非上場株式の相続税評価では、株主区分、会社規模、特定会社判定を順番に確認します。大会社・中会社・小会社で評価方式がどう変わるのかを、判定基準、計算構造、遺産分割実務まで整理します。
非上場株式の相続税評価では、株主区分、会社規模、特定会社判定を順番に確認します。
非上場株式評価では、株主の立場、会社規模、資産構成を順番に確認します。
相続財産に中小企業、同族会社、資産管理会社などの取引相場のない株式が含まれる場合、評価額は預金残高のように一目で確定しません。相続税の計算では、国税庁の財産評価基本通達に基づき、取得者の支配力、会社の規模、資産構成、営業状態などを順番に見て評価方式を決めます。
会社の規模によって株式の評価方法が変わる仕組みは、主に原則的評価方式の内部で働きます。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は両者の併用方式が中心です。ただし、少数株主には配当還元方式が使われることがあり、特定の評価会社に当たると通常の規模判定より別の評価ルールが優先されることがあります。
このページの重要ポイント一覧は、評価方式を決める前に何を確認すべきかを示しています。税務申告だけでなく、遺産分割や遺留分の話し合いにも影響するため、どの前提が評価額を動かすのかを読み取ることが重要です。
同族株主等か、配当を期待する少数株主等かによって、原則的評価方式か配当還元方式かが変わることがあります。
大会社、中会社、小会社の区分により、類似業種比準方式と純資産価額方式の使い方が変わります。
株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などでは、通常の評価方式と異なる扱いになります。
上場株式と違い、市場価格がない株式は複数の資料と前提を組み合わせて評価します。
上場株式であれば、証券取引所で形成される市場価格を基礎に相続税評価を行えます。これに対し、非上場会社、同族会社、親族経営会社、資産管理会社などでは、市場で日々成立している客観的な取引価格がありません。取引相場のない株式の評価では、帳簿上の資産、土地や有価証券の含み益、会社の利益水準、配当実績、議決権割合などが複合的に影響します。
次の比較表は、非上場株式評価がどの場面で問題になり、どの専門家が関わりやすいかを整理したものです。目的によって評価の使い方が変わるため、どの欄に当てはまる話なのかを読み分けることが重要です。
| 場面 | 問題になること | 主な関与専門家 |
|---|---|---|
| 相続税申告 | 課税価格に入れる株式価額 | 税理士、公認会計士 |
| 遺産分割協議 | 後継者が株式を取得し、他の相続人へ代償金を払う場合の評価 | 弁護士、税理士、公認会計士 |
| 遺留分侵害額請求 | 遺言や生前贈与で後継者へ株式が集中した場合の基礎財産評価 | 弁護士、税理士、公認会計士 |
| 会社支配権争い | 議決権割合、譲渡制限、株主名簿、買戻し交渉 | 弁護士、司法書士、公認会計士 |
| 事業承継対策 | 贈与、持株会社化、種類株式、納税資金設計 | 税理士、弁護士、公認会計士、中小企業診断士 |
裁判所の遺産分割調停では、分けるべき遺産を確定し、その評価額を定めたうえで分割方法を話し合う流れになります。話し合いがまとまらない場合は審判へ移ることもあるため、非上場株式の評価資料は早めに集める必要があります。
評価方式は、会社の大きさだけでなく取得者の立場と会社の特殊性で変わります。
非上場株式の評価は、会社規模だけを見て決めるものではありません。まず取得者が経営支配力を持つ同族株主等なのか、単に配当を期待する少数株主等なのかを確認します。そのうえで原則的評価方式を使う場合に、会社規模判定が問題になります。
次の判断の流れは、評価方式を決める順番を表しています。最初の分岐を飛ばすと、大会社か小会社かを正しく調べても評価方式を誤るため、上から順に確認することが重要です。
同族株主等か、少数株主等かを議決権割合や同族関係者で確認します。
少数株主等に当たる場合は配当還元方式が問題になります。
従業員数、総資産価額、取引金額、業種区分を確認します。
株式や土地の保有割合、開業時期、比準要素を確認します。
大会社、中会社、小会社の基本ルールに進みます。
株主区分が先に来るのは、同じ会社の同じ株式でも、取得者の支配力によって経済的な意味が異なるためです。会社を支配できる株主にとっては会社財産や収益力が重要ですが、経営に関与できない株主にとっては配当を受ける期待が中心になります。
大会社・中会社・小会社の区分により、収益力を見る割合と純資産を見る割合が変わります。
原則的評価方式における基本対応は、大会社は類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は純資産価額方式です。この違いは、会社の事業規模や継続性、個人事業に近い実態かどうかを評価に反映するためのものです。
次の比較表は、会社規模ごとの原則的な評価方法と制度上の考え方を並べたものです。規模が大きいほど上場会社に近い収益・市場要素を読み取り、規模が小さいほど会社財産そのものを重視する関係を確認してください。
| 会社規模 | 原則的な評価方法 | 考え方 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 上場会社に近い規模・事業実態を持つため、類似する上場会社の株価等に比準します。 |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式 | 大会社と小会社の中間として、収益・市場要素と純資産要素を加重平均します。 |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 個人事業者に近い実態を持つため、会社財産を相続税評価額に洗い替えた純資産を重視します。 |
大会社は事業規模や取引量が大きく、事業継続性も高いと考えられるため、会社を解散した場合の財産価値だけでなく、同業種企業の株価との均衡を反映します。一方、小会社は代表者個人の信用や人的関係に依存しやすく、会社財産とオーナー個人の事業用財産の距離が近いことが多いため、純資産価額方式を基礎にします。
次の割合比較は、中会社で類似業種比準価額をどの程度使うかを表しています。数値が高いほど類似業種比準価額の影響が大きく、数値が低いほど純資産価額の影響が強くなる点を読み取ってください。
従業員数、総資産価額、取引金額、業種区分を組み合わせて判定します。
会社規模は、主に従業員数、総資産価額、取引金額で判定します。従業員数は継続勤務従業員に、継続勤務従業員以外の労働時間を1,800時間で割った人数を加味する形で確認します。総資産価額は会社規模判定では帳簿価額ベースで見る点が重要です。
次の比較表は、会社規模判定に使う三要素と確認資料を整理したものです。どの資料を集めれば判定の根拠を説明できるかを読み取ることで、申告前の準備漏れを防ぎやすくなります。
| 判定要素 | 意味 | 実務上の確認資料 |
|---|---|---|
| 従業員数 | 直前期末以前1年間の従業員数。短時間勤務者等は労働時間を1,800時間で割って加味します。 | 賃金台帳、出勤簿、雇用契約、社会保険資料 |
| 総資産価額 | 直前期末の帳簿価額ベースの総資産です。 | 決算書、勘定科目内訳書、固定資産台帳 |
| 取引金額 | 直前期末以前1年間の事業に係る取引金額です。 | 損益計算書、売上台帳、試算表 |
最初の大きな分岐は従業員数70人以上かどうかです。70人以上であれば大会社とされ、70人未満の場合は業種別に総資産価額・従業員数区分と取引金額区分を組み合わせて判定します。
次の比較表は、70人未満の場合の大会社基準を業種別に整理したものです。業種ごとに金額基準が違うため、卸売業、小売・サービス業、それ以外のどれに当たるかを先に確認する必要があります。
| 業種 | 総資産価額・従業員数による基準 | 取引金額による基準 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 総資産20億円以上、かつ従業員数35人超 | 30億円以上 |
| 小売・サービス業 | 総資産15億円以上、かつ従業員数35人超 | 20億円以上 |
| その他の業種 | 総資産15億円以上、かつ従業員数35人超 | 15億円以上 |
中会社はさらに大・中・小に分かれ、L割合が0.90、0.75、0.60に変わります。次の比較表では、区分ごとのL割合と業種別の主な基準をまとめています。L割合が評価額に直結するため、自社がどの行に入るかを慎重に読み取ることが大切です。
| 区分 | L割合 | 卸売業の総資産・従業員数 | 小売・サービス業の総資産・従業員数 | その他の総資産・従業員数 | 卸売業の取引金額 | 小売・サービス業の取引金額 | その他の取引金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 中会社の大 | 0.90 | 4億円以上20億円未満、従業員35人超 | 5億円以上15億円未満、従業員35人超 | 5億円以上15億円未満、従業員35人超 | 7億円以上30億円未満 | 5億円以上20億円未満 | 4億円以上15億円未満 |
| 中会社の中 | 0.75 | 2億円以上4億円未満、従業員20人超35人以下 | 2億5,000万円以上5億円未満、従業員20人超35人以下 | 2億5,000万円以上5億円未満、従業員20人超35人以下 | 3億5,000万円以上7億円未満 | 2億5,000万円以上5億円未満 | 2億円以上4億円未満 |
| 中会社の小 | 0.60 | 7,000万円以上2億円未満、従業員5人超20人以下 | 4,000万円以上2億5,000万円未満、従業員5人超20人以下 | 5,000万円以上2億5,000万円未満、従業員5人超20人以下 | 2億円以上3億5,000万円未満 | 6,000万円以上2億5,000万円未満 | 8,000万円以上2億円未満 |
次の比較表は、小会社の基準をまとめたものです。小会社は純資産価額方式が中心になるため、土地、有価証券、貸付金、役員借入金など財産項目ごとの検討が重くなる点を読み取ってください。
| 業種 | 総資産価額・従業員数による小会社基準 | 取引金額による小会社基準 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 総資産7,000万円未満、または従業員5人以下 | 2億円未満 |
| 小売・サービス業 | 総資産4,000万円未満、または従業員5人以下 | 6,000万円未満 |
| その他の業種 | 総資産5,000万円未満、または従業員5人以下 | 8,000万円未満 |
評価方式ごとの計算構造を押さえると、会社規模判定が評価額に与える影響を理解しやすくなります。
類似業種比準方式は、評価会社と事業内容が類似する上場会社群の株価を基礎に、評価会社の配当、利益、純資産を比較して株価を求める方法です。利益要素が強く反映されるため、役員報酬、退職金、特別損益、非経常損益の扱いには注意が必要です。
類似業種の株価 × 比準要素の加重平均 × しんしゃく率 × 1株当たり資本金等の額 / 50円純資産価額方式は、会社の資産・負債を相続税評価額に洗い替え、評価差額に対する法人税額等相当額を控除したうえで1株当たり価額を求める方法です。令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与で取得した取引相場のない株式等については、評価差額に対する法人税額等相当額の割合が37%から38%へ改正されています。
{相続税評価額による総資産価額 - 負債の合計額 - 評価差額に対する法人税額等相当額} / 発行済株式数併用方式は、中会社で使われます。次の強調表示は、L割合が会社規模によって変わる点を示しています。Lが大きいほど類似業種比準価額の影響が大きく、Lが小さいほど純資産価額の影響が大きいと読み取れます。
中会社の大はL 0.90、中会社の中はL 0.75、中会社の小はL 0.60です。同じ会社財産を持っていても、規模判定によって評価額に反映される要素が変わります。
配当還元方式は、主に少数株主等に適用される特例的評価方式です。会社規模ではなく株主の立場を重視するため、大会社の株式でも取得者が要件を満たす少数株主等であれば配当還元方式になることがあります。
1株当たり年配当金額(50円換算) / 10% × 1株当たり資本金等の額 / 50円従業員数、総資産価額、取引金額のどれが効くかを具体例で確認します。
会社規模判定では、一つの数値だけで結論を出すと誤りやすくなります。次の比較表は、3つの例でどの要素が最終判定に効くかを整理したものです。従業員数だけ、資産だけ、売上だけで判断できないことを読み取ってください。
| 例 | 前提 | 判定のポイント | 基本となる評価方式 |
|---|---|---|---|
| 製造業 | 従業員80人、総資産8億円、取引金額10億円 | 従業員数が70人以上のため大会社です。 | 類似業種比準方式 |
| サービス業 | 従業員30人、総資産7億円、取引金額4億円 | 総資産は中会社の大に見えても、従業員数との下位区分により中会社の中となり、Lは0.75です。 | 類似業種比準価額75%、純資産価額25%の併用 |
| 建設業 | 従業員10人、総資産10億円、取引金額16億円 | 従業員数は少なくても、取引金額がその他業種の大会社基準15億円以上に当たる可能性があります。 | 大会社判定の可能性 |
次の判断の流れは、70人未満の会社で区分を進めるときの見方を表しています。総資産価額と従業員数では下位を採り、その後に取引金額区分との上位を採る点が重要です。
卸売業、小売・サービス業、その他の業種に分けます。
この2つの組み合わせでは下位の区分を採ります。
総資産・従業員数区分と取引金額区分のうち上位の区分を採ります。
大会社、中会社、小会社、または中会社内のL割合を確認します。
資産構成や営業状態が特殊な会社では、通常の会社規模判定だけでは足りません。
会社規模判定で大会社・中会社・小会社を決めても、資産構成や営業状態が特殊であれば通常の評価方式では実態を反映しにくいことがあります。特定の評価会社に当たる場合、純資産価額方式または清算分配見込額による評価が問題になります。
次の注意点一覧は、通常の規模別評価より先に確認したい特定会社の代表例を示しています。資産管理会社や不動産保有会社では評価額が大きく変わり得るため、どの要素が該当性を左右するかを読み取ってください。
総資産価額のうち株式、出資、新株予約権付社債等の価額割合が一定以上の会社です。資料上は50%以上という基準が示されています。
総資産価額のうち土地等の価額割合が高い会社です。資料上は大会社70%以上、中会社90%以上という基準が示されています。
配当、利益、純資産という三つの比準要素のうち複数がゼロで、類似業種比準方式の前提が弱い会社です。
開業後3年未満、開業前、休業中、清算中など、通常の事業実績を前提にしにくい会社です。
特定会社判定を後回しにすると、会社規模判定で出した評価方式が後から変わることがあります。不動産賃貸会社、旧地主系法人、持株会社、資産管理会社では、早い段階で有価証券と土地の保有割合を確認することが大切です。
税務上の課税価格と、相続人間の公平を図るための価額は一致しないことがあります。
相続税評価は、相続税法上の課税価格を計算するための評価です。相続税申告では、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行う必要があり、遺産分割が未了でも申告期限が延びるわけではありません。そのため、非上場株式の評価は早期に着手する必要があります。
次の比較表は、相続税評価額と遺産分割・遺留分で問題になる価額がずれやすい理由を整理したものです。どの目的の評価なのかを区別しないと、代償金や遺留分の話し合いで争点が混線する点を読み取ってください。
| 論点 | 確認すべき事項 |
|---|---|
| 評価目的 | 相続税申告、遺産分割、遺留分、株式売買のいずれかを明確にします。 |
| 評価基準時 | 相続開始日、申告時、分割時、鑑定時のどれを基準にするかを確認します。 |
| 評価方式 | 税務通達評価、企業価値評価、合意評価のどれを用いるかを確認します。 |
| 資料範囲 | 決算書何期分、試算表、土地資料、役員報酬、関連会社取引などを整理します。 |
| 鑑定人・専門家 | 税理士、公認会計士、不動産鑑定士、裁判所鑑定人などの関与を確認します。 |
| 費用負担 | 鑑定費用や専門家費用を誰が負担するかを話し合います。 |
遺産分割では、後継者が株式を取得して事業を継続する事情、他の相続人への代償金支払能力、会社の資金繰りも問題になります。裁判上の鑑定では、DCF法、純資産法、類似会社比較法など、税務通達とは異なる企業価値評価手法が補助的に検討されることがあります。
税務、法律、会計、登記、不動産評価の役割を分けて考える必要があります。
非上場株式評価は、税務計算だけで完結しないことがあります。遺産分割や遺留分、会社支配権、不動産評価、相続登記が絡むと、複数の専門家が分担して関与します。
次の専門家別一覧は、誰に何を相談すべきかを整理したものです。依頼先を誤ると必要資料の収集や手続が遅れるため、各専門家の役割の違いを読み取ってください。
相続税申告、財産評価基本通達に基づく評価、評価明細書作成、税務調査対応を担います。
申告税務評価評価額に争いがある遺産分割協議、調停、審判、遺留分侵害額請求、株式帰属争いを扱います。
紛争民事評価相続登記、不動産名義変更、会社登記、役員変更、株式承継後の登記事項確認を担います。
登記会社が不動産を多く保有している場合、土地評価や時価鑑定が重要になります。
不動産事業承継計画、後継者育成、経営改善、納税資金、株式集約の設計で関与します。
承継税務代理、法律代理、登記申請などには資格ごとの独占業務があります。全体を一人に任せるというより、評価目的ごとに必要な専門家を組み合わせることが実務上の出発点になります。
売上高だけ、人数だけ、帳簿価額と相続税評価額の混同が評価ミスにつながります。
会社規模判定は、表に数値を当てはめるだけに見えて、実務上は誤りやすい点が多くあります。売上高だけで判断したり、業種区分を安易に選んだりすると、会社規模とL割合が変わる可能性があります。
次の注意点一覧は、評価方式を誤らないために確認したい典型的な落とし穴をまとめたものです。どの前提を誤ると評価額が動くのかを読み取り、資料で説明できる状態にしておくことが重要です。
取引金額は重要ですが、従業員数、総資産価額、業種区分も合わせて判定します。
卸売業、小売・サービス業、その他では基準金額が異なります。複数事業では主たる事業を確認します。
70人以上、35人超、20人超、5人超の境目は会社規模に直結します。短時間勤務者や出向者の扱いも確認します。
会社規模判定は帳簿価額ベース、純資産価額方式は相続税評価額ベースで資産を見ます。
大会社や中会社になっても、株式等保有特定会社や土地保有特定会社に該当すれば結果が変わります。
令和8年4月1日以後は、純資産価額方式の評価差額に対する法人税額等相当額の割合が38%です。
現行制度を正確に使いつつ、制度変更リスクにも注意が必要です。
会社規模によって評価方式が変わる現行制度は、実務上長く使われてきました。一方で、近年は評価方式間の評価額のかい離や、会社規模が異なる株式を取得した人の公平性について見直し議論があります。
次の強調表示は、近時資料で示された重要な問題意識をまとめたものです。現行通達による評価が必要である一方、類似業種比準方式の比重を高める対策や株式分散策には、将来の制度変更リスクがある点を読み取ってください。
国税庁の有識者会議資料では、評価方式間のかい離や、会社規模が大きくなるほど純資産価額と申告評価額のかい離が大きい傾向が示されています。
現時点で相続、贈与、事業承継を検討する場合、現行通達に基づく評価を正確に行うことが必要です。ただし、会社規模を意図的に大きくする対策、配当還元方式を狙う株式分散、特定会社判定を回避する組織再編などは、税務上・民事上のリスクを慎重に検討する必要があります。
株主関係、会社資料、決算資料、資産資料を早めに整理します。
非上場株式評価では、会社の協力が得られるかどうかで進み方が大きく変わります。後継者が会社を支配している場合、他の相続人は決算書や株主名簿にアクセスしにくいことがあり、資料収集自体が争点になることもあります。
次の資料一覧は、専門家へ依頼する前にそろえたい資料を分類したものです。どの分類の資料が不足しているかを確認し、評価方式・株主区分・特定会社判定に必要な根拠を読み取れる状態にすることが重要です。
| 分類 | 具体資料 |
|---|---|
| 株主関係 | 株主名簿、株式数、議決権数、親族関係図、過去の株式移動履歴 |
| 会社基本情報 | 定款、登記事項証明書、会社案内、組織図、事業内容資料 |
| 決算資料 | 直近3期程度の決算書、法人税申告書、勘定科目内訳書、試算表 |
| 従業員資料 | 賃金台帳、雇用契約書、出勤簿、パート・アルバイト労働時間集計 |
| 配当資料 | 株主総会議事録、配当決議、配当金支払明細、利益処分資料 |
| 資産資料 | 固定資産台帳、不動産登記簿、路線価図、賃貸借契約、有価証券明細 |
| 負債資料 | 借入金明細、役員借入金、未払金、退職金規程、保証債務資料 |
| 関連会社 | 子会社・関連会社株式の明細、グループ内取引、貸付金・借入金 |
| 相続資料 | 遺言書、遺産分割協議書案、戸籍、相続関係説明図、相続税申告資料 |
資料の不足は、評価額への不信感につながります。会社規模判定表、株主区分判定、特定会社判定、評価明細書、決算資料、土地評価資料を並べ、どの前提が評価額に効いているかを説明できる状態にしておくことが紛争予防につながります。
評価額の正確性だけでなく、会社の存続と相続人間の公平も問題になります。
後継者が株式を取得して会社を継ぐ場合、評価額が高いほど相続税や代償金の負担が重くなります。一方、評価額を下げることだけを目的にすると、他の相続人から会社価値を低く見積もっていると疑われ、遺産分割が紛争化します。
次の比較一覧は、後継者側、非後継者側、全相続人に共通する確認点を分けたものです。どの立場でも、評価の根拠と会社の将来を同時に見る必要があることを読み取ってください。
会社規模判定、特定会社判定、株主区分判定を資料付きで示し、代償金支払能力と会社資金繰りを区別して説明します。
どの評価方式で計算されたか、特定会社に該当しない根拠は何か、利益・配当・役員報酬に不自然な点がないかを確認します。
相続税評価額と民事上の合意評価額が異なる場合、その理由を文書化することも重要です。結論先行で争うのではなく、どの前提が評価額に効いているかを見える形にすることが、適正申告と紛争予防の出発点になります。
会社規模判定だけで結論を出さず、個別資料で確認する必要があります。
一般的には、会社規模が小さいほど評価額が低くなるとはいえません。小会社は純資産価額方式が中心になるため、土地や有価証券の含み益が大きい会社では評価額が高くなる可能性があります。具体的な見通しは、会社資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、従業員数だけで会社規模は決まりません。取引金額が大きい場合には大会社や中会社になる可能性があり、総資産価額と従業員数の判定、取引金額区分との比較を順番に確認する必要があります。具体的な判定は、評価明細書と根拠資料をもとに専門家へ確認する必要があります。
一般的には、少数株主であっても常に配当還元方式になるとは限りません。同族株主の有無、同族関係者グループの議決権割合、中心的同族株主、取得後の議決権割合、役員該当性などによって結論が変わる可能性があります。具体的な判定は、株主名簿や親族関係を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続人全員が納得して合意する場合に相続税評価額を参考にすることはあります。ただし、相続税評価は課税目的の通達評価であり、遺産分割や遺留分の民事上の評価と一致しない可能性があります。争いがある場合は、評価目的と基準時を明確にしたうえで弁護士、税理士、公認会計士等へ相談する必要があります。
一般的には、土地保有特定会社に該当するか、純資産価額方式で土地をどう評価するかが重要です。相続税評価では路線価等が中心になる一方、遺産分割では時価鑑定が問題になる可能性があります。具体的な対応は、不動産資料を整理したうえで税理士、弁護士、不動産鑑定士等へ相談する必要があります。
一般的には、令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与で取得した取引相場のない株式等について、純資産価額方式における評価差額に対する法人税額等相当額の割合が37%から38%になっています。具体的な計算では、相続開始日・贈与日と評価明細書様式を確認する必要があります。
評価方式の選択、資料収集、説明可能性をセットで確認しましょう。
会社の規模によって株式の評価方法が変わる仕組みは、非上場株式の相続税評価を理解するうえで避けて通れない中核制度です。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は併用方式という基本構造により、従業員数、総資産価額、取引金額、業種区分によって評価結果が大きく変わります。
ただし、会社規模判定は評価実務の一部にすぎません。株主区分による配当還元方式の適用、特定の評価会社の判定、純資産価額方式における資産評価、令和8年改正への対応、相続税評価と民事上評価の違いまで含めて、はじめて実務に耐える評価になります。
最も重要なのは、結論先行の議論を避けることです。会社規模判定表、株主区分判定、特定会社判定、評価明細書、決算資料、土地評価資料をそろえ、どの前提が評価額に効いているのかを可視化することが、紛争予防と適正申告の出発点になります。