相続財産に非上場会社の株式がある場合、会社の資産構成によって通常の評価方式ではなく純資産価額方式が中心になることがあります。株式等と土地等の割合、会社規模、取得者の株主区分、直前対策の合理性を一体で確認します。
相続 財産に非上場会社の株式がある場合、会社の資産構成によって通常の評価方式ではなく純資産価額方式が中心になることがあります。
相続財産の中に非上場会社の株式が含まれる場合、その評価は預金や上場株式のように単純ではありません。会社が多額の株式、出資、不動産を保有していると、通常の取引相場のない株式の評価方式ではなく、特定の評価会社として扱われることがあります。
このページで中心に扱うのは、通達上の正確な名称である株式等保有特定会社と、土地保有特定会社です。会社が黒字か赤字かだけでなく、貸借対照表にどのような資産が入っているか、相続税評価額で見直したときの割合、取得者が同族株主等か少数株主か、相続開始前に資産構成を変えた理由を説明できるかが重要になります。
次の比較表は、判定時点、基準、評価方法、対策上の注意を横並びで整理したものです。特定の評価会社に該当するかどうかで評価方式が大きく変わるため、まずどの行が自社に関係するかを確認することが大切です。
| 項目 | 実務上の要点 |
|---|---|
| 判定時点 | 原則として相続、遺贈、贈与による取得時点、つまり課税時期の現況で判定します。 |
| 株式等保有特定会社 | 総資産価額のうち、株式、出資、新株予約権付社債などの株式等の価額が50%以上かを確認します。 |
| 土地保有特定会社 | 総資産価額のうち、土地及び土地の上に存する権利などの土地等の価額が、会社規模に応じた一定割合以上かを確認します。 |
| 評価方法 | 株式等保有特定会社は原則として純資産価額方式で、納税義務者の選択によりS1+S2方式を検討できます。土地保有特定会社は原則として純資産価額方式です。 |
| 複数該当 | 複数類型に該当する場合は後順位の類型が優先されます。株式等保有特定会社と土地保有特定会社の両方に該当するなら、土地保有特定会社として扱う方向で検討します。 |
| 対策 | 短期的な判定外しではなく、合理的な事業目的、議事録、資金使途、時系列資料、納税資金、遺言、遺産分割、事業承継を総合設計します。 |
| 最新論点 | 令和8年4月1日以後に取得した取引相場のない株式等では、純資産価額方式の評価差額に対する法人税額等相当額の割合が37%から38%へ改正されています。 |
特に注意したいのは、合理的な理由なく課税時期前に資産構成を変え、株式等保有特定会社又は土地保有特定会社への該当を免れようとした場合、その変動をなかったものとして判定されるリスクがある点です。
次の重要ポイントは、この記事全体の読み取り方を一文でまとめたものです。細かい計算に入る前に、判定、評価、説明資料、相続設計を切り離さずに見る必要があることを押さえてください。
会社の資産構成を相続税評価ベースで可視化し、株式等保有割合、土地保有割合、純資産価額、株主区分、相続人間の公平、納税資金を一体で設計することが実務上の到達点です。
評価会社、課税時期、株式等、土地等、純資産価額方式の意味をそろえると判定ミスを減らせます。
特定の評価会社の判定では、日常用語と通達上の用語がずれることがあります。次の一覧は、判定式や評価方法を読むための前提を整理したものです。どの用語が会社側の資産構成を指し、どの用語が取得者や評価方式に関係するかを読み分けてください。
相続又は贈与の対象となる取引相場のない株式を発行している会社をいいます。被相続人が同族会社の株式を持っていた場合、その会社が評価会社です。
相続では被相続人の死亡日、贈与では財産を取得した日をいいます。特定の評価会社への該当性は、基本的にこの時点の現況で判定します。
証券取引所などで取引価格が形成されていない株式です。同族会社、中小企業、資産管理会社、不動産賃貸会社、持株会社などが典型です。
一般に株式保有特定会社と呼ばれることがありますが、通達上の正確な名称は株式等保有特定会社です。
土地そのもののほか、借地権、地上権など土地の上に存する権利を含む概念です。販売用、賃貸用、自社使用、遊休地の別だけで除外されるものではありません。
会社の総資産と負債を相続税評価ベースで見直し、評価差額に対する法人税額等相当額を控除したうえで、発行済株式数で割る評価方式です。
類似する上場会社の株価を基礎に、1株当たり配当金額、利益金額、純資産価額を比準して評価する方式です。
会社支配に関与する同族株主等か、配当を期待するにとどまる株主かで、最終的な評価方式に影響します。
相続税法22条では、相続、遺贈又は贈与により取得した財産は、原則として取得時の時価で評価する考え方が置かれています。ただし非上場株式には市場価格がないため、会社規模、株主の支配力、収益力、資産構成、配当実績などを基礎に、画一的な評価ルールが必要になります。
特定の評価会社という枠組みは、通常の事業会社と、株式や土地などの資産保有そのものが会社価値の中心になっている会社とでは、評価の前提が異なるために置かれています。類似業種比準方式だけでは含み益や保有資産の実質価値が十分に反映されない可能性があるためです。
評価対象株式、会社類型、株主区分、純資産価額の順で確認します。
判定は、会社の決算書だけを見て終わる作業ではありません。次の判断の流れは、誰がどの株式を取得したのかから始め、特定の評価会社への該当性、株主区分、純資産価額の精査へ進む順番を示しています。順番を飛ばすと、配当還元方式の可否や3年以内取得資産の評価を見落とすおそれがあります。
会社名、種類株式、株数、議決権数、相続税申告上の取得者、遺言や遺産分割案を整理します。
評価明細書第2表で、株式等保有割合、土地保有割合、会社規模、開業後3年未満などを確認します。
同族株主等か同族株主以外かにより、純資産価額方式、S1+S2方式、配当還元方式の関係を整理します。
土地、株式、貸付金、負債、未払税金、退職金、偶発債務、3年以内取得資産を確認します。
会社規模に応じ、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式などを確認します。
国税庁の取引相場のない株式の評価明細書では、第2表で比準要素数1の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社等、開業前又は休業中の会社、清算中の会社を判定します。2以上の類型に該当する場合は、後の番号の判定によるものとされています。
次の比較表は、判定の各段階で確認すべき資料と、見落とした場合の影響を整理したものです。資料の列は実務で集めるもの、影響の列は相続税評価や相続人間の調整で問題化しやすい点を示しています。
| 段階 | 確認資料 | 見落としによる影響 |
|---|---|---|
| 取得者の確定 | 株主名簿、議決権割合、同族関係者、遺言、遺産分割協議案 | 配当還元方式の可否、純資産価額方式の20%評価減、未分割申告への影響を誤る可能性があります。 |
| 会社類型の判定 | 評価明細書第2表、決算書、勘定科目内訳明細書、資産明細 | 株式等保有特定会社と土地保有特定会社の重複や後順位優先を見落とす可能性があります。 |
| 評価方式の確認 | 会社規模区分、比準要素、受取配当金等収受割合、株主区分 | S1+S2方式、配当還元方式、通常方式の使い分けを誤る可能性があります。 |
| 純資産価額の精査 | 土地評価資料、株価資料、貸付金、未払税金、保証債務、訴訟リスク | 最終評価額が大きくずれ、税務調査や遺産分割の争点になりやすくなります。 |
評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等、家屋等については、通常の取引価額に相当する金額による評価が問題になります。相続直前に法人で不動産を取得した場合は、個人所有不動産の評価と同じ感覚で判断しないことが重要です。
50%基準は帳簿価額ではなく相続税評価額で判定します。
株式等保有特定会社かどうかは、株式等の価額の合計額を総資産価額で割って判定します。ここでいう株式等と総資産価額は、原則として相続税評価額で計算するため、帳簿価額だけで50%未満と判断するのは危険です。
次の比較表は、株式等保有特定会社に該当しやすい会社と、その理由を整理したものです。会社名や事業目的の印象だけでなく、相続税評価額に洗い替えた後の資産構成を確認する必要があることを読み取ってください。
| 会社の種類 | 該当しやすい理由 |
|---|---|
| 持株会社 | 子会社株式、関係会社株式、出資の割合が高くなりやすいためです。 |
| 資産管理会社 | 上場株式、投資信託、非上場株式を長期保有している場合があります。 |
| 事業承継用会社 | 創業家が事業会社株式を集約するために設立した会社では、株式等の割合が高くなりやすいです。 |
| 投資会社 | 有価証券運用が主たる資産運用になっていることがあります。 |
| 含み益株式を保有する事業会社 | 本業があっても、株式等の相続税評価額が総資産の50%以上になることがあります。 |
株式等保有特定会社の判定で特に間違えやすい点は、帳簿価額、子会社株式、一時的な現金増加、土地保有特定会社との重複です。次の注意点一覧では、どこで判定がずれやすいかをまとめています。各項目は税務調査で説明資料が求められやすいところです。
子会社株式が取得原価のままでも、相続税評価額では大幅に高くなることがあります。上場株式では時価下落により逆の差が出ることもあります。
子会社に土地や株式が含まれる場合、親会社の株式等保有割合や純資産価額へ連鎖的に影響します。
相続直前の借入れで現金を増やし50%未満に見せても、合理的な事業理由がなければ判定上無視されるリスクがあります。
株式等保有割合が50%以上でも、土地保有特定会社にも該当する場合は土地保有特定会社の扱いが優先される方向で検討します。
株式等保有特定会社の株式は、原則として純資産価額方式で評価します。ただし、財産評価基本通達189-3により、納税義務者の選択でS1の金額とS2の金額の合計額で評価できる場合があります。次の比較表では、S1とS2がどの部分を評価するのかを確認できます。
| 区分 | 内容 | 確認事項 |
|---|---|---|
| S1 | 株式等以外の事業部分を、通常の取引相場のない株式の評価方式に準じて評価する部分です。 | 会社規模区分、比準要素数1への該当、営業利益、配当、純資産価額を確認します。 |
| S2 | 保有株式等の相続税評価額を基礎に評価する部分です。 | 受取配当金等収受割合、株式等の帳簿価額、相続税評価額、評価差額に対する法人税額等相当額を確認します。 |
S1+S2方式は、株式等を多く持つ一方で営業利益を生む本業もある会社、子会社株式保有と事業運営が混在する会社、受取配当と営業利益を精密に把握できる会社で検討価値があります。ただし常に有利とは限らないため、純資産価額方式と双方を試算することが必要です。
土地が50%を超えるだけでは足りず、大会社70%、中会社90%などの基準を確認します。
土地保有特定会社かどうかは、土地等の価額の合計額を総資産価額で割って判定します。土地等と総資産価額はいずれも相続税評価額で計算します。土地そのものだけでなく、借地権、地上権など土地の上に存する権利も確認します。
次の比較表は、土地保有特定会社の判定割合を会社規模別に整理したものです。大会社、中会社、小会社で基準が異なり、小会社では帳簿総資産価額の区分も影響するため、土地の割合だけで早合点しないことが重要です。
| 会社規模又は小会社の帳簿総資産区分 | 判定基準 |
|---|---|
| 大会社 | 土地保有割合70%以上 |
| 中会社 | 土地保有割合90%以上 |
| 小会社で、帳簿総資産価額が大会社相当の基準に該当する会社 | 土地保有割合70%以上 |
| 小会社で、帳簿総資産価額が中会社相当の基準に該当する会社 | 土地保有割合90%以上 |
| 小会社で、上記の帳簿総資産価額基準に満たない会社 | 土地保有特定会社には該当しない方向で判定します。 |
小会社の帳簿総資産価額は業種ごとに異なります。次の表では、どの金額以上で70%基準又は90%基準を見るのかを示しています。業種の列と金額帯の行を組み合わせて、自社がどの区分に入るかを確認してください。
| 小会社の帳簿総資産価額区分 | 卸売業 | 小売・サービス業 | 上記以外の業種 |
|---|---|---|---|
| 大会社相当として70%基準 | 20億円以上 | 15億円以上 | 15億円以上 |
| 中会社相当として90%基準 | 7,000万円以上20億円未満 | 4,000万円以上15億円未満 | 5,000万円以上15億円未満 |
| 下限未満 | 7,000万円未満 | 4,000万円未満 | 5,000万円未満 |
次の比較表は、土地保有特定会社に該当しやすい会社と、その理由を整理したものです。土地の用途は原則として決定的ではなく、賃貸用、販売用、自社使用、遊休地のいずれでも土地等に該当する資産であれば判定に含まれます。
| 会社の種類 | 該当しやすい理由 |
|---|---|
| 不動産賃貸会社 | 土地と建物を保有して賃貸収入を得ており、土地の含み益が大きい場合に割合が高くなります。 |
| 老舗事業会社 | 創業時から保有する本社土地、工場用地、倉庫用地の含み益が大きい場合があります。 |
| 不動産管理会社 | 創業家の不動産を法人に集約していることがあります。 |
| 遊休地保有会社 | 事業用でない土地を長期保有している場合があります。 |
| 不動産販売会社 | 販売用土地を棚卸資産として多額に保有していることがあります。 |
土地保有特定会社の判定では、土地の帳簿価額、借地権や貸宅地、3年以内の不動産取得、S1+S2方式の有無が誤りやすい点です。次の注意点一覧から、どの資料を補強すべきかを読み取ってください。
取得時から長期間経過した土地は、帳簿価額と相続税評価額が大きく乖離することがあります。
登記簿、賃貸借契約書、固定資産税課税明細書、地積測量図、公図、建物図面を照合して評価単位を確認します。
課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等や家屋等は、通常の取引価額に相当する金額による評価が問題になります。
土地保有特定会社の株式は原則として純資産価額方式で評価され、株式等保有特定会社のようなS1+S2方式はありません。
評価方式の制限、含み益の反映、遺産分割での評価差が問題になります。
特定の評価会社に該当すると、大会社であっても通常の大会社のように類似業種比準方式を原則とすることはできません。保有土地や保有株式の相続税評価額が株式評価に反映されやすくなり、納税資金や遺産分割の設計に影響します。
次の一覧は、特定の評価会社に該当したときに実務で起きやすい影響を、税務評価、含み益、民事上の分割の3面から整理したものです。どの影響が自社に出るかを確認し、税務申告と相続人間調整を同時に検討してください。
資産保有色が強い会社では、通常の収益力や配当だけでなく、保有資産の実質価値を評価へ反映させる必要があります。
評価方式純資産価額方式では、土地や株式を相続税評価額へ洗い替えます。会計上の純資産より相続税評価上の純資産が大きくなることがあります。
純資産38%確認税務上の評価額と、民事上の会社株式の価値は必ず一致するとは限りません。少数株式、譲渡制限、配当なし、換金困難なども検討されます。
紛争対応評価差額に対する法人税額等相当額は、純資産価額方式の評価に直接影響します。次の重要ポイントは、令和8年4月1日を境に割合が変わることを示しています。課税時期がどちらに入るかを最初に確認してください。
取引相場のない株式等を令和8年4月1日以後に相続、遺贈、贈与で取得した場合、純資産価額方式の評価差額に対する法人税額等相当額は38%です。それ以前の取得では37%が用いられていたため、課税時期で区分します。
現物出資、合併、株式交換、株式移転、株式交付などに関する例外にも注意が必要です。組織再編や持株会社化を過去に行っている場合は、単純な純資産計算だけでなく、過去の取引履歴と税務処理を確認します。
直前の判定外しではなく、合理性と証拠資料を積み上げます。
特定の評価会社対策は、単なる節税テクニックではありません。会社の資産構成、事業内容、株主構成、後継者、資金繰り、納税資金、家族関係を総合的に見直す作業です。合理的な理由のない資産構成変動は、判定上なかったものとして扱われるリスクがあります。
次の3項目は、対策全体の基本思想を整理したものです。どの対策を選ぶ場合でも、事業上の合理性、説明資料、他税目や会社法との整合性を同時に満たす必要があることを読み取ってください。
資産売却、借入れ、投資、組織再編には、相続税以外の事業目的が必要です。
議事録、事業計画、資金使途、金融機関資料、契約書、相続開始前後の経緯を整理します。
早期診断では、決算書だけでなく不動産、株主、借入れ、遺言、家族関係まで確認します。次の表は、簡易診断で集める資料と確認目的を整理したものです。資料の抜けが、そのまま判定や納税資金計画の抜けにつながります。
| 資料 | 確認目的 |
|---|---|
| 直近3期分の決算書、勘定科目内訳明細書 | 資産構成、負債、利益、配当、会社規模を確認します。 |
| 固定資産台帳、固定資産税課税明細書 | 土地、建物、設備を把握します。 |
| 不動産登記簿、公図、地積測量図、賃貸借契約書 | 土地等評価、権利関係、評価単位を確認します。 |
| 株主名簿、定款、種類株式の内容 | 議決権、同族株主判定、譲渡制限を確認します。 |
| 保有有価証券明細 | 株式等保有割合を確認します。 |
| 子会社、関連会社の決算書 | 非上場子会社株式を評価します。 |
| 借入契約、担保資料 | 負債、担保、不動産売却制約を確認します。 |
| 遺言、家族関係図、過去の贈与資料 | 相続人、遺産分割、特別受益、贈与税を確認します。 |
株式等保有特定会社と土地保有特定会社では、対策の焦点が異なります。次の一覧は、それぞれで検討する代表的な対応を整理しています。各項目は単独で結論を出すのではなく、税務、会社法、金融機関、相続紛争への影響を合わせて確認してください。
子会社支配、資産運用、取引先との関係維持などの目的を整理し、目的のない有価証券は処分、事業投資、納税資金化を検討します。
株式等株式相場、子会社株価、不動産価額、現預金、借入金、事業投資で割合は変動します。相続リスクが高い場合は半期又は四半期ごとの確認も考えます。
モニタリング選択可能な場合は、純資産価額方式とS1+S2方式の双方を試算し、適用可能性と合理性を比較します。
選択肢評価単位、路線価、倍率、地積、補正、貸宅地、借地権、私道、セットバック、都市計画制限などを確認します。
土地等売却、賃貸、開発、建物建築、分筆、一部譲渡、共同事業化を検討しますが、相続税だけを目的に直前で形式的に行うのは危険です。
事業目的要資料借入金で分母を増やして割合を下げるように見えても、資金使途、返済原資、投資採算、担保、金融機関審査、意思決定資料が必要です。
注意持株会社化、組織再編、株式移転、株式交換、株式交付は、事業支配や株式分散防止の観点で有効なことがあります。一方で、相続税評価では株式等保有特定会社に該当しやすくなるため、次の論点を同時に確認します。
| 論点 | 確認事項 |
|---|---|
| 相続税評価 | 株式等保有割合、S1+S2方式、純資産価額、現物出資等受入れ差額 |
| 法人税 | 適格組織再編、時価譲渡、繰越欠損金、含み益課税 |
| 所得税 | 個人株主の譲渡所得、みなし配当 |
| 会社法 | 株式交換、株式移転、株式交付、種類株式、少数株主保護 |
| 金融機関 | 担保、財務制限条項、保証、承諾条項 |
| 相続紛争 | 後継者以外の相続人の遺留分、株式評価への不満 |
土地活用でも、事業上の合理性を資料で説明できることが重要です。次の表は、土地に関する対策ごとに、どの説明資料が必要になりやすいかを示しています。資料の列から、税務調査や相続人間説明で何を残すべきかを読み取ってください。
| 対策 | 必要な説明資料 |
|---|---|
| 遊休地売却 | 売却理由、買主探索、価格交渉記録、資金使途 |
| 建物建築 | 事業計画、収支予測、建築請負契約、賃貸需要調査 |
| 分筆 | 利用目的、道路付け、境界確認、測量図 |
| 賃貸化 | 賃貸借契約、募集資料、賃料相場、修繕計画 |
| 共同事業 | 共同事業契約、リスク分担、収益配分 |
55%、92%、95%という数値でも、該当性の判断は会社類型と規模で変わります。
ここでは、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、土地が多い小会社の3事例を比較します。数値の大小だけでなく、どの基準に照らすかが重要です。下の比較では、割合の高さと判定結果の違いを読み取ってください。
| 事例 | 前提 | 判定の要点 |
|---|---|---|
| 株式等保有特定会社 | 総資産価額20億円、保有株式等11億円、負債5億円、発行済株式数10万株 | 11億円 ÷ 20億円 = 55%。50%以上であるため、原則として株式等保有特定会社に該当します。 |
| 土地保有特定会社 | 中会社、総資産価額10億円、土地等9億2,000万円、土地保有割合92% | 中会社の基準は90%以上です。したがって土地保有特定会社に該当し、原則として純資産価額方式で評価します。 |
| 土地が多い小会社でも非該当となる例 | 小売・サービス業、小会社、帳簿総資産価額3,000万円、土地保有割合95% | 帳簿総資産価額が4,000万円未満で小会社区分の下限に満たないため、土地保有割合が高くても土地保有特定会社には該当しない方向で判定します。 |
次の比較グラフは、3つの簡易事例に出てくる割合を並べたものです。縦方向の高さは割合の大きさを表しますが、判定は単純な高さだけではなく、株式等の50%基準、中会社の土地90%基準、小会社の帳簿総資産価額区分と合わせて読む必要があります。
株式等保有特定会社の事例で、相続直前に5億円を借り入れて現金を増やし、総資産を25億円にして株式等保有割合を44%に下げたとしても、その借入れに合理的な事業目的がなければ、判定上無視されるリスクがあります。
相続発生後は適正評価に集中し、生前は株価診断、遺言、納税資金を設計します。
相続発生後は、資産構成を変える対策は原則として間に合いません。それでも、適正な申告のためにできることは多くあります。次の時系列は、死亡日時点の資料収集から遺産分割と納税資金の検討までの順番を示しています。
死亡日時点の残高証明、株価資料、固定資産税評価証明、登記簿、賃貸借契約、決算書、試算表、借入残高、未払税金、役員退職金の有無を確認します。
税理士が評価明細書を作成し、公認会計士又は別の資産税専門税理士がレビューする体制を取ることがあります。土地評価は不動産鑑定士や土地家屋調査士との連携が考えられます。
取得者が同族株主以外の株主等に該当する場合、配当還元方式が関係することがあります。株主区分、議決権割合、中心的な同族株主、同族関係者を確認します。
生前対策では、1回の試算で終わらせず、会社と家族の状況に合わせて毎年見直します。次の一覧は、継続的に確認するべき項目と、設計上の狙いを整理したものです。どの項目が不足しているかを確認し、早めに補っていくことが重要です。
会社規模区分、株式等保有割合、土地保有割合、純資産価額、類似業種比準価額、配当・利益・純資産の比準要素、法人税額等相当額を確認します。
毎年確認相続後、会社が相続人から自己株式を取得することで納税資金を確保する方法があります。みなし配当、譲渡所得、分配可能額、公平性、資金繰りを確認します。
納税資金一定の要件のもとで相続税又は贈与税の納税猶予制度を検討できる場合があります。評価額を下げる制度ではなく、納税猶予と免除可能性の制度として確認します。
制度検討評価額が高く換金性が低い株式では、相続税の納税資金、代償金、遺留分対策として生命保険を検討します。保険料負担者、被保険者、受取人で課税関係が変わります。
資金準備毎年確認する項目には、後継者と非後継者の株式配分、納税資金、遺言、遺留分も含まれます。株価だけを下げる視点ではなく、会社支配と相続人間の公平を両立させる視点が必要です。
判定資料、民事評価、会社財産と個人財産の区別、専門職連携を整理します。
特定の評価会社に関する税務調査では、判定時点、総資産価額、株式等や土地等の範囲、資産構成変動、S1+S2方式、純資産価額、配当還元方式が重点的に確認されます。次の表では、どの点をどのように見られやすいかを整理しています。
| 調査ポイント | 確認される内容 |
|---|---|
| 判定時点 | 課税時期の現況で判定しているか。 |
| 総資産価額 | 相続税評価額で洗い替えているか。 |
| 株式等の範囲 | 出資、新株予約権付社債、関係会社株式を漏らしていないか。 |
| 土地等の範囲 | 借地権、貸宅地、販売用土地、遊休地を漏らしていないか。 |
| 資産構成変動 | 相続直前に合理的理由なく借入れ、売買、組織再編を行っていないか。 |
| S1+S2方式 | 計算式、受取配当金等収受割合、株式等の帳簿価額、法人税等相当額が正しいか。 |
| 純資産価額 | 3年以内取得土地等、評価差額、現物出資等受入れ差額を正しく処理しているか。 |
| 配当還元方式 | 取得者の株主区分と議決権割合を正しく判定しているか。 |
相続人間で争いがある場合、税務評価額と遺留分評価や遺産分割上の価値が同じとは限りません。次の注意点一覧は、税務申告と民事上の話し合いを分けて整理するためのものです。どの問題が起きているかにより、必要な専門職や資料が変わります。
相続税申告は財産評価基本通達を基礎にしますが、遺留分や遺産分割では、収益力、支配権、換金性、鑑定評価などが問題になることがあります。
会社名義の土地、預金、有価証券は原則として会社財産であり、被相続人の遺産そのものではありません。遺産は会社株式です。
役員貸付金、役員借入金、会社から個人への仮払金、個人から会社への貸付金は、相続財産又は債務として別途問題になります。
遺産分割調停が長引いても、相続税申告期限は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
特定の評価会社の判定と対策は、単独の専門職だけで完結しないことが多い分野です。次の表は、それぞれの専門職が主に担う役割を整理したものです。会社株式、不動産、税務、登記、紛争、納税資金のどこに課題があるかを見て連携先を考えます。
| 専門職 | 主な役割 |
|---|---|
| 税理士 | 相続税申告、財産評価、株式等保有割合、土地保有割合、純資産価額、S1+S2方式、税務調査対応。 |
| 弁護士 | 遺産分割、遺留分、株式承継紛争、会社支配権、訴訟、調停、交渉、税務争訟の法的整理。 |
| 公認会計士 | 非上場株式評価、財務分析、グループ会社評価、事業承継計画、会計上の資産負債確認。 |
| 司法書士 | 相続登記、会社登記、種類株式、定款変更、株式承継に伴う登記、法定相続情報。 |
| 不動産鑑定士 | 土地建物の時価評価、遺産分割用評価、賃料評価、特殊不動産の評価補助。 |
| 土地家屋調査士 | 境界確認、分筆、地積更正、表示登記、測量。 |
| 行政書士 | 争いのない相続書類、遺産分割協議書作成支援、許認可承継の補助。 |
| FP | 納税資金、生命保険、家計、老後資金、資産承継全体の設計。 |
| 金融機関、信託銀行 | 遺言信託、遺言執行、納税資金、融資、株式承継スキーム支援。 |
専門家へ相談する前には、会社株式の会社名、株数、議決権数、直近3期分の決算書、保有有価証券明細、保有土地建物の一覧、借入金や担保、株主名簿、定款、種類株式、後継者候補、相続人の意向、遺言書、過去の贈与や組織再編、納税資金見込みを整理すると初回相談の精度が上がります。
判定基準、直前対策、評価方式、遺産分割との関係を一般情報として整理します。
一般的には、土地保有特定会社の判定は会社規模に応じて70%又は90%などの基準を用いるものとされています。小会社では帳簿総資産価額の区分も必要です。50%基準は株式等保有特定会社の株式等保有割合の基準であり、具体的な判定は会社規模や資産評価資料を整理したうえで税理士等の専門家へ確認する必要があります。
一般的には、本業があっても課税時期の資産構成が基準を満たせば特定の評価会社に該当する可能性があります。事業実態は重要な説明事情ですが、判定はまず通達上の資産割合で行います。個別の会社では資産内容や評価額によって結論が変わるため、資料を整理して専門家に確認する必要があります。
一般的には、合理的な事業理由がなく、特定の評価会社の判定を免れるための資産構成変動と認められる場合、その変動をなかったものとして判定されるリスクがあるとされています。借入れの資金使途、返済原資、投資採算、意思決定資料などによって評価が変わる可能性があります。具体的な対応は税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、原則は純資産価額方式ですが、財産評価基本通達189-3によりS1+S2方式を選択できる場合があります。ただし、土地保有特定会社にも該当する場合は土地保有特定会社の判定が優先される方向で検討するため、S1+S2方式を当然に使えるとは限りません。適用可否は評価明細と会社資料により確認する必要があります。
一般的には、土地保有特定会社は財産評価基本通達189-4により、原則として純資産価額方式で評価するとされています。株式等保有特定会社のようなS1+S2方式は予定されていません。ただし、会社の類型や株主区分などにより検討事項は変わるため、具体的な評価は専門家へ確認する必要があります。
一般的には、取得者が同族株主以外の株主等に該当する場合、配当還元方式が関係することがあります。ただし、株主区分、議決権割合、中心的な同族株主、通達上の大小調整によって結論は変わります。具体的な判定は株主名簿や議決権資料を整理したうえで専門家へ確認する必要があります。
一般的には、相続税評価額は税務申告のための評価であり、民事上の遺産分割や遺留分では別の評価が問題になることがあります。支配権、換金性、配当、譲渡制限、会社の収益力などによって見方が変わる可能性があります。争いがある場合は、弁護士、不動産鑑定士、公認会計士、税理士などと連携して整理する必要があります。
一般的には、令和8年4月1日以後に相続、遺贈、贈与で取得した取引相場のない株式等について、純資産価額方式の評価差額に対する法人税額等相当額の割合が37%から38%に改正されています。また、国税庁は令和8年4月から取引相場のない株式の評価に関する有識者会議を開催しており、将来的な見直し動向にも注意が必要です。
非上場株式評価は見直し議論が続くため、現行ルールと制度改正リスクを分けて見ます。
国税庁は令和8年4月、取引相場のない株式の相続税評価について、有識者会議を開催すると公表しました。開催趣旨では、会計検査院検査報告における評価方式間のかい離、規模の大きな会社ほど株式評価額が相対的に低く算定される可能性、配当還元方式の還元率と近年の金利水準との関係などが論点として示されています。
次の重要ポイントは、現時点の見直し議論をどう受け止めるかを整理したものです。直ちに現行通達が変わるという意味ではありませんが、数年単位で相続対策や事業承継を設計する場合は、制度改正リスクも織り込んでおく必要があります。
第1回有識者会議資料でも、特定の評価会社は資産の保有状況や営業の状態などが特異な会社として、原則として純資産価額方式により評価するものと整理されています。
実務で危険なのは、思い込みだけで判定や対策を進めることです。次の注意点一覧は、特定の評価会社の相談で誤解されやすい考え方をまとめています。どれかに当てはまる場合は、早期に資料を集めて再確認することが大切です。
決算書の帳簿価額と相続税評価額は異なることがあります。
会社規模、帳簿総資産価額、70%基準、90%基準を確認します。
株式等と総資産を相続税評価額へ洗い替えます。
合理的な事業目的と説明資料がなければ、判定上無視されるリスクがあります。
民事上は支配権、換金性、収益力などが別途問題になることがあります。
選択可能性、計算要素、土地保有特定会社との重複を確認します。
特定の評価会社の判定と対策は、相続税法上の時価、財産評価基本通達、会社法、民法、相続紛争、不動産評価、会計、金融実務が交差する複合領域です。早期に会社の資産構成を相続税評価ベースで可視化し、相続人間の公平と納税資金まで含めて設計することが重要です。
公的機関と税務資料を中心に、制度理解の前提となる資料名を整理します。