2σ Guide

主幹事証券会社の
選定ポイント

IPO・上場準備で主幹事証券会社を選ぶ際に、企業法務、引受審査、ガバナンス、開示、資本政策、価格形成、RFP、契約条件を横断して確認するための実務ガイドです。

12選定ポイント
100点評価モデル
10段階RFPプロセス
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主幹事証券会社の 選定ポイント

ブランドや手数料だけでなく、上場会社化を支える共同プロジェクトとして判断します。

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主幹事証券会社の 選定ポイント
ブランドや手数料だけでなく、上場会社化を支える共同プロジェクトとして判断します。
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  • 主幹事証券会社の 選定ポイント
  • ブランドや手数料だけでなく、上場会社化を支える共同プロジェクトとして判断します。

POINT 1

  • 主幹事証券会社の選定ポイントの全体像
  • ブランドや手数料だけでなく、上場会社化を支える共同プロジェクトとして判断します。
  • 主幹事証券会社は、審査・助言・市場対話のパートナーです
  • 事業とリスクを正確に伝えられるか
  • 弱点を早期に発見できるか

POINT 2

  • 主幹事証券会社の定義と引受審査の位置づけ
  • 幹事証券会社、取引所審査、EDINET、有価証券届出書の関係を押さえます。
  • 主幹事証券会社とは、IPOにおいて中心的な役割を担う証券会社です。
  • 主幹事証券会社の機能は、上場準備支援、引受審査、上場申請支援、販売・配分、上場後支援に分かれます。

POINT 3

  • 主幹事証券会社の選定ポイント1 ― IPO方針との適合性
  • 市場区分
  • グロース、スタンダード、プライム、TOKYO PRO Marketのどこに強いかを確認します。
  • 案件規模
  • 小型、中型、大型のどのレンジで主幹事実績があるかを見ます。

POINT 4

  • 主幹事証券会社の選定ポイント2 ― 業界理解とエクイティストーリー
  • 会社説明ではなく、投資家が検証できる投資仮説を組み立てます。
  • IPOでは、会社が良い会社であることを説明するだけでは足りません。
  • 投資家は、なぜ上場後に株式を保有する価値があるのかを検証します。
  • 主幹事証券会社の選定では、当社をどれだけ褒めるかではなく、投資家が厳しく見る論点を先に指摘してくれるかを重視します。

POINT 5

  • 主幹事証券会社の選定ポイント3 ― 引受審査の質
  • 厳しいが合理的な審査は、上場後リスクを下げる保険になります。
  • 厳しい主幹事は敵ではなく、早期発見の仕組みです
  • 負担は大きいものの、審査を避けることは上場後のより大きなリスクにつながります。
  • 次の重要ポイントは、審査が厳しい候補会社をどのように評価するかを示しています。

POINT 6

  • 主幹事証券会社の選定ポイント4 ― ガバナンス・内部統制支援力
  • 上場審査は上場時点の数字だけでなく、管理体制の有効性も見ます。
  • 機関設計と取締役会
  • 内部統制と規程運用
  • 規制・不祥事リスク

POINT 7

  • 主幹事証券会社の選定ポイント5 ― 開示・法務リスク対応力
  • 法務論点を投資家が理解できる開示へ翻訳できるかを見ます。
  • 専門用語を並べるだけでは足りず、投資家が理解できる粒度で、過不足なく、将来の虚偽記載リスクを避ける表現にする必要があります。
  • リスク情報は、過度に楽観的でも、抽象的すぎても問題です。

POINT 8

  • 主幹事証券会社の選定ポイント6 ― 資本政策・株主構成への助言力
  • 種類株式と投資契約
  • 普通株式への転換時期、優先株主・VCとの投資契約や株主間契約の整理を確認します。
  • 株式移動とSO
  • 上場前の株式移動、第三者割当、自己株式取得、ストックオプションの発行時期と行使価格を確認します。

まとめ

  • 主幹事証券会社の 選定ポイント
  • 主幹事証券会社の選定ポイントの全体像:ブランドや手数料だけでなく、上場会社化を支える共同プロジェクトとして判断します。
  • 主幹事証券会社の定義と引受審査の位置づけ:幹事証券会社、取引所審査、EDINET、有価証券届出書の関係を押さえます。
  • 主幹事証券会社の選定ポイント1 ― IPO方針との適合性:目標市場、時期、資金調達、株主構成を先に整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

主幹事証券会社の選定ポイントの全体像

ブランドや手数料だけでなく、上場会社化を支える共同プロジェクトとして判断します。

主幹事証券会社は、株式を販売する窓口にとどまらず、資本政策、社内体制、引受審査、取引所審査対応、投資家説明、上場後の市場対話まで関与する中核的な相手方です。選定では、証券会社の知名度や過去実績だけでなく、自社の事業リスクを理解し、上場会社として通用する体制に引き上げられるかを見ます。

次の強調表示は、このページで最も重要な判断軸を表しています。主幹事証券会社を選ぶ場面では、IPOの実行だけでなく上場後の説明責任まで見通すことが重要であり、ここから何を重視して候補を比較するかを読み取れます。

主幹事証券会社は、審査・助言・市場対話のパートナーです

販売力、引受審査、法務・会計・内部統制への理解、公開価格形成、投資家アクセス、上場後支援を一体で評価します。

主幹事証券会社の選定では、候補会社に対して次の4つの問いを投げかけると、単なる提案比較では見えにくい実力差を把握しやすくなります。この一覧は、経営陣、CFO、法務、監査役、監査法人が共通の目線を持つために重要であり、候補会社の回答から実務の深さを読み取れます。

Question 1

事業とリスクを正確に伝えられるか

市場規模、KPI、規制、競争環境、資金使途を投資家が理解できる形に整理できるかを確認します。

Question 2

弱点を早期に発見できるか

法務・会計・内部統制上の課題を上場審査前に洗い出し、改善に伴走できるかを見ます。

Question 3

資本市場戦略を設計できるか

公開価格、投資家層、流動性、上場後IRを含めた設計力を評価します。

Question 4

厳しい議論を続けられるか

数年にわたる準備期間で、根拠ある指摘と現実的な代替案を出せる関係性を確認します。

個別のIPO準備では、業種、株主構成、監査状況、紛争・規制リスク、希望市場、上場時期、証券会社の受託方針によって結論が変わります。具体的な意思決定は、候補証券会社、監査法人、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、内部監査・コンプライアンス担当者等と資料を確認しながら進める必要があります。

Section 01

主幹事証券会社の定義と引受審査の位置づけ

幹事証券会社、取引所審査、EDINET、有価証券届出書の関係を押さえます。

主幹事証券会社とは、IPOにおいて中心的な役割を担う証券会社です。実務上は事務幹事証券会社と呼ばれることもあり、申請会社の上場準備を支援し、引受審査を行い、取引所に対して上場適格性調査に関する報告書を提出する立場になります。

次の比較表は、IPOで混同されやすい用語の違いを整理したものです。役割の違いを理解しておくことは、誰に何を確認すべきかを誤らないために重要であり、候補証券会社との面談で論点を切り分ける手がかりになります。

用語実務上の意味選定で見るポイント
主幹事証券会社案件全体の中心となり、上場準備支援、引受審査、販売、上場後支援を担います。審査力、業界理解、価格形成、投資家アクセス、担当チームを総合評価します。
幹事証券会社IPOに関与する証券会社の総称です。共同主幹事や副幹事が置かれることもあります。誰が最終的にプロジェクトを主導するかを明確にします。
引受審査証券会社が投資家に販売する責任を果たすために、会社内容やリスクを確認する審査です。早期指摘、改善提案、審査部門との連携を確認します。
取引所審査形式要件と実質審査により、上場適格性を取引所が確認します。開示、健全性、ガバナンス、内部管理体制、事業計画への対応力を見ます。
EDINET・届出書・目論見書金融商品取引法上の電子開示と投資家向け開示の中心です。投資家が理解し、投資判断できる開示に仕上げられるかを確認します。

主幹事証券会社の機能は、上場準備支援、引受審査、上場申請支援、販売・配分、上場後支援に分かれます。複数の証券会社に声をかけているだけでは十分ではなく、誰が社内審査部門と向き合い、誰が投資家に説明し、誰が弱点の改善を最後まで支えるのかを確認する必要があります。

Section 02

主幹事証券会社の選定ポイント12項目

IPO方針から契約条件まで、比較すべき評価軸を一覧化します。

主幹事証券会社の選定ポイントは、IPO方針、業界理解、審査、ガバナンス、開示、資本政策、価格形成、販売、進捗管理、チーム、コンプライアンス、契約条件の12項目です。この比較表は候補会社を横並びで見るために重要であり、自社の状況に応じてどの項目へ重みを置くかを読み取ります。

番号選定ポイント何を見るべきか
1IPO方針との適合性目標市場、上場時期、資金調達額、株主構成、成長戦略との相性
2業界理解・エクイティストーリー構築力事業モデル、KPI、規制、競争環境を理解できるか
3引受審査の質厳しさ、早期指摘、改善提案、審査部門との連携
4ガバナンス・内部統制支援力取締役会、監査役等、内部監査、規程、J-SOX対応への助言力
5開示・法務リスク対応力有価証券届出書、Iの部、リスク情報、関連当事者、訴訟、知財、労務
6資本政策・株主構成への助言力種類株式、SO、VC、ロックアップ、売出し、希薄化、支配権
7バリュエーション・公開価格形成力仮条件、ブックビルディング、投資家需要、価格レンジの説明力
8販売網・投資家アクセス機関投資家、個人投資家、海外投資家、長期保有投資家への訴求
9プロジェクトマネジメント力スケジュール、宿題管理、質問対応、経営陣の負荷管理
10チームの質と継続性実際の担当者、公開引受部門、審査部門、IR担当、交代リスク
11コンプライアンス・利益相反管理反社排除、インサイダー情報、守秘、系列関係、貸付・投資関係
12契約条件・費用の合理性アドバイザリー契約、引受手数料、実費、解除、独占、補償条項

赤字の研究開発型企業、海外売上比率の高いSaaS企業、創業家支配の中堅企業、複数VCが入るスタートアップ、規制業種、事業承継型IPOでは、重視すべき項目が異なります。単純な点数だけでなく、会社の課題に合わせた重み付けが必要です。

Section 03

主幹事証券会社の選定ポイント1 ― IPO方針との適合性

目標市場、時期、資金調達、株主構成を先に整理します。

上場準備会社は、グロース市場に上場したい、将来はプライムを目指したいといった市場名から考えがちです。しかし主幹事証券会社を選ぶ前に、時価総額見込み、流通株式比率、流通株式時価総額、公募・売出しの比率、既存株主の売却意向、監査状況、ガバナンス水準、成長可能性、上場後IR体制を仮説化しておく必要があります。

次の一覧は、候補証券会社の得意領域を確認する観点を整理したものです。候補リストに載っていることは出発点にすぎないため、自社の市場・規模・投資家層との相性を見極めることが重要であり、各項目から候補会社の実績の偏りを読み取ります。

市場区分

グロース、スタンダード、プライム、TOKYO PRO Marketのどこに強いかを確認します。

案件規模

小型、中型、大型のどのレンジで主幹事実績があるかを見ます。

投資家層

国内個人、国内機関、海外投資家のどこに販売力があるかを確認します。

会社特性

地方企業、オーナー企業、スタートアップ、規制業種、クロスボーダー案件への経験を見ます。

候補証券会社には、自社と同じ業界・規模・成長ステージのIPO実績があるか、近年の審査厳格化、会計不正、内部統制、公開価格プロセス変更に対応できているかを確認します。

Section 04

主幹事証券会社の選定ポイント2 ― 業界理解とエクイティストーリー

会社説明ではなく、投資家が検証できる投資仮説を組み立てます。

IPOでは、会社が良い会社であることを説明するだけでは足りません。投資家は、なぜ上場後に株式を保有する価値があるのかを検証します。事業モデル、市場規模、成長余地、競争優位、収益性、KPI、リスク、資金使途、経営陣の実行力、ガバナンス、上場後の資本政策を一貫したストーリーにする力が必要です。

次の比較表は、業界ごとに候補証券会社へ確認すべき論点を整理したものです。業界特有の規制やKPIを理解できない候補を選ぶと、投資家説明と開示の精度が下がるため重要であり、自社の業種に近い行から面談で深掘りすべき質問を読み取ります。

業界重視される論点候補会社への確認
SaaS・ITARR、解約率、NRR、CAC、LTV、粗利率、セキュリティ、個人情報、AI利用、ライセンス契約KPIの投資家説明経験、解約率や顧客獲得コストの開示方針
バイオ・ヘルスケア臨床試験、薬機法、知財、共同研究、マイルストーン収入、研究開発費、承認リスク赤字・研究開発型企業の説明経験、知財・共同研究契約の審査経験
製造業・ハードウェア原価計算、棚卸資産、品質保証、リコール、サプライチェーン、輸出管理、環境規制工場実査、在庫評価、品質不正リスクの確認方法
建設・不動産許認可、工事進行基準、瑕疵、反社排除、土地権利、関連当事者取引、借入依存関連当事者取引、行政処分、不動産評価、担保・借入構造の説明経験
金融・決済・暗号資産・フィンテック金商法、資金決済法、AML/CFT、顧客資産管理、システムリスク、当局対応規制当局対応、コンプライアンス部門との連携、規制違反時の開示判断

主幹事証券会社の選定では、当社をどれだけ褒めるかではなく、投資家が厳しく見る論点を先に指摘してくれるかを重視します。

Section 05

主幹事証券会社の選定ポイント3 ― 引受審査の質

厳しいが合理的な審査は、上場後リスクを下げる保険になります。

主幹事証券会社の審査では、大量の質問、資料要求、経営陣・監査役・独立役員へのヒアリング、事業所実査、契約書確認、関連当事者調査、反社チェック、会計処理の確認が続きます。負担は大きいものの、審査を避けることは上場後のより大きなリスクにつながります。

次の重要ポイントは、審査が厳しい候補会社をどのように評価するかを示しています。厳しさの理由と改善提案があるかを見分けることが重要であり、候補会社の発言が一般論か、自社固有の課題に踏み込んでいるかを読み取ります。

厳しい主幹事は敵ではなく、早期発見の仕組みです

審査が緩そうな会社ではなく、厳しいが合理的で、問題の発見から改善まで伴走できる会社を選ぶことが重要です。

引受審査の質を見抜くには、次の質問が有効です。質問への回答から、候補会社が業界特性、成長ステージ、株主構成、会計上の論点まで踏まえているかを確認できます。

  • 当社の事業で、引受審査上もっとも大きいリスクは何だと見ていますか。
  • 直前々期、直前期、申請期で、どの時点までに何を整備すべきですか。
  • 関連当事者取引、役員貸付、創業者取引、親族取引はどの水準まで整理すべきですか。
  • 主要取引先・仕入先への実在性確認や反社チェックはどの範囲で必要ですか。
  • 収益認識、在庫、減損、のれん、研究開発費、ソフトウェア資産計上でどの論点が出やすいですか。
  • 内部監査部門が弱い場合、どのようなロードマップで補強すべきですか。
  • 審査の結果、上場時期を延期すべきと判断する典型例は何ですか。
Section 06

主幹事証券会社の選定ポイント4 ― ガバナンス・内部統制支援力

上場審査は上場時点の数字だけでなく、管理体制の有効性も見ます。

上場審査では、企業内容やリスク情報の開示、企業経営の健全性、コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性、事業計画の合理性が問われます。主幹事証券会社は販売会社であると同時に、上場会社としての管理体制を確認するゲートキーパーでもあります。

次の一覧は、ガバナンスと内部統制支援で確認すべき項目を整理したものです。上場後に初めて整備するのでは遅いため、候補会社がどの領域まで助言できるかが重要であり、自社の不足項目を読み取って面談で確認します。

Governance

機関設計と取締役会

取締役会構成、独立社外役員、監査役会・監査等委員会、指名報酬委員会の設計を確認します。

Control

内部統制と規程運用

内部監査、J-SOX、決裁権限規程、稟議、関連当事者取引管理、証跡管理の支援力を見ます。

Risk

規制・不祥事リスク

個人情報、情報セキュリティ、輸出管理、環境、労務、贈収賄防止への感度を確認します。

法務部門は、契約書・規程・取締役会議事録・株主総会資料のレビュー範囲、運用証跡の確認、重要契約の支配権変更条項や解除条項、係争・クレーム・行政指導の開示判断について、候補会社が形式にとどまらず現実的に助言できるかを確認します。

Section 07

主幹事証券会社の選定ポイント5 ― 開示・法務リスク対応力

法務論点を投資家が理解できる開示へ翻訳できるかを見ます。

IPO書類では、事業内容、経営方針、リスク情報、財務情報、資本政策、株主状況、役員、関連当事者取引、重要契約、訴訟、規制、研究開発、知財、労務、個人情報等が投資家向けに記載されます。専門用語を並べるだけでは足りず、投資家が理解できる粒度で、過不足なく、将来の虚偽記載リスクを避ける表現にする必要があります。

次の比較表は、IPOで問題になりやすい重要契約と確認観点を整理したものです。契約条項は上場時期、資本政策、知財、データ利用、販売戦略に直接影響するため重要であり、どの契約から優先して棚卸しするかを読み取ります。

契約類型確認すべき条項・論点
主要取引先・代理店・OEM・製造委託上場時の同意、独占、競業避止、解除権、過大な違約金、価格改定、品質責任
ライセンス・共同研究・業務提携知財帰属、データ利用、成果物利用、優先交渉権、収益分配、共同開発の終了処理
借入・担保・リース・不動産財務制限条項、期限の利益喪失、担保解除、資本政策への影響、重要拠点の継続利用
株主間契約・投資契約・SO種類株式、優先権、譲渡制限、売却請求、ロックアップ、税制適格性、決議履歴
個人情報・システム利用・特殊報酬委託先管理、データ移転、セキュリティ、報酬条件、退職時処理、開示要否

リスク情報は、過度に楽観的でも、抽象的すぎても問題です。候補会社には、投資家が最も気にするリスク、係争・クレーム・行政指導・不祥事の記載要否、競合・顧客集中・技術陳腐化・規制変更・人材流出・情報漏えいの表現方針、法務部門・外部専門家・監査法人との意見調整方法を質問します。

Section 08

主幹事証券会社の選定ポイント6 ― 資本政策・株主構成への助言力

資本政策の失敗は、上場時期・公開価格・支配権・税務に波及します。

IPO準備では、株式分割、ストックオプション、種類株式の普通株式化、VCの売出し、創業者の持株比率、従業員持株会、資本業務提携、親会社・子会社関係、ロックアップ等が問題になります。資本政策の失敗は、上場直前ではなく初期段階で始まることが多いです。

次の一覧は、候補証券会社に確認すべき資本政策論点をまとめたものです。資本政策は法務・税務・会計・登記が絡むため、主幹事証券会社が専門家を統合できるかが重要であり、自社で未整理の項目を読み取って優先順位を付けます。

種類株式と投資契約

普通株式への転換時期、優先株主・VCとの投資契約や株主間契約の整理を確認します。

株式移動とSO

上場前の株式移動、第三者割当、自己株式取得、ストックオプションの発行時期と行使価格を確認します。

売出しと希薄化

創業者・役員・VCの売出し比率、ロックアップ、公募増資による希薄化、資金使途を確認します。

支配権と独立性

親会社が存在する場合の独立性、利益相反、少数株主保護、資本業務提携先との関係を確認します。

弁護士は会社法、投資契約、株主間契約、取締役会・株主総会決議を確認し、税理士は株式評価やストックオプション、組織再編税制を検討します。公認会計士は会計処理と注記を、司法書士は登記を確認します。主幹事証券会社には、これらの専門家をつなぐ進行管理が求められます。

Section 09

主幹事証券会社の選定ポイント7 ― バリュエーション・公開価格形成力

公開価格は高ければよいものではなく、投資家との信頼にも影響します。

公開価格は、既存株主の売却収入、会社の資金調達額、上場後の株価形成、投資家との信頼関係に影響します。高すぎる公開価格は上場後の株価低迷を招くおそれがあり、低すぎる公開価格は既存株主や会社にとって機会損失となります。

次の一覧は、価格形成で候補会社に確認する要素をまとめたものです。評価手法と投資家需要の説明力は公開価格の合理性に直結するため重要であり、候補会社がどの根拠で価格レンジを組み立てるかを読み取ります。

類似会社の選定

PER、PBR、EV/EBITDA、PSR、ARR倍率などを、自社の業種と収益構造に合わせて使えるかを確認します。

評価手法

投資家需要の把握

プレマーケティング、ブックビルディング、仮条件の根拠、価格レンジ外での決定可能性を説明できるかを見ます。

需要調査

日程と開示の調整

上場承認日から上場日までの期間短縮、上場日の幅を持った記載、訂正届出書や訂正目論見書の実務を理解しているかを確認します。

制度変更

候補会社には、想定時価総額レンジ、類似会社の選定理由、投資家が最も重視するKPI、高すぎる公開価格のリスク、上場後の株価形成、売出株式数の変更可能性、社内決議・開示・投資家対応の実務への影響を質問します。

Section 10

主幹事証券会社の選定ポイント8 ― 販売網・投資家アクセス

誰に売るかは、誰に会社を理解してもらうかという問題です。

主幹事証券会社の販売力は、単なる販売数量ではありません。上場後に会社を理解し、中長期的に株主として支える投資家にアクセスできるかが重要です。国内個人投資家、国内機関投資家、海外機関投資家、成長株投資家、バリュー投資家、小型株投資家、セクター特化投資家、ESG・インパクト投資家、事業会社・戦略投資家など、会社ごとに訴求すべき相手は異なります。

次の比較表は、大手証券会社と中堅・ネット系証券会社で見えやすい強みの違いを整理したものです。会社の規模、業種、流動性、上場時期によって最適な販売網は変わるため重要であり、自社の案件に合う投資家接点を読み取ります。

候補類型見えやすい強み注意すべき観点
大手証券会社広い販売網、機関投資家アクセス、海外販売、大型案件対応、ブランド力案件規模や担当チームの優先度、経営陣との距離、実務担当者の継続性
中堅・ネット系証券会社小型・中型案件への機動性、経営陣との距離、特定市場・投資家層への強み海外販売や機関投資家接点、上場後IR支援、審査体制の厚み

販売力を見抜くには、自社の株式を理解しやすい投資家層、国内機関投資家と個人投資家の比率、海外投資家への販売可能性、投資家への需要調査、上場後の流動性、個人投資家向け説明と機関投資家向け説明の分け方、株価下落時のIR支援を質問します。

Section 11

主幹事証券会社の選定ポイント9 ― プロジェクトマネジメント力

IPOは法務・会計・人事・IT・IRを横断する総合プロジェクトです。

IPO準備では、経営陣、CFO・経営企画、法務、経理・財務、人事・労務、内部監査、情報システム、事業部門、取締役会事務局、株主総会事務局、IR、監査役、外部専門家、監査法人、株式事務代行機関が関与します。主幹事証券会社の進行管理が弱いと、宿題が遅れ、監査法人との調整が遅れ、取引所審査への回答が遅れ、上場時期が延期される可能性が高まります。

次の時系列は、主幹事証券会社に求められる進行管理の範囲を表しています。IPO準備は直前の書類作成だけではなく、期ごとのタスク設計が重要であり、どの時期に何を終わらせるべきかを読み取ります。

直前々期

体制整備と課題棚卸し

監査対応、資本政策、規程、重要契約、関連当事者、反社チェック、内部監査計画を整理します。

直前期

運用証跡と審査準備

取締役会・監査役会の運用、決算早期化、証跡管理、上場申請資料の準備を進めます。

申請期

引受審査と取引所対応

質問対応、経営者・監査役インタビュー、確認書、有価証券届出書、目論見書の整合性を管理します。

承認後

価格形成と市場対話

仮条件、ブックビルディング、投資家説明、訂正書類、上場後IRへの引継ぎを確認します。

法務部門は、重要契約リスト、契約書レビューの粒度、取締役会・株主総会議事録の確認範囲、株式・新株予約権の発行履歴、許認可・行政対応、訴訟・クレーム、規程整備、反社チェック、個人情報・情報セキュリティ・委託先管理の確認方法を初期面談で確認します。

Section 12

主幹事証券会社の選定ポイント10 ― チームの質と継続性

提案時の上席者ではなく、日々動く実務チームを確認します。

主幹事証券会社の選定でよくある失敗は、提案時の上席者や有名担当者の印象だけで決めることです。IPO準備では、日々の資料確認、質問対応、社内調整を行う実務担当者の力量が極めて重要です。

次の一覧は、主幹事候補の実務チームで確認すべき役割を整理したものです。誰がどの段階で関与するかを把握しないと、提案内容と実際の支援に差が出るため重要であり、面談に呼ぶべき担当者を読み取れます。

Coverage

営業・窓口担当と公開引受

経営陣との窓口、資料依頼、申請準備、社内調整を担う中心担当者を確認します。

Review

引受審査部門

どのタイミングから審査部門が関与し、過去の指摘をどの程度一般化して説明できるかを見ます。

Market

資本市場・販売・IR

価格形成、販売戦略、機関投資家対応、海外販売、上場後IR支援の担当者を確認します。

候補会社には、実際の主担当者、その担当者のIPO経験件数・業界経験・担当範囲、異動時のバックアップ体制、定例会参加者、販売部門や機関投資家担当の関与時期、海外投資家対応、上場後支援の継続性を確認します。相性も単なる感情論ではなく、厳しい指摘や延期判断を建設的に議論できるかという実務上の評価項目です。

Section 13

主幹事証券会社の選定ポイント11 ― コンプライアンス・利益相反管理

発行会社と投資家の間に立つ構造上、利益相反の管理が欠かせません。

主幹事証券会社は、発行会社を支援する一方で、投資家に対して株式を販売する立場でもあります。発行会社は高い公開価格を望み、投資家は合理的な価格を望むため、公開価格形成には緊張関係が生じます。さらに、グループ銀行の融資、証券会社グループによる出資、M&Aアドバイザー兼務、既存株主やVCとの関係、同業他社IPOの並行支援なども利益相反になり得ます。

次の一覧は、候補会社に確認すべきコンプライアンス体制を整理したものです。守秘、情報隔壁、配分方針、反社排除は上場審査と投資家保護に直結するため重要であり、形式的な説明にとどまっていないかを読み取ります。

インサイダー情報管理

重要情報のアクセス制限、部門間の情報遮断、外部専門家との共有手続を確認します。

利益相反管理

融資、出資、M&A、既存株主との関係、同業案件との関係を開示・管理できるかを見ます。

反社会的勢力排除

役員、主要株主、取引先、顧問、外注先、代理店等の確認範囲と記録保存を確認します。

配分と顧客保護

販売部門、リサーチ、審査、投資銀行部門の役割分担と配分方針を確認します。

反社排除は、単なる形式手続ではありません。役員、主要株主、取引先、顧問、外注先、販売先、仕入先、代理店、業務提携先等の確認が必要となるため、主幹事候補が確認範囲と証跡管理を具体的に説明できるかを見ます。

Section 14

主幹事証券会社の選定ポイント12 ― 契約条件・費用の合理性

手数料の安さだけでなく、業務範囲と解除・独占・補償を確認します。

主幹事証券会社の費用には、アドバイザリー契約に基づく報酬、引受手数料、実費、外部専門家費用、販売関連費用等が含まれ得ます。費用は重要ですが、手数料の安さだけで選ぶと、実務支援の薄さ、チームの小ささ、販売力の弱さ、審査体制の弱さ、上場後支援の限定が後から問題になる可能性があります。

次の比較表は、主幹事候補との契約で確認すべき条項を整理したものです。契約条件は主幹事変更や上場延期時の自由度を左右するため重要であり、費用だけでなくリスク配分を読み取ります。

確認項目主な論点
業務範囲・報酬助言範囲、引受手数料、成功報酬、実費負担、中止・延期時の費用
期間・解除契約期間、解除事由、方針変更時の対応、候補側の支援不足時の解除権
独占・専任IPO以外のM&A、私募、資金調達、借入、資本業務提携に及ぶか
守秘・情報管理インサイダー情報、個人情報、外部専門家との共有、情報管理体制
利益相反・反社・責任制限利益相反の開示、反社会的勢力排除条項、補償、準拠法・管轄

独占条項は、主幹事証券会社がリソースを投入するために合理性がある場合もありますが、範囲と期間が過度に広いと発行会社の選択肢を狭めます。共同主幹事や副幹事の選任に制限がないかも確認します。

Section 15

RFPによる主幹事証券会社の選定手順

提案依頼方式を使うと、候補比較と取締役会説明がしやすくなります。

上場準備会社が主幹事証券会社を選定する際は、可能であればRFP方式を採用すると比較しやすくなります。各候補会社の考え方を同じ前提で確認でき、取締役会や監査役等への説明責任も果たしやすくなります。

次の時系列は、RFPによる候補選定の標準的な進め方を表しています。候補会社へ公平に情報を出し、同じ基準で評価することが重要であり、各段階で社内が準備すべき資料と判断の順番を読み取れます。

Step 1

社内方針整理

上場目的、目標市場、希望時期、資金調達額、売出し方針、既存株主の意向を整理します。

Step 2

ロングリスト作成とNDA

候補会社を作り、重要情報を開示する前に守秘義務契約を締結します。

Step 3

情報提供と質問受付

事業概要、財務、資本政策、株主構成、主要契約、監査状況、リスク概要を提供し、公平に回答します。

Step 4

提案書・面談・点数化

上場戦略、課題、スケジュール、チーム、価格形成、販売、費用を提出させ、事前基準で評価します。

Step 5

確認と取締役会報告

可能な範囲で評判を確認し、選定理由、候補比較、リスク、契約条件を取締役会へ報告します。

RFPで候補会社に提出させるべき項目は、IPO戦略仮説、目標市場、想定上場時期、審査上の課題、資本政策上の課題、バリュエーション、投資家ターゲット、販売戦略、社内体制整備、スケジュール、担当チーム、類似案件実績、利益相反管理、報酬・費用、上場後支援です。

Section 16

主幹事証券会社の選定ポイントを100点で点数化する

定量評価は一例として使い、会社ごとの重点項目で調整します。

スコアリングモデルは、候補会社の比較を取締役会や監査役等に説明するための補助線です。会社の状況に応じて重みを調整し、点数だけでなく評価コメントと補完策をセットで残すことが重要です。

次の横方向の比較は、100点モデルにおける配点の大きさを表しています。点数が大きい項目ほど候補比較で差がつきやすいため重要であり、自社でどの評価軸を厚く見るべきかを読み取ります。

引受審査の質
15点
価格形成・販売
15点
IPO方針
10点
業界理解
10点
内部統制支援
10点
開示・法務
10点
資本政策
10点
チーム・PM
10点
利益相反
5点
契約条件
5点
15点項目は最も重視する領域、10点項目は主要評価、5点項目は小さく見えても失敗時の影響が大きい領域です。

評価コメントは、90点以上を極めて有力、75点から89点を有力候補、60点から74点を条件付き候補、60点未満を慎重判断の目安とします。ただし、特定分野の弱点を契約や外部専門家で補えるか、共同主幹事を置く必要があるかも併せて検討します。

Section 17

専門職別に見る主幹事証券会社の選定チェックリスト

法務、会計、税務、登記、内部監査で見るべき論点を分けます。

主幹事証券会社の選定は、経営者やCFOだけで完結しません。専門職ごとに着眼点が異なるため、選定段階でそれぞれの懸念を集めると、候補会社の支援範囲を具体的に確認できます。

次の一覧は、専門職別に見るべき代表的な項目を整理したものです。担当領域ごとに未整備事項が違うため重要であり、自社のどの部門が候補会社との面談に参加すべきかを読み取ります。

弁護士・企業内法務

株主間契約、投資契約、種類株式、SO、議事録、関連当事者、重要契約、訴訟、許認可、個人情報、知財、労務、反社、内部通報、インサイダー情報を確認します。

法務

公認会計士・監査法人

収益認識、原価計算、棚卸資産、減損、ソフトウェア会計、研究開発費、連結範囲、内部統制、不正リスク、決算早期化、J-SOXを確認します。

会計

税理士

株式評価、ストックオプション税制、役員報酬、グループ内取引、組織再編税制、国際税務、移転価格、消費税、繰越欠損金を確認します。

税務

司法書士・商事法務担当

定款、発行可能株式総数、種類株式、新株予約権、株式分割、単元株式、譲渡制限撤廃、機関設計、役員変更、公告方法を確認します。

登記

内部監査・コンプライアンス担当

内部監査計画、決裁権限規程、職務分掌、稟議、証跡、内部通報、反社チェック、贈収賄防止、情報セキュリティ、委託先管理、研修履歴を確認します。

統制

日本公認会計士協会のIPO準備ガイドブックでも、会計監査を受ける前に準備しておくべきポイントが整理されています。監査の視点から見た課題も、主幹事候補の審査・助言範囲と合わせて確認します。

Section 18

主幹事証券会社の選定で避けるべき失敗

名前、手数料、経営者の印象だけで決めると、後から問題化しやすくなります。

主幹事証券会社の選定では、有名な証券会社、低い手数料、経営者との相性といった分かりやすい材料に引っ張られがちです。しかし、案件規模、業界、上場時期、社内体制との相性が悪ければ、最適とは限りません。

次の一覧は、選定時に避けるべき典型的な失敗を整理したものです。初期判断の偏りは上場時期の遅延や契約トラブルにつながるため重要であり、自社の選定プロセスに抜けがないかを読み取ります。

名前だけで選ぶ

ブランドは安心材料の一つですが、担当チームと案件適合性を確認しないと実務支援に差が出ます。

手数料だけで選ぶ

安さの背後に支援不足、販売力不足、審査体制不足があると、結果的に高くつくことがあります。

厳しい指摘を嫌う

合理的な指摘をする候補を排除すると、上場後のリスクが残りやすくなります。

経営者だけで決める

CFO、法務、経理、監査役、内部監査、監査法人、外部専門家の視点を入れる必要があります。

契約条件を軽視する

独占、解除、費用、補償、守秘、利益相反、個人情報、反社条項の確認が必要です。

上場後支援を軽視する

IPO後のIR、決算説明、適時開示、株主対応、追加ファイナンスも選定ポイントです。

Section 19

主幹事証券会社の選定で注意すべきレッドフラッグ

断定的な提案や不透明な費用、法務・会計軽視には慎重な検討が必要です。

候補証券会社の提案が魅力的に見えても、実務上のリスクを見落としている場合があります。上場準備は数年単位で続くため、初期面談で違和感がある候補については、追加質問や他候補比較で慎重に確認します。

次の一覧は、慎重に検討すべき兆候を整理したものです。候補会社の発言や体制に早期の警告サインがないかを見極めることが重要であり、面談後の評価メモに残すべき観点を読み取れます。

結果を断定する

上場や高い時価総額を保証するような説明は、実務上の不確実性を軽視している可能性があります。

課題を指摘しない

審査上の課題、法務・会計・内部統制の論点、類似案件の説明が曖昧な場合は注意します。

体制が不明確

担当チーム、引受審査部門、販売部門、上場後支援の関与が不明確な候補は確認が必要です。

費用・契約が不透明

独占条項が広すぎる、費用が不明瞭、解除条件が不利、利益相反の説明がない場合は慎重に見ます。

反社・関連取引を形式視する

反社チェックや関連当事者取引を形式的にしか見ない候補は、審査対応で手戻りが出やすくなります。

実務担当者への姿勢が悪い

経営者には迎合し、法務・経理・若手担当者には高圧的な場合、長期の協働に支障が出ます。

Section 20

主幹事証券会社を変更すべき場合

変更は可能でも負担が大きいため、経緯と理由を整理して慎重に進めます。

一度選定した主幹事証券会社を変更することは可能ですが、時間的・実務的負担が大きいです。引受審査、資料蓄積、信頼関係、取引所対応、投資家説明に影響するため、変更理由を取締役会で整理し、監査法人、弁護士、既存株主、候補証券会社と調整します。

次の判断の流れは、主幹事変更を検討する際の確認順序を表しています。感情的な不満だけで動くと準備全体に影響するため重要であり、変更が必要な事情と改善可能な事情を分けて読み取ります。

主幹事変更を検討する判断の流れ

支援状況を整理

案件を進める意思、担当チームの継続性、審査方針、スケジュールの合理性を確認します。

重大な見解相違や利益相反があるか

上場戦略、契約条件、コンプライアンス、監査法人・法務との信頼関係を確認します。

ある
変更候補と影響を比較

資料引継ぎ、審査やり直し、投資家説明、契約解除条件を整理します。

ない
改善条件を協議

担当者追加、定例会の再設計、期限管理、外部専門家の補完を検討します。

変更を検討すべき典型例は、候補会社が案件を正式に進める意思を示さない、担当チームが頻繁に交代する、審査方針が不透明、利益相反が解消できない、契約条件が過度に不利、上場時期が合理的理由なく先送りされる、経営陣・監査法人・法務との信頼関係が失われた場合です。

Section 21

主幹事証券会社の選定ポイントに関するFAQ

一般的な考え方を整理します。個別事情により結論は変わります。

Q1. 主幹事証券会社はいつ選ぶべきですか。

一般的には、上場希望時期から逆算して早期に接触することが多いとされています。ただし、事業計画、監査法人の関与、資本政策、内部管理体制の整備状況によって適切な時期は変わる可能性があります。具体的な進め方は、監査法人や弁護士等の専門家を交えて検討する必要があります。

Q2. 監査法人と主幹事証券会社はどちらを先に決めるべきですか。

一般的には、監査法人の選定・ショートレビュー・会計監査対応はかなり早期に必要になるとされています。ただし、主幹事候補との初期相談を並行することもあり、会社の監査状況や上場時期によって順序は変わります。具体的には、会計・法務・資本政策の資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q3. 大手証券会社を選べば安全ですか。

一般的には、大手証券会社には販売網や実績という強みがあるとされています。ただし、案件規模、業界、上場時期、担当チームによっては中堅証券会社の方が相性がよい可能性もあります。具体的な候補比較は、案件適合性、審査力、販売戦略、契約条件を資料化して検討する必要があります。

Q4. 主幹事証券会社は複数にできますか。

一般的には、共同主幹事という形が採られる場合もあります。ただし、役割分担、責任範囲、審査、販売、スケジュール管理が複雑になる可能性があります。具体的には、誰が最終的にプロジェクトを主導するかを契約・運用の両面で確認する必要があります。

Q5. 厳しい指摘を受けた場合、別の証券会社に変えた方がよいですか。

一般的には、合理的な根拠に基づく厳しい指摘は、上場後リスクを下げるための重要な情報とされています。ただし、根拠が不明確、改善方法を示さない、事業理解が乏しい場合は、他候補の意見も確認する余地があります。具体的な判断は、指摘内容と改善可能性を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q6. 主幹事候補にどこまで情報を開示すべきですか。

一般的には、NDA締結後に必要な範囲で段階的に開示するとされています。ただし、個人情報、営業秘密、未公表の重要事実、取引先情報の性質によって管理方法は変わります。具体的には、アクセス制限、目的限定、資料ログ、情報管理規程を確認したうえで開示範囲を決める必要があります。

Q7. 主幹事証券会社の選定は取締役会決議が必要ですか。

一般的には、会社の規模、社内規程、契約内容、費用、上場準備方針によって判断が変わるとされています。IPOは重要な経営判断になり得るため、取締役会への報告・承認が行われることもあります。具体的な決議要否は、定款、取締役会規程、契約条件を確認し、弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q8. どの候補も主幹事を引き受けてくれない場合はどう考えればよいですか。

一般的には、事業規模、収益性、監査、内部統制、資本政策、株主構成、規制リスク、訴訟、反社チェック、成長ストーリー、上場時期等に課題がある可能性があります。ただし、候補会社の受託方針によっても結論は変わります。具体的には、断られた理由を可能な範囲で確認し、監査法人・弁護士・CFO等と改善ロードマップを作る必要があります。

Section 22

候補証券会社への質問票テンプレート

RFPや初期面談で、会社・戦略・審査・価格・契約を同じ粒度で確認します。

候補証券会社への質問票は、各社の提案を同じ前提で比較するための道具です。曖昧なプレゼンだけで判断しないことが重要であり、回答の具体性、担当者の関与、法務・会計・販売の連携度を読み取ります。

次の比較表は、質問票に入れるべき主要項目を整理したものです。RFPや面談の前に社内で質問を統一しておくと、候補会社間の差を説明しやすくなります。

質問領域質問例
会社・チーム担当予定チーム、各担当者のIPO経験、担当者交代時のバックアップ、引受審査部門の関与時期、上場後支援
IPO戦略適した市場区分、想定上場時期、主要な審査課題、エクイティストーリー、投資家に説明すべきKPI
審査・内部統制重点確認項目、関連当事者取引、反社チェック、重要契約、内部監査・内部統制の改善ロードマップ
価格・販売バリュエーションレンジ、類似会社、仮条件・公開価格決定、投資家ターゲット、上場後の流動性とIR支援
契約・費用報酬体系、実費負担、独占条項、解除条件、利益相反の可能性と管理方法
Section 23

取締役会向けメモで説明すべき主幹事証券会社の選定理由

候補比較、推奨理由、リスク、契約条件、今後の予定を整理します。

取締役会に主幹事証券会社の選定を報告・付議する際は、候補会社をなぜ選ぶのか、どのリスクをどう管理するのか、契約条件が合理的かを説明できる形にする必要があります。

次の判断の流れは、取締役会向けメモに入れる説明順序を表しています。取締役が意思決定に必要な情報を追いやすくすることが重要であり、どの資料を添付すべきかを読み取ります。

取締役会向け説明の順序

IPO方針の確認

上場目的、想定市場、時期、資金調達方針、売出し方針を示します。

候補会社の選定プロセス

ロングリスト、NDA、RFP、面談、提案書、評価基準を説明します。

候補会社比較と推奨理由

実績、業界理解、審査力、販売力、チーム、費用、契約条件を比較します。

リスクと契約条件

担当者交代、延期、費用、利益相反、独占条項、審査課題、解除条件を整理します。

今後のスケジュール

契約締結、キックオフ、ショートレビュー、体制整備、引受審査、取引所審査を示します。

取締役会メモには、候補会社の比較表、評価点数、重要質問への回答、契約条件の概要、利益相反の有無、主幹事変更時の影響、今後の社内タスクを添えると説明しやすくなります。

Section 24

主幹事証券会社の選定ポイントは上場後まで見て判断する

IPOの実行だけでなく、上場会社として生き残る力を誰と整えるかを決めます。

主幹事証券会社は、IPOを実行する販売パートナーであると同時に、上場会社としての資格を整えるための審査・助言・市場対話のパートナーです。選定では、ブランド、手数料、過去実績だけでなく、自社の業界を理解しているか、成長ストーリーを投資家に説明できるか、厳格な引受審査を行えるか、法務・会計・内部統制上の弱点を早期に指摘できるかを総合的に判断します。

次の重要ポイントは、最終判断で確認すべき視点をまとめたものです。上場はゴールではなく説明責任の始まりであるため重要であり、主幹事証券会社を誰と何のために選ぶのかを読み取ります。

選定は、上場できるかではなく上場会社として生き残れるかで判断します

取締役会、法務、CFO、監査役、監査法人、外部専門家、内部監査、コンプライアンス担当が一体となって検討することが、上場準備の成功確率を高めます。

IPOは、投資家、取引所、証券会社、監査法人、規制当局、株主、従業員、取引先に対する説明責任を負う局面です。主幹事証券会社の選定は、その説明責任を誰とともに果たすかを決める経営判断です。

Reference

主幹事証券会社の選定ポイントの参考情報源

公的機関・自主規制機関・法令情報を中心に整理しています。

公的機関・市場運営者の情報

  • 日本取引所グループ「上場関係者と役割|新規上場基本情報」
  • 日本取引所グループ「上場関係者と役割|主幹事候補証券会社一覧」
  • 日本取引所グループ「上場審査基準」
  • 日本取引所グループ「上場審査基準概要(グロース市場)」
  • 日本取引所グループ「新規上場ガイドブック」
  • 日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンス」
  • 日本取引所グループ「新規上場会社情報」

自主規制機関・専門団体の情報

  • 日本証券業協会「IPOにおける公開価格の設定プロセスの見直しについて」
  • 日本証券業協会「新規上場時の会計不正事例を踏まえた引受審査に関するガイドライン」
  • 日本公認会計士協会「株式新規上場(IPO)のための事前準備ガイドブック」

法令・電子開示の基礎資料

  • 金融庁「EDINETについて」
  • e-Gov法令検索「金融商品取引法」
  • e-Gov法令検索「企業内容等の開示に関する内閣府令」
  • e-Gov法令検索「会社法」