配当期待権A株式会社期末配当に係る配当期待権、1株50円、源泉徴収相当額控除後398,425円
非上場株式本体B株式会社普通株式、1,000株、修正前1株1,000円、予想配当100円、修正後1株900円900,000円
非上場株式の配当期待権予想配当総額100,000円、源泉徴収相当額20,420円控除後79,580円
Section 09

配当期待権でよくある誤りと専門家の役割

見落とし、二重計上、税率誤り、相続人間の未精算をまとめて防ぎます。

配当期待権は、金額が小さく見えると見落とされがちですが、高配当銘柄を多数保有していた場合や同族会社株式を大量に保有していた場合には、税額にも遺産分割にも影響します。特に3月末、6月末、9月末、12月末の前後に相続が開始した事案では、配当基準日、権利落日、配当効力発生日、支払開始日を必ず確認します。

次の一覧は、申告実務で発生しやすい誤りを、何が問題になるかとともに並べたものです。各項目は過大評価・過少申告・遺産分割紛争につながりやすいため、該当するものがないかを確認します。

配当落日の終値をそのまま使う

配当落日から基準日までの上場株式では、評基通170の調整を確認せずに処理すると誤りになり得ます。

配当期待権を二重計上する

配当落日前価格で株式を評価しているのに配当期待権を足すと、配当部分を二重に評価するおそれがあります。

配当期待権を計上し忘れる

基準日の翌日から効力発生日までに死亡しているのに別財産に入れないと、過少申告になる可能性があります。

税引前配当額で計上する

評価は源泉徴収されるべき所得税等相当額を控除した金額で行います。

一律20.315%で処理する

大口株主、非上場株式、NISA、外国株式、非居住者などでは確認が必要です。

民事上の取得者を整理しない

代表受領した配当と株式取得者がずれると、後日の精算が争点になり得ます。

次の表は、専門家ごとの関与ポイントをまとめたものです。左列で専門家、中央列で主な役割、右列で相談場面を読み、税務評価だけでなく遺産分割、会社資料、名義変更までつながる論点だと分かります。

専門家主な役割相談すべき場面
税理士相続税申告、配当期待権評価、上場・非上場株式評価、税務調査対応配当基準日後に死亡、銘柄数が多い、非上場株式がある、申告期限が近い場合。
弁護士遺産分割交渉、調停、審判、配当金の受領者との精算株式や配当金の取得者が相続人間で争われる場合。
公認会計士非上場会社の財務分析、株式価値、事業承継、配当可能性の検討同族会社株式や事業承継が関係する場合。
司法書士相続登記、会社関係書類、株主名簿変更に関する周辺手続支援不動産と株式が混在し、登記や名義変更も同時に必要な場合。
証券会社・信託銀行残高証明、配当金支払履歴、相続移管手続上場株式の保有・配当資料を取得する場合。
株主名簿管理人配当金支払通知、未受領配当、株主名簿情報配当金領収証方式や未受領配当金がある場合。
Section 10

配当期待権は税務調査で日付と入金履歴を見られやすい

申告財産、証券口座、支払通知書、評価明細の整合を確認します。

税務調査では、相続開始日直前の配当基準日を確認しているか、配当基準日の翌日から支払日までの未収・期待配当を拾っているか、証券口座の入金履歴と申告財産が一致しているかが見られやすいポイントです。非上場株式では、株式価額の修正と配当期待権の別計上が対応しているかも確認されます。

次の一覧は、調査で確認されやすい項目を、証券口座、評価、分割の三つに分けたものです。項目ごとに申告書と資料の対応を読み、抜けがある場合は申告期限前に証券会社、信託銀行、株主名簿管理人、非上場会社へ照会します。

CHECK 01

証券口座と入金履歴

相続開始日前後の入金、配当金計算書、未受領配当金が申告財産と一致しているかを確認します。

CHECK 02

評価明細との対応

上場株式の権利落調整、非上場株式の価額修正、配当期待権の別紙明細が対応しているかを確認します。

CHECK 03

相続人代表の受領

相続人代表が受け取った配当金を、誰の取得財産として申告・精算しているかを確認します。

Section 11

配当期待権についてよくある質問

個別事情で処理が変わるため、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 配当落ち後の株価なら必ず配当期待権を足しますか。

一般的には、株式本体の評価が配当落ち後の価値を反映し、かつ相続開始時点で被相続人に配当を受ける権利が発生している場合に、配当期待権の別途評価が問題になるとされています。ただし、配当落日から配当基準日までの上場株式では、評基通170による調整を確認する必要があります。

Q2. 配当落日から配当基準日までの死亡ではなぜ別計上しないのですか。

一般的には、この期間の上場株式では、市場価格が配当落ち後でも、相続税評価上は配当落日前の価格を課税時期の最終価格として扱う場面があるためです。株式価額に配当前の経済価値を含めている場合、配当期待権をさらに足すと二重評価のおそれがあります。

Q3. 配当期待権は税引前の配当額で評価しますか。

一般的には、予想配当金額から源泉徴収されるべき所得税等相当額を控除した金額で評価するとされています。ただし、税率や源泉徴収関係は、上場・非上場、大口株主、NISA、外国株式、非居住者などで変わる可能性があります。

Q4. 配当決議がまだない場合、予想配当はどう確認しますか。

一般的には、決算短信の配当予想、配当修正の開示、株主総会招集通知、剰余金処分案、取締役会決議資料などを総合して、課税時期後に受けると見込まれる額を確認します。申告時点で確定額を確認できる場合は、その資料との整合も重要です。

Q5. 後日受け取る配当の所得税とは二重課税になりますか。

一般的には、配当期待権は相続財産として評価され、実際の配当は所得税等の別論点として処理されるとされています。公表資料では、源泉徴収相当額を控除して評価する考え方や、二重課税には当たらないと整理された裁判例情報が示されています。具体的な申告処理は税理士等へ確認する必要があります。

Q6. 配当期待権は遺産分割協議書に書くべきですか。

一般的には、株式本体、配当期待権、未収配当金、代表受領した配当金の精算を分けて書くと、後日の争いを避けやすくなります。ただし、実際の文言は株式取得者、入金口座、相続税負担、相続人間の合意内容によって変わります。

Section 12

配当期待権は二重計上と申告漏れの両方を避けて整理する

日付、株式本体、税引後配当、相続人間の取得者を順番に確認します。

配当落ち後の株価で評価する場合の配当期待権は、株式市場実務、会社法上の配当決議、財産評価基本通達、所得税の源泉徴収、遺産分割実務が交差する論点です。配当基準日の翌日から配当効力発生日までの間に相続が開始し、株式本体を配当落ち後の価値で評価するなら、配当期待権を税引後予想配当額で別途評価します。

一方、配当落日から配当基準日までに相続が開始した上場株式では、市場価格が配当落ち後であっても、評基通170により配当落日前の価格を課税時期の最終価格とする場面があるため、配当期待権を安易に別計上してはいけません。非上場株式では、配当期待権を別財産として評価するだけでなく、株式本体の価額修正も必要になります。

次の強調表示は、このページ全体の確認順をまとめたものです。日付を並べ、株式本体の評価方法を決め、配当期待権を税引後で評価し、最後に誰が取得・受領するかを整理することが重要です。

基準日後なら別計上、基準日前後は株価調整を先に確認。

相続開始日が配当関係日の近くにある事案では、配当基準日、権利落日、配当効力発生日、支払開始日を必ず資料で確認します。

Reference

この記事の参考資料

公的機関、法令、税務資料、判例情報を中心に整理しています。

税務・評価資料

  • 国税庁「No.4632 上場株式の評価」
  • 国税庁「財産評価基本通達 第8章 第1節 株式及び出資」
  • 国税庁「財産評価基本通達 193 配当期待権の評価」
  • 国税庁「財産評価基本通達 第1章 総則 1 評価の原則」
  • 国税庁「財産評価基本通達 170 上場株式についての最終価格の特例」
  • 財産評価基本通達187「株式の割当てを受ける権利等の発生している株式の価額の修正」
  • 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

会社法・証券実務・判例情報

  • 会社法454条
  • 日本証券業協会・J-FLEC「権利落ち、配当落ち|投資の時間」
  • 国税庁「税務訴訟資料 令和3年分 順号13636 大阪地方裁判所」
  • 公益財団法人日本税務研究センター「判例記事検索 相続により取得した株式の配当期待権と配当所得の二重課税」