2σ Guide

カスハラ被害に遭った従業員が
会社に求められる保護措置

単独対応の解除、相談窓口、事実確認、証拠保全、配慮措置、不利益取扱いの禁止、再発防止まで、会社に求める対応を体系的に整理します。

4段階 即時対応から組織対応まで
10項目 会社の基本義務
2026年10月 措置義務の施行予定
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カスハラ被害に遭った従業員が 会社に求められる保護措置

単独対応の解除、相談窓口、事実確認、証拠保全、配慮措置、不利益取扱いの禁止、再発防止まで、会社に求める対応を体系的に整理します。

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カスハラ被害に遭った従業員が 会社に求められる保護措置
単独対応の解除、相談窓口、事実確認、証拠保全、配慮措置、不利益取扱いの禁止、再発防止まで、会社に求める対応を体系的に整理します。
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  • カスハラ被害に遭った従業員が 会社に求められる保護措置
  • 単独対応の解除、相談窓口、事実確認、証拠保全、配慮措置、不利益取扱いの禁止、再発防止まで、会社に求める対応を体系的に整理します。

POINT 1

  • カスハラ被害に遭った従業員が会社に求められる保護措置の全体像
  • まず、会社に求める保護措置の結論と、法改正・安全配慮義務・労災実務が交差する理由を整理します。
  • 会社に求める核心は、単独対応の解除、相談受付、事実確認、被害者保護、不利益取扱いの禁止、再発防止です。
  • 今すぐ危険から離す
  • 事実を記録して客観化する

POINT 2

  • カスハラの定義と会社が見るべき判断軸
  • 顧客の苦情すべてがカスハラになるわけではありません。誰の、どこでの、どのような言動が問題になるのかを確認します。
  • カスハラの基本構造
  • 職場で行われる顧客等の言動
  • 社会通念上許容される範囲を超える

POINT 3

  • カスハラ被害で会社に求める4段階の保護措置
  • 1. 危険を止める:一人対応を解除し、上司・管理職・警備・警察などに引き継ぐ。
  • 2. 事実を残す:発生日時、発言、証拠、目撃者、心身への影響を記録する。
  • 3. 会社の対応を求める:相談窓口、人事、法務、産業保健スタッフに正式に共有する。
  • 4. 相談先を広げる:労働局、労働基準監督署、警察、弁護士等を検討する。
  • 5. 再発防止へつなげる:記録、マニュアル、研修、顧客対応基準へ反映する。

POINT 4

  • カスハラ対策の法改正と会社の基本義務
  • 1. 精神障害の労災認定基準改正:心理的負荷評価表に、顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた場面が追加されました。
  • 2. 東京都条例が施行:東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が施行され、社会的標準を示す資料としても参照されるようになりました。
  • 3. 改正法が公布:カスハラ防止措置が事業主の雇用管理上の措置義務として明確化されました。
  • 4. 防止指針が公布:方針の明確化、相談体制、事後対応、悪質事案への対処、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止などが具体化されました。
  • 5. 措置義務の施行予定:会社にとって、カスハラ対策はより直接的な雇用管理上の義務として扱われます。

POINT 5

  • カスハラ被害の即時対応 ― 一人で対応させない
  • 1. 離す:従業員を相手方から物理的・心理的に離す。
  • 2. 確認する:要求内容、言動、時間、場所、証拠の有無を確認する。
  • 3. 分ける:正当な苦情部分と不当・悪質な言動部分を分ける。
  • 4. 引き継ぐ:管理職、法務、警備、専門部署が複数名で対応する。
  • 5. 重大事案を外部へつなぐ

POINT 6

  • カスハラ相談と証拠保全で会社に求める確認
  • 相談窓口が形式だけで終わらないよう、受付記録、事実確認、証拠保全を具体化します。
  • 相談窓口は形式だけでは足りない
  • カスハラか微妙でも相談できる
  • 事実関係を迅速・正確に確認する

POINT 7

  • カスハラ被害者への配慮措置と不利益取扱いの禁止
  • 雇用上の不利益
  • 解雇、雇止め、契約更新拒否、降格、減給、賞与減額、評価低下。
  • 勤務上の不利益
  • シフト削減、希望しない配置転換、担当外し、孤立する配置。

POINT 8

  • 悪質なカスハラ顧客への会社対応と限界
  • 会社は顧客に対しても毅然と対応できますが、業種・契約・法令・公共性による限界もあります。
  • 会社は顧客に対しても対応できる
  • サービス提供拒否には限界もある
  • 対応者を限定する

まとめ

  • カスハラ被害に遭った従業員が 会社に求められる保護措置
  • カスハラ被害に遭った従業員が会社に求められる保護措置の全体像:まず、会社に求める保護措置の結論と、法改正・安全配慮義務・労災実務が交差する理由を整理します。
  • カスハラの定義と会社が見るべき判断軸:顧客の苦情すべてがカスハラになるわけではありません。誰の、どこでの、どのような言動が問題になるのかを確認します。
  • カスハラ被害で会社に求める4段階の保護措置:即時対応から組織対応まで、どの段階で何を会社に求めるかを時系列で整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

カスハラ被害に遭った従業員が会社に求められる保護措置の全体像

まず、会社に求める保護措置の結論と、法改正・安全配慮義務・労災実務が交差する理由を整理します。

カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラは、単なる困ったクレーム対応ではありません。顧客、取引先、施設利用者、保護者、患者、利用者家族、近隣住民、問い合わせ者など、事業に関係する外部者の言動が社会通念上許容される範囲を超え、従業員の就業環境を害する場合には、労働問題、民事責任、刑事事件、労災、メンタルヘルス、個人情報保護、消費者対応、障害者差別解消、広報危機管理が同時に問題になります。

次の強調表示は、このページの結論を一文で示すものです。読者にとって重要なのは、カスハラ被害が個人の我慢や接客能力だけの問題ではなく、会社が組織として安全を確保する場面だと読み取ることです。

会社に求める核心は、単独対応の解除、相談受付、事実確認、被害者保護、不利益取扱いの禁止、再発防止です。

これらは福利厚生にとどまらず、労働契約法上の安全配慮義務、改正労働施策総合推進法上の雇用管理上の措置義務、厚生労働省指針、労災実務、裁判例の流れと関係します。

次の一覧は、カスハラ被害で会社に求める主要な措置を3つの視点に分けたものです。全体像を先に押さえることで、個別の顧客対応、社内相談、証拠保全、心身のケアをばらばらに考えず、会社に何を求めるかを整理できます。

Safety

今すぐ危険から離す

一人対応の中止、上司や責任者への交代、顧客との引き離し、退店要請、通話終了、警察通報、救護などが中心です。

Evidence

事実を記録して客観化する

相談窓口への申告、録音・録画・メール・チャット・SNS投稿・目撃者情報の保全により、再発防止と労災・法的対応の土台を作ります。

Recovery

働き続けられる環境を戻す

担当変更、勤務調整、休養、産業医・カウンセリング、医療機関受診支援、個人情報保護、不利益取扱いの禁止が重要です。

2025年6月公布の改正法により、2026年10月1日からカスハラ対策は事業主の雇用管理上の措置義務として施行予定です。2026年2月26日に公布された厚生労働省指針は、方針の明確化、相談体制、事後対応、悪質事案への対処、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止などを具体化しています。

ただし、正当な苦情や合理的な意見表明までカスハラとして排除することはできません。商品・サービスの不備、接客上の説明不足、障害者差別解消法上の合理的配慮、消費者の正当な申入れ、各業法上のサービス提供義務にも留意しながら、不当・悪質な言動から従業員を守る線引きが重要です。

Section 01

カスハラの定義と会社が見るべき判断軸

顧客の苦情すべてがカスハラになるわけではありません。誰の、どこでの、どのような言動が問題になるのかを確認します。

カスハラの基本構造

厚生労働省のカスタマーハラスメント防止指針は、職場におけるカスハラを、職場で行われる顧客等の言動、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えること、その言動により労働者の就業環境が害されることという3要素で整理しています。

次の一覧は、カスハラ該当性を考えるときの3要素を並べたものです。会社や従業員にとって重要なのは、苦情の有無だけで判断せず、要求内容、言動の態様、就業環境への影響を分けて読むことです。

Element 01

職場で行われる顧客等の言動

店舗、オフィス、訪問先、電話、メール、SNS、オンライン会議など、業務遂行に関係する場面での外部者の言動が対象になります。

Element 02

社会通念上許容される範囲を超える

要求内容が著しく不合理な場合だけでなく、暴力的、威圧的、侮辱的、性的、執拗、拘束的な手段も問題になります。

Element 03

就業環境が害される

恐怖、不安、業務支障、心身の不調、出勤困難、担当継続困難など、働く環境への影響が判断材料になります。

顧客等は購入者に限られない

顧客等には、商品・サービスの購入者だけでなく、利用者、問い合わせ者、将来利用する可能性のある者、取引先担当者、契約交渉の相手方、施設利用者、その家族、施設近隣住民なども含まれます。小売店や飲食店の来店客だけでなく、病院・介護施設・学校・保育施設の利用者や保護者、BtoB取引の相手方も検討対象です。

職場は店舗やオフィスに限られない

職場とは、労働者が業務を遂行する場所を指し、通常の就業場所だけではありません。取引先の事務所、顧客宅、訪問先、打合せの飲食店、電話、メール、SNS、オンライン会議、チャット上のやり取りも、業務遂行に関係すれば問題になります。

次の比較表は、どのような相手や場面がカスハラ検討対象になり得るかを示します。読者は、会社が「店舗外だから」「購入者ではないから」と切り捨てるのではなく、業務との関係性を見て対応を考える必要があると読み取れます。

場面対象になり得る相手典型的な問題
小売・飲食・宿泊来店客、予約者、同行者暴言、土下座要求、長時間拘束、SNS投稿示唆
コールセンター利用者、問い合わせ者、反復連絡者わいせつ発言、脅迫、長電話、同一要求の反復
医療・介護・福祉・教育患者、利用者、保護者、家族威圧的言動、私生活への干渉、説明強要、深夜連絡
BtoB取引取引先担当者、契約交渉相手人格否定、過度な値引き要求、休日連絡、担当者攻撃
オンライン・SNS利用者、閲覧者、投稿者個人名・顔写真・勤務先情報の晒し、誹謗中傷
Section 02

カスハラ被害で会社に求める4段階の保護措置

即時対応から組織対応まで、どの段階で何を会社に求めるかを時系列で整理します。

カスハラ被害に遭った従業員が会社に求める保護措置は、場当たり的に並べるよりも、危険を止める段階、事実を整理する段階、被害者を守る段階、組織として再発を防ぐ段階に分けると伝えやすくなります。

次の表は、会社に求める保護措置を4段階で整理したものです。段階ごとに目的が違うため、読者は「今すぐ安全を確保する措置」と「後日の再発防止策」を混同せず、会社への申入れ内容を組み立てられます。

段階会社に求める措置目的
即時対応一人対応の中止、上司・責任者への交代、顧客との引き離し、退店要請、通話終了、警察通報、救護生命・身体・心理的安全の確保
初動整理相談窓口への申告、事実関係の記録、録音・録画・メール・チャット等の証拠保全、目撃者確認事案の客観化と再発防止の土台づくり
被害者保護勤務配置の調整、担当変更、休養、産業医・カウンセリング、医療機関受診支援、労災相談、個人情報保護心身の回復と就業継続の確保
組織対応カスハラ方針、マニュアル、相談体制、悪質顧客対応、警告書、出入禁止、取引停止、弁護士相談、再発防止研修会社として同種被害を防ぐ仕組み化

次の判断の流れは、従業員が会社へ申入れる順番を示します。最初に安全を確保し、その後に記録・相談・配慮・再発防止へ進むことで、読者は緊急時と平時の対応を切り分けて考えられます。

会社へ求める順番

危険を止める

一人対応を解除し、上司・管理職・警備・警察などに引き継ぐ。

事実を残す

発生日時、発言、証拠、目撃者、心身への影響を記録する。

会社の対応を求める

相談窓口、人事、法務、産業保健スタッフに正式に共有する。

対応が不十分
相談先を広げる

労働局、労働基準監督署、警察、弁護士等を検討する。

対応が進む
再発防止へつなげる

記録、マニュアル、研修、顧客対応基準へ反映する。

会社に求めることは、単なるお願いではありません。労働契約法5条の安全配慮義務、2026年10月1日施行予定の雇用管理上の措置義務、厚生労働省指針、労災実務、裁判例の流れに照らし、会社が合理的な対応を検討すべき領域です。

Section 03

カスハラ対策の法改正と会社の基本義務

2026年10月1日施行予定の義務化と、施行前でも会社が放置できない理由を確認します。

2026年10月1日からカスハラ対策が義務化される

2025年6月11日に労働施策総合推進法等の一部改正法が公布され、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務となり、2026年10月1日に施行予定とされています。さらに、2026年2月26日にはカスタマーハラスメント防止指針が公布されています。

次の時系列は、カスハラ対策に関係する制度上の動きを整理したものです。読者にとって重要なのは、2026年10月1日より前でも労災実務や安全配慮義務の観点から会社の対応が問われ得ることです。

2023年9月

精神障害の労災認定基準改正

心理的負荷評価表に、顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた場面が追加されました。

2025年4月1日

東京都条例が施行

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が施行され、社会的標準を示す資料としても参照されるようになりました。

2025年6月11日

改正法が公布

カスハラ防止措置が事業主の雇用管理上の措置義務として明確化されました。

2026年2月26日

防止指針が公布

方針の明確化、相談体制、事後対応、悪質事案への対処、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止などが具体化されました。

2026年10月1日

措置義務の施行予定

会社にとって、カスハラ対策はより直接的な雇用管理上の義務として扱われます。

会社の基本義務

厚生労働省指針を踏まえると、会社が講ずべき主要措置は10項目に整理できます。次の表では、従業員が会社へ申入れるときにチェックしやすいよう、会社側の措置と従業員側の確認ポイントを対応させています。

会社が講ずべき主要措置従業員が確認したいポイント
カスハラには毅然と対応し、労働者を保護する方針を明確化する会社方針が現場に周知され、管理職も理解しているか
カスハラの内容と対処内容を周知するどの言動で管理職交代や通話終了になるか明確か
相談窓口を定めて周知する相談先、受付方法、共有範囲が分かるか
相談窓口担当者が適切に対応できるようにする担当者がカスハラの定義や初動対応を理解しているか
事実関係を迅速かつ正確に確認する録音、録画、メール、目撃者、通話ログを確認するか
被害者への配慮措置を適正に行う担当変更、休養、医療・産業保健支援が検討されるか
再発防止措置を講ずる個別対応で終わらず、現場のルールへ反映されるか
悪質事案への対処方針と体制を整備する警察通報、警告書、出入禁止、取引停止の基準があるか
プライバシーを保護する相談内容、氏名、シフト、録音録画の共有範囲が限定されるか
相談等を理由とする不利益取扱いをしない評価、シフト、契約更新、担当業務に不利益が生じないか

2026年10月1日の施行前でも、会社には安全配慮義務があります。カスハラ被害により従業員の心身に危険が生じていることを会社が知った、または知り得た場合、会社は合理的な対応を検討すべきです。

Section 04

カスハラ被害の即時対応 ― 一人で対応させない

最初に会社へ求めるべきなのは、単独対応の解除と管理職・責任者への引き継ぎです。

単独対応を続ける危険

カスハラ被害に遭った従業員が会社に最初に求める保護措置は、一人で対応させないことです。厚生労働省指針も、労働者から管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応方針について指示を仰ぐこと、可能な限り労働者を一人で対応させないこと、必要に応じて管理監督者等が対応することを挙げています。

次の一覧は、単独対応を続けた場合に起こりやすいリスクを示します。読者は、本人の忍耐力ではなく、会社の指揮命令系統で早めに引き継ぐ必要があると読み取れます。

発言のエスカレート

相手方が従業員個人に圧力をかけ続け、暴言や威圧が強まるおそれがあります。

不当要求の受入れ

萎縮した従業員が、会社判断を経ずに謝罪や金銭対応を約束してしまう可能性があります。

事実経過の不明確化

目撃者や記録が残らず、後から言った・言わないの争いになりやすくなります。

相談の遅れ

被害者が自分の対応が悪かったと抱え込み、心身の不調や退職につながることがあります。

従業員が会社に伝える言い方

会社には、感情的な非難ではなく、事実、業務への影響、求める措置を分けて伝えると対応を取りやすくなります。たとえば、同じ要求が長時間繰り返され、人格を否定する発言があり、就業環境が害されているため、上司または責任者に対応を引き継ぎ、以後は複数名で対応する措置を求める、と整理します。

伝え方性的な発言、個人情報を尋ねる発言、SNS投稿をほのめかす発言がある場合は、その内容を具体的に書き、本人が継続対応しない体制、法務・管理職同席での対応、窓口一本化を求める形にします。

管理職に求められる順序

次の判断の流れは、管理職が取るべき対応順を示します。被害者を相手方から離すことを最初に置くことで、読者は顧客対応の継続より安全確保が先に来ると理解できます。

管理職の対応順

離す

従業員を相手方から物理的・心理的に離す。

確認する

要求内容、言動、時間、場所、証拠の有無を確認する。

分ける

正当な苦情部分と不当・悪質な言動部分を分ける。

引き継ぐ

管理職、法務、警備、専門部署が複数名で対応する。

重大事案を外部へつなぐ

暴力、脅迫、監禁、不退去、器物損壊、盗撮、つきまとい、個人情報晒し等があれば警察・法務部門・弁護士等への相談を検討する。

Section 05

カスハラ相談と証拠保全で会社に求める確認

相談窓口が形式だけで終わらないよう、受付記録、事実確認、証拠保全を具体化します。

相談窓口は形式だけでは足りない

会社は相談窓口を定め、労働者に周知する必要があります。しかし、相談先が分からない、相談担当者が定義や手順を知らない、相談内容が漏れる、相談後に不利益が生じる状態では、窓口は実効性を持ちません。

次の一覧は、従業員が相談時に会社へ確認したい事項をまとめたものです。読者は、単に相談した事実だけでなく、受付日、担当者、共有範囲、今後の予定、不利益取扱いの有無まで確認する必要があると読み取れます。

正式受付

カスハラ相談として受け付け、受付日、対応者、今後の対応予定を記録する。

相談記録

共有範囲の限定

相談内容、氏名、心身の状態、証拠資料の共有範囲を必要最小限にする。

プライバシー

不利益取扱いの確認

相談を理由に評価、配置、契約更新、シフト、担当業務で不利益を受けないことを確認する。

注意

関係部門との連携

人事、法務、コンプライアンス、産業保健スタッフ、管理職が連携する体制にする。

組織対応

カスハラか微妙でも相談できる

厚生労働省指針は、カスハラが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合、該当するか否か微妙な場合でも、広く相談に対応することを求めています。断定できない段階でも、就業環境に支障が出ているなら、記録化と会社への相談が重要です。

事実関係を迅速・正確に確認する

会社は、相談者から聞いただけで終わらせるのではなく、周囲の労働者からの聴取、録音・録画等の客観的証拠の確認、必要かつ可能な場合の行為者からの聴取などを検討すべきです。確認すべき内容は、いつ、どこで、誰が、誰に、何を言ったか、要求内容、態様、時間、頻度、背景事情、心身への影響、証拠の有無です。

次の表は、カスハラで実務上有用な証拠と注意点を整理したものです。証拠の種類ごとに保存期間やプライバシーへの配慮が異なるため、読者は早期保全と共有範囲の限定を同時に意識する必要があります。

証拠具体例注意点
音声・通話記録コールセンター録音、留守電、通話メモ個人情報保護、社内規程、保存期間に注意する
映像防犯カメラ、店内カメラ、オンライン会議録画保存期間が短いことが多いため早急に保全依頼をする
文書メール、問い合わせフォーム、手紙、FAX原本性、受信日時、ヘッダー情報を残す
SNS・口コミ投稿画面、URL、スクリーンショット削除前に日時、アカウント、投稿内容を保存する
社内記録相談記録、業務日報、顧客対応履歴後日改変を疑われないよう日時を明記する
医療・心理診断書、受診記録、産業医面談記録プライバシー情報の共有範囲を限定する
目撃者同僚、上司、警備員、他の顧客早期にメモ化し、記憶の劣化を防ぐ
確認録音・録画は有効な場合がありますが、個人情報保護法、社内規程、施設ルール、顧客情報の取扱いに注意が必要です。迷う場合は、会社の法務・相談窓口・弁護士等に確認する必要があります。
Section 06

カスハラ被害者への配慮措置と不利益取扱いの禁止

会社には、顧客対応からの引き離し、メンタルヘルス対応、労災相談、個人情報保護を検討する役割があります。

顧客対応を続けさせないことも配慮措置

カスハラが確認された場合、会社は速やかに被害者に対する配慮措置を行うべきです。管理監督者等が被害者に代わって対応すること、被害者と行為者を引き離すこと、対応担当者の変更、複数人対応、配置転換、産業保健スタッフ等によるメンタルヘルス相談対応などが考えられます。

次の一覧は、被害者保護として会社に求められる配慮措置を整理したものです。読者は、担当変更や一時的な業務調整が保護になる一方で、賃金・評価・契約上の不利益を伴うと問題になり得る点を読み取る必要があります。

接触を止める

当該顧客との接触を止め、窓口を管理職・法務・専門部署へ一本化する。

引き離し

個人情報を守る

氏名、連絡先、勤務場所、シフト情報を顧客へ出さない。

プライバシー

勤務を調整する

必要に応じて休養、勤務時間調整、担当変更、バックヤード業務への一時移行を検討する。

就業継続

心身の支援につなぐ

産業医、保健師、カウンセラー、EAP、外部医療機関、労災相談を案内する。

早期対応

メンタルヘルス対応を後回しにしない

カスハラは、身体的暴力だけでなく、精神的負荷が大きい問題です。暴言、人格否定、性的言動、土下座要求、個人情報晒し、SNS炎上示唆、反復電話、長時間拘束は、睡眠、食欲、集中力、対人不安、出勤意欲、自己評価に影響します。

  • 出勤前に動悸、吐き気、腹痛、涙が出る。
  • 顧客からの電話音や通知音に強い恐怖を感じる。
  • 眠れない、悪夢を見る、食欲が落ちる。
  • 同じ場面を繰り返し思い出す。
  • 自分が悪かったと過度に責める。
  • 顧客対応業務だけでなく、日常業務全般に支障が出る。

労災の可能性

2023年9月の精神障害の労災認定基準改正により、心理的負荷評価表にカスタマーハラスメントが追加されています。労災認定は個別判断ですが、発生日と内容、会社への相談日、会社が取った措置または取らなかった措置、医療機関の受診日、診断名、勤務への支障、証拠資料を残すことが重要です。

プライバシーと名札表示

カスハラでは、従業員の氏名、顔、勤務店舗、シフト、電話番号、SNSアカウント、家族情報、住所、性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微情報が攻撃対象になることがあります。会社には、顧客にフルネームを開示しない、名札を姓のみ・イニシャル・ビジネスネーム等に変更する、相談内容の共有範囲を限定するなどの措置が求められます。

不利益取扱いの禁止

次の一覧は、相談や保護措置の申入れを理由とする不利益取扱いの例です。読者は、会社が被害者を守る名目で担当変更をする場合でも、賃金・評価・契約更新・キャリアに不利益を生じさせていないか確認する必要があります。

雇用上の不利益

解雇、雇止め、契約更新拒否、降格、減給、賞与減額、評価低下。

勤務上の不利益

シフト削減、希望しない配置転換、担当外し、孤立する配置。

人格的な不利益

接客に向いていないと決めつける指導、相談内容の漏えい、被害者責任の説明。

健康対応の妨害

休職、受診、労災相談、産業医面談を妨げること。

確認文言相談および保護措置の申入れを理由として、評価、シフト、担当業務、契約更新、配置、賃金その他の労働条件について不利益な取扱いをしないことを会社に確認する視点が重要です。
Section 07

悪質なカスハラ顧客への会社対応と限界

会社は顧客に対しても毅然と対応できますが、業種・契約・法令・公共性による限界もあります。

会社は顧客に対しても対応できる

カスハラ対応でよくある誤解は、顧客だから何をされても我慢しなければならないというものです。正当な苦情には誠実に対応する必要がありますが、暴力、脅迫、性的発言、人格否定、土下座要求、長時間拘束、晒し、付きまとい、無関係な要求、法外な賠償要求について、会社が従業員に耐えさせ続ける必要はありません。

次の表は、顧客等の行為ごとに会社に求められる対応例を整理したものです。行為の危険度や証拠化の必要性が異なるため、読者は一律の謝罪対応ではなく、行為類型に応じた窓口変更、警告、警察相談、法的対応を読み取る必要があります。

顧客等の行為会社に求める対応
大声、侮辱、人格否定管理職対応、複数名対応、対応時間の制限、以後の窓口一本化
同じ要求の反復、長電話一定時間経過後の通話終了ルール、文書対応への切替え
土下座要求、謝罪強要従業員個人の謝罪禁止、会社名義での事実確認後対応
性的発言、私生活への干渉即時切断、退店要請、担当者変更、接触禁止
脅迫、暴行、器物損壊警察通報、被害届相談、警備体制、出入り禁止
SNS晒し、個人情報投稿証拠保全、削除要請、発信者情報開示や仮処分の検討、弁護士相談
取引先担当者によるハラスメント相手先企業への正式申入れ、担当者変更要請、取引条件見直し
保護者・患者家族等による執拗な要求面談ルール、同席者指定、対応時間・連絡手段の限定

サービス提供拒否には限界もある

会社が顧客対応を拒否できるかは、業種、契約内容、法令、公共性によって異なります。医療、介護、福祉、交通、宿泊、教育、公共サービスなどでは、サービスが途絶すると顧客等の生命・心身の健康に重大な影響が及ぶ場合があります。

次の一覧は、全面拒否が難しい場面でも従業員を危険にさらさないための調整例です。読者は、サービス提供の必要性と従業員保護を両立させる方法として、対応者・時間・手段・第三者関与を制限する考え方を読み取れます。

Limit

対応者を限定する

管理職、専門部署、法務、法人担当などに窓口を限定し、被害者本人を前面に出さない。

Limit

対応条件を決める

面談は予約制、複数名対応、時間制限付きにし、電話ではなく文書対応に切り替える。

Limit

第三者を介在させる

警備、関係機関、相手先企業、弁護士等を介在させ、緊急サービスと威圧的要求への対応を分ける。

Section 08

カスハラ再発防止策と会社側の整備体制

その場しのぎで終わらせず、方針、マニュアル、研修、広報危機管理へつなげます。

再発防止は3層で考える

カスハラ対応は、個別の火消しだけでは不十分です。厚生労働省指針は、カスハラが発生した場合、方針の再周知、対処内容の再周知、研修、商品・サービス・接客等の問題や顧客とのコミュニケーション不足の改善など、再発防止に向けた措置を求めています。

次の一覧は、再発防止を被害者単位、現場単位、会社単位に分けたものです。読者は、同じ従業員を守る措置だけでなく、店舗・部署・全社ルールへ反映する必要があると読み取れます。

Person

被害者単位

同じ従業員が同じ顧客から再び被害を受けないよう、担当変更、接触禁止、相談先の明確化を行います。

Workplace

現場単位

同じ店舗、部署、コールセンター、営業所で同じ構造の被害を防ぐため、対応基準と記録方法を整えます。

Company

会社単位

全社方針、マニュアル、研修、顧客向けポリシー、警察・弁護士・産業医との連携手順を整備します。

整備すべき文書とルール

次の表は、会社が整備すべき文書と、従業員が会社へ確認できる内容を対応させたものです。文書名だけでなく、現場で誰が何をするかまで落とし込まれているかを読み取ることが重要です。

整備すべきもの確認したい中身
カスハラ防止方針・顧客対応基本方針正当な意見は受け止め、不当・悪質な言動には組織対応する姿勢
判断基準・現場対応マニュアルどの発言、時間、要求で管理職交代や対応終了になるか
相談窓口運用規程受付方法、記録、共有範囲、不利益取扱い禁止、外部窓口の有無
記録・証拠保全ルール録音、録画、SNS、通話ログ、防犯カメラ、医療資料の保存方法
悪質顧客対応基準警告書、出入禁止、取引停止、警察相談、弁護士相談の基準
被害者配慮措置の運用基準担当変更、勤務調整、休養、メンタルヘルス支援、労災相談
プライバシー・個人情報保護ルール名札表示、氏名開示、SNS対応、録音録画の閲覧権限

方針文と現場マニュアルの核心

方針文例会社は、正当な意見・要望を真摯に受け止め、商品・サービスの改善に努める一方、暴言、脅迫、暴力、性的言動、人格否定、長時間拘束、過度または不当な要求、従業員の個人情報を侵害する行為、SNS等での誹謗中傷・晒し行為については、従業員の就業環境を害するカスハラとして、対応の中止、取引・施設利用・サービス提供の制限、警察・弁護士等への相談を含む措置を講じる場合がある、と明示します。

次の一覧は、現場マニュアルに入れるべき行動基準を示します。抽象的な注意喚起では現場が動けないため、読者は何分で交代するか、どの発言で切断するか、どの部署へ連絡するかを具体化する重要性を読み取れます。

交代基準

侮辱・人格否定が出たら注意喚起し、改善されなければ管理職へ交代する。

現場判断

時間基準

30分を超える同一要求は、折り返しまたは文書対応に切り替える。

長時間対応

即時中止基準

性的発言、脅迫、暴力、盗撮、個人情報要求は即時中止・上司報告にする。

危険対応

広報危機管理

SNS投稿示唆があれば、法務・広報へ連絡し、証拠保全と従業員保護を同時に進める。

炎上対応

カスハラ対策は、顧客を敵視することではありません。正当な苦情や改善要求は商品・サービス・接客改善に活かし、不当・悪質な言動には毅然と対応するという両立が必要です。

Section 09

正当な苦情とカスハラの線引き

顧客の正当な権利と従業員保護を両立させるため、要求内容と手段・態様を分けて考えます。

苦情そのものは違法ではない

カスハラ対策で必ず押さえるべきなのは、顧客の正当な苦情や意見表明は、商品・サービス改善につながる重要な情報であり、直ちに否定されるべきではないという点です。商品に欠陥があるため交換や返金を求める、説明と実際のサービス内容が違うため説明を求める、契約内容に沿った履行を求める、障害特性に応じた合理的配慮を求めるといった申入れは、それだけでカスハラとはいえません。

カスハラになり得る言動

次の一覧は、要求内容や手段・態様が社会通念上許容される範囲を超え得る例を整理したものです。読者は、要求の理由があるかどうかだけでなく、暴力、脅迫、侮辱、長時間拘束、性的言動、SNS晒しなどの態様があるかを読み取る必要があります。

不合理な要求

商品・サービスと無関係な要求、契約内容を著しく超えるサービス提供要求、著しい減額要求、不当な損害賠償要求。

威圧・暴力

暴行、傷害、物を投げる、つばを吐く、脅迫、大声で威圧する、不退去、居座り、監禁。

人格攻撃

中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要、同じ質問や要求の執拗な反復。

プライバシー侵害

SNS等への悪評投稿や個人情報投稿の示唆、盗撮や無断撮影、性的要求、私生活への干渉。

2つの軸で判断する

次の比較一覧は、正当な苦情とカスハラの線引きで見る2つの軸を示します。読者は、要求内容に一部理由があっても手段・態様が不相当ならカスハラになり得る一方、会社側の不備に対する合理的申入れは誠実に扱う必要があると読み取れます。

Axis 01

要求内容の相当性

顧客の求めている内容が、契約、法令、商品・サービス内容、会社側の落ち度に照らして妥当かを確認します。

Axis 02

手段・態様の相当性

仮に要求内容に一部理由があっても、暴言、脅迫、侮辱、長時間拘束、性的言動、SNS晒し等の手段が許容されるかを確認します。

障害者差別解消法・消費者法制への留意

カスハラ対策を講ずる際には、消費者法制上の消費者の権利や、障害者差別解消法における不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供義務にも留意する必要があります。障害者が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨を表明すること自体は、カスハラには当たりません。

重要なのは、属性ではなく、具体的言動、要求内容、手段・態様、業務への影響を客観的に見ることです。

Section 10

カスハラ被害を会社に申入れる実務手順

安全確保、記録化、正式相談、会社回答の確認、社外相談へ進む順番を整理します。

まず安全を確保する

暴力、脅迫、監禁、不退去、つきまとい、盗撮、器物損壊、性的接触、生命身体への危険がある場合、最優先は安全確保です。社内手続より先に、現場から離れる、上司・警備・同僚を呼ぶ、警察へ通報する、医療機関を受診することが一般に優先される対応とされています。

次の時系列は、被害発生後に会社へ申入れるまでの実務上の順番を示します。順番を整理することで、読者は危険対応と証拠化、会社への正式相談、回答確認を混同せずに進められます。

Step 01

安全確保

危険がある場合は現場から離れ、上司・警備・警察・医療機関につなぐ。

Step 02

記録化

発生日時、場所、相手方、具体的発言、要求、態様、対応時間、証拠、心身への影響をメモにする。

Step 03

正式相談

メール、チャット、相談フォーム、社内申告書など日時と内容が残る方法で相談する。

Step 04

会社回答の確認

責任者、期限、顧客対応の引継ぎ、証拠保全、共有範囲、不利益の有無を確認する。

Step 05

相談先を広げる

会社対応が不十分な場合は、人事、法務、産業医、労働組合、労働局、労働基準監督署、警察、弁護士等を検討する。

申入れ文例

文例件名 ― カスタマーハラスメント被害に関する保護措置の申入れ。○年○月○日○時頃、○○店舗・○○部署・電話対応において、顧客○○氏から暴言、約○分にわたる大声での叱責、同一要求の反復、SNS投稿を示唆した発言を受けました。以後の顧客対応に強い不安があり、睡眠不良、動悸、出勤前の不安が生じています。当該顧客への対応を私一人にさせないこと、以後の窓口を上長または会社指定部署に変更すること、通話記録・防犯カメラ・対応履歴等を保全すること、本件をカスハラ相談として記録し事実確認を行うこと、必要に応じて産業医・カウンセリング・勤務調整を案内すること、相談を理由に評価・シフト・配置・契約更新等で不利益取扱いをしないことを求めます。

会社が対応してくれない場合

会社が、お客様だから我慢して、みんな経験している、あなたの対応にも問題があったのでは、大ごとにしたくない、売上に響くから刺激しないで、証拠がないから何もできない、相談窓口はあるが現場で解決して、担当を外すが評価は下げる、といった反応をする場合、安全配慮義務や今後の措置義務を十分理解していない可能性があります。

次の一覧は、会社対応が不十分なときに検討する追加対応です。読者は、社内での再申入れ、相談先の拡大、社外窓口、法的手続を段階的に整理する必要があります。

書面・メールで再申入れ

発生事実、心身への影響、求める措置、回答期限を明確にする。

記録化

相談先を広げる

相談窓口、人事、法務、コンプライアンス、産業医、労働組合へ共有する。

社内対応

社外窓口を検討

労働局、労働基準監督署、警察、弁護士等へ相談する場面を検討する。

専門相談

弁護士等に相談する場面

顧客から暴行、脅迫、つきまとい、盗撮、個人情報晒し、名誉毀損、侮辱、業務妨害を受けている場合、会社が被害を知りながら同じ顧客対応を続けさせている場合、相談後に評価低下や契約更新拒否を受けた場合、精神疾患・休職・労災申請が絡む場合は、弁護士等への相談を検討する場面です。

Section 11

業種別に見るカスハラ保護措置の注意点

業種ごとに被害の出方と会社に求める措置は変わります。現場のリスクに合わせて考えます。

カスハラは、業種によって発生しやすい態様が異なります。対面接客、電話対応、医療・介護、教育・保育、BtoB取引では、証拠の残り方、緊急性、サービス提供義務、顧客との力関係が違うため、会社に求める保護措置も変わります。

次の表は、主要な業種ごとの注意点と会社に求める措置を整理したものです。読者は、自分の職場に近い欄を見ながら、単独対応の解除、記録化、窓口変更、名札表示、外部機関連携などを具体化できます。

業種問題になりやすい場面会社に求める保護措置
小売・飲食・宿泊大声、長時間拘束、土下座要求、返金・値引き要求、SNS投稿示唆、名札からの個人特定一定時間で管理職へ引き継ぐ、密室で単独対応しない、名札表示を見直す、返金・出禁の権限者を明確にする、防犯カメラを早期保全する
コールセンター・カスタマーサポートわいせつ発言、長電話、反復電話、録音への過度な反応、オペレーター指名通話終了基準、SV転送または切断ルール、顧客ID・電話番号での履歴共有、個人名を出さない、通話後のクールダウン時間を確保する
医療・介護・福祉患者・利用者・家族の不安、疾患特性、認知症、障害特性、緊急性、暴力・セクハラ即時応援体制、複数名対応、警備連携、面談の予約制・時間制限、合理的配慮と職員への不当な攻撃を分ける基準を持つ
教育・保育保護者対応、深夜連絡、謝罪要求、家庭訪問の単独対応、長時間面談面談を複数名対応にする、深夜・休日の連絡ルールを明確化する、個人携帯やSNS対応を避ける、家庭訪問を単独で行わせない
BtoB取引・営業重要取引先による人格否定、過度な値引き要求、休日・深夜連絡、性的言動、無理な納期要求、担当者指名攻撃取引先窓口を上長・法人担当へ変更する、面談を複数名で行う、相手先企業へ正式申入れをする、取引条件見直しを検討する

NHKサービスセンター事件では、コールセンター従業員が視聴者からのわいせつ発言や暴言等を受けた事案について、会社が対応手順の作成・周知、上司転送、同一人物からの2回目以降の即時切断、大声の場合のヘッドセットを外す・転送する対応、メンタルヘルス相談やカウンセリング、ストレスチェック等を整えていたことなどが考慮され、安全配慮義務違反が否定されました。

教訓抽象的に頑張るのではなく、即時転送、即時切断、ヘッドセットを外す、対応者変更、メンタルヘルス相談、記録保存といった現場で使える行動基準が重要です。
Section 12

派遣・契約・業務委託と東京都条例のカスハラ対応

雇用形態や地域によって相談先と根拠資料が変わるため、立場ごとの確認点を整理します。

非正規労働者も保護対象になる

厚生労働省指針は、労働者には正社員だけでなく、パートタイム労働者、契約社員等の非正規雇用労働者を含むとしています。アルバイト、パート、契約社員、嘱託社員だからといって、カスハラを我慢すべきということにはなりません。

次の表は、働き方ごとに相談先と確認点を整理したものです。読者は、自分の雇用形態に応じて、派遣元と派遣先の双方、契約関係、安全確保、現場管理を確認する必要があります。

立場主な相談先確認したい点
パート・アルバイト・契約社員勤務先の上司、相談窓口、人事、労働組合正社員と同様に相談受付、事実確認、配慮措置、不利益取扱い禁止が扱われるか
派遣労働者派遣先の上司・相談窓口、派遣元派遣先が雇用する労働者と同様に配慮・措置を講ずるか、相談を理由に役務提供拒否などの不利益がないか
業務委託者・フリーランス委託元、現場管理者、契約窓口、専門家労働者性、契約上の安全配慮、現場管理、フリーランス保護に関する法制度が問題にならないか
協力会社・個人事業主自社窓口、相手先企業、現場管理者自社職場で顧客からハラスメントを受けた場合に、契約関係と安全確保の観点から対応されるか

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例

東京都では、カスタマー・ハラスメントの防止に関し、基本理念を定め、東京都、顧客等、就業者、事業者の責務を明らかにする東京都カスタマー・ハラスメント防止条例が制定され、2025年4月1日に施行されています。全国の会社に同じ義務を直接課すものではありませんが、東京都内で事業を行う会社や都内の就業者・顧客対応を含む事業者にとって重要です。

従業員本人が注意すべきこと

次の一覧は、被害を受けた本人が注意したい行動を整理したものです。読者は、自分を責めすぎず、反撃や拡散で立場を悪くしないよう、安全確保、記録化、会社への相談、専門機関への相談という順番を保つことが重要だと読み取れます。

Care

感情的な反撃をしない

顧客に侮辱的に言い返す、SNSで相手を晒す、録音を拡散する、顧客情報を外部に出す行為は避けます。

Care

自分が悪いと抱え込まない

商品説明や接客に不備があっても、暴力、脅迫、人格否定、土下座要求、性的言動、長時間拘束、個人情報晒しが許されるわけではありません。

Care

相談先を複数持つ

社内相談窓口、上司、人事、法務、労働組合、産業医、労働局、労働基準監督署、警察、弁護士等を状況に応じて使い分けます。

弁護士等に相談する前に整理する資料

次の表は、弁護士や労働相談窓口に相談する前に準備すると相談が具体化しやすい資料を示します。資料の種類ごとに事実、労働条件、健康被害、求めたい結論を分けておくと、見通しや選択肢を整理しやすくなります。

資料の種類具体例
事実関係時系列表、具体的発言、メール、チャット、録音、録画、SNS投稿、口コミ、防犯カメラ・通話録音の有無、目撃情報、会社への相談記録
労働関係雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、ハラスメント規程、相談窓口規程、シフト表、賃金明細、評価資料
健康被害診断書、通院記録、薬の処方記録、休職・欠勤・有給取得の記録、産業医面談記録、体調メモ
求めたい結論顧客対応から外れる、会社に保護措置を取ってもらう、顧客に警告する、SNS投稿を削除する、不利益取扱いを止める、労災申請をする、損害賠償を検討する
Section 13

カスハラ被害と会社の保護措置に関するFAQ

個別事案の結論は事情により変わります。ここでは一般的な制度説明と確認ポイントを示します。

Q1. カスハラ被害に遭った従業員が会社に求められる保護措置の第一歩は何ですか。

一般的には、単独対応の解除が第一歩とされています。上司・管理職・専門部署への引継ぎ、複数名対応、顧客からの引き離しが検討対象になります。ただし、危険の程度、職場の体制、証拠関係によって対応は変わります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 会社に相談したら「お客様だから我慢して」と言われた場合はどう考えればよいですか。

一般的には、口頭だけで終わらせず、発生日時、言動、心身への影響、求める措置を記録が残る方法で再度伝える対応が考えられます。ただし、会社の規程、被害の程度、証拠の有無によって結論は変わる可能性があります。具体的には弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. カスハラか正当な苦情か分からない場合でも相談できますか。

一般的には、該当性が微妙な場合でも相談窓口が広く対応することが求められるとされています。ただし、商品・サービスの不備、合理的配慮、消費者の正当な申入れが関係する場合は慎重な整理が必要です。具体的な見通しは、事実関係を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q4. 会社側にも商品説明ミスがある場合、カスハラにはなりませんか。

一般的には、会社側に一定の不備があっても、暴言、脅迫、人格否定、土下座要求、長時間拘束、性的言動などの手段・態様が社会通念上相当でない場合、カスハラになり得るとされています。ただし、具体的な判断は要求内容、言動、証拠、業種によって変わります。

Q5. 顧客との会話を録音してもよいですか。

一般的には、録音・録画が証拠として有用な場面はあります。一方で、会社の録音制度、社内規程、個人情報保護、施設ルール、顧客情報の取扱いに注意が必要です。具体的な可否や保存方法は、会社の法務・相談窓口・弁護士等に確認する必要があります。

Q6. カスハラで精神的に不調になった場合、労災になりますか。

一般的には、2023年9月の精神障害の労災認定基準改正により、カスタマーハラスメントが業務による心理的負荷評価表に追加されています。ただし、労災認定は、発病前の業務上の心理的負荷、精神障害の診断、業務外要因などを踏まえる個別判断です。医療機関、労働基準監督署、弁護士等へ相談する必要があります。

Q7. 顧客対応から外された後に評価を下げられた場合は問題になりますか。

一般的には、相談や保護措置の申入れを理由とする評価低下、シフト削減、契約更新拒否、降格などは、不利益取扱いとして問題になり得るとされています。ただし、配置変更の理由、業務上の必要性、本人の意向、証拠関係で結論は変わります。具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q8. 顧客がSNSに従業員の名前を書いた場合、会社に何を求めることが考えられますか。

一般的には、投稿の証拠保全、削除要請、顧客対応窓口の一本化、氏名・名札表示の見直し、警察・弁護士相談、発信者情報開示や仮処分の検討、社内でのプライバシー保護が考えられます。ただし、投稿内容や拡散状況によって対応は変わります。

Q9. 派遣社員でも会社に保護措置を求められますか。

一般的には、派遣労働者については派遣元だけでなく派遣先にも一定の措置が求められるとされています。ただし、契約関係、就業場所、相談経路、派遣先の対応状況によって整理が変わる可能性があります。派遣元・派遣先双方に事実と求める措置を共有し、必要に応じて専門家へ相談する必要があります。

Q10. 弁護士に相談するのは大げさですか。

一般的には、暴行、脅迫、SNS晒し、精神疾患、会社の放置、不利益取扱い、労災、退職、損害賠償が絡む場合は、法的整理が必要になる可能性があります。ただし、相談の要否や方法は事情により変わります。時系列表、証拠、会社への相談記録、就業規則、診断書などを整理して専門家へ相談する必要があります。

Section 14

カスハラ被害に遭った従業員が会社に求める10項目

最後に、会社へ求める核心を10項目で確認します。

カスハラ被害に遭った従業員が会社に求められる保護措置は、単なる接客上の配慮ではありません。会社は、従業員を雇用し、業務を命じ、顧客対応の場に配置している以上、その業務遂行過程で生じる身体的・精神的危険に対して、合理的な安全配慮を検討する必要があります。

次の一覧は、会社に求める核心を10項目にまとめたものです。読者は、我慢するか辞めるかという二択ではなく、事実を記録し、具体的な保護措置を会社へ求め、必要に応じて社外の専門家につなぐ流れを読み取れます。

項目会社に求める内容
1一人で対応させないこと
2上司・管理職・専門部署に引き継ぐこと
3相談窓口で正式に受け付けること
4事実関係を迅速・正確に確認すること
5証拠を保全すること
6被害者を加害顧客等から引き離すこと
7メンタルヘルスを含む心身のケアを行うこと
8プライバシーと個人情報を守ること
9相談を理由に不利益取扱いをしないこと
10悪質顧客対応と再発防止策を会社として講じること

2026年10月1日からは、カスハラ対策が事業主の雇用管理上の措置義務として施行予定です。施行前であっても、安全配慮義務、労災実務、裁判例の観点から、会社は被害を放置できません。会社に対して、事実を記録し、具体的な保護措置を求め、必要に応じて社外の専門家につなぐことが、個人の安全だけでなく職場全体の働きやすさを守ることにつながります。

Reference

この記事の参考情報源

公的資料・法令

  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
  • 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
  • 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」
  • 厚生労働省「確かめよう労働条件 ― メンタルヘルスに関する裁判例」
  • e-Gov法令検索「労働契約法」第5条
  • 政府広報オンライン「カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介」
  • 東京都産業労働局「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」

裁判例・実務資料

  • 厚生労働省「あかるい職場応援団」裁判例「NHKサービスセンター事件 東京高裁令和4年11月22日判決」