業務中・通勤中の交通事故で、労災保険、特別支給金、自賠責保険、任意保険の支払いが重なると、どのお金が控除対象になるのかが分かりにくくなります。特別支給金と通常給付を分けて、示談案を見るための実務的な整理をまとめます。
特別支給金と通常給付を分けて、示談案を見るための実務的な整理をまとめます。
最初に、交通事故の被害者が混同しやすい3つのお金を分けます。
結論からいうと、労災の特別支給金は、加害者側に請求する損害賠償額から原則として差し引かれないものとして扱われます。もっとも、交通事故で労災を使う場面では、労災保険の通常給付、労災の特別支給金、加害者側や自賠責保険・任意保険から受ける賠償金・保険金が同時に出てくるため、内訳の確認が重要です。
次の重要ポイントは、特別支給金と通常給付の結論の違いを一目で示すものです。この違いは、示談案でどの既払金が差し引かれているかを確認する出発点になるため、まず「特別支給金だけが別扱い」という読み方を押さえてください。
休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金などは、社会復帰や生活再建を支える福祉的・援護的な制度として整理され、通常の労災保険給付と同じように損害賠償から控除するものではないと考えられています。
次の比較表は、交通事故で重なりやすい支払いを「どの制度から出るか」と「損害賠償との調整対象になりやすいか」で整理したものです。示談案を見るときは、名称だけでなく性質と対応する損害項目を読み取ることが大切です。
| 区分 | 代表例 | 性質 | 損害賠償との関係 |
|---|---|---|---|
| 労災保険の通常給付 | 休業補償給付、療養補償給付、障害補償給付など | 治療費、休業損害、逸失利益などを一定程度てん補する給付 | 同一の事由について調整対象になり得る |
| 労災の特別支給金 | 休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金など | 社会復帰促進等事業に基づく福祉的・援護的な給付 | 原則として損害賠償から控除されない |
| 加害者側・自賠責・任意保険からの支払い | 治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益、物損など | 民事上の損害賠償または自動車保険による支払い | 既払金、過失割合、損害項目ごとの対応関係を確認する |
このページで扱う内容は、交通事故と労災保険に関する一般的な制度説明です。個別の見通しは、事故態様、過失割合、既払金、示談書の文言、後遺障害等級、会社からの支払い、他制度の利用状況によって変わるため、資料をそろえて専門家に確認する必要があります。
業務災害、通勤災害、第三者行為災害、特別支給金の位置づけを整理します。
労災保険は、労働者が業務上の事由または通勤により負傷、疾病、障害、死亡をした場合に、国が一定の給付を行う制度です。交通事故では、営業車で移動中の事故、取引先へ向かう途中の事故、配達・営業・運送・警備・現場作業中の事故、出退勤の合理的な経路上での事故などで問題になります。
次の一覧は、交通事故で労災が問題になる場面を、制度上の呼び名ごとに整理したものです。どの区分に当たるかは、請求先、必要書類、加害者側との調整に影響するため、自分の事故がどこに入るかを読み取ることが重要です。
会社の業務として運転中、取引先へ移動中、配達・営業・運送・警備・現場作業などの業務中に発生した交通事故が典型です。
出勤または退勤の合理的な経路上で発生した事故が中心です。寄り道や経路変更がある場合は、通勤との関係を個別に確認します。
加害者など第三者の行為で労災事故が発生し、その第三者が損害賠償義務を負う可能性がある場面です。
特別支給金は、労災保険法29条の社会復帰促進等事業に基づき、労働者災害補償保険特別支給金支給規則で具体的な内容が定められています。次の表では、主な特別支給金を場面別に並べており、通常給付そのものではないことを読み取ってください。
| 特別支給金 | 主な場面 | 概要 |
|---|---|---|
| 休業特別支給金 | 休業した場合 | 休業4日目以降、給付基礎日額の20%相当が支給される制度 |
| 障害特別支給金 | 後遺障害が残った場合 | 障害等級に応じて一時金が支給される制度 |
| 遺族特別支給金 | 死亡事故の場合 | 遺族に対して定額の特別支給金が支給される制度 |
| 傷病特別支給金 | 傷病が長期化し重い状態にある場合 | 傷病等級に応じて支給される制度 |
| 障害特別年金・障害特別一時金 | 賞与など特別給与が基礎になる場合 | 障害等級に応じて支給される制度 |
| 遺族特別年金・遺族特別一時金 | 死亡事故で賞与などが関係する場合 | 遺族に支給される制度 |
| 傷病特別年金 | 重い傷病が続く場合 | 傷病等級に応じて支給される制度 |
名称に労災が関係していても、通常の保険給付と特別支給金は性質が違います。休業時に「労災は8割」と説明される場合でも、通常給付の6割と休業特別支給金の2割を分ける必要があります。
損害を埋める給付か、福祉的な援護給付かで結論が分かれます。
損害賠償では、被害者がすでに何らかの給付を受け、その給付が同じ損害を埋める性質を持つ場合、重複を避けるために損益相殺や支給調整が問題になります。しかし、すべての給付が差し引かれるわけではありません。
次の判断要素は、ある給付を損害賠償から控除するかを考えるときの視点をまとめたものです。各要素は、給付名だけで判断せず、同じ損害を埋める性質があるかを読み取るために重要です。
治療費、休業損害、逸失利益、葬儀費用など、損害賠償のどの項目と対応しているかを確認します。
法律上、求償や控除などの支給調整が予定されている制度かを確認します。
損害てん補を目的とするのか、社会復帰や援護を目的とするのかで扱いが変わります。
給付の対象と、加害者側へ請求する損害項目が同一といえるかを確認します。
最高裁平成8年2月23日判決、いわゆるコック食品事件では、休業特別支給金と障害特別支給金を損害賠償額から控除できるかが問題になりました。同判決は、特別支給金が通常の労災保険給付とは異なること、損害賠償との調整規定がないことなどを理由として、損害賠償額から控除できないという判断を示しました。
次の判断の流れは、最高裁判例や労働局資料で示される整理を、示談案の確認手順として読み替えたものです。上から順に確認すると、労災から支払われたという一事だけで控除してよいわけではないことが分かります。
通常給付、特別支給金、自賠責、任意保険、会社支給を分けます。
治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、物損などと対応させます。
同一の事由について求償や控除を確認します。
福祉的・援護的な給付として別に整理します。
東京労働局などの公的説明でも、特別支給金は労災保険の給付には含まれず、支給調整の対象ではないと整理されています。したがって、裁判例上も行政実務上も、特別支給金は原則として損害賠償から差し引かれないという理解になります。
「二重取りではないか」という疑問についても、単に複数の支払いを受けたかではなく、同じ損害を二重に埋めるかで考えます。特別支給金を控除してしまうと、生活再建のための給付の利益が、被害者ではなく加害者側や保険会社に移ってしまうため、制度趣旨に合いにくい整理になります。
特別支給金とは異なり、通常給付は損害項目との対応関係を見ます。
通常の労災保険給付は、被害者の損害を一定程度てん補する性格を持つため、損害賠償との調整対象になり得ます。交通事故でよく問題になる通常給付と損害賠償項目の関係は、内訳表で確認すると分かりやすくなります。
次の表は、通常給付がどの損害項目と対応しやすいかを整理したものです。どの行に当たるかを確認すると、労災既払金を一括で差し引くのではなく、損害項目ごとに見る必要があることを読み取れます。
| 労災保険の通常給付 | 対応しやすい損害賠償項目 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 療養補償給付、療養給付 | 治療費 | 労災診療か自由診療か、既払治療費の範囲を確認します。 |
| 休業補償給付、休業給付 | 休業損害 | 基礎収入、休業日数、会社からの給与支払いとの関係を確認します。 |
| 障害補償給付、障害給付 | 後遺障害逸失利益 | 等級、労働能力喪失率、喪失期間との対応を確認します。 |
| 遺族補償給付、遺族給付 | 死亡逸失利益 | 年金型給付の扱い、相続関係、既払金の時点を確認します。 |
| 葬祭料、葬祭給付 | 葬儀費用 | 損害賠償上の認容範囲と重複しないかを確認します。 |
| 介護補償給付、介護給付 | 介護費用 | 将来介護費や不足分との関係を確認します。 |
労災保険は慰謝料を支給する制度ではありません。そのため、労災を使って治療費や休業補償給付を受けたとしても、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料、近親者慰謝料まで当然に消えるわけではありません。
次の表は、第三者行為災害でよく出る「求償」と「控除」を比較したものです。どちらも通常給付の調整で問題になりますが、誰が先に支払ったかで場面が変わるため、時系列と支払元を読み取ることが重要です。
| 用語 | 意味 | 典型場面 |
|---|---|---|
| 求償 | 労災が先に給付した場合に、国が加害者側へ回収を求める仕組み | 労災先行で治療費や休業補償が支払われた場合 |
| 控除 | 加害者側から先に損害賠償を受けた場合に、労災が同一の事由について給付しないことがある仕組み | 自賠責や任意保険から先に支払われた場合 |
年金型の障害補償年金や遺族補償年金では、将来分をどの範囲・時点で調整するかが専門的な論点になります。ここで扱われるのは通常の保険給付であり、特別支給金とは別問題です。
休業損害の場面では、通常給付の6割部分と休業特別支給金の2割部分を混同しやすくなります。ここでは、休業損害が100万円と評価され、労災から通常の休業補償給付60万円、休業特別支給金20万円が支払われた単純化した例で見ます。
次の表は、100万円の休業損害を出発点に、どの金額が調整対象になり得るかを示しています。金額欄は概算モデルであり、実際には過失相殺、既払金、内払、自賠責、会社給与、有給休暇などの影響を別に確認する必要があります。
| 項目 | 金額 | 損害賠償から控除されるか |
|---|---|---|
| 休業損害 | 100万円 | 請求の出発点 |
| 休業補償給付 | 60万円 | 調整対象になり得る |
| 休業特別支給金 | 20万円 | 原則として控除されない |
| 加害者側に残る休業損害部分 | 40万円 | 通常給付60万円を調整した概算 |
次の比較グラフは、上の100万円モデルを金額の大きさで示したものです。縦の高さが金額の大きさを表し、100万円の休業損害から60万円の通常給付を調整しても、20万円の特別支給金をさらに差し引く発想ではないことを読み取ってください。
後遺障害では、通常の障害補償給付・障害給付は後遺障害逸失利益との関係で調整対象になり得ます。一方、障害特別支給金は原則として損害賠償から控除されません。さらに、労災の障害給付は後遺障害慰謝料そのものをてん補する制度ではないため、慰謝料の扱いを別に確認します。
死亡事故では、通常の遺族補償給付・遺族給付は死亡逸失利益との関係で、葬祭料は葬儀費用との関係で調整が問題になることがあります。一方、遺族特別支給金は原則として控除されず、死亡慰謝料や近親者慰謝料も労災通常給付でてん補されるものではありません。
次の一覧は、休業・後遺障害・死亡事故で、控除の考え方が変わる代表場面を並べています。事故類型ごとに、通常給付、特別支給金、慰謝料を分けて読むことが重要です。
通常の休業補償給付は休業損害との調整対象になり得ますが、休業特別支給金は原則として控除されません。
障害給付は逸失利益との対応を確認し、障害特別支給金と後遺障害慰謝料は別に整理します。
どの制度を先に使うか、過失がある場合にどう読むかを整理します。
業務中または通勤中の交通事故では、労災保険、自賠責保険、任意保険が同時に関係することがあります。自賠責保険は自動車事故の被害者救済を目的とする強制保険で、傷害・後遺障害・死亡に限度額があります。任意保険は、自賠責を超える損害などを補う民間保険です。
次の表は、労災先行と自賠責先行で実務上見えやすい違いをまとめたものです。どちらが常に有利という表ではなく、治療費、休業損害、慰謝料、過失、後の調整がどこで問題になるかを読み取るためのものです。
| 項目 | 労災先行 | 自賠責先行 |
|---|---|---|
| 治療費 | 労災から支給される | 自賠責の傷害限度額を消費する |
| 休業損害 | 通常給付と特別支給金の構造になる | 自賠責基準で支払われる |
| 慰謝料 | 労災からは支給されない | 自賠責の傷害部分で対象になる |
| 過失がある場合 | 被害者に有利に働くことがある | 重過失減額が問題になることがある |
| 後の調整 | 求償、控除が問題になる | 労災控除が問題になることがある |
どちらを先に使うかは、症状の重さ、過失割合、治療期間、自賠責限度額、後遺障害の見込み、自由診療か労災診療か、会社の対応、生活費の必要性などで変わります。次の判断の流れは、制度選択を検討するときに見る順番を表し、各段階で必要資料が変わることを読み取れます。
業務災害または通勤災害の可能性を確認します。
傷害部分の限度額をどれだけ使うかを見ます。
重過失減額、後遺障害申請、長期化の見通しを整理します。
通常給付、特別支給金、自賠責、任意保険の支払元を分けます。
特別支給金が控除されないことと、過失相殺は別問題です。たとえば総損害額1000万円、被害者過失20%なら、加害者側の賠償責任は原則として800万円になります。特別支給金を控除しないというのは、その800万円からさらに特別支給金を差し引かないという意味であり、過失割合の判断を不要にするものではありません。
休業、障害、傷病等級、後遺障害等級は医学的資料に左右されます。
特別支給金が控除されないかどうかは法的な論点ですが、その前提となる休業、障害、傷病等級、後遺障害等級は医療資料に大きく左右されます。傷病名、症状経過、治療必要性、休業必要性、後遺障害の有無を資料で説明できなければ、適正な評価を受けにくくなります。
次の資料一覧は、労災給付と損害賠償請求の双方で重要になりやすい医学的資料を整理したものです。各資料が何を証明しやすいかを読み取ると、示談前に不足資料を見つけやすくなります。
傷病名、症状経過、治療内容、通院頻度、休業必要性の基礎になります。
治療経過症状固定後の残存症状、可動域、神経学的所見、就労制限の評価に関わります。
等級判断日常生活動作、復職可能性、機能回復の経過を示す資料になります。
生活再建整形外科では、可動域制限、神経症状、骨癒合、疼痛、筋力低下などが重要です。脳神経外科では、頭部外傷、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、高次脳機能障害、意識障害の経過が重要になります。リハビリ職の記録は、日常生活動作や復職可能性を示す資料として意味を持ちます。
次の時系列は、事故後から症状固定・治ゆまでに、医学的資料と法的評価がどの順番でつながるかを表しています。各段階の記録が後の労災給付、特別支給金、損害賠償評価に影響することを読み取ってください。
事故との因果関係を説明するため、初期症状と受診時期が重要になります。
診療録、リハビリ記録、医師の意見が、休業や治療期間の評価に関わります。
交通事故では症状固定、労災では治ゆという概念が使われ、後遺障害や障害給付の出発点になります。
医学的所見と就労への影響を整理し、損害賠償と労災の双方で確認します。
症状固定とは、治療を続けても大きな改善が見込めなくなった状態を指します。労災で使われる治ゆは、完全に元通りになったという意味だけではなく、症状が安定し、医学上一般に認められた治療を行っても効果が期待できない状態も含みます。
保険会社の提示額、示談書、専門職の役割分担をまとめます。
保険会社から示談案が提示された場合、既払金欄に「労災既払金」とだけ書かれていることがあります。この一括表示では、通常給付と特別支給金が分けられているか分かりません。休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金が既払金として控除されている場合は、法的に争う余地が問題になります。
次の判断の流れは、示談案を見るときの確認順序を表しています。上から順に見れば、総額の多寡だけでなく、特別支給金の控除誤り、慰謝料の過小評価、既払金の二重控除を見つけやすくなります。
治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益、物損を分けます。
労災通常給付、特別支給金、自賠責、任意保険内払を分けます。
慰謝料まで控除されていないか、二重に引かれていないかを確認します。
今後の労災請求、後遺障害、追加治療、将来介護費への影響を確認します。
治療中や後遺障害申請前に示談を求められている場合、「一切の損害を受領済み」「今後何らの請求もしない」といった広い文言には注意が必要です。第三者行為災害届を出していない、既払金の内訳が不明、特別支給金が控除されている、過失割合に争いがある、自賠責限度額を超えそうであるといった事情があると、確認事項は増えます。
次の表は、交通事故と労災が重なる場面で関わる専門職の役割を整理したものです。誰が何を確認するかを読み取ることで、労災手続と損害賠償交渉を混同しにくくなります。
| 専門職 | 主な役割 | 確認しやすい論点 |
|---|---|---|
| 社会保険労務士 | 労災保険の請求手続、障害年金、休業補償、労務管理、会社との調整 | 第三者行為災害届、特別支給金の申請漏れ、会社の書類協力、復職・休職・退職 |
| 弁護士 | 加害者側、任意保険、自賠責、会社、労災制度を踏まえた損害賠償請求全体の設計 | 特別支給金の控除、既払金内訳、慰謝料、後遺障害、過失割合、示談書 |
| 医師・リハビリ職 | 診断、治療、後遺障害の医学的評価、就労制限、日常生活動作や復職可能性の評価 | 休業必要性、治療期間、症状固定・治ゆ、介護の必要性、医学的根拠 |
任意保険会社の提示額は、慰謝料、逸失利益、休業損害などについて裁判基準と差が出ることがあります。労災が絡む事件では、さらに既払金の調整が複雑になるため、特別支給金の控除だけでなく、損害額全体を見ることが重要です。
書類、示談案、会社関係、証拠、高額案件の注意点をまとめます。
交通事故で労災と損害賠償が重なる場合は、支給通知、示談案、医療資料、会社資料をそろえないと、通常給付と特別支給金の区別がつきにくくなります。書類を分類しておくことは、控除誤りや請求漏れを防ぐために重要です。
次の一覧は、被害者本人が確認しやすい資料を、目的ごとに整理したものです。どの資料が既払金、休業、後遺障害、会社支給、事故状況を示すかを読み取り、不足しているものを確認してください。
| 目的 | 主な資料 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 事故状況 | 交通事故証明書、実況見分調書に関する情報、事故写真、ドラレコ、車両損傷写真 | 過失割合、事故態様、第三者行為災害の前提 |
| 医療 | 診断書、診療報酬明細書、診療録、画像資料、後遺障害診断書 | 治療必要性、休業必要性、後遺障害、症状固定・治ゆ |
| 労災 | 支給決定通知、支払振込通知、第三者行為災害届、障害給付の決定通知 | 通常給付と特別支給金の内訳 |
| 収入・休業 | 休業損害証明書、源泉徴収票、給与明細、有給休暇取得記録 | 基礎収入、休業日数、会社からの給与支払い |
| 保険・示談 | 自賠責の支払通知、任意保険会社の示談案、既払金一覧 | 二重控除、慰謝料の評価、特別支給金の控除有無 |
会社から給与、見舞金、休業補償名目の支払い、福利厚生給付などを受けることがあります。名称だけでなく、支給規程、支給目的、損害のてん補性によって損害賠償との関係が変わるため、労災の特別支給金とは別に性質を確認します。
次の注意一覧は、高額化・複雑化しやすい場面をまとめたものです。ここに当てはまる場合は、通常給付の対応項目、特別支給金、慰謝料、将来損害、会社責任を分けて検討する必要があることを読み取ってください。
脊髄損傷、高次脳機能障害、遷延性意識障害、重い麻痺では、将来介護費、住宅改造費、装具費、逸失利益、慰謝料が高額になります。
死亡逸失利益、死亡慰謝料、葬儀費用、近親者慰謝料、遺族給付、遺族特別支給金、自賠責死亡保険金を分けます。
安全配慮義務違反、運行管理、車両整備不良、過重労働、無理な配送スケジュールが別途問題になることがあります。
事業所得者、兼業、副業、複数就業者では、税務資料、売上資料、経費資料、就労実態の証拠が重要になります。
事故調査では、ドライブレコーダー、防犯カメラ、現場写真、車両損傷写真、ブレーキ痕、擦過痕、破片の位置、信号サイクル、交通事故証明書、実況見分調書、修理見積書、イベントデータレコーダー、スマートフォン使用履歴などが重要になることがあります。
物損と人身損害は分けて考えます。労災は原則として労働者の身体損害に関する制度であり、車両修理費、代車費用、評価損、携行品損害などは加害者側への損害賠償請求として整理します。
誤解されやすい点を一般情報として整理します。
一般的には、業務中または通勤中の交通事故で労災を使っても、加害者側に対する損害賠償請求権が当然に消えるわけではないとされています。ただし、通常の労災保険給付については、同一の損害について支給調整が行われる可能性があります。具体的な内訳は、支給通知や示談案を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、休業に関する8割という説明には、通常給付の6割と休業特別支給金の2割が含まれることがあります。損害賠償との調整対象になり得るのは通常給付の部分であり、休業特別支給金は原則として控除されないと整理されています。ただし、過失割合、会社給与、有給休暇、自賠責の支払いなどで結論が変わる可能性があります。
一般的には、特別支給金と通常の労災保険給付は法的性質が異なるとされています。通常給付は、治療費、休業損害、逸失利益、葬儀費用、介護費用などと対応し、損害賠償との調整対象になり得ます。どの給付がどの損害項目に対応するかは、個別の資料で確認する必要があります。
一般的には、示談案で労災既払金が一括表示されている場合、特別支給金まで控除されているか確認が必要とされています。保険会社の計算が常に最終的な法的評価と一致するとは限りません。具体的には、既払金一覧、労災支給決定通知、支払通知、示談案を照合して、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、特別支給金を受け取ること自体が損害賠償上不利になるわけではないと整理されています。特別支給金は生活再建を支える重要な給付です。ただし、申請漏れ、書類不備、示談書の文言、会社からの支払い、他制度の利用状況によって扱いが複雑になる可能性があります。
控除可否、慰謝料、相談を検討する場面を最後に整理します。
労災の特別支給金は損害賠償から差し引かれないのかという問いへの答えは、原則として差し引かれない、です。ただし、通常の労災保険給付は同一の事由について調整対象になり得るため、労災から受け取ったお金を一括で扱わないことが最も重要です。
次の結論表は、このページで扱った主要論点を1つにまとめたものです。左列の論点ごとに、特別支給金、通常給付、慰謝料、示談案の確認点を分けて読むと、示談前に見るべき箇所が整理できます。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 休業特別支給金は損害賠償から差し引かれるか | 原則として差し引かれない |
| 障害特別支給金は損害賠償から差し引かれるか | 原則として差し引かれない |
| 遺族特別支給金は損害賠償から差し引かれるか | 原則として差し引かれない |
| 労災の通常給付は差し引かれるか | 同一の事由について調整対象になり得る |
| 慰謝料は労災で消えるか | 労災は慰謝料を支給しないため、別に確認する |
| 労災を使うと加害者に請求できないか | 請求権は残る可能性があるが、通常給付との調整を確認する |
| 保険会社の示談案で確認すべき点 | 特別支給金が既払金控除に含まれていないかを見る |
| 弁護士相談が必要になりやすい場面 | 後遺障害、死亡事故、高額休業損害、控除不明、過失争いがある場合 |
次の一覧は、弁護士相談を検討する価値が高い場面をまとめたものです。ここに当てはまるほど、通常給付と特別支給金、慰謝料、逸失利益、過失割合、示談書の文言が絡みやすく、資料を見た確認が重要になります。
特別支給金が控除されている、労災既払金の内訳が示されていない、二重控除が疑われる場合です。
休業損害が低い、慰謝料が低い、弁護士基準との差が大きい、逸失利益の計算に疑問がある場合です。
後遺障害等級、非該当への不満、死亡事故、重度後遺障害、高次脳機能障害、脊髄損傷がある場合です。
自賠責、任意保険、労災、会社補償が絡み、示談書、治療打切り、休業打切り、会社の協力状況に不安がある場合です。
弁護士に相談する際は、抽象的な質問だけでなく、保険会社の最新示談案、既払金一覧、労災の支給決定通知・支払通知、休業特別支給金や障害特別支給金の通知、診断書、後遺障害診断書、事故状況が分かる資料、給与資料、自賠責の認定結果、会社とのやり取りを持参すると、短時間で確認しやすくなります。
次の確認表は、相談時に質問したい論点を「何を聞くか」と「なぜ重要か」で整理したものです。示談案の数字だけでなく、控除先、慰謝料、後遺障害逸失利益、二重控除の有無まで読み取ることが重要です。
| 確認したい質問 | 重要な理由 |
|---|---|
| 労災の特別支給金が控除されていないか | 休業特別支給金、障害特別支給金、遺族特別支給金は原則として控除しない整理だからです。 |
| 労災通常給付はどの損害項目から控除されているか | 治療費、休業損害、逸失利益、葬儀費用、介護費用で対応関係が違うためです。 |
| 慰謝料まで控除されていないか | 労災は慰謝料を支給する制度ではないため、別に評価する必要があるからです。 |
| 自賠責と労災の既払金が二重に引かれていないか | 支払元が複数あると、同じ金額が重複して控除されるリスクがあるためです。 |
| 後遺障害逸失利益の計算は妥当か | 等級、労働能力喪失率、喪失期間で賠償額が大きく変わるためです。 |
| 専門家が関与した場合の増額可能性はあるか | 弁護士基準、既払金整理、過失割合、後遺障害評価をまとめて確認できるためです。 |
公的資料、法令、裁判例を中心に整理しています。