2σ Guide

片務的NDAを
双務的NDAに変更する交渉方法

取引先から片務型の秘密保持契約を提示された場面で、実際の情報交換に合う双務型へ修正する考え方、条項、メール文例、代替策を整理します。

3点交渉の説得軸
5点最小修正の要点
10項目条項別の確認範囲
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片務的NDAを 双務的NDAに変更する交渉方法

取引先から片務型の 秘密保持契約を提示された場面で、実際の情報交換に合う双務型へ修正する考え方、条項、メール文例、代替策を整理します。

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片務的NDAを 双務的NDAに変更する交渉方法
取引先から片務型の 秘密保持契約を提示された場面で、実際の情報交換に合う双務型へ修正する考え方、条項、メール文例、代替策を整理します。
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  • 片務的NDAを 双務的NDAに変更する交渉方法
  • 取引先から片務型の 秘密保持契約を提示された場面で、実際の情報交換に合う双務型へ修正する考え方、条項、メール文例、代替策を整理します。

POINT 1

  • 片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉方法の全体像
  • 公平性だけでなく、実際の情報の流れに契約構造を合わせることが出発点です。
  • 交渉の核心は「公平性」より「情報の流れ」
  • 片務的 NDAは、一方だけが秘密情報を開示し、もう一方だけが守秘義務を負う構造です。
  • 双務的NDAは、双方が秘密情報を開示する可能性を前提に、各当事者が開示者にも受領者にもなり得る構造です。

POINT 2

  • 片務的NDAと双務的NDAの定義を整理する
  • 交渉前に、NDA、片務型、双務型の違いを同じ言葉で説明できるようにします。
  • 秘密情報の範囲
  • 利用目的と禁止事項
  • 終了時の取扱い

POINT 3

  • 片務的NDAを求められる理由と許容できる場面
  • 社内ひな形
  • 標準書式が片務型で、担当者がそのまま送付している場合があります。
  • 一方向の想定
  • 相手方が「自社だけが情報を出す」と考えている場合があります。

POINT 4

  • 片務的NDAのまま自社情報を開示するリスク
  • 秘密情報に入らない
  • 自社が開示した仕様書、価格表、顧客課題、研究開発方針が契約上の保護対象から外れる可能性があります。
  • 目的外利用を止めにくい
  • 相手方が別プロジェクト、競合製品、社内研究、別顧客提案に利用した場合、契約違反を主張しにくくなります。

POINT 5

  • 双務的NDAへの変更が特に必要な取引場面
  • 共同検討、IT、知財、M&A、競合協議では、情報が一方向にとどまりにくくなります。
  • 取引類型ごとに、どの情報が双方から出るかを読み取るために重要です。
  • 技術仕様、試験条件、実験データ、未完成のアイデア、開発ロードマップ、担当者の知見が双方から出ます。
  • 製品仕様やセキュリティ情報に加え、導入企業から業務の進め方、認証方式、利用者数、ログ、データ項目が出ます。

POINT 6

  • 片務的NDAを双務的NDAへ交渉する前の準備
  • 誰が、誰に、何を、いつ、どの媒体で開示するのかを先に整理します。
  • NDAなしで開示できる情報
  • NDA締結後に開示する情報
  • 限定開示または非開示の情報

POINT 7

  • 片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉手順
  • 1. 相手方ひな形を確認:開示者・受領者が固定されているか、秘密情報の定義を確認します。
  • 2. 自社から非公開情報を出す可能性を確認:技術情報、業務情報、顧客情報、データ、共同検討成果が対象です。
  • 3. 双務化または相互守秘条項を提案:情報の流れに契約構造を合わせます。
  • 4. 片務型で進める範囲を限定:公開情報や一般説明にとどめます。
  • 5. 拒否された場合は代替策へ:サイドレター、別NDA、段階的開示、重要情報の非開示を検討します。

POINT 8

  • 片務型から双務型へ修正するNDA条項のポイント
  • 開示者・受領者の定義だけでなく、目的外利用、例外情報、返還削除、知財まで確認します。
  • 秘密情報
  • 目的外利用・秘密保持
  • 非義務・権利不移転

まとめ

  • 片務的NDAを 双務的NDAに変更する交渉方法
  • 片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉方法の全体像:公平性だけでなく、実際の情報の流れに契約構造を合わせることが出発点です。
  • 片務的NDAと双務的NDAの定義を整理する:交渉前に、NDA、片務型、双務型の違いを同じ言葉で説明できるようにします。
  • 片務的NDAを求められる理由と許容できる場面:相手方の事情を理解したうえで、双務化が必要な範囲を絞ると交渉しやすくなります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉方法の全体像

公平性だけでなく、実際の情報の流れに契約構造を合わせることが出発点です。

取引先、投資家候補、共同研究先、業務提携先、委託元・委託先、販売代理店候補などから秘密保持契約を提示されたとき、その書式が片務的NDAになっていることがあります。片務的NDAは、一方だけが秘密情報を開示し、もう一方だけが守秘義務を負う構造です。双務的NDAは、双方が秘密情報を開示する可能性を前提に、各当事者が開示者にも受領者にもなり得る構造です。

片務型が提示される背景には、相手方の社内ひな形、初期商談なので軽い書式で済ませたいという運用、相手方だけが情報を出すという前提があります。しかし実務では、自社の技術概要、顧客課題、システム構成、価格設計、未公開のプロダクトロードマップ、業務の進め方、研究開発方針、データ処理方法などを共有しなければ検討が進まない場面が少なくありません。

次の強調部分は、片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉方法で最初に押さえるべき結論をまとめたものです。情報の流れ、相手方の負担、手戻り防止の3点を同時に示すため、相手方にとっても修正理由を理解しやすくなります。

交渉の核心は「公平性」より「情報の流れ」

本件では当社からも非公開情報を共有する可能性があるため、秘密情報を受領した当事者が同じ義務を負う双務型にしたい、という説明が基本です。情報開示義務を追加する趣旨ではない点も明確にします。

双務的NDAは、相手方に秘密情報の開示を強制する契約ではありません。秘密情報を受領した当事者が、その情報について守秘義務、目的外利用禁止、第三者開示制限、返還・削除などの義務を負うという整理です。初回面談では相手方だけが資料を出す予定でも、技術確認、要件定義、セキュリティチェック、PoC、見積り、共同検討へ進むと、自社からも非公開情報を出す可能性が高まります。

一般情報このページは企業法務・情報管理の一般的な解説です。重要な技術、顧客情報、個人データ、M&A、資金調達、海外取引、紛争可能性のある案件では、資料を整理したうえで弁護士、企業法務担当者、知財担当者、個人情報保護担当者等へ相談する必要があります。
Section 01

片務的NDAと双務的NDAの定義を整理する

交渉前に、NDA、片務型、双務型の違いを同じ言葉で説明できるようにします。

NDAはNon-Disclosure Agreementの略で、日本語では秘密保持契約、秘密保持契約書、守秘義務契約などと呼ばれます。企業間取引では、本契約の締結前に非公開情報を開示する必要がある場合に用いられます。

NDAの機能は、単に「秘密にしてください」と約束することにとどまりません。秘密情報の範囲、利用目的、目的外利用の禁止、第三者開示の制限、役員・従業員・専門家・関連会社への開示条件、複製・保存・返還・削除、秘密保持期間、損害賠償、差止め、準拠法、管轄などを定めます。

次の比較表は、片務的NDAと双務的NDAの構造上の違いを表しています。どちらが常に正しいという表ではなく、本件で誰が情報を出すのかを確認し、契約の型が実態に合っているかを読み取るために重要です。

項目片務的NDA双務的NDA
情報の前提一方だけが秘密情報を開示する双方が秘密情報を開示する可能性がある
当事者の役割開示者と受領者が固定されやすい各当事者が開示者にも受領者にもなり得る
典型表現甲は乙に秘密情報を開示し、乙は甲の秘密情報を保持する各当事者は相手方に秘密情報を開示することがあり、受領者が義務を負う
交渉上の要点自社情報が保護対象に入るかを確認する情報開示義務を課すものではないと説明する

次の一覧は、NDAで決める主な事項を機能別に並べたものです。どの項目が不足すると自社情報の管理に影響するのかを把握することで、片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉方法の優先順位を決めやすくなります。

Scope

秘密情報の範囲

技術上、営業上、財務上、業務上の非公開情報、口頭開示、電子データ、サンプル、試作品を含めるかを確認します。

Use

利用目的と禁止事項

本目的の定義、目的外利用禁止、第三者開示制限、複製制限、社内共有の範囲を調整します。

Exit

終了時の取扱い

商談終了後や請求時の返還、削除、廃棄、バックアップや法令保存分の管理を定めます。

営業秘密やノウハウを守るには、NDAだけでなく、秘密表示、アクセス制限、社内規程、従業員教育、ログ管理、技術的・物理的な管理も重要です。日本の不正競争防止法上の営業秘密では、秘密として管理されていること、有用な技術上または営業上の情報であること、公然と知られていないことが問題になります。

Section 02

片務的NDAを求められる理由と許容できる場面

相手方の事情を理解したうえで、双務化が必要な範囲を絞ると交渉しやすくなります。

片務的NDAを提示されたとき、直ちに相手方が不誠実だと評価する必要はありません。大企業や研究機関では、営業部門、購買部門、研究開発部門、投資部門、情報システム部門ごとに標準契約書が用意され、担当者が社内手続に沿って片務型のひな形を送っているだけの場合があります。

次の一覧は、相手方が片務的NDAを求める主な背景を整理したものです。背景を分けて考えることは、対立ではなく運用上の調整として双務化を提案するために重要です。各項目から、どの説明を添えると相手方の抵抗が下がりやすいかを読み取ります。

社内ひな形

標準書式が片務型で、担当者がそのまま送付している場合があります。最小限の修正案を示すと進みやすくなります。

一方向の想定

相手方が「自社だけが情報を出す」と考えている場合があります。自社から出す予定情報を具体化して説明します。

審査負担の回避

初期検討なので契約審査を簡略化したいという事情があります。条項全体の差し替えではなく相互化の範囲を絞ります。

交渉上の優位

自社情報だけを保護したい意図がある場合もあります。スタートアップや研究開発型企業では交渉力差に注意します。

すべてのNDAを双務型にすべきとは限りません。相手方が製品紹介資料、技術資料、価格情報、提案書だけを開示し、自社は一般的な要望や公開情報しか伝えない場合は、片務型でも足りることがあります。採用候補者や外部業務委託候補者に企業側情報を開示する場面でも、候補者側から企業に秘密情報が開示される範囲は限定的です。

次の比較表は、片務型を許容しやすい場面と双務化を検討すべき場面を分けています。検討が進むにつれて非公開情報の交換が増えるため、初期段階だけでなく次の打合せ以降に何が出るかを読み取ることが大切です。

場面片務型で足りる可能性双務化を検討する理由
製品紹介の受領自社が公開情報や一般的要望しか伝えない場合導入環境、要件、価格条件、課題を具体的に出す場合
初回商談資料を受け取るだけで重要情報を出さない場合次回以降に技術仕様、顧客事情、運用情報を共有する場合
既存契約がある取引基本契約等に相互守秘義務があり対象が整合している場合目的、期間、返還削除、契約間の優先順位が不明確な場合
Section 03

片務的NDAのまま自社情報を開示するリスク

自社が受領者としてだけ扱われると、開示した情報への契約上の保護が弱くなることがあります。

片務的NDAの秘密情報の定義が「甲が乙に開示する情報」と書かれている場合、乙である自社が甲に開示した情報は、契約上の秘密情報に含まれない可能性があります。別途、不正競争防止法、民法上の不法行為、信義則、個別事情に基づく主張が考えられる場合はありますが、契約で明確に定める場合に比べ、立証や交渉は難しくなりがちです。

次のリスク一覧は、片務型のまま自社情報を出した場合に問題化しやすい論点を表しています。どれも後から修復しにくいため、情報を渡す前にどの義務が自社情報にも及ぶかを読み取ることが重要です。

秘密情報に入らない

自社が開示した仕様書、価格表、顧客課題、研究開発方針が契約上の保護対象から外れる可能性があります。

目的外利用を止めにくい

相手方が別プロジェクト、競合製品、社内研究、別顧客提案に利用した場合、契約違反を主張しにくくなります。

共有範囲が広がる

相手方の社内、関連会社、外部委託先、専門家への開示制限が自社情報に及ばないおそれがあります。

返還削除が曖昧になる

データ、ソースコード、設計資料、試験結果、顧客リスト、事業計画の返還や削除を求めにくくなります。

秘密管理の証拠が弱い

営業秘密としての秘密管理意思を示す材料として、自社情報がNDAの保護対象に入っていない点が弱点になり得ます。

特に、ソースコード、アルゴリズム、製造条件、顧客リスト、未公開の研究成果、未出願発明、個人データ、大型顧客の取引条件、M&A関連資料などは、契約上の保護が不十分なまま開示すると影響が大きくなります。NDAがあっても、情報を出す範囲は段階的に管理する必要があります。

注意秘密情報が一度流出すると、契約で損害賠償や差止めを定めていても完全な回復が難しいことがあります。重要情報は、双務的NDAや別契約で保護範囲が確認できるまで開示しない運用が基本です。
Section 04

双務的NDAへの変更が特に必要な取引場面

共同検討、IT、知財、M&A、競合協議では、情報が一方向にとどまりにくくなります。

双務的NDAへの変更が特に必要になるのは、相手方から資料を受け取るだけでなく、自社からも技術、業務、顧客、データ、知財、事業計画に関わる情報を出す場面です。次の一覧は、双務化を検討すべき代表的な場面を並べています。取引類型ごとに、どの情報が双方から出るかを読み取るために重要です。

1

共同開発・共同研究・PoC

技術仕様、試験条件、実験データ、未完成のアイデア、開発ロードマップ、担当者の知見が双方から出ます。

技術情報成果帰属
2

SaaS・システム導入・IT委託

製品仕様やセキュリティ情報に加え、導入企業から業務の進め方、認証方式、利用者数、ログ、データ項目が出ます。

個人データ委託管理
3

販売代理・OEM・ライセンス交渉

商品情報、顧客リスト、価格政策、販売チャネル、商標・ブランド戦略、製造ノウハウ、品質管理情報が問題になります。

知財ブランド
4

M&A・出資・資本業務提携

財務情報、契約情報、知財情報、紛争情報、事業計画に加え、投資方針や評価モデルも秘密性を持つ場合があります。

財務情報高機密
5

競合または潜在競合との協議

目的外利用、アクセス制限、複製制限、リバースエンジニアリング禁止、残存記憶条項の限定を検討します。

競合リスク情報遮断

共同開発やPoCでは、NDAだけでは成果物の帰属やデータ処理まで処理できないことがあります。PoC契約、共同研究開発契約、業務委託契約、ライセンス契約、データ処理契約などを別途整える必要がある場面もあります。

Section 05

片務的NDAを双務的NDAへ交渉する前の準備

誰が、誰に、何を、いつ、どの媒体で開示するのかを先に整理します。

交渉前には、本件で誰が、誰に、何を、いつ、どの媒体で開示するのかを整理します。相手方に対して「当社からも秘密情報を出す可能性がある」と具体的に説明できるため、単なる公平論ではなく、情報管理上の必要性として伝えやすくなります。

次の表は、開示者、受領者、情報の種類、秘密性、双務化の必要性を並べたものです。行ごとに自社情報が相手方へ渡るかを確認し、どの情報から契約上の相互保護が必要になるかを読み取ります。

開示者受領者情報の種類秘密性双務化の必要性
相手方自社製品仕様、価格表片務でも一応可
自社相手方現行システム構成、業務課題必要
自社相手方顧客データ項目、利用状況NDA以外の個人情報対応も必要
双方双方共同検討の成果、議事メモ中〜高必要

NDAがあっても、すべての情報を開示してよいわけではありません。次の3区分は、自社がどこまで情報を出すかを社内で決めるための一覧です。区分ごとに承認や専門家確認の要否を読み取り、商談担当者だけで重要情報を出さない運用につなげます。

Open

NDAなしで開示できる情報

会社概要、公開済み製品資料、一般的なニーズ、公開事例など、外部に出しても影響が小さい情報です。

After NDA

NDA締結後に開示する情報

非公開の仕様、業務課題、価格検討、運用情報、技術適合性の確認に必要な資料です。

Restricted

限定開示または非開示の情報

ソースコード、アルゴリズム、製造条件、顧客リスト、未出願発明、個人データ、M&A関連資料などです。

「本目的」の定義も重要です。目的が広いほど、受領者が情報を利用できる範囲も広く解釈される可能性があります。例えば「両社間の取引検討」よりも、「〇〇サービスの導入可能性、技術的適合性、商業条件および将来の業務提携可能性を評価・検討する目的」といった形で対象を具体化します。

次の表は、相手方が双務化を嫌がる理由と回答の方向性を対応させたものです。想定問答を先に用意することは、交渉を感情的な対立にせず、契約運用上の調整として進めるために重要です。

相手方の懸念回答の方向性
当社は情報を開示しない開示義務を課すものではなく、開示があった場合の取扱いを定めるだけと説明する
社内ひな形から変更できない最小限の修正案、サイドレター、相互守秘条項の追加を提案する
双務型は審査に時間がかかる相手方ひな形をベースに、定義と義務主体だけを相互化する
自社が重い義務を負うのは困る義務水準を相互同一にし、例外情報や法令開示を明確化する
こちらが受け取る情報を管理できない秘密表示、開示窓口、資料共有方法、受領拒否の仕組みを設ける
Section 06

片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉手順

相手方ひな形を尊重し、情報管理上の整合性と最小修正を示します。

交渉の最初から「不公平です」と伝えると、相手方は防御的になりやすくなります。まず、相手方の秘密情報保護を目的とする片務型の書式である点を理解していることを示し、そのうえで、自社からも非公開の技術情報、業務情報、運用情報等を共有する可能性があるため、双方が開示者・受領者となり得る双務型へ修正したいと説明します。

次の判断の流れは、片務的NDAを提示された後にどの順番で確認し、どこで双務化や代替策を提案するかを表しています。上から下へ進めることで、相手方ひな形を尊重しながら、自社情報を出す前に必要な契約対応を読み取れます。

片務型提示後の判断の流れ

相手方ひな形を確認

開示者・受領者が固定されているか、秘密情報の定義を確認します。

自社から非公開情報を出す可能性を確認

技術情報、業務情報、顧客情報、データ、共同検討成果が対象です。

可能性あり
双務化または相互守秘条項を提案

情報の流れに契約構造を合わせます。

可能性なし
片務型で進める範囲を限定

公開情報や一般説明にとどめます。

拒否された場合は代替策へ

サイドレター、別NDA、段階的開示、重要情報の非開示を検討します。

最小限の修正案は、相手方の社内審査負担を下げるために役立ちます。具体的には、「甲」を「開示者」に、「乙」を「受領者」に置き換え、「甲が乙に開示する秘密情報」を「一方当事者が相手方に開示する秘密情報」とし、守秘義務、目的外利用禁止、第三者開示制限、返還削除義務を受領者に適用します。さらに、情報開示義務や取引義務がないことを明記します。

依頼文例本件では、検討の過程で当社からも非公開の技術情報・業務情報を共有する可能性があります。つきましては、双方が開示者・受領者となり得る双務型のNDAとして、受領した秘密情報の取扱義務を相互に定める形へ修正させていただけますでしょうか。
補足文例双務型への修正は、御社または当社に秘密情報の開示義務を課す趣旨ではなく、各当事者が任意に開示した秘密情報について、受領者の取扱いを明確化する趣旨です。

相手方が「標準なので変更できない」と回答した場合は、大幅な修正ではなく、開示者・受領者の定義追加、秘密情報の相互化、守秘義務・目的外利用禁止・返還削除義務の相互化、情報開示義務または取引義務を課さない旨の明記という最小限の修正に絞る方法があります。

次の時系列は、交渉の記録として残しておきたい事項を示しています。どの時点で何を依頼し、どの範囲の情報を開示してよいと判断したかを追えるようにすることが、後日の社内説明や紛争予防に重要です。

受領時

相手方ひな形の構造を記録

片務型か双務型か、秘密情報の定義、目的、返還削除、期間を確認します。

修正依頼時

自社から出す予定情報を記録

技術情報、業務情報、顧客情報など、双務化が必要な理由を残します。

回答時

拒否理由と代替策を記録

標準書式、審査負担、情報管理上の懸念などの説明と、合意した対応を残します。

開示前

出せる情報と出さない情報を確定

契約が整うまで重要情報を留保するか、段階的に開示するかを確認します。

Section 07

片務型から双務型へ修正するNDA条項のポイント

開示者・受領者の定義だけでなく、目的外利用、例外情報、返還削除、知財まで確認します。

片務型を双務型に修正する際は、当事者定義だけを変えて終わりではありません。秘密情報の範囲、目的外利用禁止、第三者開示、例外情報、返還削除、期間、残存記憶、リバースエンジニアリング、知的財産権の帰属まで、条項同士が整合しているかを確認します。

次の表は、条項ごとの修正ポイントと確認の読み方をまとめたものです。左列で条項の対象を把握し、右列で片務型のまま残ると困る点を読み取ることで、最小限の修正範囲を決めやすくなります。

条項双務化の修正ポイント確認すべき注意点
当事者定義秘密情報を開示する当事者を開示者、受領する当事者を受領者とする甲乙が固定されたまま残っていないか
秘密情報の定義一方当事者が相手方に開示する非公開情報へ広げる秘密表示方式か、性質上秘密と分かる情報も含めるか
目的外利用禁止受領者が本目的のためにのみ使用する構造にする競合製品、別顧客提案、社内研究への流用をどう防ぐか
第三者開示役員、従業員、専門家、関連会社、委託先への開示条件を定める同等義務と違反時責任の有無
例外情報既知情報、公知情報、第三者取得情報、独自開発情報などを除外する受領者が証明できる資料を残せるか
返還・削除請求時または目的終了時に返還、削除、廃棄を求める法令保存、内部監査、バックアップ運用分の扱い
秘密保持期間終了後2年、3年、5年、または営業秘密性を失うまでなどを定める技術ノウハウや営業秘密性の高い情報に短すぎないか
残存記憶一般的知識・経験の利用と具体的秘密情報の利用を区別する広すぎる条項で目的外利用禁止が弱くならないか
解析禁止サンプル、ソフトウェア、機器、素材、データモデル等の解析を制限する法令上許容される解析や相互運用性との調整
知的財産権秘密情報の開示が譲渡、使用許諾、実施許諾を意味しないと確認するNDA内に成果帰属、独占、競業避止が紛れていないか

次の一覧は、最小限の双務化条項に入れたい考え方を整理しています。たたき台として使う場合でも、案件ごとに例外情報、開示可能な関係者、返還・削除、存続期間、法令開示、損害賠償、準拠法・管轄を補う必要があることを読み取ります。

Article 1

定義

開示者とは秘密情報を開示する当事者、受領者とは秘密情報を受領する当事者と定めます。

Article 2

秘密情報

本目的に関連して開示される非公開情報で、秘密表示または性質・状況から秘密と合理的に認識できるものを対象にします。

Article 3

目的外利用・秘密保持

受領者は秘密情報を本目的にのみ使用し、事前の書面承諾なく第三者へ開示または漏えいしないと定めます。

Article 4

非義務・権利不移転

情報開示義務、取引開始義務、契約締結義務、知的財産権の譲渡または許諾を意味しないと確認します。

残存記憶条項は、受領者の担当者の記憶に残った一般的知識、技能、経験の利用を制限しない趣旨です。ただし、技術ノウハウ、アルゴリズム、製造条件、営業戦略、顧客情報が関係する場合、条項が広すぎると目的外利用禁止が弱くなるおそれがあります。意図的に記憶させる行為、秘密情報を参照して本目的外に使用する行為、具体的な技術上または営業上の情報を利用する行為は制限する方向で検討します。

知財条項NDAの中に、知的財産権の譲渡、共同所有、成果物帰属、ライセンス、競業避止、優先交渉権などが含まれている場合、秘密保持契約の範囲を超える重大条項になり得ます。共同研究やPoCの成果は、別契約で整理する必要があります。
Section 08

片務的NDAの双務化を拒否された場合の代替策

合意できない場合でも、開示情報の範囲と時期を管理する選択肢があります。

相手方が双務型への変更は難しいと回答した場合でも、すぐに交渉を止める必要はありません。重要なのは、契約が整っていない範囲で重要情報を開示しないこと、代替手段で相互保護を確保できるかを検討することです。

次の時系列は、情報を段階的に開示する考え方を表しています。段階が進むほど情報の秘密性と契約対応の重さが増すため、どの時点で片務型では足りなくなるかを読み取ります。

初回接触

公開情報と一般資料

NDAなしまたは片務型でも足りる場合があります。重要な数値やノウハウは出しません。

初期検討

一般的な非公開情報

双務NDAを推奨します。業務課題や導入環境を共有する前に保護範囲を確認します。

技術評価

技術仕様、データ構成、試験条件

双務NDAが必要です。個人データや営業秘密性の高い情報は別対応も検討します。

PoC・共同開発

個別データ、環境情報、成果物

PoC契約、共同研究開発契約、データ処理契約なども検討します。

次の比較表は、拒否された場合の主な代替策と注意点をまとめたものです。左列で選択肢を把握し、右列で管理上の弱点を読み取ることで、相手方に再提案する方法を選びやすくなります。

代替策内容注意点
重要情報を開示しない最も確実なリスク管理として、契約が整うまで重要情報を出さない商談が進みにくい場合でも、流出後の回復困難性を重視する
サイドレター相手方の標準NDAを残し、自社情報も同一取扱いにする合意を別紙で追加する元のNDAとの優先関係、対象情報、矛盾時の解釈を明確にする
自社側の片務NDA相手方の片務NDAと自社の片務NDAを二本立てにして相互保護を図る期間、準拠法、管轄、返還削除、損害賠償が食い違わないようにする
口頭説明に限定資料配布を避け、一般的な説明だけにとどめる口頭でも秘密情報の開示になり得るため、具体的な数値やノウハウは避ける

相手方が競合または潜在競合である場合、目的外利用、残存記憶、独立開発、リバースエンジニアリング、情報遮断措置などが重要になります。海外企業との契約では、準拠法、裁判管轄、仲裁、証拠開示、国外移転、輸出管理、経済安全保障、個人データ越境移転、制裁規制なども関係することがあります。

Section 09

双務的NDAに変更する際の実務チェックリスト

契約構造、秘密情報、義務内容、リスク条項を漏れなく確認します。

双務化の交渉では、相互化という言葉だけで合意すると、細部に片務型の名残が残ることがあります。次のチェックリストは、契約構造、秘密情報の範囲、義務内容、リスク条項の4領域を整理したものです。各領域で未確認の項目を洗い出し、修正案や専門家確認に回すべき点を読み取ります。

領域確認項目
契約構造当事者が固定的な開示者・受領者になっていないか。双方が開示者・受領者になり得る定義か。秘密情報の定義が双方の開示情報を含むか。情報開示義務や取引義務を課さないことが明記されているか。
秘密情報の範囲技術情報、営業情報、財務情報、業務情報、個人データ、システム情報が必要に応じて含まれているか。口頭開示、電子データ、クラウド共有、サンプル、試作品、契約締結前開示、交渉の存在自体を含める必要があるか。
義務内容守秘義務、目的外利用禁止、第三者開示制限が双方に適用されているか。関連会社、委託先、専門家への開示条件が明確か。開示先の違反について受領者が責任を負うか。複製、返還、削除、廃棄のルールがあるか。
リスク条項既知情報、公知情報、第三者取得情報、独自開発情報の例外が適切か。残存記憶条項が広すぎないか。リバースエンジニアリング禁止が必要か。知的財産権の譲渡・ライセンスが意図せず発生しないか。競業避止、独占交渉、優先権、成果帰属、準拠法・管轄・仲裁を確認したか。

次の一覧は、弁護士、企業法務、知財担当者、個人情報保護担当者、情報セキュリティ担当者への相談を検討すべき場面です。NDAが短い書類に見えても、事業競争力や個人データに直結する場合は、一般的なひな形調整だけで足りないことを読み取ります。

コア技術・未出願発明

特許出願、営業秘密管理、共同発明、冒認出願、先使用、共同研究成果の帰属が問題になります。

個人データ

委託契約、共同利用、第三者提供、外国にある第三者への提供、安全管理措置、漏えい等報告を検討します。

競合・潜在競合

目的外利用、残存記憶、独立開発、解析禁止、情報遮断措置を慎重に設計します。

海外企業

準拠法、裁判管轄、仲裁、証拠開示、国外移転、輸出管理、経済安全保障、制裁規制が関係します。

NDA外の重大条項

成果物帰属、知的財産権の譲渡、無償ライセンス、競業避止、独占交渉、最恵待遇、広範な損害賠償に注意します。

Section 10

片務的NDAと双務的NDAに関するよくある質問

個別案件の結論は契約案、開示情報、交渉経緯で変わるため、一般的な考え方として整理します。

片務的NDAを求められた場合、必ず双務的NDAに変更すべきですか。

一般的には、相手方だけが秘密情報を開示し、自社からは公開情報や一般的説明しか出さない場合、片務的NDAで足りることがあります。ただし、検討が進むと自社からも非公開情報を出す可能性がある場合は、早い段階で双務化を検討することが多いとされています。具体的な対応は、開示予定情報と契約案を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

双務的NDAにすると、こちらも秘密情報を開示する義務がありますか。

一般的には、双務的NDAは双方が秘密情報を開示する可能性に備えて、受領者の義務を相互に定める契約であり、情報を開示する義務そのものを課すものではないとされています。ただし、契約案に開示義務、取引義務、協力義務のような別条項が含まれる場合は結論が変わる可能性があります。具体的には、契約全体を確認する必要があります。

相手方が標準書式なので変更できないと言う場合はどう考えますか。

一般的には、相手方ひな形を尊重しつつ、開示者・受領者の定義、秘密情報の相互化、目的外利用禁止の相互化、返還削除義務の相互化、情報開示義務がないことの明記など、最小限の修正に絞る方法があります。それでも難しい場合は、サイドレター、別紙、自社側片務NDA、開示情報の段階化を検討することがあります。具体的な選択は、案件の重要性や開示情報の性質で変わります。

NDAがあれば、営業秘密は必ず守られますか。

一般的には、NDAは重要な管理措置ですが、営業秘密として保護されるには、秘密管理性、有用性、非公知性などが問題になるとされています。秘密表示、アクセス制限、社内規程、教育、ログ管理、委託先管理なども重要です。個別の保護可能性や漏えい時の対応は、証拠関係や管理状況によって変わるため、専門家への相談が必要です。

片務的NDAのまま、自社情報をメールで送ってしまった場合は後から双務化できますか。

一般的には、後から双務NDAを締結し、契約締結前に開示した情報も秘密情報に含める条項を入れることは検討できます。ただし、締結前にすでに生じた漏えいや利用について、後から完全に責任を問えるとは限りません。重要情報は、NDA締結前に送らない運用が基本とされ、具体的な対応は送付内容や経緯により変わります。

交渉で最も使いやすい一言は何ですか。

一般的には、「本件では当社からも非公開情報を共有する可能性があるため、秘密情報を受領した当事者が同じ義務を負う双務型にさせてください。情報開示義務を追加する趣旨ではありません」という説明が使いやすいとされています。ただし、相手方の懸念、開示予定情報、社内ルールによって適切な表現は変わるため、重要案件では事前に法務担当者等と調整する必要があります。

Section 11

片務的NDAを双務的NDAに変更する交渉方法のまとめ

情報の流れを整理し、受領者の義務を相互に定める形へ契約を合わせます。

片務的NDAを求められた場合に双務的NDAに変更する交渉方法の核心は、相手方を非難することではありません。実際の情報交換の流れを整理し、双方が秘密情報を受領する可能性があることを具体的に示し、受領者の義務を相互に定める必要性を説明することです。

双務的NDAは、相手方に情報開示を強制する契約ではありません。秘密情報を受け取った当事者が、受け取った情報について秘密保持、目的外利用禁止、第三者開示制限、返還削除などの義務を負うという、契約運用上の整理です。

交渉では、相手方ひな形を尊重し、最小限の修正案を示します。拒否された場合は、サイドレター、自社側片務NDA、開示情報の段階化、重要情報の非開示などの代替策を検討します。

次の重要ポイントは、実務で最後に確認すべき観点をまとめたものです。短い契約書に見えても、技術、営業秘密、個人データ、知的財産、競争戦略、資金調達、共同研究の入口を守る文書であることを読み取り、契約の形を実態に合わせます。

NDAの型は形式ではなくリスク配分の問題

自社が何を開示し、何を守り、どこまで協業を進めるのかを明確にしたうえで、片務型のまま進める範囲と双務型へ変更する範囲を切り分けることが重要です。

Reference

参考資料

法令・公的機関資料

  • e-Gov法令検索「民法」第521条(契約の締結及び内容の自由)
  • e-Gov法令検索「不正競争防止法」営業秘密に関する定義・規律
  • 経済産業省「営業秘密を守り活用するための資料」
  • 経済産業省「スタートアップ企業と事業会社の連携」
  • 特許庁「オープンイノベーションポータルサイト」
  • 公正取引委員会「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

営業秘密・国際機関資料

  • WIPO Trade Secrets
  • WIPO How to Protect Trade Secrets?
  • WIPO Frequently Asked Questions: Trade Secrets
  • WIPO Guide to Trade Secrets and Innovation Part III
  • WIPO Guide to Trade Secrets and Innovation Part IV