2σ Guide

手術の後遺症は
医療過誤として訴えられるか

後遺症という結果だけで医療過誤とはいえません。診療当時の医療水準、注意義務違反、説明義務、因果関係、損害、立証可能性を分けて確認します。

5要件 過失・因果関係・損害等
24.7か月 医事関係訴訟の平均審理期間
20.0% 令和5年速報値の認容率
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

手術の後遺症は 医療過誤として訴えられるか

後遺症という結果だけで医療過誤とはいえません。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
手術の後遺症は 医療過誤として訴えられるか
後遺症という結果だけで医療過誤とはいえません。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 手術の後遺症は 医療過誤として訴えられるか
  • 後遺症という結果だけで医療過誤とはいえません。

POINT 1

  • 手術の後遺症と医療過誤の全体像
  • 後遺症という結果、合併 症という説明、法的責任の違いを最初に整理します。
  • ただし、法律上は後遺症という結果だけで責任が決まるわけではありません。
  • 診療当時の医療水準、注意義務違反、説明義務違反、因果関係、損害、立証可能性を分けて検討します。
  • 下の比較一覧は、手術後の悪い結果を検討するときの出発点を表しています。

POINT 2

  • 手術後遺症をめぐる用語と責任構造
  • 後遺症、合併症、医療事故、医療過誤を分け、請求根拠を整理します。
  • 注意義務違反と損害
  • 債務不履行責任
  • 組織としての責任

POINT 3

  • 医療過誤として問題になる5つの要件
  • 注意義務の内容
  • 注意義務違反
  • 損害
  • 因果関係
  • 立証可能性
  • 注意義務、損害、因果関係、立証可能性を診療当時の医療水準から見ます。

POINT 4

  • 手術後遺症の因果関係と説明義務
  • 1. 症状の発現時期を整理:術前、術中、術後、転院後の変化を時系列で確認します。
  • 2. 他原因を検討:原疾患の自然経過、既往症、感染、血栓、別疾患の影響を見ます。
  • 3. 医療行為が後遺症を生じさせたか:手技、麻酔、薬剤、部位取り違えなどを検討します。
  • 4. 軽減できた機会を失わせたか:感染対応、再手術、専門科相談、転送の遅れを見ます。
  • 5. 証拠で高度の蓋然性を説明:自然科学的な完全証明ではなく、経験則に照らした合理的説明が問題になります。

POINT 5

  • 手術の後遺症が医療過誤として問題になりやすい類型
  • 避けがたい合併症
  • 神経・血管との近接、高度癒着、基礎疾患による感染リスクなどがあり、説明と標準対応が尽くされている場合です。
  • 原疾患の自然経過
  • がん、脊髄疾患、感染症、心疾患など、治療しても病状が進行する可能性がある場合です。

POINT 6

  • 手術後遺症で最初に集める証拠とカルテ開示
  • 診療記録、画像、同意書、時系列メモを整理し、相談の土台を作ります。
  • 医療事件では、記憶よりも診療記録、画像、検査データ、説明資料が重視されます。
  • この資料一覧は、最初に何を集めるかを確認するために重要です。
  • カルテ開示後は、量の多い資料を時系列で読み直すことが重要です。

POINT 7

  • 相談、ADR、訴訟、時効の進み方
  • 1. 治療と生活の安定:現在の治療先、セカンドオピニオン、転院先を確保し、生活への影響を記録します。
  • 2. カルテ開示と初回相談:診療記録、画像、同意書、時系列メモを用意し、見通しの入口を確認します。
  • 3. 医学的検討:医学文献、ガイドライン、専門医意見を踏まえ、請求が成り立つかを検討します。
  • 4. 照会・請求・ADR:医療機関への事実照会、説明要求、損害賠償請求、医療ADRや調停を検討します。
  • 5. 訴訟:交渉で解決しない場合に、専門的知見を踏まえた民事訴訟を検討します。

POINT 8

  • 医療過誤の弁護士選びと損害項目
  • 必ず医療過誤という断定
  • 後遺症の重さと注意義務違反・因果関係の有無は分けて検討します。
  • 同意書だけで否定する説明
  • 署名は重要ですが、説明の具体性や代替治療の説明も問題になります。

まとめ

  • 手術の後遺症は 医療過誤として訴えられるか
  • 手術の後遺症と医療過誤の全体像:後遺症という結果、合併 症という説明、法的責任の違いを最初に整理します。
  • 手術後遺症をめぐる用語と責任構造:後遺症、合併症、医療事故、医療過誤を分け、請求根拠を整理します。
  • 手術後遺症の因果関係と説明義務:時間的な前後関係だけでなく、発生、悪化、自己決定権の観点を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

手術の後遺症と医療過誤の全体像

後遺症という結果、合併症という説明、法的責任の違いを最初に整理します。

手術後にしびれ、麻痺、慢性痛、排泄障害、嚥下障害、発声障害、外貌変化などが残ると、「これは医療過誤なのか」と考えるのは自然です。ただし、法律上は後遺症という結果だけで責任が決まるわけではありません。診療当時の医療水準、注意義務違反、説明義務違反、因果関係、損害、立証可能性を分けて検討します。

下の比較一覧は、手術後の悪い結果を検討するときの出発点を表しています。読者にとって重要なのは、合併症という説明があっても検証が終わるわけではなく、同時に後遺症が重いだけで責任が認められるわけでもない点です。左から順に、結果、検討する観点、次に確認する資料を読み取ってください。

場面法律上の見方最初に確認するもの
後遺症が残った損害の存在として重要ですが、それだけでは医療過誤とはいえません。診療録、画像、検査結果、術後経過、他院の診断
合併症と説明された過失なく起こり得る事象ですが、予防、説明、発生後対応は別に検討します。説明同意書、手術説明資料、手術記録、看護記録
対応が遅れた疑いがある発生自体ではなく、悪化や軽減機会の喪失が争点になることがあります。時系列、バイタル、ナースコール、検査実施時刻、転送記録

結論として、医療過誤として訴えるかを考える場合は、感情的な抗議を重ねる前に資料を確保し、事実と疑問を時系列で整理することが実務上の第一歩です。医療事故調査制度や医療安全支援センターは再発防止や相談窓口として役立つ一方、損害賠償請求、証拠保全、交渉、訴訟を直接進める制度ではないため、役割を分けて考える必要があります。

注意点このページは一般的な制度説明です。個別の手術経過、病状、証拠関係、時期によって結論は大きく変わります。具体的な対応方針は、診療記録等を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
Section 01

手術後遺症をめぐる用語と責任構造

後遺症、合併症、医療事故、医療過誤を分け、請求根拠を整理します。

後遺症、合併症、医療事故、医療過誤は似た言葉ですが、意味は異なります。この区別は、医療機関の説明を受けたときに論点を整理するために重要です。表では、各用語が何を指し、どのような確認につながるかを横に比較して読めるようにしています。

用語意味相談時の確認ポイント
後遺症治療や病気・外傷の急性期が過ぎた後にも残る症状や機能障害です。症状の内容、生活影響、固定時期、医療行為との関係
合併症病気や治療に伴って発生する別の症状・疾患です。過失がなくても起こり得ます。事前説明、予防策、発生後の診断・処置・転送
医療事故医療に関連して望ましくない結果が発生した事象を広く指します。制度上の調査対象か、責任追及とは別制度か
医療過誤診療当時の医療水準に照らした注意義務違反などにより損害が生じた場合をいいます。過失、因果関係、損害、立証可能性

責任構造は一つではありません。診療契約に基づく債務不履行責任、医師や医療従事者の不法行為責任、医療機関の使用者責任、公的医療機関で問題になり得る国家賠償の整理などがあり、相手方の法人形態や関与者によって検討の仕方が変わります。

次の重要ポイント一覧は、請求根拠を考えるときに何を分けるべきかを示しています。読者にとって重要なのは、同じ後遺症でも、手技の問題、説明の問題、術後管理の問題、転送の問題では必要資料が違うことです。

不法行為

注意義務違反と損害

民法709条を念頭に、どの診療行為が不適切で、どの損害につながったかを整理します。

診療契約

債務不履行責任

医療契約は結果保証ではありません。診療上、説明上、管理上の義務を尽くしたかが問題です。

医療機関

組織としての責任

執刀医だけでなく、麻酔科、看護、検査、病棟体制など多職種の関与を見ます。

Section 02

医療過誤として問題になる5つの要件

注意義務、損害、因果関係、立証可能性を診療当時の医療水準から見ます。

医療過誤として検討するには、少なくとも5つの要件を順に確認します。この一覧は、患者側がどこでつまずきやすいかを把握するために重要です。各項目は相互に関係しますが、どれか一つでも証拠で説明できないと請求の見通しに影響します。

注意義務の内容

術前検査、適応判断、手術手技、麻酔管理、術後観察、転送、説明など、何をすべきだったかを定めます。

注意義務違反

診療当時の情報、医学的知見、施設の体制、緊急性をもとに、標準からの逸脱を検討します。

損害

追加治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、将来介護費などを、原因と範囲に分けて整理します。

因果関係

問題となる医療行為が後遺症の発生または悪化につながったかを医学的に説明します。

立証可能性

診療記録、画像、検査データ、説明資料、医学文献、専門医意見により主張を支えられるかを見ます。

医療水準は、結果が出た後ではなく診療当時を基準に考えます。この判断の流れは、後から見れば別の対応が良かったと思える場面でも、法的責任が直ちに決まらない理由を理解するために重要です。上から下に、当時の情報、医学資料、施設の性質、記録上の理由付けを確認してください。

医療水準を検討する順番

診療当時の情報を確認

当時入手できた検査、画像、症状、緊急性を見ます。

当時の医学的知見と照合

ガイドライン、添付文書、学会指針、教科書、論文を参照します。

施設の専門性と体制を確認

大学病院、専門病院、地域診療所で期待される対応は異なります。

標準から外れた理由の有無

記録に合理的理由があるか、説明されていたかを見ます。

ガイドラインは重要な資料ですが、個別患者への診療を機械的に決めるものではありません。患者の年齢、基礎疾患、全身状態、病変の進行度、本人の希望、緊急性、施設体制などにより、標準的選択から外れることが合理的な場合もあります。

Section 03

手術後遺症の因果関係と説明義務

時間的な前後関係だけでなく、発生、悪化、自己決定権の観点を確認します。

因果関係では、手術後に症状が出たという時間関係だけでなく、医学的な結びつきを説明する必要があります。この判断の流れは、後遺症の発生と悪化を分けて考えるために重要です。分岐部分では、発生自体を問題にする場合と、適切な対応があれば重症化を軽減できた可能性を問題にする場合を読み分けてください。

後遺症と医療行為の関係を考える流れ

症状の発現時期を整理

術前、術中、術後、転院後の変化を時系列で確認します。

他原因を検討

原疾患の自然経過、既往症、感染、血栓、別疾患の影響を見ます。

発生
医療行為が後遺症を生じさせたか

手技、麻酔、薬剤、部位取り違えなどを検討します。

悪化
軽減できた機会を失わせたか

感染対応、再手術、専門科相談、転送の遅れを見ます。

証拠で高度の蓋然性を説明

自然科学的な完全証明ではなく、経験則に照らした合理的説明が問題になります。

説明義務も独立した争点になります。この比較表は、同意書の有無だけでは判断できない理由を示すものです。読者にとって重要なのは、署名の有無よりも、患者が自己決定できる程度の具体的な情報を受けていたかを確認する点です。

確認する事項具体例資料
説明内容診断、手術理由、手術方法、期待効果、重大リスク、代替治療、手術しない場合の見通し説明文書、同意書、診療録
説明の状況誰が、いつ、どの資料で、どの程度の時間をかけて説明したか説明記録、家族同席記録、質問票
患者の関心重大な後遺症、低侵襲手術、保存療法、セカンドオピニオンへの関心面談メモ、質問記録、紹介状

代替治療の説明では、医師が自ら実施しない治療法についても、患者が強い関心を持ち、相当数の実施例や積極的評価がある場合には説明が問題になり得ます。ただし、すべての未確立治療や先進的治療を網羅的に説明すべきという意味ではありません。

Section 04

手術の後遺症が医療過誤として問題になりやすい類型

術前判断、術式、手技、麻酔、術後管理、転送義務を場面別に見ます。

手術の後遺症が問題になりやすい場面は、術前、術中、術後、転送、説明に分けると整理しやすくなります。この一覧は、どの段階の問題かを見分けるために重要です。各項目では、見出しで局面を、本文で代表的な確認事項を読み取ってください。

術前

手術適応の判断

保存療法で対応可能だったか、禁忌に近い状態ではなかったか、術前検査とリスク評価が十分だったかを見ます。

術式

治療選択の合理性

開腹、腹腔鏡、ロボット支援、温存術、固定術など、複数の選択肢とリスク説明を確認します。

術中

手技上の問題

血管損傷、神経損傷、臓器損傷、異物遺残、部位取り違え、止血不十分などを資料で検証します。

管理

麻酔・全身管理

低酸素、血圧管理、気道確保、投薬、体位、血栓予防、術中バイタルを確認します。

術後

異常所見への対応

発熱、出血、麻痺、呼吸苦、尿量低下、創部異常などへの検査・処置の遅れを見ます。

転送

専門医療への引継ぎ

自院で対応困難な状態を認識できた時点と、転送していれば軽減できた可能性を検討します。

一方で、医療過誤とは認められにくい場面もあります。この一覧は、請求を急ぐ前に弱点を把握するために重要です。各項目は、責任が否定されやすい理由と、それでも確認すべき例外を並べて読んでください。

避けがたい合併症

神経・血管との近接、高度癒着、基礎疾患による感染リスクなどがあり、説明と標準対応が尽くされている場合です。

原疾患の自然経過

がん、脊髄疾患、感染症、心疾患など、治療しても病状が進行する可能性がある場合です。

説明済みリスクの発生

重大リスクが具体的に説明され、手術・術後管理も適切だった場合は責任が認められにくくなります。

記録不足だけの事案

記録不備は疑念を強めますが、それだけで過失、因果関係、損害を立証できるとは限りません。

Section 05

手術後遺症で最初に集める証拠とカルテ開示

診療記録、画像、同意書、時系列メモを整理し、相談の土台を作ります。

医療事件では、記憶よりも診療記録、画像、検査データ、説明資料が重視されます。この資料一覧は、最初に何を集めるかを確認するために重要です。左列で資料名、中央で確認内容、右列で関連する争点を読み取ってください。

資料確認するポイント関係する争点
診療録診断、説明、患者の訴え、医師の判断、経過注意義務、説明義務
手術記録術式、手術時間、出血量、術中所見、予定外の出来事手技、因果関係
麻酔記録バイタル、投薬、気道管理、低酸素、低血圧全身管理
看護記録術後観察、ナースコール、医師への報告、薬剤投与時刻術後管理
検査・画像血液検査、培養、病理、X線、CT、MRI、内視鏡、超音波症状原因、他原因
説明同意書リスク、代替治療、署名日、説明者、説明資料自己決定権
退院サマリー・紹介状入院経過、退院時状態、転院理由、他院への説明転送、継続治療
領収書・明細治療費、交通費、追加負担、休業資料損害額

カルテ開示後は、量の多い資料を時系列で読み直すことが重要です。この時系列の例は、相談時に事実と疑問を分けるために役立ちます。上から下へ日付順に並べ、出来事、関係者、根拠資料、患者側の疑問を分けて記録します。

日時出来事関係者資料疑問
初診日病状の説明と検査担当医外来記録症状を十分に聞いたか
術前説明日手術説明と同意医師・家族同意書後遺症リスクの説明があったか
手術日予定手術を実施執刀医・麻酔科手術記録予定外の出血や損傷があったか
術後しびれや麻痺を訴えた看護師・医師看護記録報告と検査が遅れていないか
転院日他院へ紹介または転院紹介元・紹介先紹介状もっと早い転送が必要だったか

自分で保存する資料として、予約票、退院時説明書、薬剤情報、医療費領収書、通院交通費、勤務先への欠勤連絡、写真や動画による症状記録、家族の介護記録、医療機関との面談メモがあります。会話の録音は法的・倫理的な問題が生じ得るため、利用方法や関係悪化リスクを含め慎重に扱う必要があります。

Section 06

相談、ADR、訴訟、時効の進み方

健康状態の安定から資料開示、医学的調査、交渉、訴訟までの流れを確認します。

相談から解決までの流れは、健康状態の安定、資料収集、医学的調査、交渉、ADR、訴訟という段階で考えると整理しやすくなります。この時系列は、いま自分がどの段階にいるかを把握するために重要です。上から下に進むほど、費用、時間、専門性が重くなる点を読み取ってください。

最初

治療と生活の安定

現在の治療先、セカンドオピニオン、転院先を確保し、生活への影響を記録します。

資料化

カルテ開示と初回相談

診療記録、画像、同意書、時系列メモを用意し、見通しの入口を確認します。

調査

医学的検討

医学文献、ガイドライン、専門医意見を踏まえ、請求が成り立つかを検討します。

交渉

照会・請求・ADR

医療機関への事実照会、説明要求、損害賠償請求、医療ADRや調停を検討します。

最終手段

訴訟

交渉で解決しない場合に、専門的知見を踏まえた民事訴訟を検討します。

医事関係訴訟は専門的知見を要し、一般の民事事件より長期化しやすいと説明されています。下の強調表示は、訴訟を検討するときに時間と見通しを過小評価しないために重要です。数字は事件全体の傾向を示すもので、個別の結果を保証するものではありません。

令和6年速報値では新受件数661件、平均審理期間24.7か月

令和5年速報値の医事関係訴訟の認容率は20.0%とされています。ただし、判決に至った事件を基礎にした数字であり、和解や取下げで終わった事件の実質的な解決内容をそのまま示すものではありません。

時効は、早期相談が必要になる大きな理由です。生命・身体侵害に関する損害賠償請求では、権利行使可能性を知った時期、症状固定時期、損害および加害者を知った時期、契約責任か不法行為責任か、改正民法の施行時期、死亡事案か、未成年者か、交渉中の時効完成猶予があるかなどで判断が変わります。このページでは具体的な期限計算を断定しません。

医療事故調査制度は、死亡・死産事案を中心に再発防止を目的とする制度です。医療安全支援センターは相談窓口として、苦情や相談、関係機関との連絡調整、情報提供などを担います。いずれも、過失の有無を鑑定したり、損害賠償請求を代理したりする制度ではないため、弁護士相談とは役割が異なります。

Section 07

医療過誤の弁護士選びと損害項目

相談先の確認事項、避けたい説明、損害として問題になる費目を整理します。

弁護士を選ぶ際は、医療事件の経験、診療記録を読む体制、協力医や医学意見書の取得ルート、費用説明、時効管理を確認します。この一覧は、相談先を比較するときに重要です。各項目を、質問すべき点としてそのまま使えるように整理しています。

1

医療事件の経験

患者側事件、医療機関側事件、調査段階、ADR、訴訟の取扱いを確認します。

経験
2

記録検討の体制

カルテ、画像、麻酔記録、看護記録をどのように読み解くかを確認します。

資料
3

医学意見の扱い

協力医の意見、医学文献、ガイドライン調査をどう進めるかを確認します。

医学
4

費用と段階管理

相談、調査、交渉、訴訟の費用が分かれているか、追加費用を確認します。

費用

避けたい説明には共通点があります。この注意一覧は、安易な断定に流されないために重要です。読者は、資料を見ないまま勝訴を保証する説明や、同意書だけで可能性を完全に否定する説明を警戒してください。

必ず医療過誤という断定

後遺症の重さと注意義務違反・因果関係の有無は分けて検討します。

同意書だけで否定する説明

署名は重要ですが、説明の具体性や代替治療の説明も問題になります。

カルテなしの勝訴保証

医療事件では診療記録、画像、検査データ、専門医意見の検討が不可欠です。

すぐ高額賠償という説明

調査費用、期間、認容率、和解可能性、証拠の弱点を分けて見る必要があります。

損害項目は、後遺症の内容と因果関係が認められる範囲で検討されます。この表は、何が請求対象として問題になり得るかを整理するために重要です。左列で項目、中央で内容、右列で注意点を確認してください。

損害項目内容注意点
治療関係費追加治療費、入通院費、薬剤費、リハビリ費、転院費もともとの疾患治療に必要だった費用と分けます。
休業損害後遺症や追加治療で仕事を休んだ不利益会社員、自営業者、主婦・主夫、学生、高齢者で資料が異なります。
逸失利益後遺症により将来収入が減る損害職業、年齢、収入、労働能力への影響を個別に検討します。
慰謝料精神的苦痛に対する賠償入通院、後遺症、説明義務違反、自己決定権侵害を見ます。
将来介護費等介護費、装具、車椅子、住宅改修、介護車両重い麻痺や排泄障害などでは金額が大きくなり得ます。
説明義務違反のみ自己決定権侵害の慰謝料が中心になることがあります。説明があれば同じ手術を受けたかが問題になります。
Section 08

手術後遺症と医療過誤のよくある質問

個別判断に踏み込まず、相談前に知っておきたい一般的な考え方をまとめます。

FAQは、個別事案への結論ではなく、制度と実務上の考え方を一般的に整理するためのものです。読者にとって重要なのは、同じ質問でも手術内容、負傷程度、説明資料、証拠関係、時期で結論が変わる点です。各回答では、一般的な見方と相談時に確認すべき資料を読み取ってください。

Q1. 手術後にしびれが残った場合、医療過誤といえますか。

一般的には、しびれが残った事実だけで医療過誤と評価されるわけではありません。神経に近い部位の手術では、適切な手技でもしびれが残ることがあります。ただし、術前説明、術中の手技、術後の麻痺への対応、画像や記録によって検討結果は変わる可能性があります。具体的には資料を整理して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 同意書に神経障害と書かれていると、争点になりませんか。

一般的には、同意書は重要な証拠ですが、それだけで説明義務が尽くされたと決まるわけではありません。説明の具体性、リスクの重大性、代替治療、質問への対応、説明時期などで評価が変わる可能性があります。個別の見通しは、説明資料と診療記録を確認して専門家へ相談する必要があります。

Q3. 医師から合併症と言われた場合、検討は終わりですか。

一般的には、合併症は過失がなくても起こり得る事象です。しかし、予防、早期発見、発生後対応、説明が適切だったかは別に検討されます。合併症の発生自体ではなく、重症化や後遺症化を軽減できた可能性が争点になることがあります。

Q4. 手術中のことは患者には分かりません。どう検証しますか。

一般的には、手術記録、麻酔記録、看護記録、術中画像、術後画像、病理所見、再手術記録、他院の診断、専門医意見などを用いて検討します。密室性の高い手術では、証拠の収集と医学的な読み解きが特に重要です。

Q5. 謝罪がないことは過失の証拠になりますか。

一般的には、謝罪しないこと自体が過失の証拠になるとは限りません。医療機関は事実関係や保険対応の確認前に法的責任を認める発言を避ける場合があります。重要なのは、説明内容、診療記録、医学的整合性です。

Q6. 後遺症が重いほど認められやすくなりますか。

一般的には、後遺症が重いほど損害額が大きくなり得ますが、責任の有無は注意義務違反と因果関係を証拠で説明できるかで判断されます。重い後遺症でも避けられない結果であれば、責任が認められない可能性があります。

Q7. 医療事故調査制度を使えば賠償につながりますか。

一般的には、医療事故調査制度は医療安全と再発防止のための制度であり、責任追及や損害賠償を直接目的とする制度ではありません。賠償を検討する場合は、別途、弁護士相談、交渉、ADR、訴訟などの手続を検討する必要があります。

Q8. 家族が代わりに相談できますか。

一般的には、家族が相談できる場合がありますが、正式な依頼、カルテ開示、訴訟対応では本人の意思確認や委任状が必要になることがあります。本人が亡くなっている場合は、相続人関係や遺族の権限を整理する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

法令、公的資料、裁判所資料、医療安全関連資料を中心に整理しています。

  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「医療法」
  • 厚生労働省「医療事故調査制度について」
  • 日本医療安全調査機構「医療事故調査・支援センター事業」
  • 厚生労働省「診療情報の提供等に関する指針」
  • 国立がん研究センター がん情報サービス「手術(外科治療)もっと詳しく」
  • 国立がん研究センター東病院「術後合併症について」
  • 医療安全支援センター総合支援事業「医療安全支援センターとは」
  • 最高裁判所「医事関係訴訟委員会について」
  • 最高裁判所「医事関係訴訟に関する統計資料」
  • 最高裁判所判例資料「医療過誤における因果関係の判断」
  • 最高裁判所判例資料「治療選択肢に関する説明義務の判断」
  • 最高裁判所判例資料「転送義務違反と相当程度の可能性の判断」