2σ Guide

自社株式の評価額を
生前に引き下げる方法

非上場会社オーナーの相続・事業承継では、株価だけでなく、税負担、経営権、遺留分、会社資金、親族間の納得を同時に整える必要があります。評価方式の構造から実行手順まで、一般情報として整理します。

10 検討すべき主要対策
7年 暦年贈与の加算対象期間
38% 令和8年4月以後の純資産価額方式の改正割合
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自社株式の評価額を 生前に引き下げる方法

非上場会社オーナーの相続・事業承継では、株価だけでなく、税負担、経営権、遺留分、会社資金、親族間の納得を同時に整える必要があります。

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自社株式の評価額を 生前に引き下げる方法
非上場会社オーナーの相続・事業承継では、株価だけでなく、税負担、経営権、遺留分、会社資金、親族間の納得を同時に整える必要があります。
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  • 自社株式の評価額を 生前に引き下げる方法
  • 非上場会社オーナーの相続・事業承継では、株価だけでなく、税負担、経営権、遺留分、会社資金、親族間の納得を同時に整える必要があります。

POINT 1

  • 自社株式の評価額を生前に引き下げる方法の全体像
  • 株価を低く見せる発想ではなく、承継全体の損失と紛争を減らす設計として考えます。
  • 株価対策の目的は承継全体の安定です
  • 非上場会社の自社株式対策で最も大切なのは、単に評価額を下げることではありません。
  • 税金だけが下がっても、会社が弱り、後継者が経営権を取れず、親族間で金銭請求が起きれば成功とはいえません。

POINT 2

  • 自社株式の評価額を生前に引き下げる前に押さえる評価の仕組み
  • 相続税・贈与税上の評価額は、会社の売却価値や投資価値と常に一致するわけではありません。
  • 株主区分
  • 会社規模
  • 特定の評価会社

POINT 3

  • 自社株式の評価額を生前に引き下げる方法で動かす3つの要素
  • 評価時期は成長前・業績低迷期・決算期で考える
  • 現状株価と株主区分を試算
  • 事業上の理由を説明できるか
  • 配当、利益、純資産は互いに連動するため、単独で操作する発想は危険です。

POINT 4

  • 役員退職金で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法
  • 役員在任年数
  • 創業者としての在任期間、役職歴、経営への貢献を確認します。
  • 最終報酬月額
  • 退任直前の不自然な増額がないかを確認します。

POINT 5

  • 事業投資・資産整理で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法
  • 土地保有特定会社
  • 多額の土地を持つ会社では、土地保有割合により純資産価額方式中心となる可能性があります。
  • 株式等保有特定会社
  • 持株会社やグループ会社株式を多く保有する場合、株式等保有割合を確認します。

POINT 6

  • 生前贈与・売買・事業承継税制で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法
  • 株価を下げるだけでなく、低い時点の価値で後継者へ移す設計が重要です。
  • 配当政策は少数株主対策でもある
  • 暦年贈与は、毎年の基礎控除を使って少しずつ株式を移す方法です。
  • ただし、令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与は、相続税への加算対象期間が相続開始前7年以内へ延長されています。

POINT 7

  • 種類株式・遺留分対策まで含めた自社株式の評価額を生前に引き下げる方法
  • 1. 後継者へ株式を移す計画を作る:贈与、売買、事業承継税制、残す株式の扱いを整理します。
  • 2. 推定相続人と遺留分の影響を試算:相続時の株価上昇、代償金、生命保険、金融資産を含めて確認します。
  • 3. 除外合意・固定合意を検討:推定相続人および後継者全員の合意、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可を確認します。
  • 4. 遺言・代償金・説明資料を強化:将来の金銭請求に備え、相続人間の公平と資金手当てを検討します。

POINT 8

  • 数値例で見る自社株式の評価額を生前に引き下げる方法
  • 単純化した例で、株価、移転、退職金、遺留分、納税資金を一体で確認します。
  • 以下は概念理解のための単純化した例です。
  • 実際の評価計算では、国税庁の評価明細書、通達、会社規模判定、株主区分、特定評価会社該当性を確認する必要があります。
  • 退職金支給だけでなく、その後の株式移転、将来上昇分、遺留分対策までつなげて読むことが重要です。

まとめ

  • 自社株式の評価額を 生前に引き下げる方法
  • 自社株式の評価額を生前に引き下げる方法の全体像:株価を低く見せる発想ではなく、承継全体の損失と紛争を減らす設計として考えます。
  • 自社株式の評価額を生前に引き下げる前に押さえる評価の仕組み:相続税・贈与税上の評価額は、会社の売却価値や投資価値と常に一致するわけではありません。
  • 役員退職金で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法:適正額と実質退任がそろう場合、利益と純資産の両面に影響します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

自社株式の評価額を生前に引き下げる方法の全体像

株価を低く見せる発想ではなく、承継全体の損失と紛争を減らす設計として考えます。

非上場会社の自社株式対策で最も大切なのは、単に評価額を下げることではありません。相続税・贈与税の評価、会社の資金繰り、後継者の支配権、遺留分、金融機関対応、税務調査リスクを総合的に見て、事業を壊さず、相続争いを起こさず、合法的に税負担を平準化することが目的です。

中心となる考え方は、評価方式の構造を理解したうえで、事業上合理性のある行為により、配当、利益、純資産、株主構成、承継時期を適法に設計することです。税金だけが下がっても、会社が弱り、後継者が経営権を取れず、親族間で金銭請求が起きれば成功とはいえません。

結論自社株式の評価額を生前に引き下げる方法は、低い株価で、早く、争いなく、実態を伴って移すための総合実務です。

次の比較表は、代表的な対策がどの評価要素に効きやすいかと、同時に確認すべき注意点を整理したものです。複数の方法を並べて見ることで、評価額だけでなく、資金、支配権、税務リスクまで同時に読むことが重要です。

区分代表的な方法効果が出る主な評価要素主な注意点
評価時期の選択業績低迷期・成長前の贈与類似業種比準価額、将来上昇分直前対策、実態のない取引、遺留分に注意
役員退職金先代経営者の実質退任時に適正額を支給純資産、利益過大役員退職金、実質退任性、資金繰り
事業投資・資産整理設備投資、研究開発、不良資産処分純資産、利益事業合理性、税務上の損金性、換金性
配当政策継続的な配当方針の見直し配当要素、配当還元方式会社法、少数株主、内部留保の増加
評価方式対策会社規模、特定評価会社該当性の検証類似業種比準方式と純資産方式の比率形式的操作は危険
株式移転生前贈与、売買、従業員持株会、持株会社将来上昇分の移転適正時価、贈与認定、支配権分散
納税猶予法人版事業承継税制税負担そのもの要件、届出、継続報告、期限
遺留分対策除外合意、固定合意、遺言、代償金設計紛争・金銭請求リスク推定相続人全員の合意など

次の重要ポイントは、評価額を下げる施策だけを切り出すと見落としやすい成功条件を示しています。読者は、税額の圧縮と同じ重さで、会社の継続、後継者の支配権、相続人間の納得を確認してください。

株価対策の目的は承継全体の安定です

株価を下げても会社が弱れば失敗であり、税金が下がっても相続争いが起きれば失敗です。評価額、税負担、経営権、家族の納得、会社の成長を同時に成立させる設計が必要です。

Section 01

自社株式の評価額を生前に引き下げる前に押さえる評価の仕組み

相続税・贈与税上の評価額は、会社の売却価値や投資価値と常に一致するわけではありません。

相続税・贈与税では、財産の価額は原則として取得時の時価によりますが、非上場株式は国税庁の財産評価基本通達に基づき、取引相場のない株式として評価されます。ここでいう評価額は、M&Aで第三者に売る価格、金融機関の企業評価、DCF法による投資価値とは異なることがあります。

次の一覧は、自社株式評価の出発点となる3つの判定軸を整理したものです。どの立場の株主が取得するのか、会社規模がどこに当たるのか、特定の評価会社に該当しないかを先に見極めることで、どの対策が有効かを読み取りやすくなります。

判定1

株主区分

同族株主等が取得する支配株式は原則的評価方式が中心です。同族株主以外の少数株主等は、一定の場合に配当還元方式が問題になります。

判定2

会社規模

大会社、中会社、小会社の区分により、類似業種比準方式と純資産価額方式の使われ方が変わります。

判定3

特定の評価会社

土地保有、株式保有、開業後3年未満、比準要素数1などに該当すると、純資産価額方式等が中心になることがあります。

株主区分を誤ると対策の前提が崩れる

後継者が会社を承継する場合、多くは支配株主として原則的評価方式の対象となります。経営に関与しない少数株主に分散した株式では配当還元方式が問題になることがありますが、後継者に渡す支配株式を安易に少数株主評価にできるわけではありません。

次の比較表は、会社規模ごとの評価方式と実務上の特徴を示しています。大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は併用という大枠を押さえることで、どの数字を整えるべきかを読み取れます。

会社規模・株主区分原則的な評価方式実務上の特徴
大会社類似業種比準方式上場会社との比較に近く、利益・配当・簿価純資産の影響が大きい
中会社類似業種比準方式と純資産価額方式の併用類似業種比準価額と純資産価額の比率が重要
小会社純資産価額方式保有資産、含み益、負債、法人税等相当額の影響が大きい
同族株主以外の少数株主等配当還元方式配当実績・配当方針が重要
特定の評価会社原則として純資産価額方式等土地保有、株式保有、開業後3年未満、比準要素数1などに注意

次の比較表は、主な評価方式ごとに何が評価額へ影響するかを整理したものです。支配株式を移すのか、少数株式を移すのか、会社が資産保有型に近いのかによって、同じ対策でも効き方が変わる点を読み取ってください。

評価方式評価額を左右する要素下げる発想注意点
類似業種比準方式1株当たり配当金額、利益金額、簿価純資産価額配当、利益、簿価純資産を事業実態に沿って平準化する利益圧縮だけを狙うと否認や会社弱体化につながる
純資産価額方式資産、負債、含み益、評価差額に対する法人税額等相当額不良資産整理、適正退職金、事業投資で純資産を適正化する令和8年4月1日以後は法人税額等相当額の割合が38%へ改正
配当還元方式1年間の配当金額少数株主の株式では配当政策を継続的に設計する後継者の支配株式に使えるとは限らない
Section 02

自社株式の評価額を生前に引き下げる方法で動かす3つの要素

配当、利益、純資産は互いに連動するため、単独で操作する発想は危険です。

類似業種比準方式では、評価会社の1株当たり配当金額、利益金額、簿価純資産価額が重要です。純資産価額方式では、資産と負債を相続税評価額に洗い替えて評価します。配当還元方式では、少数株主等が受け取る配当が評価の中心になります。

次の一覧は、配当、利益、純資産という3つの要素が、対策ごとにどのように動くかを整理しています。どれか1つを下げても別の要素が上がることがあるため、全体の連動を読み取ることが重要です。

1

配当金額

類似業種比準方式の比準要素となり、配当還元方式では評価の中心です。無配にすればよいわけではなく、内部留保の増加や少数株主対応も確認します。

配当政策
2

利益金額

業績低迷期や退職金支給により評価へ影響することがあります。架空経費や実態のない支出は税務リスクが高く、事業目的の説明が必要です。

利益平準化実態重視
3

純資産

現預金、含み益資産、負債、不良資産、役員退職金、不動産評価が影響します。借入だけでは現金も増えるため、単純には純資産が下がりません。

資産整理

評価時期は成長前・業績低迷期・決算期で考える

会社価値が上がる前に後継者へ株式を移すと、将来上昇分を先代経営者の相続財産から外す効果が期待できます。たとえば現在1億円の評価が10年後に5億円へ上昇する可能性が高い場合、現在の価額で贈与または売買を行うことで、将来の4億円の値上がり分を後継者側へ移せます。

次の時系列は、評価時期を選ぶときに確認する順番を表しています。各段階で税務・法務・資金の前提が変わるため、早い時期から株価試算を更新し、どの時点で移転するのが合理的かを読み取ることが大切です。

成長前

将来上昇分を相続財産から外す

株価が低い段階で贈与や売買を検討します。後継者の資金、贈与税、遺留分、株主間合意を同時に確認します。

業績低迷期

利益要素が下がる時期を検討する

主要取引先喪失、設備更新期、外部環境による一時的な利益低下がある場合、類似業種比準価額が下がることがあります。

決算期

退職金や投資の反映期を確認する

贈与日、決算期、退職金、設備投資の時期が評価に影響します。決算期変更には事業上の理由と手続が必要です。

毎年

株価と相続財産を再計算する

会社規模、特定評価会社該当性、相続財産、遺留分、納税資金を更新し、計画を固定しすぎないようにします。

次の判断の流れは、株価を下げる施策を実行してよいかを大まかに確認する順番です。分岐は税額だけではなく、事業合理性、説明可能性、遺留分・資金面を同時に読むためのものです。

株価対策を実行する前の判断の流れ

現状株価と株主区分を試算

会社規模、評価方式、先代保有株式、後継者に必要な議決権を確認します。

事業上の理由を説明できるか

退職金、投資、配当変更、資産整理に経済合理性があるかを見ます。

説明しにくい
実行を再検討

総則6項、行為計算否認、親族間紛争のリスクが高まります。

説明できる
税務・法務・資金を横断試算

贈与税、相続税、法人税、遺留分、納税資金を同時に確認します。

Section 03

役員退職金で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法

適正額と実質退任がそろう場合、利益と純資産の両面に影響します。

先代経営者が代表取締役を退任し、実質的に経営から退く場合、適正な役員退職金を支給することは代表的な株価対策です。会社から現預金が流出し、税務上損金算入されれば利益が減少し、類似業種比準方式と純資産価額方式の双方に影響することがあります。

次の比較表は、役員退職金が評価と承継資金に与える主な影響を整理しています。単に金額を大きくするのではなく、会社の資金繰りと先代の生活資金・納税資金を同時に読むことが重要です。

影響する項目株価への影響承継上の意味
現預金の流出純資産を減らす方向に働く支給後の運転資金を確認する
損金算入利益金額を減らす方向に働く過大部分は損金不算入となる可能性がある
先代の受取資金株式以外の相続財産になる老後資金、納税資金、代償金原資に使える
実質退任税務上の退職性を支える代表権、職務権限、報酬、出社実態を整理する

次の一覧は、適正な役員退職金かどうかを検討するときの主要項目です。税務調査では金額だけでなく、退任の実態や手続資料も見られるため、各項目を証拠として残せているかを読み取ってください。

役員在任年数

創業者としての在任期間、役職歴、経営への貢献を確認します。

最終報酬月額

退任直前の不自然な増額がないかを確認します。

功績倍率

同業・同規模企業との比較により、過大性を検討します。

会社の収益力

支給後も資金繰りと金融機関対応を維持できるかを確認します。

退任の実質

代表権、業務執行、報酬、出社実態が変わっているかを見ます。

決議・規程

退職慰労金規程、株主総会議事録、取締役会資料を整えます。

分掌変更退職金は名目だけでは足りない

代表取締役から会長・相談役へ退く場合でも、実質的に経営を支配し続けていれば、税務上退職と認められないリスクがあります。代表権の返上、報酬の大幅減額、主要取引・採用・資金決裁からの離脱、後継者への実権移譲を証拠化する必要があります。

注意代表者変更登記、職務権限規程、金融機関届出印、連帯保証、退職金規程、支給決議、資金繰り表、株価試算は一体で確認する必要があります。
Section 04

事業投資・資産整理で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法

会社に必要な投資と不良資産の整理は、株価対策と経営改善を同時に進める領域です。

設備投資、人材投資、研究開発、DX投資、店舗改装、工場更新、品質管理体制の整備は、現預金を事業資産や費用へ転換します。短期的には利益や純資産に影響し、評価額を下げる場合がありますが、不要な支出で会社を弱らせるのは本末転倒です。

次の比較表は、整理対象となりやすい資産と実務対応、株価への影響をまとめたものです。資産ごとに証拠化や税務要件が異なるため、どの資産が利益・純資産・含み益に効くのかを読み取ることが重要です。

資産実務対応株価への影響確認すべき専門領域
長期滞留債権督促記録、法的回収、貸倒処理検討資産・利益に影響税務、法務、債権回収
不良在庫棚卸実査、評価損、廃棄証明資産・利益に影響会計、税務、在庫管理
遊休機械売却、廃棄、除却資産・利益に影響会計、税務、固定資産管理
遊休不動産売却、賃貸化、事業利用含み益・土地保有割合に影響不動産評価、契約、担保
関係会社株式実態評価、再編、売却株式等保有割合に影響組織再編、会計、税務

借入金だけでは純資産は通常下がらない

借入をすると負債は増えますが、同時に現預金も増えるため、単純には純資産は減りません。借入で事業用資産を購入した場合も、その資産が評価上残るなら、評価額が大きく下がるとは限りません。意味があるのは、資金が事業上合理的に使われ、費用化、減価償却、評価差額、収益改善に結びつく場合です。

次の一覧は、特定の評価会社に該当しやすい状態を整理しています。該当すると純資産価額方式等が中心になり、株価対策の前提が変わるため、土地・株式・比準要素の状態を読み取ってください。

土地保有特定会社

多額の土地を持つ会社では、土地保有割合により純資産価額方式中心となる可能性があります。

株式等保有特定会社

持株会社やグループ会社株式を多く保有する場合、株式等保有割合を確認します。

比準要素数1の会社

配当、利益、純資産の複数がゼロになると、かえって評価方式が不利になることがあります。

開業後3年未満など

開業前、休業中、清算中の会社では通常の事業会社と異なる扱いに注意します。

会社で不動産を買えば必ず有利とは限らない

会社が現預金で不動産を購入すると、土地建物の相続税評価額が時価より低い場合に純資産価額が下がることがあります。しかし、土地保有特定会社に該当する可能性、借入と資産の同時増加、時価との乖離、総則6項、資金繰り、売却可能性を検討しなければなりません。

重要相続税評価を下げる目的だけの借入・不動産購入・形式的な資産移転は、税務調査や総則6項の観点から慎重に検討する必要があります。
Section 05

生前贈与・売買・事業承継税制で自社株式の評価額を生前に引き下げる方法

株価を下げるだけでなく、低い時点の価値で後継者へ移す設計が重要です。

暦年贈与は、毎年の基礎控除を使って少しずつ株式を移す方法です。ただし、令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与は、相続税への加算対象期間が相続開始前7年以内へ延長されています。株価が高い会社では、少数株式だけを移しても支配権移転が進まないことがあります。

次の比較表は、株式移転と納税猶予に関する主な制度・手法を整理したものです。税負担の種類、支配権、将来上昇分、遺留分への影響を並べて読むことで、自社株式の評価額を下げる方法と移す方法を混同しないようにできます。

方法主な効果重要な数字・要件注意点
暦年贈与毎年少しずつ株式を移す相続開始前7年以内の加算対象に注意支配権移転が遅れやすく、遺留分説明が必要
相続時精算課税贈与時価額で相続時に精算される年間110万円の基礎控除、累計2500万円の特別控除、一律20%選択後は同じ特定贈与者から暦年課税に戻れない
法人版事業承継税制贈与税・相続税の納税猶予・免除を受ける特例承継計画は令和9年9月30日まで、株式取得は令和9年12月31日まで届出、継続報告、取消しリスクの管理が必要
後継者への売買対価を払った説明がしやすい適正時価、譲渡所得税、買収資金低額譲渡はみなし贈与の可能性がある
従業員持株会一部株式を相続財産から外す退職時買取ルール、配当方針、規約株主紛争や譲渡価額の適正性に注意
持株会社後継者による株式集約やグループ再編に使う借入、組織再編、株式等保有割合必ず株価が下がるわけではなく、短期的な形式策は危険

次の一覧は、売買、従業員持株会、持株会社を検討するときに見るべき論点を分けたものです。後継者の支配権、少数株主の出口、税務上の時価を同時に読み取ることが重要です。

A

後継者への売買

後継者が対価を払った説明がしやすい一方、先代が受け取った代金は相続財産になります。買収資金の原資も設計します。

時価確認
B

従業員持株会

従業員の経営参加意識を高めることがありますが、退職時買取、配当方針、議決権行使を整理しないと紛争原因になります。

規約整備
C

持株会社

グループ株式の集約や兄弟会社分離に使えることがありますが、株式等保有特定会社、組織再編税制、総則6項を確認します。

慎重検討

配当政策は少数株主対策でもある

配当を抑えると評価額が下がる場合がありますが、配当しない利益は会社に残り、純資産を増やすことがあります。経営に関与しない親族株主や従業員株主の不満が高まれば、遺産分割、遺留分侵害額請求、株式買取請求、株主代表訴訟、会計帳簿閲覧請求に発展する可能性もあります。

注意配当政策の変更は、株主間契約、定款、種類株式、買取条項、情報開示、内部留保の将来増加まで含めて数年単位で検討します。
Section 07

数値例で見る自社株式の評価額を生前に引き下げる方法

単純化した例で、株価、移転、退職金、遺留分、納税資金を一体で確認します。

以下は概念理解のための単純化した例です。実際の評価計算では、国税庁の評価明細書、通達、会社規模判定、株主区分、特定評価会社該当性を確認する必要があります。

  • 発行済株式は1000株
  • 先代経営者の保有は800株
  • 後継者は長男、他の相続人は配偶者と長女
  • 会社規模は中会社
  • 現在の類似業種比準価額は1株20万円
  • 現在の純資産価額は1株50万円
  • 併用後評価は1株30万円
  • 先代保有800株の評価額は2億4000万円

次の比較表は、対策前と対策後イメージの数字を並べたものです。退職金支給だけでなく、その後の株式移転、将来上昇分、遺留分対策までつなげて読むことが重要です。

項目対策前対策後イメージ
贈与時株価1株30万円1株22万円
後継者へ移す400株1億2000万円相当8800万円相当
将来上昇分先代財産に残る後継者側へ移転
退職金なし8000万円を生活・納税・代償金原資に使う設計
遺留分相続時価上昇の影響が大きい固定合意等で抑制できる可能性を検討
税務リスク未検討適正額、実質退任、書類整備が前提

次の比較表は、実務上危険になりやすい対策をまとめたものです。表の左列は避けたい行為、右列は問題化しやすい理由を示しており、事業目的・経済合理性・証拠化の有無を読み取ってください。

危険な対策問題点
相続直前に多額の借入と不動産購入を行う総則6項、時価との乖離、租税回避目的の疑い
実態のない外注費・コンサル料を計上する架空経費、法人税・所得税問題
退任していないのに高額退職金を支給する過大退職金、実質退任性否認
後継者に著しく低額で株式売却するみなし贈与、譲渡時価問題
少数株主評価を無理に使う株主区分誤り、同族関係の見落とし
持株会社を短期間で作り形式的に株価を下げる組織再編税制、行為計算否認、総則6項
赤字化のためだけに不要資産を買う経営悪化、金融機関評価悪化
遺留分を無視して後継者へ全株贈与する相続開始後の高額金銭請求
事業承継税制の要件を軽視する猶予取消し、利子税、継続届出漏れ
証拠化税務署、国税局、国税不服審判所、裁判所で争われる案件では、書類上は整っていても実態がないことが問題になります。事業目的、経済合理性、実行時期、資金の流れ、意思決定過程、家族への説明資料を残すことが重要です。
Section 08

自社株式の評価額を生前に引き下げる方法の実行手順

現状把握から毎年の見直しまで、税務・法務・経営の順番をそろえます。

自社株式対策は、単発の節税策ではなく、現状把握、リスク診断、株価試算、法務設計、実行、モニタリングを繰り返すロードマップとして進める取り組みです。株価が動き、会社規模や家族関係も変わるため、毎年更新する前提で進めます。

次の時系列は、実行前から実行後までの作業順を示しています。順番に沿って進めることで、株価を下げる施策だけが先行し、遺留分や納税資金の検討が遅れる事態を防げます。

第1段階

現状把握

株主名簿、議決権割合、直近3期の決算書、会社規模、特定評価会社該当性、現時点の株価、相続人・遺留分権利者を確認します。

第2段階

リスク診断

先代の保有株式、後継者に必要な株式、相続税見込額、遺留分侵害額、納税資金、金融機関の保証・担保を確認します。

第3段階

株価引下げ策の試算

役員退職金、配当方針、設備投資、不良資産処分、持株会社、事業承継税制、暦年贈与と相続時精算課税を比較します。

第4段階

法務設計

遺言、遺留分対策、除外合意・固定合意、株主間契約、定款見直し、種類株式、役員変更登記を検討します。

第5段階

実行

株主総会・取締役会、贈与契約書・売買契約書、株主名簿書換、税務申告、事業承継税制の認定・届出、継続管理を行います。

第6段階

モニタリング

毎年株価、会社規模、特定評価会社該当性、議決権割合、相続財産、遺留分、納税資金、法令・通達改正を確認します。

次のチェックリストは、税務、法務、経営の3方向で実行前に確認すべき事項をまとめたものです。列ごとに見ると担当領域が分かり、横に読むと対策が会社全体へ与える影響を確認できます。

税務チェック法務チェック経営チェック
株主区分、会社規模、特定評価会社該当性を判定する株主名簿と実質株主、議決権割合、譲渡制限を確認する後継者が代表者として機能できるか確認する
類似業種比準価額、純資産価額、配当還元方式を試算する遺言、遺留分、除外合意・固定合意を検討する金融機関の保証・担保、退職金支給後の資金繰りを確認する
役員退職金、贈与税、相続税、所得税、法人税を横断試算する種類株式、株主間契約、役員変更登記、定款変更登記を確認する投資計画、従業員・取引先への説明方針、相続人への説明資料を整える
事業承継税制の要件・期限、総則6項・行為計算否認リスクを確認する株式譲渡承認手続、代償金、紛争時の対応を確認する毎年の株価モニタリング体制を作る
まとめ最良の方向性は、会社が成長する前または一時的に評価が低い時期に承継を始め、役員退職金、事業投資、不良資産整理、贈与・事業承継税制、遺留分対策を同時に進めることです。
Section 09

自社株式の評価額を生前に引き下げる方法のFAQ

制度の一般的な考え方を整理します。個別事情で結論は変わります。

赤字にすれば自社株式の評価額は下がりますか。

一般的には、類似業種比準方式では利益要素が下がる可能性があります。ただし、比準要素数1の会社など特定の評価会社に該当すると、純資産価額方式が中心となり、かえって評価額が高くなる可能性があります。赤字化の目的、原因、継続性、資産内容によって結論が変わるため、具体的な対応は税理士等の専門家へ相談する必要があります。

配当をゼロにすれば株価は下がりますか。

一般的には、配当要素や配当還元方式には影響することがあります。ただし、配当しない利益は会社に残り、純資産を増やす可能性があります。少数株主との関係、配当方針の継続性、内部留保の増加によって判断が変わるため、具体的には税理士・弁護士等に相談する必要があります。

役員退職金はいくらでも出せますか。

一般的には、適正額を超える部分は損金不算入となる可能性があります。実質的な退任、株主総会決議、退職慰労金規程、同業類似法人との比較、資金繰りによって判断が変わります。具体的な金額や手続は、資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。

事業承継税制を使えば株価を下げなくてもよいですか。

一般的には、法人版事業承継税制は株価を下げる制度ではなく、一定要件のもとで納税を猶予・免除する制度とされています。ただし、要件を満たさなくなれば猶予税額の納付が必要になる場合があります。会社の将来、後継者の継続意思、届出管理によって結論が変わるため、具体的には税理士等へ相談する必要があります。

不動産を会社で買えば相続税対策になりますか。

一般的には、不動産の相続税評価額が時価より低い場合に純資産価額へ影響することがあります。ただし、土地保有特定会社該当性、借入、時価との乖離、総則6項、資金繰り、売却可能性によって結論は変わります。特に相続直前の不動産購入は、専門家による個別検証が必要です。

後継者に少しずつ贈与するだけで十分ですか。

一般的には、早期から長期間かける贈与は有効な選択肢になり得ます。ただし、会社の成長速度、株価、後継者の議決権割合、相続開始時期、暦年贈与加算、遺留分によっては十分でない可能性があります。具体的な計画は、株価試算と相続全体の資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

税務評価・事業承継税制

  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(第1回)資料」
  • 国税庁「取引相場のない株式等の評価(純資産価額方式における法人税額等相当額)」
  • 国税庁「No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」
  • 国税庁「No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」

贈与・退職金・遺留分

  • 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
  • 国税庁「No.5208 役員の退職金の損金算入時期」
  • 中小企業庁「中小企業経営承継円滑化法 申請マニュアル 遺留分に関する民法の特例」

法令・裁判例

  • 国税庁「財産評価基本通達 第1章 総則 6 この通達の定めにより難い場合の評価」
  • 最高裁判所第三小法廷判決 令和4年4月19日・令和2年(行ヒ)第283号 相続税更正処分等取消請求事件
  • e-Gov法令検索「相続税法」
  • e-Gov法令検索「租税特別措置法」
  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「民法」