相続税申告で外国税額控除を入れ忘れた場合に、後から更正の請求で相続税を取り戻せる可能性、控除限度額、証拠資料、期限管理を整理します。
相続 税申告で外国税額控除を入れ忘れた場合に、後から更正の請求で相続税を取り戻せる可能性、控除限度額、証拠資料、期限管理を整理します。
原則・期限・証拠をまとめて確認します
次の重要ポイント一覧は、更正の請求で検討する入口を整理したものです。読者にとって重要なのは、単なる記載漏れではなく、法律上の税額が過大であることを資料で示す必要がある点です。番号順に、請求前に確認する条件を読み取ってください。
在外財産が日本の相続税申告で課税価格に算入されているかを確認します。
外国で課された税が相続税に相当する税かを確認します。
正しい控除額を反映すると申告済み税額が過大になるかを確認します。
国税通則法23条や相続税法32条の期限を確認します。
課税通知、納付証明、翻訳、為替換算資料を提出できるかを確認します。
このページは、相続に関連して国外財産を取得し、外国でも相続税、遺産税、登録税その他の死亡を原因とする租税を負担した人が、日本の相続税申告で外国税額控除を入れ忘れた場合に、後から更正の請求で取り戻せるかを検討する専門解説である。
想定読者は、相続人、受遺者、相続税申告を終えた人、国外財産の名義変更やプロベート手続中の人、相続人間の協議や紛争を抱える人である。法律用語と税務用語はできるだけ定義するが、内容は税理士、弁護士、司法書士、裁判所実務家、研究者、行政機関担当者が読んでも検討の入口として使える水準で整理します。
このページは、相続税法、国税通則法、国税庁公表資料、税務大学校論叢等の公開資料をもとに整理しています。具体的事案では、外国法、財産所在地、被相続人と相続人の住所、国籍、滞在履歴、財産の種類、遺産分割の状況、外国税の課税主体と課税根拠により結論が変わる。
最終更新日: 2026年5月19日
制度の要件と実務上の確認点を整理します
次の重要ポイント一覧は、更正の請求で検討する入口を整理したものです。読者にとって重要なのは、単なる記載漏れではなく、法律上の税額が過大であることを資料で示す必要がある点です。番号順に、請求前に確認する条件を読み取ってください。
在外財産が日本の相続税申告で課税価格に算入されているかを確認します。
外国で課された税が相続税に相当する税かを確認します。
正しい控除額を反映すると申告済み税額が過大になるかを確認します。
国税通則法23条や相続税法32条の期限を確認します。
課税通知、納付証明、翻訳、為替換算資料を提出できるかを確認します。
「外国税額控除の適用を忘れた場合に更正の請求で取り戻せるか」という問いに対する実務上の答えは、原則として、要件を満たし、期限内で、証拠を提出できるなら、取り戻せる可能性がある、である。
ただし、取り戻せるのは「外国で納めた税額の全額」とは限らない。相続税の外国税額控除には控除限度額がある。日本の相続税額のうち、国外財産に対応する部分を超えて控除することはできない。さらに、外国で支払ったものが日本法上の「相続税に相当する税」と評価できるか、国外財産が日本の相続税の課税価格に入っているか、誰の税として課されたか、外国税が後から減額や還付されたか、期限を過ぎていないか、といった点が問題になる。
したがって、実務では次の順序で考える。
この5点を満たす場合、単なる「外国税額控除の記載漏れ」だからという理由だけで、更正の請求の対象から当然に外れるわけではない。更正の請求は、申告した税額が法律上の税額より過大であった場合に、納税者側から減額を求める制度だからである。国税庁も、申告後に納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合には、更正の請求ができ、税務署が内容を審査して認められれば減額更正と還付が行われると説明している。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
このテーマは、税務だけで完結しにくい。相続人間で争いがあるか、国外財産の権利移転が終わっているか、外国の遺産管理制度やプロベートがどう動くか、外国税が誰に課された税か、といった点が密接に関係する。
このページは、次の専門職が通常確認する観点を統合した専門的な観点を整理します。
次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを見比べ、どの資料や判断が必要かを読み取ることです。左から右へ、項目、内容、注意点の関係を確認してください。
| 専門職 | 主な検討領域 |
|---|---|
| 税理士 | 相続税申告、外国税額控除、更正の請求、税務調査対応、外国税額の円換算、控除限度額の計算 |
| 弁護士 | 相続人間の紛争、遺産分割、遺留分、使い込み疑い、外国法上の権利関係、税務訴訟や審査請求を見据えた法的整理 |
| 司法書士 | 相続登記、名義変更、戸籍や相続関係資料の整理、裁判所提出書類作成の支援 |
| 行政書士 | 争いのない範囲での遺産分割協議書、相続人関係説明図、外国提出書類等の整理 |
| 外国弁護士、外国税理士、現地会計士 | 外国税の課税根拠、税目の性質、納税義務者、課税通知、納税証明、プロベート書類 |
| 不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士 | 国内外の不動産評価、売却、境界、分筆、換価分割の前提整理 |
| 公認会計士、中小企業診断士 | 非上場株式、国外法人持分、事業承継、会社価値の評価 |
| 金融機関、信託銀行、生命保険会社の相続担当 | 口座凍結、払戻し、遺言執行、保険金請求、外国金融機関からの証明取得 |
| 家庭裁判所関係者、調停委員、鑑定人、専門委員 | 遺産分割調停、審判、評価争点、専門的争点の整理 |
ただし、更正の請求書の作成代理や税務相談は税理士法上の税理士業務に当たる場面が多い。紛争性のある法律判断は弁護士の領域である。このページは一般情報であり、個別案件の代理や鑑定意見を代替しない。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
相続税の外国税額控除は、国外財産について外国でも相続税に相当する税が課された場合に、日本の相続税から一定額を控除する制度である。根拠は相続税法20条の2である。国税庁の通達解説も、相続又は遺贈により法施行地外にある財産を取得し、その在外財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、一定額を相続税額から控除する制度と説明している。
ここで重要なのは、これは「必要経費」や「債務控除」ではなく、相続税額から直接差し引く「税額控除」であるという点である。計算順序を誤ると、控除しすぎ又は控除不足が生じる。
更正の請求とは、納税者が申告後に「申告した税額が多すぎた」「還付が少なすぎた」と気づいたとき、税務署長に対して減額を求める手続である。国税庁は、法定申告期限後に申告内容の誤りに気づき、納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合には、更正の請求書を提出し、税務署が内容を調査して認められれば減額更正により税金が還付されると説明している。
一般的な更正の請求期間は、法定申告期限から5年である。相続税の申告期限は、通常、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内であり、被相続人の死亡時の住所が日本国内にある場合の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署である。
このため、相続税で外国税額控除を忘れた場合の実務的な起点は、多くの場合、相続税申告期限から5年以内かどうかである。ただし、相続では遺産分割、認知、遺留分、遺言発見、外国税の後日確定など、後から事情が変わることがある。これらは相続税法32条や国税通則法上の後発事由との関係で、短い期限が問題になる場合がある。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
典型例は次のようなケースである。
被相続人が日本に住んでいた。相続人Aは、米国、韓国、英国、フランス、ドイツ、オーストラリアなどに所在する不動産、預金、株式、信託受益権、国外法人持分などを取得した。日本ではその国外財産を含めて相続税申告をした。しかし、外国で課された相続税、遺産税、相続登録税に相当する税を日本の相続税額から控除できることに気づかず、第8表又は関連する計算を作らないまま相続税を納めた。その後、外国税の課税通知や納税証明を確認したところ、相続税法20条の2の要件を満たす可能性があると判明した。
この場合、次の要件がそろえば、更正の請求で取り戻せる可能性が高い。
次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを見比べ、どの資料や判断が必要かを読み取ることです。左から右へ、項目、内容、注意点の関係を確認してください。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 日本側の課税 | 在外財産が日本の相続税の課税価格に入っている |
| 外国側の課税 | その在外財産について、外国法令により相続税に相当する税が課されている |
| 控除漏れ | 当初申告で外国税額控除を適用していない、又は控除額が過少である |
| 税額過大 | 正しい控除額を反映すると、日本の相続税額が減る |
| 期限 | 更正の請求の期間内である |
| 証拠 | 外国税の性質、課税額、納付又は課税確定、対象財産、納税義務者を証明できる |
このうち、もっとも争点になりやすいのは「外国側の課税」と「証拠」である。外国で支払った公租公課だからといって、すべてが相続税法20条の2の対象になるわけではない。
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相続税の外国税額控除を理解するには、条文の要素を分解する必要がある。
対象は、相続又は遺贈により取得した財産である。相続税法では、一定の贈与やみなし取得財産も相続税の課税価格に含まれることがあるが、外国税額控除の場面では、その財産が相続税法上どのように課税価格へ入ったかを確認する必要がある。
特に、相続時精算課税により取得した財産が相続税に組み込まれる場合には、令和6年1月1日以後の贈与に関する改正後の通達上の取扱いにも注意が必要である。国税庁の通達解説は、外国税額控除の上限計算に用いる在外財産の価額について、相続時精算課税の適用を受ける財産が関係する場合の限度計算を説明している。
「法施行地外にある財産」とは、日本国外にある財産である。不動産は一般に所在地が明確だが、預金、株式、投資信託、暗号資産、信託受益権、国外法人持分、知的財産、保険契約などでは、財産の所在判定が難しいことがある。
相続税法20条の2の趣旨は、国外財産について日本と外国の双方で相続課税が重なる場合の調整である。したがって、外国税が課されたとしても、その対象が日本側の相続税の課税価格に算入されていないなら、控除の前提を欠く。
最も重要な要件である。
条文上の表現は「相続税に相当する税」であり、外国の税目名が日本語で「相続税」と訳されるかどうかだけで判断しない。税務大学校論叢は、現行法上、対象となる外国租税の範囲は「相続税に相当する税」又は「贈与税に相当する税」としか規定されず、具体的に明示されていないため、外国の法制度や課税方式にとらわれず、課税の公平性を指標として実質的判断が求められると整理している。
実務上は、次のように考える。
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| 外国で支払ったもの | 控除対象になりやすいか | 検討の方向 |
|---|---|---|
| 遺産税、相続税、相続登録税、死亡を原因とする財産移転税 | 可能性あり | 課税対象が死亡により移転又は取得した財産か、課税主体と納税義務者を確認する |
| 相続手続の登録免許税的な税 | 事案による | 税額の性質が単なる手数料か、死亡移転への課税かを確認する |
| 所得税、キャピタルゲイン税、源泉税 | 原則として相続税の外国税額控除ではない | 所得税側の外国税額控除や準確定申告、譲渡所得課税との関係を別途検討する |
| 延滞税、利子税、加算税、罰金 | 通常は対象外 | 相続税に相当する本税ではないため、税額控除対象にしないのが原則 |
| 弁護士費用、裁判所費用、プロベート費用、鑑定費用 | 対象外 | 租税ではなく手続費用又は専門家費用である |
| 外国で後日還付される税 | 控除額の見直しが必要 | 外国税が減額された場合、日本側の控除過大が生じる可能性がある |
税務大学校論叢は、死亡を契機とする課税であっても、被相続人が死亡直前に資産を処分したものとみなす場合の純利益を課税対象とするカナダのみなし譲渡課税について、相続税に相当する税とは異なるものとして検討している。
この点は実務上きわめて重要である。死亡を契機として外国で税金が発生していても、その税が「財産の移転又は取得」ではなく「所得又は利益」に課されているなら、相続税法20条の2の外国税額控除ではなく、別の税目の問題になる。
外国税額控除は無制限ではない。国税庁の通達解説は、外国税額控除の金額は、その在外財産を取得した者に係る相続税額に、在外財産の価額が相続又は遺贈により取得した財産の価額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分に占める割合を乗じて算出した金額を限度とすると説明している。
簡略化すると、次の式である。
実際の控除額は、外国で課された相続税に相当する税額と控除限度額のいずれか少ない金額である。
国税庁の通達解説は、「当該財産の価額」を、在外財産の価額の合計額からその在外財産に係る債務を控除した額とし、「課税価格計算の基礎に算入された部分」を、債務控除をした後の金額とする旨を示している。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
次の強調表示は、計算例での控除限度額を示します。読者にとって重要なのは、外国税額全額ではなく控除限度額が上限になることです。式の分子と分母が何を表すかを読み取ってください。
外国税額は10,000,000円でも、控除限度額は7,200,000円です。更正の請求で取り戻せる可能性がある金額も基本的にはこの範囲です。
次の例で考える。
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| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 相続人Aの外国税額控除前の日本の相続税額 | 18,000,000円 |
| Aが取得した国外不動産の価額 | 70,000,000円 |
| その国外不動産に係る債務 | 10,000,000円 |
| Aの課税価格計算の基礎に算入された取得財産価額 | 150,000,000円 |
| 外国で課された相続税に相当する税額を円換算した金額 | 10,000,000円 |
在外財産の価額は、70,000,000円から10,000,000円を控除した60,000,000円である。
控除限度額は、次のとおりである。
18,000,000円 × 60,000,000円 ÷ 150,000,000円 = 7,200,000円
外国税額は10,000,000円だが、控除限度額は7,200,000円である。したがって、日本の相続税から控除できる金額は7,200,000円であり、更正の請求で取り戻せる可能性がある金額も、基本的にはこの範囲である。
ここで注意必要があります点は次の3つである。
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次のようなケースは、相対的に説明しやすい。
次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを見比べ、どの資料や判断が必要かを読み取ることです。左から右へ、項目、内容、注意点の関係を確認してください。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 外国税の課税通知に、被相続人の死亡、相続人、対象財産、税額が明記されている | 相続税に相当する税であることを説明しやすい |
| 外国税が国外不動産又は国外預金など特定財産に対応している | 在外財産との対応関係が明確である |
| 日本の相続税申告書にその国外財産を入れている | 二重課税の調整という制度趣旨に合う |
| 更正の請求期限内である | 手続的な入口を満たす |
| 外国税額控除を入れると日本の相続税が明確に減る | 税額過大を示しやすい |
次のようなケースは、慎重な検討が必要である。
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| ケース | 危険な理由 |
|---|---|
| 外国で支払った税の名称が曖昧で、実質が手数料や登録料に近い | 相続税に相当する税といえるか疑義がある |
| 外国税が所得、譲渡益、みなし売却益に課されたもの | 相続税の外国税額控除ではなく所得税等の問題となる可能性が高い |
| 外国税の対象財産が日本の相続税申告に入っていない | 二重課税調整の前提を欠く可能性がある |
| 外国税が相続人ではなく遺産又は遺言執行者に課された | 実質的に誰の税として負担したか、どの財産に対応するかの説明が必要 |
| 外国税が後から還付、減額、取消しになった | 日本側で控除過大となる可能性がある |
| 相続人間で国外財産の取得者が争われている | 誰が控除を受けるか不明確になる |
| 更正の請求期限が迫っている | 外国証明の取得待ちで期限を逃すリスクがある |
制度の要件と実務上の確認点を整理します
最も典型的なのは、申告期限までに外国税の課税又は納付が分かっていたのに、日本の相続税申告で外国税額控除を入れ忘れたケースである。
この場合は、通常、国税通則法23条1項の更正の請求として整理する。つまり、当初申告の税額計算が相続税法20条の2を反映していなかったため、納付必要があります相続税額が過大であった、という構成である。
更正の請求書の理由欄には、例えば次のような趣旨を記載する。
国際相続では、外国側の遺産管理、プロベート、評価、相続人確定、税務調査などに時間がかかる。日本の相続税申告期限は通常10か月であるため、外国税がその時点で未確定ということは珍しくない。
この場合でも、外国税が確定した後に外国税額控除を反映できる余地がある。もっとも、手続構成は事案により異なる。通常の更正の請求期間内であれば、まず国税通則法23条1項による更正の請求を検討する。外国税の確定、国外財産の取得者の変更、遺産分割の成立、遺留分額の確定など、申告後の事情変更が関係する場合には、国税通則法23条2項、相続税法32条その他の特則も検討する。
相続税法32条は、一定の相続特有の後発事由により課税価格又は相続税額が過大になった場合、事由を知った日の翌日から一定期間内に更正の請求を認める制度である。代表例は、未分割財産の後日分割、相続人の異動、遺留分に関する金銭の確定、遺言書の発見などである。
実務上は、外国税が確定したら、5年あるから待てると考えるのではなく、直ちに税理士と所轄税務署に確認し、必要に応じて更正の請求書を提出するのが安全である。外国税の確定日、納税日、課税通知日、納税証明書の取得日、国外財産の分割確定日を時系列で整理し、どの期限が問題になるかを早期に確定する必要がある。
外国税額控除を受けた後、外国税が後から還付又は減額されることがある。たとえば、外国税務当局への異議申立て、評価額の減額、租税条約上の救済、二重課税調整により、外国税の本税が減る場合である。
この場合、日本側で控除した外国税額が過大となる可能性がある。控除過大により日本の相続税が不足するなら、修正申告、期限後の増額更正、延滞税等の問題が出る。還付を受けた外国税を黙っていると、後の税務調査で問題になりやすい。
したがって、外国税額控除の更正の請求をする際は、外国税が最終確定しているか、まだ争訟中か、還付可能性があるかを明確にする必要がある。未確定であれば、外国当局の手続状況を説明し、将来変更が生じた場合の対応も確認しておく。
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相続税の更正の請求手続について、国税庁は相続税及び贈与税の更正の請求手続や様式を案内している。更正の請求では、請求書だけでなく、過大であることを示す資料を整える必要がある。
外国税額控除の適用漏れで更正の請求をする場合、次の資料を用意する。
次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを見比べ、どの資料や判断が必要かを読み取ることです。左から右へ、項目、内容、注意点の関係を確認してください。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 当初の相続税申告書一式 | どの財産、税額、控除が申告済みかを確認する |
| 相続税の更正の請求書 | 手続の本体 |
| 外国税額控除を反映した再計算書 | 過大税額を示す |
| 第8表又は外国税額控除の計算資料 | 控除額と控除限度額を示す |
| 第1表、第8の8表その他の税額計算に影響する表 | 最終税額への反映を示す |
| 遺産分割協議書、遺言書、家庭裁判所の調停調書又は審判書 | 国外財産の取得者を示す |
| 財産評価明細、債務控除資料 | 在外財産の価額と債務控除後の金額を示す |
| 納付書、領収証書、還付先口座情報 | 既納付税額と還付手続に関係する |
国税庁の相続税申告書様式では、外国税額控除を受ける場合に第8表を作成し、税額控除額を申告書の税額計算に反映する流れが示されている。更正の請求でも、当初申告に対応する様式を用い、控除額の計算根拠を明確に示すことが重要である。
次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを見比べ、どの資料や判断が必要かを読み取ることです。左から右へ、項目、内容、注意点の関係を確認してください。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 外国税の申告書控え | 課税税目、対象財産、納税義務者、税額を示す |
| 課税通知書、賦課決定通知、Assessment Notice | 外国税が課されたことを示す |
| 納税証明書、領収書、送金記録 | 納付事実又は納税義務の確定を示す |
| 外国法令、税目説明、現地税理士意見書 | 相続税に相当する税であることを説明する |
| 対象財産明細、評価明細 | 日本側申告財産との対応関係を示す |
| 外国語資料の邦訳 | 税務署が内容を確認できるようにする |
| 為替換算資料 | 円換算額の根拠を示す |
| 争訟又は還付手続の状況説明 | 外国税額が未確定又は変動し得るかを示す |
邦訳は機械翻訳だけでなく、税目名、課税根拠、対象財産、納税義務者、税率、納期限、納付日を正確に訳すことが重要である。現地税理士又は外国弁護士の意見書が必要になることもある。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
外国税額控除では、外国税額を円に換算する必要がある。為替換算は、税額計算の結論を大きく左右する。どの時点のレートを用いるかは、外国税が課された日、納付日、送金日、財産評価日、申告実務の扱いなどを検討する必要がある。
実務上は、次の資料を残す。
控除限度額の計算では、外国税額だけでなく在外財産の価額、国外債務、取得財産価額も円換算されている。申告書全体の評価と整合させる必要がある。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
外国税額控除は、単純な税額計算だけでなく、相続人間の実体関係に左右される。
たとえば、国外不動産を長男が取得する予定で相続税申告をしたが、後に遺産分割調停で次男が取得することになった場合、外国税額控除を誰が受けるべきかが変わる可能性がある。外国の遺産税が遺産全体に課され、相続人全員で按分負担した場合にも、日本側でどの相続人の相続税からどの額を控除するかを検討しなければならない。
弁護士の視点では、次の点を確認する。
相続人間で争いがある場合、税務署に提出する更正の請求書だけを先行させると、後で他の相続人から「その控除は自分に帰属する」「外国税の負担割合が違う」と争われることがある。税務と民事の整理を同時に行う必要がある。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
「外国税額控除」という言葉は、所得税にも法人税にも存在する。相続税の外国税額控除とは別制度である。
国税庁の所得税に関する解説では、居住者に係る外国税額控除について、適用を受けるには、外国税額控除に関する明細書や外国所得税を課されたことを証する書類などを確定申告書、修正申告書又は更正の請求書に添付する必要があるとされている。
これは所得税の話であり、相続税法20条の2の控除とは根拠条文も計算も違う。たとえば、被相続人が保有していた外国株式の配当源泉税、外国不動産の賃料所得に対する源泉税、死亡時に発生したみなし譲渡益課税などは、所得税や準確定申告、譲渡所得課税、外国税額控除の別制度で検討する可能性がある。相続税申告の外国税額控除にそのまま入れてよいわけではない。
この混同は、税務調査で否認されやすい。資料を見たときに、税の名称だけでなく、課税対象が「財産の死亡移転」なのか「所得、利益、売却益」なのかを確認する。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
次の判断の流れは、更正の請求までの実務手順を五段階で示します。読者にとって重要なのは、請求理由と証拠の対応を崩さないことです。上から順に、当初申告の確認から税務署対応までを読み取ってください。
国外財産、評価額、債務、取得者、第8表、他の税額控除を確認します。
税目名、根拠法令、課税主体、納税義務者、対象財産、納付日を確認します。
外国税額の円換算額、在外財産の価額、債務、相続人ごとの相続税額を整理します。
事実、法令、計算、証拠を理由欄や別紙で対応させます。
問い合わせや追加資料依頼に備えます。
最初に確認する資料は、当初の相続税申告書一式である。特に次を確認する。
当初申告書に国外財産が入っていない場合は、外国税額控除だけでなく、そもそも相続財産の申告漏れという別問題が生じる可能性がある。申告漏れがあるのに還付だけを求めることはできない。全体を再計算し、増額要素と減額要素を同時に整理する必要がある。
次に、外国税の資料を読み込む。確認するポイントは次のとおりである。
税目名に「inheritance」「estate」「succession」「death duty」「transfer by death」などの語がある場合でも、それだけで十分ではない。反対に、税目名に「registration」「stamp」「transfer」などの語が含まれていても、実質が死亡による財産移転に対する税であれば、検討の余地がある。現地税法の確認が不可欠である。
相続税法20条の2の控除額は、外国税額と控除限度額の比較で決まる。控除限度額の計算を誤ると、過大請求になる。
確認必要があります事項は次のとおりである。
共同相続人ごとに別計算になる点にも注意する。相続税の総額を単純に全員で割るのではなく、各相続人が取得した財産と税額に応じて計算する。
更正の請求書では、単に「外国税額控除を忘れた」と書くだけでは不十分である。税務署が審査できるよう、事実、法令、計算、証拠を対応させる。
理由欄や別紙には、次の構成で記載すると分かりやすい。
提出後、税務署から問い合わせや追加資料の依頼が来ることがある。特に、外国語資料、外国税の性質、財産の所在、相続人間の取得関係、為替換算、外国税の未確定性について照会されやすい。
国税庁は、更正の請求書が提出されると税務署が内容を調査し、納めすぎの税金があると認めた場合には減額更正をして税金を還付すると説明している。
認められない場合には、請求どおりの減額がされない。処分内容に不服がある場合は、国税通則法上の不服申立て制度を検討する。金額が大きい国際相続では、提出前から、税理士と弁護士が証拠構造を整えることが望ましい。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
次の時系列は、外国側の手続と日本の相続税申告期限がずれる場面を整理したものです。読者にとって重要なのは、外国税額が未確定でも日本の期限を放置しないことです。上から順に、期限管理の流れを読み取ってください。
海外財産、外国口座、外国証券、相続人の住所や国籍を早期に整理します。
国によって申告期限や延長申請が異なり、日本の期限とずれることがあります。
被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内が相続税申告期限です。
外国税の確定日、納付日、通知日、送金日を記録します。
更正の請求の一般的な期間は、法定申告期限から5年である。国税庁の解説も、一般的な更正の請求期間を法定申告期限から5年と説明している。
相続税の法定申告期限は、通常、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内である。したがって、典型的には次のようになる。
次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。読者にとって重要なのは、列ごとの違いを見比べ、どの資料や判断が必要かを読み取ることです。左から右へ、項目、内容、注意点の関係を確認してください。
| 日付 | 例 |
|---|---|
| 相続開始日 | 2025年1月10日 |
| 死亡を知った日 | 2025年1月10日 |
| 相続税申告期限 | 2025年11月10日 |
| 一般的な更正の請求期限 | 2030年11月10日 |
ただし、期限が土日祝日に当たる場合の取扱い、海外居住者、災害、特例、後発事由などは個別確認が必要である。
相続税には、相続特有の後発事由に対応する更正の請求の特則がある。相続税法32条は、一定の事由により課税価格又は相続税額が過大になったときに、事由を知った日の翌日から一定期間内に更正の請求を認める制度である。代表的な事由として、未分割財産の後日分割、相続人の異動、遺留分額の確定、遺言書の発見などがある。
外国税額控除の適用漏れが、単なる当初申告の計算漏れなのか、外国税の後日確定や遺産分割の後日変更を伴うのかにより、検討必要があります期限が変わる。したがって、期限管理では次の日を一覧表にする。
この時系列表がないと、5年期限だけを見て安心してしまい、別の短期期限を逃す危険がある。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
次の一覧は、更正の請求で深掘りする争点を整理したものです。読者にとって重要なのは、形式ではなく実質、支払者ではなく最終負担者、税名ではなく課税原因を説明することです。各項目を、提出前の論点整理として読み取ってください。
遺産全体に課税される制度でも、実質的な負担者と対象財産を説明する必要があります。
単なる手数料か、死亡による財産移転への課税かを確認します。
代表者の立替払いなら、最終負担者を協議書や精算書で示します。
日本の相続税がゼロの場合、外国税額控除の実益がないことがあります。
期限が迫る場合は、未取得資料と取得見込みを説明します。
国によっては、日本のように相続人が取得した財産に応じて課税される制度ではなく、被相続人の遺産全体に課税する制度がある。この場合、日本の相続税法20条の2の適用で、外国税をどの相続人にどのように対応させるかが問題になる。
形式的には遺産に課税されていても、実質的に死亡による財産移転に対する税であり、かつ日本でその在外財産を取得した相続人がその税を負担しているなら、控除対象として検討する余地がある。ただし、遺産全体への税を各相続人へどう配分するか、税額が特定の財産に対応しているか、外国での納税義務者と日本での財産取得者が一致するかを説明しなければならない。
外国で不動産を相続すると、登記、登録、移転、印紙に関する税が発生することがある。これが相続税に相当する税といえるかは、名称だけでは決まらない。
単なる行政手数料、登記手数料、書類作成費用であれば、相続税法20条の2の対象にはなりにくい。一方、死亡を原因とする財産移転に着目して、一定の税率で課される租税であれば、対象となる余地がある。外国法の条文、税額計算、課税標準、納税義務者、通常の売買移転税との違いを示す必要がある。
長男が代表して外国税を支払ったが、国外財産は長女が取得したというケースがある。この場合、支払者と控除を受ける者が一致しない。
外国税額控除は、基本的には在外財産を取得し、その財産について外国税を負担した者の相続税額から控除する制度である。代表者の立替払いなら、実質的な負担者を資料で示す。遺産分割協議書や精算書に、外国税の最終負担者と負担割合を明記しておくとよい。
配偶者が国外財産を取得し、外国税を支払ったとしても、日本の相続税が配偶者の税額軽減によりゼロになることがある。この場合、外国税額控除でさらに還付を受けることは通常できない。外国税額控除は、日本の相続税額から控除する制度であり、控除対象となる日本の相続税がなければ、控除の実益がない。
ただし、他の相続人との遺産分割や税額按分に影響することがある。配偶者が国外財産を取得するのか、他の相続人が取得するのかで、日本全体の税負担と外国税額控除の使い切りが変わる可能性がある。
外国の税務当局から納税証明や課税通知をすぐに取得できないことがある。特にプロベート中、相続人代表者が外国にいない、現地弁護士が資料を保持している、金融機関が口座情報を出さない、といった事情がある。
証明が不十分なまま更正の請求をしても、税務署が内容を確認できなければ認められにくい。ただし、期限が迫っている場合には、提出を先行し、後日補正や追加資料提出を相談することがある。どの資料が未取得で、いつ取得できる見込みかを別紙で説明する。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
一般的には、必ずではない。要件、期限、証拠、控除限度額を満たす場合に戻る可能性がある。外国で払った税が相続税に相当しない場合、国外財産が日本の課税価格に入っていない場合、控除しても日本の税額が減らない場合、期限を過ぎている場合は、戻らない又は一部しか戻らない。
一般的には、返ってくるとは限らない。相続税法20条の2には控除限度額がある。外国税額と控除限度額のいずれか少ない金額が控除額になる。控除限度額を超える外国税は、日本の相続税から控除できない。
一般的には、外国税が「課された」ことを示せるか、税額が確定しているか、納付義務が争われていないかにより判断が変わる。納税証明がない場合でも課税通知や賦課決定で説明できる場合がある一方、未確定の見込額だけでは難しいことがある。期限が迫る場合は、資料不足のまま放置せず、税理士を通じて所轄税務署に相談する。
一般的には、通常は入れられない。外国の源泉所得税は、所得税の外国税額控除や準確定申告、相続後の所得税申告で検討する。相続税法20条の2の対象は、国外財産について外国法令により課された相続税に相当する税である。
一般的には、要件を満たし、期限内であれば、第8表相当の再計算資料を添付して更正の請求をする余地がある。重要なのは、当初添付していなかった事実だけで諦めず、相続税法20条の2の要件、税額過大、証拠を整理して提出することである。
一般的には、日本の相続税は各相続人の取得財産と税額に応じて計算されるため、原則として、税額が過大になっている各相続人が更正の請求を行う。代表相続人が書類をまとめることはあっても、控除額の帰属と還付先は各相続人ごとに整理する。
一般的には、税務調査が終わっていても、更正の請求期限内で、請求理由が認められるなら、検討の余地はある。ただし、過去の調査で同じ外国税額控除の論点が確認済みか、修正申告や更正処分の内容と矛盾しないかを慎重に確認する必要がある。
一般的には、未分割のまま申告している場合、誰が国外財産を取得したことになるか、法定相続分による仮計算か、後日分割で取得者が変わるかにより、控除額が変わる。未分割財産の後日分割は相続税法32条の特則とも関係する。遺産分割の見通しと税額再計算を同時に検討する。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
相談時には、次の質問を持参すると効率的である。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
プロベート費用、現地弁護士費用、裁判所費用、登記費用、翻訳費用、鑑定費用を「外国で相続に関して払ったもの」として一括し、外国税額控除に入れてしまう誤りである。外国税額控除の対象は、相続税に相当する税である。費用と税は区分する。
外国株式の配当源泉税、外国不動産の賃料税、死亡時のみなし譲渡益課税を相続税の外国税額控除に入れてしまう誤りである。これらは所得税側で検討する可能性があるが、相続税法20条の2とは別である。
外国税額だけを見て還付額を期待し、控除限度額を計算していないケースである。外国税が多額でも、日本の相続税額や国外財産割合が小さい場合、控除額は限定される。
外国税額控除は、各相続人の取得財産と税額に応じて計算する。全員が同じ割合で控除できるわけではない。国外財産を取得していない相続人が控除を受けることは通常困難である。
外国のプロベートや税務手続が長引くため、日本の更正の請求期限を忘れるケースである。日本の期限は日本法で進む。外国手続の進行表と日本の税務期限を別々に管理する。
外国語の課税通知をそのまま出しても、税務署が税目の性質や対象財産を正確に確認できないことがある。少なくとも重要部分の邦訳、税目説明、対象財産との対応表を作る。
外国で不服申立て中、還付請求中、租税条約上の救済手続中であるにもかかわらず、日本で満額控除を求めると、後で控除過大になる可能性がある。外国税の確定状況は正直に説明する。
制度の要件と実務上の確認点を整理します
外国税額控除の適用を忘れた場合に更正の請求で取り戻せるか。
答えは、相続税については、要件を満たすなら取り戻せる可能性がある、である。根拠は、相続税法20条の2の外国税額控除と、国税通則法23条の更正の請求である。
ただし、次の条件を満たす必要がある。
これらを満たさない場合、外国で多額の税を支払っていても、日本で還付されないことがある。特に、外国税が所得税、みなし譲渡益課税、手数料、ペナルティである場合、相続税の外国税額控除ではなく別の問題になる。
国際相続では、相続税申告の期限、外国税の確定時期、遺産分割の進行、外国証明の取得時期がずれる。更正の請求で取り戻すためには、単に「忘れた」と説明するのではなく、相続税法20条の2の要件、控除限度額、国税通則法23条の期間、相続税法32条等の後発事由、外国税の実質を、証拠にもとづいて組み立てる必要がある。
もっとも重要な実務上の助言は、期限が残っていると思っても、外国税の資料がそろった時点で直ちに動くことである。5年期限、4か月型の特則、外国税の還付可能性、相続人間の取得関係は、後から取り返しがつきにくい。