2σ Guide

取得請求権付株式と
取得条項付株式の違い

株主が動かす取得請求権付株式と、会社が一定事由で動かす取得条項付株式を、会社法、定款、同意、分配可能額、登記、税務・会計、資本政策の実務から整理します。

2制度 株主主導と会社主導
全員同意 後付け条項の重要論点
2週間前 取得日通知の目安
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取得請求権付株式と 取得条項付株式の違い

まず、主導権の違いと実務上の読み方を確認します。

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取得請求権付株式と 取得条項付株式の違い
まず、主導権の違いと実務上の読み方を確認します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 取得請求権付株式と 取得条項付株式の違い
  • まず、主導権の違いと実務上の読み方を確認します。

POINT 1

  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の違いの全体像
  • まず、主導権の違いと実務上の読み方を確認します。
  • 株主主導か会社主導かが最短の見分け方
  • 前者は株主側の出口権や転換請求権に近く、後者は会社側の強制取得や自動転換の仕組みに近い制度です。
  • 次の重要ポイントは、両制度の入口で最初に確認するべき主導権を示しています。

POINT 2

  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の違いを比較表で整理
  • 発動主体、対価、手続、後付けの難しさを横並びで確認します。
  • 左右の列を比べることで、どちらが株主の選択権に近く、どちらが会社主導の整理手段に近いかを読み取れます。
  • 比較表のうち、とくに重要なのは発動主体、後付けの難易度、財源リスクです。

POINT 3

  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の会社法上の位置づけ
  • 1. 対象株式を確認:取得請求権付株式か、取得条項付株式か、または両方の内容を持つかを確認します。
  • 2. 取得の起点を確認:株主の請求か、取得事由の発生か、会社が別に定める日かを確認します。
  • 3. 対価の内容を確認:金銭か、他の種類株式か、社債や新株予約権かを確認します。
  • 4. 実質的な転換:株主から見て株式の種類が切り替わったように見えます。
  • 5. 財源規制を確認:分配可能額や資金繰りの確認が中心になります。

POINT 4

  • 取得請求権付株式は株主が取得を請求できる株式
  • 請求期間
  • 開始日、終了日、期間経過後の扱いが曖昧だと、請求の有効性が争われやすくなります。
  • 対価算定
  • 固定額、純資産価額、直近ラウンド価格、第三者評価など、算定方法を一義的に定める必要があります。

POINT 5

  • 取得条項付株式は会社が一定事由で取得できる株式
  • 1. 取得事由の発生を確認:定款上の事由が客観的に発生したか、誰がどの資料で確認するかを整理します。
  • 2. 取得日または決定機関を確認:会社が別に定める日を取得事由とする場合は、株主総会や取締役会などの決議を確認します。
  • 3. 対象株式と対価を確定:一部取得の対象決定方法、対価の種類、算定式、分配可能額を確認します。
  • 4. 通知・公告を実施:株主と登録株式質権者に対する通知、公告代替の可否、期限遵守を確認します。

POINT 6

  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の違いを10観点で確認
  • 主導権だけでなく、契約、登記、税務、会計、紛争リスクまで確認します。
  • 各行は、同じ制度名の比較でも、何を重視するかによって検討資料や関与専門家が変わることを示しています。
  • 制度選択の前に、主導権、財源、後付け、紛争時の説明可能性を並べて検討することが重要です。

POINT 7

  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の分配可能額と財源規制
  • 金銭対価では、会社法上の財源規制が実効性を左右します。
  • 金銭対価の実効性は分配可能額に依存する
  • 会社が自己株式を取得すると、株主に会社財産が流出します。
  • 特に金銭対価の場合、会社債権者から見ると会社財産が減少するため、会社法は分配可能額による規制を置いています。

POINT 8

  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の定款変更・同意・種類株主総会
  • 1. 株式の設計単位を確認:全部の株式の内容か、特定の種類株式の内容かを確認します。
  • 2. 取得請求権か取得条項かを確認:株主の権利付与か、会社の強制取得権限かで手続の重さが変わります。
  • 3. 全員同意を確認:全株主または当該種類株主全員の同意が必要になる場面があります。
  • 4. 特別決議などを確認:定款変更の特別決議を中心に、種類株主総会の要否を検討します。

まとめ

  • 取得請求権付株式と 取得条項付株式の違い
  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の違いの全体像:まず、主導権の違いと実務上の読み方を確認します。
  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の違いを比較表で整理:発動主体、対価、手続、後付けの難しさを横並びで確認します。
  • 取得請求権付株式と取得条項付株式の会社法上の位置づけ:株式の内容として定款に置かれる制度であり、契約だけでは完結しません。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いの全体像

まず、主導権の違いと実務上の読み方を確認します。

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いは、企業法務、商事法務、事業承継、M&A、資金調達、税務・会計、登記の各実務で繰り返し問題になります。制度名は似ていますが、発動する主体、定款に書くべき内容、既発行株式へ後から付ける難易度、財源規制、紛争リスクは大きく異なります。

結論は、取得請求権付株式は株主が会社に取得を請求できる株式であり、取得条項付株式は会社が一定事由の発生により取得できる株式である、という点にあります。前者は株主側の出口権や転換請求権に近く、後者は会社側の強制取得や自動転換の仕組みに近い制度です。

次の重要ポイントは、両制度の入口で最初に確認するべき主導権を示しています。主導権がどちらにあるかは、株主保護、資本政策、同意取得、手続設計の方向を決めるため、最初に読み取るべき軸です。

株主主導か会社主導かが最短の見分け方

取得請求権付株式は株主の請求から始まり、取得条項付株式は定款上の一定事由や会社側の決定から始まります。この違いが、定款文言、同意要件、財源計画、紛争予防のすべてに影響します。

ただし、いずれも単なる契約上の売買予約やオプションではありません。株式の内容として定款に定められる会社法上の制度であり、会社法上の手続、種類株主総会、登記、分配可能額、税務・会計、投資契約や株主間契約との整合を一体で確認する必要があります。

注意このページは一般的な制度説明です。個別案件では、定款、株主構成、既発行株式、種類株主総会、登記、税務、会計、金融商品取引法、投資契約、株主間契約によって結論が変わる可能性があります。
Section 01

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いを比較表で整理

発動主体、対価、手続、後付けの難しさを横並びで確認します。

次の比較表は、取得請求権付株式と取得条項付株式の実務上の違いを項目ごとに並べたものです。左右の列を比べることで、どちらが株主の選択権に近く、どちらが会社主導の整理手段に近いかを読み取れます。

比較項目取得請求権付株式取得条項付株式
発動主体株主が会社に取得を請求する会社、または定款で定めた事由の発生が起点になる
法的イメージ株主のプット権、転換請求権会社のコール権、自動取得、強制転換条項
株主から見た意味出口、換金、転換の権利を持てる一定事由で株式を失う可能性を受け入れる
会社から見た意味投資家に柔軟な権利を与え、出資を受けやすくする資本構成、支配関係、種類株式を会社主導で整理する
定款で定める中心事項請求できる旨、対価、請求期間取得事由、取得日、部分取得の方法、対価
効力発生原則として請求の日に会社が取得する原則として取得事由発生日などに会社が取得する
既発行株式への後付け定款変更の特別決議を中心に、種類株主総会などを検討する全株主または当該種類株主全員の同意が必要となる場面がある
典型用途投資家保護、優先株式の普通株式化、出口権自動転換、事業承継、株式回収、支配権調整
主なリスク会社に資金がないと買戻しが機能しにくい強制取得のため、文言・同意・通知を誤ると紛争化しやすい
登記発行する株式の内容または種類株式の内容として登記対象発行する株式の内容または種類株式の内容として登記対象

比較表のうち、とくに重要なのは発動主体、後付けの難易度、財源リスクです。取得請求権付株式は株主の選択権をどう設計するか、取得条項付株式は会社の取得権限をどこまで明確かつ公正に設計するかが中心になります。

Section 03

取得請求権付株式は株主が取得を請求できる株式

定款事項、効力発生日、典型用途、注意点を整理します。

取得請求権付株式とは、株主が株式会社に対し、自分の有する株式を取得するよう請求できる内容を持つ株式です。会社法166条は、取得請求権付株式の株主が会社に対して当該株式の取得を請求できることを定めています。

次の表は、取得請求権付株式で定款に落とすべき事項と、実務上の確認点を並べたものです。列ごとに、条項として定める内容と、その条項が実際の請求や登記でどのように効くかを読み取ることが重要です。

定款事項実務上の確認点
株主が取得を請求できる旨誰が、どの株式について、どの単位で請求できるかを明確にします。
取得対価の内容・数・額・算定方法金銭、社債、新株予約権、他の種類株式などの対価を一義的に定めます。
取得請求できる期間いつからいつまで請求できるか、期間経過後の扱いを明確にします。
他の株式を対価にする場合の種類・数普通株式化などを予定する場合、転換比率や端数処理が重要になります。
請求手続と必要書類請求書面、通知先、株券発行会社での株券提出などを確認します。

会社法167条1項は、会社が取得請求の日に、その請求に係る取得請求権付株式を取得すると定めています。会社があらためて承諾することが取得の効力発生要件になるわけではない点が実務上重要です。

取得請求権付株式の典型用途は、投資家に一定の出口を与えること、優先株式を普通株式へ転換すること、将来の資金調達やIPOに備えて株式の種類を整理すること、少数株主や投資家に一定条件下の流動性を与えることです。

次の注意点一覧は、取得請求権付株式で紛争や設計不備につながりやすい項目をまとめています。どの項目も、請求があったときに会社が迷わず処理できるか、株主が対価を予測できるかを読み取るために重要です。

請求期間

開始日、終了日、期間経過後の扱いが曖昧だと、請求の有効性が争われやすくなります。

対価算定

固定額、純資産価額、直近ラウンド価格、第三者評価など、算定方法を一義的に定める必要があります。

分配可能額

金銭対価では会社に財源がなければ実効性が制限され、投資家の期待とずれる可能性があります。

契約との整合

投資契約や株主間契約の行使条件、転換比率、反希薄化条項と定款の整合が重要です。

Section 04

取得条項付株式は会社が一定事由で取得できる株式

取得事由、取得日、通知、強制取得のリスクを確認します。

取得条項付株式とは、一定の事由が生じたことを条件として、株式会社が当該株式を取得できる内容を持つ株式です。会社法107条1項3号および108条1項6号は、会社が一定事由の発生を条件として株式を取得できる内容を定めることを認めています。

次の表は、取得条項付株式で定款に定めるべき事項と、その事項が実務でどの場面に効くかを示しています。取得条項は株主の意思に反して株式を失わせる可能性があるため、事由・日付・対象・対価の読み取りが特に重要です。

定款事項実務上の確認点
取得事由IPO、M&A、退職、死亡、一定期日、会社が別に定める日などを客観的に定めます。
会社が別に定める日の到来株主総会、取締役会、定款の別段の定めなど、決定機関を確認します。
一部取得の有無と決定方法一部だけ取得する場合、対象株式をどう選ぶかの公正性が問題になります。
取得対価金銭、他の種類株式、新株予約権などの内容と算定方法を明確にします。
通知・公告取得日の2週間前通知や、一部取得時の直ちに通知を手続に組み込みます。

次の時系列は、取得条項付株式の発動場面で確認する順番を示しています。時期や順番を誤ると、取得の効力、株主への説明、登記、後日のM&A審査に影響するため、取得事由から通知までを一続きで読み取ることが重要です。

Step 1

取得事由の発生を確認

定款上の事由が客観的に発生したか、誰がどの資料で確認するかを整理します。

Step 2

取得日または決定機関を確認

会社が別に定める日を取得事由とする場合は、株主総会や取締役会などの決議を確認します。

Step 3

対象株式と対価を確定

一部取得の対象決定方法、対価の種類、算定式、分配可能額を確認します。

Step 4

通知・公告を実施

株主と登録株式質権者に対する通知、公告代替の可否、期限遵守を確認します。

取得条項付株式は、IPO時の優先株式の普通株式化、M&A時の資本整理、事業承継での議決権調整、退職・死亡・競業・契約違反時の株式回収などで用いられます。便利な一方、少数株主や投資家に不利益を与える可能性があるため、導入時の説明資料、議事録、同意書、投資契約、株主間契約まで一貫させる必要があります。

次の注意点一覧は、取得条項付株式で強制取得性が問題化しやすい項目をまとめています。各項目から、会社が一方的に処理してよい制度ではなく、定款・同意・通知・対価の公正性が実務の中心であることを読み取れます。

取得事由

抽象的な事由だけでは恣意的運用が疑われやすく、客観的な発生日を定める必要があります。

全員同意

既発行株式へ後から取得条項を付ける場合、全株主または当該種類株主全員の同意が必要になる場面があります。

通知期限

取得日の2週間前通知や、一部取得時の直ちに通知を忘れると、効力や紛争予防に影響します。

対価の相当性

低すぎる対価や不明確な算定式は、株主平等、取締役責任、契約違反の争点になり得ます。

Section 05

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いを10観点で確認

主導権だけでなく、契約、登記、税務、会計、紛争リスクまで確認します。

次の比較表は、両制度の違いを10の実務観点に分けて整理したものです。各行は、同じ制度名の比較でも、何を重視するかによって検討資料や関与専門家が変わることを示しています。

観点取得請求権付株式取得条項付株式
主導権株主が取得を発動する会社側の設計または取得事由が発動の起点になる
株主保護流動性や選択権を与える方向取得事由、対価、手続、通知、同意の適正性が中心
定款文言いつ、誰が、どの株式について、どのように請求できるかどの事由で、どの株式を、どの対価で取得するか
後付け特別決議と種類株主総会の要否を検討する全員同意が必要となる場面があり、実現難度が高い
財源金銭対価では請求時に資金流出が起こり得る取得日や取得事由を設計しやすいが、財源規制は残る
投資契約転換権、償還請求、反希薄化条項と連動しやすい強制転換、上場時転換、M&A時整理と連動しやすい
登記発行する株式の内容または各種類の株式の内容として登記同じく登記対象で、取得事由や対価の明確性が重要
税務譲渡所得、取得価額、課税繰延べ、みなし配当が問題になる取得事由発生時の対価や株式交付の税務処理を確認する
会計金銭償還に近い性質があると資本性・負債性が問題になる将来キャッシュアウトや財務制限条項への影響を確認する
紛争請求期間、請求書面、対価、分配可能額が争点になりやすい取得事由、対象決定、通知、対価、少数株主保護が争点になりやすい

この10観点を通じて見ると、取得請求権付株式は投資家や株主への権利付与として、取得条項付株式は会社主導の資本整理として機能しやすいことが分かります。制度選択の前に、主導権、財源、後付け、紛争時の説明可能性を並べて検討することが重要です。

Section 06

取得請求権付株式と取得条項付株式の分配可能額と財源規制

金銭対価では、会社法上の財源規制が実効性を左右します。

会社が自己株式を取得すると、株主に会社財産が流出します。特に金銭対価の場合、会社債権者から見ると会社財産が減少するため、会社法は分配可能額による規制を置いています。

次の重要ポイントは、財源規制が両制度に共通して作用することを示しています。対価が金銭等である場合、権利や取得事由を定款で定めるだけでは足りず、会社に分配可能額があるかを読み取る必要があります。

金銭対価の実効性は分配可能額に依存する

取得請求権付株式では請求の日、取得条項付株式では取得事由発生日における分配可能額が問題になります。財源が不足すると、予定した買戻しや取得が実現しない可能性があります。

次の比較表は、分配可能額がどの時点で問題になるかを示しています。どの列も、権利の有無と実際に資金を回収できる可能性を分けて読むために重要です。

制度財源規制が問題になる時点実務上の意味
取得請求権付株式請求の日株主が請求しても、金銭等の帳簿価額が分配可能額を超えると取得できない可能性があります。
取得条項付株式取得事由発生日会社が取得条項を発動したくても、金銭等の対価では財源不足が制約になります。
株式対価の転換設計現金流出がない設計になりやすい優先株式を普通株式へ整理する場面では、資金流出を伴わない設計として検討されます。
欠損発生時の責任取得後の財務状態取得請求権付株式や取得条項付株式の取得を含む一定行為により欠損が生じる場合、責任規定を確認します。

分配可能額を踏まえると、現金買戻しを予定する取得請求権付株式は、会社の財務状態が悪いほど実効性が落ちます。取得条項付株式で金銭対価を予定する場合も、取得事由発生日に財源が不足しないよう、利益計画、配当政策、自己株式保有、資本剰余金の状況を事前に確認する必要があります。

Section 08

取得請求権付株式と取得条項付株式の登記実務

定款文言、議事録、同意書、登記申請の整合が重要です。

取得請求権付株式・取得条項付株式は、発行する株式の内容または発行する各種類の株式の内容として登記されます。会社法911条3項7号は、株式会社の設立登記において、発行する株式の内容、種類株式発行会社では発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容を登記事項としています。

次の時系列は、定款設計から変更登記までの確認順序を示しています。登記では文言の明確性と添付書類の整合が問われるため、どの資料がどの段階で必要になるかを読み取ることが重要です。

Design

定款条項と発行要項を作る

取得事由、請求期間、対価、算定式、端数処理を登記可能な程度に明確にします。

Approval

決議・同意書を整える

株主総会議事録、種類株主総会議事録、全員同意書の要否と内容を確認します。

Filing

変更登記を申請する

変更日、登記原因、登録免許税、添付書類、申請順序を確認します。

Update

株主名簿と資本政策表へ反映する

登記記録だけでなく、株主名簿、資本政策表、投資契約管理にも反映します。

登記申請で問題になりやすい事項は、定款の条項と登記すべき事項の一致、取得対価の明確性、取得請求期間または取得事由の明確性、発行可能種類株式総数、議事録・同意書、変更日、自己株式取得や消却を含む申請順序です。

実務では、弁護士が制度設計や紛争リスクを検討し、司法書士が登記原因、登記すべき事項、添付書類、申請順序を確認し、税理士・公認会計士が税務・会計影響を確認する体制が望ましいとされています。

Section 09

取得請求権付株式と取得条項付株式の対価設計

金銭、他の種類株式、社債・新株予約権、無対価設計の注意点を整理します。

対価設計は、両制度の経済的効果を決める中心です。金銭対価は分かりやすい一方で、分配可能額、資金繰り、税務の問題が大きくなります。他の種類株式を対価にする場合は、転換比率、反希薄化調整、端数処理、発行可能種類株式総数の確認が重要です。

次の比較表は、対価の種類ごとに実務で確認すべき点を整理したものです。どの対価を選ぶかによって、会社の資金流出、株主の課税関係、登記事項、会計上の評価が変わることを読み取れます。

対価使われる場面主な確認点
金銭出口権、買戻し、株式回収1株あたり価額、算定基準日、上限額、支払期限、分配可能額、みなし配当、源泉徴収を確認します。
他の種類株式優先株式の普通株式化、資本政策上の整理種類、数、算定方法、転換比率、端数処理、発行可能種類株式総数を確認します。
社債・新株予約権株式を債権的権利や将来の株式取得権に置き換える設計発行手続、会計処理、金融商品取引法、税務、投資契約との整合を確認します。
無対価取得退職・競業・重大違反時などに検討されることがある設計株主平等、対価相当性、説明、同意の有効性、税務上の寄附・贈与、取締役責任を慎重に確認します。

次の注意点一覧は、対価設計で見落とされやすい項目をまとめています。いずれも、定款に書けるかだけでなく、発動時に株主・会社・税務・会計が同じ理解に立てるかを読み取るために重要です。

算定式の明確性

公正な価格という抽象表現だけでは、誰がいつどの基準で決めるかが争点になりやすくなります。

端数処理

株式対価では端数株式や端数金銭の扱いを定款・発行要項に落とす必要があります。

税務・会計

会社法上有効でも、みなし配当、譲渡所得、給与課税、資本性・負債性で問題が生じることがあります。

契約の一致

投資契約の強制転換や償還請求と、定款上の取得請求権・取得条項が一致しているかを確認します。

Section 10

取得請求権付株式と取得条項付株式の実務シナリオ別使い分け

ベンチャー投資、事業承継、M&A、役職員株式、同族会社での使い方を確認します。

次の一覧は、実務シナリオごとに両制度がどのように使い分けられるかを整理しています。場面ごとに重視する目的が異なるため、出口を与えるのか、会社主導で整理するのかを読み取ることが重要です。

ベンチャー投資

取得請求権付株式は投資家の普通株式転換や投資回収の権利として、取得条項付株式はIPOや資本政策イベント時の自動転換として使われます。

投資契約転換比率

事業承継

取得請求権付株式は非後継者への換金機会として、取得条項付株式は議決権の集中や後継者選定後の株式整理として検討されます。

議決権相続税

M&A

取得請求権付株式は転換・換金の選択肢として、取得条項付株式は買収や組織再編を取得事由にした資本整理として使われます。

クロージング前提条件

役職員向け株式

退職、競業、死亡、譲渡制限違反などを取得事由として会社が株式を回収する設計が検討されますが、労働法と税務の確認が欠かせません。

退職給与課税

ファミリー企業・同族会社

非経営株主への換金可能性や、相続・死亡・経営不参加時の株式回収を設計する場面で問題になります。

株式分散遺留分

各シナリオでは、定款だけで完結せず、株主間契約、投資契約、遺言、信託、M&A契約、労働契約、税務評価、資本政策表との整合が問題になります。法的に有効な条項でも、説明不足や不公平感があると後日の紛争につながります。

Section 11

取得請求権付株式と取得条項付株式の定款条項チェックポイント

導入前に確認するべき条項項目を一覧化します。

次の表は、取得請求権付株式を定款に定める際の確認項目です。各行は、株主が請求したときに会社が迷わず処理できるか、株主が対価や時期を予測できるかを読み取るためのものです。

チェック項目確認内容
請求権者誰が取得請求できるか。株主本人か、登録株式質権者の同意が必要か。
対象株式どの種類の株式について請求できるか。全部か一部か。
請求期間いつからいつまで請求できるか。期間経過後の扱いはどうするか。
請求方法書面、電子的方法、会社所定様式、提出先、到達主義の有無。
対価金銭、社債、新株予約権、他の株式等のいずれか。
算定式固定額、純資産価額、第三者評価、直近ラウンド価格等。
支払・交付時期請求日、効力発生日、一定営業日後など。
端数処理端数株式・端数金銭の処理。
分配可能額不足不足時に請求が失効するか、翌期以降に繰り越すか、別対価にするか。
登記登記すべき事項として明確か。

次の表は、取得条項付株式を定款に定める際の確認項目です。会社主導で株式を取得する制度であるため、取得事由、対象決定、通知、既発行株式への後付けの有無を読み取ることが重要です。

チェック項目確認内容
取得事由IPO、M&A、退職、死亡、一定期日、取締役会決議など、事由が明確か。
事由発生日契約締結日、クロージング日、上場日など、どの日を発生日とするか。
決定機関株主総会、取締役会、代表取締役、定款による別段の定め。
一部取得一部のみ取得する場合の対象株式決定方法が公正か。
対価金銭、他の種類株式、新株予約権等。
算定式対価が明確で、恣意的でないか。
通知・公告2週間前通知、直ちに通知、公告代替の可否。
既発行株式全員同意・種類株主全員同意が必要か。
種類株主総会損害を及ぼすおそれのある種類株主総会が必要か。
紛争対応事由認定、評価、通知瑕疵に関する紛争をどう予防するか。

文言設計では、取得事由を客観的に定めること、対価の算定式を曖昧にしないこと、定款と契約を一致させること、税務・会計を後回しにしないことが基本です。定款条項は株主、投資家、債権者、買収者、監査人、証券会社、裁判所が読む可能性のある法的文書です。

Section 12

取得請求権付株式・取得条項付株式と類似制度の違い

通常の自己株式取得、株式買取請求権、全部取得条項付種類株式、契約上のオプションと区別します。

次の比較表は、名称や効果が似ている制度を区別するためのものです。どの制度が定款上の株式内容で、どの制度が会社法上の手続や契約上の権利なのかを読み取ることが重要です。

制度取得請求権付株式・取得条項付株式との違い
通常の自己株式取得取得の都度、会社法上の決議や手続が問題になります。取得請求権付株式・取得条項付株式は、あらかじめ株式の内容として取得の仕組みを定款に組み込みます。
反対株主の株式買取請求権組織再編、事業譲渡、一定の定款変更などで会社法が反対株主に与える法定の保護制度です。取得請求権付株式は株式内容として事前に設計されます。
全部取得条項付種類株式株主総会決議により、その種類の株式全部を取得できる種類株式です。一定事由の発生で取得する取得条項付株式とは根拠条文や手続が異なります。
株主間契約上のコール・プットオプション契約当事者間の権利義務を作るものです。会社による自己株式取得の会社法上の効果や対世的効力を当然に作るものではありません。

株主間契約だけで会社による自己株式取得を実現しようとすると、会社法上の財源規制、手続、定款、登記との関係で問題が生じます。契約上の合意と会社法上の株式内容は、役割を分けて設計する必要があります。

Section 13

取得請求権付株式と取得条項付株式で専門家が確認するポイント

法務、登記、税務・会計、商事法務、経営の視点を分けて確認します。

次の一覧は、関与者ごとに確認すべき役割を整理したものです。種類株式の設計は一つの専門だけでは完結しにくいため、誰がどの論点を確認するかを読み取ることが重要です。

LEGAL

弁護士・企業内法務

会社法上の有効性、株主総会・種類株主総会・全員同意、投資契約・株主間契約・M&A契約との整合、少数株主保護、取締役責任、証拠化を確認します。

REGISTRY

司法書士

登記すべき事項、添付書類、発行可能種類株式総数、発行済株式数、自己株式、消却、種類株式廃止の申請順序を確認します。

TAX

税理士・公認会計士

取得対価の税務、みなし配当、譲渡所得、給与課税、非上場株式評価、分配可能額、欠損発生、資本性・負債性を確認します。

CORP

商事法務・法務担当

招集通知、議案、議事録、同意書、委任状、株主名簿、登記申請期限、株式管理システム、資本政策表への反映を確認します。

CFO

経営者・CFO

将来キャッシュアウト、資本政策、支配権、資金調達、金融機関との契約、投資家との合意、IPO準備への影響を確認します。

弁護士が定款案を作成し、司法書士が登記可能性を確認し、税理士・公認会計士が税務・会計影響を検討する体制が望ましい場面が多いです。特に種類株式の文言は、法的には有効でも登記実務上の表現として不明確な場合があります。

Section 14

取得請求権付株式と取得条項付株式でよくある誤解

現金化、自由な強制取得、契約だけで足りるという誤解を整理します。

次の一覧は、両制度で実務上よく見られる誤解を整理したものです。誤解の内容と実際の確認点を対比することで、制度名だけで判断せず、定款・財源・同意・契約整合を確認する必要があることを読み取れます。

必ず現金化できるという誤解

取得請求権付株式の対価は必ず金銭とは限らず、金銭対価でも分配可能額の制約があります。

会社が自由に取得できるという誤解

取得条項付株式でも、定款で取得事由、対価、手続を定め、必要な同意や通知を確認する必要があります。

定款だけで契約が不要という誤解

定款は株式内容を定める文書であり、表明保証、情報権、共同売却権、補償、紛争解決などは契約で補完します。

法務だけで完結するという誤解

種類株式は税務、会計、登記、資本政策、経営権、相続、M&A、IPOにまたがります。

誤解を避けるには、制度名ではなく、発動主体、対価、財源、後付けの可否、同意要件、登記、契約整合、税務・会計を一つずつ確認することが重要です。

Section 15

取得請求権付株式と取得条項付株式を導入する実務プロセス

目的設定から定款・契約・議事録・登記までを順番に整えます。

次の時系列は、取得請求権付株式または取得条項付株式を導入するときの一般的な検討順序です。前の段階が曖昧なまま次へ進むと、定款と契約の不一致、同意不足、財源不足が起こりやすいため、順番に読み取ることが重要です。

第1段階

目的の明確化

投資家保護、事業承継、IPO時の自動転換、M&A時の整理、役職員株式の回収、少数株主対策、資金調達のどれを目的にするかを決めます。

第2段階

株主構成と既存契約の確認

株主名簿、発行済株式数、種類株式、株主間契約、投資契約、融資契約、過去の議事録を確認します。

第3段階

会社法上の手続整理

株主総会特別決議、種類株主総会、全員同意、取締役会決議、取得日の決定、通知・公告、株券提出、登記を整理します。

第4段階

税務・会計検討

譲渡所得、みなし配当、法人株主の税務、非上場株式評価、分配可能額、欠損発生、資本性・負債性、監査対応を確認します。

第5段階

文書の整合

定款、投資契約、株主間契約、株主総会議案、議事録、同意書、登記申請書の文言を一致させます。

最も危険なのは、定款には取得請求権しかないのに契約書では取得条項のように書かれている、または契約書では強制転換と書かれているのに定款には取得条項がないという不一致です。資本政策の表現、定款文言、契約条項、議事録、登記を同時に点検する必要があります。

Section 16

取得請求権付株式と取得条項付株式のFAQ

よくある疑問を一般的な制度説明として整理します。

Q1. 同じ種類株式に取得請求権と取得条項の両方を付けることはありますか。

一般的には、同じ種類株式に取得請求権と取得条項の双方を付ける設計はあり得るとされています。たとえば、投資家が一定期間内に普通株式への転換を請求できる一方、IPO時には会社が普通株式へ転換する設計が考えられます。ただし、優先順位、同時発動時の処理、対価、転換比率、分配可能額、投資契約との整合によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 取得請求権付株式は株主にとって必ず有利ですか。

一般的には、取得請求権付株式は株主に流動性や選択権を与える制度とされています。ただし、金銭対価では分配可能額が不足すると実効性が制限される可能性があり、算定式が不利な場合には十分な出口にならないこともあります。会社の財務状況、税務、契約上の補完措置によって評価が変わるため、具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 取得条項付株式は会社にとって必ず有利ですか。

一般的には、取得条項付株式は会社主導で株式を整理しやすい制度とされています。ただし、既発行株式への後付けでは全員同意が必要となる場面があり、不公正な発動は取締役責任、株主平等、信義則、契約違反の問題につながる可能性があります。株主構成、取得事由、対価、通知、契約関係によって判断が変わるため、具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 取得条項付株式と全部取得条項付種類株式はどう違いますか。

一般的には、取得条項付株式は定款で定めた一定事由の発生を条件として会社が取得する株式であり、全部取得条項付種類株式は株主総会決議によりその種類の株式全部を取得できる種類株式と整理されます。ただし、目的、手続、対価、少数株主保護、スクイーズアウト手法との関係によって検討事項が変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 会社法上の手続をせず、株主間契約だけで同じ効果を出せますか。

一般的には、株主間契約は契約当事者間の権利義務を定めるものとされています。会社による自己株式取得の会社法上の効果や、株式内容としての対世的な効力を当然に作るものではありません。定款、会社法手続、分配可能額、登記、既存契約との関係で結論が変わるため、具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. 取得請求権付株式や取得条項付株式で少数株主問題は解決しますか。

一般的には、両制度が少数株主問題の整理に役立つ場面はあるとされています。ただし、既存株主の同意、対価の相当性、税務、説明、議事録、登記、契約整合性を誤ると、かえって紛争の原因になる可能性があります。譲渡制限、相続人等に対する売渡請求、種類株式、株主間契約、事業承継計画、M&A手法なども含め、具体的な対応は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 17

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いのまとめ

制度選択では、主導権、対価、財源、同意、登記・税務・会計の整合を確認します。

取得請求権付株式と取得条項付株式の違いは、単なる用語の違いではありません。企業法務、資本政策、事業承継、M&A、税務、登記、会計にまたがる実務上の重要問題です。

  1. 取得請求権付株式は株主主導です。
  2. 取得条項付株式は会社主導です。
  3. どちらも定款に定める株式内容です。
  4. 種類株式では、他の種類株式を対価とする転換設計が重要になります。
  5. 金銭対価では分配可能額が実効性を左右します。
  6. 既発行株式に取得条項を後付けする場合、全員同意が必要になる場面があります。
  7. 登記、税務、会計、契約、株主総会手続を一体で設計する必要があります。
  8. 定款文言の曖昧さは、紛争、登記補正、M&A・IPOデューデリジェンス上の問題につながります。

制度を検討する際は、どちらの制度を使うかだけでなく、誰に主導権を与えるのか、どの事由で発動するのか、どの対価を交付するのか、会社に財源があるのか、既存株主の同意を得られるのか、登記・税務・会計まで整合しているのかを総合的に確認する必要があります。

要点早期に弁護士、企業内法務、司法書士、税理士、公認会計士、CFO、商事法務担当、M&A担当が連携し、定款・契約・議事録・登記・税務処理を一体として設計することが、実務上のリスク管理につながります。
Reference

この記事の参考情報源

会社法、商業登記事務、事業承継、税務上の取扱いに関する公的資料をもとに整理しています。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)
  • 法務省民事局「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21 取得請求権付株式と取得条項付株式の活用に関するQ&A
  • 国税庁タックスアンサー No.1528 取得請求権付株式に係る請求権の行使等により有価証券を譲渡した場合の譲渡所得等の特例

主な確認条文

  • 会社法107条・108条 ― 株式の内容および種類株式の内容
  • 会社法110条・111条 ― 取得条項の後付けと全員同意
  • 会社法166条から170条 ― 取得請求権付株式および取得条項付株式の取得手続
  • 会社法309条・322条・324条・466条 ― 株主総会、種類株主総会、定款変更
  • 会社法461条・465条 ― 分配可能額および欠損が生じた場合の責任
  • 会社法911条3項7号 ― 発行する株式の内容に関する登記事項