交通事故の入通院慰謝料で問題になる赤い本の別表I・別表IIについて、金額差、他覚所見、通院頻度、後遺障害との関係、保険会社との争点を整理します。
入通院慰謝料の表選択は、病名だけでなく証拠で説明できる傷害の実態から考えます。
交通事故で入院・通院した場合、治療期間中の精神的・肉体的苦痛に対する賠償として、入通院慰謝料または傷害慰謝料が問題になります。裁判実務に近い水準を検討するときに参照される代表的な資料が、日弁連交通事故相談センター東京支部の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」、いわゆる赤い本の入通院慰謝料算定表です。
このページで扱う慰謝料別表Iと別表IIは、赤い本の入通院慰謝料算定表を指します。自賠責保険や後遺障害等級の文脈で出てくる施行令の別表第一・別表第二とは別物です。入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益はそれぞれ別の損害項目なので、混同しないことが大切です。
次の重要ポイントは、慰謝料別表Iと別表IIの結論を短く整理したものです。最初に全体像を確認しておくと、後で出てくる金額差、他覚所見、通院頻度、後遺障害との関係を読み分けやすくなります。
ただし、使い分けは病名だけでは決まりません。画像所見、神経学的所見、治療内容、通院頻度、症状推移、後遺障害の有無、事故態様などを総合して判断されます。
保険会社が別表IIを主張していても、骨折、脱臼、手術、画像上の異常、神経学的異常、後遺障害等級との関係などから、別表Iまたは別表Iに近い評価を検討すべき場面があります。反対に、むち打ち症や捻挫で痛みがある場合でも、客観的な裏付けが乏しいと別表IIを基礎に検討されることがあります。
慰謝料の根拠は、民法709条の不法行為責任、民法710条の財産以外の損害に対する賠償、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任などにあります。ここで扱うのは、死亡慰謝料や後遺障害慰謝料ではなく、治療中の入院・通院に対応する慰謝料です。
赤い本の表、自賠責基準、後遺障害等級表を分けて確認します。
交通事故実務では「別表」という言葉が複数の場面で使われます。この違いを取り違えると、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、自賠責保険金の話が混ざってしまい、示談案の妥当性を判断しにくくなります。
次の比較表は、似た言葉がどの場面で使われるかを整理したものです。列を見ると、別表I・別表IIが治療期間中の慰謝料に関する表であり、後遺障害等級表や自賠責支払基準とは役割が違うことを読み取れます。
| 用語 | 主な場面 | 内容 |
|---|---|---|
| 赤い本の別表I・別表II | 入院・通院中の傷害慰謝料 | このページのテーマです。入通院慰謝料の算定表として用いられます。 |
| 自賠責の後遺障害等級表の別表 | 症状固定後の後遺障害 | 後遺障害等級や自賠責の支払限度額を判断する表です。 |
| 自賠責支払基準 | 自賠責保険金 | 傷害慰謝料1日4,300円、傷害部分の支払限度額120万円などを含む基礎的な支払基準です。 |
交通事故慰謝料には複数の種類があります。入通院慰謝料は治療期間中の苦痛に対応し、後遺障害慰謝料は症状固定後に残った後遺障害に対応し、死亡慰謝料は死亡事故に対応します。別表I・別表IIはこのうち入通院慰謝料の問題です。
次の一覧は、交通事故慰謝料の種類と別表I・別表IIとの関係を分けたものです。対象となる時期と損害項目を分けて見ることで、同じ「慰謝料」という言葉でも計算方法が違うことを確認できます。
| 種類 | 対象 | 別表I・別表IIとの関係 |
|---|---|---|
| 入通院慰謝料・傷害慰謝料 | 治療期間中の入院・通院による苦痛 | このページの対象です。別表I・別表IIで算定されます。 |
| 後遺障害慰謝料 | 症状固定後に残った後遺障害による苦痛 | 後遺障害等級に応じて別途算定されます。 |
| 死亡慰謝料 | 被害者死亡による本人・遺族の精神的苦痛 | 別表I・別表IIとは別枠で検討されます。 |
交通事故慰謝料の金額を考えるときは、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準・弁護士基準の3つを分けて見る必要があります。自賠責基準は迅速・定型的な基礎補償で、任意保険基準は保険会社の内部基準、裁判基準・弁護士基準は裁判実務を踏まえた水準です。
次の比較表は、3つの基準の性格を整理したものです。示談案がどの基準に近いのかを把握すると、別表I・別表IIを使った裁判基準相当額との距離を確認しやすくなります。
| 基準 | 特徴 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 自賠責基準 | 強制保険の基礎的な支払基準です。傷害慰謝料は1日4,300円、傷害部分の限度額は被害者1人あたり120万円と整理されています。 | 治療費、休業損害、文書料なども120万円枠に含まれる点を確認します。 |
| 任意保険基準 | 加害者側の任意保険会社が示談提示で用いる内部基準です。一般に公開されていないことが多いです。 | 提示額が自賠責基準に近いのか、裁判基準との差があるのかを確認します。 |
| 裁判基準・弁護士基準 | 裁判実務で認められやすい水準を踏まえた基準です。赤い本や青本が重要な参考資料になります。 | 事件ごとの事情により増減し得るため、表の数字だけで自動的に決まるわけではありません。 |
同じ通院期間でも、表の選択で入通院慰謝料の目安は変わります。
一般に、同じ入通院期間なら別表Iのほうが別表IIより高額です。別表Iは通常傷害を前提とする原則表であり、別表IIはむち打ち症で他覚所見がない場合や軽い打撲・軽い挫創などを想定した低めの表だからです。
次の比較表は、通院のみの代表例で別表Iと別表IIの差を示したものです。金額は全表の転載ではなく理解のための目安であり、実際の請求では最新版の原典と個別事情を確認します。差額欄を見ると、表選択が示談額に与える影響の大きさが分かります。
| 通院期間の例 | 別表Iの目安 | 別表IIの目安 | 差額のイメージ |
|---|---|---|---|
| 通院1か月 | 約28万円 | 約19万円 | 約9万円 |
| 通院3か月 | 約73万円 | 約53万円 | 約20万円 |
| 通院6か月 | 約116万円 | 約89万円 | 約27万円 |
次の割合の横棒は、通院1か月・3か月・6か月で、別表IIの目安が別表Iに対してどの程度の水準になるかを示しています。横の長さが大きいほど別表Iとの差が小さいことを表し、短いほど表選択による差額が目立つことを読み取れます。
別表Iは、骨折、脱臼、靱帯損傷、腱損傷、手術を要する外傷、入院を伴う外傷、頭部外傷、脳挫傷、脊髄損傷、神経根症状が客観的に認められる事案などで問題になりやすい表です。画像所見、手術記録、固定、入院、リハビリ記録などが傷害の重さを支える資料になります。
別表IIは、むち打ち症で他覚所見がない場合、頸椎捻挫・腰椎捻挫で画像異常が乏しい場合、軽い打撲、軽い挫創・擦過傷、軽い捻挫などで用いられやすい表です。ただし、軽傷名が付いているだけで自動的に別表IIになるわけではありません。
次の比較表は、別表Iと別表IIが問題になりやすい典型場面を整理したものです。傷病名だけでなく、列に示した医学的・治療上の理由を確認することで、どの表を基礎に検討すべきかの方向性を読み取れます。
| 典型場面 | 検討されやすい表 | 理由 |
|---|---|---|
| 骨折、脱臼、靱帯損傷、手術、入院 | 別表I | 客観的な傷害や治療侵襲を説明しやすく、通常傷害として評価されやすいです。 |
| 頭部外傷、脳挫傷、高次脳機能障害の疑い | 別表Iを検討 | 医療・後遺障害の観点から慎重な評価が必要です。 |
| むち打ち症で他覚所見がない場合 | 別表II | 症状はあっても画像所見や神経学的異常などの客観的裏付けが乏しい類型です。 |
| 軽い打撲、軽い挫創、擦過傷、軽い捻挫 | 別表II | 治療期間や重症度が限定的な場合、低めの表が問題になりやすいです。 |
痛みの有無ではなく、症状を医学的に説明できる資料の有無が争点になります。
他覚所見とは、患者本人の訴えだけでなく、医師など第三者が医学的に確認できる客観的所見をいいます。これに対し、自覚症状は、痛み、しびれ、だるさ、違和感、めまい、頭痛など、本人が感じて訴える症状です。
次の比較表は、自覚症状と他覚所見の違いを整理したものです。実務上の意味の列を見ると、別表Iを主張するには、症状と客観資料がどのように結びつくかを説明する必要があることが分かります。
| 区分 | 例 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 自覚症状 | 首が痛い、腕がしびれる、腰が重い、頭痛がする | 重要な症状ですが、客観的裏付けが争点になりやすいです。 |
| 画像所見 | X線、CT、MRIでの骨折、出血、神経圧迫、靱帯損傷など | 別表I主張や後遺障害主張の根拠になり得ます。 |
| 神経学的所見 | 筋力低下、感覚障害、腱反射異常、徒手検査の異常など | 症状と神経支配領域の整合性が重要です。 |
| 外表所見 | 創傷、腫脹、皮下出血、瘢痕 | 打撲・挫創の程度や治療経過を示します。 |
| 治療経過 | 手術、固定、入院、リハビリ、投薬、ブロック注射など | 傷害の重さや苦痛の程度を示す資料になります。 |
画像上の異常があっても、必ず別表Iになるとは限りません。加齢性変化、既往症、事故前からの変性所見と評価される場合があるからです。重要なのは、画像に何か写っていること自体ではなく、事故態様、症状の連続性、画像所見、神経学的所見、治療内容が整合していることです。
次の一覧は、画像所見を別表Iの主張につなげるときに確認する整合性をまとめたものです。各項目がそろうほど、事故による傷害として説明しやすくなり、不足する項目があるほど保険会社との争点になりやすいと読み取れます。
その部位に傷害が生じ得る衝撃、方向、車両損傷が説明できるかを確認します。
事故直後から同じ部位・同じ症状が続いているかを診療録や症状日誌で確認します。
画像所見と痛み・しびれの部位、神経支配領域が合っているかを見ます。
神経学的検査結果が一回限りでなく、経過の中で確認されているかが重要です。
手術、固定、投薬、リハビリなどが症状の程度に見合っているかを整理します。
事故前に同じ症状で治療していたか、事故で明らかに悪化したかを確認します。
「他覚所見なし」は、けがをしていない、痛みが嘘である、という意味ではありません。むち打ち症や捻挫では、現実に痛みやしびれがあっても、X線やMRIで明確な異常が出ないことがあります。別表IIはそのような症状を一律に否定する表ではなく、客観的所見が乏しい軽傷類型について通常傷害より低めの慰謝料水準を用いるための表です。
傷病名、他覚所見、治療内容、通院実態、後遺障害を段階的に確認します。
別表選択は、傷病名だけで決めるより、資料を順番に確認したほうが整理しやすくなります。診断書、診療報酬明細書、カルテ、画像、リハビリ記録、後遺障害診断書を見ながら、傷害の実態を説明できるかを確認します。
次の判断の流れは、別表I・別表IIを検討するときの確認順序を示したものです。上から下へ進み、分岐では客観的所見と治療実態があるかを読み取ることで、保険会社の主張に反論すべき点も見えやすくなります。
骨折、頸椎捻挫、打撲、頭部外傷、靱帯損傷などを診断書で確認します。
X線、CT、MRI、神経学的検査、外表所見、可動域などを見ます。
手術、固定、入院、リハビリ、投薬、整骨院施術の位置づけを整理します。
入通院期間を原則としつつ、長期・低頻度通院では実通院日数による調整が争点になります。
通常傷害として説明できる資料をそろえます。
症状の一貫性、治療必要性、生活への影響を整理します。
第1段階では傷病名を確認します。鎖骨骨折、橈骨遠位端骨折、肋骨骨折、足関節骨折などは別表Iを検討しやすく、頸椎捻挫・腰椎捻挫・外傷性頸部症候群は他覚所見の有無で分岐します。打撲、挫創、擦過傷は軽度なら別表II、重度・長期・手術等があれば別表Iまたは増額要素を検討します。
次の比較表は、使い分けの各段階で確認する資料を整理したものです。資料欄と見るべきポイントを対応させることで、単なる病名ではなく、証拠から別表選択を説明する準備ができます。
| 確認段階 | 主な資料 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| 傷病名 | 診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書 | 骨折・靱帯損傷・頭部外傷か、捻挫・打撲中心かを確認します。 |
| 他覚所見 | X線、CT、MRI、画像診断報告書、カルテ、神経学的検査 | 症状と画像・検査結果が整合するかを確認します。 |
| 治療内容 | 手術記録、入院記録、固定、リハビリ記録、投薬内容 | 苦痛・侵襲・治療必要性の程度を説明します。 |
| 通院期間・頻度 | 通院日、治療内容、医師の指示、仕事や家庭事情 | 長期・低頻度通院で期間修正が必要かを検討します。 |
| 後遺障害 | 後遺障害診断書、等級認定結果、画像、カルテ | 等級は自動決定要素ではありませんが、傷害の重さを示す事情になります。 |
通院が長期にわたり、通院頻度や治療内容が乏しい場合、実通院日数をもとに慰謝料算定期間を修正する議論が出ます。実務解説では、別表Iで実通院日数の3.5倍程度、別表IIで3倍程度が目安とされることがありますが、常に自動適用されるわけではありません。
典型例を通じて、病名だけで決めない視点を確認します。
同じ「むち打ち」「打撲」「挫創」という言葉があっても、事故態様、画像、神経学的所見、治療内容、後遺障害の有無によって評価は変わります。ケース別に見ると、保険会社の単純な分類に対して何を確認すべきかが分かります。
次の一覧は、代表的な6つの場面でどちらの表が問題になりやすいかを整理したものです。各項目では、表の名前だけでなく、判断を左右する資料や注意点を読み取ってください。
典型的には別表IIが問題になります。ただし、自賠責基準の1日4,300円で示談すべきという意味ではなく、裁判基準として別表IIを用いると増額余地があることがあります。
病名が頸椎捻挫でも、事故直後からの症状、MRI所見、神経学的所見が整合すれば、別表Iを検討する余地があります。
原則として別表Iを検討します。ただし、治療が長期化した理由や実質的治療の有無は、算定期間の争点になり得ます。
軽度・短期で画像異常がなければ、別表IIまたは自賠責基準に近い評価が問題になりやすいです。
単なる軽い挫創とは異なり、形成外科記録、写真、瘢痕の状態、後遺障害診断書をもとに、別表Iや増額要素を検討する余地があります。
最も重い傷害や治療全体の実態を見ます。治療の中心が骨折や靱帯損傷なら、別表Iを基礎にする主張が自然な場面があります。
後遺障害がある場合も、入通院慰謝料の別表選択が自動で決まるわけではありません。骨折後に可動域制限が残った場合は傷害の重さを示す事情になりますが、むち打ち症で14級9号が認定された場合でも、入通院慰謝料は別表IIを基礎にされることがあります。12級13号のように客観的な神経症状が問題になる事案では、別表Iを主張する余地が強まります。
表の交点、日割り・按分、自賠責基準との比較を確認します。
赤い本の入通院慰謝料表は、入院期間と通院期間を縦横の軸として、交差する欄の金額を読む形式です。通院のみなら入院0か月の列、入院のみなら通院0か月の行、入院後に通院した場合は両者の交点を見ます。
次の時系列は、入通院慰謝料を試算するときの順番を示しています。上から順に確認すると、どの期間を表に入れるのか、端数をどう扱うのか、自賠責基準との比較をどこで行うのかを読み取れます。
初診日、入院日、退院日、治療終了日または症状固定日を整理します。
傷病名、他覚所見、治療内容、通院頻度、後遺障害との関係を確認します。
入院期間の列と通院期間の行が交わる金額を基礎にします。
3か月10日のような端数は按分し、長期・低頻度通院では実通院日数による調整が争点になります。
傷害部分120万円枠、治療費、休業損害、既払金を含めて最終額を確認します。
実務解説では、入院2か月で完治し通院なしなら別表Iで101万円、5か月通院のみなら105万円、入院1か月・通院3か月なら115万円といった読み方が例示されています。表は1か月単位なので、3か月10日、2か月20日などの端数は、前後の月の金額を日割り・按分して考えることがあります。
次の比較表は、計算で確認する代表的な論点を整理したものです。争点欄を見ると、単に表の数字を読むだけでなく、治療期間、通院日数、自賠責の限度額、既払金を合わせて検討する必要があることが分かります。
| 論点 | 基本的な考え方 | 争点になりやすい点 |
|---|---|---|
| 表の交点 | 入院期間と通院期間の交点を見る | どこまでを相当な治療期間と見るか |
| 1か月未満の端数 | 前後の月の金額を日割り・按分することがあります | 月数換算や按分方法 |
| 長期・低頻度通院 | 入通院期間が原則ですが、例外的に実通院日数による調整が問題になります | 3倍・3.5倍の機械的適用の可否 |
| 自賠責基準との比較 | 傷害部分は治療費等を含めて120万円の限度額があります | 治療費が高額な場合の慰謝料・休業損害への影響 |
| 一括払制度 | 任意保険会社が窓口となり自賠責分もまとめて支払うことがあります | 自賠責調査、既払金、最終示談額の整理 |
典型的な主張と、確認すべき資料を整理します。
保険会社との交渉では、「むち打ちだから別表II」「画像異常は加齢性」「実通院日数×3で計算」「治療は3か月で打ち切り」「自賠責基準で十分」といった主張が出ることがあります。いずれも、資料を確認せずに受け入れると適正額を見誤る可能性があります。
次の比較表は、保険会社の典型的な主張と確認・反論の方向性を整理したものです。左列の主張に対し、右列の資料と事情を集めることで、別表選択や算定期間を説明しやすくなります。
| 保険会社の主張 | 確認・反論の方向性 |
|---|---|
| むち打ちなので別表II | MRI、神経学的検査、症状の部位、事故態様、後遺障害診断書を確認します。 |
| 画像異常は加齢性 | 事故前症状の有無、事故直後からの症状、医師意見、所見と症状の整合性を確認します。 |
| 通院頻度が少ない | 医師の指示、仕事・育児・遠方通院、症状悪化時の受診を説明します。 |
| 治療が長すぎる | 症状推移、治療内容、症状固定時期、主治医判断を整理します。 |
| 整骨院分は評価しない | 医師の診断・同意・指示、整形外科通院との併用状況を確認します。 |
「実通院日数×3で計算します」と言われた場合も、通院期間が本当に長期といえるのか、頻度が本当に低いのか、医師から頻回通院を求められていたのか、仕事・家庭・距離などで通院困難だったのか、通院時の治療内容が実質的だったのかを整理します。
次の重要ポイントは、治療費打ち切りと慰謝料対象期間の関係を整理したものです。打ち切り日をそのまま治療終了日と考えず、医学的な治療継続の必要性と症状固定時期を確認することが重要です。
自賠責基準は基礎的保障であり、裁判基準とは異なります。保険会社提示が自賠責基準に近い場合、別表I・別表IIのどちらを用いた裁判基準相当額になるのかを試算することが重要です。示談成立後は原則としてやり直しが難しいため、署名前の確認が大切です。
医療資料、事故資料、保険資料、生活への影響を一体で整理します。
別表Iを主張できるか、別表IIを前提にいくらが妥当かを判断するには、資料が必要です。法律論だけでなく、医療記録、事故態様、保険資料、生活・就労への影響を合わせて見る必要があります。
次の一覧は、相談前に準備したい資料を4つのまとまりで整理したものです。左の番号順に集めると、事故の発生、傷害の内容、損害額、生活への影響を順番に説明しやすくなります。
交通事故証明書、事故発生状況報告書、ドライブレコーダー映像、車両写真、修理見積書、現場写真、警察に提出した診断書の写し、実況見分調書等を整理します。
事故態様衝撃の説明診断書、診療報酬明細書、カルテ、画像データ、画像診断報告書、リハビリ記録、後遺障害診断書、薬の処方内容、施術証明書を確認します。
他覚所見症状の一貫性保険会社からの示談案、慰謝料計算書、治療費打ち切り通知、休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書、通院交通費記録、弁護士費用特約の有無が分かる保険証券を準備します。
示談案既払金休職・欠勤記録、仕事内容と支障のメモ、家事・育児・介護への影響、痛みやしびれの日誌、睡眠障害や不安がある場合の受診記録、復職面談や職場配慮の記録を整理します。
生活支障時系列初診時の記録は特に重要です。事故後すぐにどの部位を訴えたか、しびれや頭部打撲があったか、画像検査が行われたか、医師がどのように診断したかが、その後の因果関係判断の基礎になります。
次の比較表は、専門職ごとに別表I・別表IIの判断へ関わる視点を整理したものです。どの資料がどの専門領域の判断につながるかを読み取ると、相談時に不足資料を確認しやすくなります。
| 分野 | 主な専門職 | 別表判断への関与 |
|---|---|---|
| 現場・証拠 | 警察官、鑑識、交通事故鑑定人、映像解析技術者 | 事故態様、衝撃の大きさ、過失、因果関係の基礎資料を扱います。 |
| 医療 | 整形外科医、脳神経外科医、救急医、リハビリ職、看護師 | 診断、画像、神経学的所見、治療必要性、症状固定を確認します。 |
| 保険 | 損害保険担当者、損害調査担当、自賠責調査関係者 | 支払基準、治療費対応、後遺障害認定資料、示談提示に関わります。 |
| 法律 | 弁護士、裁判官、法律事務職員 | 別表選択、証拠評価、慰謝料算定、交渉、訴訟を担当します。 |
| 車両技術 | 自動車整備士、修理業者、車体整備士 | 車両損傷、衝撃方向、修理費、事故態様の裏付けを確認します。 |
| 生活再建 | 社会保険労務士、福祉職、心理職、産業医 | 労災、傷病手当金、復職、障害年金、生活支援の視点を補います。 |
むち打ち症で別表Iを主張するか、別表IIを前提に増額を求めるかが争点になる場合、症状日誌や通院経過の整理は有用です。ただし、誇張や矛盾のある記録は逆効果になり得ます。事実を時系列で淡々と記録することが大切です。
断定しすぎず、一般的な制度説明として整理します。
別表IIは低めの表ですが、慰謝料がほとんど認められないという意味ではありません。また、むち打ちなら必ず別表II、MRI異常があれば必ず別表I、後遺障害14級なら必ず別表Iという単純な対応関係もありません。
次の比較表は、よくある誤解と確認すべき考え方を整理したものです。誤解欄だけで判断せず、確認欄にある証拠や制度上の区別を読み取ることが重要です。
| 誤解 | 確認すべき考え方 |
|---|---|
| 別表IIだと慰謝料はほとんど取れない | 別表IIでも自賠責基準より高くなることがあります。通院期間、実通院日数、治療内容、症状の程度を確認します。 |
| むち打ちは必ず別表II | 画像所見や神経学的所見があり、事故との因果関係を説明できる場合は別表Iを検討します。 |
| MRIで異常があれば必ず別表I | 加齢性変化や既往症と評価される場合があります。事故直後からの症状や医師の判断との整合性が必要です。 |
| 後遺障害14級なら入通院慰謝料も必ず別表I | 後遺障害慰謝料と入通院慰謝料は別です。14級9号でも別表IIを基礎にされることがあります。 |
| 通院日数が少ないと必ず減額される | 医師の指示、仕事・家庭事情、遠方通院、治療内容、投薬や自宅療養の実態を確認します。 |
| 保険会社の提示は中立的な最終結論 | 保険会社は支払側の当事者です。裁判基準で再計算すると増額する可能性があります。 |
一般的には、他覚所見が乏しいむち打ち症や軽い外傷では別表IIが用いられることがあります。ただし、事故態様、負傷程度、画像所見、神経学的検査、通院経過によって評価が変わる可能性があります。具体的な見通しは、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、画像所見は別表Iを検討する重要資料とされています。ただし、加齢性変化、既往症、事故前からの所見と評価される可能性があり、症状の部位や神経学的所見との整合性によって結論は変わります。具体的な対応は、医療資料を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、入通院期間を基礎とする考え方が原則とされています。ただし、長期・低頻度通院では実通院日数による調整が問題になる可能性があります。医師の指示、仕事や家庭事情、治療内容、症状経過によって判断が変わるため、具体的には弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、保険会社の一括対応終了だけで医学的な治療終了や症状固定が当然に決まるわけではないとされています。ただし、治療の必要性、症状固定時期、事故との因果関係によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、主治医の判断や資料を整理して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、示談書に署名する前であれば、提示額の根拠や別表選択を確認できる余地があります。ただし、時効、既払金、治療終了時期、後遺障害申請の有無などで対応は変わります。具体的な見通しは、示談案と関連資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
相談すべきタイミングとしては、保険会社が別表IIまたは自賠責基準で提示してきた、骨折・脱臼・靱帯損傷・手術・入院がある、MRI・CT・X線で異常を指摘された、しびれ・筋力低下・可動域制限が残っている、後遺障害申請を検討している、治療費打ち切りを告げられた、整骨院通院分を否定された、示談案の計算根拠が分からない、弁護士費用特約がある、といった場面が挙げられます。
制度・算定基準・自賠責保険・交通事故証明に関する資料を整理しています。