固定倍率ではなく、実通院日数、入通院期間、傷害の重さ、通院頻度、自賠責の120万円枠で変わります。代表例の倍率と計算順序を整理します。
固定倍率ではなく、実通院日数、入通院期間、傷害の重さ、通院頻度、自賠責の120万円枠で変わります。
一律の何倍ではなく、計算構造の違いから倍率が動きます。
「入通院慰謝料の弁護士基準は自賠責基準の何倍か」という問いには、固定倍率では答えられません。自賠責基準は日額4,300円と対象日数を中心に計算し、弁護士基準は入院期間、通院期間、傷害の内容、通院頻度、治療経過を中心に見ます。
通院のみの代表例では、弁護士基準は自賠責基準の約1.1倍から4倍超まで動きます。実感値としては、むちうちなどの軽症で1.5倍から2.5倍程度、骨折など客観的所見がある傷害で2倍から3倍程度になることが少なくありません。
次の表は、このページ全体で扱う結論を一覧にしたものです。何を比較しているのかを最初に切り分けることが重要で、表では典型的な倍率だけでなく、倍率が大きく見える場面と小さく見える場面を読み取れます。
| 問い | 結論 |
|---|---|
| 入通院慰謝料の弁護士基準は自賠責基準の何倍か | 固定倍率ではありません。個別計算が必要です。 |
| 典型的な目安 | 1.5倍から3倍程度が多く見られます。 |
| 通院が少ない場合 | 自賠責額が小さくなるため、4倍前後になることがあります。 |
| 通院が多い場合 | 自賠責額が相対的に大きくなり、1.1倍から1.7倍程度に近づくことがあります。 |
| 骨折など重い傷害 | 別表I相当となり、2倍から3倍程度になる例が多いです。 |
| 重要な注意点 | 自賠責の120万円限度、通院頻度修正、症状固定、後遺障害、過失相殺を別に検討します。 |
自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の性質を分けて理解します。
入通院慰謝料とは、交通事故による負傷のために、治療、入院、通院、リハビリ、検査、生活上の制限を受けた精神的苦痛を金銭評価する損害項目です。後遺障害慰謝料、死亡慰謝料、休業損害、治療費、逸失利益とは区別して考えます。
次の比較一覧は、交通事故の慰謝料で問題になる3基準の役割を整理しています。保険会社提示がどの基準に近いかを見分ける出発点になるため、性質、水準、実務上の位置づけを横並びで確認してください。
| 基準 | 性質 | 一般的な水準 | 実務上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 自賠責基準 | 強制保険の支払基準 | 低い | 被害者救済のための最低限、基本補償の性格が強い基準です。 |
| 任意保険基準 | 各保険会社の内部基準 | 中間的なことが多い | 示談提示で使われることがありますが、外部から詳細は見えにくい基準です。 |
| 弁護士基準、裁判基準 | 裁判例の傾向を踏まえた実務基準 | 高い | 交渉、訴訟、示談あっせんで主張される重要な基準です。 |
次の一覧は、入通院慰謝料と混同しやすい損害項目を分けて示すものです。比較対象を間違えると倍率の意味がずれるため、慰謝料だけを比べているのか、総損害額を比べているのかを読み分けてください。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 入通院慰謝料 | 中心テーマです。傷害慰謝料とも呼ばれます。 |
| 後遺障害慰謝料 | 症状固定後に後遺障害等級が認定された場合の別項目です。 |
| 死亡慰謝料 | 死亡事故で問題となる別項目です。 |
| 休業損害 | 仕事や家事に支障が出た収入減の補償です。 |
| 治療費 | 医療機関等に支払われる費用で、自賠責の120万円限度に影響します。 |
| 逸失利益 | 後遺障害や死亡で将来収入が減る損害です。 |
次の3つの要素は、弁護士基準が単なる「倍率」ではないことを示します。読者にとって重要なのは、弁護士基準が法律上の固定表ではなく、医療資料や事故資料と結びついて具体化される点です。
赤い本や青本などの損害算定基準が参照されますが、事件ごとの事情により損害額は変わります。
治療が医学的に必要かつ相当であったか、通院頻度が合理的か、症状固定時期が妥当かを見ます。
他覚的所見、事故態様、因果関係、過失割合、既払金の処理などが最終的な評価に影響します。
分母と分子の作り方が違うため、同じ通院期間でも倍率が変わります。
2020年4月1日以降に発生した事故を中心に見ると、自賠責基準における傷害慰謝料は、1日4,300円を対象日数に掛けて概算します。
通院のみの典型例では、実務上、対象日数を「実治療日数×2」と「治療期間の日数」の少ない方として説明することが多くあります。たとえば治療期間90日、実通院30日であれば、30日×2=60日、4,300円×60日=25万8,000円です。
次の表は、自賠責の傷害部分に含まれる主な項目を整理したものです。120万円は入通院慰謝料だけの枠ではないため、治療費や休業損害が大きいほど慰謝料として残る余地が小さくなる点を読み取ってください。
| 自賠責の傷害部分に含まれる主な項目 | 実務上の注意点 |
|---|---|
| 治療費 | 一括対応で保険会社が病院に直接払っている場合でも、傷害部分の枠を消費することがあります。 |
| 通院交通費 | タクシー利用は必要性、相当性が問題になりやすい項目です。 |
| 文書料 | 診断書、診療報酬明細書などの費用です。 |
| 休業損害 | 収入資料、休業損害証明書、家事従事者性などが問題になります。 |
| 入通院慰謝料 | 4,300円×対象日数で概算します。 |
たとえば治療費80万円、休業損害30万円、文書料と交通費5万円であれば、それだけで115万円に達します。自賠責からの支払いという視点では、入通院慰謝料に使える余地は5万円程度しかありません。
次の表は、入院なしで通院のみの場合の代表的な弁護士基準の目安を示します。読者にとって重要なのは、弁護士基準が日額×日数ではなく、通院期間と傷害類型を中心に見る点です。左右の列の違いから、骨折などとむちうちなどで同じ通院期間でも金額差が出ることを確認できます。
| 通院期間 | 骨折、脱臼など別表I相当の目安 | むちうち、打撲、捻挫など別表II相当の目安 |
|---|---|---|
| 1か月 | 28万円 | 19万円 |
| 2か月 | 52万円 | 36万円 |
| 3か月 | 73万円 | 53万円 |
| 4か月 | 90万円 | 67万円 |
| 5か月 | 105万円 | 79万円 |
| 6か月 | 116万円 | 89万円 |
| 7か月 | 124万円 | 97万円 |
| 8か月 | 132万円 | 103万円 |
| 9か月 | 139万円 | 109万円 |
別表Iは、骨折、脱臼、画像上の外傷性所見がある場合など、比較的重い傷害で使われることが多い表です。別表IIは、他覚的所見に乏しいむちうち、打撲、捻挫、軽い挫創などで使われることが多い表です。ただし、診断名だけで機械的に決まるものではありません。
弁護士基準でも、通院期間だけを見ればよいわけではありません。別表IIでは実通院日数の3倍程度、別表Iでは実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定上の通院期間として見ることがあります。
もっとも、医師の指示で自宅療養中心だった、仕事や育児の制約の中でも定期的に受診していた、処方薬やリハビリ指示が継続していたなどの事情があれば、単純な減額が妥当でないと評価される可能性があります。
倍率は「弁護士基準額 ÷ 自賠責基準額」で計算します。
倍率の基本式は、弁護士基準による入通院慰謝料を、自賠責基準による入通院慰謝料で割るだけです。ただし、自賠責基準額は実通院日数に強く左右され、弁護士基準額は入通院期間、傷害類型、通院頻度修正、医療記録に左右されます。
次の表は、3か月通院の例だけで倍率がどれほど変わるかを示します。同じ3か月でも、実通院日数が少ないほど自賠責基準額が小さくなり、倍率が大きく見えることを読み取ってください。
| 3か月通院の例 | 自賠責基準の対象日数 | 自賠責基準額 | 弁護士基準目安 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| むちうち、実通院15日 | 30日 | 12万9,000円 | 53万円 | 約4.11倍 |
| むちうち、実通院30日 | 60日 | 25万8,000円 | 53万円 | 約2.05倍 |
| むちうち、実通院45日 | 90日 | 38万7,000円 | 53万円 | 約1.37倍 |
| 骨折等、実通院30日 | 60日 | 25万8,000円 | 73万円 | 約2.83倍 |
| 骨折等、実通院45日 | 90日 | 38万7,000円 | 73万円 | 約1.89倍 |
次の早見表は、入通院慰謝料だけを比較した代表例です。治療費、休業損害、後遺障害、過失相殺、既払金、弁護士費用、遅延損害金は含めていないため、倍率だけで最終受取額を判断しないことが重要です。
| 事案モデル | 自賠責基準の概算 | 弁護士基準の目安 | 倍率 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| むちうち等、通院1か月、実通院8日 | 6万8,800円 | 19万円 | 約2.76倍 | 短期でも差は出ます。 |
| むちうち等、通院2か月、実通院10日 | 8万6,000円 | 36万円程度 | 約4.19倍 | 実通院日数が少ない例です。 |
| むちうち等、通院3か月、実通院30日 | 25万8,000円 | 53万円 | 約2.05倍 | 比較的よくある差です。 |
| むちうち等、通院6か月、実通院60日 | 51万6,000円 | 89万円 | 約1.72倍 | 通院頻度が一定以上あると倍率は縮みます。 |
| むちうち等、通院6か月、実通院90日 | 77万4,000円 | 89万円 | 約1.15倍 | 自賠責の対象日数が治療期間いっぱいになり差が小さい例です。 |
| 骨折等、通院3か月、実通院30日 | 25万8,000円 | 73万円 | 約2.83倍 | 別表I相当なら差が広がります。 |
| 骨折等、通院6か月、実通院50日 | 43万円 | 116万円 | 約2.70倍 | 治療期間が長く、実通院が中程度の典型例です。 |
| 骨折等、通院6か月、実通院90日 | 77万4,000円 | 116万円 | 約1.50倍 | 通院頻度が高いと倍率は縮みます。 |
| 入院1か月、通院6か月、実通院50日 | 68万8,000円 | 149万円 | 約2.17倍 | 入院を伴う例です。 |
次の横方向の比較は、どの場面で倍率が大きく見えやすいかを相対的に示します。長さが大きいほど倍率の目安が高く、読者は通院頻度や傷害の重さが倍率に与える影響を直感的に確認できます。
一言で整理すると、入通院慰謝料の弁護士基準は自賠責基準の何倍かは固定できません。通院のみの典型例ではおおむね1.5倍から3倍程度、通院日数が少ない場合は4倍前後、通院日数が多い軽症事案では1.1倍台に近づくことがあります。
実通院日数、通院期間、入院、傷害の重さ、治療相当性、120万円枠、過失割合を見ます。
次の重要項目は、入通院慰謝料の倍率を動かす主要な要因です。どれか一つだけで決まるわけではないため、読者は自分の事案にどの要因が当てはまり、どの方向に金額が動くのかを読み取ってください。
自賠責基準では、実通院日数が少ないと対象日数が小さくなり、弁護士基準との倍率が大きく見えやすくなります。
弁護士基準は通院期間が長くなるほど慰謝料額が上がりますが、増加幅は直線的ではありません。
入院は日常生活の自由を直接制限するため、通院のみより高く評価されやすくなります。
むちうち等は別表II、骨折、脱臼、画像所見がある傷害は別表Iが検討されることがあります。
医師の診断、治療計画、症状推移、投薬、リハビリ指示、画像検査が評価の基礎になります。
治療費や休業損害で自賠責の傷害部分が消費されると、自賠責から慰謝料として支払われる余地が小さくなります。
任意保険会社との示談や裁判では、被害者側の過失割合が慰謝料を含む損害額全体に影響します。
整骨院、接骨院、鍼灸、マッサージ等については、症状緩和に役立つことがあります。ただし、法律や保険実務で中核資料となるのは、通常、医師の診断書、診療録、画像所見、診療報酬明細書です。医師の指示や同意、整形外科との併診状況がない場合、治療費や通院日数の評価で争われることがあります。
過失割合については、自賠責保険が被害者救済の観点から任意保険や裁判上の過失相殺より緩やかな扱いになることがあります。しかし、任意保険会社との示談や裁判では、被害者側の過失が損害額全体から控除されるのが基本です。
治療経過と事故態様が、慰謝料評価と後遺障害の検討につながります。
次の時系列は、事故直後から症状固定までに何を記録として残すかを示します。順番に意味があり、初診、専門科受診、リハビリ、症状固定の各段階で資料が残るほど、入通院慰謝料の必要性と相当性を説明しやすくなります。
痛みが軽くても、数時間から数日後に頸部痛、腰痛、頭痛、しびれ、めまい、不眠などが出ることがあります。事故日、症状、受傷機転、痛みの部位を医師に伝えることが重要です。
整形外科、脳神経外科、形成外科、歯科口腔外科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科、心療内科など、症状に応じた評価が入通院慰謝料や後遺障害の判断に影響します。
理学療法、作業療法、物理療法、運動療法などは、症状の持続、改善過程、通院の必要性を示す資料になります。
次の一覧は、事故類型ごとに慰謝料評価で見られやすい資料を整理しています。どの事故でも同じ資料だけで足りるわけではないため、読者は自分の事故類型に応じて、傷害内容、治療経過、事故態様を結びつけて確認してください。
頸椎捻挫、腰椎捻挫、背部痛、頭痛、めまい、しびれが問題になりやすく、通院頻度、医師の所見、症状の一貫性、投薬やリハビリの必要性が重要です。
別表II打ち切り注意手術、ギプス固定、装具、松葉杖、可動域制限、リハビリの長期化があれば、通院のみの軽症事案とは評価が異なります。
別表I画像資料意識障害、健忘、画像所見、神経心理学的検査、職場や家庭での変化が重要です。入通院慰謝料だけでなく、後遺障害、将来介護費、逸失利益も問題になり得ます。
専門科評価後遺障害車両損傷が軽微でも受傷が否定されるとは限りません。ただし、治療の必要性、相当性、期間の妥当性が争われやすくなります。
事故態様因果関係症状固定とは、治療を続けても大きな改善が見込めない状態をいいます。保険会社から治療費打ち切りを打診されたとしても、それだけで医学的に症状固定とは限りません。主治医の判断、症状経過、検査結果、治療内容を踏まえて慎重に検討します。
示談案の総額ではなく、内訳と資料から確認します。
次の表は、保険会社から示談案が届いたときに見るべき項目を整理したものです。総額だけを見ても不足の原因が分からないため、入通院慰謝料、治療費、休業損害、過失割合、既払金を列ごとに確認することが重要です。
| 確認項目 | 見るべき点 |
|---|---|
| 治療費 | 既払いか、未払いか、健康保険や労災との関係はどうか。 |
| 入通院慰謝料 | 4,300円×日数になっていないか。弁護士基準との差はどれくらいか。 |
| 休業損害 | 収入資料、家事従事者性、有給休暇の扱いが正しいか。 |
| 通院交通費 | 自家用車、公共交通機関、タクシーの根拠はあるか。 |
| 後遺障害 | 症状固定後の等級申請が必要ないか。 |
| 過失割合 | 事故態様、実況見分、ドライブレコーダー、信号、速度が正しく反映されているか。 |
| 既払金 | 自賠責、任意保険、労災、健康保険、搭乗者傷害保険などの控除関係は適切か。 |
次の表は、弁護士基準を主張するときに役立つ資料と意味を整理したものです。資料ごとに役割が違うため、医療資料は治療の必要性、事故資料は受傷機転や過失割合、生活資料は休業や支障を示すものとして読み分けてください。
| 資料 | 意味 |
|---|---|
| 交通事故証明書 | 事故の発生、当事者、車両、事故類型を確認する基本資料です。 |
| 診断書 | 傷病名、治療期間、医師の判断を示します。 |
| 診療報酬明細書 | 通院日、治療内容、検査、投薬を確認します。 |
| 診療録、カルテ | 症状経過、検査所見、治療方針を詳細に確認します。 |
| 画像資料 | X線、CT、MRIなど。骨折、靱帯損傷、神経圧迫などの検討に重要です。 |
| リハビリ記録 | 機能障害、改善過程、通院の必要性を示します。 |
| 休業損害証明書 | 休業日、収入減、有給取得を示します。 |
| 家事への支障資料 | 家事従事者の休業損害で重要です。 |
| ドライブレコーダー、現場写真 | 過失割合や受傷機転に関係します。 |
| 痛みや生活支障の記録 | 日常生活制限、睡眠障害、通勤困難などを補助的に示します。 |
次の判断の流れは、保険会社提示を受けた後に確認する順番を示します。上から順に見ることで、自賠責基準に近い提示か、弁護士基準との差があるか、後遺障害や弁護士費用特約の検討が必要かを整理できます。
整数に近ければ、自賠責基準に近い可能性があります。
実通院日数×2か、治療期間日数か、内訳を確認します。
入院期間、通院期間、別表IかIIかを仮に整理します。
通院頻度、120万円枠、後遺障害、過失割合、既払金を見ます。
署名前に資料を整理し、専門家への相談を検討します。
後から確認できるよう、提示書と計算根拠を残します。
弁護士費用特約が使えると、法律相談料や弁護士費用を保険でまかなえる可能性があります。入通院慰謝料の増額幅が数万円から数十万円の事案では費用倒れが問題になりますが、特約があると軽傷事案でも相談や依頼のハードルが下がります。
痛み、しびれ、可動域制限、神経症状、醜状痕、歯牙障害、高次脳機能障害などが残る場合、入通院慰謝料だけで示談する前に後遺障害の検討が必要になることがあります。清算条項のある示談後は追加請求が難しくなるため、症状固定前後の整理が重要です。
むちうち、骨折、入院ありのモデルで、分母と分子を確認します。
次の表は、代表的な5つの計算例をまとめたものです。自賠責基準額、弁護士基準目安、倍率の順に見ると、通院頻度が高いほど倍率が縮み、傷害が重い場合や入院がある場合には差が出やすいことを読み取れます。
| 前提 | 自賠責基準の計算 | 弁護士基準の目安 | 倍率 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| むちうち、通院3か月、実通院30日 | 4,300円×60日=25万8,000円 | 53万円 | 約2.05倍 | 比較的よくある約2倍の例です。 |
| むちうち、通院6か月、実通院60日 | 4,300円×120日=51万6,000円 | 89万円 | 約1.72倍 | 通院頻度が一定以上あり、倍率は縮みます。 |
| むちうち、通院6か月、実通院20日 | 4,300円×40日=17万2,000円 | 36万円前後 | 約2.09倍 | 通院頻度修正で2か月相当を見る例です。 |
| 骨折、通院6か月、実通院50日 | 4,300円×100日=43万円 | 116万円 | 約2.70倍 | 別表I相当で差が広がる例です。 |
| 入院1か月、通院6か月、実通院50日 | 4,300円×160日=68万8,000円 | 149万円 | 約2.17倍 | 入院を含み、評価が複雑になる例です。 |
むちうちで6か月通院、実通院20日の例では、形式的に6か月なら89万円ですが、実通院20日しかないため通院頻度修正が問題になります。別表IIで実通院日数の3倍程度を目安にすると、20日×3=60日、すなわち2か月相当となり、36万円前後が一つの目安になります。
仮に通院頻度が少ない合理的理由があり、6か月相当89万円で評価できるなら約5.17倍になります。しかし、実務上はそのまま89万円と評価されるとは限りません。これが、倍率だけで判断してはいけない典型例です。
次の専門職別の整理は、入通院慰謝料の評価が法律だけで完結しない理由を示しています。各分野が何を確認するかを読むことで、事故態様、医療記録、保険処理、生活再建がどのように金額へつながるかを把握できます。
| 分野 | 関与する専門職 | 入通院慰謝料との関係 |
|---|---|---|
| 現場対応 | 警察官、交通課、鑑識、救急隊員 | 事故態様、受傷機転、過失割合、初動記録に影響します。 |
| 医療 | 整形外科医、脳神経外科医、救急医、看護師、リハビリ職 | 傷病名、治療期間、症状固定、後遺障害、治療必要性を支えます。 |
| 法律 | 弁護士、裁判官、調停委員、法律事務職員 | 弁護士基準の主張、示談交渉、訴訟、証拠整理を担います。 |
| 保険 | 損害保険担当者、自賠責担当者、損害調査員 | 支払基準、既払金、120万円枠、任意保険交渉に関わります。 |
| 鑑定 | 交通事故鑑定人、工学鑑定人、映像解析技術者 | 衝突速度、回避可能性、車両損傷、受傷可能性を分析します。 |
| 車両技術 | 自動車整備士、車体修理業者、査定士 | 修理費、車両損傷、事故の衝撃程度の資料になります。 |
| 生活再建 | 社会保険労務士、医療ソーシャルワーカー、福祉職、心理職 | 労災、傷病手当金、復職、精神的支援、生活支援に関わります。 |
相談を検討する場面、よくある誤解、避けたい対応を整理します。
次の表は、入通院慰謝料について示談前に確認したい場面を整理しています。該当する項目が多いほど、慰謝料だけでなく後遺障害、過失割合、費用負担などの争点が重なりやすいことを読み取れます。
| 状況 | 確認したい理由 |
|---|---|
| 保険会社の慰謝料が4,300円×日数で出ている | 自賠責基準の可能性が高く、弁護士基準との差を検討できます。 |
| 通院3か月以上 | 弁護士基準との差が数十万円になることがあります。 |
| 骨折、脱臼、靱帯損傷、手術がある | 別表I相当、後遺障害、逸失利益を検討する必要があります。 |
| 治療費打ち切りを言われた | 症状固定、治療継続、健康保険、被害者請求などの判断が問題になります。 |
| しびれ、可動域制限、頭痛、めまいが残る | 後遺障害申請の検討が必要になることがあります。 |
| 過失割合に納得できない | 慰謝料だけでなく総額が大きく変わります。 |
| 弁護士費用特約がある | 費用負担を抑えて弁護士基準で交渉できる可能性があります。 |
| 示談書への署名を求められている | 署名後の追加請求が困難になることがあります。 |
次の比較一覧は、よくある誤解と実務上の考え方を並べたものです。誤解だけで示談を進めると判断を誤りやすいため、右列のように一般的な制度説明として確認することが大切です。
| よくある誤解 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 自賠責基準は法律で決まっているから常に正しい金額である | 自賠責基準は強制保険から迅速、公平に支払うための基準であり、民事上の損害賠償として十分とは限りません。 |
| 弁護士基準は必ず自賠責基準の3倍である | 1.2倍程度の事案も、4倍を超える事案もあります。実通院日数、通院期間、傷害類型、入院の有無、120万円枠で変わります。 |
| 通院回数を増やせば慰謝料が必ず増える | 必要性のない通院は認められません。医師の診断、治療内容、症状の推移に照らして、必要かつ相当な通院であることが前提です。 |
| 整骨院に毎日通えばよい | 施術が症状緩和に役立つことはありますが、損害賠償実務では医師の診断、治療方針、画像所見が中心資料です。 |
| 示談後でも後から増額できる | 一般的には、示談書に清算条項が入ると追加請求は難しくなります。症状が残る場合は署名前の確認が重要です。 |
次の一覧は、被害者側で避けたい対応を整理しています。なぜ重要かというと、受診中断、症状の記録不足、示談前確認の不足は、慰謝料だけでなく後遺障害や因果関係の評価にも影響するためです。
受診中断が長いと、症状が軽快した、事故との因果関係が切れた、治療の必要性がないと主張されることがあります。
診療録に残っていない症状は後で立証が難しくなります。痛み、しびれ、めまい、睡眠障害、仕事への影響を過不足なく伝えることが重要です。
提示額が自賠責基準なのか、任意保険基準なのか、弁護士基準との差額がいくらかを確認せずに示談するのは危険です。
症状が残っているのに入通院慰謝料だけで示談すると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できなくなる可能性があります。
一般的には、個別の見通しや対応方針は事故態様、負傷程度、証拠関係、時期、保険契約によって変わります。具体的な判断は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
「一律何倍」ではなく、計算式、別表、通院頻度、120万円枠を総合します。
次のまとめ表は、入通院慰謝料の弁護士基準と自賠責基準の倍率について、最後に押さえるべき結論を整理しています。固定倍率の有無、よくある倍率、差が大きくなる場面、差が小さくなる場面を読み分けてください。
| まとめ | 内容 |
|---|---|
| 固定倍率 | ありません。 |
| よくある倍率 | 1.5倍から3倍程度です。 |
| 通院日数が少ない場合 | 3倍から4倍超になることがあります。 |
| 通院日数が多い軽症事案 | 1.1倍から1.7倍程度に近づくことがあります。 |
| 骨折、入院、手術あり | 2倍以上になることが多いです。 |
| 判断の核心 | 自賠責の計算式、赤い本別表、通院頻度修正、120万円枠、後遺障害を総合することです。 |
次の強調箇所は、示談案を見たときに最初に確認する実務上の入口を示します。4,300円×対象日数で計算されているかを確認すると、自賠責基準に近い提示かどうかを把握しやすくなります。
4,300円×対象日数で計算されているなら、自賠責基準に近い提示である可能性があります。通院期間、傷害の内容、医療記録に照らして弁護士基準との差を概算します。
差額が大きい場合、後遺障害が疑われる場合、過失割合に争いがある場合は、示談前に資料を整理し、専門家への相談を検討する価値があります。入通院慰謝料の金額だけでなく、治療費、休業損害、後遺障害、逸失利益、既払金、過失相殺まで含めて総合的に確認します。