税務調査、査察、刑事告発、修正申告、重加算税、税務訴訟を分けて、弁護士と税理士の役割を実務的に整理します。
税務調査、査察、刑事告発、修正申告、重加算税、税務訴訟を分けて、弁護士と税理士の役割を実務的に整理します。
税額の是正、税務調査、重加算税、刑事手続を分けて相談先を考えます。
脱税を疑われた場合に頼るべき相手は、単純に弁護士か税理士かの二択ではありません。通常の申告誤りや申告漏れ、税務署の税務調査への対応は税理士が中心になりやすく、査察、令状に基づく捜索差押え、検察庁への告発、取調べ、逮捕・勾留の可能性がある場面では弁護士が中心になります。
重大な脱税疑惑では、刑事手続と法的リスクを弁護士が統括し、税額計算、会計資料の整理、修正申告、税務上の説明を税理士が担う共同対応が重要です。どちらか一方に寄せすぎると、税務上の是正と刑事上の防御のどちらかが弱くなるおそれがあります。
次の強調欄は、このページ全体で押さえる結論をまとめたものです。相談先の判断を急ぐ場面ほど、税額の問題なのか、刑事手続の問題なのかを最初に分けて読むことが重要です。
申告漏れや修正申告は税理士、査察や取調べは弁護士が中心です。仮装・隠蔽、重加算税、告発のおそれがある場合は、両者の役割を分けて進める設計が現実的です。
以下の一覧は、脱税疑いで重なりやすい4つの問題を整理したものです。どの問題が中心かによって相談先と初動が変わるため、まず自分の状況がどこに近いかを読み取ってください。
売上、経費、棚卸、減価償却、消費税、相続財産などを再確認し、税額不足があるかを整理します。中心になるのは税理士です。
通常の税務調査であれば税理士の立会いが基本です。査察や犯則調査に移る可能性がある場合は弁護士の関与が重要になります。
仮装・隠蔽と評価されるか、過少申告加算税や無申告加算税ではなく重加算税が問題になるかを検討します。
供述調書、黙秘権、弁護人選任、身体拘束、公判対応は弁護士の領域です。税理士だけで方針を決めるのは危険です。
税金が不足している状態と、不正に税を免れたと評価される状態は分けて考えます。
一般の会話では、税金を少なく申告したこと全般を脱税と呼ぶことがあります。しかし実務上は、単なる計算ミス、税法解釈の違い、資料不足による申告漏れと、意図的に税を免れる脱税は区別されます。この区別を誤ると、相談先、説明方針、修正申告のタイミング、刑事リスクの評価を誤りやすくなります。
次の比較表は、申告漏れ、仮装・隠蔽、脱税・ほ脱犯の違いを整理したものです。列ごとに原因、主なリスク、相談先の目安を読むことで、税理士中心でよい場面と弁護士の関与を検討する場面を分けやすくなります。
| 区分 | 典型的な内容 | 主なリスク | 相談先の目安 |
|---|---|---|---|
| 申告漏れ | 資料の紛失、会計処理の誤り、税法解釈の違い、引継ぎミス、海外取引や暗号資産取引の理解不足などにより、所得、売上、財産、控除誤りが申告に反映されていない状態です。 | 修正申告、更正、追加納税、延滞税、過少申告加算税などが問題になります。直ちに刑事事件になるとは限りません。 | 税額再計算と修正申告が中心なら税理士です。 |
| 仮装・隠蔽 | 架空外注費、架空仕入、売上除外、二重帳簿、名義口座、バックデート契約書、虚偽領収書、現金売上の抜き取り、海外口座への秘匿、相続財産の現金除外などです。 | 重加算税のリスクが高まります。過少申告加算税または不納付加算税に代わる場合は35%、無申告加算税に代わる場合は40%などが問題になります。 | 税理士と弁護士の共同対応を検討します。 |
| 脱税・ほ脱犯 | 偽りその他不正の行為により税を免れたり、不正還付を受けたりするものです。単なる税額不足だけでなく、不正行為、故意、金額、証拠、関与者、社会的影響が総合して問題になります。 | 代表的な税目では、十年以下の拘禁刑または千万円以下の罰金、あるいはその併科が定められています。免れた税額等が千万円を超える場合は、罰金額が引き上げられ得ます。 | 刑事手続化のおそれがあるため、弁護士の関与を優先します。 |
申告漏れがあっても、それだけで刑事責任の問題になるわけではありません。国税庁は、申告内容の誤りは修正申告で訂正でき、税務署からの調査の事前通知前に自主的に修正申告をした場合には、過少申告加算税がかからない旨を説明しています。
一方で、仮装・隠蔽が疑われる場合は、税額を計算し直すだけでは足りません。資料の作成経緯、誰が関与したのか、過去から継続していたのか、どの説明が後の供述や証拠評価に影響するのかを確認する必要があります。
同じ調査という言葉でも、通常の税務調査と査察・犯則調査では目的と危険度が違います。
脱税疑惑への対応で最初に確認すべきなのは、相手方が誰で、どの手続が進んでいるかです。税務署の通常調査なのか、国税局査察部の査察なのか、検察・警察の取調べなのかによって、専門家の役割も初動も変わります。
次の比較表は、通常の税務調査と査察・犯則調査の違いをまとめたものです。目的、手続の性質、中心となる専門家の列を見比べることで、税理士だけで進めやすい段階か、弁護士を直ちに入れる段階かを読み取れます。
| 手続 | 目的と性質 | 重要な対応 | 中心となる専門家 |
|---|---|---|---|
| 通常の税務調査 | 申告内容が正しいかを確認する行政上の調査です。実地調査では、原則として事前通知があり、調査対象税目、課税期間、日時、場所などが通知されます。 | 調査日程の調整、帳簿書類の整理、調査官への説明、修正申告の検討、税額の再計算が中心です。任意調査という言葉だけで自由に無視できると考えるのは危険です。 | 税理士が中心になりやすい段階です。ただし不正疑いが強い場合は弁護士も検討します。 |
| 査察・犯則調査 | 悪質な脱税事案について刑事責任を追及し、適正・公平な課税と申告納税制度を維持するための調査です。いわゆるマルサと呼ばれることがあります。 | 捜索差押え、聴取、供述、関係者対応、検察庁への告発、起訴・不起訴、公判、量刑が問題になります。正しい税額を納めれば終わるとは限りません。 | 弁護士を直ちに入れるべき局面です。税理士は税額計算と資料整理で支えます。 |
査察事件の危険度は、国税庁が公表する数値からも読み取れます。次の比較グラフは、令和6年度の査察の概要に出てくる件数と人数を、数字の大きさで把握するためのものです。左から告発件数、一審判決件数、実刑判決人数を並べ、査察が単なる税額確認にとどまらないことを確認してください。
令和6年度の査察では、検察庁に告発した件数が98件、告発分の脱税総額が82億円と公表されています。同年度中の一審判決99件すべてで有罪判決が言い渡され、13人に実刑判決が出されています。査察の段階では、税務だけでなく刑事手続を前提にした設計が必要です。
税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の本来業務です。
税理士は税務の専門家です。税理士法は、税理士業務として税務代理、税務書類の作成、税務相談を定めています。税理士等でない者がこれらを行うことは、法律に別段の定めがある場合を除き制限されています。
次の表は、脱税を疑われた場合でも税理士が中心的に担う実務を整理したものです。各行は、税額を正しく把握し、行政上の税務手続を進めるために必要な作業を示しています。
| 税理士の主な役割 | 内容 |
|---|---|
| 税額の再計算 | 売上、経費、棚卸、減価償却、源泉税、消費税、相続財産などを再確認します。 |
| 修正申告の作成 | 申告漏れや計算誤りがある場合、修正申告書や期限後申告書を作成します。 |
| 税務調査立会い | 調査官の質問に対し、帳簿、証憑、取引実態に基づいて説明します。 |
| 資料整理 | 契約書、請求書、領収書、通帳、会計データ、電子帳簿、メールなどを税務論点別に整理します。 |
| 加算税・延滞税の見通し | 過少申告加算税、無申告加算税、重加算税、延滞税などを試算します。 |
| 不服申立て | 更正・決定等に不服がある場合、再調査の請求や審査請求を検討します。 |
税務代理では、税務署、国税局、国税不服審判所などに対して、納税者に代わって申告、申請、請求、不服申立て、主張・陳述などを行います。確定申告、青色申告承認申請、税務調査の立会い、更正・決定に対する不服申立てなどが典型例です。
税務書類の作成では、申告書、申請書、請求書、不服申立書、修正申告書、理由説明書、税務代理権限証書、勘定科目の補足資料などが問題になります。ただし、税理士が作る書類は、事実と法令に基づくものでなければなりません。
税務相談では、税額計算、申告、税務調査、税法解釈、税務処理について助言します。脱税疑惑の初期段階では、そもそも税額不足があるのか、税法解釈の争いなのか、資料不足なのか、仮装・隠蔽と評価され得るのかを整理できます。
税務署長等の更正・決定に不服がある場合、国税不服審判所への審査請求では、弁護士、税理士その他適当と認める者を代理人に選任できます。一方、裁判所での税務訴訟では、訴訟代理人として中心になるのは弁護士で、税理士は補佐人として税務・会計の専門説明を担う体制が適しています。
刑事弁護、捜索差押え、供述対応、守秘義務を軸に考えます。
弁護士は法律問題の代理人です。弁護士法は、弁護士の職務として、訴訟事件、非訟事件、行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事務を行うことを定めています。脱税疑惑では、特に刑事事件化する場面で弁護士の関与が重要になります。
次の一覧は、弁護士が関与すべき場面を整理したものです。税理士の税務説明と重なる部分もありますが、供述や身体拘束、公判対応は法的意味が大きいため、弁護士が主導すべき領域として読んでください。
査察事件、検察庁への告発、警察・検察による取調べ、逮捕・勾留、起訴・公判は刑事手続の問題です。被疑者・被告人は弁護人を選任する権利を有します。
裁判官の許可状に基づく臨検、捜索、差押えでは、許可状や差押目録の確認、押収物の範囲、関係者対応、還付請求や準抗告の検討が問題になります。
供述調書の内容、署名押印、黙秘権・供述拒否権、取調べ対応方針は後の刑事手続や税務争訟で重要な意味を持つことがあります。
弁護士には職務上知り得た秘密を保持する権利と義務があります。刑事事件化が見込まれる場面では、弁護方針、供述方針、資料提出方針を弁護士に相談して設計します。
刑事手続では、供述調書の表現が極めて重要です。税務上は処理誤りと説明できる問題でも、調書で売上を隠したという趣旨に読まれると、故意の不正を示す方向に評価され得ます。反対に、実際に不正があるのに曖昧な説明を続けると、反省・是正意思が乏しいと見られることもあります。
脱税事件では、代表者、経理担当者、営業担当者、親族、取引先、顧問税理士など複数の関係者が聴取を受けることがあります。弁護士の役割は虚偽説明を作ることではなく、事実関係を整理し、どの点を認め、どの点を争い、どの点は資料に基づき慎重に確認する必要があるのかを明確にすることです。
状況ごとに、最初に相談する専門家と共同対応の必要性を整理します。
次の判断表は、一般的な危険度の目安を示したものです。金額、証拠、関与者、税目、過去の申告状況、税務調査の進み方によって結論は変わるため、表の左列で状況を確認し、右列で弁護士と税理士の役割分担を読み取ってください。
| 状況 | まず相談すべき専門家 | 理由 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 自分で申告誤りに気づいたが、税務署から連絡はない | 税理士 | 税額再計算、修正申告、過少申告加算税の検討が中心です。 | 架空経費、売上除外、資料改ざんがあるなら弁護士にも相談します。 |
| 税務署から通常の税務調査の事前通知が来た | 税理士 | 税務調査立会い、帳簿整理、説明対応が中心です。 | 大規模調査や不正疑いがあるなら弁護士も早期に関与します。 |
| 調査官から仮装、隠蔽、重加算税という語が出た | 税理士+弁護士 | 税額・加算税と刑事リスクが交差します。 | 供述・資料提出の方針を弁護士と確認します。 |
| 国税局査察部、査察、マルサ、令状、捜索差押えが出ている | 弁護士を優先 | 刑事責任追及が目的となる重大局面です。 | 税理士は弁護士の方針の下で税額・資料整理を担当します。 |
| 検察庁、警察、国税局から事情聴取・取調べの呼出しがある | 弁護士 | 供述調書、黙秘権、弁護人選任、刑事処分の問題です。 | 税理士だけで出頭方針を決めないことが重要です。 |
| 逮捕・勾留された、またはそのおそれがある | 弁護士 | 身体拘束、接見、勾留対応、保釈、公判対応が必要です。 | 家族や会社は早急に弁護士へ連絡する体制を整えます。 |
| 更正処分に不服がある | 税理士または弁護士 | 行政不服申立ては税理士も代理可能です。 | 訴訟に移る可能性が高いなら弁護士も関与します。 |
| 税務訴訟を提起する | 弁護士+税理士 | 訴訟代理人は弁護士、税理士は補佐人として関与できます。 | 税法・会計・証拠の共同設計が重要です。 |
| 顧問税理士が不正処理に関与した可能性がある | 弁護士+独立した別の税理士 | 利益相反、証人化、専門家責任の問題があります。 | 既存顧問に全対応を任せるのは危険です。 |
判断に迷う場合は、刑事化の兆候があるかを先に確認します。査察、令状、捜索差押え、検察庁への告発、取調べ、供述調書、逮捕・勾留という語が出ているなら、税理士だけでなく弁護士を優先して検討する局面です。
刑事責任、供述、押収物、利益相反が見える場面では弁護士の関与が重要です。
次の一覧は、弁護士を優先すべき典型例をまとめたものです。どれか一つでも当てはまる場合、税額計算だけでなく、供述や証拠評価、関係者の責任分担が問題になる可能性を読み取ってください。
通常の税務署調査ではなく国税局査察部が関与している場合、刑事責任追及の可能性が明確に高まります。税理士への相談だけで済ませるのは危険です。
すでに相当程度の嫌疑資料が収集されている可能性があります。許可状や差押目録の確認、押収資料の範囲の記録、弁護士への連絡が重要です。
供述調書の記載は、後に刑事手続や税務争訟で重要な証拠として扱われる可能性があります。税務上の処理誤りと刑事上の故意は分けて検討します。
単なる計算誤りではなく、意図的な秘匿・仮装と評価される可能性があります。故意、共謀、関与者、証拠、量刑事情を検討します。
税理士に任せていた事実は重要ですが、常に責任を免れる理由になるわけではありません。税理士自身が関係者や証人になる場合は利益相反が生じ得ます。
捜索差押えの現場では、抵抗や妨害をしないこと、許可状や差押目録を確認すること、押収された資料の範囲を記録することが重要です。その場で全部自分の指示です、経理担当者は関係ありません、節税だと思っていましたなどと断定すると、後の供述評価に影響する可能性があります。
事実を隠すべきではありませんが、記憶に基づかない即答、法的評価を含む即答、関係者を巻き込む即答は慎重に扱う必要があります。具体的な供述対応は、弁護士等の専門家に相談して設計します。
通常調査、計算ミス、資料漏れ、税法解釈の相違では税理士の専門性が直接役立ちます。
次の一覧は、税理士を優先して相談しやすい典型例です。各項目では、税額計算や申告書作成、調査官への税務説明が中心かどうかを確認してください。ただし、不正を示唆する事情がある場合は弁護士も検討します。
調査対象税目、対象年度、調査場所、調査官所属、通知内容、過去の申告書、元帳、領収書、請求書、契約書、通帳、会計ソフトデータを整理し、税務調査対応に経験のある税理士へ相談します。
通常調査売上計上時期、棚卸評価、減価償却、交際費、役員給与、貸倒損失、消費税の課税区分、インボイス、相続財産評価などは税理士の専門領域です。
税額計算税務署から調査通知が来る前に誤りに気づいた場合、税理士に税額を再計算してもらうことが第一です。ただし、架空経費、売上除外、名義口座、海外資産、不正還付が絡む場合は弁護士にも相談します。
修正申告刑事リスク確認税務調査では、調査官がなぜこの資料がないのか、なぜこの口座を申告していないのか、なぜ請求書の日付が不自然なのかといった不正を示唆する質問を繰り返すことがあります。その場合、税理士の説明だけでなく、弁護士と供述・資料提出の方針を確認します。
重大事案では、弁護士と税理士の情報共有範囲と役割分担を設計します。
重大な脱税疑惑では、弁護士と税理士の共同対応が必要です。次の表は、同じ事案でも弁護士と税理士が異なる役割を担うことを示しています。左から項目、弁護士、税理士の列を見て、刑事・法的リスクと税務上の是正を分けて読むことが重要です。
| 項目 | 弁護士 | 税理士 |
|---|---|---|
| 全体方針 | 刑事・行政・民事・信用リスクを踏まえた防御方針を設計します。 | 税務上の是正方針を設計します。 |
| 事実調査 | 供述、関係者、法的責任、証拠評価を整理します。 | 会計データ、申告書、税額計算、税務論点を整理します。 |
| 税務署・国税局対応 | 刑事化リスクのある説明・資料提出を管理します。 | 税務代理として調査対応、説明、資料提出を実施します。 |
| 取調べ対応 | 黙秘権、供述方針、調書確認、接見、身体拘束対応を担います。 | 取調べの代理はできませんが、税務計算資料を提供します。 |
| 修正申告 | 刑事リスクや自認内容への影響を確認します。 | 修正申告書、税額、添付資料を作成します。 |
| 不服申立て | 法的主張、行政争訟、訴訟戦略を検討します。 | 税務代理、税額、処分理由を分析します。 |
| 税務訴訟 | 訴訟代理人として主張立証を行います。 | 補佐人として税務・会計の専門説明を担います。 |
| 社内対応 | 役員責任、従業員対応、証拠保全、開示方針を検討します。 | 経理体制、再発防止、税務処理改善を支えます。 |
次の判断の流れは、共同対応を組む順番を示しています。上から順番に確認し、刑事事件化が見込まれる場合には、まず弁護士に全体を相談し、その方針の下で税理士の担当範囲を明確にすることを読み取ってください。
通常調査、査察、取調べ、訴訟のどれに近いかを確認します。
令状、査察、告発、供述調書、逮捕・勾留のおそれを確認します。
供述、資料提出、関係者対応を管理します。
必要に応じて弁護士へつなぎます。
共同チームで重要なのは、情報を無秩序に共有しないことです。税理士には税務上必要な事実と資料を共有しつつ、刑事弁護上の戦略、供述方針、関係者の責任分担に関する議論は弁護士主導で管理します。
最初の資料提出、説明、修正申告、供述が後の処分に影響することがあります。
脱税を疑われた場合、初動での誤対応は税額よりも大きなリスクを生むことがあります。まず避ける対応を確認し、そのうえで手続の種類、資料保全、時系列整理、専門家の関与を進めます。
次の一覧は、初動で避けたい対応をまとめたものです。各項目は、疑いを強めたり供述評価に影響したりする可能性があるため、何をしてはいけないかを先に読み取ってください。
請求書、領収書、メール、チャット、通帳、会計データ、電子ファイルを削除・改変すると、疑いを強める可能性があります。
従業員、親族、取引先、顧問税理士に事実と異なる説明を求めることは極めて危険です。
脱税のつもりでした、全部税理士がやったなど、法的意味のある断定を資料確認前に行うのは危険です。
取調べ、逮捕、勾留、起訴、公判への対応は弁護士の領域です。
不利な事実も踏まえて防御を設計する必要があります。早期に全体像を共有することが重要です。
次の時系列は、初動72時間で確認する順番を示しています。上から順に、手続の把握、資料保全、時系列作成、税務と刑事の両面評価、社内窓口の整理へ進む流れを読み取ってください。
通常の税務調査か、査察・犯則調査か、検察・警察の取調べかを確認します。通知書、名刺、所属、許可状、差押目録、呼出状を保管します。
申告書、決算書、総勘定元帳、補助元帳、領収書、請求書、契約書、通帳、クレジット明細、メール、チャット、会計ソフト、電子帳簿、クラウドストレージを保全します。
いつ、誰が、どの取引を行い、どの資料を作り、誰が申告内容を確認したのかを整理します。
税額不足だけなら税理士中心、不正行為や供述問題があるなら弁護士中心です。危険度が不明な場合は、先に弁護士へ相談し、税理士をどのように関与させるか決めます。
法人の場合、代表者、経理責任者、法務担当、顧問税理士、弁護士の連絡ルートを整理し、従業員が個別に不用意な説明をしないよう、事実に反しない範囲で方針を明確化します。
自主的な修正申告は重要ですが、刑事リスクがある場合は提出内容が後の証拠評価に影響します。
修正申告は、申告誤りを是正するための重要な手段です。税務署からの調査通知前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税がかからない場合があることは大きな実務上の意味を持ちます。
次の一覧は、脱税疑いがある場合に修正申告が生み得る問題を整理したものです。税額を直す効果だけでなく、どの年度、どの税目、どの説明が刑事手続や周辺リスクに影響するかを読み取ってください。
修正申告書の内容が、不正行為の存在を事実上認める資料として評価されることがあります。
どこまで修正するかによって、単発の誤りか継続的な不正かの見方が変わる可能性があります。
顧問税理士が作成した理由説明が、刑事手続上の供述と食い違うと問題になることがあります。
悪質事案では、修正申告や納税後も刑事責任の追及が続く可能性があります。
役員責任、株主・金融機関・取引先への説明、許認可、入札資格、反社・AMLチェックなどが問題になります。
重大な疑いがある場合の修正申告は、税理士が税額を計算し、弁護士が刑事・法的影響を確認したうえで行うことが重要です。税務上の誠実な是正と、刑事手続上の防御は対立するものではありません。
資格だけでなく、査察、刑事弁護、税務調査、資料整理、連携の実務力を確認します。
脱税疑惑で弁護士を選ぶ場合、単に弁護士資格があるだけでは不十分です。次の表は、税務・査察事件と刑事弁護が重なる場面で確認したい観点を整理したものです。確認項目と見るべきポイントを対応させて読み、初回相談で質問する内容を準備してください。
| 弁護士の確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 税務・査察事件の経験 | 国税局査察、検察庁告発、税法違反事件、税務争訟の経験があるか。 |
| 刑事弁護の実務力 | 取調べ対応、接見、勾留対応、保釈、公判弁護の経験があるか。 |
| 税理士との連携 | 税額計算や修正申告を担当する税理士とチームを組めるか。 |
| 企業法務・危機管理 | 法人事件で、役員責任、従業員対応、取引先・金融機関対応、広報対応を理解しているか。 |
| 説明能力 | 税務と刑事を分けて説明し、初動の優先順位を明確にできるか。 |
| 利益相反確認 | 顧問税理士、取引先、役員間で利益相反がないかを確認するか。 |
弁護士に最初に伝える事項は、調査の種類、対象税目、対象年度、疑われている行為、関与者、押収・提出済み資料、既にした説明、今後の呼出し予定、顧問税理士の関与状況です。
税理士を選ぶ場合も、顧問料が安い、近い、知人の紹介という理由だけでは不十分です。次の表は、脱税疑惑や税務調査対応で確認したい税理士側の観点です。対象税目と資料整理力、弁護士との連携、独立性を読み取ってください。
| 税理士の確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 税務調査対応経験 | 調査立会い、重加算税争点、修正申告、反面調査対応の経験があるか。 |
| 税目の専門性 | 法人税、所得税、消費税、相続税、国際税務、暗号資産など、対象税目に強いか。 |
| 資料整理力 | 会計データ、電子帳簿、銀行口座、証憑、取引経路を再構築できるか。 |
| 弁護士との連携 | 刑事リスクがある場合に、弁護士の方針を尊重して動けるか。 |
| 独立性 | 既存申告に関与しておらず、客観的に再計算できるか。 |
| 脱税相談を拒む姿勢 | 不正な隠蔽・改ざんに加担しない職業倫理があるか。 |
既存の顧問税理士が問題の申告に深く関与している場合は、別の税理士によるセカンドオピニオンが有効です。利益相反があるかどうかは、弁護士と相談して判断する必要があります。
法人が脱税を疑われた場合、個人事業主よりも問題は複雑です。税額や刑事責任だけでなく、会社法、金融機関対応、許認可、入札、内部統制、取締役会、監査役、内部通報、従業員処分、メディア対応が問題になります。
次の一覧は、法人特有の追加論点を整理したものです。法人、代表者、従業員、顧問税理士の利害が一致しないことがあるため、誰の利益を守る対応なのかを読み取ることが重要です。
代表者が指示したのか、経理担当者が独断で処理したのか、営業部門が売上資料を隠したのか、顧問税理士が提案したのかによって責任の所在は変わります。同じ弁護士が全員を代理すると利益相反が生じる場合があります。
上場会社、上場準備会社、金融機関借入が大きい会社、許認可事業者では、取締役会、監査役、会計監査人、社外取締役、親会社、主要株主への報告が必要になることがあります。
従業員へのヒアリングを不適切に行うと、供述の信用性が損なわれたり、口裏合わせと疑われたりする可能性があります。調査範囲、保存対象、ヒアリング方法、議事録作成、デジタル証拠の保全を設計します。
弁護士は、会社法上の善管注意義務、内部統制、第三者委員会、再発防止策、適時開示、金融機関との期限の利益、取引基本契約の表明保証違反などを検討します。税理士は、税額、会計処理、過年度修正、税効果会計などを支えます。
個人事業主、相続人、暗号資産投資家、海外口座保有者では資料と取引経路の整理が重要です。
個人事業主、フリーランス、副業者、相続人、暗号資産投資家、海外口座保有者の場合も、脱税疑惑は深刻です。現金売上、ネット収入、相続財産、海外資産、暗号資産は、申告漏れや不正疑いが生じやすい領域です。
次の一覧は、個人で問題になりやすい3つの領域をまとめたものです。税理士中心で修正申告を検討できる場面と、弁護士を加えるべき場面を読み分けてください。
現金売上、フリマアプリ、ネットショップ、動画配信、アフィリエイト、業務委託報酬、暗号資産、海外プラットフォーム収入は申告漏れが生じやすい領域です。名義口座、売上除外、架空経費、虚偽資料がある場合は弁護士にも相談します。
現金、名義預金、貸金庫、海外資産、生命保険、同族会社株式、不動産評価が問題になります。財産隠し、遺産分割紛争、相続人間の説明、刑事リスクが絡む場合は弁護士の関与が必要です。
所得区分、取得価額、為替換算、移転、国外財産調書、財産債務調書、マネーロンダリング規制、プラットフォーム記録など、多層的な問題が生じます。
海外口座や暗号資産は、国内では把握されにくいと誤解されやすい領域です。しかし国税庁は、国際事案で租税条約等に基づく外国税務当局等との情報交換制度を活用したと公表しています。税理士、弁護士、場合によってはデジタルフォレンジックや国際税務の専門家を組み合わせる必要があります。
税務調査、修正申告、顧問税理士、弁護士の役割について混同しやすい点を整理します。
次の一覧は、脱税疑いで起こりやすい誤解を整理したものです。各項目は一般的な制度説明であり、個別事情によって結論が変わる可能性があります。どの誤解が自分の状況に近いかを読み、具体的な対応は専門家へ確認してください。
追加納税や修正申告は重要ですが、悪質な脱税事案では、それだけで刑事告発や起訴が当然に回避されるわけではありません。
税理士に依頼していたことは重要な事情ですが、本人が不正資料を作った、売上を隠した、虚偽説明をした場合には本人の責任が問題になります。
通常の税務調査には質問検査権があり、正当な理由なく帳簿書類の提示・提出に応じない場合には罰則が問題となることがあります。刑事手続上の黙秘権と行政上の協力義務を混同しないことが重要です。
税理士は適正な申告・納税を支援する専門家であり、脱税相談等は禁止されています。不正を隠す方法を相談する相手ではありません。
弁護士は法律問題の専門家ですが、複雑な税額計算、会計データ分析、申告書作成は税理士の専門性が不可欠です。
弁護士が税理士業務を行うには、税理士登録や税理士法51条に基づく通知などが問題になります。弁護士と税理士のどちらかに丸投げするのではなく、どの業務を誰が担うのかを分けることが重要です。
税額の是正、刑事事件化、重加算税、利益相反、税務訴訟を分けて判断します。
脱税を疑われた場合、相談先は段階ごとに整理できます。税額の誤りを直す問題なら税理士、刑事事件化の危険があるなら弁護士、重加算税や仮装・隠蔽が問題なら両方、顧問税理士が関与した申告が問題なら弁護士と独立税理士、税務訴訟では弁護士と税理士補佐人という整理です。
次の判断の流れは、最後に確認したい実務上の整理です。上から順に、税額の問題か、刑事化の危険か、境界領域か、利益相反か、訴訟かを確認し、どの専門家を中心にするかを読み取ってください。
申告漏れ、計算誤り、税法解釈、修正申告、通常調査対応は税理士が中心です。
査察、令状、捜索差押え、検察庁への告発、取調べ、供述調書、逮捕・勾留のおそれは弁護士が中心です。
税理士が税額・資料を整理し、弁護士が法的・刑事的リスクを統括します。
利益相反や訴訟代理の問題があるため、弁護士と独立税理士、または税理士補佐人の体制を検討します。
最も避けたいのは、まだ大丈夫だろうと考えて初動を誤ることです。脱税疑惑では、最初の説明、最初の資料提出、最初の修正申告、最初の供述が、後の処分や刑事責任に大きな影響を与えます。
公的機関、法令、職能団体の資料を中心に確認しています。