類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式、配当還元方式を、株主区分・会社規模・特定の評価会社該当性の順に整理します。
類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式、配当還元方式を、株主区分・会社規模・特定の評価会社該当性の順に整理します。
類似業種比準方式か純資産価額方式かを選ぶ前に、株主区分、会社規模、特定の評価会社該当性を順番に見ます。
非上場株式(自社株)の相続税評価では、市場価格がない株式をどの制度で評価するかが問題になります。実務上の答えは、類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらかを好みで選ぶというものではありません。まず取得者が支配株主側か、配当を受けることを主な期待とする少数株主側かを判定し、その後に会社規模や特定の評価会社該当性を確認します。
次の重要ポイントは、このページ全体の結論を短く整理したものです。先に大きな方向をつかむことが重要で、以後の各章では、この結論に至る判定理由と資料の見方を確認します。
同族株主等には原則的評価方式、少数株主等には配当還元方式が問題となり、原則的評価方式の中で大会社、中会社、小会社の規模区分に応じた評価方式を検討します。
よくある誤解は、評価方式だけを見てしまう点にあります。次の比較一覧は、相続税額や遺産分割に影響しやすい誤解を整理したものです。どの誤解も、最初の判定順序を外すと結論がずれやすいことを読み取れます。
大会社、中会社、小会社ごとに原則方式があり、選択可能方式も通達上認められる範囲に限られます。
相続税評価額は申告のための評価であり、遺産分割、遺留分、会社売買価格とは別に争われることがあります。
次の判断の流れは、非上場株式(自社株)の相続税評価で確認する順番を示しています。上から順に見ることで、配当還元方式、原則的評価方式、特定の評価会社の扱いを混同しにくくなります。
上場株式等ではないことを確認します。
同族株主等か、少数株主等かを判定します。
少数株主等に当たる場合は会社規模より先に確認します。
一般の評価会社か、特定の評価会社かを見ます。
大会社、中会社、小会社ごとの方式を検討します。
次の用語一覧は、評価方式を理解する前提となる基本概念をまとめたものです。言葉の意味を取り違えると、税務評価と相続人間の価値判断を混同しやすいため、各用語がどの場面で使われるかを確認します。
金融商品取引所で日々売買される上場株式ではなく、一般に市場価格が形成されていない会社の株式です。税務上は取引相場のない株式と呼ばれます。
相続税を計算するために用いる価額です。会社売却価格、代償金交渉の価値、遺留分算定の価値とは一致しないことがあります。
類似する上場会社群の株価等を基に、配当、利益、簿価純資産を比準して一株当たり価額を求める方法です。
会社の資産と負債を相続税評価の考え方に洗い替え、評価差額に対する法人税額等相当額も考慮する方法です。
少数株主等について、株式を持つことで受け取る配当を基礎に評価する特例的な方式です。
次の比較表は、混同されやすい概念の違いを示します。申告書、協議書、調停資料では、どの価値を指しているかを明確にすることが重要で、列ごとに利用場面の違いを読み取ります。
| 概念 | 主な意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自社株 | 被相続人が保有していた同族会社株式を指すことが多い | 会社が自ら保有する自己株式とは区別します。 |
| 相続税評価額 | 相続税申告のための税務上の価額 | M&A価格や遺留分の評価額と一致するとは限りません。 |
| 簿価純資産 | 類似業種比準方式で使う帳簿上の資本蓄積 | 相続税評価に洗い替えた純資産とは別の指標です。 |
| 配当還元方式 | 少数株主等の配当期待に着目する評価 | 配当の有無だけで適用可否が決まるわけではありません。 |
判定段階ごとの帰結を先に確認すると、方式選択の位置づけが明確になります。
次の表は、非上場株式(自社株)の相続税評価で見る判定段階と主な帰結をまとめたものです。段階の順序が重要で、前の段階を飛ばすと、後の評価方式の議論がずれることを読み取ります。
| 判定段階 | 見るべき事項 | 主な帰結 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 取引相場のない株式か | 上場株式等でなければ非上場株式評価へ進みます。 |
| 第2段階 | 取得者の株主区分 | 同族株主等なら原則的評価方式、少数株主等なら配当還元方式が問題になります。 |
| 第3段階 | 特定の評価会社か | 比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社などは特別な扱いを確認します。 |
| 第4段階 | 一般の評価会社の会社規模 | 総資産価額、従業員数、取引金額などで大会社、中会社、小会社に区分します。 |
| 第5段階 | 評価方式の適用 | 大会社は類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は純資産価額方式が原則です。 |
| 第6段階 | 選択可能方式 | 大会社と中会社は純資産価額方式、小会社は併用方式の選択可能性を検討します。 |
次の会社規模別の比較表は、原則方式と選択可能方式を横並びにしたものです。会社規模によって出発点が変わるため、同じ自社株でも、規模判定の結果から読み取るべき方式が異なります。
| 会社規模 | 原則方式 | 選択可能方式の概要 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 純資産価額方式を選択できる場合があります。 |
| 中会社 | 類似業種比準価額と純資産価額の併用方式 | 純資産価額方式を選択できる場合があります。 |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 併用方式を選択できる場合があります。 |
取得者の株主区分、会社の性質、会社規模の順に確認します。
相続税評価で最初に見るべきなのは、会社の規模ではなく取得者がどのような株主かです。被相続人が支配株主であっても、遺産分割後に誰が株式を取得するかで株主区分が変わることがあります。
次の判断の流れは、取得者の株主区分から会社規模判定までを一つの順番として整理しています。上から順に進むことで、少数株主等の配当還元方式と原則的評価方式の会社規模判定を分けて理解できます。
誰が何株を取得する予定かを整理します。
取得者単独ではなく同族関係者全体で判定します。
配当を基礎とする特例的評価が問題になります。
会社規模と特定の評価会社該当性を確認します。
株式等保有、土地保有、休業中などの特殊性を確認します。
総資産価額、従業員数、取引金額などを用います。
次の比較表は、会社規模判定で見落としやすい確認材料をまとめています。単なる売上高や中小企業という印象ではなく、列に挙げた複数資料を組み合わせて読むことが重要です。
| 確認項目 | 見る資料 | 読み取ること |
|---|---|---|
| 総資産価額 | 決算書、固定資産台帳、資産明細 | 会社規模区分と純資産価額への影響を確認します。 |
| 従業員数 | 賃金台帳、社会保険資料、組織図 | 形式的な役員数だけでなく実態を確認します。 |
| 取引金額 | 売上台帳、法人税申告書、決算書 | 業種別基準と照合して規模を判定します。 |
| 株主構成 | 株主名簿、遺産分割案、同族関係資料 | 配当還元方式の入口を確認します。 |
上場会社との比較を通じて、配当、利益、簿価純資産から評価会社の価値を測ります。
類似業種比準方式は、評価会社と事業内容が類似する上場会社群の株価等を基に、非上場会社の一株当たり価額を求める方法です。事業会社として上場会社との比較可能性があり、配当、利益、簿価純資産という指標が意味を持つ場合になじみやすい方式です。
次の表は、類似業種比準方式の三つの比準要素を整理したものです。各列を見ると、配当、利益、簿価純資産がそれぞれ異なる角度から会社の価値を反映していることが分かります。
| 比準要素 | 意味 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 配当金額 | 株主に対して行われた剰余金配当の水準 | 記念配当、特別配当、継続性のない配当の扱いを確認します。 |
| 利益金額 | 会社の収益力 | 非経常損益、繰越欠損金、税務上の調整を確認します。 |
| 純資産価額(簿価) | 帳簿上の資本蓄積 | 相続税評価額による純資産ではなく、簿価ベースである点に注意します。 |
次の割合比較は、資料で示された類似業種比準価額の中央値が純資産価額の中央値に対してどの程度だったかを示します。割合が低いほど、純資産価額方式との差が大きくなり得ることを読み取ります。
次の要素一覧は、類似業種比準価額が低くなりやすい場面を示しています。会社に資産が蓄積していても、利益や配当の水準によって評価が抑えられることがあり、どの事情が自社に当てはまるかを確認します。
役員報酬や退職金などにより法人利益が圧縮されている場合、利益要素の影響を確認します。
配当をほとんど行っていない会社では、配当要素が評価に影響します。
土地や有価証券に大きな含み益がある場合、純資産価額との差が開くことがあります。
複数事業を営む会社では、主たる事業の判定が重要になります。
会社を資産と負債の集合体として見て、相続税評価に洗い替えます。
純資産価額方式は、会社が持つ資産と負債を相続税評価に引き直し、発行済株式数で割って一株当たり価額を求める方法です。土地、建物、有価証券、貸付金、保険、借入金などの評価精度が結果に直結します。
次の表は、純資産価額方式で確認する主な資産項目を整理しています。資産ごとに評価ルールが異なるため、どの資料から何を確認するかを読み取ることが重要です。
| 資産項目 | 評価上の主な確認点 |
|---|---|
| 土地 | 路線価方式、倍率方式、地積、利用区分、借地権、貸宅地、貸家建付地、不整形地などを確認します。 |
| 建物 | 固定資産税評価額、賃貸状況、附属設備、建物の実在性を確認します。 |
| 上場株式 | 課税時期の株価評価、月平均選択などを確認します。 |
| 非上場株式 | 保有株式自体の評価が必要で、グループ会社の評価が連鎖することがあります。 |
| 貸付金 | 回収可能性、利息、役員貸付金、関連会社貸付金を確認します。 |
| 生命保険 | 解約返戻金、死亡保険金、未収保険金の有無を確認します。 |
次の重要事項は、評価差額に対する法人税額等相当額の割合変更を示しています。相続開始日の前後で割合が変わるため、日付と評価ソフト、評価明細書の整合性を読み取る必要があります。
純資産価額方式における評価差額に対する法人税額等相当額の割合は、2026年4月1日以後の相続、遺贈または贈与による取得について37%から38%へ改正されています。
次の一覧は、純資産価額方式がなじみやすい会社の特徴を示します。営業収益より保有資産の価値が大きい会社ほど、資産評価の精度が株価に強く反映されることを読み取ります。
事業規模が小さく、会社の財産価値が中心になる場合があります。
土地、建物、投資資産を多く保有する会社では純資産の確認が重要です。
利益や配当の指標だけでは会社実態を反映しにくいことがあります。
事業活動よりも残っている資産と負債の実在性が中心になります。
中会社では、事業性と財産性を一定割合で組み合わせます。
中会社では、大会社のように上場会社との比較を中心にするには規模が足りず、小会社のように純資産だけを見るには事業性が大きいという中間的な性格を反映します。
次の表は、併用方式で使う類似業種比準価額と純資産価額の割合を整理したものです。区分が小さくなるほど純資産価額の比重が増えるため、会社規模の判定結果から評価額への影響を読み取れます。
| 区分 | 類似業種比準価額 | 純資産価額 |
|---|---|---|
| 中会社の大 | 0.90 | 0.10 |
| 中会社の中 | 0.75 | 0.25 |
| 中会社の小 | 0.60 | 0.40 |
| 小会社の併用選択時 | 0.50 | 0.50 |
次の計算例は、同じ中会社の中でも類似業種比準価額と純資産価額の大小関係で結果が変わることを示します。数式の左側が比準価額、右側が純資産価額で、割合を掛け合わせた合計額を読み取ります。
| 前提 | 計算 | 評価額 | 読み取り |
|---|---|---|---|
| 比準1万円、純資産2万円 | 10,000円 × 0.75 + 20,000円 × 0.25 | 12,500円 | 純資産価額より低くなる例です。 |
| 比準3万円、純資産2万円 | 30,000円 × 0.75 + 20,000円 × 0.25 | 27,500円 | 純資産価額方式の選択も検討対象になります。 |
会社規模だけで方式を決める前に、資産保有状況や営業状態を確認します。
特定の評価会社に該当すると、大会社に見える会社でも単純に類似業種比準方式を使えるとは限りません。会社の資産保有状況や営業状態が通常の事業会社と異なるためです。
次の一覧は、特定の評価会社として注意すべき代表例を整理したものです。各項目の特徴を読み、自社が通常の事業会社として評価できるか、特別な扱いを確認すべきかを見分けます。
配当、利益、簿価純資産の三要素のうち複数がゼロに近い会社では、比準方式が適切に機能しないことがあります。
資産の多くが株式、出資、新株予約権付社債などで占められている会社です。
会社が土地を多く保有している場合、土地等の割合や会社規模が問題になります。
開業後間もない会社、休業中、清算中の会社では、通常の事業継続価値とは異なる確認が必要です。
次の表は、特定の評価会社に該当しやすい実務場面を整理しています。会社の外形だけではなく、資産の中身と事業活動の実態を照合して読むことが重要です。
| 場面 | 注意すべき理由 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 不動産賃貸会社 | 土地保有特定会社の判定が問題となりやすい | 土地明細、固定資産台帳、賃貸借契約 |
| 持株会社 | 株式等保有特定会社の判定が問題となりやすい | 有価証券明細、子会社資料、決算書 |
| 赤字や無配が続く会社 | 比準要素数1の会社の判定が問題となりやすい | 法人税申告書、配当実績、決算書 |
| 休業に近い会社 | 通常の事業会社としての比準がなじまないことがある | 売上資料、従業員資料、営業実態資料 |
大会社、中会社、小会社、特定の評価会社の違いを数値例で確認します。
次の表は、この章で扱う4つの具体例を横並びに整理したものです。会社規模や特定該当性によって、同じ類似業種比準価額と純資産価額の比較でも結論が変わることを読み取ります。
| 例 | 前提 | 計算・判断 | 読み取り |
|---|---|---|---|
| A社 | 大会社、同族株主。比準8,000円、純資産20,000円 | 原則は類似業種比準方式で8,000円 | 純資産価額方式も選択可能ですが、通常は低い比準価額を検討します。 |
| B社 | 中会社の中。比準10,000円、純資産30,000円 | 10,000円 × 0.75 + 30,000円 × 0.25 = 15,000円 | 併用方式が純資産価額方式より低い例です。 |
| C社 | 小会社。比準5,000円、純資産25,000円 | 5,000円 × 0.5 + 25,000円 × 0.5 = 15,000円 | 小会社でも併用方式の選択可能性を見落とさないことが重要です。 |
| D社 | 形式上は大会社だが、資産の大半が上場株式と不動産 | 株式等保有特定会社または土地保有特定会社を判定 | 大会社だから低い類似業種比準方式とは限りません。 |
次の判断の流れは、具体例を読むときの確認順序を示しています。金額だけを比較する前に、株主区分、特定該当性、会社規模という順番を守ることが重要です。
配当還元方式の対象かを先に見ます。
資産構成や営業状態を確認します。
大会社、中会社、小会社の原則方式を見ます。
通達上認められる範囲で比較計算します。
税務署に対する評価と、相続人間の公平をめぐる価値判断は分けて考えます。
相続税評価額は相続税申告のための評価額です。申告期限は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内ですが、遺産分割や遺留分で問題となる価額は、当事者間の公平や具体的な財産価値の観点から別途争われることがあります。
次の比較一覧は、後継者側と非後継者側で見え方が異なりやすい論点を整理しています。どちらの視点も自社株の換金性、会社支配、内部留保、役員報酬などに関わるため、税務計算だけでは対立を解消しにくいことを読み取ります。
自社株は換金しにくく、株式を分散させると経営が不安定になるため、納税資金や事業継続を重視しやすい立場です。
会社に内部留保や不動産があり、後継者だけが役員報酬や配当を受ける場合、評価が低すぎると感じることがあります。
会社資料の開示、含み資産、死亡前の資産移動、遺留分、代償金の支払能力などが問題になりやすい領域です。
次の表は、相続税評価と相続人間の価値判断の違いを整理したものです。目的と利用場面が異なるため、同じ評価額を使う場合でも、全員の合意や説明資料が重要になることを読み取ります。
| 区分 | 主な目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続税評価額 | 相続税申告のための税務上の価額 | 財産評価基本通達を中心に計算します。 |
| 遺産分割上の価値 | 相続人間の公平を考えるための価額 | 相続税評価額を使う合意はあり得ますが、当然に固定されるわけではありません。 |
| 遺留分算定の価値 | 遺留分侵害額請求の基礎となる価額 | 会社支配権、含み資産、死亡前の贈与などが争点になることがあります。 |
| M&A価格 | 第三者売却や株式買取の交渉価値 | 将来収益、EBITDA、営業キャッシュフローなど別の評価軸が重視されることがあります。 |
税務、紛争、登記、会計、不動産、事業承継の役割を分けて確認します。
自社株相続では、税務評価だけでなく、相続人間の合意形成、会社登記、不動産評価、企業価値分析、遺言や信託の設計が重なります。次の役割一覧は、どの専門職がどの論点を担うかを示しており、相談先を切り分ける手がかりになります。
相続税申告、税務相談、株主区分判定、会社規模判定、評価明細書の作成を担います。
申告税務調査遺産分割、遺留分、株式の帰属争い、会社資料の開示、調停、審判、訴訟を扱います。
紛争遺留分相続登記、会社登記、戸籍収集、登記用書類、裁判所提出書類作成で関与します。
登記会社が土地や建物を持つ場合、不動産鑑定、境界確認、実勢価格、流動性の検証が必要になることがあります。
不動産遺言、種類株式、信託、持株会社、納税資金、生命保険を組み合わせる設計で関与します。
設計会社資料、不動産資料、相続関係資料を早めに揃えることが評価精度と紛争予防につながります。
非上場株式の相続税評価では、資料収集の遅れが評価の遅れにつながります。次の表は、集めるべき資料を3つの分野に分けたもので、どの資料が株主区分、会社規模、純資産、相続人間協議に関係するかを読み取ります。
| 資料区分 | 主な資料 | 評価で見ること |
|---|---|---|
| 会社資料 | 定款、株主名簿、登記事項証明書、過去3期程度の決算書、法人税申告書、配当実績、役員名簿、議事録、関連会社一覧 | 株主区分、会社規模、比準要素、支配関係を確認します。 |
| 資産負債資料 | 固定資産台帳、不動産登記事項証明書、公図、固定資産税課税明細書、賃貸借契約書、借入金返済予定表、保険証券、有価証券明細、貸付金明細 | 純資産価額方式の総資産、負債、含み益、回収可能性を確認します。 |
| 相続関係資料 | 戸籍一式、遺言書、遺産分割協議書案、生前贈与資料、生命保険金資料、株式贈与契約書、会社貸付や借入の資料、預金移動資料 | 取得者、遺産分割、遺留分、透明性を確認します。 |
評価額が大きく、計算過程が複雑で、事実認定の余地が大きい領域です。
非上場株式評価は、相続税調査で重点確認されやすい領域です。次の表は、問題になりやすい項目と典型的な確認点を整理したもので、申告前にどの部分の根拠資料を残すべきかを読み取れます。
| 項目 | 典型的な問題 |
|---|---|
| 株主区分 | 配当還元方式を使える株主かどうかの誤判定 |
| 会社規模 | 従業員数、取引金額、総資産価額の判定誤り |
| 特定の評価会社 | 株式等保有特定会社、土地保有特定会社、比準要素数1の会社の見落とし |
| 類似業種 | 業種選定の誤り、複数事業の主たる業種判定 |
| 比準要素 | 配当、利益、簿価純資産の計算誤り |
| 純資産 | 不動産評価、保険、貸付金、負債、含み益の評価漏れ |
| 評価差額控除 | 37%、38%の適用時期や対象の誤り |
| 死亡直前取引 | 不自然な配当、役員退職金、資産移転、株式移動 |
次の注意点一覧は、調査対応で説明が必要になりやすい根拠資料を整理したものです。評価明細書だけではなく、事実認定を支える資料を残すことが重要であると読み取れます。
評価明細書、計算過程、採用した業種、割合、会社規模判定資料を保存します。
法人税申告書、決算書、株主名簿、不動産資料の整合性を確認します。
配当、退職金、資産移転、株式移動が不自然に見えないかを確認します。
評価額を下げることだけでなく、経営権、納税資金、公平性を総合的に考えます。
非上場株式の相続税評価は、相続発生後に初めて考えると対応が難しい論点です。事業承継では、後継者、株式集中、議決権、遺言、遺留分、納税資金、生命保険、会社不動産、持株会社化、役員退職金、事業承継税制などを生前から整理します。
次の一覧は、評価額を下げる目的だけで対策した場合に生じ得るリスクを整理しています。税額だけではなく、相続人間の公平、会社資金繰り、経営権安定を一緒に読むことが重要です。
後継者に株式を集中させるほど、非後継者への説明や代償金が問題になりやすくなります。
評価圧縮だけを目的に見える取引では、通達評価の妥当性や事実認定が問われることがあります。
退職金、配当、納税資金対策が会社の運転資金や借入返済に影響することがあります。
株式が分散すると、後継者の経営判断や金融機関対応に影響が出ることがあります。
次の比較表は、生前対策で検討される代表的な論点をまとめたものです。どの対策も税務、法務、会社実務が重なるため、目的と副作用を同時に読み取ります。
| 対策論点 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 遺言 | 自社株の取得者を明確にする | 遺留分や代償金の設計が必要になることがあります。 |
| 生前贈与 | 後継者へ株式を早めに移す | 贈与税、評価額、同族関係者判定を確認します。 |
| 生命保険 | 納税資金や代償金原資を準備する | 保険金の受取人、非課税枠、会社資金との関係を確認します。 |
| 事業承継税制 | 株式にかかる相続税や贈与税の猶予を検討する | 要件、届出、継続要件、将来の負担を確認します。 |
相続開始後は10か月の申告期限を意識しながら、資料収集と相続人間協議を並行します。
次の時系列は、相続開始後に自社株評価を進める実務上の順序を示しています。左の縦線に沿って上から下へ進む構成で、緊急確認、税務評価、相続人間協議、申告後対応の流れを読み取ります。
取得予定者ごとの株主区分、配当還元方式、会社規模、特定の評価会社該当性、各方式の試算を進めます。
自社株の集中、代償金の支払能力、非後継相続人への説明、遺留分リスク、紛争化の可能性を確認します。
評価明細書、相続税申告書、納税資金、税務調査に備えた根拠資料、株主名簿や役員登記を整理します。
一般的な制度説明として、評価方式、会社規模、紛争時の考え方を整理します。
一般的には、常に自由に安いほうを選べる制度ではなく、株主区分、会社規模、特定の評価会社該当性を判定したうえで、通達上認められた選択可能方式を検討するとされています。ただし、会社の状況、取得者の議決権割合、資料の整合性によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、税務上の会社規模は一般的な中小企業のイメージだけでは決まらず、従業員数、総資産価額、取引金額、業種別基準で判定するとされています。ただし、会社の事業内容や資料の状況によって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、会社資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、赤字であっても土地、有価証券、預金、貸付金などの資産があれば、純資産価額が大きくなる可能性があります。ただし、比準要素数1の会社や特定の評価会社該当性も関係し、会社の資産負債や営業状態によって結論が変わります。具体的な評価は、決算書や資産明細を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、配当還元方式を使えるかは配当の有無だけではなく、取得者が少数株主等に該当するかで判断するとされています。ただし、同族株主の有無、中心的同族株主の有無、役員該当性などで結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、株主名簿や同族関係資料を整理したうえで税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、純資産価額方式では土地を相続税評価に洗い替えるため、帳簿価額より相続税評価額が高い土地があると株価に影響する可能性があります。ただし、土地の利用状況、権利関係、会社全体の資産構成によって結論は変わります。具体的な対応は、不動産資料を整理したうえで税理士や不動産評価の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続人全員が納得して合意する場合に相続税評価額を参考にすることはありますが、当然に遺産分割や遺留分の評価額になるわけではないとされています。ただし、会社の実態価値、支配権、含み資産、代償金の支払能力などで争点が変わります。具体的な対応は、税務資料と法的論点を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、争いがない税務申告では税理士を中心に進められる場合があります。一方で、遺産分割、遺留分、株式の帰属、会社資料の開示、後継者と非後継者の対立がある場合は、紛争対応の専門家の関与が必要になる可能性があります。具体的な対応は、争点を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税評価は相続の場合、被相続人の死亡時点を基準にするとされています。死亡後に中心となるのは、資料を正確に集め、適用できる評価方式を適切に判定し、申告内容を整えることです。ただし、事案ごとに評価資料や分割状況が異なるため、具体的な対応は税理士等の専門家へ相談する必要があります。
方式名だけで判断せず、株主区分、会社規模、特定該当性、相続人間の争点を順に確認します。
非上場株式(自社株)の相続税評価は、単なる計算問題ではありません。会社支配、相続人間の公平、納税資金、会社の存続、後継者の経営権、税務調査リスクが重なります。
次の重要ポイントは、このページで確認した結論を最終整理したものです。各項目を順番に確認することで、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式、配当還元方式を混同しにくくなります。
少数株主等なら配当還元方式が問題となり、原則的評価方式が適用される場合は、一般の評価会社か特定の評価会社か、大会社か中会社か小会社かを順番に判定します。
制度の理解に用いた公的資料と中立的な資料名を整理しています。