2σ Guide

従業員10人未満でも
就業規則を作るメリット

常時10人未満の事業場では、就業規則の作成・届出義務が発生しない場合があります。それでも、労働条件、職場秩序、懲戒、休職、情報管理を早めに文書化すると、小規模企業の紛争予防と成長準備に役立ちます。

10人 作成・届出義務の目安
12領域 整備で見直す主な労務論点
年1回 定期見直しの目安
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従業員10人未満でも 就業規則を作るメリット

常時10人未満の事業場では、就業規則の作成・届出義務が発生しない場合があります。

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従業員10人未満でも 就業規則を作るメリット
常時10人未満の事業場では、就業規則の作成・届出義務が発生しない場合があります。
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  • 従業員10人未満でも 就業規則を作るメリット
  • 常時10人未満の事業場では、就業規則の作成・届出義務が発生しない場合があります。

POINT 1

  • 従業員10人未満でも就業規則を作るメリットの全体像
  • 義務の有無だけでなく、労務管理を事前に設計する意味を確認します。
  • 従業員10人未満の就業規則は、小さな会社の法務基盤です
  • 義務の有無だけで価値を判断しない
  • 少人数ほど判断が属人化しやすい

POINT 2

  • 従業員10人未満の就業規則で押さえる法的前提
  • 作成・届出義務、事業場単位、周知、記載事項を整理します。
  • 労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と行政官庁への届出を求めています。
  • e-Gov電子申請の手続情報でも、就業規則(変更)届の手続対象者は常時10人以上の労働者を使用する使用者とされています。
  • このため、常時10人未満の事業場では、同条に基づく作成・届出義務が発生しない場合があります。

POINT 3

  • 従業員10人未満でも就業規則を作る12のメリット
  • メリット1 ― 労働条件を明確化できます
  • メリット2 ― 口頭合意とローカル慣行のリスクを抑えられます
  • メリット3 ― 懲戒処分の根拠を整備できます
  • メリット4 ― 退職、解雇、休職のトラブルを予防できます
  • メリット5 ― 労働時間、休日、休暇管理を標準化できます
  • メリット6 ― ハラスメント防止と職場秩序の基礎になります
  • メリット7 ― 情報管理、営業秘密、個人情報、IT利用を統制できます
  • メリット8 ― 採用力と定着率を高める材料になります
  • メリット9 ― 10人到達時に慌てず法定義務へ移行できます
  • メリット10 ― 助成金、融資、M&A、デューデリジェンスへの備えになります
  • メリット11 ― 経営者と管理職の判断を標準化できます
  • メリット12 ― 紛争時の証拠価値と説明責任を確保できます
  • 労働条件、懲戒、情報管理、採用、外部審査まで幅広く効果があります。

POINT 4

  • 従業員10人未満の就業規則に特に入れたい条項と注意点
  • 基準を説明しにくい
  • 懲戒や解雇が不安定になる

POINT 5

  • 従業員10人未満の就業規則は小さく作り正確に運用する
  • 雛形の丸写しを避け、個別契約や周知記録と整合させる考え方です。
  • 弁護士の視点
  • 社会保険労務士の視点
  • 企業内法務の視点

POINT 6

  • 従業員10人未満の就業規則を作る手順
  • 1. 現在の労働条件を棚卸し:雇用契約、求人票、勤怠、賃金、休暇、退職、休職、情報管理を確認します。
  • 2. 規程案と実態が一致していますか:制度を入れすぎていないか、運用できるかを確認します。
  • 3. 先に制度を修正します:不利益変更や個別契約との関係を確認し、説明方針を整えます。
  • 4. 周知と記録へ進みます:配布、説明、受領確認、改訂履歴を残して運用します。

POINT 7

  • 従業員10人未満の就業規則を業種別に考える
  • 同じ就業規則でも、事業内容により優先すべき条項が変わります。
  • スタートアップ
  • 飲食店・小売店
  • 医療・介護・福祉

POINT 8

  • 従業員10人未満の就業規則に関するFAQ
  • 一般的な制度説明として、よくある疑問を整理します。
  • Q1. 従業員が9人なら就業規則は不要ですか
  • Q2. パート・アルバイトも10人の人数に含まれますか
  • Q3. 役員や業務委託者も人数に含まれますか

まとめ

  • 従業員10人未満でも 就業規則を作るメリット
  • 従業員10人未満でも就業規則を作るメリットの全体像:義務の有無だけでなく、労務管理を事前に設計する意味を確認します。
  • 従業員10人未満の就業規則で押さえる法的前提:作成・届出義務、事業場単位、周知、記載事項を整理します。
  • 従業員10人未満の就業規則に特に入れたい条項と注意点:小規模企業で紛争化しやすい条項と、作成時の落とし穴を整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

従業員10人未満でも就業規則を作るメリットの全体像

義務の有無だけでなく、労務管理を事前に設計する意味を確認します。

従業員10人未満でも就業規則を作るメリットは、罰則回避だけではなく、成長前の制度設計、紛争予防、説明責任の確立にあります。小規模会社では経営者と従業員の距離が近く、口頭の合意や慣行で柔軟に運用されやすい一方、認識違い、属人的判断、退職時の紛争、残業代請求、ハラスメント対応の遅れ、懲戒処分の不透明さ、採用時の説明不足が起きやすくなります。

このページで強調する結論は、就業規則を「行政に提出する書類」だけとして見るのではなく、労働条件、職場秩序、懲戒、退職、休職、ハラスメント対応、情報管理、採用後の処遇、組織成長を支える基礎規程として見ることです。個別事情によって実務対応は変わるため、具体的な作成・変更・運用では、業種、雇用形態、勤務実態、賃金制度、既存契約、労使慣行、最新の法改正を確認する必要があります。

次の強調表示は、10人未満の段階で就業規則を検討する理由を一文でまとめたものです。義務がないかどうかではなく、事後対応を減らすために何を先に決めておくかを読み取ることが重要です。

従業員10人未満の就業規則は、小さな会社の法務基盤です

経営者の頭の中にあるルールを言語化し、従業員に説明し、同じ基準で運用し、紛争時に証拠として示せる状態を作ることが、最大の実務上のメリットです。

次の3つの整理は、「10人未満なら不要」という判断に潜む落とし穴を示しています。上から順に、法定義務だけで判断する危うさ、属人的運用の危うさ、成長後に修正する難しさを確認してください。

Point 01

義務の有無だけで価値を判断しない

就業規則は法定義務の履行だけでなく、労働条件と服務規律を体系化し、労使双方の期待値をそろえる規範文書として機能します。

Point 02

少人数ほど判断が属人化しやすい

経営者、店長、現場責任者ごとに説明や判断が変わると、不公平感、退職、未払賃金請求、SNS上の不満、採用難につながる可能性があります。

Point 03

10人到達後の修正は難しくなりやすい

手当、休暇、残業、テレワーク、兼業、私物端末利用などを後から規程化すると、不利益変更や既存慣行との調整が問題になりやすくなります。

就業規則を早期に整備することは、柔軟性を失わせるためではありません。むしろ、会社が認める原則と個別事情に応じた例外を分け、柔軟な運用を説明可能にするための枠組みです。

Section 02

従業員10人未満でも就業規則を作る12のメリット

労働条件、懲戒、情報管理、採用、外部審査まで幅広く効果があります。

従業員10人未満でも就業規則を作るメリットは、法定義務の先取りではなく、企業統治の先取りにあります。従業員が3人でも、労働時間、賃金、休暇、退職、ハラスメント、機密情報、懲戒の問題は生じ得ます。

次の一覧は、就業規則を整備する12の主なメリットを示しています。左から番号、領域、具体的な効用の順に読むと、単なる文書作成ではなく、会社の判断基準をそろえる作業だと分かります。

No領域主な効用
1労働条件始業・終業、休憩、休日、賃金、退職などの認識違いを減らします。
2口頭合意・慣行全員に共通する原則と、個別事情による例外を区別しやすくします。
3懲戒・服務規律禁止行為、処分の種類、手続を明確にし、処分の根拠を整えます。
4退職・解雇・休職引継ぎ、貸与品返還、休職期間、復職判断などを整理できます。
5労働時間・休暇勤怠記録、時間外労働、有給休暇、振替休日、代休を標準化できます。
6ハラスメント相談、調査、プライバシー保護、不利益取扱い禁止を明示できます。
7情報管理秘密保持、個人情報、端末、SNS、生成AI利用を統制できます。
8採用・定着制度が明確な会社として、求職者や従業員の安心材料になります。
910人到達時法定義務が発生する段階で慌てず、届出手続へ移行しやすくなります。
10助成金・融資・M&A制度文書、勤怠、給与、36協定などを説明する基盤になります。
11管理職判断現場責任者が会社のルールに基づいて説明しやすくなります。
12紛争時の証拠周知記録と一貫した運用があれば、会社の説明責任を支えます。

メリット1 ― 労働条件を明確化できます

求人票では週休2日と記載していたのに繁忙期に土曜出勤がある、賞与を業績次第と考えていたのに毎年必ず出るものと理解されている、休憩時間中に電話対応が発生しているといったずれは、小規模会社で起きやすい紛争の芽です。就業規則により、始業・終業、休憩、休日、時間外労働、年次有給休暇、賃金計算期間、支払日、手当、欠勤控除、退職手続を一つの文書で確認できます。

メリット2 ― 口頭合意とローカル慣行のリスクを抑えられます

小規模会社では「今日は早く帰ってよい」「この人だけ在宅勤務を認める」といった柔軟な対応が起きやすいです。就業規則は、全員に共通して適用する原則と、個別事情に応じて認める例外を分ける道具になります。例外対応を電子記録で残す運用と組み合わせると、善意の特別扱いが後に会社を拘束するリスクを減らせます。

メリット3 ― 懲戒処分の根拠を整備できます

無断欠勤、顧客への暴言、機密資料の私用メール転送、SNSで顧客情報を示唆する投稿、ハラスメントなどが起きた場合、会社は注意、指導、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、懲戒解雇を検討する可能性があります。就業規則に服務規律、禁止行為、懲戒の種類、懲戒事由、処分決定手続、弁明機会を定めておくと、処分の根拠と手続を説明しやすくなります。

メリット4 ― 退職、解雇、休職のトラブルを予防できます

一人の退職が事業に大きく影響する小規模会社では、退職申出の時期、引継ぎ、貸与品返還、競業避止、顧客情報の持出し、未消化有給休暇、最終給与、退職証明書、解雇予告、休職期間満了、復職判断を曖昧にしないことが重要です。休職規定は従業員を排除するためではなく、療養と雇用継続の可能性を整理するための規定です。

メリット5 ― 労働時間、休日、休暇管理を標準化できます

始業前の準備、終業後の片付け、着替え、朝礼、研修、移動時間、持ち帰り仕事、チャット対応、休日の顧客対応が労働時間に当たるかは実態で判断されます。就業規則で所定労働時間、休憩、休日、勤怠記録、遅刻・早退、欠勤、有給休暇、振替休日、代休を整理し、36協定、勤怠システム、賃金台帳、給与計算、管理職教育と一体で運用する必要があります。

メリット6 ― ハラスメント防止と職場秩序の基礎になります

ハラスメント対策は企業規模に関係なく必要です。10人未満の会社では人間関係が濃密で、相談窓口も経営者本人になりやすいため、相談した人が報復や不利益取扱いを恐れやすい面があります。就業規則にハラスメント禁止、相談手続、調査協力義務、プライバシー保護、不利益取扱い禁止、懲戒対象行為を定めると、会社の方針を明確にできます。

メリット7 ― 情報管理、営業秘密、個人情報、IT利用を統制できます

顧客名簿、契約書、請求書、会員情報、技術資料、ソースコード、デザインデータ、営業ノウハウ、SNSアカウント、クラウドストレージ、チャットツール、生成AIへの入力内容は重要資産です。就業規則や関連規程で秘密保持、個人情報保護、端末利用、クラウド利用、SNS投稿、生成AI利用、退職時のデータ返還・削除、アカウント管理を定める価値があります。

メリット8 ― 採用力と定着率を高める材料になります

求職者は、給与額だけでなく、休日、休暇、残業、評価、在宅勤務、育児・介護、ハラスメント対応、退職時の扱いを見ています。従業員10人未満の会社が就業規則を整備していることは、小さいながら労務管理を真面目に行っている会社という信頼につながります。規程整備だけで職場が良くなるわけではありませんが、説明と運用の土台になります。

メリット9 ― 10人到達時に慌てず法定義務へ移行できます

10人に達してから就業規則を作る場合、労働時間、賃金、休日、休暇、退職、懲戒、育児・介護、ハラスメント、情報管理を短期間で整える必要があります。5人、6人、7人の段階で簡潔な規程を作っておけば、成長に合わせて改訂し、10人に達した時点で法定手続に沿って届出へ移行しやすくなります。

メリット10 ― 助成金、融資、M&A、デューデリジェンスへの備えになります

助成金では、賃金規程、正社員転換制度、賞与・退職金制度、労働時間制度の整備や運用が問題となることがあります。金融機関、投資家、取引先、M&Aの買主、IPO支援者、監査法人、専門家が会社を確認する場面では、就業規則、賃金規程、雇用契約書、勤怠記録、給与台帳、36協定、社会保険加入状況、未払残業代リスク、ハラスメント対応履歴が確認対象になります。

メリット11 ― 経営者と管理職の判断を標準化できます

会社が成長すると、店長、マネージャー、リーダー、事務担当者が労務判断を担うようになります。就業規則がないと、遅刻、有給休暇、在宅勤務、ハラスメント相談、退職申出への対応が現場責任者ごとに変わりやすくなります。規程があれば、管理職は自分の好みではなく会社のルールに基づいて説明できます。

メリット12 ― 紛争時の証拠価値と説明責任を確保できます

労務紛争では、何がルールだったのか、従業員に説明されていたのか、会社は一貫して運用していたのかが問われます。就業規則、周知記録、実際の運用がそろっていれば、労働審判、訴訟、労働基準監督署対応、行政指導、社内調査、M&Aデューデリジェンスで会社の判断を説明しやすくなります。ただし、法令に反する規定、不合理な規定、周知されていない規定、実態と離れた規定は、管理不備を示す材料になり得ます。

Section 03

従業員10人未満の就業規則に特に入れたい条項と注意点

小規模企業で紛争化しやすい条項と、作成時の落とし穴を整理します。

10人未満の会社では、最初から大企業並みの分厚い規程を作るより、実態に合い、守れる条項を正確に置くことが重要です。規程に書いた内容は、従業員から権利として主張される可能性があるため、導入する制度と導入しない制度を分けて考える必要があります。

次の一覧は、10人未満の会社が特に検討したい条項を示しています。番号の順番は、入社から日常勤務、トラブル対応、退職時対応へ進む流れを表しており、自社で実際に運用できるかを読み取ることが重要です。

01

試用期間

期間、本採用拒否の事由、延長の有無、賃金、社会保険加入の扱いを明確にします。試用期間中でも自由に解雇できるわけではありません。

採用
02

労働時間と勤怠記録

始業・終業、休憩、休日、時間外労働の申請、勤怠記録、直行直帰、出張、在宅勤務時の扱いを定めます。

時間管理
03

年次有給休暇

付与、取得手続、時季変更、半日単位・時間単位の有無、取得義務への対応を定めます。理由確認が過度にならない運用も重要です。

休暇
04

賃金と控除

基本給、手当、割増賃金、欠勤控除、遅刻早退控除、締切日、支払日、支払方法、昇給、賞与の有無を定めます。

賃金
05

服務規律

誠実勤務、業務命令、無断欠勤禁止、虚偽報告禁止、会社財産の私的利用禁止、秘密保持、SNS利用、顧客対応を定めます。

秩序
06

懲戒

懲戒の種類と事由、弁明機会、手続、処分の均衡を明確にします。減給処分には労働基準法上の制限があるため注意が必要です。

注意
07

ハラスメント防止

各種ハラスメント、カスタマーハラスメント、相談窓口、調査、プライバシー保護、不利益取扱い禁止を定めます。

相談
08

休職と復職

私傷病欠勤後の休職、休職期間、診断書、復職判断、試し出勤、期間満了時の扱いを定めます。

休職
09

退職と解雇

退職申出、退職日、引継ぎ、貸与品返還、退職後の秘密保持、解雇事由、解雇予告、自然退職、定年を定めます。

退職
10

情報管理とIT利用

会社端末、私物端末、クラウド、メール、チャット、SNS、生成AI、パスワード、顧客情報、退職時のデータ削除を定めます。

情報

次の一覧は、就業規則を作らない場合に起きやすいリスクをまとめたものです。各項目は、会社の基準を説明できない状態から、採用・取引・資金調達での不利につながる流れとして読むと、早期整備の意味が分かります。

基準を説明しにくい

過去の運用、口頭説明、メール、チャット、給与明細、求人票、個別契約が断片的な証拠となり、会社に不利に解釈される可能性があります。

懲戒や解雇が不安定になる

問題行動に早期対応したくても、処分根拠や手続が不明確だと、処分できない、または処分後に争われるという状況になりやすいです。

労働時間・賃金の誤解が広がる

残業代、固定残業代、手当、休憩、休日出勤、欠勤控除、有給休暇の運用が担当者ごとに変わりやすくなります。

10人到達時の変更コストが上がる

従業員数が増えてから制度を整えると、これまで認められていた扱いがなくなったと受け止められる可能性があります。

採用・取引・資金調達で不利になり得る

就業規則がないことが直ちに違法とは限りませんが、外部からは労務管理が未整備である印象を与えることがあります。

次の一覧は、就業規則を作る場合に注意したいリスクを示しています。作成すること自体を目的にせず、書いた内容を実際に守れるか、従業員へ周知できるかを読み取ってください。

会社に不利な義務を不用意に書く

支給予定のない手当、長すぎる休職期間、広すぎる特別休暇、義務化するつもりのない賞与、退職金を入れると、後に権利主張の根拠になる可能性があります。

実態と違う規定を書く

実際の始業時刻、休憩、固定残業代、勤怠記録と規程が食い違うと、規程自体が管理不備を示す材料になり得ます。

周知をしない

作成して経営者のパソコンに保存しただけでは、労働者に対する効力が争われる可能性があります。

改訂手続を軽く扱う

従業員に不利益な変更では、合理性、必要性、不利益の程度、代償措置、説明・協議、周知が問題になります。

複雑な制度を専門家確認なしで入れる

変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制、固定残業代、退職金、歩合給、兼業・副業、競業避止、テレワークは専門的な設計が必要になりやすいです。

Section 04

従業員10人未満の就業規則は小さく作り正確に運用する

雛形の丸写しを避け、個別契約や周知記録と整合させる考え方です。

従業員10人未満の会社では、最初から大企業並みの分厚い就業規則を作る必要はありません。むしろ、実態に合わない大部の規程は危険です。評価制度がないのに詳細な昇格・降格制度を書く、運用できない休職審査委員会を書く、存在しない部署名を書く、法定以上の休暇を不用意に約束する、支給予定のない手当を書くことは、後の紛争原因になります。

次の比較表は、最初の就業規則で現実的に検討しやすい章立てを示しています。上から順に、入社、勤務、賃金、秩序、健康、退職、情報管理へ進む構成として読み、自社で本当に運用できる項目に絞ることが重要です。

主な内容設計時の見方
総則目的、適用範囲、定義です。正社員、パート、有期契約者の扱いを曖昧にしないことが重要です。
採用・試用期間採用手続、労働条件の明示、試用期間、本採用です。求人票や労働条件通知書と整合させます。
異動・業務命令配置、職務変更、出張、在宅勤務などです。変更範囲を過度に広げすぎず、実態に合わせます。
労働時間・休暇始業・終業、休憩、休日、有給休暇、時間外労働です。勤怠記録や36協定と連動させます。
賃金基本給、手当、割増賃金、締切日、支払日、賞与です。支給予定のない制度を書かないことが重要です。
服務規律・懲戒禁止行為、秘密保持、ハラスメント、懲戒手続です。処分の根拠と手続を明確にします。
安全衛生・休職健康管理、私傷病、休職、復職です。小規模会社でも長期欠勤時の対応を先に決めます。
退職・解雇退職申出、引継ぎ、貸与品返還、解雇事由です。退職時の情報管理と証明書対応も含めます。
情報管理・雑則個人情報、端末、SNS、生成AI、改訂、施行日です。退職後のデータ削除やアカウント管理まで確認します。

厚生労働省のモデル就業規則は論点把握に有益ですが、そのまま貼り付けることは適切ではありません。モデルにある制度を自社にも導入したことになってしまうリスクがあるため、特別休暇、休職期間、退職金、手当、定年後再雇用、表彰制度は特に慎重に確認します。

次の5つの視点は、就業規則を複数の専門領域から見るための整理です。法的証拠、日常運用、社内ルール体系、人件費、内部統制という違いを読み取ると、どの専門家に確認すべきかを判断しやすくなります。

Legal

弁護士の視点

解雇、懲戒、未払残業代、ハラスメント、競業避止、秘密保持、退職勧奨、休職期間満了、雇止めでは、規程の文言、周知、運用、個別契約との関係が争点になり得ます。

Labor

社会保険労務士の視点

勤怠管理、給与計算、有給休暇、社会保険、労働保険、育児・介護休業、36協定、助成金申請は、就業規則と密接につながります。

Inhouse

企業内法務の視点

契約書、個人情報保護規程、情報セキュリティ規程、内部通報規程、反社排除、SNSポリシー、生成AI利用ルールと整合させる必要があります。

Finance

会計・税務の視点

人件費の発生根拠、賞与、退職金、手当、未払費用、引当、M&Aデューデリジェンスに影響します。

Control

内部統制の視点

採用、労働時間、休暇、ハラスメント相談、情報漏えい時対応の担当と承認を明確にし、最低限の牽制構造を作ります。

就業規則を作る際は、既存の雇用契約書、労働条件通知書、求人票、内定通知、賃金台帳、勤怠記録、給与明細、過去のメールやチャットでの説明を確認します。個別契約で就業規則より有利な条件を定めている場合、その個別合意が残ることがあります。就業規則は、会社の既存労働条件を棚卸しする作業でもあります。

周知では、作業場への掲示・備付け、書面交付、電子媒体への保存、クラウドストレージ共有、社内チャットでのリンク共有、入社時説明、改訂時通知などが考えられます。配布日、説明日、説明資料、受領確認、投稿履歴、説明会のメモ、版数管理を残すことで、聞いていない、見たことがないと争われるリスクを抑えられます。

Section 05

従業員10人未満の就業規則を作る手順

現状把握から周知、版管理、年1回の見直しまでを流れで確認します。

就業規則の作成では、現在の働き方を棚卸しし、法令上の最低基準を確認し、自社で運用できる制度だけを書き、従業員へ説明し、周知記録を残すことが重要です。育児・介護休業関係のように改正が多い領域は、最新資料の確認が欠かせません。

次の時系列は、10人未満の会社が就業規則を作成・運用する基本手順を表しています。上から下へ進むほど、文書作成から説明、証跡管理、定期見直しへ進むため、各段階で止まらず記録まで残すことを読み取ってください。

Step 01

現状を棚卸しします

人数、雇用形態、勤務場所、労働時間、残業、賃金、休暇、試用期間、退職、休職、ハラスメント、情報管理、既存契約、求人票を確認します。

Step 02

法令上の最低基準を確認します

労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法、個人情報保護法などを確認します。

Step 03

自社に合う制度だけを書きます

退職金、賞与、裁量労働、変形労働時間制などは、実施予定や運用要件を満たすかを確認してから記載します。

Step 04

従業員説明を行います

目的を、従業員を縛るためではなく、労働条件と職場ルールを明確にし、双方のトラブルを防ぐためと説明します。

Step 05

周知し、版管理します

施行日、改訂日、版数、変更履歴を管理し、最新版がどれかを明確にします。配布や電子共有の記録も残します。

Step 06

定期的に見直します

少なくとも年1回、または従業員増加、新しい雇用形態、賃金制度変更、テレワーク開始、育児・介護対象者、法改正、M&A検討などのタイミングで見直します。

次の判断の流れは、作成前後に確認すべき分岐を表しています。上から順に進み、実態と規程がずれている場合や従業員に不利益な変更が含まれる場合は、専門家確認や説明設計を先に行う必要があると読み取ってください。

就業規則作成前後の確認順序

現在の労働条件を棚卸し

雇用契約、求人票、勤怠、賃金、休暇、退職、休職、情報管理を確認します。

規程案と実態が一致していますか

制度を入れすぎていないか、運用できるかを確認します。

ずれがあります
先に制度を修正します

不利益変更や個別契約との関係を確認し、説明方針を整えます。

一致しています
周知と記録へ進みます

配布、説明、受領確認、改訂履歴を残して運用します。

次のチェックリストは、作成時に見落としやすい15項目をまとめたものです。番号順に確認すると、人数判断、既存契約との整合、主要条項、周知、見直しまでを一度に点検できます。

No確認項目見るべきポイント
1常時使用する労働者数事業場単位で確認します。
2パート・アルバイト・有期契約者人数判断に含めて確認します。
3雇用契約書・労働条件通知書・求人票規程案と矛盾していないか確認します。
4始業・終業、休憩、休日、休暇実態どおりに記載します。
5賃金、手当、控除、割増賃金計算方法が明確か確認します。
6賞与、退職金、特別休暇不用意な約束になっていないか確認します。
7懲戒事由と懲戒の種類根拠と手続を明確にします。
8ハラスメント相談と不利益取扱い禁止相談者保護と調査手続を確認します。
9秘密保持、個人情報、SNS、IT利用退職時の返還・削除も含めます。
10休職、復職、退職、解雇手続と判断資料を明確にします。
11育児・介護休業関係最新法令に合わせます。
12従業員説明目的、変更点、適用時期、経過措置を伝えます。
13周知方法と周知記録配布日、説明日、受領確認を残します。
14施行日、改訂日、版数最新版を特定できるようにします。
15年1回以上の見直し予定法改正や制度変更に合わせて更新します。
Section 06

従業員10人未満の就業規則を業種別に考える

同じ就業規則でも、事業内容により優先すべき条項が変わります。

就業規則は、業種や働き方によって重点が変わります。共通のひな形だけで済ませるのではなく、自社で実際に起きやすいトラブルを先に想定することが重要です。

次の一覧は、代表的な事業類型ごとに重視したい論点を整理したものです。各項目では、働き方、情報管理、労働時間、安全衛生のどこにリスクが集中するかを読み取ってください。

Startup

スタートアップ

創業メンバーと初期従業員の距離が近く、労働時間、裁量、ストックオプション、リモートワーク、兼業、秘密保持、知的財産、競業避止が問題になりやすいです。

Shop

飲食店・小売店

シフト、遅刻欠勤、休憩、着替え、開店準備、閉店作業、レジ金、顧客対応、カスタマーハラスメント、SNS投稿を明確にします。

Care

医療・介護・福祉

資格、夜勤、シフト、感染症対応、利用者情報、身体的接触、ハラスメント、虐待防止、記録、休職、メンタルヘルスが重要です。

IT

IT・クリエイティブ

リモートワーク、成果物の権利帰属、ソースコード、デザインデータ、生成AI、私物端末、外部サービス、秘密保持、競業・副業を整えます。

Field

建設・運送・現場作業

労働時間、移動時間、安全衛生、資格、事故対応、車両管理、飲酒、薬物、熱中症、協力会社との関係を重視します。

これらの類型では、就業規則だけでなく、賃金規程、育児・介護休業規程、テレワーク規程、ハラスメント防止規程、情報セキュリティ規程、パートタイマー就業規則などを分けて整備する方法もあります。ただし、最初から分冊を増やしすぎると運用が難しくなるため、人数や管理体制に合わせて段階的に整えることが現実的です。

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従業員10人未満の就業規則に関するFAQ

一般的な制度説明として、よくある疑問を整理します。

Q1. 従業員が9人なら就業規則は不要ですか

一般的には、労働基準法第89条の作成・届出義務は常時10人以上の労働者を使用する事業場に発生するとされています。ただし、義務が発生しない場合でも、労働条件や職場ルールを明確にするメリットがあります。具体的な人数判断や運用は、事業場の実態を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q2. パート・アルバイトも10人の人数に含まれますか

一般的には、パートやアルバイトも、常態として雇用されていれば人数判断に含まれるとされています。ただし、勤務実態、雇用形態、事業場単位の判断によって確認点が変わる可能性があります。具体的には、労働者数の資料を整理して所轄労働基準監督署や専門家に確認する必要があります。

Q3. 役員や業務委託者も人数に含まれますか

一般的には、労働基準法上の労働者に当たるかどうかで考えるとされています。取締役などの役員や業務委託者でも、名称だけでなく、指揮命令、時間場所の拘束、報酬の労務対価性などの実態で判断が変わる可能性があります。個別の見通しは、契約書と働き方の資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q4. 10人未満でも労働基準監督署に届け出るべきですか

一般的には、10人未満で届出義務がない場合、まず重要なのは実態に合った就業規則を作成し、従業員に周知し、運用することとされています。任意届出の扱いは地域や実務確認を要する場合があります。必要性がある場合は、所轄労働基準監督署または社会保険労務士に確認する必要があります。

Q5. 従業員の同意がなければ作れませんか

一般的には、就業規則の作成自体について常に全従業員の個別同意が必要というわけではないとされています。ただし、既存の個別契約や労働条件を不利益に変更する場合には、個別同意や労働契約法上の合理性が問題となる可能性があります。説明と周知の方法は、変更内容を確認して専門家へ相談する必要があります。

Q6. 社員とパートで別々の就業規則が必要ですか

一般的には、雇用形態によって労働時間、賃金、賞与、退職金、異動、休職、定年などが大きく異なる場合、正社員用とパートタイマー用を分ける方法があります。ただし、別規程にする場合でも、不合理な待遇差や説明義務が問題になる可能性があります。具体的な構成は、雇用形態ごとの実態を整理して検討する必要があります。

Q7. 就業規則があれば未払残業代リスクはなくなりますか

一般的には、就業規則は労働時間や割増賃金のルールを定める基盤ですが、それだけで未払残業代リスクがなくなるわけではないとされています。勤怠管理、36協定、給与計算、管理職教育、業務量調整が伴わなければ、リスクが残る可能性があります。具体的には、勤怠記録と給与計算資料を確認する必要があります。

Q8. 就業規則があれば問題行動のある従業員をすぐ解雇できますか

一般的には、就業規則に解雇事由や懲戒事由を定めることは重要ですが、解雇や懲戒解雇には客観的合理性と社会的相当性が必要とされています。注意指導、改善機会、証拠、手続、処分の均衡によって判断が変わる可能性があります。個別の対応方針は、資料を整理して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q9. テレワーク規程は必要ですか

一般的には、在宅勤務、リモートワーク、直行直帰、モバイルワークを行う場合、就業場所、労働時間管理、通信費、情報セキュリティ、私物端末、事故対応、業務報告、健康管理を定めることが望ましいとされています。ただし、業務内容や勤務実態で必要な規定は変わります。具体的には、運用実態を確認して検討する必要があります。

Q10. どの専門家に相談すべきですか

一般的には、就業規則の作成・届出・日常の労務運用は社会保険労務士が中心的に関与することが多いとされています。解雇、懲戒、ハラスメント、未払残業代、労働審判、訴訟、M&A、競業避止、秘密保持など紛争性が高い論点は、弁護士の関与が必要になる可能性があります。賃金制度、退職金、助成金、税務、会計、内部統制を含む場合は、関係専門家と連携することが考えられます。

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従業員10人未満でも就業規則を作るメリットのまとめ

少人数のうちにルールを言語化することが、柔軟な経営を支えます。

従業員10人未満でも就業規則を作るメリットは、将来の届出義務に備えることだけではありません。経営者の頭の中にあるルールを言語化し、従業員に説明し、管理職が同じ基準で運用し、紛争時に証拠として示し、成長時に制度を拡張できるようにすることです。

次の強調表示は、このページ全体の結論を整理したものです。少人数の会社では、厳格な官僚的文書よりも、簡潔で実態に合い、守れるルールであることを読み取ってください。

就業規則は柔軟な経営を説明可能にする基礎です

法的義務が生じる前に就業規則を作る会社は、従業員との関係を偶然や信頼だけに委ねず、透明で再現可能な仕組みによって支えようとしている会社です。その姿勢が、採用、定着、コンプライアンス、成長、紛争予防における大きなメリットになります。

Reference

参考資料

公的資料と法令情報を中心に整理しています。

公的資料・法令情報

  • 厚生労働省「モデル就業規則について」
  • e-Gov電子申請「就業規則(変更)届(各事業場単位による届出)」
  • e-Gov法令検索「労働契約法」
  • 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「就業規則に記載する事項・就業規則の効力」
  • 石川労働局労働基準部監督課「就業規則作成・届出に関するFAQ」
  • 厚生労働省「スタートアップ労働条件 ― 就業規則・書類の保存 Q&A」
  • 厚生労働省「確かめよう労働条件 ― 就業規則で必ず記載しておかなければならない事項はあるのですか」
  • 厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
  • 厚生労働省「あかるい職場応援団 ― ハラスメントに関する法律とハラスメント防止のために講ずべき措置」
  • 厚生労働省「キャリアアップ助成金」
  • 厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」