交通事故で自分側の人身傷害保険を使えるとき、先に受け取るか、示談や裁判の後に請求するかで総回収額や資金繰りが変わることがあります。
過失がある事故では先払いが有利になりやすい一方、裁判上の解決後なら後払いでも近い結果になることがあります。
交通事故でけがをした被害者が、自分や家族の自動車保険に付いている人身傷害保険を使える場合、問題になりやすいのが「相手方との示談や裁判より前に保険金を受け取るか、相手方からの回収後に不足分として請求するか」です。
一般的には、被害者にも過失がある事故、または過失割合が争われる事故では、人身傷害保険を先に受け取る方法が有利または安全になりやすいとされています。最高裁平成24年2月20日判決が、人身傷害保険を支払った保険会社の代位を、被害者が裁判基準の損害額を確保できる範囲で制限する考え方を示したためです。
交通事故の支払ルートは複数あり、それぞれ計算方法と控除関係が異なります。次の一覧は、どの制度が何を支払うのかを整理したものです。読者にとって重要なのは、同じ損害について二重取りはできず、支払順序によって代位や控除の扱いが変わる点を読み取ることです。
自分や家族が契約している自動車保険へ請求するルートです。約款上の支払基準と保険金額の範囲で、自己過失部分を含めて補償し得る点に特徴があります。
健康保険、労災保険、傷病手当金、障害年金、介護保険などです。第三者行為届、求償、同一損害の控除が問題になります。
この記事でいう先払いとは、相手方との最終示談、裁判上の和解、判決よりも前に、自分側の人身傷害保険から保険金を受け取ることです。実務では人傷先行、人身傷害先行、人傷を先に使うという言い方もされます。
後払いとは、先に相手方との示談、裁判上の和解、判決、自賠責請求などを進め、その後に不足分を人身傷害保険へ請求することです。ただし、裁判または裁判上の和解の後に請求する後払いと、相手方保険会社との任意示談後に請求する後払いは分けて考える必要があります。
裁判上の解決後であれば、約款上も裁判基準の損害額を反映できる可能性があります。一方、任意示談を先にすると、低い損害額や清算条項が固定され、人身傷害保険の追加支払が想定より少なくなる危険があります。
相手方の賠償請求とは別に、自分側の契約から支払われる保険であることを押さえます。
人身傷害保険は、交通事故によって被保険者が死傷した場合に、治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料などを、約款で定められた基準に従って補償する保険です。加害者側の対人賠償保険とは異なり、自分側の保険会社に請求します。
相手方への損害賠償請求では、加害者の過失、因果関係、損害額、被害者側の過失割合が問題になります。これに対し、人身傷害保険は、契約で定められた対象事故に該当する限り、保険約款に基づいて支払われます。
次の比較表は、人身傷害保険の支払額を左右する主な制限要素を整理したものです。どの要素も総回収額に直結するため、読者は「保険があるか」だけでなく、「どの範囲まで支払対象になるか」を確認する必要があります。
| 確認項目 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 契約上の保険金額 | 支払上限を決める金額 | 重傷事故や死亡事故では自己過失部分を埋めきれないことがあります。 |
| 約款上の損害額基準 | 治療費、休業損害、精神的損害などの算定方法 | 裁判基準の全額と一致するとは限りません。 |
| 既払金の控除 | 自賠責、労災、相手方支払などの調整 | 同じ損害について二重取りを避ける処理が入ります。 |
| 補償範囲 | 搭乗中限定か、歩行中や他車搭乗中も含むか | 家族の契約で補償される場合もあります。 |
| 既往症・素因 | 事故前の症状や既存障害の評価 | 限定支払条項により損害額が絞られることがあります。 |
| 免責・対象外費目 | 約款上支払われない項目 | 弁護士費用、訴訟費用、遅延損害金は含まれないことがあります。 |
先払いと後払いを比較するには、損害額の基準を分けて見ることが重要です。次の表は、交通事故でよく出る三つの基準を並べたものです。列の違いから、自賠責基準だけでは重い損害を十分に評価できないこと、裁判基準が代位の議論で中核になることを読み取れます。
| 基準 | 位置づけ | 人身傷害保険との関係 |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 自動車損害賠償保障法に基づく基礎的な救済制度です。傷害は120万円、死亡は3,000万円、後遺障害は等級に応じた限度額があります。 | 先に受け取るか、人身傷害保険会社が回収するかで控除や充当が問題になります。 |
| 任意保険会社の内部基準 | 相手方任意保険会社が示談提示に用いる内部的な基準です。裁判基準より低い提示になることがあります。 | 任意示談を先にすると、この低い水準が実質的に固定される危険があります。 |
| 裁判基準 | 裁判実務で用いられる損害額算定の考え方です。慰謝料、逸失利益、将来介護費などで大きな差が出ます。 | 最高裁平成24年判決の裁判基準差額説で、被害者が確保すべき損害額の基準になります。 |
たとえば、被害者の損害が裁判基準で1,000万円、被害者過失が30%の場合、相手方への賠償請求権は単純化すると700万円です。人身傷害保険は、保険金額や約款上の損害額の範囲内で、自己過失部分を含めて補償し得ます。この「過失相殺で削られる部分を自分側保険で埋める」機能が実務上の価値です。
もっとも、約款に判決または裁判上の和解で算定された損害額を人身傷害保険の損害額として扱う条項があるか、古い約款にも同じ読替条項があるかは、保険会社、保険期間、契約内容によって変わります。事故日版の約款を確認することが出発点になります。
保険会社が相手方への請求権をどこまで取得するかが、先払いの有利不利を左右します。
保険代位とは、保険会社が保険金を支払った後、支払った範囲で、被保険者が第三者に対して持っていた損害賠償請求権を取得する仕組みです。交通事故では、被害者が相手方に請求できる部分と、自分側の人身傷害保険から受け取る部分が重なるため、代位の範囲が大きな争点になります。
最高裁平成24年2月20日判決は、人身傷害保険金を支払った保険会社の代位範囲について、保険金請求権者が裁判基準損害額を確保できるように解釈する枠組みを示しました。実務では裁判基準差額説、または訴訟基準差額説と呼ばれます。
次の比較表は、被害者過失30%の単純例で代位額が0円になる理由を示しています。金額の列を上から順に見ると、先に300万円を受け取っても、被害者が裁判基準損害額1,000万円を確保するまでは保険会社の回収が制限されることが分かります。
| 項目 | 金額・割合 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 裁判基準損害額 | 1,000万円 | 被害者が最終的に確保すべき損害額の基礎です。 |
| 被害者過失 | 30% | 相手方への請求権は過失相殺で減額されます。 |
| 相手方への賠償請求権 | 700万円 | 1,000万円から30%を控除した金額です。 |
| 人身傷害保険金 | 300万円 | 自己過失部分を埋める機能を持ちます。 |
| 代位額 | 0円 | 300万円 + 700万円 - 1,000万円 = 0円となります。 |
この例では、被害者は人身傷害保険300万円と相手方からの賠償700万円を合わせて、裁判基準損害額1,000万円を確保できます。これが、過失がある事故で人身傷害保険の先払いが有利になりやすいとされる理由です。
最高裁平成24年判決は、人身傷害保険金は損害金元本を填補するものであり、特段の定めがない限り遅延損害金を填補するものではないと判断しています。交通事故訴訟では、事故日から年3%、改正前民法の適用場面では年5%の遅延損害金が問題になることがあります。
ただし、示談書や和解条項で遅延損害金を含めて清算する文言になっていると、後から争う余地が狭まることがあります。先払いか後払いかだけでなく、書面上どの損害を清算したのかを確認する必要があります。
先払いが常に正解ではありません。事故の争点と約款の内容で判断が変わります。
先払いの効果が大きく出やすいのは、相手方から回収できる金額が過失相殺や回収不能によって削られる場面です。次の一覧は、先払いを検討する意味が強い典型場面を整理したものです。読者は、自分の事故がどの項目に近いかを見て、支払順序を安易に固定しないことが重要です。
過失10%、20%、30%と認定されると、相手方への請求はその分だけ減額されます。損害額3,000万円、過失20%なら自己過失部分は600万円です。
慰謝料、休業損害、逸失利益、後遺障害、過失割合の提示が低い場合、任意示談を急ぐと損害額が低く固定される危険があります。
任意保険未加入や資力不足があると、自賠責の限度額を超える損害の回収が難しくなります。人身傷害保険が生活再建の支えになります。
治療費、入院費、装具費、通院交通費、休業による収入減が先に発生します。人身傷害保険で当面の資金不安を軽減できることがあります。
後遺障害等級、労働能力喪失率、喪失期間、基礎収入の評価で、損害額が数百万円から数千万円単位で変わることがあります。
相手方の提示は最終結論ではありません。警察資料、映像、道路状況、修正要素を整理する前に示談しないことが重要です。
一方、後払いでも不利にならない、または先払いに近い結果になる場面もあります。次の表は、後払いを検討し得る条件をまとめたものです。重要なのは、任意示談後の後払いと、裁判上の和解または判決後の後払いを同じものとして扱わないことです。
| 場面 | 後払いが選択肢になる理由 | 残る注意点 |
|---|---|---|
| 裁判または裁判上の和解で損害額が明確 | 約款が裁判上の損害額を反映するなら、後から不足分を請求しても近い結果になり得ます。 | 任意示談が同じ扱いになるとは限りません。 |
| 被害者過失がない、または争いがない | 相手方の対人賠償保険から全額に近い回収が見込めるため、先払いとの差が小さくなります。 | 後遺障害、休業損害、逸失利益が争われる場合は別です。 |
| 保険金額が低い | 先払いをしても自己過失部分を全て埋められず、効果が限定されます。 | それでも資金繰りや回収不能リスクの面では意味があります。 |
| 約款の読替条項が明確 | 判決や裁判上の和解で認定された損害額を人身傷害保険の損害額として扱えることがあります。 | 事故日、保険始期、改定時期、特約の有無を確認します。 |
低い示談額、清算条項、人傷一括払の性質を確認しないまま署名すると、不利益が残ることがあります。
後払いの中で特に注意が必要なのは、相手方保険会社との任意示談を先に成立させ、その後で人身傷害保険を請求する方法です。示談書や免責証書には、本件事故に関する一切の損害賠償請求権を放棄する趣旨の清算条項が置かれることがあります。
次の判断の流れは、任意示談を先に進める前に確認する順番を示したものです。各段階は総回収額に影響するため、読者は「示談額が妥当か」だけでなく、後から人身傷害保険で不足分が埋まる設計になっているかを読み取る必要があります。
過失割合、慰謝料、休業損害、逸失利益、後遺障害の評価を分けて確認します。
任意保険会社の内部基準と裁判基準に差がないかを見ます。
任意示談後の人身傷害保険請求では不足分が埋まらない可能性があります。
既払金控除、清算条項、後遺障害の扱いを確認したうえで進めます。
人傷一括払とは、人身傷害保険会社が、被害者に対して人身傷害保険金と自賠責保険金相当額をまとめて支払い、その後で自賠責保険から回収するような処理を指すことがあります。名称だけで支払金の性質は決まりません。
次の比較表は、人傷一括払に関する近時の最高裁判例の要点を整理したものです。支払額が人身傷害保険の支払義務の範囲内か、保険金額を超える部分があるかによって扱いが変わる点を読み取ることが重要です。
| 判例 | 主な判断 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 最高裁令和4年3月24日判決 | 人身傷害保険会社が後に自賠責保険金を受領しても、そのことだけで被害者の相手方への請求権が当然に減るわけではないと判断しました。 | 保険会社の内部回収処理と、被害者の相手方請求権を分けて確認する必要があります。 |
| 最高裁令和5年10月16日判決 | 支払額が人身傷害保険として支払義務を負う額にとどまる場合は人身傷害保険金と解される一方、限度額を超える部分は自賠責保険金相当額の前払として扱われ得ると判断しました。 | 支払明細に人身傷害保険金、自賠責保険金相当額、立替金、仮払金などの記載があれば、内訳の確認が重要です。 |
後遺障害や休業損害も見落としやすい論点です。症状固定前に示談すると、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来治療費、将来介護費が十分に反映されないことがあります。人身傷害保険の後払いを予定していても、元の損害評価が低ければ、最終的な補償も低くなる危険があります。
自己過失だけでなく、既往症、公的給付、既払金の控除も支払順序に影響します。
被害者に事故前から既往症、体質的要因、既存障害がある場合、損害賠償では素因減額が問題になることがあります。民法722条2項の過失相殺規定を類推し、損害の一部が事故以外の要因に由来するとして減額する考え方です。
次の表は、先払い・後払いの判断を複雑にする調整項目を整理したものです。各制度は生活再建に役立つ一方、控除や求償が入るため、読者は「受け取れるか」だけでなく「最終的にどの損害へ充当されるか」を確認する必要があります。
| 調整項目 | 要点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 素因減額 | 既往症や既存障害の影響で損害額が減額されることがあります。 | 最高裁令和7年7月4日判決は、限定支払条項がある場合の代位範囲について、素因減額後の損害額を前提に判断しました。 |
| 自賠責保険 | 傷害、後遺障害、死亡ごとに支払限度額があります。被害者請求で相手方の同意なく請求できる場面があります。 | 自賠責金の充当、遅延損害金、保険会社の回収処理を分けて検討します。 |
| 健康保険 | 第三者行為による傷病届を提出して使える場面があります。 | 健康保険が負担した医療費は、後に加害者側へ求償されることがあります。 |
| 労災保険 | 業務中または通勤中の交通事故では重要です。 | 政府が給付額の限度で第三者に対する請求権を取得し、同一損害の二重補償を避ける調整があります。 |
| 傷病手当金・障害年金など | 収入補償や生活支援として重要です。 | 休業損害、逸失利益、人身傷害保険の計算で控除対象になることがあります。 |
次の時系列は、受け取り順序ごとに主な論点がどこで発生するかを示しています。順番が変わると控除、代位、求償、遅延損害金の扱いが変わるため、読者は各段階で確認すべき書面を見落とさないことが重要です。
傷害120万円、死亡3,000万円、後遺障害等級ごとの限度額を意識します。後の人身傷害保険や相手方賠償で控除関係が問題になります。
裁判基準差額説により、被害者が裁判基準損害額を確保するまで保険会社の代位が制限される可能性があります。
判決または裁判上の和解で損害額が明確になると、約款の読替条項により後払いでも近い結果になることがあります。
示談金が低いまま固定されると、人身傷害保険の追加支払でも不足分を回復しにくくなることがあります。
法律論だけでなく、医療記録と事故態様の証拠が損害額の土台になります。
人身傷害保険の有利不利は、法律論だけでは決まりません。治療経過、症状固定、後遺障害、過失割合の証拠が不十分だと、相手方賠償でも人身傷害保険でも支払額が低くなる可能性があります。
次の一覧は、支払順序を決める前に整える資料を示しています。各項目は損害額や過失割合の前提になるため、読者は「保険へ請求する資料」と「相手方へ主張する資料」を同時に準備する必要があります。
事故直後の症状、治療経過、画像所見、服薬、リハビリ記録を確認します。
医療症状固定前の示談は、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来治療費を反映できない危険があります。
注意記憶障害、注意障害、人格変化、抑うつ、不眠、PTSDなどは外見から分かりにくいため、専門的な評価が重要です。
評価交通事故証明書、実況見分調書、供述調書、現場写真、信号サイクル、道路標識、ブレーキ痕、衝突地点の記録が過失割合に影響します。
事故態様ドライブレコーダー、防犯カメラ、車両損傷、修理見積、エアバッグ作動状況は、速度や衝突角度の裏付けになります。
証拠休業損害証明書、確定申告書、給与明細、就労制限の指示、介護負担の資料は、休業損害や逸失利益の基礎になります。
損害額過失割合を5%、10%動かすだけでも、重傷事故では数百万円から数千万円の差になることがあります。人身傷害保険の先払いを検討する前に、相手方保険会社の過失割合を最終前提として固定しすぎないことが重要です。
単純化したモデルで、過失、保険金額、素因、無保険の影響を確認します。
次の比較表は、代表的な四つの場面で総回収額がどう変わるかを整理したものです。実際には既払金、遅延損害金、弁護士費用、健康保険、労災、自賠責、約款の文言によって結果が変わるため、読者は数字の大小だけでなく、どの制限要素が働くかを読み取る必要があります。
| 事例 | 前提 | 先払い・後払いの読み方 |
|---|---|---|
| 事例A ― 過失30% | 裁判基準損害額1,000万円、被害者過失30%、相手方への請求権700万円、人身傷害保険金300万円。 | 先払いなら代位額は0円となり、合計1,000万円を確保できる可能性があります。裁判上の和解後の後払いでも、約款が損害額を反映するなら近い結果になり得ます。任意示談を600万円で先に終えると不足が残る可能性があります。 |
| 事例B ― 保険金額不足 | 裁判基準損害額5,000万円、被害者過失40%、相手方への請求権3,000万円、自己過失部分2,000万円、人身傷害保険金額1,000万円。 | 先払いをしても自己過失部分2,000万円のうち1,000万円しか埋められません。総回収は4,000万円程度にとどまる可能性があります。 |
| 事例C ― 素因減額 | 素因減額前の裁判基準損害額2,000万円、素因減額30%、素因減額後の損害額1,400万円、被害者過失なし。 | 約款に限定支払条項がある場合、人身傷害保険も素因減額前の2,000万円を当然に基礎とするとは限りません。医療記録と約款を精査する必要があります。 |
| 事例D ― 相手方無保険 | 裁判基準損害額2,500万円、自賠責からの回収は120万円または後遺障害等級に応じた額、相手方本人の資力が乏しい、人身傷害保険金額3,000万円。 | 相手方から現実に回収できない場合、人身傷害保険を先に使う意義が大きくなります。相手方への請求権、保険会社の代位や求償を整理しながら生活再建を優先しやすい場面です。 |
これらの事例から分かるのは、人身傷害保険があるだけで満額回収が保証されるわけではないことです。過失がある事故では先払いが有利になりやすい一方、保険金額不足、素因減額、人傷一括払、自賠責や労災の控除が入ると、結果は大きく変わります。
保険の有無、過失割合、裁判基準損害額、支払順序、署名前書面を順に確認します。
先払いか後払いかは、感覚ではなく順番に検討する必要があります。次の判断の流れは、実務上確認する五つの段階を示しています。上から順に見ることで、どの段階で資料不足や約款確認漏れが起きやすいかを読み取れます。
保険金額、補償範囲、家族契約、弁護士費用特約、事故日版の約款を確認します。
相手方保険会社の提示だけでなく、事故態様、判例類型、修正要素、証拠を確認します。
治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害、逸失利益、将来介護費、遅延損害金を分けて見ます。
人身傷害先行、自賠責先行、裁判上の解決先行、任意示談先行を比較します。
示談書、免責証書、人傷一括払合意書、支払明細、後遺障害診断書などを確認します。
裁判基準損害額の試算では、損害項目を大きな固まりで見るだけでは足りません。次の表は、少なくとも確認したい項目を整理したものです。項目ごとに証拠や計算方法が違うため、読者は「慰謝料だけ」ではなく、治療費、収入減、将来損害、死亡損害、遅延損害金まで分けて確認する必要があります。
| 分類 | 確認する損害項目 |
|---|---|
| 治療・通院関係 | 治療費、通院交通費、付添費、入院雑費、装具費。 |
| 休業・慰謝料関係 | 休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料。 |
| 後遺障害・将来損害 | 逸失利益、将来治療費、将来介護費、住宅改造費、車両改造費。 |
| 死亡事故 | 死亡慰謝料、葬儀費、死亡逸失利益、近親者慰謝料。 |
| 訴訟関連 | 弁護士費用相当損害、遅延損害金。人身傷害保険の約款では、これらが損害額に含まれないことがあります。 |
署名前の書面確認では、清算条項だけでなく、どの制度のどの支払として処理されるかを読むことが重要です。次の一覧は確認対象の書面をまとめたものです。名称が似ていても効果が違うため、読者は支払明細、請求書、届出書を一体として見る必要があります。
| 書面 | 確認するポイント |
|---|---|
| 示談書・免責証書 | 一切の請求をしない、既払金を含めて清算する、将来の後遺障害を含むといった文言の有無。 |
| 人身傷害保険金請求書・人傷一括払合意書 | 人身傷害保険金、自賠責保険金相当額、立替金、仮払金の内訳。 |
| 自賠責保険の請求書・保険金支払明細 | 傷害、後遺障害、死亡のどの区分で、どの金額が支払われるか。 |
| 休業損害証明書・後遺障害診断書 | 休業日数、収入、症状固定日、後遺障害の内容が損害額に反映できる記載になっているか。 |
| 労災・健康保険の第三者行為関係書類 | 労災の第三者行為災害届、健康保険の第三者行為による傷病届、求償や控除の扱い。 |
次の表は、保険会社や代理店に確認したい質問を整理したものです。回答内容は後日の控除や代位の判断材料になるため、読者は口頭説明だけでなく書面やメールで残す重要性を読み取る必要があります。
| No. | 確認する内容 |
|---|---|
| 1 | 事故日の約款上、人身傷害保険の保険金額はいくらか。 |
| 2 | 今回の事故は人身傷害保険の支払対象か。 |
| 3 | 搭乗中限定か、歩行中や他車搭乗中も対象か。 |
| 4 | 人身傷害保険の損害額算定基準はどこに記載されているか。 |
| 5 | 判決または裁判上の和解で算定された損害額を反映する条項はあるか。 |
| 6 | 任意示談で算定された損害額も同じように扱うのか。 |
| 7 | 自賠責保険金、相手方任意保険金、労災、健康保険、傷病手当金はどのように控除されるか。 |
| 8 | 人傷一括払を行う場合、人身傷害保険金と自賠責保険金相当額の内訳はどうなるか。 |
| 9 | 人身傷害保険の支払後、保険会社はどの範囲で相手方へ代位または求償するのか。 |
| 10 | 既往症、既存障害、素因減額がある場合の限定支払条項はあるか。 |
| 11 | 人身傷害保険を使うことで、翌年以降の等級や保険料にどのような影響があるか。 |
| 12 | 弁護士費用特約を利用できるか。 |
相手方保険会社が被害者過失を主張している、過失割合に納得できない、治療費の一括対応を打ち切られた、後遺障害が残りそうである、後遺障害等級が非該当または低すぎると感じる、休業損害や逸失利益が低く提示されている場合は、支払順序の検討が複雑になります。
主婦休損、個人事業主の所得、会社役員報酬、高次脳機能障害、脊髄損傷、顔面醜状、めまい、耳鳴り、PTSD、既往症や素因減額、自賠責、労災、健康保険、人身傷害保険が重なる事故も注意が必要です。人傷一括払の書類、示談書、免責証書への署名を求められている場合、相手方が無保険、任意保険未加入、連絡不能の場合、死亡事故、重度後遺障害、未成年者、高齢者、外国人当事者が関係する場合も、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
断定的に考えやすい論点ほど、約款と資料で結論が変わります。
一般的には、人身傷害保険を使っただけで相手方への請求権が当然に消えるとは限らないとされています。ただし、支払金の性質、約款、既払金、示談書の文言によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、人身傷害保険には保険金額、約款基準、控除、免責、限定支払条項があるため、先払いでも満額補償が保証されるわけではありません。保険金額不足、既往症、素因減額、他制度の給付で結論が変わる可能性があります。具体的な見通しは、約款と損害資料を確認して判断する必要があります。
一般的には、判決や裁判上の和解で裁判基準損害額が明確になり、約款がその額を反映する場合、後払いでも先払いに近い結果になることがあります。ただし、任意示談を先に済ませる後払いは、損害額や清算条項の影響で不利益が生じる可能性があります。個別事情に応じた確認が必要です。
一般的には、自賠責先行には資金確保や後遺障害認定の面でメリットがあります。ただし、人身傷害保険、相手方賠償、労災、健康保険との控除関係によって結論が変わる可能性があります。支払順序は、事故態様、負傷程度、証拠関係、時期、保険契約を踏まえて検討する必要があります。
一般的には、保険会社の担当者は約款や実務の説明を行いますが、被害者の代理人として総回収額を最大化する立場とは限りません。相手方保険会社、自分側保険会社、公的制度が重なる場合は、控除や代位の結論が変わる可能性があります。具体的な対応方針は、弁護士等の専門家に相談する必要があります。
判例、法令、公的機関、保険約款、損害保険団体の資料を確認しています。