自賠責基準6,100円と賃金センサスを使う弁護士基準の日額差を起点に、休業日数、家事労働制限率、既提示額、証拠の整え方まで整理します。
自賠責基準6,100円と賃金センサスを使う弁護士基準の日額差を起点に、休業日数、家事労働制限率、既提示額、証拠の整え方まで整理します。
日額差、日数差、割合差、既提示額の4つから増額幅を整理します。
主婦の休業損害は、給与収入がないことだけで否定されるものではありません。家族のための家事、育児、介護、買い物、家計管理などは、第三者に委託すれば費用が発生する労働であり、交通事故でその労働が制限されれば損害として問題になります。
まず押さえたいのは、金額差は日額だけでは決まらないことです。自賠責基準の日額6,100円と、令和7年賃金構造基本統計調査を使った弁護士基準の日額約11,975円の差に、認められる日数と家事労働制限率が掛け合わされます。
次の重要ポイントは、主婦の休業損害を考えるときの出発点をまとめたものです。何を比べるかを先に整理すると、保険会社の提示額が低い理由や、どの資料をそろえるべきかを読み取りやすくなります。
自賠責基準6,100円に対し、令和7年賃金構造基本統計調査を前提にした家事従事者の日額は約11,975円です。日額差は約5,875円で、同じ日数が認められる前提では約96.3%高くなります。
次の4つの項目は、最終的な増額幅を左右する要素です。どれか一つだけを見るのではなく、日額、期間、割合、既提示額の組み合わせで読むことが重要です。
自賠責基準は原則6,100円です。弁護士基準では女性労働者の平均賃金を基礎にすることが多く、令和7年統計では約11,975円が目安になります。
入院中は100%、通院中は50%や25%など、症状の改善に応じて段階的に評価されることがあります。
増額幅は弁護士基準額そのものではなく、保険会社がすでに提示した金額との差として具体化します。
家事従事者の範囲、基礎収入、休業日数、制限率を最初に整理します。
休業損害とは、交通事故の負傷や治療のために、事故がなければ得られたはずの経済的利益を失った損害です。会社員の欠勤だけでなく、家族のための家事労働ができなくなった場合も問題になります。
家事労働は、無償だから価値がないのではありません。料理、洗濯、掃除、買い物、育児、介護、送迎、家計管理などは、家庭生活を維持するための労働であり、第三者に委託すれば費用が発生します。
次の表は、主婦の休業損害で使われる用語を整理したものです。言葉の違いを押さえることは、保険会社の提示内容と、法的に検討すべき損害項目を区別するために重要です。左から用語、意味、実務での位置づけを確認してください。
| 用語 | 意味 | 主婦休業損害での位置づけ |
|---|---|---|
| 家事従事者 | 家族のために家事、育児、介護などを継続的に行う人 | 休業損害の対象になり得る中心概念です。 |
| 専業主婦・専業主夫 | 外部収入を得ず、主に家事を担う人 | 女性労働者の平均賃金を基礎に算定することが多い類型です。 |
| 兼業主婦・兼業主夫 | 就労収入と家事労働の双方がある人 | 実収入と家事労働評価の関係が争点になります。 |
| 基礎収入 | 休業損害計算の土台となる年収または日額 | 主婦では賃金センサスが用いられやすい要素です。 |
| 休業日数 | 家事労働に従事できなかった日数 | 実通院日数だけでなく、治療期間と支障割合で争われます。 |
| 家事労働制限率 | 家事がどの程度できなかったかの割合 | 100%、50%、25%など段階的に評価されることがあります。 |
法的な出発点は、不法行為責任を定める民法709条、交通事故の人身損害で中心になる自動車損害賠償保障法3条、過失相殺を定める民法722条2項です。最高裁判例も、家事労働の財産的評価を基礎づける重要な位置にあります。
一人暮らしで自分自身のためだけに家事をしていた場合は、家族のための家事労働とは異なり、通常の家事従事者としての休業損害は認められにくいと整理されます。ただし、家事代行、配食、介助、通院付き添いなどを利用せざるを得なかった実費は、必要性と相当性に応じて別途検討されることがあります。
3つの基準と計算式を分けて、提示額を検討する土台を作ります。
交通事故の損害賠償では、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの見方が登場します。同じ家事支障でも、どの基準で計算するかによって提示額が大きく変わります。
次の比較表は、3つの基準の役割と注意点を整理したものです。どの基準が公的な最低限の支払運用に近く、どの基準が裁判実務を踏まえた請求水準なのかを読み取ると、提示額を検討する軸が明確になります。
| 基準 | 位置づけ | 主婦の休業損害での特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 自賠責基準 | 強制保険の支払基準 | 休業損害は原則1日6,100円で、立証がある場合は19,000円が限度です。家事従事者も収入減があったものとみなされます。 | 傷害部分の限度額120万円に、治療費、文書料、慰謝料なども含まれます。 |
| 任意保険基準 | 保険会社の内部的な示談運用 | 自賠責基準に近い日額や、実通院日数だけで提示されることがあります。 | 統一された公的基準ではなく、最終的な法的賠償額そのものでもありません。 |
| 弁護士基準 | 裁判例や裁判実務を踏まえた請求水準 | 賃金センサスを基礎に、家事休業相当日数や制限率を組み合わせて請求します。 | 家事実態、医学的所見、支障期間、証拠の質によって認定額が変わります。 |
弁護士基準の基本式は、家事労働の価値と支障期間を結び付けるためのものです。下の式では、単に通院日だけを見るのではなく、対象期間の日数と家事労働制限率を掛け合わせて、家事休業相当日数を作る読み方が重要です。
専業主婦・専業主夫では、賃金構造基本統計調査の女性労働者・学歴計・全年齢平均賃金を365日で割る方法が典型です。ただし、高齢者、兼業者、家事分担者、家族構成が特殊な場合は、年齢別平均賃金、実収入、家事分担割合、具体的な家事内容が考慮されます。
令和7年賃金構造基本統計調査を使い、日額差と倍率を計算します。
令和7年賃金構造基本統計調査の女性・学歴計・全年齢に相当する公表値では、きまって支給する現金給与額が304.7千円、年間賞与その他特別給与額が714.3千円です。年額と日額は次のように整理できます。
次の表は、自賠責基準と弁護士基準の日額差を計算過程ごとに示すものです。数値の意味を順番に追うことで、約1.96倍という倍率がどこから出るのかを読み取れます。
| 項目 | 計算または金額 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 女性平均賃金の年額換算 | 4,370,700円 | 304,700円を12か月分にし、賞与714,300円を加えます。 |
| 弁護士基準の日額目安 | 約11,974.5円 | 年額4,370,700円を365日で割ります。 |
| 自賠責基準の日額 | 6,100円 | 自賠責の休業損害で原則とされる日額です。 |
| 日額差 | 約5,874.5円 | 同じ日数が認められる場合、この差が日数分だけ積み上がります。 |
| 倍率 | 約1.963倍 | 弁護士基準日額を自賠責基準日額で割った倍率です。 |
次の割合比較は、日額差の大きさを視覚的に把握するためのものです。縦の長さは自賠責基準を100%とした相対的な大きさを表し、弁護士基準が約196%まで伸びることを読み取ります。
この試算は、日額差を見るための基準化された比較です。実際の案件では、どの年度の賃金センサスを使うか、何日分の家事休業を認めるか、何%の家事労働制限を認めるか、過失相殺や自賠責枠をどう扱うかで最終額が変わります。
10日から365日までの単純比較で、日額差が積み上がる仕組みを見ます。
同じ休業日数が認められ、家事労働制限率を100%と仮定すると、差額は日数に比例します。ここでは単純比較として、日額差がどの程度の金額になるかを確認します。
次の表は、認定休業日数ごとに自賠責基準と弁護士基準を横並びにしたものです。右端の増額幅を見ると、日数が長くなるほど差が直線的に広がることが分かります。
| 認定休業日数 | 自賠責基準 6,100円 | 弁護士基準 約11,974.5円 | 増額幅の目安 |
|---|---|---|---|
| 10日 | 61,000円 | 約119,745円 | 約58,745円 |
| 20日 | 122,000円 | 約239,490円 | 約117,490円 |
| 30日 | 183,000円 | 約359,236円 | 約176,236円 |
| 45日 | 274,500円 | 約538,853円 | 約264,353円 |
| 60日 | 366,000円 | 約718,471円 | 約352,471円 |
| 90日 | 549,000円 | 約1,077,707円 | 約528,707円 |
| 120日 | 732,000円 | 約1,436,942円 | 約704,942円 |
| 180日 | 1,098,000円 | 約2,155,414円 | 約1,057,414円 |
| 365日 | 2,226,500円 | 4,370,700円 | 2,144,200円 |
次の横棒グラフは、代表的な日数で増額幅がどう伸びるかを示します。棒の長さは増額幅の相対的な大きさを表し、30日、90日、180日の違いを一目で読み取るための比較です。
ただし、現実の交渉では、保険会社が認定した日数と弁護士基準で主張する日数が一致しないことがよくあります。実務上の増額幅は、日額差だけでなく、日数差と割合差によって拡大または縮小します。
日額差、対象期間、制限率、既提示額を組み合わせて具体額を見ます。
実務上の増額幅は、弁護士基準額から既提示額を差し引いて考えます。弁護士基準額は、基礎収入日額と家事休業相当日数で決まり、家事休業相当日数は期間ごとの制限率を合計して作ります。
次の表は、暦の上では180日間の治療期間がある場合でも、制限率を段階的に下げると82.5日分として評価される例です。日数欄、制限率欄、相当日数欄の順に読むと、逓減評価の考え方が分かります。
| 期間 | 日数 | 家事労働制限率 | 家事休業相当日数 |
|---|---|---|---|
| 事故後30日 | 30日 | 100% | 30日 |
| 31日目から90日目 | 60日 | 50% | 30日 |
| 91日目から180日目 | 90日 | 25% | 22.5日 |
| 合計 | 180日 | 段階評価 | 82.5日 |
次の比較一覧は、既提示額と弁護士基準評価を並べたモデルです。金額の差だけでなく、保険会社側が短い日数で見ている場合に、日額差と日数差が重なって増額幅が大きくなる点を読み取ってください。
| モデル | 保険会社側の想定提示 | 弁護士基準での評価 | 弁護士基準額 | 増額幅の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 同じ60日が認められる事案 | 6,100円×60日=366,000円 | 約11,974.5円×60日 | 約718,471円 | 約352,471円 |
| 通院日数30日だけ提示された事案 | 6,100円×30日=183,000円 | 約11,974.5円×82.5日相当 | 約987,898円 | 約804,898円 |
| 骨折等で家事制限が長い事案 | 6,100円×45日=274,500円 | 約11,974.5円×150日相当 | 約1,796,178円 | 約1,521,678円 |
| 入院・手術・長期リハビリがある事案 | 6,100円×90日=549,000円 | 約11,974.5円×240日相当 | 約2,873,885円 | 約2,324,885円 |
次の判断の流れは、増額幅を検討するときの順番を示します。上から順に、既提示額、日額、日数、制限率、証拠を確認し、最後に過失相殺や自賠責枠を反映する読み方です。
日額、日数、休業損害ゼロか一部認定かを分けます。
賃金センサスの年度と属性を検討します。
入院、固定、通院、リハビリ、症状改善の時期を分けます。
医療記録、家事支障日誌、家族の代替状況を補います。
過失相殺と自賠責枠も踏まえて請求額を整理します。
低額提示の理由を、家事労働の見えにくさと医学的資料から整理します。
主婦の休業損害は、給与所得者の欠勤控除のように給与明細へ直接表れません。そのため、現金収入がない、勤怠記録がない、家族が代替した、通院日だけで計算された、といった理由で低く提示されやすい領域です。
次の表は、低額提示が起きやすい理由と、反論の方向性を対応させたものです。左列で保険会社が見落としやすい点を確認し、右列でどのような資料や説明につなげるかを読み取ります。
| 低額提示の要因 | 実務上の問題 | 反論の方向性 |
|---|---|---|
| 現金収入がない | 減収がないと見られやすい | 家事労働の経済的価値を説明します。 |
| 勤怠記録がない | 休んだ日が分からない | 治療期間、症状、家事支障日誌で補います。 |
| 家族が代替した | 損害がないと誤解される | 家庭内負担の移転として整理します。 |
| 通院日だけで計算される | 非通院日の支障が反映されにくい | 家事動作と症状の関係を具体化します。 |
| けがが軽く見られる | むち打ちや腰痛は見えにくい | 医師記録、リハビリ記録、服薬、可動域、神経症状を整理します。 |
| 家事分担がある | 全部を被害者がしていたとは限らない | 事故前の分担、事故後の変化、家族の代替負担を記録します。 |
医学的資料は、身体症状と家事制限を結び付けるために重要です。次の表では、資料ごとに何を裏付けるのかを整理しています。診断名だけでなく、痛み、しびれ、可動域、服薬、日常生活動作の制限を読み取ることが大切です。
| 医学的資料 | 家事休業損害との関係 |
|---|---|
| 診断書 | 傷病名、治療期間、安静指示、就労・家事制限の根拠になります。 |
| 診療録 | 痛み、しびれ、可動域制限、服薬、日常生活制限の記載を確認できます。 |
| 画像所見 | 骨折、椎間板、靱帯、半月板、腱板損傷などの客観所見になります。 |
| リハビリ記録 | 関節可動域、筋力、歩行能力、日常生活動作の改善経過が分かります。 |
| 処方内容 | 鎮痛薬、筋弛緩薬、睡眠薬などから症状の持続が推認されることがあります。 |
| 医師の意見書 | 争点が大きい場合、家事動作制限を医学的に説明する補強資料になります。 |
家事労働は医学的には単純な軽作業ではありません。次の一覧は、傷害部位と支障が出やすい家事動作を結び付けたものです。どの身体機能が、どの家事のどの動きに影響するかを読み取ると、日誌や陳述の具体性が増します。
上を向いて洗濯物を干す、長時間下を向いて調理する、運転して送迎する、子どもを抱き上げる動作が問題になります。
買い物、掃除、中腰、布団の上げ下ろし、育児、介護など腰部負荷の大きい家事と結び付きます。
包丁、鍋、洗濯かご、掃除機、抱っこなど、利き手や肩を使う多くの家事に影響します。
歩行、階段、買い物、送迎、長時間立位、荷重制限の有無が家事制限率に影響します。
火の管理、買い物の段取り、子どもの安全確認、服薬管理、家計管理の難しさが問題になります。
外出、運転、家事の継続性、対人対応への影響を、精神科や心療内科の記録と結び付けます。
家族構成、家事分担、家事支障日誌、休業日数の評価方法を整理します。
主婦休業損害の立証では、医療記録だけでは足りません。医療記録は身体の状態を示し、家事記録はその身体症状が家庭生活にどう影響したかを示します。両方を接続すると、休業日数や制限率の説得力が高まります。
次の比較表は、事故前後の家事分担を記録する例です。事故前、事故後、支障の内容を横並びで見ることで、家族の代替や外部サービスの利用が、損害の存在を裏付ける事情として読み取れます。
| 家事項目 | 事故前 | 事故後 | 支障の内容 |
|---|---|---|---|
| 夕食作り | 被害者が毎日 | 配偶者、惣菜、外食 | 長時間立てず、重い鍋を持てない。 |
| 洗濯 | 被害者が週5回 | 家族が代替 | 干す動作で肩や首が痛む。 |
| 買い物 | 被害者が自転車で実施 | ネットスーパー | 荷物運搬と歩行が困難。 |
| 子の送迎 | 被害者が担当 | 祖父母が代替 | 首や腰の痛みで運転が困難。 |
| 掃除 | 被害者が毎日 | 頻度が減少 | 掃除機や中腰姿勢が困難。 |
次の表は、家事支障日誌に残す項目を整理したものです。記録項目と記載例を対応させることで、後からまとめるよりも、治療中に簡潔に継続記録する重要性を読み取れます。
| 記録項目 | 記載例 |
|---|---|
| 症状 | 首痛、腰痛、右手首痛、しびれ、めまい。 |
| できなかった家事 | 洗濯物を干せない、買い物袋を持てない。 |
| 代替した人 | 配偶者、子、親、家事代行、ネットスーパー。 |
| 外部費用 | 惣菜、宅配、タクシー、家事代行費。 |
| 医療との関係 | 通院日、リハビリ後の痛み、医師の安静指示。 |
休業日数の評価方法は一つではありません。次の比較一覧では、実通院日数方式、治療期間逓減方式、個別日認定方式、家事内容別評価を分けています。どの方法が事案に合うかを読むことで、資料の集め方も変わります。
| 評価方法 | 考え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 実通院日数方式 | 実際に通院した日を休業日として評価します。 | 簡便ですが、非通院日の家事支障を過小評価するおそれがあります。 |
| 治療期間逓減方式 | 事故直後は100%、その後50%、25%など段階的に下げます。 | むち打ち、腰椎捻挫、骨折後リハビリなど、徐々に改善する事案と相性があります。 |
| 個別日認定方式 | 入院日、手術日、固定日、強い疼痛の日などを積み上げます。 | 具体性は高い一方、記録が不足すると立証が難しくなります。 |
| 家事内容別評価 | 料理、買い物、掃除、育児、介護など家事項目ごとに支障を見ます。 | 重い家事や育児・介護がある家庭で説得力を持つことがあります。 |
兼業、高齢、家族代替、自賠責枠、過失相殺を分けて確認します。
兼業主婦、高齢の家事従事者、家族が代替した場合、自賠責120万円枠や過失相殺がある場合は、単純な日額比較では足りません。家事労働の実態、就労収入、年齢、家族構成、既提示額を分けて考えます。
次の一覧は、増額幅が出やすい事情と小さくなりやすい事情を対比したものです。左右を比べることで、同じ「主婦の休業損害」でも、証拠や生活実態によって見通しが変わる点を読み取ります。
| 増額幅が大きくなりやすい事情 | 増額幅が小さくなりやすい事情 |
|---|---|
| 保険会社が休業損害ゼロまたは短期間しか認めていない。 | すでに弁護士基準に近い額が提示されている。 |
| 入院、手術、骨折、固定、荷重制限がある。 | 通院が短期で症状も軽快している。 |
| 幼児、要介護者、多人数世帯がある。 | 家事分担がもともと少ない。 |
| 事故前に家事の大部分を担っていた。 | 事故前から外部サービスや家族が大半を担っていた。 |
| 家事支障日誌や代替費用の資料がある。 | 家事支障の具体的記録がない。 |
| 医療記録に日常生活制限が残っている。 | 医療記録上、症状の訴えが乏しい。 |
| 自賠責120万円枠を超えて任意保険交渉が必要。 | 自賠責内でほぼ完結し、争点が小さい。 |
| 弁護士費用特約があり交渉や訴訟費用をかけやすい。 | 費用倒れのリスクが高い。 |
次の重要ポイントは、個別事情ごとの注意点を整理したものです。どの類型でも、結論を急がず、家事の実態と証拠を分けて読むことが重要です。
給与収入の休業損害と家事労働の休業損害を単純に二重取りすることはできません。実収入、勤務時間、家事分担、育児・介護負担を具体化します。
年齢だけで当然に否定されるわけではありませんが、年齢別平均賃金、健康状態、家事分担、介護認定の有無が問題になります。
家族が手伝ったことは、損害が消えたことを意味しません。事故前後の分担の変化や家庭内負担の移転として整理します。
治療費や慰謝料で枠を使い切っても、法的な家事休業損害が消えるわけではありません。任意保険交渉や訴訟で総損害として問題になります。
被害者にも過失がある場合、休業損害を含む総損害から割合に応じて減額されるのが通常です。
費用負担の見通しに関わります。使える場合でも、保険契約や利用条件を確認する必要があります。
家事労働、医学的制限、制限率、統計、差額提示を順番に組み立てます。
弁護士基準で請求するときは、抽象的に「弁護士基準で計算してください」と伝えるだけでは足りません。事故前の家事労働、医学的制限、期間ごとの制限率、賃金センサス、既提示額との差を、順序立てて示します。
次の時系列は、請求前に整理する作業の順番を表します。上から順に進めることで、家事の実態、医学的根拠、計算、差額提示がつながり、交渉書面の骨子を作りやすくなります。
料理、洗濯、掃除、買い物、育児、介護、送迎、家計管理などを項目別に列挙し、頻度と所要時間を整理します。
頚椎捻挫なら洗濯物干し、調理、運転、送迎など、傷病名と具体的な家事動作を結び付けます。
入院期間100%、退院後80%、その後50%や20%など、治療経過と資料に合わせて段階的に整理します。
保険会社提示額と弁護士基準額を横並びにし、差額を明確にします。
次の表は、交渉書面で差額を見せる例です。基礎日額、認定日数、休業損害を横並びにすると、どこで差が生じているのかを読み取りやすくなります。
| 項目 | 保険会社提示 | 弁護士基準請求 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 基礎日額 | 6,100円 | 約11,975円 | 約5,875円 |
| 認定日数 | 30日 | 82.5日相当 | 52.5日相当増 |
| 休業損害 | 183,000円 | 約987,898円 | 約804,898円 |
示談交渉書面では、被害者が事故前に同居家族のために家事を担当していたこと、医療記録上の疼痛や可動域制限、事故後の家事困難、家族の代替、制限率、賃金センサス日額、既提示額との差を一体として示すことが重要です。
誤解を避け、一般情報として確認すべき項目を整理します。
主婦の休業損害には、収入がないから損害がない、自賠責6,100円が上限、通院日だけが休業日、家事代行を使っていないと請求できない、弁護士に依頼すれば常に増額する、といった誤解があります。いずれも個別事情を見ずに結論を急ぐと危険です。
次の一覧は、請求前に確認したい項目をまとめたものです。左列で確認対象を押さえ、右列で何を資料化すべきかを読み取ると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 家族構成 | 同居家族、子ども、要介護者、配偶者の勤務状況。 |
| 事故前の家事 | 誰が何を、どの頻度で担当していたか。 |
| 事故後の変化 | できなくなった家事、減った家事、代替者。 |
| 医療記録 | 診断書、診療録、画像、リハビリ記録、処方。 |
| 支障日誌 | 痛み、できなかった家事、代替、外部費用。 |
| 保険会社提示 | 日額、日数、計算式、休業損害ゼロか一部認定か。 |
| 賃金センサス | どの年度、どの属性の統計を用いるか。 |
| 過失割合 | 過失相殺後の回収額を試算しているか。 |
| 自賠責枠 | 治療費・慰謝料で120万円を超えていないか。 |
| 弁護士費用特約 | 相談費用・依頼費用の負担を保険で賄えるか。 |
一般的には、給与収入がないことだけで家事従事者の休業損害が否定されるわけではないとされています。ただし、家族のための家事労働の実態、負傷内容、治療経過、証拠関係によって結論は変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、自賠責基準の6,100円は自賠責保険の支払基準であり、民事上の損害賠償額全体の絶対的な上限ではないとされています。ただし、傷害部分の120万円枠、任意保険との関係、証拠の内容によって実際の回収額は変わる可能性があります。
一般的には、通院日は重要な資料になりますが、通院しなかった日に家事支障がなかったと直ちに決まるわけではないとされています。ただし、症状、固定、服薬、安静指示、可動域制限、歩行制限などの具体的事情によって評価は変わります。
一般的には、家族の代替労働があったことだけで損害が消えるとは限らないとされています。ただし、代替の範囲、期間、負担の重さ、事故前の家事分担によって制限率や期間の評価が変わる可能性があります。
一般的には、弁護士基準による請求で増額が問題になることはありますが、すべての事案で結果が保証されるわけではありません。事故と症状の因果関係、治療の必要性、家事労働の実態、証拠、過失割合、既提示額によって結論は変わります。
単純比較と実務上の調整要素を踏まえて、最終的な考え方を整理します。
主婦の休業損害を弁護士基準で請求した場合の増額幅は、まず日額差から理解できます。令和7年賃金構造基本統計調査ベースでは、弁護士基準の日額は約11,975円、自賠責基準の日額は6,100円で、同じ日数なら約1.96倍です。
30日分なら約17.6万円、60日分なら約35.2万円、90日分なら約52.9万円、180日分なら約105.7万円の増額余地が単純比較で生じます。ただし、実務上は保険会社が通院日数だけで低く提示している場合もあり、日額差と日数差が重なると増額幅はさらに大きくなります。
一方で、弁護士基準は固定額ではありません。家事従事者性、家事労働の実態、医学的制限、休業相当日数、制限率、過失割合、自賠責枠、証拠の有無により、認められる金額は変わります。