2σ Guide

親の家や土地を相続することに
なったらまず何をすべきか

最初にやることは、売却や解体ではなく、期限を可視化し、遺言・相続人・財産債務を調べ、不動産の資料を集めることです。

3か月 相続放棄・限定承認
10か月 相続税申告・納税
3年 相続登記の原則期限
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親の家や土地を相続することに なったらまず何をすべきか

最初にやることは、売却や解体ではなく、期限を可視化し、遺言・ 相続 人・財産債務を調べ、不動産の資料を集めることです。

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親の家や土地を相続することに なったらまず何をすべきか
最初にやることは、売却や解体ではなく、期限を可視化し、遺言・ 相続 人・財産債務を調べ、不動産の資料を集めることです。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 親の家や土地を相続することに なったらまず何をすべきか
  • 最初にやることは、売却や解体ではなく、期限を可視化し、遺言・ 相続 人・財産債務を調べ、不動産の資料を集めることです。

POINT 1

  • 親の家や土地 ― 要旨 ― 最初の結論
  • 原則・期限・例外を分けて、実務で確認する順番に整理します。
  • 期限を先に押さえる
  • 客観資料を集める
  • 独断で動かさない

POINT 2

  • 親の家や土地 ― 1. 基本用語の定義
  • 手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 相続実務では、日常語に似た専門用語が多く使われます。
  • まず、最低限の用語を確認します。
  • 被相続人とは、亡くなった人です。

POINT 3

  • 親の家や土地 ― 2. まず期限表を作る ― 相続は「順番」よりも「期限」で失敗する
  • 1. 相続放棄・限定承認:債務や管理不能土地がある場合、期間伸長も含めて検討します。
  • 2. 準確定申告:親に所得があった場合は、相続税より先に期限が来ます。
  • 3. 相続税申告・納税:特例適用と納税資金を、分け方と同時に検討します。
  • 4. 相続登記:遺産分割が長引く場合も、登記義務の期限を別に管理します。

POINT 4

  • 親の家や土地 ― 3. 死亡直後にやること ― 家を守り、証拠を守り、勝手に動かさない
  • 手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 3.1 まず「相続ファイル」を作る
  • 3.2 家の安全を確保する
  • 3.3 家財を処分しすぎない

POINT 5

  • 親の家や土地 ― 4. 遺言を探す ― 遺言の有無で相続手続の設計が変わる
  • 手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 親の家や土地を相続するとき、最初の分岐点は「遺言があるか」です。
  • 遺言がある場合、遺産分割協議よりも遺言内容の確認と執行が優先されることがあります。
  • 確認先は、少なくとも次のとおりです。

POINT 6

  • 親の家や土地 ― 5. 相続人を確定する ― 戸籍収集を軽視してはいけない
  • 手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 親の家や土地を誰が相続するかは、家族の感覚ではなく、戸籍に基づいて確定します。
  • ただし、すべての戸籍が常に即時取得できるわけではなく、郵送請求や本籍地への請求が必要になることもあります。
  • 相続人調査でよくある落とし穴は次のとおりです。

POINT 7

  • 親の家や土地 ― 6. 財産と債務を調査する ― 不動産だけを見て判断しない
  • 手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 6.1 プラス財産の調査
  • 6.2 マイナス財産の調査
  • 親の家や土地を相続する場合でも、全体の財産調査が必要です。

POINT 8

  • 親の家や土地 ― 7. 相続放棄・限定承認・単純承認を判断する
  • 1. 前提資料を集める:戸籍、登記、契約、税務資料、利用状況の証拠をそろえます。
  • 2. 要件・期限・利用状況を確認:相続後の処分や利用が制度上の不利益にならないか確認します。
  • 3. 独断で進めない:処分、利用、解体、売却の前に専門家へ確認します。
  • 4. 次の手続へ進む:申告、登記、売買契約、資料保存へ進みます。

まとめ

  • 親の家や土地を相続することに なったらまず何をすべきか
  • 親の家や土地 ― 要旨 ― 最初の結論:原則・期限・例外を分けて、実務で確認する順番に整理します。
  • 親の家や土地 ― 1. 基本用語の定義:手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 親の家や土地 ― 2. まず期限表を作る ― 相続は「順番」よりも「期限」で失敗する:手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

親の家や土地 ― 要旨 ― 最初の結論

原則・期限・例外を分けて、実務で確認する順番に整理します。

次の重要ポイントは、このページで最初に確認する論点を整理したものです。後の手続や税額に直結するため重要で、どの順番で確認すればよいかを読み取ってください。

期限

期限を先に押さえる

3か月、4か月、10か月、3年など、短い期限から予定に入れます。

資料

客観資料を集める

戸籍、登記、固定資産税資料、契約書、領収書、写真を保存します。

判断

独断で動かさない

処分、解体、売却、預金使用は、放棄・税務・紛争に影響することがあります。

親の家や土地を相続することになったらまず何をすべきか。結論は、いきなり売却、解体、名義変更、家財処分、相続人への分配を始めることではありません。最初に行うべきことは、次の三つです。

第一に、期限を可視化することです。相続放棄・限定承認は原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内、準確定申告は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内、相続税申告・納税は通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内、相続登記は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内が重要な基準になります。2024年4月1日から相続登記は義務化され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。

第二に、遺言・相続人・財産・債務を調査して、相続してよいかを判断することです。親の家や土地だけを見て「資産がある」と判断するのは危険です。固定資産税、住宅ローン、担保権、連帯保証、事業債務、未払い税金、介護施設費、管理不全空き家のリスク、境界不明、農地・山林の管理負担が潜んでいることがあります。相続放棄をする可能性がある段階では、財産を処分したり、遺産を自分のものとして使ったりする行動を避けるべきです。

第三に、不動産を「誰が、いくらで、どのように取得・管理・処分するか」を決める前に、客観的資料を集めることです。登記事項証明書、固定資産税課税明細書、名寄帳、評価証明書、地積測量図、公図、建物図面、路線価・倍率、近隣売買事例、境界・越境・賃貸借・抵当権の有無を確認します。相続人間の感情論で話し合う前に、事実と数字をそろえることが、後の紛争予防になります。

このページは、「親の家や土地を相続することになったらまず何をすべきか」を、死亡直後の手続、相続放棄、遺言確認、相続人調査、財産調査、不動産評価、相続税、遺産分割、相続登記、売却・賃貸・国庫帰属、専門家選択まで、実務の順序に沿って解説します。

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Section 01

親の家や土地 ― 1. 基本用語の定義

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

相続実務では、日常語に似た専門用語が多く使われます。まず、最低限の用語を確認します。

被相続人とは、亡くなった人です。このページでは主に「親」を指します。相続人とは、被相続人の財産上の権利義務を承継する立場の人です。配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹など、民法上の順序で決まります。

相続財産とは、預貯金、有価証券、不動産、動産、貸付金、事業用資産などのプラス財産だけでなく、借金、未払金、保証債務、税金などのマイナス財産も含めて把握すべき財産関係の総体です。

遺産分割とは、共同相続人の間で、相続財産を誰がどのように取得するかを決める手続です。相続人全員で合意する協議、家庭裁判所で行う調停・審判などがあります。

相続登記とは、亡くなった人名義の土地・建物について、相続を原因として所有権の登記名義を相続人等へ移す登記です。2024年4月1日から、相続により不動産を取得した相続人には、原則として3年以内の相続登記申請義務が課されています。

相続放棄とは、家庭裁判所での申述により、はじめから相続人でなかったものとして扱われる制度です。特定の土地だけを放棄し、預金だけを相続するという選択はできません。相続放棄は「全部放棄」です。

限定承認とは、相続によって得たプラス財産の限度でマイナス財産を負担する制度です。債務額が不明だが、家や土地に価値が残る可能性がある場合に検討されます。ただし、相続人全員で行う必要があり、手続も複雑です。

遺留分とは、一定の相続人に保障される最低限の取り分です。遺言で一人に全財産を渡すとされていても、兄弟姉妹以外の一定の相続人は、遺留分侵害額請求を検討できる場合があります。

特別受益とは、相続人の一部が生前贈与や遺贈などにより特別の利益を受けていた場合に、相続分計算上考慮され得る利益です。寄与分とは、被相続人の財産維持・増加に特別の貢献をした相続人について、遺産分割で考慮され得る制度です。

法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係を一覧化し、法務局の登記官が内容を確認して認証する制度です。戸籍の束を何度も提出する負担を軽減する目的で使われます。

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Section 02

親の家や土地 ― 2. まず期限表を作る ― 相続は「順番」よりも「期限」で失敗する

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の時系列は、相続開始後に優先して確認する期限を順に示しています。短い期限ほど取り返しがつきにくいため重要で、3か月・4か月・10か月・3年の位置関係を読み取ってください。

3か月以内

相続放棄・限定承認

債務や管理不能土地がある場合、期間伸長も含めて検討します。

4か月以内

準確定申告

親に所得があった場合は、相続税より先に期限が来ます。

10か月以内

相続税申告・納税

特例適用と納税資金を、分け方と同時に検討します。

3年以内

相続登記

遺産分割が長引く場合も、登記義務の期限を別に管理します。

親の家や土地を相続する場面では、感情的には葬儀、片付け、親族対応が優先されがちです。しかし、法律・税務・登記の世界では期限が先に進みます。最初に、次のような期限表を作成します。

次の比較表は、2. まず期限表を作る ― 相続は「順番」よりも「期限」で失敗するに関する項目を列ごとに整理したものです。判断や手続の順番を間違えないために重要で、左から項目、内容、注意点の関係を読み取ってください。

時期の目安主な手続・判断担当候補重要性
死亡を知った日から7日以内死亡届、火葬・埋葬許可関連市区町村、葬儀社戸籍手続の起点
早期年金、健康保険、介護保険、公共料金、火災保険、郵便物、空き家管理市区町村、年金事務所、保険会社、管理会社放置による過払い・事故・空き家化を防ぐ
3か月以内相続放棄・限定承認の判断、必要なら期間伸長申立て弁護士、司法書士、家庭裁判所借金・管理不能土地がある場合の最重要期限
4か月以内準確定申告税理士、税務署親に事業所得・不動産所得・譲渡所得等がある場合に重要
10か月以内相続税申告・納税、農地を相続した場合の届出も概ねこの時期までに確認税理士、税務署、農業委員会不動産評価・特例適用・納税資金が問題化しやすい
3年以内相続登記、遺産分割後の追加的登記義務司法書士、法務局2024年4月1日から義務化
売却時・処分時譲渡所得税、空き家特例、境界確定、解体、媒介契約、残置物処分税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅建業者、弁護士税負担・紛争・契約不適合責任に直結

相続人が最初に作るべき書類は、立派な遺産目録ではなく、「期限管理表」です。死亡日、死亡を知った日、自分が相続人であることを知った日、不動産を取得したことを知った日、遺産分割成立日を区別して記録します。これらの日付は、相続放棄、税務、登記の期限判断に関係します。

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Section 03

親の家や土地 ― 3. 死亡直後にやること ― 家を守り、証拠を守り、勝手に動かさない

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

3.1 まず「相続ファイル」を作る

紙のファイルでもクラウドフォルダでも構いません。最初に、次の分類で資料を保管します。

  1. 戸籍・住民票・死亡診断書関係
  2. 不動産関係資料
  3. 預貯金・証券・保険関係資料
  4. 借金・保証・未払金関係資料
  5. 税務関係資料
  6. 遺言・エンディングノート・手紙
  7. 相続人との連絡記録
  8. 専門家相談記録
  9. 空き家管理記録

特に、相続人どうしで疑心暗鬼になりやすい案件では、後で「誰が何を持ち出したか」「預金を誰が使ったか」「家財を誰が処分したか」が争点になります。親の家に入る場合は、一人で作業せず、写真・動画・リストを残すことが望ましいです。

3.2 家の安全を確保する

相続した家が空き家になる場合、法律上の名義変更より先に、物理的な管理問題が発生します。鍵の所在、火の元、水道漏れ、電気ブレーカー、ガス閉栓、雨漏り、郵便物、庭木、近隣への越境、害虫・動物、冬季の凍結、台風前の飛散物を確認します。

火災保険・地震保険の契約者、保険期間、保険料の支払口座も確認します。親の口座が凍結されると保険料が落ちなくなる可能性があります。保険を失効させたまま空き家が火災・水漏れ・倒壊を起こすと、相続人の負担が大きくなります。

3.3 家財を処分しすぎない

形見分けや片付けは必要ですが、相続放棄を検討している場合や相続人間で争いがある場合は注意が必要です。高価な時計、貴金属、骨董品、現金、通帳、印鑑、権利証、契約書、借用書、保険証券、確定申告書、固定資産税通知書、土地測量図、農地関係書類、貸家契約書などは、単なる片付け対象ではありません。

実務上、最も危険なのは「親の家を早く空にしよう」として、資料まで捨ててしまうことです。相続税申告、不動産売却、境界確認、債務調査、保険金請求、年金手続、訴訟対応に必要な資料が失われると、後から多額の費用と時間がかかります。

3.4 相続人の一人だけで預金を使わない

葬儀費用や当面の管理費が必要な場合でも、故人の預金を一人の判断で使うと、後日「使い込み」と疑われることがあります。支出の必要性、金額、領収書、相続人への説明を残します。金融機関の相続手続では、遺産分割協議書、戸籍、相続人全員の印鑑証明書等が求められることが多く、銀行ごとに提出書類も異なります。

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Section 04

親の家や土地 ― 4. 遺言を探す ― 遺言の有無で相続手続の設計が変わる

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

親の家や土地を相続するとき、最初の分岐点は「遺言があるか」です。遺言がある場合、遺産分割協議よりも遺言内容の確認と執行が優先されることがあります。

確認先は、少なくとも次のとおりです。

  • 親の自宅、金庫、仏壇、机、貸金庫
  • 公正証書遺言の有無
  • 法務局の自筆証書遺言書保管制度の有無
  • 弁護士、司法書士、税理士、行政書士、信託銀行等への保管依頼
  • エンディングノートや遺言作成メモ

自筆証書遺言を発見した場合、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している遺言については、家庭裁判所の検認が不要とされています。

遺言がある場合でも、次の点を確認します。

  1. 遺言の形式が有効か
  2. 遺言が最新か
  3. 不動産の表示が正確か
  4. 受遺者・相続人が生存しているか
  5. 遺言執行者が指定されているか
  6. 遺留分侵害額請求が問題になり得るか
  7. 相続税申告上の特例適用に不利益がないか

遺言が見つかっても、すぐに「このとおりで決まり」とは限りません。遺言能力、方式違反、後日の遺言による撤回、遺留分、遺言解釈、不動産の特定不備が争点になる場合があります。争いが予想される場合は、早期に弁護士へ相談します。

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Section 05

親の家や土地 ― 5. 相続人を確定する ― 戸籍収集を軽視してはいけない

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

親の家や土地を誰が相続するかは、家族の感覚ではなく、戸籍に基づいて確定します。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人の現在戸籍、死亡している相続人がいる場合の代襲相続人の戸籍などを収集します。

2024年3月1日からは、戸籍証明書等の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できる仕組みが始まっています。ただし、すべての戸籍が常に即時取得できるわけではなく、郵送請求や本籍地への請求が必要になることもあります。

相続人調査でよくある落とし穴は次のとおりです。

  • 前婚の子、認知した子、養子がいる
  • 兄弟姉妹相続で代襲相続人が多数いる
  • 相続人の一人が認知症、未成年、行方不明、海外在住である
  • 相続人の一人が既に死亡しており、数次相続になっている
  • 親が再婚しており、配偶者と子の関係が複雑である
  • 戸籍上の氏名・住所と登記上の住所が一致しない

相続人が一人でも欠けた遺産分割協議は、原則として有効な遺産分割協議になりません。相続人の範囲に疑義がある場合は、司法書士、弁護士、行政書士に早期に相談します。家庭裁判所手続が必要な場合は弁護士または司法書士の関与が重要になります。

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Section 06

親の家や土地 ― 6. 財産と債務を調査する ― 不動産だけを見て判断しない

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

6.1 プラス財産の調査

親の家や土地を相続する場合でも、全体の財産調査が必要です。主な対象は次のとおりです。

次の比較表は、6. 財産と債務を調査する ― 不動産だけを見て判断しないに関する項目を列ごとに整理したものです。判断や手続の順番を間違えないために重要で、左から項目、内容、注意点の関係を読み取ってください。

種類調査資料
土地・建物固定資産税課税明細書、名寄帳、登記事項証明書、権利証、登記識別情報、売買契約書、建築確認、測量図
預貯金通帳、キャッシュ項目、銀行通知、ネット銀行メール、金融機関照会
有価証券証券会社の残高報告書、配当通知、NISA・特定口座書類
生命保険保険証券、控除証明書、口座引落履歴、生命保険契約照会制度
事業資産決算書、帳簿、売掛金、在庫、借入金、リース契約
貸付金・未収金借用書、振込履歴、メモ、契約書
動産自動車、貴金属、骨董、農機具、船舶、著作権・特許権など

不動産は、固定資産税通知書に載っているものだけが全財産とは限りません。非課税土地、共有持分、私道、山林、農地、未登記建物、古い相続未了土地が漏れることがあります。市区町村の名寄帳、法務局での登記事項確認、親の住所地以外の不動産資料を調べます。

6.2 マイナス財産の調査

相続で怖いのは、家や土地よりも債務です。次を確認します。

  • 住宅ローン、事業借入、項目ローン
  • 税金、社会保険料、固定資産税、住民税、所得税
  • 介護施設・病院・葬儀関連の未払金
  • 賃貸物件の原状回復義務
  • 連帯保証、根保証、事業承継に伴う保証
  • 未払いの管理費、修繕積立金、町内会費、水道光熱費
  • 境界紛争、近隣紛争、損害賠償リスク
  • 建物倒壊・樹木越境・擁壁崩落の管理責任

「親は借金をしていないはず」という推測は危険です。郵便物、督促状、通帳の返済履歴、信用情報、税務書類、事業関係者への聞き取りを行います。債務が多い可能性があるなら、3か月以内の相続放棄・限定承認を強く意識します。

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Section 07

親の家や土地 ― 7. 相続放棄・限定承認・単純承認を判断する

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の判断の流れは、7. 相続放棄・限定承認・単純承認を判断するに関する確認順序を示しています。要件や期限を外すと結果が変わるため重要で、どの分岐で専門家確認が必要かを読み取ってください。

相続の選択を決める判断の流れ

前提資料を集める

戸籍、登記、契約、税務資料、利用状況の証拠をそろえます。

要件・期限・利用状況を確認

相続後の処分や利用が制度上の不利益にならないか確認します。

不明
独断で進めない

処分、利用、解体、売却の前に専門家へ確認します。

確認済み
次の手続へ進む

申告、登記、売買契約、資料保存へ進みます。

相続人は、相続について大きく三つの選択をします。

  1. 単純承認 ― プラス財産もマイナス財産も承継する
  2. 相続放棄 ― 相続人でなかったものとして扱われる
  3. 限定承認 ― 相続財産の範囲で債務を弁済する

裁判所の説明でも、相続人は、土地所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認、権利義務を一切受け継がない相続放棄、相続によって得た財産の限度で債務を受け継ぐ限定承認を選択できるとされています。

7.1 相続放棄を検討すべき典型例

  • 明らかに借金が多い
  • 連帯保証や事業債務がある
  • 遠方の山林・農地・老朽空き家だけで、管理費や税負担が重い
  • 境界紛争や倒壊リスクが大きい
  • 相続人間の争いに巻き込まれたくない
  • 親と疎遠で財産状況が全くわからない

ただし、相続放棄は「親の家だけ放棄して預金はもらう」という制度ではありません。全財産について相続人でなかったものとして扱われるため、死亡保険金、未支給年金、遺族年金、祭祀財産、固有財産との区別も慎重に検討します。

7.2 3か月で調査が終わらない場合

相続財産の状況を調査しても、3か月以内に単純承認・限定承認・相続放棄の判断ができない場合、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることができます。親の不動産が複数地域にある、事業をしていた、海外資産がある、借金の全容が不明、相続人が多数という場合は、期間伸長を早めに検討します。

7.3 勝手な処分は単純承認リスクになる

相続放棄を考えている人は、遺産を自分のものとして処分する行為を避けるべきです。家財処分、預金の使用、不動産の売却、賃貸契約の更新、車の売却、貴金属の換金などは、後に単純承認と評価されるリスクがあります。葬儀費用、保存行為、緊急管理行為との区別は難しいため、債務超過の可能性がある場合は弁護士に確認します。

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Section 08

8. 不動産調査 ― 親の家や土地の「法的な顔」と「現地の顔」を分けて見る

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

不動産相続では、登記簿に書かれている情報と、現地の実態が一致しないことが珍しくありません。調査は二層で行います。

8.1 法的調査

法的調査では、次を確認します。

  • 登記名義人は本当に親か
  • 共有者がいるか
  • 抵当権、根抵当権、地上権、地役権、賃借権の登記があるか
  • 地目が宅地、田、畑、山林、雑種地など何か
  • 建物が登記されているか、未登記建物がないか
  • 土地と建物の所有者が同じか
  • 前代以前の相続登記が未了でないか
  • 私道持分、水路、里道、セットバック、建築基準法上の道路関係はどうか

相続登記をしようとして初めて、祖父母名義のままだった、共有者が数十人いた、住所変更登記がされていなかった、建物が未登記だったという問題が発覚します。

8.2 現地調査

現地調査では、次を確認します。

  • 境界標の有無
  • 隣地越境、ブロック塀、擁壁、樹木、雨樋、配管
  • 接道状況、再建築の可否
  • 老朽化、雨漏り、シロアリ、耐震性、アスベスト、残置物
  • 賃借人・使用借人・親族居住者の有無
  • 農地、山林、墓地、私道、崖地、土砂災害区域
  • 近隣との過去の約束、通行、駐車、排水

この段階では、宅地建物取引士、不動産仲介会社、土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士の役割が重要です。売却する場合は、境界不明や未登記建物が売買契約の障害になります。相続人間で代償金を払って一人が取得する場合は、不動産鑑定士による評価が争いを減らすことがあります。

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Section 09

親の家や土地 ― 9. 不動産評価 ― 相続税評価額、時価、固定資産税評価額は違う

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の時系列は、この章で確認する行動や時期の意味を順に示しています。手続や税負担の前後関係を間違えないため重要で、どの段階で資料保存や契約確認が必要かを読み取ってください。

準備

前提資料と関係者を確認

相続人、遺言、登記、税務資料、現地状況を確認します。

実行

方針を文書化して手続へ進む

費用負担、売却条件、解体、登記、証拠保存を整えます。

申告・管理

税務と管理責任を確認

申告期限、固定資産税、特例書類、売却後の清算を確認します。

親の家や土地を相続するとき、相続人間で「この土地はいくらか」が争点になります。しかし、不動産の「価値」には複数の意味があります。

次の比較表は、9. 不動産評価 ― 相続税評価額、時価、固定資産税評価額は違うに関する項目を列ごとに整理したものです。判断や手続の順番を間違えないために重要で、左から項目、内容、注意点の関係を読み取ってください。

評価の種類主な用途注意点
相続税評価額相続税申告路線価方式・倍率方式等で評価。時価と一致しない
固定資産税評価額固定資産税、登録免許税の計算資料市区町村が評価。家屋は相続税評価でも参照される
実勢価格・時価売却、代償分割、調停市場で売れる価格。個別事情の影響が大きい
鑑定評価額紛争、調停、審判、法人・特殊財産不動産鑑定士の専門評価
査定価格売却検討仲介会社により幅が出る。媒介獲得目的の高値査定に注意

国税庁の説明では、土地は原則として地目ごとに評価し、宅地の評価には路線価方式と倍率方式があります。家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額、つまり固定資産税評価額と同じとされています。

相続人間の遺産分割で用いる価格は、必ずしも相続税評価額に限られません。たとえば、長男が実家を取得し、他の兄弟に代償金を払う場合、相続税評価額では低すぎる、売却査定では高すぎる、不動産鑑定が必要だ、という争いが起こり得ます。

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Section 10

親の家や土地 ― 10. 相続税 ― 基礎控除、特例、納税資金を早期に確認する

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

相続税は、相続財産が一定額を超える場合に問題になります。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。正味の遺産額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告・納税が必要になります。

10.1 親の家があると相続税が発生しやすい理由

都市部の土地、駅近の土地、広い敷地、賃貸物件、二世帯住宅、複数不動産、金融資産がある家庭では、預金は少なくても相続税評価額が基礎控除を超えることがあります。

相続税で特に重要なのが、小規模宅地等の特例です。被相続人等の居住用または事業用の宅地等について、一定の要件を満たす場合、一定面積まで評価額を大きく減額できる制度です。特定居住用宅地等では、330平方メートルまで80%減額の枠が設けられています。ただし、誰が取得するか、同居の有無、持ち家の有無、申告期限までの保有・居住継続要件など、要件は複雑です。

配偶者がいる場合には、配偶者の税額軽減も重要です。配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税がかからない制度です。ただし、未分割財産は原則として税額軽減の対象にならないため、申告期限後3年以内の分割見込書などの手続が重要になります。

10.2 税金で失敗しやすい場面

  • 相続税がかからないと思って税理士に相談しなかった
  • 小規模宅地等の特例を使う前提で遺産分割したが、要件を満たさなかった
  • 配偶者に多く相続させすぎて、二次相続で税負担が増えた
  • 売却予定なのに譲渡所得税を考えなかった
  • 相続税の納税資金がなく、急いで不利な売却をした
  • 相続人間で不動産を共有にした結果、売却できず納税資金が不足した
  • 空き家特例の適用期限や要件を見落とした

不動産が相続財産の中心である場合、相続税は「税額計算」だけでなく、「誰が不動産を取得するか」「売るか残すか」「納税資金をどう確保するか」と一体で検討します。

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Section 11

親の家や土地 ― 11. 準確定申告 ― 親に所得があった場合の4か月期限

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の時系列は、相続開始後に優先して確認する期限を順に示しています。短い期限ほど取り返しがつきにくいため重要で、3か月・4か月・10か月・3年の位置関係を読み取ってください。

3か月以内

相続放棄・限定承認

債務や管理不能土地がある場合、期間伸長も含めて検討します。

4か月以内

準確定申告

親に所得があった場合は、相続税より先に期限が来ます。

10か月以内

相続税申告・納税

特例適用と納税資金を、分け方と同時に検討します。

3年以内

相続登記

遺産分割が長引く場合も、登記義務の期限を別に管理します。

親が年の途中で亡くなった場合、1月1日から死亡日までの所得について、相続人が準確定申告を行う必要があることがあります。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

準確定申告が問題になりやすいのは、次の場合です。

  • 親が個人事業主だった
  • 不動産所得があった
  • 年金以外に所得があった
  • 医療費控除や還付がある
  • 株式・不動産を売却していた
  • 給与所得者でも年末調整未了だった

相続税申告の10か月よりも先に、準確定申告の4か月が来ます。相続税だけに意識が向いていると、準確定申告を見落とします。

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Section 12

親の家や土地 ― 12. 遺産分割 ― 家を「誰が取るか」より「どう公平にするか」を設計する

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

親の家や土地の相続で最も揉めやすいのは、相続財産の大半が不動産で、預金が少ないケースです。たとえば、長男が実家に住んでいて家を取得したいが、他の兄弟には現金で分ける資金がない場合です。

遺産分割の方法は主に次の四つです。

次の比較表は、12. 遺産分割 ― 家を「誰が取るか」より「どう公平にするか」を設計するに関する項目を列ごとに整理したものです。判断や手続の順番を間違えないために重要で、左から項目、内容、注意点の関係を読み取ってください。

方法内容向く場面注意点
現物分割不動産をそのまま一人または複数人が取得土地が分けられる、預金もある土地分筆には測量・接道・用途規制の検討が必要
代償分割一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を払う実家を残したい、居住者がいる代償金の資金調達と不動産評価が争点
換価分割不動産を売却し、代金を分ける誰も住まない、納税資金が必要売却価格、費用、税金、売却時期で争う
共有分割相続人が持分で共有する当面結論が出ない将来の売却・修繕・管理で紛争が再燃しやすい

共有は一見公平に見えますが、実務上は将来の紛争を先送りすることがあります。共有者の一人が亡くなると、さらにその相続人が共有に入ります。共有者が増え、所在不明者、認知症の人、未成年者、海外在住者が入ると、売却・修繕・賃貸・解体が難しくなります。

12.1 住んでいる相続人がいる場合

親と同居していた相続人、介護していた相続人、親の死後も実家に住み続ける相続人がいる場合、次が争点になります。

  • 使用権原があるのか
  • 家賃相当額を払うべきか
  • 固定資産税・修繕費を誰が負担するか
  • 介護貢献を寄与分として主張できるか
  • 生前贈与や生活費援助が特別受益になるか
  • 他の相続人に代償金を払えるか
  • 小規模宅地等の特例の要件を満たすか

感情的な対立が強い場合、相続人だけで話し合うほど対立が固定化します。早期に弁護士を入れ、必要に応じて不動産鑑定士、税理士、司法書士と連携して、価格と法的主張を整理します。

12.2 話し合いがまとまらない場合

相続人間で遺産分割の話し合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できます。調停では、当事者双方から事情を聴き、資料提出や鑑定などを踏まえて合意を目指します。調停が不成立になると、審判手続に移行し、裁判官が遺産に属する物や権利の種類・性質その他一切の事情を考慮して判断します。

調停に進む前に準備すべき資料は、相続関係図、財産目録、登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書、預金履歴、使途不明金の資料、介護記録、贈与資料、遺言、税務資料です。

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Section 13

親の家や土地 ― 13. 相続登記 ― 2024年4月1日から義務化された最重要手続

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

親の家や土地を相続した場合、相続登記は後回しにできない手続になりました。法務省は、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続開始があったことを知り、かつ不動産所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があると説明しています。また、正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象になり得ます。

2024年4月1日より前に発生した相続であっても、相続登記が未了なら義務化の対象になります。施行日前の相続については、原則として2027年3月31日までに対応が必要です。

13.1 相続登記の基本資料

一般的には、次のような資料が必要になります。ただし、遺言の有無、法定相続分で登記するか、遺産分割によるか、数次相続か、住所変更があるかで異なります。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 相続人の戸籍
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺言書、検認済証明書、遺言書情報証明書
  • 登記申請書
  • 登録免許税相当の収入印紙

13.2 遺産分割がまとまらない場合の相続人申告登記

遺産分割協議が長引く場合でも、相続登記義務の期限は意識しなければなりません。相続人申告登記は、期限内に、自らが登記記録上の所有者の相続人であること等を登記官に申し出ることで、申出をした相続人について相続登記の申請義務を履行したものとみなす簡易な制度です。

ただし、相続人申告登記は、最終的に誰が所有権を取得したかを確定して公示する通常の相続登記とは異なります。不動産を売却する、担保に入れる、遺産分割の結果を反映するためには、最終的な相続登記が必要です。また、遺産分割成立後の追加的義務は、相続人申告登記だけでは果たせません。

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Section 14

親の家や土地 ― 14. 売却・賃貸・居住・解体・国庫帰属 ― 出口戦略を比較する

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の時系列は、この章で確認する行動や時期の意味を順に示しています。手続や税負担の前後関係を間違えないため重要で、どの段階で資料保存や契約確認が必要かを読み取ってください。

準備

前提資料と関係者を確認

相続人、遺言、登記、税務資料、現地状況を確認します。

実行

方針を文書化して手続へ進む

費用負担、売却条件、解体、登記、証拠保存を整えます。

申告・管理

税務と管理責任を確認

申告期限、固定資産税、特例書類、売却後の清算を確認します。

相続した家や土地については、主に次の選択肢があります。

14.1 自分または家族が住む

親の家に住む場合、相続人間で誰が所有するか、他の相続人への代償金、固定資産税、修繕費、将来売却時の分配、配偶者や子への承継を決めます。同居相続人が小規模宅地等の特例の要件を満たす可能性があるため、税理士の確認が重要です。

14.2 賃貸する

賃貸すれば収入が得られますが、空室リスク、修繕義務、賃借人保護、所得税申告、共有者間の意思決定、管理委託費が発生します。共有のまま賃貸すると、賃料分配、修繕費負担、契約更新で揉めることがあります。

14.3 売却する

売却は公平な現金分割に向きますが、境界確定、残置物撤去、建物解体、契約不適合責任、譲渡所得税、仲介手数料、測量費、解体費、抵当権抹消、農地転用などを検討します。

相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすと、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除、いわゆる空き家特例により、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる場合があります。令和6年1月1日以後の譲渡で、対象家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円までとされています。適用期間・建築時期・居住要件・耐震または取壊し要件などがあるため、売却前に税理士へ確認します。

14.4 解体する

老朽家屋は倒壊・火災・近隣被害のリスクがあります。解体すると土地を売りやすくなる一方、固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が増える可能性があります。また、解体前の建物滅失登記、アスベスト、残置物、近隣説明、井戸・浄化槽・地下埋設物に注意します。

14.5 相続土地国庫帰属制度を検討する

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈により土地所有権を取得した人が、一定の要件を満たす土地を国庫に帰属させる制度です。2023年4月27日から始まりました。ただし、どの土地でも引き取られる制度ではありません。建物がある土地、担保権や使用収益権がある土地、通路など他人によって使用されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地などは、申請段階で問題になります。承認された場合にも、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算定される10年分の負担金を納付する必要があります。

重要なのは、相続土地国庫帰属制度は「不要な土地を無料で国が引き取る制度」ではないことです。建物付きの実家をそのまま国に渡せる制度でもありません。解体、測量、境界確認、残置物撤去、抵当権抹消などの前処理が必要になることがあります。

14.6 相続放棄との違い

相続放棄は、土地だけでなく相続全体を放棄する制度です。一方、相続土地国庫帰属制度は、相続等で取得した土地を、一定要件のもとで国に引き取ってもらう制度です。預金は相続したいが山林だけ手放したい、という場合、相続放棄ではなく国庫帰属制度や売却・寄付・隣地譲渡等を検討することになります。

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Section 15

親の家や土地 ― 15. 農地・山林・私道・借地権がある場合の特別注意

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

15.1 農地

農地を相続した場合、相続登記とは別に、農地が所在する市町村の農業委員会への届出が必要です。農林水産省は、農地を相続したときは所在地の農業委員会に届出をする必要があると案内しています。相続発生日から概ね10か月以内の届出が目安とされ、届出を怠ると過料の可能性があります。

農地は、売却、貸付、転用に農地法上の制限がかかります。宅地と同じ感覚で売却できません。市街化区域か市街化調整区域か、農用地区域か、耕作者がいるか、納税猶予を受けているかを確認します。

15.2 山林

山林は固定資産税が低く見えても、境界不明、管理不能、倒木、土砂災害、林道、共有入会的利用、相続人多数という問題を抱えることがあります。価値が低いから放置してよいわけではありません。国庫帰属制度でも、管理に過大な費用や労力を要する土地は不承認となり得ます。

15.3 私道・共有道路

実家の前面道路が私道で、親が持分を持っている場合、家の売却や建替えに不可欠な権利であることがあります。固定資産税が非課税で課税明細に出てこない私道持分が漏れることもあります。名寄帳、登記事項証明書、道路台帳、建築確認資料を確認します。

15.4 借地権・底地

親の家が借地上の建物である場合、相続するのは土地所有権ではなく借地権と建物である可能性があります。地主への通知、地代、更新料、譲渡承諾、建替承諾が問題になります。逆に親が底地を所有し、第三者に貸している場合、賃貸借契約、地代、更新、借地人の権利を確認します。

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Section 16

親の家や土地 ― 16. 専門家の選び方 ― 何に困っているかで主担当が変わる

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

親の家や土地の相続では、多くの専門職が関わります。最初から全員に依頼する必要はありませんが、問題の性質に応じて主担当を選びます。

次の比較表は、16. 専門家の選び方 ― 何に困っているかで主担当が変わるに関する項目を列ごとに整理したものです。判断や手続の順番を間違えないために重要で、左から項目、内容、注意点の関係を読み取ってください。

問題主担当候補理由
相続人間で揉めている、遺留分、使い込み、交渉、調停、訴訟弁護士代理交渉・調停・訴訟対応ができる中心職
相続登記、名義変更、戸籍収集、登記書類司法書士不動産がある相続で重要。相続登記義務化にも対応
相続税申告、税額試算、特例、税務調査税理士税務代理・申告の専門職
争いがなく、書類作成を整理したい行政書士遺産分割協議書等の作成支援に向く。ただし紛争・税務・登記申請は別
不動産の価格で争いがある不動産鑑定士客観的評価が必要な場合に重要
境界不明、分筆、地積更正、建物滅失土地家屋調査士表示登記・境界・測量の専門職
売却、査定、媒介契約、買主探し宅地建物取引士・不動産仲介業者不動産取引実務を担う
遺言執行遺言執行者、弁護士、司法書士、信託銀行等遺言内容の実現
年金、社会保険、死亡後の周辺手続社会保険労務士、年金事務所遺族年金・未支給年金等に関与
家計・保険・老後資金・売却後資金計画FP全体設計と専門家接続
事業・会社株式がある公認会計士、中小企業診断士、税理士、弁護士事業承継・株式評価・経営支援が必要

最初の相談先を一つに絞れない場合は、次の基準が実務的です。

  • 揉めている、揉めそうなら弁護士
  • 不動産の名義変更が中心なら司法書士
  • 相続税が発生しそうなら税理士
  • 価格・境界が争点なら不動産鑑定士・土地家屋調査士
  • 売る前提なら税理士、司法書士、宅建業者を同時に連携

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Section 17

親の家や土地 ― 17. よくある誤解と危険な判断

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の一覧は、この章で特に見落としやすい注意点をまとめたものです。思い込みのまま進めると税務・登記・紛争で不利になるため重要で、どの点を専門家に確認すべきかを読み取ってください。

期限を軽く見る

資料収集や合意形成には時間がかかり、期限直前では選択肢が狭くなります。

評価や費用を混同する

相続税評価、時価、固定資産税評価、取得費、譲渡費用は用途が違います。

共有や特例を当然視する

共有は将来の意思決定を難しくし、特例は要件と書類で結論が変わります。

誤解1 ― 相続登記は急がなくてよい

現在は違います。相続登記は2024年4月1日から義務化されています。3年以内という比較的長い期限に見えますが、戸籍収集、相続人調査、遺産分割、不動産評価、必要書類準備には時間がかかります。古い相続が重なっている場合、3年は短いことがあります。

誤解2 ― 固定資産税を払っている人が所有者である

固定資産税の納税通知が来ていることと、登記上の所有者であることは別です。納税管理者や代表者として通知を受けているだけの場合もあります。所有者は登記事項証明書で確認します。

誤解3 ― 親と同居していたから当然に家をもらえる

同居していたことは、遺産分割や税務特例で重要な事情になり得ますが、それだけで当然に単独所有権を取得するわけではありません。遺言がなければ、相続人全員の協議または家庭裁判所手続が必要です。

誤解4 ― いらない土地だけ相続放棄できる

相続放棄は、原則として相続全体を放棄する制度です。不要な山林だけ放棄し、預金と自宅だけ相続することはできません。不要土地だけを手放したい場合は、売却、寄付、隣地譲渡、相続土地国庫帰属制度などを検討します。

誤解5 ― 兄弟で共有にすれば公平で安全

共有は公平に見えますが、将来の管理・修繕・売却・次世代相続で問題が複雑化します。共有にするなら、管理費負担、使用者、賃料、売却条件、修繕決定、固定資産税、将来の買い取り方法を文書化します。

誤解6 ― 相続税がかからないなら専門家は不要

相続税がかからなくても、相続登記、境界、空き家管理、売却時の譲渡所得税、農地届出、遺産分割協議書、相続放棄の問題は残ります。税金がゼロでも、法務・不動産リスクがゼロとは限りません。

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Section 18

親の家や土地 ― 18. 実務チェックリスト ― 最初の30日で確認すること

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の時系列は、この章で確認する行動や時期の意味を順に示しています。手続や税負担の前後関係を間違えないため重要で、どの段階で資料保存や契約確認が必要かを読み取ってください。

準備

前提資料と関係者を確認

相続人、遺言、登記、税務資料、現地状況を確認します。

実行

方針を文書化して手続へ進む

費用負担、売却条件、解体、登記、証拠保存を整えます。

申告・管理

税務と管理責任を確認

申告期限、固定資産税、特例書類、売却後の清算を確認します。

18.1 人の確認

  • 相続人候補を一覧化したか
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍収集を始めたか
  • 前婚、養子、認知、代襲相続、数次相続を確認したか
  • 未成年、認知症、行方不明、海外在住の相続人がいないか
  • 相続人全員の連絡先を把握したか

18.2 遺言の確認

  • 自宅、金庫、貸金庫、仏壇、書棚を確認したか
  • 公正証書遺言の有無を確認する準備をしたか
  • 法務局保管の自筆証書遺言の有無を確認したか
  • 封印された自筆証書遺言を勝手に開封していないか
  • 遺言執行者の有無を確認したか

18.3 財産・債務の確認

  • 固定資産税課税明細書、名寄帳を確認したか
  • 登記事項証明書を取得したか
  • 預貯金・証券・保険を一覧化したか
  • 借金、税金、保証、未払金を確認したか
  • 親の郵便物、メール、通帳履歴を保存したか
  • 生命保険契約照会制度の利用を検討したか

18.4 不動産の確認

  • 鍵、火災保険、電気・ガス・水道を確認したか
  • 雨漏り、倒壊、越境、庭木、残置物を確認したか
  • 境界標、測量図、公図、地積測量図を確認したか
  • 農地・山林・私道・借地権・未登記建物を確認したか
  • 売却予定なら、解体前に税務特例を確認したか

18.5 期限の確認

  • 相続放棄・限定承認の3か月期限を記録したか
  • 準確定申告の4か月期限を確認したか
  • 相続税申告の10か月期限を確認したか
  • 相続登記の3年期限を確認したか
  • 遺産分割が長引く場合、相続人申告登記を検討したか

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Section 19

親の家や土地 ― 19. ケース別 ― 最初に相談すべき専門家

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

次の一覧は、この章で特に見落としやすい注意点をまとめたものです。思い込みのまま進めると税務・登記・紛争で不利になるため重要で、どの点を専門家に確認すべきかを読み取ってください。

期限を軽く見る

資料収集や合意形成には時間がかかり、期限直前では選択肢が狭くなります。

評価や費用を混同する

相続税評価、時価、固定資産税評価、取得費、譲渡費用は用途が違います。

共有や特例を当然視する

共有は将来の意思決定を難しくし、特例は要件と書類で結論が変わります。

ケースA ― 親に借金がありそう、遠方の山林や老朽家屋が負担

最優先は弁護士です。相続放棄、限定承認、熟慮期間伸長、債権者対応を検討します。相続放棄をする可能性があるなら、財産の処分や使用を避けます。

ケースB ― 相続人間で既に揉めている

弁護士を主担当にします。使い込み疑い、遺留分、特別受益、寄与分、同居相続人の使用、遺言の有効性などは、早期に証拠保全と主張整理が必要です。

ケースC ― 争いはないが、実家の名義変更をしたい

司法書士を主担当にします。戸籍収集、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書に基づく登記、相続人申告登記の要否を相談します。税額が不明なら税理士にも確認します。

ケースD ― 相続税がかかりそう

税理士を主担当にし、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士と連携します。小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、納税資金、二次相続、売却時税金まで含めて設計します。

ケースE ― 売却する方針

税理士、司法書士、宅地建物取引士、土地家屋調査士を連携させます。相続登記を済ませ、境界・測量・残置物・解体・譲渡所得税・空き家特例を確認してから売却活動に入ります。

ケースF ― 農地を相続した

司法書士、行政書士、農業委員会、税理士に相談します。相続登記、農業委員会への届出、納税猶予、転用、売却・貸付制限を確認します。

ケースG ― 会社、不動産賃貸業、非上場株式がある

税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士を含めた体制が必要です。会社株式評価、代表者変更、借入保証、事業承継、相続税納税資金が絡みます。

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Section 20

20. 親の家や土地を相続することになったらまず何をすべきか ― 最終整理

手続上の意味、注意点、次に確認する資料を整理します。

最後に、実務の順序を一つにまとめます。

  1. 死亡日・死亡を知った日・相続人であることを知った日を記録する。
  2. 家を安全に管理し、鍵、保険、郵便、公共料金、近隣リスクを確認する。
  3. 遺言を探し、勝手に開封・処分しない。
  4. 戸籍を集め、相続人を確定する。
  5. 固定資産税資料、登記、名寄帳で不動産を洗い出す。
  6. 預貯金・保険・証券・債務・保証を調査する。
  7. 3か月以内に相続放棄・限定承認・単純承認を判断する。判断できなければ期間伸長を検討する。
  8. 4か月以内の準確定申告の要否を確認する。
  9. 10か月以内の相続税申告・納税の要否を確認する。
  10. 不動産評価、境界、現況、売却可能性、管理費を調査する。
  11. 遺産分割の方法を、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割から選ぶ。
  12. 争いがあれば弁護士、登記は司法書士、税務は税理士、価格は不動産鑑定士、境界は土地家屋調査士へ相談する。
  13. 3年以内の相続登記を忘れない。遺産分割が長引く場合は相続人申告登記を検討する。
  14. 売却・賃貸・居住・解体・国庫帰属の出口戦略を、税金と管理責任込みで決める。

「親の家や土地を相続することになったらまず何をすべきか」という問いへの最短回答は、“家を守り、資料を守り、期限を守り、相続してよいかを判断すること”です。家族の思い出がある不動産ほど、感情で急がず、法律・税務・登記・不動産の順に事実を積み上げる必要があります。

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Reference

参考情報・主要根拠

参考資料

  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「相続人申告登記について」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度について」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」
  • 法務局「法定相続情報証明制度」
  • 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
  • 裁判所「相続の放棄の申述」
  • 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
  • 裁判所「遺言書の検認」
  • 裁判所「遺産分割調停」
  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
  • 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」
  • 国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」
  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
  • 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
  • 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置」
  • 農林水産省「農地相続ポータル」
  • 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
  • 日本年金機構「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」
  • 全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」
  • 生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」