非上場株式の 相続で問題になる評価方式、会社支配、遺産分割、遺留分、納税資金、定款設計、事業承継 税制を一体で確認します。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
中小企業や同族会社のオーナーが亡くなると、相続財産の中に「自社株式」が含まれることがあります。上場株式であれば市場価格を確認できますが、同族会社の株式、非上場会社の株式、親族だけで持つ会社の株式は、売買市場が存在しないことが多く、相続税申告、遺産分割、遺留分、会社支配、後継者選定、納税資金のいずれにおいても重大な争点になります。
このページのテーマである「自社株式の評価と対策」は、単なる税額計算の問題ではありません。会社を誰が引き継ぐのか、相続人間で公平をどう確保するのか、相続税をどのように納めるのか、少数株主をどのように整理するのか、遺留分侵害額請求をどのように予防するのか、会社の定款や株主構成をどう設計するのかという、法律、税務、会計、登記、事業承継、金融の複合領域です。
このページは、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、中小企業診断士、不動産鑑定士、ファイナンシャル・プランナー等の各専門職が実務で確認する論点を統合し、一般の読者にも理解できるように用語を定義しながら、専門的に解説します。ただし、個別案件では会社規模、株主構成、資産内容、過去の贈与、相続人関係、遺言の有無、税務上の評価時点、裁判上の評価目的により結論が変わるため、最終判断は必ず個別資料に基づいて専門家に確認してください。
次の重要ポイントは、自社株式の評価と対策で同時に見るべき視点を表しています。なぜ重要かというと、評価額だけを下げても、会社支配、遺留分、納税資金が崩れると事業承継が失敗し得るためです。税務、経営、家族間調整のどこに効くのかを読み取ってください。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式とは、相続の文脈では、被相続人、すなわち亡くなった人が経営していた会社、支配していた会社、または親族で所有していた会社の株式をいいます。多くの場合、次のような株式が問題になります。
次の比較表は、1. 自社株式とは何かで確認すべき項目を種類、説明、相続で問題になりやすい点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 種類 | 説明 | 相続で問題になりやすい点 |
|---|---|---|
| 同族会社の株式 | 創業者一族が議決権の多くを持つ会社の株式 | 後継者に集めたいが、他の相続人との公平が問題になる |
| 非上場株式 | 証券取引所に上場していない会社の株式 | 市場価格がなく、相続税評価や遺産分割評価が難しい |
| 事業会社の株式 | 製造業、建設業、卸売業、小売業、医療法人関連会社などの株式 | 経営権、雇用、取引先、借入保証が絡む |
| 資産管理会社の株式 | 不動産、金融資産、保険契約等を保有する会社の株式 | 会社の中に入った資産の評価と株式評価の関係が問題になる |
| 少数株式 | 被相続人が少数だけ保有していた株式 | 換金が難しく、配当還元方式や買取交渉が問題になる |
「自社株式」と聞くと、経営者本人の持株だけを想像しがちですが、相続実務では配偶者、子、兄弟姉妹、持株会、従業員、取引先、資産管理会社、信託、過去の名義株まで確認する必要があります。
自社株式は、現金や預金とは異なり、次のような性質を持ちます。
このため、自社株式の評価と対策では、「株価を下げる」という単純な発想だけでは足りません。税務上適正で、会社法上有効で、相続人間の説明可能性があり、後継者の経営を妨げず、納税資金を確保できる設計が必要です。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式の評価と対策を考えるときは、まず「何のための評価か」を分ける必要があります。同じ株式でも、評価目的が異なれば、採用される考え方や証拠が異なることがあります。
次の比較表は、2. 自社株式の評価が問題になる五つの場面で確認すべき項目を評価の場面、主な目的、典型的な基準、主に関与する専門職の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 評価の場面 | 主な目的 | 典型的な基準 | 主に関与する専門職 |
|---|---|---|---|
| 相続税申告 | 税額計算 | 相続税法、財産評価基本通達 | 税理士、必要に応じて公認会計士 |
| 遺産分割 | 相続人間で財産を分ける | 合意、鑑定、裁判所の判断 | 弁護士、裁判所、不動産鑑定士、公認会計士 |
| 遺留分侵害額請求 | 最低限の相続分を金銭で確保 | 民法上の財産評価 | 弁護士、裁判所、鑑定人 |
| 会社法上の買取、売渡 | 株主構成の整理 | 会社法上の公正な価格 | 弁護士、公認会計士、裁判所 |
| 事業承継対策 | 後継者への円滑な移転 | 税務、民法、会社法、金融 | 税理士、弁護士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関 |
実務上最も多い誤解は、「相続税評価額が決まれば、遺産分割でも遺留分でも同じ価格になる」と考えることです。相続税評価は税務上の評価ルールです。一方、遺産分割や遺留分では、当事者の合意、裁判所の判断、鑑定の手法により、別の価格が問題になることがあります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
次の判断の流れは、取引相場のない株式について、取得者、会社規模、特定類型、評価方式を順番に確認するものです。なぜ重要かというと、入口の判定を誤ると後の計算がすべてずれるためです。上から順に、どの分岐で評価方式が変わるかを読み取ってください。
同族株主、中心的同族株主、少数株主などを確認します。
総資産価額、従業員数、取引金額などを確認します。
株式等保有、土地保有、開業後3年未満などを確認します。
通常の方式と異なる評価ルールを確認します。
類似業種比準、純資産、併用、配当還元を検討します。
相続税実務で自社株式が問題になる場合、多くは「取引相場のない株式」です。これは、上場株式のように市場で日々取引される価格がない株式を意味します。国税庁の解説では、取引相場のない株式について、会社の規模や株主の態様に応じて評価方式を区分する考え方が示されています。大会社は原則として類似業種比準方式、小会社は原則として純資産価額方式、中会社は両者の併用方式によって評価します。また、同族株主以外など一定の株主については配当還元方式が用いられます。
この枠組みを理解するには、次の三段階で考えると整理しやすくなります。
非上場株式の相続税評価では、会社そのものだけでなく、「誰が株式を取得するのか」が重要です。支配権を持つ同族株主が取得する場合と、会社経営に影響力を持たない少数株主が取得する場合とでは、評価方法が異なり得ます。
次の比較表は、3. 相続税における自社株式の評価の全体像で確認すべき項目を株主区分、大まかな意味、評価上の傾向の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 株主区分 | 大まかな意味 | 評価上の傾向 |
|---|---|---|
| 同族株主 | 親族グループ等で会社支配に関与する株主 | 原則的評価方式が問題になりやすい |
| 中心的な同族株主 | 同族株主の中でも会社支配の中心にある株主 | 原則的評価方式の適用が典型的 |
| 少数株主 | 経営支配に関与しにくい株主 | 配当還元方式が問題になりやすい |
| 役員、従業員、取引先株主 | 保有目的や議決権割合により異なる | 個別判定が必要 |
ここで重要なのは、「持株比率が低いから必ず配当還元方式」という単純な理解は危険であるという点です。株主グループ、同族関係、議決権割合、取得後の状態を正確に判定しなければなりません。
相続税評価における原則的評価方式では、評価会社を大会社、中会社、小会社に分けます。国税庁の解説では、総資産価額、従業員数、取引金額により区分するとされています。
次の比較表は、3. 相続税における自社株式の評価の全体像で確認すべき項目を会社規模、原則的な評価方式、評価思想の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 会社規模 | 原則的な評価方式 | 評価思想 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 上場会社に類似する事業価値を重視する |
| 中会社 | 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用 | 事業価値と資産価値を混合する |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 会社の資産負債を重視する |
大会社でも純資産価額方式を選択できる場合があり、小会社でも一定の併用方式が認められる場合があります。したがって、会社規模判定は形式的な入口にすぎず、最終的な評価方式の選択まで確認する必要があります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
類似業種比準方式とは、評価対象会社と事業内容が類似する上場会社群の株価を基礎に、評価対象会社の配当、利益、純資産を比較して株式価値を算定する方式です。大会社に原則として用いられます。
簡略化して表現すれば、次のような思想です。
国税庁の解説でも、類似業種の株価を基に、一株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額を比準して評価する旨が示されています。
類似業種比準方式を検討する際には、少なくとも次の資料を確認します。
次の比較表は、4. 類似業種比準方式で確認すべき項目を資料、確認する内容の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 直近の法人税申告書 | 所得、別表、資本金等、利益積立金 |
| 決算書 | 売上、営業利益、経常利益、純資産 |
| 株主総会議事録 | 配当実績、役員報酬、退職金決議 |
| 勘定科目内訳明細書 | 役員借入金、貸付金、土地、有価証券 |
| 業種資料 | 類似業種の選定、業種番号 |
| 株主名簿 | 株主区分、同族判定、議決権割合 |
類似業種比準方式では、評価会社の利益、配当、簿価純資産が影響します。一般に、利益が大きい会社、安定配当をしている会社、内部留保が厚い会社は評価額が高くなりやすい傾向があります。
ただし、相続直前に形式的に利益や配当を調整することは、税務上のリスクを伴います。事業実態、合理性、継続性、会計処理の適正性がない対策は、否認や更正、相続人間紛争の原因になり得ます。
適正な対策は、数字を無理に作ることではありません。事業計画、役員報酬、退職金、設備投資、配当方針、資本政策を事前に整え、結果として評価額、納税資金、経営承継を整合させることです。
たとえば、創業者の退職に伴う役員退職金の支給は、会社の利益や純資産に影響し得ます。しかし、退職の実態、在任期間、功績倍率、支給決議、資金繰り、法人税上の損金性、相続人間の説明可能性を総合的に検討しなければなりません。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
純資産価額方式とは、会社の資産と負債を相続税評価額に置き直し、資産から負債を控除して株式価値を評価する方式です。小会社に原則として用いられます。国税庁の解説では、総資産や負債を相続税評価に洗い替え、総資産価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を控除した残額により評価する旨が示されています。
簡略化すると、次のように考えます。
次のような会社は、純資産価額方式で評価額が高くなりやすい傾向があります。
次の比較表は、5. 純資産価額方式で確認すべき項目を会社の特徴、理由の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 会社の特徴 | 理由 |
|---|---|
| 不動産を多く保有している | 土地や建物の評価が株式価値に反映される |
| 長年黒字で内部留保が厚い | 純資産が増えている |
| 借入が少ない | 資産から控除できる負債が少ない |
| 含み益のある資産を持つ | 帳簿価額と相続税評価額の差が出る |
| 事業活動が小さく資産保有が中心 | 類似業種比準方式より資産価値が重視されやすい |
資産管理会社や不動産保有会社では、会社の株式評価が実質的に会社保有不動産の評価問題に近づきます。その場合、不動産鑑定士、税理士、公認会計士、弁護士が連携して、土地の評価単位、貸家建付地、借地権、同族会社への貸付、使用貸借、賃貸借契約の実態を確認する必要があります。
純資産価額方式では、評価差額に対する法人税額等相当額の控除が問題になります。国税庁は、純資産価額方式において相続税評価額による純資産価額と帳簿価額による純資産価額との差額に一定割合を乗じて計算する考え方を示しており、2026年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得する取引相場のない株式等については、法人税額等相当額に係る割合が38パーセントとされています。
この改正情報は、評価時点により適用関係が変わるため、相続日または贈与日を確認することが重要です。古い資料では37パーセントと記載されていることがあるため、最新の公式情報を確認してください。
純資産価額方式の対策では、会社の資産構成、含み益、借入、退職金、設備投資、不動産利用、生命保険、事業用資産の承継を総合的に検討します。
ただし、「評価額を下げるためだけ」に資産を移動させる対策は危険です。たとえば、相続直前の不自然な資産売買、実態のない借入、同族間の時価から大きく離れた取引、過大な退職金、名義だけの株式移転は、税務上も民事上も問題になり得ます。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
中会社では、類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせる併用方式が問題になります。国税庁の有識者会議資料では、中会社の区分に応じて類似業種比準価額と純資産価額を一定割合で組み合わせる考え方が示されています。
次の比較表は、6. 併用方式で確認すべき項目を区分、価値の見方、実務上の注目点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 区分 | 価値の見方 | 実務上の注目点 |
|---|---|---|
| 中会社の大 | 類似業種比準の比重が高い | 利益、配当、簿価純資産の影響が大きい |
| 中会社の中 | 類似業種比準と純資産の中間 | 事業価値と資産価値の双方を検討する |
| 中会社の小 | 純資産の比重が高まる | 不動産、内部留保、含み益の影響が大きい |
中会社の評価では、会社規模判定の微妙な差が評価額に大きく影響することがあります。そのため、従業員数、取引金額、総資産価額の判定資料を丁寧に確認する必要があります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
配当還元方式とは、少数株主のように会社支配に関与しにくい株主について、配当を受ける権利として株式価値を評価する方式です。国税庁の解説では、同族株主以外の株主等が取得した株式について、年配当金額を10パーセントの利率で還元して評価する旨が示されています。
配当還元方式が適用されると、原則的評価方式より評価額が低くなることがあります。しかし、誰にでも使える方式ではありません。取得者の株主区分、同族関係、議決権割合、中心的同族株主の有無、取得後の状態を確認する必要があります。
少数株主側から見ると、相続税評価額が低くても、実際にはその株式を売却できない、配当も少ない、会社情報にアクセスしにくいという問題があります。会社側から見ると、少数株式が相続で分散すると、株主総会通知、帳簿閲覧請求、株式買取交渉、将来のM&Aで支障が出ることがあります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
通常の会社規模判定とは別に、特定の評価会社に該当する場合は、通常の類似業種比準方式や併用方式ではなく、別の評価ルールが問題になります。国税庁の有識者会議資料でも、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社等の類型が整理されています。
代表的な例は次のとおりです。
次の比較表は、8. 特定の評価会社で確認すべき項目を類型、大まかな意味、注意点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 類型 | 大まかな意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 株式等保有特定会社 | 保有資産の中で株式等の割合が高い会社 | 投資会社、持株会社、グループ会社で問題になりやすい |
| 土地保有特定会社 | 保有資産の中で土地等の割合が高い会社 | 不動産保有会社で問題になりやすい |
| 開業後3年未満の会社 | 創業間もない会社 | 類似業種比準方式が適さないことがある |
| 比準要素数1の会社 | 類似業種比準の要素が乏しい会社 | 利益、配当、純資産の状況確認が必要 |
| 開業前、休業中、清算中の会社 | 事業継続を前提にしにくい会社 | 純資産価額方式等が問題になりやすい |
資産管理会社を作って不動産や株式を移す対策は、相続対策として紹介されることがあります。しかし、資産構成によっては特定の評価会社に該当し、期待した評価減が得られないことがあります。会社設立、資産移転、持株会社化は、税務、会社法、金融機関対応、相続人間の公平を含めて検討しなければなりません。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式の評価は、資料が不足していると正確に進みません。相続発生前の対策でも、相続発生後の申告でも、次の資料を早期に集めることが重要です。
次の比較表は、9. 自社株式の評価と対策で最初に集める資料で確認すべき項目を分野、必要資料、主な確認事項の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 分野 | 必要資料 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 会社基本情報 | 登記事項証明書、定款、株主名簿 | 発行株式数、譲渡制限、種類株式、相続人等に対する売渡請求条項 |
| 株主関係 | 株主名簿、過去の株式譲渡契約、贈与契約 | 名義株、同族関係、議決権割合、過去の移転 |
| 税務資料 | 法人税申告書、決算書、勘定科目内訳明細書 | 利益、配当、純資産、役員借入金、貸付金 |
| 資産資料 | 不動産資料、有価証券明細、保険証券 | 含み益、評価単位、契約実態 |
| 負債資料 | 借入契約、保証契約、担保資料 | 会社債務、個人保証、担保不動産 |
| 相続資料 | 戸籍、遺言書、遺産目録、生前贈与資料 | 相続人、遺留分、特別受益、寄与分 |
| 事業承継資料 | 後継者候補、経営計画、金融機関資料 | 承継可能性、納税資金、議決権設計 |
とくに株主名簿と定款は、法務の入口です。相続により株式が移転した場合に、会社が相続人等に対して売渡しを請求できる定款規定があるかどうかは、株主構成整理に大きく影響します。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
次の時系列は、自社株式がある相続で10か月の申告期限までに進める作業を表しています。なぜ重要かというと、会社資料の収集、株主判定、評価方式の検討、相続人間協議、納税資金準備を同時並行で進める必要があるためです。上から順に、期限から逆算して作業の優先順位を確認してください。
株主権行使者、代表者不在、金融機関対応を確認します。
名義株、過去の贈与、譲渡制限を確認します。
不動産評価、生命保険、個人保証も同時に確認します。
代償金設計と後継者への株式集中を検討します。
未分割申告、延納、物納、納税猶予の適用可否を検討します。
相続税の申告期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。多くのケースでは被相続人の死亡日の翌日から10か月以内になります。国税庁は、期限までに申告と納税をしない場合、加算税や延滞税がかかる場合があると説明しています。
自社株式がある相続では、10か月は決して長くありません。会社資料の収集、株主判定、評価方式の検討、相続人間協議、納税資金準備を同時並行で進める必要があります。
次の比較表は、10. 相続税申告における時間軸で確認すべき項目を時期、主な作業、注意点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 時期 | 主な作業 | 注意点 |
|---|---|---|
| 死亡直後から1か月 | 相続人確認、遺言確認、会社への連絡 | 株主権行使者、代表者不在、金融機関対応を確認 |
| 1か月から3か月 | 会社資料、決算書、定款、株主名簿の収集 | 名義株、過去の贈与、譲渡制限の確認 |
| 3か月から6か月 | 株式評価の試算、遺産全体の把握 | 不動産評価、生命保険、個人保証も同時確認 |
| 6か月から8か月 | 遺産分割方針、納税資金、事業承継方針 | 後継者に株式を集中させる代償金設計が重要 |
| 8か月から10か月 | 申告書作成、納税、名義変更 | 未分割申告、延納、物納、納税猶予の適用可否を検討 |
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
会社経営の観点では、議決権が分散すると意思決定が不安定になります。取締役選任、代表者変更、定款変更、組織再編、金融機関対応、M&A、重要な資産売却などに支障が出ることがあります。そのため、事業を継続する会社では、後継者に議決権を集中させることが基本方針になりやすいです。
しかし、後継者が自社株式を多く取得すると、他の相続人から見ると「換金しにくい株式だけで財産評価を高くされる」または「会社を継いだ人だけが有利」と感じられることがあります。反対に、非後継者に株式を分けると、会社経営に関与しない株主が増え、将来の紛争の原因になります。
後継者に株式を集中させ、他の相続人には現金、不動産、生命保険金、代償金で調整する方法を代償分割といいます。代償分割を行うには、後継者に代償金を支払う資金力が必要です。
代償金の原資としては、次のようなものが検討されます。
次の比較表は、11. 遺産分割における自社株式で確認すべき項目を原資、長所、注意点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 原資 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 生命保険金 | 死亡時に現金化しやすい | 受取人、保険料負担、税務関係を確認する |
| 役員退職金 | 創業者退任時の資金移転に使える場合がある | 適正額、支給決議、法人税、資金繰りを確認する |
| 後継者の自己資金 | 単純で分かりやすい | 金額が大きいと困難 |
| 金融機関借入 | 大口代償金に対応できる場合がある | 返済原資、担保、個人保証に注意 |
| 会社による自己株式取得 | 株主整理に有効な場合がある | 分配可能額、税務、会社法手続を確認する |
自社株式の価格が争われる場合、当事者の合意ができなければ、家庭裁判所の調停、審判、鑑定が問題になります。相続税評価額、会計上の純資産、DCF法、収益還元法、類似会社比較法、純資産価額、配当還元的な見方など、複数の評価手法が議論されることがあります。
弁護士の役割は、単に相手と交渉することではありません。どの評価目的で、どの評価時点で、どの資料に基づき、どの評価方法を採るべきかを整理し、必要に応じて公認会計士、不動産鑑定士、税理士の意見を証拠化することです。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
遺留分とは、一定の相続人に保障される最低限の相続上の取り分です。兄弟姉妹以外の相続人について問題になります。法務省の相続法改正資料でも、遺留分は兄弟姉妹以外の相続人について最低限の取り分を確保する制度として説明されています。2019年の相続法改正により、遺留分侵害に対しては原則として金銭の支払を請求する制度になりました。
自社株式の相続では、後継者に株式を集中させる遺言を作った結果、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けることがあります。株式そのものを返すのではなく金銭請求になるため、後継者は会社支配を維持できる一方、多額の金銭負担を負う可能性があります。
遺留分対策では、次の順序で検討します。
中小企業の事業承継では、一定の要件のもと、先代経営者から後継者に贈与された自社株式について、遺留分算定基礎財産から除外する合意、または評価額を固定する合意を活用できる制度があります。中小企業庁の資料では、推定相続人全員の合意、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可が必要とされ、固定合意では弁護士、税理士、公認会計士等による相当な価額の証明が問題になることが示されています。
この制度は、後継者に株式を集中させつつ、将来の遺留分紛争を予防する強力な手段です。ただし、全員の合意が必要であり、説明資料、株価評価、承継計画、家族関係の調整が不可欠です。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
中小企業の株式は、多くの場合、定款で譲渡制限が設けられています。譲渡制限株式とは、株式を譲渡する際に会社の承認を必要とする株式です。これにより、会社にとって望ましくない第三者への株式移転を防ぎやすくなります。
ただし、相続は通常の譲渡とは異なります。相続により株式が移転した場合、定款に特別の規定がなければ、相続人が株主になります。したがって、相続による株式分散を防ぐには、定款に相続人等に対する売渡請求に関する規定を置くことが検討されます。
会社法は、譲渡制限株式について、相続その他の一般承継により株式を取得した者に対し、会社がその株式を会社に売り渡すことを請求できる旨を定款で定めることを認めています。e-Gov法令検索で確認できる会社法174条にも、この制度が定められています。
この制度を活用すれば、相続で株式が分散した場合に、会社が株式を買い戻す道を確保できます。しかし、売渡請求には会社法上の手続、株主総会決議、価格決定、資金、税務、相続人間の感情面が絡みます。定款に規定を置くだけで問題が解決するわけではありません。
自社株式の評価と対策では、議決権と経済的価値を分ける設計も検討されます。
次の比較表は、13. 会社法上の対策で確認すべき項目を手段、内容、活用場面、注意点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 手段 | 内容 | 活用場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 議決権制限株式 | 議決権を制限する種類株式 | 非後継者への経済的配慮 | 定款変更、株主同意、税務評価に注意 |
| 拒否権付株式 | 特定事項に拒否権を持つ種類株式 | 創業者の生前統制 | 後継者の経営自由度を阻害し得る |
| 取得条項付株式 | 一定事由で会社が取得できる株式 | 将来の株主整理 | 価格、手続、分配可能額に注意 |
| 属人的定め | 株主ごとに権利内容を定める | 非公開会社の柔軟な設計 | 少数株主保護、説明可能性が重要 |
| 持株会社 | 株式を保有する会社を設ける | グループ支配、承継整理 | 特定の評価会社、税務否認リスクに注意 |
これらは高度な会社法、税務、会計の設計を伴います。安易に導入すると、相続税評価、贈与税、所得税、法人税、会社法手続、金融機関対応で問題が生じます。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
法人版事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場会社の株式等について、後継者が贈与または相続等により取得した場合に、贈与税または相続税の納税を猶予し、一定の場合に免除される制度です。中小企業庁は、法人版事業承継税制の特例措置について、特例承継計画の提出期間、対象株式、対象税額、後継者数などを整理しています。
相続税評価額を下げる対策だけでは、会社支配と納税資金の問題を同時に解決できないことがあります。事業承継税制は、税負担を猶予することで後継者への株式集中を可能にする重要な制度です。
中小企業庁の案内では、特例承継計画の提出期間は2018年4月1日から2027年9月30日まで、制度の対象となる贈与または相続等による株式取得期間は2018年1月1日から2027年12月31日までとされています。
期限がある制度では、相続発生後に慌てて検討しても間に合わないことがあります。後継者が決まっている会社では、早い段階で次の点を確認してください。
事業承継税制は有効な制度ですが、「税金が消える制度」と単純に考えるのは危険です。猶予された税額は、要件を満たし続けることを前提に扱われます。後継者が株式を譲渡した場合、会社が解散した場合、要件を満たさなくなった場合などには、猶予税額と利子税の問題が生じ得ます。
また、税務上の猶予が認められても、遺留分、代償金、金融機関保証、後継者の経営能力、非後継者の納得という問題は別に残ります。税制だけで事業承継は完成しません。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式の移転手段には複数の選択肢があります。それぞれ効果とリスクが異なります。
次の比較表は、15. 生前贈与、売買、信託、遺言の比較で確認すべき項目を手段、長所、短所、注意点、主な関与専門職の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 手段 | 長所 | 短所、注意点 | 主な関与専門職 |
|---|---|---|---|
| 生前贈与 | 後継者へ早期に株式を移せる | 贈与税、遺留分、評価時点、支配権移転に注意 | 税理士、弁護士 |
| 売買 | 対価を払うため公平性を説明しやすい | 時価、資金調達、所得税、みなし贈与に注意 | 税理士、弁護士、公認会計士 |
| 遺言 | 死亡時に株式を後継者へ指定できる | 遺留分、遺言能力、方式不備に注意 | 弁護士、公証人、司法書士 |
| 民事信託 | 議決権管理や承継設計が柔軟 | 税務、信託契約、受託者管理が難しい | 弁護士、税理士、司法書士 |
| 事業承継税制 | 納税猶予により株式集中しやすい | 要件管理、期限、取消リスクがある | 税理士、中小企業診断士、弁護士 |
| 自己株式取得 | 株主整理に使える | 分配可能額、みなし配当、手続に注意 | 弁護士、税理士、公認会計士 |
「最適解」は会社ごとに異なります。たとえば、後継者がすでに経営しており、相続人間の関係が良い場合は、生前贈与と民法特例、遺言、生命保険、事業承継税制を組み合わせることが考えられます。相続人間の関係が悪い場合は、まず遺留分と証拠化を重視し、弁護士主導で設計する必要があります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式の評価と対策では、評価額を下げることばかりに注目すると危険です。評価額を下げても、会社の資金繰りが悪化したり、後継者が金融機関から信用を失ったり、相続人間で不公平感が強まったりすれば、事業承継は失敗します。
次のような行為は慎重に検討すべきです。
次の比較表は、16. 自社株式の評価と対策で避けるべき行為で確認すべき項目を行為、主なリスクの列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 行為 | 主なリスク |
|---|---|
| 相続直前の不自然な借入 | 租税回避と見られる可能性、返済不能リスク |
| 実態のない役員退職金 | 過大役員退職金、損金否認、相続人間紛争 |
| 時価から離れた同族間売買 | みなし贈与、所得税、法人税、説明不能 |
| 名義だけの株式移転 | 名義株、真正な所有者の争い |
| 配当や利益の形式的調整 | 税務調査、会社法上の問題、少数株主との紛争 |
| 会社資産の私的流用 | 特別受益、使い込み、損害賠償、刑事問題の可能性 |
相続税法上の評価通達には、通達による評価が著しく不適当と認められる場合の個別評価に関する考え方があります。評価通達どおりの形式を整えたように見えても、取引の実態、経済合理性、時期、目的、資金の流れが不自然であれば、税務上の争いが起こり得ます。
次のリスク一覧は、評価額だけを下げる発想で起こりやすい問題を整理したものです。なぜ重要かというと、形式だけ整えた対策でも、実態や経済合理性がなければ税務上又は民事上の争いにつながるためです。どの行為がどのリスクを生むかを確認してください。
租税回避と見られる可能性や返済不能リスクがあります。
過大役員退職金、損金否認、相続人間紛争につながり得ます。
みなし贈与、所得税、法人税、説明不能の問題があります。
名義株や真正な所有者をめぐる争いが残ります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式の評価と対策は、単独の専門職だけで完結しないことが多い領域です。相談先を誤ると、税務は整っていても遺留分で紛争化する、会社法手続は整っていても納税資金がない、遺言はあるが株式評価資料が不足する、という事態が生じます。
次の比較表は、17. 専門職ごとの役割で確認すべき項目を専門職、主な役割、相談すべき場面の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 専門職 | 主な役割 | 相談すべき場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割、遺留分、交渉、調停、審判、訴訟、会社法紛争 | 相続人間で争いがある、争いが予想される |
| 税理士 | 相続税申告、株式評価、贈与税、事業承継税制、税務調査対応 | 相続税が発生しそう、自社株式の税務評価が必要 |
| 公認会計士 | 企業価値評価、財務分析、内部統制、M&A評価 | 遺産分割評価、会社価値評価、事業承継計画 |
| 司法書士 | 相続登記、会社登記、株式関係書類、裁判所提出書類作成 | 不動産、会社登記、役員変更、定款変更 |
| 行政書士 | 遺産分割協議書等の書類作成、許認可承継支援 | 争いがなく、書類整理が中心 |
| 公証人 | 公正証書遺言の作成 | 遺言の確実性を高めたい |
| 不動産鑑定士 | 会社保有不動産、相続不動産の評価 | 不動産価値が株式評価や遺産分割で争点になる |
| 土地家屋調査士 | 境界、分筆、表示登記 | 会社または個人が土地を保有し、境界が問題になる |
| 中小企業診断士 | 経営改善、承継計画、後継者育成 | 会社の継続可能性と承継計画を作りたい |
| ファイナンシャル・プランナー | 資金計画、保険、家計、老後資金の整理 | 代償金、納税資金、生活資金を全体で見たい |
| 金融機関、信託銀行 | 借入、納税資金、遺言信託、株式承継支援 | 資金調達や遺言執行支援が必要 |
争いがある相続では、まず弁護士が全体の法的リスクを整理し、税理士や公認会計士と連携する体制が望ましいです。争いがなく、税務申告が中心なら税理士主導で進めることもあります。会社支配や定款、種類株式が絡む場合は、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士の連携が必要です。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
自社株式の評価では、会社が保有する不動産の評価が大きな影響を与えることがあります。とくに、土地保有会社、賃貸不動産会社、社長所有土地を会社が使用している会社では、次の点を確認します。
また、個人が所有する不動産を相続する場合には、相続登記にも注意が必要です。法務省は、相続等により不動産を取得した相続人には、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があると説明しており、相続登記の申請義務化は2024年4月1日から始まっています。
会社が保有する不動産そのものは会社財産であり、株主個人の相続財産ではありません。しかし、会社の不動産価値は株式評価に反映されるため、会社財産と個人財産を混同しないことが重要です。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
このケースでは、長男に株式を集中させる必要性が高い一方、他の相続人の遺留分と公平が問題になります。基本的な検討手順は次のとおりです。
このケースでは、税理士だけでなく弁護士の関与が重要です。遺言の文言、遺留分、特別受益、生前贈与、説明資料の作成が将来の紛争予防に直結します。
このケースでは、株式評価より先に、誰が会社を経営できるのかを確認する必要があります。後継者がいないまま株式を共有または分散させると、会社経営が止まることがあります。
検討すべき選択肢は次のとおりです。
次の比較表は、19. よくあるケース別の検討で確認すべき項目を選択肢、内容、注意点の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 選択肢 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一人に株式を集中 | 代表者候補に議決権を集める | 代償金、遺留分、経営能力が問題 |
| 共同経営 | 複数相続人で役員になる | 意思決定不全のリスク |
| 外部承継 | 従業員、役員、第三者へ承継 | 株式売却価格、雇用、保証解除が問題 |
| M&A | 会社を売却する | 企業価値評価、税務、従業員説明が必要 |
| 清算 | 事業を終了する | 債務、保証、従業員、税務が問題 |
対立がある場合、会社資料へのアクセスも争点になります。弁護士は、相続人としての権利、株主としての権利、取締役としての権限を区別して整理する必要があります。
被相続人が会社支配に関与しない少数株主だった場合、相続人は「株式を相続したが売れない」という問題に直面します。配当が少なく、議決権も限定的で、買主がいない場合、相続税評価額と経済的実感が乖離することがあります。
この場合の対策は、会社または多数株主との買取交渉、定款確認、株主間契約の確認、配当方針の確認、相続税評価の適用方式確認です。少数株主だから必ず低い評価になるとは限らないため、税理士と弁護士の連携が必要です。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
次の比較表は、20. 自社株式の評価と対策の実務チェックリストで確認すべき項目を項目、確認内容の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 株主構成 | 誰が何株持っているか、名義株はないか |
| 定款 | 譲渡制限、相続人等への売渡請求、種類株式の有無 |
| 後継者 | 誰が経営するのか、いつ代表権を移すのか |
| 株価 | 相続税評価の概算、遺産分割上の見通し |
| 遺留分 | 非後継者の最低限の権利をどう確保するか |
| 納税資金 | 相続税、代償金、借入返済の原資 |
| 保険 | 受取人、保険金額、税務上の扱い |
| 役員退職金 | 支給時期、適正額、決議、資金繰り |
| 事業承継税制 | 特例承継計画、認定、継続要件 |
| 遺言 | 公正証書遺言、遺言執行者、予備的条項 |
| 民法特例 | 推定相続人全員の合意、確認、許可 |
| 金融機関 | 個人保証、担保、代表者変更への対応 |
次の比較表は、20. 自社株式の評価と対策の実務チェックリストで確認すべき項目を項目、確認内容の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 遺言の有無 | 公正証書、自筆証書、法務局保管制度 |
| 相続人 | 戸籍、養子、代襲相続、相続放棄 |
| 株主名簿 | 被相続人の持株数、議決権割合 |
| 会社運営 | 代表者、取締役、株主総会、銀行対応 |
| 評価資料 | 決算書、申告書、資産明細、不動産資料 |
| 申告期限 | 死亡を知った日の翌日から10か月以内 |
| 分割方針 | 後継者へ株式集中、代償金、未分割申告 |
| 納税方法 | 現金納付、延納、物納、納税猶予 |
| 紛争可能性 | 遺留分、使い込み疑い、株価争い |
| 専門家体制 | 弁護士、税理士、公認会計士、司法書士の連携 |
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
一般的には、後継者候補が見えた時点で始めることが望ましいとされています。代表権の承継、株式の承継、相続税、遺留分、納税資金は5年から10年単位で検討することがあります。ただし、会社規模、株主構成、相続人関係によって必要な対策は変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。
一般的には、相続税評価額は税務上の評価であり、遺産分割では当事者の合意や裁判所の判断により異なる評価が用いられることがあるとされています。支配権がある株式、収益力の高い会社、不動産保有会社では、評価方法が争われる可能性があります。具体的な見通しは専門家へ相談する必要があります。
一般的には、遺言だけで全ての問題が解決するとは限らないとされています。他の相続人の遺留分侵害額請求、代償金や支払資金、税務評価、事業承継税制の要件などが問題になる可能性があります。具体的な設計は、資料を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、決算書は重要ですが、それだけでは不十分とされています。法人税申告書、勘定科目内訳明細書、株主名簿、定款、不動産資料、有価証券明細、過去の株式移転資料、配当決議、役員退職金資料などが必要になることがあります。具体的には専門家へ確認する必要があります。
一般的には、赤字会社でも株式価値がゼロとは限らないとされています。不動産、現預金、有価証券、貸付金、営業権、将来収益がある場合があり、純資産価額方式では資産負債の状況が重視されます。具体的な評価は会社資料により変わるため、専門家へ相談する必要があります。
一般的には、会社が所有する不動産は会社財産であり、株主個人の相続財産は株式と整理されます。ただし、会社保有不動産の価値は株式評価に反映されるため、会社財産と個人財産を混同しないことが重要です。具体的な評価は専門家へ確認する必要があります。
一般的には、形式的に公平に見えても、経営上は危険なことがあるとされています。株式が分散すると会社の意思決定が不安定になり、後継者の経営が難しくなる可能性があります。具体的な方針は専門家へ相談する必要があります。
一般的には、争いがない税務申告中心の案件では税理士主導で進められることがあります。一方、遺留分、遺産分割、使い込み疑い、株主権争い、会社法上の買取、調停や訴訟が予想される場合は、弁護士の関与が必要になることがあります。具体的には争いの有無と会社支配の必要性に応じて相談先を選ぶ必要があります。
一般的には、事業承継税制は税負担の猶予に有効ですが、遺留分、代償金、後継者の経営能力、会社支配、金融機関保証、相続人感情までは解決しないとされています。税制は事業承継の一部であり、全体設計が必要です。具体的な利用可否は専門家へ確認する必要があります。
一般的には、相続人間で争いがある又は争いが予想される場合は弁護士、相続税が発生しそうな場合は税理士、会社価値評価や財務分析が重要な場合は公認会計士が関与することが多いです。具体的には、争いの有無、相続税の有無、会社支配の必要性を整理して相談する必要があります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
次の重要ポイントは、自社株式の評価と対策で同時に満たすべき条件を整理したものです。なぜ重要かというと、税額を下げるだけ、遺言だけ、定款だけ、保険だけの対策では相続後に会社経営が混乱する可能性があるためです。5つのうち欠けているものがないかを確認してください。
相続税評価が公式ルールに沿っていること、後継者が会社支配を維持できること、非後継者の遺留分と公平感に配慮していること、納税資金と代償金の原資があること、将来の税務調査、調停、訴訟に耐えられる資料と説明があることを同時に確認します。
自社株式の評価と対策では、次の五つを同時に満たす設計を目指すべきです。
この五つのうち一つでも欠けると、相続後に会社経営が混乱する可能性があります。税額を下げるだけの対策、遺言だけの対策、定款だけの対策、保険だけの対策は不十分です。会社、家族、税務、法務、金融を一体で設計することが、自社株式の評価と対策の本質です。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
相談前に、次の事項を1枚から3枚程度にまとめると、専門家の初期判断が早くなります。
次の比較表は、23. 専門家へ依頼する前に作るべきメモで確認すべき項目を項目、書く内容の列で整理したものです。なぜ重要かというと、論点を分けて見ることで判断の前提をそろえ、手続や資料の不足を見つけやすくなるためです。各列の違いと注意点を読み取り、今どの確認が必要かを把握してください。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 会社概要 | 業種、売上、従業員数、主な資産、借入、金融機関 |
| 株主構成 | 誰が何株持つか、親族関係、名義株の疑い |
| 家族構成 | 推定相続人、後継者候補、関係性 |
| 財産全体 | 自社株式以外の預金、不動産、保険、借入 |
| 争点 | 後継者争い、遺留分、使い込み疑い、評価争い |
| 希望 | 会社を継続したいか、売却したいか、平等に分けたいか |
| 期限 | 相続発生日、申告期限、株主総会、借入更新日 |
このメモは、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士が同じ前提で議論するための共通資料になります。
評価目的、必要資料、会社支配、税務と法務の関係を整理します。
「自社株式の評価と対策」は、非上場株式の相続税評価だけでなく、事業承継、遺産分割、遺留分、会社支配、納税資金、定款設計、少数株主対策を含む総合問題です。相続税評価では、取引相場のない株式について、株主区分、会社規模、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式、配当還元方式、特定の評価会社を正確に判定する必要があります。
一方で、相続税評価額がそのまま相続人間の納得を生むわけではありません。後継者に株式を集中させるなら、非後継者への配慮と支払原資が必要です。遺言を作るなら、遺留分と税務評価を確認する必要があります。事業承継税制を使うなら、期限と継続要件を管理しなければなりません。会社法上の定款対策を行うなら、価格決定、手続、資金、税務まで見なければなりません。
最終的には、会社を守るための経営判断と、家族の納得を得るための相続設計を両立させることが重要です。そのためには、早期に資料を集め、概算株価を把握し、後継者を決め、遺留分と納税資金を見積もり、弁護士、税理士、公認会計士、司法書士等が連携する体制を整えるべきです。
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