相続税申告、遺産分割、遺留分、事業承継で問題になりやすい非上場株式評価について、方式の判定順序、計算式、具体例、実務上の注意点を整理します。
相続税申告、遺産分割、遺留分、事業承継で問題になりやすい非上場株式評価について、方式の判定順序、計算式、具体例、実務上の注意点を整理します。
非上場株式の相続税評価では、安く見える方式を任意に選ぶのではなく、株主区分、会社規模、特定評価会社該当性を順に確認します。
相続財産に上場していない会社の株式が含まれると、相続税申告だけでなく、遺産分割、遺留分、事業承継、納税資金、後継者と非後継者の公平まで一体で問題になります。預金には残高、不動産には路線価や固定資産税評価額などの入口がありますが、非上場株式には日々公表される市場価格がありません。
そこで中心になるのが、類似業種比準方式と純資産価額方式です。前者は同種又は類似の上場会社との比較により継続企業としての価値を近似する考え方で、後者は会社の資産と負債を相続税評価ベースで洗い替える考え方です。相続人間では、後継者側が低い評価を望み、非後継者側が高い評価を主張することがあり、税務署との関係では過少評価や通達の形式的利用が問題になることがあります。
次の用語整理は、評価方式の議論に入る前提をまとめたものです。取引相場のない株式、原則的評価方式、配当還元方式、課税時期の違いを押さえると、類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらを検討する段階なのかを読み取りやすくなります。
| 用語 | 意味 | このページでの位置づけ |
|---|---|---|
| 取引相場のない株式 | 証券取引所に上場されておらず、通常は気配相場等も存在しない株式です。 | 親族経営の中小企業、同族会社、資産管理会社などの相続で中心問題になります。 |
| 原則的評価方式 | 同族株主等が取得する株式について、会社規模や特定評価会社該当性に応じて評価する枠組みです。 | 類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式の入口になります。 |
| 配当還元方式 | 少数株主に近い取得者について、配当を基に評価する方法が問題になる場面があります。 | 該当する場合は、会社規模にかかわらず先に検討します。 |
| 課税時期 | 相続により財産を取得した日、通常は被相続人の死亡日です。 | 株価Aの選択、資産評価、3年以内取得資産、38%適用の基準になります。 |
次の比較表は、2つの評価方式が何を見ているのか、どの場面で使われやすいのか、どの入力値で評価額が動くのかを整理したものです。違いを先に押さえることで、会社規模判定や計算式の意味を読み取りやすくなります。
| 観点 | 類似業種比準方式 | 純資産価額方式 |
|---|---|---|
| 基本思想 | 類似する上場会社の株価等と、評価会社の配当、利益、簿価純資産を比較します。 | 会社の資産と負債を相続税評価額ベースで洗い替え、純資産から評価します。 |
| 主な場面 | 大会社は原則この方式です。中会社では併用方式の一部として使います。 | 小会社は原則この方式です。大会社や中会社でも選択又は併用され、特定評価会社では中心になりやすい方式です。 |
| 会社の見方 | 継続企業、収益企業として見ます。 | 資産保有体、清算価値に近い観点で見ます。ただし税務上の純資産であり、会社法上又はM&A上の時価純資産と同一ではありません。 |
| 重要な入力値 | 類似業種の株価A、配当B、利益C、簿価純資産D、評価会社のb、c、d、斟酌率です。 | 相続税評価額による総資産、負債、評価差額に対する法人税額等相当額、発行済株式数です。 |
| 争点になりやすい点 | 類似業種の選択、利益の一時性、役員報酬、内部留保、会社規模区分です。 | 不動産評価、貸付金、借入金、含み益、退職金、未計上債務、資産管理会社該当性です。 |
相続で実際に悩みやすいのは、方式の名前よりも「誰が何を判断するか」です。次の一覧は、非上場株式評価をめぐり関わる専門職の役割をまとめたものです。税務上の評価と相続人間の合意形成は目的が違うため、どの論点を誰に確認するかを読み取ることが重要です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、株式の帰属争い、調停・審判・訴訟、後継者と非後継者の交渉設計を扱います。
非上場会社の財務分析、企業価値評価、収益性・資産性・継続企業価値、鑑定や意見書作成を担います。
会社保有不動産の評価、登記、株主名簿、議事録、定款、相続手続書類、事業承継計画を補完します。
取引相場のない株式では、株主の立場、会社規模、特定評価会社該当性を確認してから評価方式へ進みます。
相続人が誤解しやすいのは、類似業種比準方式と純資産価額方式のうち税額が低くなる方を自由に選べると考えてしまう点です。実務では、まず株式に取引相場があるかを見て、次に取得者が同族株主等に当たるか、特定の評価会社に該当するか、会社規模が大会社・中会社・小会社のどれかを確認します。
次の判断の流れは、評価方式を決める前にたどる順番を示しています。順番を誤ると、計算自体が正しくても使うべき方式を外すおそれがあるため、どの段階で配当還元方式、併用方式、純資産価額方式中心の評価に分かれるかを読み取ることが重要です。
上場株式など公表価格がある財産か、取引相場のない株式かを分けます。
同族株主等なら原則的評価方式へ、少数株主に近い立場なら配当還元方式を検討します。
株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社などは別ルールを確認します。
大会社は原則類似業種比準方式、中会社は併用方式です。
原則は純資産価額方式で、一定の併用方式を選べる場合があります。
会社規模ごとの違いは、方式の適用割合に直結します。次の比較表では、大会社、中会社、小会社の原則的な扱いと選択の余地を並べています。会社規模が一段変わるだけで、比準価額と純資産価額の重みが変わる点を確認してください。
| 会社規模 | 原則的な評価 | 選択・併用の要点 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額により評価します。 | 納税義務者の選択により、1株当たり純資産価額で評価できます。 |
| 中会社 | 類似業種比準価額と純資産価額の併用方式で評価します。 | Lは会社規模に応じて0.90、0.75、0.60のいずれかです。 |
| 小会社 | 1株当たり純資産価額で評価します。 | 納税義務者の選択により、Lを0.50として併用方式で評価できる場合があります。 |
中会社の併用方式は、類似業種比準価額と純資産価額をLで加重する考え方です。市場比較だけでは資産実態を反映しにくく、純資産だけでは継続企業としての収益性を反映しにくいため、両者の中間を取ります。
評価会社の配当、利益、簿価純資産を、国税庁が公表する類似業種の数値と比べる方式です。
類似業種比準方式は、評価対象会社と同一又は類似の業種に属する複数の上場会社の株価等を基礎に、評価会社の配当、利益、簿価純資産を比較して1株当たりの評価額を計算します。会社を事業として見て、上場会社の平均的な株価水準に対して評価会社の3要素がどの程度強いかを確認する方式です。
次の表は、類似業種比準方式で使う記号と意味を整理したものです。A、B、C、Dは国税庁が公表する類似業種側の数値で、b、c、dは評価会社側の決算資料から導く数値である点を読み取ると、誰がどの資料を準備すべきかが分かります。
| 記号 | 意味 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| A | 類似業種の株価 | 課税時期の属する月以前3か月間の各月の株価のうち最も低いものを基本に、一定の平均株価を選べる場合があります。 |
| B | 類似業種の1株当たり配当金額 | 国税庁の業種目別株価等を用います。 |
| C | 類似業種の1株当たり年利益金額 | 業種目の選択が評価額に影響します。 |
| D | 類似業種の1株当たり簿価純資産価額 | 帳簿価額ベースの比較値です。 |
| b・c・d | 評価会社の配当、利益、簿価純資産 | dは純資産価額方式で使う相続税評価純資産ではなく、帳簿価額による純資産です。 |
| 斟酌率 | 会社規模に応じた調整 | 大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5です。 |
類似業種比準価額の概念式は、上場会社側の株価Aに、評価会社の配当・利益・簿価純資産の強さを反映させる構造です。式の各比率がどの要素を表すかを確認すると、利益が高い会社、配当をしている会社、簿価純資産が厚い会社で評価額が上がりやすい理由を読み取れます。
類似業種比準価額 = A × ((b / B) + (c / C) + (d / D)) ÷ 3 × 斟酌率 × 資本金等調整
類似業種は、評価会社の事業が該当する業種目により判定します。不動産賃貸、建設、製造、卸売、EC、小売、コンサルティング、持株会社的機能が混在する会社では、どの売上が主たる取引金額か、どの業種目に該当するかが評価額を左右します。
次の一覧は、類似業種比準方式で評価額が低く出やすい特徴と高く出やすい特徴を分けたものです。配当、利益、簿価純資産、市場株価のどの要因が評価を動かしているかを見極めることが、相続税申告だけでなく相続人間の説明にも重要です。
配当をほとんどしていない、直近期又は直前期以前の利益が低い、簿価純資産が小さい、類似業種の株価Aが低い時期に相続が発生した、といった事情です。
利益率が高い、配当を継続している、簿価純資産が厚い、類似業種の上場会社株価が上昇している、上場市場の評価水準が高い業種に該当する、といった事情です。
利益や配当を意図的に動かして評価額を下げようとする発想は危険です。形式的に通達を満たしても、著しく不適当な評価と見られる場合があります。
土地、建物、有価証券、貸付金、保険積立金などを評価し直し、負債と評価差額に対する法人税額等相当額を控除します。
純資産価額方式は、評価会社の資産を相続税評価額ベースで評価し、負債と評価差額に対する法人税額等相当額を控除して、1株当たりの価額を計算する方式です。小会社では原則的な方式となり、特定評価会社でも中心になりやすい考え方です。
次の強調表示は、純資産価額方式の骨格を表しています。総資産、負債、評価差額に対する法人税額等相当額、発行済株式数の順に見ることで、貸借対照表の簿価をそのまま割る方法ではないことを読み取れます。
(相続税評価額による総資産価額 − 負債の合計額 − 評価差額に対する法人税額等相当額) ÷ 課税時期における発行済株式数
純資産価額方式では、貸借対照表の簿価をそのまま使いません。会社が所有する土地、建物、有価証券、貸付金、棚卸資産、保険積立金、車両、機械装置、借地権、営業権などを、財産評価基本通達に従って評価します。古くから保有する土地の簿価が1,000万円でも、相続税評価額が1億円になるような場合、その差額が評価に強く反映されます。
次の一覧は、純資産価額方式で特に確認すべき補正要素をまとめたものです。どの資産が含み益を持つか、どの負債が控除できるか、取得時期や議決権割合で評価が変わるかを読み取ることが重要です。
課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等・家屋等は、通常の取引価額に相当する金額で評価する扱いが問題になります。
直前対策に注意一定の未払法人税等、未払固定資産税、被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金や功労金等は負債に含まれることがあります。
控除根拠貸倒引当金、退職給与引当金、納税引当金その他の引当金及び準備金に相当する金額は、通達上の負債から外れる扱いに注意します。
会計と税務の差令和8年4月1日以後の取得では、防衛特別法人税の創設に伴い、評価差額に対する法人税額等相当額の割合が37%から38%へ改正されています。国税庁資料では37.7316%を概ね38%と説明されています。
38%中会社の算式及び小会社の1株当たり純資産価額では、取得者と同族関係者の議決権合計が50%以下の場合に80%評価が問題になります。
80%評価類似業種比準方式で使うdは帳簿価額による純資産ですが、純資産価額方式で使う純資産は相続税評価額による純資産です。30年前に取得した土地の含み益は、前者では限定的にしか反映されず、後者では強く反映されやすい点が両方式の典型的な差です。
資産構成や営業状態により、通常の大会社・中会社・小会社の区分だけでは実態に合わない会社があります。
通常の会社規模区分だけで評価すると、実態から見て不自然な低評価が生じる会社があります。財産評価基本通達は、資産の保有状況、営業状態などに応じて特定の評価会社を別に扱います。これらは純資産価額方式又はそれに近い考え方が重視されます。
次の比較一覧は、特定の評価会社として確認すべき代表例を整理しています。通常の類似業種比準方式をそのまま使えるかを判断するため、資産の種類、保有割合、営業状態をどこまで確認するべきかを読み取ってください。
配当、利益、簿価純資産のうち比準要素が限定される会社では、通常の比準が十分に機能しない可能性があります。
相続税評価額で見た総資産のうち、株式等の価額の合計額の割合が50%以上である会社が問題になります。
大会社では土地保有割合70%以上、中会社では90%以上などの基準があり、不動産保有会社で重要です。
創業直後、事業再編直後、休眠会社の再稼働、清算中の会社などでは過去実績による比準が機能しにくくなります。
特定評価会社の判定では、相続直前の資産構成変更も注意点です。次の表は、実務で問題になりやすい行動と確認すべきリスクを並べています。形式的な資産入替えが、税務上なかったものとして扱われる可能性を読み取ることが大切です。
| 行動・状況 | 確認すべきリスク | 関連する視点 |
|---|---|---|
| 相続直前に不動産を取得 | 3年以内取得ルール、通常の取引価額、総則6項、借入金の実態が問題になります。 | 税理士、不動産鑑定士、金融機関対応 |
| 株式を一時的に売却 | 株式等保有特定会社の判定を免れる目的と見られる可能性があります。 | 税務調査、関係会社株式評価 |
| 会社分割や持株会社化 | 事業実態、資産構成、事業承継税制との整合性が問われます。 | 税理士、公認会計士、弁護士 |
| 休眠会社や清算中会社 | 継続企業としての比較が機能しないため、純資産価額中心の評価を確認します。 | 登記、財務資料、清算手続 |
中会社、L=0.75、令和8年4月1日以後の架空例で、比準価額、純資産価額、併用方式の差を確認します。
ここでは理解のために単純化した架空例を使います。実務では、評価明細書、財産評価基本通達、個別資産評価、株主区分、会社規模判定、特定評価会社判定をすべて確認する必要があります。
次の表は、計算例で使う前提条件をまとめたものです。類似業種比準方式の前提と純資産価額方式の前提を分けて見ることで、どの数字がどちらの方式に効いているかを読み取れます。
| 区分 | 前提 | 数値 |
|---|---|---|
| 共通 | 発行済株式数 | 100万株 |
| 共通 | 1株当たり資本金等の額 | 50円 |
| 共通 | 会社規模 | 中会社、L=0.75 |
| 類似業種比準 | 類似業種株価A、b/B、c/C、d/D、斟酌率 | A=500円、0.8、1.2、0.6、中会社なので0.6 |
| 純資産価額 | 総資産、負債、帳簿純資産、相続税評価純資産 | 8億円、3億円、4億円、5億円 |
| 評価差額 | 相続税評価純資産と帳簿純資産の差 | 1億円。38%を乗じて3,800万円 |
次の比較表は、前提条件から評価額を計算する過程を段階別に示しています。類似業種比準価額260円、純資産価額462円、併用方式310.5円という差が、Lの重みでどのように中間値になるかを確認してください。
| 計算段階 | 計算内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 類似業種比準価額 | 500円 × (0.8 + 1.2 + 0.6) ÷ 3 × 0.6 | 約260円 |
| 評価差額控除 | 1億円 × 38% | 3,800万円 |
| 純資産価額総額 | 8億円 − 3億円 − 3,800万円 | 4億6,200万円 |
| 1株当たり純資産価額 | 4億6,200万円 ÷ 100万株 | 462円 |
| 中会社の併用方式 | 260円 × 0.75 + 462円 × 0.25 | 310.5円 |
この例では、純資産価額の方が高く、類似業種比準価額の方が低くなっています。中会社では会社規模に応じたLにより、両方式の中間値になります。後継者側からは税負担や代償金が軽くなる評価を望みやすく、非後継者側からは会社の不動産や内部留保が十分反映されていないと感じやすい構図です。
税務上の画一的評価と、相続人間の公平をめぐる価格認識は目的が異なります。
相続税法上、財産の価額は時価によるとされますが、課税の公平と実務の統一のため、財産評価基本通達により画一的な評価方法が定められています。一方、遺産分割では財産をどう分けるか、遺留分では金銭請求の基礎価額をどう見るかが問題になります。
次の比較表は、相続税申告、遺産分割、遺留分で非上場株式の価格がどのような意味を持つかを整理したものです。同じ評価資料でも、目的が変わると主張の組み立てが変わることを読み取ることが重要です。
| 場面 | 価格の役割 | 争点になりやすい事項 |
|---|---|---|
| 相続税申告 | 財産評価基本通達に基づく画一的評価が中心です。 | 株主区分、会社規模、類似業種、純資産、特定評価会社、申告期限です。 |
| 遺産分割 | 相続人間の分け方と合意価額が問題になります。 | 支配権、換金困難性、配当可能性、後継者の経営責任、代償金です。 |
| 遺留分 | 金銭請求額の基礎となる財産価額が問題になります。 | 生前贈与、相続開始時価、会社価値の増減、株式の帰属です。 |
| 調停・審判 | 資料提出や鑑定を通じて解決案を探ります。 | 税務評価と企業価値評価の違い、会計士意見書、鑑定資料です。 |
相続人の立場により、同じ株価資料の受け止め方は変わります。次の一覧は、後継者、非後継者、遺留分権利者、遺言執行者の視点を分けたものです。利害の違いを先に整理すると、感情的な対立ではなく、どの資料を追加すべきかという議論に戻しやすくなります。
株式を取得して経営責任を負い、納税資金と代償金の負担が重くなりやすい立場です。
会社の支配権を得ず、配当も受けられない可能性があるため、公平な代償を求めやすい立場です。
生前贈与された株式の価値、相続開始時の評価、会社価値の増減を問題にしやすい立場です。
遺言内容の実現と相続税申告の整合性を考える必要があります。
遺産分割調停では、事情聴取、資料提出、必要に応じた鑑定を経て解決案が検討されます。非上場株式の価値が大きい相続では、税理士、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士の連携により、税務評価と民事上の価格認識を分けて説明することが重要です。
評価方式の判断には、会社資料、資産評価資料、相続関係資料を早期に集める必要があります。
非上場株式の評価では、決算書だけでは足りません。株主名簿、定款、議事録、配当資料、過去の申告書、固定資産台帳、不動産資料、関係会社資料、相続関係書類をそろえ、株主区分、会社規模、特定評価会社該当性、個別資産評価を確認します。
次の一覧は、早期に収集すべき資料を分野別にまとめたものです。資料の不足は評価方式の判定遅れ、税務調査対応の弱さ、相続人間の不信につながるため、どの資料が会社関係、資産評価、相続関係に属するかを読み取ってください。
土地・建物の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、路線価図、倍率表、賃貸借契約書、地積測量図、公図、建物図面、不動産鑑定評価書又は査定書、有価証券明細、関係会社株式の財務資料、貸付金・未収金の回収可能性資料、棚卸資産明細、会員権資料を確認します。
純資産被相続人の戸籍一式、相続人関係説明図、遺言書、遺産分割協議書案、生前贈与の資料、株式譲渡契約書、生命保険金資料、過去の相続税申告書、遺留分侵害額請求に関する通知を整理します。
分割・遺留分相続税申告期限は原則として、死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。非上場株式の評価がある相続では、資料収集、会社規模判定、個別資産評価、相続人間協議、納税資金の検討が必要になるため、10か月は長くありません。
次の時系列は、10か月の中で進める作業の目安です。順番に意味があり、初期の資料収集が遅れるほど後半の評価明細書作成、分割協議、納税資金手配が詰まりやすくなる点を読み取ってください。
遺言確認、相続人確認、株主名簿や決算書などの依頼を開始します。
決算書、税務申告書、不動産資料を整理し、株主区分、会社規模、特定評価会社該当性、類似業種比準価額と純資産価額を試算します。
関係会社株式、不動産、貸付金などの詳細評価を進め、相続人間協議、納税資金、事業承継方針を調整します。
分割協議書案、申告書案、納付方法を確認し、最終確認、署名押印、納税資金手配、申告・納付へ進みます。
次の比較表は、専門職ごとの確認ポイントを整理したものです。非上場株式の相続は税務だけで完結しにくいため、どの専門職にどの資料と判断を依頼するかを読み取ることが、手戻りを減らすうえで重要です。
| 専門職 | 実務上の確認ポイント | 残すべき根拠 |
|---|---|---|
| 税理士 | 株主区分、会社規模、特定評価会社該当性、類似業種、株価A、b・c・d、各資産評価、負債控除、3年以内取得資産を確認します。 | 評価明細書、判定資料、計算根拠、税務調査で説明できる資料です。 |
| 弁護士 | 税務評価と紛争解決上の価格を分け、後継者側、非後継者側、遺留分権利者、遺言執行者の利害を整理します。 | 交渉資料、調停提出資料、鑑定や意見書の位置づけです。 |
| 公認会計士 | 税務評価とは目的が異なる企業価値評価を行い、DCF法、類似会社比較法、純資産法、収益還元法などの観点を補います。 | 財務分析、企業価値評価書、相続人間説明用の意見書です。 |
| 不動産鑑定士・司法書士 | 会社保有不動産、借地権、賃貸借、境界、登記、株式名義書換、定款・株主名簿・議事録を確認します。 | 不動産評価資料、登記事項証明書、会社関係書類です。 |
遺産分割がまとまらない場合でも、相続税申告期限は原則として到来します。未分割で申告し、後日分割後に更正の請求や修正申告を検討するケースもあるため、税務と紛争対応を同時に進める視点が必要です。
方式の名前だけで有利不利を判断すると、税務上も相続人間の交渉上も危険です。
純資産価額方式の方が必ず高い、類似業種比準方式の方が必ず有利、相続税評価額が遺産分割の絶対額、決算書があれば評価できる、相続直前の対策で簡単に下げられる、といった理解はいずれも不十分です。
次の一覧は、非上場株式評価で起こりやすい誤解を整理したものです。どの誤解が税務上のリスクにつながり、どの誤解が相続人間の不満につながるかを分けて読み取ることが重要です。
負債が大きい会社、資産価値が下がっている会社、収益力が高く上場類似業種の株価が高い会社では、類似業種比準方式の方が高くなることもあります。
市場環境、利益水準、配当実績、業種目に左右されるため、業績好調な会社や成長業種の会社では高く出ることがあります。
遺産分割や遺留分では、換金可能性、支配権、少数株主性、譲渡制限、後継者の経営負担なども問題になります。
土地、建物、有価証券、関係会社株式、貸付金、保険、棚卸資産、会社規模、株主区分、特定評価会社該当性を確認する必要があります。
資産構成変更、借入による不動産取得、配当停止、利益移転、会社分割などは、総則6項、特定評価会社判定、会社法上の問題を招く可能性があります。
評価方式と数値の根拠を説明できないと、税務調査や相続人間の交渉で信頼性が下がります。
税務調査リスクが高い場面では、計算結果だけでなく、なぜその方式と数値が合理的かを説明する資料が重要です。次の表では、調査リスクが上がりやすい状況と、確認すべき資料を対応させています。
| リスクが高い状況 | 確認すべき資料・説明 |
|---|---|
| 相続直前に大きな不動産取引がある | 売買契約、借入資料、取得時期、通常の取引価額、資産構成変更の理由 |
| 会社分割、株式移転、持株会社化、種類株式発行がある | 事業目的、議事録、組織再編資料、事業承継税制との関係 |
| 配当や役員報酬が不自然に変動している | 配当決議、役員報酬規程、業績変動の理由、資金繰り資料 |
| 同族関係者貸付金・借入金が多い | 契約書、返済状況、利息、回収可能性、仮払金・仮受金の整理 |
| 土地保有特定会社又は株式等保有特定会社の判定が微妙 | 資産別評価明細、保有割合、関係会社株式資料、特定評価会社判定表 |
次の制度動向は、評価実務で確認すべき近年の論点をまとめたものです。相続開始日や贈与日によって適用割合や参照すべき公表資料が変わるため、現在の通達と将来の見直し議論を分けて読み取ることが重要です。
| 論点 | 内容 | 実務上の読み方 |
|---|---|---|
| 令和8年分の類似業種比準価額表 | 令和8年分の相続税・贈与税申告で使う業種目別の配当金額、利益金額、簿価純資産価額、株価が公表されています。 | 課税時期に対応する年分の資料を使い、業種目とAの選択を確認します。 |
| 法人税額等相当額の38%化 | 令和8年4月1日以後に取得した取引相場のない株式等では、純資産価額方式の評価差額控除割合が38%になります。国税庁資料では37.7316%を概ね38%としています。 | 令和8年3月31日以前か、令和8年4月1日以後かで割合が変わる可能性を確認します。 |
| 非上場株式評価ルールの見直し議論 | 継続企業を前提とした評価、収益性を重視した評価方式、税務上の簿価純資産価額、事業承継税制との一体的議論などが検討対象とされています。 | 現時点では現行通達に基づきつつ、将来の相続・贈与・事業承継では最新動向を確認します。 |
個別の結論は資料や株主関係で変わるため、ここでは一般的な制度説明として整理します。
一般的には、評価方式は自由選択ではなく、株主区分、会社規模、特定評価会社該当性により決まるとされています。ただし、大会社で純資産価額方式を選択できる場面、小会社でL=0.50の併用方式を選択できる場面など、通達上の選択が認められる場合があります。具体的な適用関係は、株主名簿や会社資料を整理したうえで税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、単純にゼロになるとは限りません。類似業種比準方式では配当、利益、簿価純資産の3要素を用いるため、利益が低くても配当や簿価純資産があれば評価額が出る可能性があります。また、比準要素数1の会社や3要素すべてが0の会社など、特定の評価会社の規定が問題になることがあります。
一般的には、純資産価額方式が特に重要になりやすいとされています。土地保有特定会社に該当する可能性があり、該当すると純資産価額方式に近い評価が中心になることがあります。ただし、土地保有割合、賃貸借、借地権、3年以内取得、鑑定評価などによって判断が変わるため、具体的には専門家による資料確認が必要です。
一般的には、相続税評価額は税務上の画一的評価であり、遺産分割や遺留分の価格と当然に一致するものではないと考えられます。相続人間の協議では、企業価値、換金可能性、支配権、配当可能性、譲渡制限、後継者の経営責任なども問題になる可能性があります。具体的な交渉方針は、弁護士や公認会計士等と検討する必要があります。
一般的には、相続税申告では税理士が中心になります。相続人間で争いがある場合は弁護士、企業価値が争点になる場合は公認会計士、会社保有不動産が大きい場合は不動産鑑定士、登記や株式名義変更がある場合は司法書士が関与することがあります。実際の依頼先は、税務、法務、会計、不動産、登記のどの問題が大きいかで変わります。
一般的には、相続税申告期限は死亡したことを知った日の翌日から10か月以内とされています。資料不足や遺産分割未了でも期限が当然に延びるわけではないため、未分割申告、後日の修正申告や更正の請求などが問題になることがあります。具体的な対応は、税理士や弁護士等に早期に確認する必要があります。
公的機関の資料を中心に、非上場株式評価と相続手続の根拠資料を整理しています。