2σ Guide

プライム市場と
スタンダード市場の要求水準の違い

上場基準、上場維持基準、ガバナンス、英文開示、資本コスト対応、市場区分変更を、企業法務・証券法務・IRの実務目線で整理します。

100億/10億 流通株式時価総額
35%/25% 流通株式比率
0.2億/10単位 売買代金・売買高
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プライム市場と スタンダード市場の要求水準の違い

上場基準、上場維持基準、ガバナンス、英文開示、資本コスト対応、市場区分変更を、企業法務 ・証券法務・IRの実務目線で整理します。

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プライム市場と スタンダード市場の要求水準の違い
上場基準、上場維持基準、ガバナンス、英文開示、資本コスト対応、市場区分変更を、企業法務 ・証券法務・IRの実務目線で整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • プライム市場と スタンダード市場の要求水準の違い
  • 上場基準、上場維持基準、ガバナンス、英文開示、資本コスト対応、市場区分変更を、企業法務 ・証券法務・IRの実務目線で整理します。

POINT 1

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いの全体像
  • 差は会社規模だけではなく、流動性、ガバナンス、開示、投資家対話、取締役 会判断の厚みに表れます。
  • 数値基準
  • 審査・維持
  • ガバナンス

POINT 2

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いを定義からつかむ
  • どちらも上場会社としての基本規制を受けますが、想定する投資家層と説明水準が異なります。
  • プライム市場とは
  • スタンダード市場とは
  • スタンダード市場はプライム市場より要求水準が低い面がありますが、法務対応が軽くなる市場ではありません。

POINT 3

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ―新規上場基準
  • 入口の形式要件では、プライム市場が株主分布、流通株式、時価総額、財政・収益基盤で高い水準を求めます。
  • 新規上場基準は、企業が東証の特定市場に新たに上場するための基準です。
  • 上場審査では、数値で定められた形式基準と、企業内容の開示、事業の公正性、内部管理体制などをみる実質基準が組み合わされます。
  • 企業法務上は、特に流通株式時価総額100億円以上と流通株式比率35%以上が重要です。

POINT 4

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ―上場維持基準
  • 1. 基準適合状況を確認:株主数、流通株式、売買代金、純資産を最新データで確認します。
  • 2. 未達または未達リスクを判定:株価や株主構成のシナリオを置き、改善期間入りの可能性を見ます。
  • 3. 改善策と市場区分変更を比較:売出し、政策保有株式縮減、IR強化、スタンダード移行などを比較します。
  • 4. 取締役会で審議し開示へ反映:合理性、株主共同の利益、説明資料、進捗管理を整えます。

POINT 5

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ―流通株式と市場流動性
  • 親会社・支配株主
  • 親子上場、少数株主保護、グループ経営方針、完全子会社化の可能性を確認します。
  • 創業者・創業家
  • 経営支配、相続、事業承継、売出し時期、インサイダー情報管理を確認します。

POINT 6

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ―ガバナンス
  • 実質的な発言
  • 独立社外取締役が経営陣に質問・提言し、議論が議事録に反映されているかを確認します。
  • 資料提供
  • 取締役会資料が十分な時間的余裕をもって提供され、重要論点を検討できるかを見ます。

POINT 7

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ―英文開示とIR
  • 英文開示は翻訳作業ではなく、開示統制、同時性、正確性、投資家対話を含む管理プロセスです。
  • 近年、プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いで特に重要なのが英文開示です。
  • ただし、全書類・全文の英語開示を求めるものではなく、日本語開示の一部または概要の開示で足りると説明されています。
  • 翻訳の有無だけでなく、同時性、範囲、正確性、一貫性、責任分担を読むことで、開示漏れや誤訳リスクを下げられます。

POINT 8

  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ―資本コストと株価
  • 資本コストや株価を意識した経営の要請は、プライム市場だけでなくスタンダード市場にも及びます。
  • 機関投資家の関心
  • 海外投資家の評価
  • 議決権行使基準

まとめ

  • プライム市場と スタンダード市場の要求水準の違い
  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いの全体像:差は会社規模だけではなく、流動性、ガバナンス、開示、投資家対話、取締役 会判断の厚みに表れます。
  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いを定義からつかむ:どちらも上場会社としての基本規制を受けますが、想定する投資家層と説明水準が異なります。
  • プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 新規上場基準:入口の形式要件では、プライム市場が株主分布、流通株式、時価総額、財政・収益基盤で高い水準を求めます。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いの全体像

差は会社規模だけではなく、流動性、ガバナンス、開示、投資家対話、取締役会判断の厚みに表れます。

プライム市場は、多くの機関投資家の投資対象となり得る企業に対し、より高い流動性、より高いガバナンス、より高度な投資家対話・英文開示・サステナビリティ対応を求める市場です。スタンダード市場は、公開市場の上場会社として必要な流動性と基本的なガバナンスを備え、持続的成長と中長期的企業価値向上に取り組む企業向けの市場です。

2022年4月4日の市場区分再編により、東証はプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3区分を開始しました。プライム市場は「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額」「より高いガバナンス水準」「投資者との建設的対話」を軸にし、スタンダード市場は「公開市場における投資対象として一定の時価総額」「上場企業としての基本的なガバナンス水準」を軸にしています。

次の一覧は、両市場の違いを実務で見るときの5つの層を表しています。どの層が自社の課題に当たるかを切り分けることが、取締役会資料、開示、投資家説明を組み立てる出発点になります。

Layer 01

数値基準

株主数、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率、時価総額、利益・売上、純資産、売買代金・売買高の差を確認します。

Layer 02

審査・維持

新規上場審査、市場区分変更審査、上場維持基準、経過措置終了後の本来基準への対応を見ます。

Layer 03

ガバナンス

取締役会構成、独立社外取締役、指名・報酬委員会、支配株主対応、少数株主保護、取締役会実効性を確認します。

Layer 04

開示・IR

プライム市場の英文開示、サステナビリティ開示、投資家対話、資本コストや株価を意識した経営の開示を整理します。

Layer 05

意思決定

プライム維持、スタンダード移行、資本政策、株主構成、内部統制、取締役責任を横断して判断します。

要点プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いは、形式要件の高低だけでなく、資本市場に対してどの程度の説明責任を引き受けるかという経営判断の問題です。
Section 01

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いを定義からつかむ

どちらも上場会社としての基本規制を受けますが、想定する投資家層と説明水準が異なります。

プライム市場とは

プライム市場は、多くの機関投資家の投資対象になり得る規模・流動性を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的対話を中心に据えて持続的成長と中長期的企業価値向上にコミットする企業向けの市場です。

  • 国内外の機関投資家が投資判断できるだけの流動性を確保する必要があります。
  • 上場会社としての基本的ガバナンスを超え、取締役会の監督機能を高めることが求められます。
  • 英文開示、サステナビリティ、資本コスト、PBR、ROE、ROIC、株主還元、事業ポートフォリオなど、投資家対話の論点に継続対応する必要があります。
  • 形式的な基準充足だけでなく、企業価値向上に向けた説明責任が問われます。

スタンダード市場とは

スタンダード市場は、公開された市場における投資対象として一定の時価総額・流動性を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備え、持続的成長と中長期的企業価値向上にコミットする企業向けの市場です。

スタンダード市場はプライム市場より要求水準が低い面がありますが、法務対応が軽くなる市場ではありません。金融商品取引法、会社法、東証の適時開示制度、企業行動規範、コーポレートガバナンス・コード、内部統制、会計監査、株主総会運営、インサイダー取引規制などの枠組みは引き続き重要です。

次の比較表は、「要求水準」を数値だけでなく複数の制度層として見るための整理です。市場選択や市場区分変更を検討するときは、左列の区分ごとに自社の準備状況と説明資料を確認することが重要です。

内容企業法務上の意味
新規上場基準その市場に新たに上場するための形式要件・実質審査IPO、市場選択、証券会社・監査法人・弁護士との準備に影響します。
市場区分変更基準他市場からプライムまたはスタンダードへ移るための審査プライム昇格、スタンダード移行、取締役会判断に影響します。
上場維持基準上場後も継続的に満たすべき基準未達時の改善計画、監理銘柄、整理銘柄、上場廃止リスクに影響します。
企業行動規範上場会社として遵守または尊重すべき行為規範適時開示、株主保護、英文開示、少数株主保護に関係します。
コーポレートガバナンス・コード取締役会、独立役員、情報開示、株主対話等の原則コンプライ・オア・エクスプレイン、CG報告書、投資家対話に影響します。
投資家からの期待水準国内外機関投資家、議決権行使助言会社、アクティビスト等の期待形式基準を超えた実務上の圧力と説明責任に影響します。
Section 02

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 新規上場基準

入口の形式要件では、プライム市場が株主分布、流通株式、時価総額、財政・収益基盤で高い水準を求めます。

新規上場基準は、企業が東証の特定市場に新たに上場するための基準です。上場審査では、数値で定められた形式基準と、企業内容の開示、事業の公正性、内部管理体制などをみる実質基準が組み合わされます。

次の比較表は、新規上場時の主要な形式要件を並べたものです。プライム市場はスタンダード市場に比べ、流通株式時価総額と流通株式数で10倍、流通株式比率で10ポイント高く、資本政策と株主構成への影響が大きいことを読み取る必要があります。

項目プライム市場スタンダード市場実務上の意味
株主数800人以上400人以上プライムはより広い株主分布が必要です。
流通株式数2万単位以上2,000単位以上プライムは10倍の流通単位数が必要です。
流通株式時価総額100億円以上10億円以上プライムは機関投資家が投資しやすい市場規模を重視します。
流通株式比率35%以上25%以上プライムは固定株主比率が高い会社に厳しい基準です。
時価総額250億円以上明示的な同種要件なしプライムは会社全体の市場評価も問われます。
純資産連結純資産50億円以上、かつ単体純資産が負でないこと連結純資産が正であることプライムは財政基盤の厚みを要求します。
利益・売上最近2年間の利益総額25億円以上、または最近1年間売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上見込み最近1年間の利益1億円以上プライムは収益基盤または高い成長評価を要求します。
事業継続年数3か年以前から株式会社として継続的に事業活動同左基本的な継続性は両市場共通です。
監査・虚偽記載等最近2年間の有価証券報告書等、監査意見、内部統制報告書等に関する要件同種の要件会計・監査の信頼性は両市場で重要です。

企業法務上は、特に流通株式時価総額100億円以上と流通株式比率35%以上が重要です。大株主、親会社、創業家、事業会社、役員、持株会、政策保有株式などの株主構成に直接影響するため、上場準備の早い段階から株主名簿、株主間契約、種類株式、自己株式、ストックオプション、親子上場、資本政策を確認する必要があります。

次の一覧は、実質審査で問題になりやすい論点と確認事項を整理しています。形式基準を満たしていても、関連当事者取引、内部統制、紛争、支配株主対応に説明できない点があると、上場準備全体の遅延要因になります。

論点典型例法務・会計上の確認事項
関連当事者取引創業者、親会社、役員、グループ会社との取引取引条件の公正性、取締役会承認、利益相反管理、開示を確認します。
内部統制稟議、決裁、会計、情報システム、購買、在庫管理J-SOX、監査法人対応、証跡管理、内部監査を確認します。
コンプライアンス贈収賄、反社、下請法、景表法、個人情報、労務社内規程、教育、通報制度、調査体制を整備します。
知財・ライセンス技術依存、共同研究、商標、ソフトウェア利用権利帰属、ライセンス範囲、侵害リスクを確認します。
訴訟・紛争重要訴訟、行政調査、労務紛争、顧客クレーム偶発債務、開示要否、引当金、和解方針を確認します。
支配株主・親会社親子上場、少数株主保護、グループ経営独立社外役員、特別委員会、取引条件、情報遮断を確認します。
Section 03

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 上場維持基準

上場後は、株価、流動性、株主数、純資産の変動により基準未達が現実的なリスクになります。

上場維持基準は、上場会社が上場後も継続的に満たすべき基準です。IPO時の一度限りの審査ではなく、株価下落、流動性低下、親会社による保有比率上昇、政策保有株式の固定化、業績悪化、純資産毀損、株主数減少によって未達となる可能性があります。

次の比較表は、上場維持基準で特に確認すべき項目を整理しています。プライム市場では、流通株式時価総額100億円以上と1日平均売買代金0.2億円以上が大きなハードルになり、株式が存在するだけでなく実際に売買される厚みが必要です。

項目プライム市場スタンダード市場差の意味
株主数800人以上400人以上プライムはより分散した投資家基盤を要求します。
流通株式数2万単位以上2,000単位以上プライムはより大きな市場供給量を要求します。
流通株式時価総額100億円以上10億円以上プライムは機関投資家が投資可能な流動性を重視します。
流通株式比率35%以上25%以上プライムは固定株主への偏りをより厳しく見ます。
売買代金・売買高1日平均売買代金0.2億円以上月平均売買高10単位以上プライムは金額ベースの取引厚みを要求します。
純資産純資産の額が正であること同左財政状態の最低基準は両市場共通です。

次の横棒グラフは、主要な維持基準の差をスタンダード市場の水準を基準にして見たものです。倍率や差の大きい項目ほど、資本政策、株主構成、IR施策への影響が大きくなる点を読み取れます。

流通時価
10倍
流通株式数
10倍
株主数
2倍
流通比率
+10pt
スタンダード市場の主な数値を基準に、プライム市場で求められる増加幅を示しています。

市場再編時の経過措置については、2025年3月1日以後に到来する上場維持基準の判定に関する基準日から本来の上場維持基準が適用されるとされています。経過措置下で改善計画により対応していた会社も、未達リスクを定期的にモニタリングし、必要に応じて市場区分変更を含めた選択肢を検討する必要があります。

次の判断の流れは、上場維持基準未達が見えたときに社内で整理すべき順番を表しています。早い段階で定量データ、改善策、開示方針、取締役会審議をつなげることが、上場廃止リスクや取締役責任リスクを抑えるうえで重要です。

上場維持基準未達時の検討順序

基準適合状況を確認

株主数、流通株式、売買代金、純資産を最新データで確認します。

未達または未達リスクを判定

株価や株主構成のシナリオを置き、改善期間入りの可能性を見ます。

改善策と市場区分変更を比較

売出し、政策保有株式縮減、IR強化、スタンダード移行などを比較します。

取締役会で審議し開示へ反映

合理性、株主共同の利益、説明資料、進捗管理を整えます。

次の比較表は、基準未達時に生じる主な法務リスクを表しています。IR上の問題だけでなく、開示、取締役責任、資本政策、支配株主対応、市場区分変更の説明まで一体で管理する必要があります。

リスク内容実務対応
開示リスク改善計画、進捗、重要事実の開示が不十分になるリスク適時開示担当、弁護士、証券会社と開示文案を確認します。
取締役責任リスク取締役会が上場維持方針を検討しない、または合理性のない資本政策を行うリスク議事録、検討資料、専門家意見を整備します。
株主対応リスク株価下落、株主構成変化、アクティビスト対応、説明不足IR方針、面談記録、FAQ、想定問答を準備します。
資本政策リスク流通株式改善のための売出し・第三者割当等が希薄化や利益相反を招くリスク公正性、価格算定、特別委員会、税務確認を行います。
支配株主リスク親会社・創業家の保有比率が流通株式比率を圧迫するリスク支配株主との協議、少数株主保護、独立役員関与を検討します。
市場区分変更リスクスタンダード移行の説明が不十分で企業価値毀損と評価されるリスク取締役会判断過程、移行理由、今後の成長戦略を開示します。
Section 04

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 流通株式と市場流動性

流通株式は、株式が市場で売買しやすい状態にあるかを測る実務上の中心概念です。

流通株式は、一般投資家が市場で売買しやすい株式を把握するための概念です。流通株式時価総額は、流通株式数に事業年度末以前3か月間の売買立会における日々の最終価格の平均値を乗じて算出するとされています。

次の一覧は、流通株式の検討で確認すべき株主類型を表しています。固定的な保有が多いほど流通株式比率や市場評価に影響するため、誰の保有株式がどの基準に影響するかを読み分けることが重要です。

親会社・支配株主

親子上場、少数株主保護、グループ経営方針、完全子会社化の可能性を確認します。

創業者・創業家

経営支配、相続、事業承継、売出し時期、インサイダー情報管理を確認します。

10%以上の大株主

固定的保有か、市場流動性に寄与する保有かを見分ける必要があります。

政策保有株主

事業会社、銀行、保険会社による保有は、安定株主と流動性の双方から検討します。

役員・持株会

役員持株、役員持株会、自己株式、ストックオプションの影響を整理します。

信託・信用取引関連

投資信託、年金信託、信用取引関連株式について、基準上の扱いを確認します。

流通株式比率を上げるには、固定的に保有されている株式を市場に流通させる必要があります。ただし、大株主の売却は、株価への影響、インサイダー情報管理、売出し規制、親会社・子会社関係、少数株主保護、税務、金融機関との関係、取引先との関係に影響します。

注意売買代金基準のためだけに短期的・形式的な取引を誘導する行為は、相場操縦、仮装・馴合い取引、インサイダー取引、風説の流布等の重大リスクがあります。IR施策と不公正取引規制の境界を管理する必要があります。

次の一覧は、売買代金を高めるために検討される正攻法の施策を表しています。短期的な売買誘導ではなく、中長期的な企業価値向上と情報開示の質を高める方向で読むことが重要です。

01

中期経営計画

企業価値向上のための中期経営計画を具体化し、事業の成長性とリスクを説明します。

経営戦略
02

資本収益性の説明

資本コスト、ROE、ROIC、PBR、株主還元、成長投資を一貫して説明します。

資本政策
03

投資家向け情報

決算説明会、個人投資家説明会、海外投資家面談、英文資料を整備します。

IR
04

需給の健全化

流通株式比率を改善し、政策保有株式の縮減や株式売出しを計画的に進めます。

法務確認

スタンダード市場でも流通株式対応は軽視できません。流通株式時価総額10億円以上、流通株式比率25%以上という水準であっても、流通株式が過度に少ない会社では、株価形成の公正性、少数株主保護、買収防衛、支配株主との利益相反、MBO・完全子会社化の公正性が問題になります。

Section 05

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― ガバナンス

両市場ともCGコード全原則の対象ですが、プライム市場ではより高い水準が明示され、投資家期待も強くなります。

プライム市場・スタンダード市場の上場会社は、コーポレートガバナンス・コードの全原則について、実施しないものがある場合に理由を説明することが求められます。差は、コード全原則の対象かどうかではなく、プライム市場向けにより高い水準が明示されている原則が存在することと、投資家からの実務上の期待が高いことにあります。

次の比較表は、プライム市場で特に強く求められるガバナンス項目を整理しています。人数や制度名だけでなく、取締役会が経営陣を実効的に監督し、M&A、事業撤退、政策保有株式、資本政策、支配株主取引を説明できるかが重要です。

項目プライム市場で特に求められる内容スタンダード市場との違い
議決権電子行使少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきとされています。スタンダードは株主構成等を踏まえた対応が中心です。
英文開示必要とされる情報について英語での開示・提供を行うべきとされています。スタンダードにも英語対応は望ましいものの、プライムではより強く求められます。
サステナビリティ・TCFD気候変動リスク・機会についてTCFDまたは同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきとされています。スタンダードは一般的なサステナビリティ開示が中心です。
独立社外取締役少なくとも3分の1以上を選任すべきとされています。その他市場では2名以上が基本水準です。
支配株主を有する会社独立社外取締役を過半数選任、または独立性ある特別委員会を設置すべきとされています。その他市場は3分の1以上または特別委員会が基本水準です。
指名・報酬委員会構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、独立性・権限・役割等を開示すべきとされています。スタンダードでも重要ですが、プライムほど高い水準が明示されます。

独立社外取締役については、人数だけでなく実効性が問われます。次の一覧は、投資家・監査役・外部専門家から確認されやすい観点をまとめたものです。取締役会議事録や委員会資料から、実際の監督機能を読み取れる状態にすることが重要です。

実質的な発言

独立社外取締役が経営陣に質問・提言し、議論が議事録に反映されているかを確認します。

資料提供

取締役会資料が十分な時間的余裕をもって提供され、重要論点を検討できるかを見ます。

指名・報酬

委員会が単なる追認機関になっていないか、後継者計画が議論されているかを確認します。

重要案件への関与

M&A、事業撤退、政策保有株式、資本政策、支配株主取引に関与しているかを見ます。

スキル多様性

女性、国際性、財務会計、法務、技術、DX、サステナビリティなどの多様性を確認します。

特別委員会

利益相反がある局面で、独立性ある特別委員会が十分な権限を持っているかを確認します。

2026年4月10日から2026年5月15日までのパブリックコメント資料では、コーポレートガバナンス・コード改訂案に関する制度要綱、改訂の趣旨、CG報告書の更新に関する資料が示されています。取締役会の役割、成長投資、資本配分、実質的なエクスプレイン、コーポレートセクレタリー機能、株主総会前の有価証券報告書提出などは、次期CG報告書・取締役会運営・投資家対話の準備課題として確認しておく必要があります。

Section 06

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 英文開示とIR

英文開示は翻訳作業ではなく、開示統制、同時性、正確性、投資家対話を含む管理プロセスです。

近年、プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いで特に重要なのが英文開示です。2025年4月以降のプライム市場の英文開示では、決算短信・四半期決算短信、通期・四半期の決算補足説明資料などが対象とされています。ただし、全書類・全文の英語開示を求めるものではなく、日本語開示の一部または概要の開示で足りると説明されています。

適時開示情報についても、一律の範囲ではなく、海外投資家が事案の概要を把握するに足りる情報を英語で開示し、詳細は日本語開示を参照する方法が考えられます。ただし、1つの日本語資料に複数の開示項目が含まれる場合、英文資料でも同様に複数項目の内容を記載する必要があり、一部項目だけを英文開示することは認められないとされています。

次の比較表は、英文開示を開示統制として管理するための主要領域を表しています。翻訳の有無だけでなく、同時性、範囲、正確性、一貫性、責任分担を読むことで、開示漏れや誤訳リスクを下げられます。

統制領域問題必要な体制
タイミング日本語と英語の同時性をどう確保するか決算スケジュール、翻訳会社、IR、経理、法務のワークフローを設計します。
範囲全文か概要か、どの項目を英訳するか開示方針、海外投資家ニーズ、FAQ確認を行います。
正確性誤訳、会計用語の不一致、将来見通し表現の誤解用語集、レビュー体制、専門翻訳、英文レビューを整えます。
一貫性過去開示、決算説明資料、有価証券報告書との不整合開示データベース、社内承認、IRナレッジ管理を行います。
責任誤訳が投資判断に影響した場合の責任訂正開示の手順、法務確認、危機管理対応を整備します。

スタンダード市場にはプライム市場と同じ英文開示義務が一律に課されるわけではありません。それでも、海外売上比率が高い会社、外国人株主比率が高い会社、海外M&Aや海外資金調達を検討している会社、グローバル競合と比較される会社、将来プライム市場への市場区分変更を目指す会社では、英文開示を戦略的手段として検討する必要があります。

Section 07

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 資本コストと株価

資本コストや株価を意識した経営の要請は、プライム市場だけでなくスタンダード市場にも及びます。

東証は2023年3月31日、プライム市場およびスタンダード市場の全上場会社を対象として、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しました。自社の資本コストや資本収益性を把握し、市場評価について取締役会で分析・評価し、改善に向けた計画を策定・開示し、投資者との対話の中で取組みを更新する一連の対応が想定されています。

次の一覧は、同じ要請を受ける場合でもプライム市場で説明水準が高まりやすい理由を表しています。機関投資家、海外投資家、議決権行使助言会社からの評価に直結しやすい点を読み取る必要があります。

Investor

機関投資家の関心

保有比率や関心が高く、ROE、PBR、政策保有株式、株主還元への質問が深くなりやすいです。

Global

海外投資家の評価

英文開示を通じて海外投資家に直接評価され、情報格差や説明不足が投資対象としての不透明性につながります。

Governance

議決権行使基準

議決権行使助言会社の基準、エンゲージメント投資家、アクティビストの視点が影響しやすくなります。

次の比較表は、資本コスト対応に法務担当者が関与すべき論点を整理しています。CFOやIRだけでなく、将来見通し、会社法上の分配可能額、インサイダー情報、フェア・ディスクロージャー、役員報酬開示まで横断して読むことが重要です。

論点法務上の確認事項
中期経営計画将来見通し、重要な前提、リスク記載、虚偽表示リスクを確認します。
株主還元配当方針、自己株式取得、会社法上の分配可能額、インサイダー規制を確認します。
政策保有株式保有合理性、売却方針、取引先との関係、独禁法・下請法上の優越的地位濫用リスクを確認します。
事業ポートフォリオ事業譲渡、会社分割、M&A、撤退、従業員対応、税務を確認します。
役員報酬業績連動報酬、株式報酬、報酬委員会、開示を確認します。
投資家対話フェア・ディスクロージャー、インサイダー情報管理、面談記録を整備します。
開示アップデート過去開示との整合性、進捗未達時の説明、適時開示要否を確認します。

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いは、資本コスト対応でも、対象かどうかではなく、どの深さで、どの速度で、どの言語で、誰に説明するかに現れます。

Section 08

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違い ― 市場区分変更の判断

市場区分変更の審査は新規上場審査と同様の基準で行われ、取締役会の説明可能性が問われます。

スタンダード市場、プライム市場、グロース市場との間における市場区分変更の審査は、新規上場審査と同様の基準で行われると説明されています。たとえばスタンダード市場からプライム市場へ移行する場合、スタンダードで上場していることだけで簡易に移れるわけではなく、プライム市場の新規上場基準に相当する水準を満たす必要があります。

次の比較表は、プライム維持とスタンダード移行を検討する際の効果と負担を表しています。どちらが優れているかを一律に決めるのではなく、自社の株主構成、IR体制、海外投資家比率、成長戦略に照らして読み分けることが重要です。

検討項目プライム維持の効果プライム維持の負担
資本市場評価機関投資家の投資対象になりやすいです。高い流動性・売買代金基準を維持する必要があります。
ガバナンス高水準のガバナンス企業として評価される場合があります。独立社外取締役、委員会、CG報告書の高度化が必要です。
IR海外投資家アクセスが広がります。英文開示、同時開示、投資家面談の負担があります。
採用・信用ブランド・信用力に寄与する場合があります。維持できない場合の信用低下リスクがあります。
資本政策公募増資・売出し等の選択肢が広がります。株主構成調整、希薄化、株価影響の管理が必要です。

次の判断の流れは、市場区分を選ぶ際に取締役会で整理すべき順番を表しています。最初に数値と体制を把握し、選択肢、専門家意見、独立社外取締役の関与、開示、移行後フォローまでつなげることで、後日の説明可能性を高められます。

市場区分を選ぶ判断の流れ

現状分析

上場維持基準、株主構成、売買代金、株価、IR体制、英文開示体制を確認します。

選択肢整理

プライム維持、スタンダード移行、資本政策、M&A、非公開化等を比較します。

専門家意見と取締役会審議

証券会社、弁護士、公認会計士、税理士、信託銀行、IR専門家の意見と定量資料を確認します。

開示と事後フォロー

市場区分変更の理由、今後の方針、株主への影響、移行後の取組みを説明します。

スタンダード市場への移行は、必ずしも後退ではありません。ただし、なぜスタンダード市場が自社に適しているのか、上場会社としてのガバナンス・開示水準を維持する意思があるか、株主還元・成長投資・資本コスト対応を継続するか、機関投資家との対話をどの程度続けるかを丁寧に説明する必要があります。

Section 09

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いを場面別に確認する

IPO準備、既上場会社、支配株主、不祥事対応では見るべき論点が変わります。

次の比較表は、IPO準備企業が市場選択を検討するときの主な違いを表しています。資本政策、株主構成、ガバナンス、IR、コストの各列から、上場準備の初期段階でどちらの市場を前提に設計するかを読み取ることが重要です。

項目プライム志向スタンダード志向
資本政策流通株式時価総額100億円、比率35%を前提に設計します。流通株式時価総額10億円、比率25%を前提に設計します。
株主構成創業者・VC・親会社の持分調整が大きな課題になります。固定株主が残っても設計可能性が高くなります。
ガバナンス独立社外取締役、委員会、英文開示を早期整備します。基本的ガバナンスと内部管理体制を着実に整備します。
IR海外投資家対応を見据えます。国内投資家中心に段階的整備を行います。
コスト監査、法務、IR、翻訳、取締役会運営の負担が大きくなります。相対的に現実的なコスト設計が可能です。

次の一覧は、既上場会社や支配株主を有する会社、不祥事対応で確認すべき項目を場面別にまとめたものです。どの市場にいるかだけでなく、株主構成、投資家層、危機時の情報発信まで一体で確認する必要があります。

P

プライム市場企業

流通株式時価総額100億円、1日平均売買代金0.2億円、比率35%、英文開示、独立社外取締役3分の1以上、TCFD等、資本コスト開示の更新を確認します。

維持基準
S

スタンダード市場企業

流通株式時価総額10億円、比率25%、株主数400人、月平均売買高10単位、CGコード全原則、資本コスト対応、少数株主保護を確認します。

基本体制
C

親会社・支配株主を有する会社

親会社との取引条件、役員派遣、完全子会社化・MBO事業譲渡・会社分割、競業取引、機会流用、情報遮断、特別委員会の権限を確認します。

利益相反
R

不祥事・危機対応

初動調査、証拠保全、適時開示、調査委員会、デジタルフォレンジック、監査法人・当局・取引所対応、再発防止策、役員責任、英文危機開示を確認します。

危機管理
Section 10

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いに関するよくある誤解

法律上の基本枠組み、ガバナンス、流通株式、英文開示の理解を整理します。

プライム市場の方が法律上の義務がすべて重いのですか

一般的には、会社法、金融商品取引法、会計監査、内部統制、適時開示、インサイダー取引規制などの基本的枠組みは、プライム市場・スタンダード市場を問わず上場会社に広く適用されるとされています。違いは、市場区分ごとの上場基準・維持基準、CGコード上のプライム向け高水準原則、英文開示、投資家期待の程度にあります。具体的な対応は、会社の状況と最新の規則を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

スタンダード市場ならガバナンス対応は簡単でよいのですか

一般的には、スタンダード市場もCGコード全原則についてコンプライ・オア・エクスプレインの対象であり、資本コストや株価を意識した経営の要請も対象になるとされています。企業規模や株主構成によって必要な体制は変わるため、取締役会、独立役員、内部統制、開示、株主対話、少数株主保護を軽視しないことが重要です。具体的な体制設計は専門家へ相談する必要があります。

流通株式比率を満たせば十分ですか

一般的には、流通株式比率だけでなく、流通株式時価総額、株主数、売買代金・売買高も重要とされています。特にプライム市場では、株価下落により流通株式時価総額が不足する可能性があり、売買代金基準も独立して問題になります。個別会社の適合状況は、基準日、株価、株主構成、売買状況によって変わります。

プライム市場を維持することが常に株主利益に合致しますか

一般的には、プライム市場維持には英文開示、IR、ガバナンス、流動性維持、資本政策のコストが伴います。企業規模や事業特性によっては、スタンダード市場で上場を維持し、現実的なコストで企業価値向上に集中する方が株主共同の利益に合致すると説明される可能性もあります。取締役会は、合理的な資料に基づき、株主に対して説明可能な判断を行う必要があります。

英文開示は翻訳会社に任せれば足りますか

一般的には、英文開示は翻訳作業だけでなく、開示統制、インサイダー情報管理、会計用語、将来見通し、訂正開示、海外投資家対話を含む法務・IR・経理の総合プロセスとされています。翻訳会社は重要なパートナーですが、会社としてレビュー体制、用語統一、承認手続、訂正時の対応を整える必要があります。

Section 11

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いを支える専門職の分担

法務部だけで完結せず、経営、財務、IR、会計、税務、内部監査、総務、海外部門が連携します。

次の比較表は、要求水準の違いに対応するための専門職・担当者の主な役割を表しています。市場区分の判断は単一部署の作業ではなく、法令、取引所規則、投資家期待、経営戦略、株主利益をつなぐリーガルオペレーションとして読むことが重要です。

専門職・担当者主な役割
弁護士・企業内弁護士上場規則、適時開示、会社法、取締役責任、M&A、利益相反、英文開示リスクを確認します。
外部弁護士市場区分変更、資本政策、第三者割当、売出し、支配株主取引、不祥事対応、特別委員会を支援します。
商事法務担当株主総会、取締役会、CG報告書、招集通知、議事録、役員選任、定款・規程整備を担当します。
司法書士役員変更、増資、株式分割、自己株式、組織再編等の登記実務を担います。
公認会計士・監査法人監査、内部統制、利益・純資産、会計処理、開示書類の信頼性を確認します。
税理士株式売却、資本政策、組織再編、配当、自己株式、親子会社取引の税務を確認します。
IR担当投資家対話、決算説明、英文資料、資本コスト開示、面談記録を担当します。
内部監査担当内部管理体制、J-SOX、業務統制、コンプライアンス監査を担います。
コンプライアンス担当反社、贈収賄、通報制度、教育、不祥事予防を担当します。
取締役会事務局取締役会資料、議事録、独立社外取締役支援、委員会運営を担います。
CFO・経営企画資本コスト、資本政策、株主還元、事業ポートフォリオ、成長投資を設計します。
翻訳者・英文開示担当英文開示、用語統一、同時開示、海外投資家向け表現確認を担います。
Section 12

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いを確認する実務チェックリスト

維持基準、ガバナンス、開示、市場区分変更の検討漏れを防ぐための確認項目です。

次の一覧は、プライム市場維持、スタンダード市場維持、市場区分変更を検討するときの確認項目です。数値基準と体制面を同じ一覧で確認することで、取締役会資料や改善計画の抜け漏れを防げます。

P

プライム市場維持

株主数800人以上、流通株式数2万単位以上、流通株式時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上、1日平均売買代金0.2億円以上、純資産が正であることを確認します。

数値基準
G

プライム市場の体制

独立社外取締役3分の1以上、指名・報酬委員会の独立性、英文開示、TCFD等、資本コスト開示、投資家対話の取締役会報告、支配株主対応を確認します。

統治・開示
S

スタンダード市場維持

株主数400人以上、流通株式数2,000単位以上、流通株式時価総額10億円以上、流通株式比率25%以上、月平均売買高10単位以上、純資産が正であることを確認します。

数値基準
C

スタンダード市場の体制

CGコード全原則の実質的な説明、資本コスト対応、独立社外取締役、委員会、内部統制、親会社・創業家・大株主との取引管理、将来のプライム移行ロードマップを確認します。

統治・開示
M

市場区分変更

現在の基準適合状況、次年度以降の株価・流動性・株主構成シナリオ、プライム維持コスト、スタンダード移行のメリット・デメリット、専門家意見を確認します。

判断資料
D

開示と説明

取締役会審議、独立社外取締役の意見、開示文案、想定問答、株主説明資料、移行後のIR・ガバナンス方針を確認します。

説明責任
Section 13

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いの本質

違いの本質は、資本市場に対して引き受ける説明責任の厚みにあります。

プライム市場とスタンダード市場の要求水準の違いは、数値基準としては明確です。プライム市場は、株主数、流通株式数、流通株式時価総額、流通株式比率、時価総額、純資産、利益・売上、売買代金の各面で、スタンダード市場より高い基準を求めます。

しかし、企業法務の実務における本質は、数値の差だけではありません。プライム市場は、機関投資家・海外投資家との対話を前提に、英文開示、サステナビリティ、独立社外取締役、指名・報酬委員会、支配株主対応、資本コスト、株価、事業ポートフォリオについて、より厚い説明責任を求める市場です。

一方、スタンダード市場は、プライム市場より要求水準が低いものの、上場会社としての基本的なガバナンス、開示、内部統制、資本コスト対応、少数株主保護を免れる市場ではありません。企業規模や事業特性に応じて、現実的かつ持続可能な上場会社体制を構築するための市場です。

次の重要ポイントは、市場選択を取締役会で議論するときに確認すべき問いをまとめたものです。株主構成、流動性、取締役会の監督機能、英文開示、資本コスト対応、株主共同の利益、後日の説明可能性を一体で確認してください。

市場区分は「上場ランク」ではなく説明責任の選択です

企業法務の役割は、市場区分の選択を、法令・取引所規則・投資家期待・経営戦略・株主利益の交点で、説明可能な意思決定に落とし込むことです。

Reference

参考資料

東証・JPXの公式情報を中心に、制度理解に必要な資料名を整理しています。

市場区分・上場基準

  • 日本取引所グループ「市場区分見直しの概要」
  • 日本取引所グループ「3-1.上場会社とは①~上場審査とは」
  • 日本取引所グループ「上場審査基準概要(プライム市場)」
  • 日本取引所グループ「上場審査基準概要(スタンダード市場)」
  • 日本取引所グループ「市場区分の変更基本情報 ― 審査基準」

上場維持基準

  • 日本取引所グループ「上場維持基準(プライム市場)」
  • 日本取引所グループ「上場維持基準(スタンダード市場)」
  • 日本取引所グループ「上場維持基準の詳細 ― 株主数」
  • 日本取引所グループ「上場維持基準の詳細 ― 流通株式」
  • 日本取引所グループ「上場維持基準の詳細 ― 売買代金/売買高」
  • 日本取引所グループ「上場維持基準の詳細 ― 純資産の額」
  • 日本取引所グループ「上場維持基準に関する経過措置の終了」

ガバナンス・開示

  • 日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンス・コード」
  • 日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」
  • 日本取引所グループ 上場会社向けナビゲーションシステム「プライム市場の英文開示(2025年4月以降) ― 決算情報の対象書類」
  • 日本取引所グループ 上場会社向けナビゲーションシステム「プライム市場の英文開示(2025年4月以降) ― 適時開示情報の英文開示範囲」
  • 日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(プライム・スタンダード市場)」
  • 日本取引所グループ「コーポレートガバナンス・コードの改訂について(パブリック・コメント)」