2σ Guide

インターネット上で自社の商標を
無断使用された場合の対処法

証拠保全、権利確認、侵害判断、削除申告、発信者情報開示、差止め、損害賠償、刑事・税関・ドメイン対応、再発防止までを実務の順番で整理します。

48h初動証拠保全
S/A/B/Cリスク分類
3層削除・特定・再発防止
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Section 00

商標無断使用の対処法を読む前の確認事項

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

このページは、企業の法務・広報・知財・EC運営・マーケティング担当者、ブランド管理担当者、経営者、および弁護士等への相談を検討している読者を対象に、「インターネット上で自社の商標を無断使用された場合の対処法」を体系的に整理した実務解説です。

このページは、商標法、情報流通プラットフォーム対処法、不正競争防止法、税関手続、主要プラットフォームの公式手続、ドメイン名紛争処理制度等の公的・公式情報を参照し、企業の法務・広報担当者が社内外向けに理解しやすい形で整理したものです。個別案件に対する法的助言ではありません。実際の対応では、事案の緊急性、商標登録の内容、相手方の態様、証拠の状態、海外要素、プラットフォームの規約、裁判所の判断傾向等により結論が変わります。差止め、損害賠償、発信者情報開示、仮処分、刑事告訴、税関対応、海外プラットフォーム対応を検討する場合には、知的財産法・IT法務に詳しい弁護士、商標実務に詳しい弁理士その他の専門家への相談が重要です。

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インターネット上で自社の商標を 無断使用された場合の対処法

証拠保全、権利確認、侵害判断、削除申告、発信者情報開示、差止め、損害賠償、刑事・税関・ドメイン対応、再発防止までを実務の順番で整理します。

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インターネット上で自社の商標を 無断使用された場合の対処法
証拠保全、権利確認、侵害判断、削除申告、発信者情報開示、差止め、損害賠償、刑事・税関・ドメイン対応、再発防止までを実務の順番で整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • インターネット上で自社の商標を 無断使用された場合の対処法
  • 証拠保全、権利確認、侵害判断、削除申告、発信者情報開示、差止め、損害賠償、刑事・税関・ドメイン対応、再発防止までを実務の順番で整理します。

POINT 1

  • 商標無断使用の対処法を読む前の確認事項
  • 商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 個別案件に対する法的助言ではありません。

POINT 2

  • 商標無断使用の対処法 ― 最初に行うべきこと
  • 商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 削除より先に証拠を残す
  • 次の重要ポイントは、商標無断使用を発見した直後に優先する考え方を表しています。
  • 初動を誤ると証拠が消え、削除後に相手方特定や損害回復が難しくなるため、まず何を残すかを読み取ってください。

POINT 3

  • 商標無断使用を判断するための基礎用語
  • 商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 2.1 商標とは何か
  • 2.2 登録商標と未登録商標
  • 2.3 指定商品・指定役務

POINT 4

  • 商標無断使用で検討する法律と手続
  • 商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 3.1 商標法
  • 3.2 不正競争防止法
  • 3.3 情報流通プラットフォーム対処法

POINT 5

  • 商標無断使用が侵害に当たるかを確認する
  • 1. 自社の権利を確認:登録番号、指定商品・指定役務、更新状況を確認します。
  • 2. 相手の表示を特定:商品名、広告文、画像、アカウント名、ドメイン名などを保存します。
  • 3. 商標的使用と混同のおそれ:需要者が公式・提携・正規品と誤認し得るかを見ます。

POINT 6

  • インターネット上の商標無断使用の典型類型
  • 商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 5.1 ECモール上の偽造品・模倣品販売
  • 5.2 フリマアプリ・ネットオークションでの商標使用
  • 5.3 SNSアカウントのなりすまし

POINT 7

  • 商標無断使用を発見してから48時間以内の初動対応
  • 1. 責任者と連絡経路を決める:法務・知財・EC・広報・カスタマーサポートの担当を決め、情報を一元化します。
  • 2. 画面とデータを保存する:URL、日時、画面全体、HTMLソース、商品画像、広告、アカウント、取引記録を保存します。
  • 3. リスク分類と対応ルートを決める:偽造品、公式誤認、広告使用、単発言及などに分け、削除、警告、開示、監視を選びます。

POINT 8

  • 商標無断使用のプラットフォーム別削除・申告実務
  • 商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 7.1 共通して必要になる資料
  • 7.2 Amazonでの商標権侵害申告
  • 7.3 楽天市場での商標権侵害申告

まとめ

  • インターネット上で自社の商標を 無断使用された場合の対処法
  • 商標無断使用の対処法を読む前の確認事項:商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 商標無断使用の対処法 ― 最初に行うべきこと:商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 商標無断使用を判断するための基礎用語:商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

商標無断使用の対処法 ― 最初に行うべきこと

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

次の重要ポイントは、商標無断使用を発見した直後に優先する考え方を表しています。初動を誤ると証拠が消え、削除後に相手方特定や損害回復が難しくなるため、まず何を残すかを読み取ってください。

削除より先に証拠を残す

URL、画面全体、商品ページ、広告、アカウント情報、販売履歴、決済情報、相手方とのやり取りを保存してから、申告や警告を検討します。

インターネット上で自社の商標が無断使用されているのを発見した場合、最初にすべきことは、感情的に相手へ連絡することでも、すぐに削除ボタンを押すことでもありません。最初にすべきことは、証拠保全、権利確認、侵害可能性の一次評価、対応ルートの選択です。

特に重要なのは、次の順序です。

  1. 証拠を保存する

URL、スクリーンショット、商品ページ、広告表示、アカウント情報、販売履歴、検索結果、ソースコード、メタタグ、ハッシュタグ、注文確認画面、配送記録、決済情報、相手方とのやり取りなどを保存します。

  1. 自社商標権の内容を確認する

商標登録番号、登録商標、指定商品・指定役務、権利者名義、存続期間、更新状況、専用使用権・通常使用権の有無を確認します。

  1. 商標法上の侵害に当たる可能性を検討する

相手が使っている標章が自社商標と同一または類似か、相手の商品・サービスが自社の指定商品・指定役務と同一または類似か、相手の行為が「業として」の「商標の使用」に当たるかを検討します。

  1. プラットフォーム申告・警告書・発信者情報開示・仮処分・訴訟等を使い分ける

ECモール、SNS、検索広告、フリマアプリ、ウェブサイト、ドメイン名、海外サイトなど、媒体ごとに適切な手続が異なります。

  1. ブランド毀損・顧客被害・再発防止まで設計する

削除だけでは不十分な場合があります。偽造品、フィッシング、なりすまし、粗悪品販売、詐欺広告では、顧客向け注意喚起、税関対応、警察相談、再発監視体制も検討します。

商標問題は、単なる「ロゴの無断掲載」の問題ではありません。ブランドの信用、顧客の安全、広告費、検索結果、販売チャネル、取引先との関係、将来の訴訟リスクに直結します。そのため、初動対応の品質が、その後の削除成功率、損害賠償請求の見通し、再発防止の成否を大きく左右します。

Section 02

商標無断使用を判断するための基礎用語

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

2.1 商標とは何か

商標とは、事業者が自己の商品やサービスを他人の商品やサービスと区別するために使用する標識です。典型例は、会社名、商品名、サービス名、ロゴ、ブランド名、図形、文字、記号、立体的形状、色彩の組合せ、音などです。

商標は、単に「名前」や「マーク」ではありません。顧客に対して、商品やサービスの出所、品質、信用を伝える機能を持ちます。この機能を、法律実務ではしばしば次のように整理します。

  • 出所表示機能 ― その商品・サービスがどの事業者に由来するかを示す機能
  • 品質保証機能 ― 同じ商標が付された商品・サービスに一定の品質を期待させる機能
  • 広告宣伝機能 ― ブランドイメージや認知を形成する機能
  • 顧客吸引力 ― 商標が顧客を引き寄せる経済的価値

インターネット上で商標が無断使用されると、これらの機能が損なわれます。たとえば、偽造品販売サイトが自社ブランド名を使えば、顧客は正規品と誤認するおそれがあります。競合企業が検索広告文に自社商標を使えば、顧客の流入が奪われる可能性があります。SNSアカウントが自社ロゴを使ってキャンペーンを装えば、詐欺被害やブランド毀損が発生する可能性があります。

2.2 登録商標と未登録商標

登録商標とは、特許庁に出願し、審査を経て登録された商標です。商標権は、登録された商標そのものだけでなく、登録時に指定した商品・サービスとの組合せによって権利範囲が定まります。特許庁は、商標権について「マーク」と「商品・サービス」の組合せで一つの権利になると説明しています。

一方、長年使用している名称やロゴであっても、登録されていなければ商標権としての保護は原則として発生しません。ただし、未登録であっても、周知・著名な商品等表示であれば、不正競争防止法による保護が問題となることがあります。もっとも、未登録商標の保護は、周知性・著名性、混同のおそれ、相手方の行為態様などを立証する必要があり、登録商標に基づく対応よりも難易度が高くなることが一般的です。

2.3 指定商品・指定役務

指定商品とは、商標登録の際に指定された商品です。指定役務とは、商標登録の際に指定されたサービスです。

たとえば、同じ「ABC」という商標であっても、化粧品について登録されている場合と、法律相談サービスについて登録されている場合では、権利範囲が異なります。商標権侵害を検討する際には、「相手が同じ名前を使っているか」だけでなく、「何の商品・サービスについて使っているか」が重要です。

特許庁の商標制度では、商品・サービスは第1類から第45類までの区分に分類されます。区分は手数料や出願の整理のためにも重要ですが、侵害判断では区分番号だけでなく、商品・サービスの性質、用途、取引実情、需要者の範囲等も検討されます。

2.4 商標権侵害とは何か

一般に、商標権侵害が成立するかを検討する際には、次の要素を確認します。

  • 自社が有効な商標権を有しているか
  • 相手方が使用している標章が、自社の登録商標と同一または類似か
  • 相手方の商品・サービスが、自社の指定商品・指定役務と同一または類似か
  • 相手方の行為が「業として」の使用に当たるか
  • 相手方の使用が、商標法上の「商標の使用」に当たるか
  • 相手方に正当な使用理由、権利制限、抗弁がないか

商標権侵害は、単に「似た名前を使われた」というだけで直ちに成立するものではありません。商標の類否、商品・サービスの類否、使用態様、需要者の認識、取引実情を総合的に検討する必要があります。

2.5 商標的使用

商標的使用とは、標章が商品・サービスの出所を示すものとして使用されている状態を指す考え方です。

たとえば、自社ブランド名が第三者の商品タイトル、広告文、店舗名、アカウント名、商品画像、パッケージ、説明文に表示され、顧客が「この商品は自社または自社と関係のある事業者の商品である」と認識する可能性がある場合、商標的使用が問題となりやすいです。

一方、ニュース記事、比較記事、説明目的、互換性表示、真正品の再販売、ファンによる言及などでは、商標が表示されていても、常に商標権侵害になるわけではありません。文脈によっては、出所表示ではなく、説明・批評・比較・互換性表示として使われているにすぎないと評価される可能性があります。

2.6 「業として」の使用

商標法上の商標権侵害では、相手方の使用が「業として」行われているかが問題となります。ここでいう「業として」は、必ずしも会社や法人による営利事業だけを意味するものではありません。反復継続性、販売数量、取引態様、利益獲得目的、アカウント運用状況等から、事業的・継続的な使用と評価される場合があります。

たとえば、フリマアプリで個人が一度だけ中古の真正品を売った場合と、同じブランド名を使って大量の商品を継続販売している場合では、評価が異なります。ハッシュタグや商品説明欄の使用であっても、販売促進のために反復継続的に使用されている場合には、商標法上の問題が生じ得ます。

2.7 送信防止措置

送信防止措置とは、インターネット上の情報について、ウェブページ、投稿、商品ページ、画像、広告などが閲覧できないようにする措置です。一般的には、削除、非表示化、検索結果からの除外、アカウント停止、出品停止、広告停止などを含む文脈で用いられます。

情報流通プラットフォーム対処法の関連ガイドラインでは、インターネット上の権利侵害情報に対して、プラットフォーム事業者がどのような手続で申出を受け、どのように判断し、どのように通知するかが整理されています。商標権侵害についても、商標権関係ガイドラインが整備されています。

2.8 発信者情報開示

発信者情報開示とは、匿名または仮名の投稿者・出品者・広告主等について、一定の要件のもとで、氏名、住所、メールアドレス、IPアドレス、タイムスタンプ等の情報の開示を求める手続です。

インターネット上の商標権侵害では、相手方が匿名アカウント、海外事業者、虚偽情報の登録者であることが少なくありません。そのような場合、削除だけでは損害賠償請求や差止請求ができず、発信者情報開示やログ保存が重要になります。

Section 03

商標無断使用で検討する法律と手続

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

次の一覧は、商標無断使用で使い分ける制度を目的別に整理したものです。削除、特定、損害回復、輸入差止め、ドメイン移転のどれを目指すかによって選ぶ制度が変わります。

商標

商標法

差止め、廃棄・除却、損害賠償、信用回復措置、刑事責任を検討します。

中心制度
不競

不正競争防止法

未登録表示、周知表示、著名表示、混同、ドメイン名不正取得を検討します。

未登録対応
PF

情報流通プラットフォーム対処法

削除申出、発信者情報開示、透明化義務と関係します。

削除・開示

3.1 商標法

インターネット上で自社の商標が無断使用された場合、最も中心となる法律は商標法です。

商標法上、商標権者は、指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有します。第三者が、同一または類似の商標を、同一または類似の商品・サービスについて使用する場合、商標権侵害または侵害とみなされる行為が問題となります。

商標法上の主な救済は、次のとおりです。

  • 差止請求 ― 侵害行為の停止または予防を求める請求
  • 廃棄・除却請求 ― 侵害品、広告物、包装、表示物、データ等の廃棄・除却を求める請求
  • 損害賠償請求 ― 侵害により生じた損害の賠償を求める請求
  • 信用回復措置請求 ― 信用毀損がある場合に、謝罪広告等の信用回復措置を求める請求
  • 刑事責任追及 ― 故意による商標権侵害等について刑事罰が問題となる場合

特許庁は、商標権侵害への救済手続として、損害額の推定、ライセンス料相当額の請求等を解説しています。

3.2 不正競争防止法

自社の表示が未登録商標である場合や、商標登録の指定商品・指定役務の範囲から外れる場合でも、事案によっては不正競争防止法が問題となります。

不正競争防止法では、周知な商品等表示と同一または類似の表示を使用して混同を生じさせる行為、著名な商品等表示の冒用、営業秘密侵害、ドメイン名の不正取得等、さまざまな不正競争行為が規制されています。

インターネット上の商標無断使用で不正競争防止法が問題となる典型例は、次のような場合です。

  • 自社名・ブランド名が未登録だが、需要者の間で広く知られている
  • 類似ドメイン名を取得され、公式サイトと誤認させるサイトが作られている
  • 自社ブランドの信用にただ乗りする表示が使われている
  • 登録商標の指定範囲から外れているが、顧客の混同が生じている
  • 著名ブランドの希釈化・汚染化が問題となる

もっとも、不正競争防止法に基づく請求では、周知性・著名性、混同のおそれ、営業上の利益侵害等の立証が必要になり、商標登録に基づく請求とは異なる準備が必要です。

3.3 情報流通プラットフォーム対処法

インターネット上の権利侵害情報については、情報流通プラットフォーム対処法が重要です。同法は、旧プロバイダ責任制限法を改正・名称変更した法律で、削除申出への対応、発信者情報開示、大規模プラットフォーム事業者の透明化義務などを定めています。関連情報サイトでは、令和6年5月17日に公布され、令和7年4月1日に施行された旨が案内されています。

この法律は、商標権そのものの成否を決める法律ではありません。商標権侵害に当たるかどうかは商標法や不正競争防止法等に基づいて判断されます。そのうえで、インターネット上の情報について、プラットフォーム事業者に削除や非表示等を求める手続、発信者情報開示を求める手続を整える役割を持ちます。

商標権関係ガイドラインでは、SNS、電子商取引プラットフォーム、ネットオークション、フリマサービス、ウェブサイト上の情報等に関する商標権侵害への対応が整理されています。ガイドラインは、申出の主体、商標権侵害の判断、インターネット上の広告・出品・表示における商標使用などを示しています。

3.4 税関手続

偽造品・模倣品が海外から輸入されている場合、税関での差止申立制度が重要です。税関は、知的財産侵害物品について輸出入を差し止める制度を設けており、権利者は自己の知的財産権を侵害すると認める貨物について、税関長に差止めを申し立てることができます。

越境ECや海外フリマ、海外発送の偽造品では、オンライン削除だけでは不十分です。出品ページを削除しても、同じ販売者が別サイトや別アカウントで販売を続けることがあります。この場合、税関差止め、警察相談、プラットフォーム横断の監視が必要になります。

3.5 ドメイン名紛争処理制度

自社商標と同一または類似のドメイン名を第三者が取得し、公式サイトと誤認させるウェブサイト、偽通販サイト、フィッシングサイト、競合誘導サイトとして使用している場合、ドメイン名紛争処理制度が有効な場合があります。

.jpドメインについてはJP-DRP、一般的なgTLDについてはUDRPが問題となります。JP-DRPでは、登録者のドメイン名が申立人の商標等と同一または混同を引き起こすほど類似していること、登録者が正当な利益を有しないこと、登録・使用が不正の目的であること等が判断要素とされます。裁定により、ドメイン名の移転または取消しが認められる場合があります。

UDRPも、悪意あるドメイン名登録に対する迅速な行政的紛争処理手続として設計されています。

Section 04

商標無断使用が侵害に当たるかを確認する

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

次の判断の流れは、商標無断使用が侵害に当たるかを確認する順番を示しています。権利、表示、商品・サービス、使用態様、正当使用の可能性の順に見ることで、削除要求の根拠と限界を読み取れます。

侵害可能性を確認する順番

自社の権利を確認

登録番号、指定商品・指定役務、更新状況を確認します。

相手の表示を特定

商品名、広告文、画像、アカウント名、ドメイン名などを保存します。

商標的使用と混同のおそれ

需要者が公式・提携・正規品と誤認し得るかを見ます。

4.1 まず「自社の権利」を確認する

商標無断使用への対応は、相手方の違法性を検討する前に、自社の権利を正確に確認するところから始まります。

確認すべき項目は、少なくとも次のとおりです。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

確認項目実務上の意味
商標登録番号プラットフォーム申告、警告書、訴訟資料で必要
登録商標の表示文字商標か、図形商標か、結合商標かを確認
指定商品・指定役務相手の商品・サービスとの同一・類似性を判断
権利者名義現在の会社名・グループ会社名と一致しているか確認
存続期間・更新状況権利が有効に存続しているか確認
使用権者の有無ライセンシーが対応主体となれるか確認
海外登録の有無海外サイト・海外販売者対応で重要
使用実績損害、混同、周知性の立証に関係

特許庁のJ-PlatPatでは、商標を無料で検索できます。特許庁は、J-PlatPatを使った称呼類似検索や、検索項目・キーワードを変えて網羅的に調査する必要性を説明しています。

4.2 標章の同一・類似を確認する

次に、相手方が使っている標章が、自社の登録商標と同一または類似かを検討します。

標章の類否判断では、一般に次の要素が考慮されます。

  • 外観 ― 見た目が似ているか
  • 称呼 ― 読み方・発音が似ているか
  • 観念 ― 意味・イメージが似ているか
  • 取引実情 ― 実際の市場で混同が生じやすいか

インターネット上では、完全一致だけでなく、次のような変形使用が問題になります。

  • 大文字・小文字の違い
  • ひらがな・カタカナ・ローマ字表記の違い
  • スペース、ハイフン、記号の挿入
  • ロゴの一部改変
  • 旧ロゴ・旧社名の使用
  • 略称・愛称の使用
  • ドメイン名中での使用
  • ハッシュタグとしての使用
  • 商品画像内での使用
  • 広告文中での使用
  • メタタグ・タイトルタグでの使用

「完全に同じではないから問題ない」とはいえません。逆に、「一部が似ているから必ず侵害」ともいえません。需要者が出所を混同するか、商標の識別機能が害されるかという観点から、総合的に判断する必要があります。

4.3 商品・サービスの同一・類似を確認する

商標権の範囲は、登録商標と指定商品・指定役務の組合せで決まります。そのため、相手方がどの商品・サービスについて商標を使っているかを確認することが不可欠です。

たとえば、次のような場合には判断が分かれます。

  • 自社が「化粧品」で商標登録しており、相手が化粧品を販売している
  • 自社が「化粧品」で商標登録しており、相手が美容情報サイト名として使用している
  • 自社が「ソフトウェア」で商標登録しており、相手が研修サービス名として使用している
  • 自社が「飲食店サービス」で商標登録しており、相手が食品通販サイト名として使用している

商品・サービスが同一であれば侵害判断は比較的進めやすくなります。一方、類似範囲の判断では、用途、需要者、販売経路、提供主体、代替性、関連性などを見ます。J-PlatPatの類似群コードは調査の手がかりになりますが、最終判断は具体的事情に基づきます。

4.4 「商標の使用」に当たるかを確認する

インターネット上では、商標が多様な形で表示されます。商標法上の「使用」に当たるかは、表示場所と役割を具体的に検討します。

商標権関係ガイドラインは、インターネット上の広告に標章を付して表示する行為が商標法上の使用に当たり得ることを示しています。また、販売目的の商品投稿、動画投稿、商品説明、広告表示、偽造品販売ページなども、文脈によって商標使用と評価されます。

典型的には、次のような使用が問題になります。

  • 商品名として自社商標を使う
  • 店舗名・アカウント名として自社商標を使う
  • 商品画像に自社ロゴを表示する
  • 商品説明に「公式」「正規品」「認定」等と併せて自社商標を使う
  • 検索広告文に自社商標を使う
  • SNSプロフィールに自社ロゴを使う
  • ハッシュタグで自社商標を販売促進に使う
  • ドメイン名に自社商標を含める
  • メタタグやタイトルタグに自社商標を入れる

4.5 「商標的使用」ではない可能性も検討する

企業側は、自社商標を見つけると直ちに「侵害」と考えがちです。しかし、商標が表示されているからといって、常に商標権侵害になるわけではありません。

たとえば、次のような場合には慎重な検討が必要です。

  • 正規品の中古販売で、商品説明のために商標を表示している
  • 互換性を説明するために「○○対応」と記載している
  • 比較広告・レビュー記事・ニュース記事で商標を言及している
  • 消費者がSNSで商品名を投稿している
  • ファンコミュニティが非商業的にブランド名を使っている
  • 自社製品を修理・保守する事業者が対象製品を説明している

このような場合でも、表示態様が「公式」「認定」「正規代理店」と誤認させるものであったり、商標を過度に目立たせて集客していたり、偽造品や非正規品の販売に使っていたりすれば、問題になり得ます。重要なのは、表示の目的、表示の場所、需要者の認識、商品・サービスとの関係、混同のおそれです。

4.6 侵害判断の簡易チェックリスト

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

チェック項目はいの場合の意味注意点
自社に有効な登録商標がある商標法による対応を検討しやすい指定商品・指定役務を確認
相手の標章が同一または類似侵害可能性が高まる外観・称呼・観念を総合判断
商品・サービスが同一または類似侵害可能性が高まる区分番号だけで判断しない
販売・広告・集客に使われている商標的使用の可能性単なる言及との区別が重要
反復継続的に行われている「業として」の可能性個人出品でも事業性あり得る
偽造品・粗悪品が販売されている緊急対応が必要顧客被害・刑事・税関も検討
公式・認定等を装っている混同のおそれが強い広報対応も必要
相手方が匿名発信者情報開示を検討ログ保存を急ぐ
海外サイト・海外発送海外登録・税関・UDRPを検討国内法だけで完結しない
Section 05

インターネット上の商標無断使用の典型類型

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

5.1 ECモール上の偽造品・模倣品販売

最も典型的なのは、ECモール上で自社ブランド名やロゴを使い、偽造品・模倣品を販売するケースです。

典型的な表示例は次のとおりです。

  • 商品名に自社商標を入れている
  • 商品画像に自社ロゴが写っている
  • 商品説明に「正規品」「公式」「認定品」と記載している
  • 自社商品の写真を流用している
  • 価格が極端に安い
  • レビューや販売実績を偽装している
  • 出品者名が正規代理店に似ている
  • 商品到着後に粗悪品・コピー品であることが判明する

この場合、プラットフォームへの知的財産権侵害申告、テスト購入、販売者情報の保存、税関対応、刑事相談、損害賠償請求を検討します。

偽造品は、ブランド毀損だけでなく、顧客の安全に関わります。医療機器、化粧品、食品、電気製品、子ども向け製品、バッテリー製品、スポーツ用品などでは、安全事故や健康被害のリスクがあるため、削除だけでなく顧客向け注意喚起や行政機関への相談が必要になることがあります。

5.2 フリマアプリ・ネットオークションでの商標使用

フリマアプリやネットオークションでは、個人名義のアカウントによる出品が多いため、「業として」の使用かどうかが問題になります。

単発で真正品の中古品を販売するだけであれば、直ちに商標権侵害とはいえない場合があります。一方、次のような事情がある場合には、事業的使用と評価される可能性が高まります。

  • 同一ブランドの商品を多数出品している
  • 継続的に同種商品を販売している
  • 新品・未使用品を大量に扱っている
  • 仕入れ・転売の形跡がある
  • 商品説明やハッシュタグでブランド名を集客に使っている
  • 偽造品または出所不明品を販売している
  • 複数アカウントを使い分けている

フリマアプリ上の商標使用では、ハッシュタグが問題になることがあります。販売促進のためにブランド名をハッシュタグとして付け、検索流入を得る行為は、文脈によって商標的使用と評価される可能性があります。ただし、すべてのハッシュタグ使用が侵害になるわけではなく、商品との関係、販売態様、表示の仕方、需要者の認識を個別に見る必要があります。

5.3 SNSアカウントのなりすまし

SNS上では、自社名、自社ロゴ、商品名、キャンペーン名を使ったなりすましアカウントが発生します。

典型例は次のとおりです。

  • 自社ロゴをプロフィール画像にしている
  • アカウント名が自社公式アカウントに類似している
  • 「公式」「キャンペーン」「当選」などの文言を使っている
  • DMで個人情報やクレジットカード情報を取得しようとする
  • 偽サイトへ誘導する
  • 自社商品を無料提供すると偽る
  • 実在するキャンペーン画像を流用している

この場合、商標権侵害だけでなく、詐欺、フィッシング、著作権侵害、不正競争、名誉・信用毀損、個人情報問題も生じ得ます。プラットフォームへのなりすまし報告、商標権侵害報告、顧客向け注意喚起、警察相談、ドメイン停止、広告停止などを組み合わせる必要があります。

5.4 検索広告・リスティング広告での商標使用

検索広告では、自社商標が次のように使われることがあります。

  • 広告見出しに自社商標が表示される
  • 広告文に自社商標が表示される
  • 表示URL・パスに自社商標が含まれる
  • キーワードとして自社商標が入札される
  • ランディングページで自社商標が使われる
  • 比較広告として自社名が使われる

検索広告の問題は複雑です。プラットフォームポリシー上の扱いと、商標法上の違法性判断が必ずしも一致しません。

Google広告の商標ポリシーでは、商標所有者からの申立てにより一定の広告内使用を制限する仕組みがありますが、広告文ではなくキーワードとしての使用や、表示URLのセカンドレベルドメインについては、ポリシー上の制限対象外とされる場面があります。

したがって、検索広告における商標無断使用では、次のように分けて検討します。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

使用場所実務上の検討
広告文・見出し商標的使用・混同のおそれが問題になりやすい
表示URLプラットフォームポリシーと商標法判断を分けて検討
キーワード入札法的評価が事案依存。証拠取得が難しい場合がある
ランディングページ広告からの導線全体で混同を検討
比較広告正当な比較か、出所混同・信用毀損かを検討

広告問題では、広告のスクリーンショットだけでなく、検索語、表示日時、地域、デバイス、広告主情報、クリック後の遷移先、ランディングページ、広告ライブラリ情報を保存することが重要です。

5.5 メタタグ・タイトルタグ・SEO目的の商標使用

第三者が自社商標をウェブページのタイトルタグ、メタディスクリプション、メタキーワード、構造化データ、alt属性、ページ本文、アンカーテキスト等に入れ、検索流入を得ようとするケースがあります。

この場合、商標がユーザーに直接見えるかどうか、検索結果のスニペットに表示されるか、ウェブページ上で出所表示として機能しているか、競合商品・サービスへの誘導があるかが重要です。

メタタグのようにページ上で目立たない場所であっても、検索結果や広告表示との関係で、需要者の認識に影響を与える場合があります。日本の裁判例でも、ウェブページのHTMLソース内のメタタグ等に他者の標章を用いた事案が問題になったことがあります。

5.6 ドメイン名・サブドメインでの使用

ドメイン名に自社商標が含まれる場合、顧客は公式サイトと誤認する可能性があります。

典型例は次のとおりです。

  • brand-example.jp
  • brand-official.com
  • brand-sale.net
  • brand-support.example
  • brand-login.example
  • brand-campaign.example

このようなドメインが、偽通販、フィッシング、競合誘導、広告収益、転売目的で使われている場合、商標法、不正競争防止法、ドメイン名紛争処理制度、ホスティング事業者への通報、検索エンジンへの通報、警察相談を検討します。

ドメイン名紛争処理制度では、主にドメイン名の取消しまたは移転が問題となります。損害賠償まで求める場合には、別途訴訟等を検討する必要があります。

5.7 アプリ名・アプリストアでの使用

アプリストアでは、自社商標と同一または類似のアプリ名、アイコン、説明文、スクリーンショットが使われることがあります。

問題となる例は次のとおりです。

  • 自社公式アプリと誤認させるアプリ名
  • 自社ロゴに似たアイコン
  • 自社サービスへのログイン情報を入力させる偽アプリ
  • 自社ブランド名を使った非公式クーポンアプリ
  • 自社APIやデータと無関係なのに提携を装うアプリ

この場合、アプリストアの知的財産権侵害申告、セキュリティ部門との連携、顧客向け注意喚起、フィッシング対応、個人情報漏えいリスク評価が必要です。

5.8 アフィリエイト・比較サイト・レビューサイトでの使用

比較サイトやレビューサイトが、自社商標を使って集客し、競合商品へ誘導することがあります。

この場合、商標権侵害だけでなく、景品表示法、ステルスマーケティング規制、不正競争防止法、名誉・信用毀損、著作権侵害が問題となることがあります。

比較・レビュー自体が直ちに違法というわけではありません。問題は、次のような場合です。

  • 公式サイトのように誤認させている
  • 自社商標を過度に目立たせて集客している
  • 虚偽の比較情報を掲載している
  • 自社ロゴや画像を無断転載している
  • 「認定」「提携」「公式」等を偽っている
  • 自社商品を購入しようとした顧客を競合商品へ誤導している
Section 06

商標無断使用を発見してから48時間以内の初動対応

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

次の時系列は、発見から48時間以内に進める作業の順番を示しています。証拠保全の前に相手へ連絡すると証拠が失われるおそれがあるため、上から順に確認することが重要です。

発見直後

責任者と連絡経路を決める

法務・知財・EC・広報・カスタマーサポートの担当を決め、情報を一元化します。

当日

画面とデータを保存する

URL、日時、画面全体、HTMLソース、商品画像、広告、アカウント、取引記録を保存します。

48時間以内

リスク分類と対応ルートを決める

偽造品、公式誤認、広告使用、単発言及などに分け、削除、警告、開示、監視を選びます。

次の分類は、限られた社内リソースをどこに集中させるかを表しています。S、A、B、Cの順に緊急性が下がり、上位ほど削除、広報、警察・税関、専門家相談を早めに検討します。

Sランク

偽造品、フィッシング、詐欺、健康・安全リスク。

Aランク

公式誤認、継続販売、広告流用、顧客混同。

Bランク

競合広告、比較サイト、メタタグ使用。

Cランク

単発の中古販売、消費者投稿、軽微な言及。

6.1 社内の対応責任者を決める

商標無断使用を発見したら、まず社内の対応責任者を決めます。担当が曖昧なまま、営業、広報、マーケティング、EC担当、カスタマーサポートが個別に動くと、証拠が失われたり、相手方に不用意な連絡をしたり、顧客向け説明が矛盾したりするおそれがあります。

理想的には、次のような体制を作ります。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

役割主な担当
インシデント責任者法務・知財・リスク管理部門
証拠保全担当法務、EC担当、システム担当
プラットフォーム申告担当EC運営、マーケティング、法務
広報担当顧客向け注意喚起、メディア対応
カスタマーサポート顧客問い合わせ対応
経営判断者重大案件の方針決定
外部専門家弁護士、弁理士、調査会社、フォレンジック専門家

6.2 証拠保全を最優先する

証拠保全は、商標無断使用対応の成否を左右します。インターネット上の情報は、相手方が削除したり、プラットフォームが非表示化したり、検索結果が変動したりするため、後から同じ状態を再現することが困難です。

最低限保存すべき証拠は、次のとおりです。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

類型保存すべき情報
商品ページURL、商品名、画像、価格、説明文、出品者名、レビュー、販売数、在庫表示
SNS投稿URL、投稿本文、画像、動画、投稿日、アカウント名、プロフィール、フォロワー数
広告検索語、広告文、表示日時、地域、デバイス、スクリーンショット、リンク先
ウェブサイトURL、ページ全体、HTMLソース、メタタグ、タイトルタグ、運営者情報
ドメインWHOIS/RDAP、DNS、登録日、ネームサーバー、SSL証明書、遷移先
取引注文画面、決済記録、配送伝票、商品実物、梱包、同封物
相手方情報アカウントID、メールアドレス、電話番号、会社情報、所在地、銀行口座
顧客被害問い合わせ、苦情、誤購入、詐欺被害、SNS投稿

スクリーンショットは、単に画面の一部を撮るだけでは不十分な場合があります。日時、URL、ブラウザのアドレスバー、ページ全体、クリック前後の状態が分かる形で保存します。可能であれば、PDF保存、動画キャプチャ、ウェブアーカイブ、ソースコード保存も行います。

重大案件では、公証役場での事実実験公正証書、タイムスタンプ、第三者調査会社による証拠化、フォレンジック手法によるログ保全を検討します。

6.3 テスト購入を検討する

偽造品・模倣品販売が疑われる場合、テスト購入が有効です。商品ページだけでは、実際に偽造品が届くか、どのような梱包・同封物があるか、発送元がどこか、販売者情報が何かが分かりません。

テスト購入で保存すべきものは、次のとおりです。

  • 注文前の商品ページ
  • 注文確認画面
  • 決済画面
  • 受注確認メール
  • 発送通知メール
  • 配送伝票
  • 梱包箱
  • 商品本体
  • 商品タグ・ラベル
  • 同封チラシ
  • 領収書・納品書
  • 販売者とのメッセージ
  • 商品の真贋判定記録

ただし、テスト購入には注意点があります。違法性の高い商品、危険物、医薬品、食品、個人情報入力を伴うフィッシングサイトなどでは、社内判断だけで進めず、専門家に相談したうえで安全に実施する必要があります。

6.4 権利情報を整理する

プラットフォーム申告や警告書では、権利情報を正確に示す必要があります。次の情報を一覧化します。

  • 商標登録番号
  • 登録日
  • 出願日
  • 権利者名
  • 登録商標の画像または文字
  • 指定商品・指定役務
  • 類似群コード
  • 更新期限
  • 使用実績
  • 海外登録の有無
  • 代理人情報
  • ライセンシー・正規代理店情報

このとき、社名変更、合併事業譲渡、商標権移転が反映されていないと、申告が却下されたり、権利者性を疑われたりすることがあります。古い商標登録では、権利者名義や住所が現在の会社情報と一致しているかを確認します。

6.5 侵害リスクをランク分けする

発見した全件に同じ強度で対応すると、社内リソースが不足します。まずリスクをランク分けします。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

ランク典型例推奨対応
S偽造品、フィッシング、詐欺、健康・安全リスク即時証拠保全、削除申告、広報、警察・税関・弁護士相談
A公式誤認、継続販売、広告流用、顧客混同削除申告、警告書、発信者情報開示検討
B競合広告、比較サイト、メタタグ使用証拠保全、法的評価、申告・警告を検討
C単発の中古販売、消費者投稿、軽微な言及監視、必要に応じて穏当な連絡

商標権行使は強ければよいわけではありません。正当な比較、真正品の再販売、消費者の自由な言及に対して過度な削除要求を行うと、反発、炎上、信用低下、権利濫用的評価のリスクがあります。

Section 07

商標無断使用のプラットフォーム別削除・申告実務

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

7.1 共通して必要になる資料

主要プラットフォームへの商標権侵害申告では、概ね次の資料が求められます。

  • 申告者の氏名・会社名・連絡先
  • 権利者本人か代理人かの表示
  • 代理人の場合は委任状
  • 商標登録番号
  • 登録商標の内容
  • 権利対象国・地域
  • 侵害コンテンツのURL
  • どの表示が商標権を侵害しているかの説明
  • 対象商品・サービスと指定商品・指定役務の関係
  • 偽造品の場合は真贋判断の根拠
  • 誠実な申告である旨の確認
  • 虚偽申告に関する責任確認

プラットフォーム申告では、長い法律論よりも、権利、対象URL、問題表示、侵害理由、求める措置を簡潔に示すことが重要です。

7.2 Amazonでの商標権侵害申告

Amazonでは、ブランド保護のためにBrand Registryや知的財産権侵害報告の仕組みが用意されています。Amazon Brand Registryでは、登録商標または出願番号等が求められ、権利者がブランド保護ツールを利用できます。Amazonの公式情報では、権利侵害の報告やBrand Registryサポートの利用が案内されています。

実務上は、次のような対応を検討します。

  • Brand Registryへの登録
  • 対象ASIN・商品ページの特定
  • 偽造品の場合はテスト購入
  • 商品画像・説明文・販売者情報の保存
  • 権利侵害報告フォームから申告
  • 繰り返し出品者について継続監視
  • 正規販売店リストとの照合
  • 海外Amazonマーケットプレイスへの横断対応

Amazonでは、商標権侵害、著作権侵害、特許権侵害、偽造品など、申告類型を誤ると処理が遅れることがあります。商標権侵害として申告する場合は、登録商標と対象表示の関係を明確にします。

7.3 楽天市場での商標権侵害申告

楽天市場では、権利侵害に関する通知窓口が設けられています。権利者または代理人による申告、対象URL、権利を証明する資料、代理人の場合の委任状等が必要になります。

楽天市場での対応では、次を整理します。

  • 商品ページURL
  • 店舗名
  • 商品名
  • 画像・説明文
  • 権利侵害の種類
  • 商標登録番号
  • 侵害箇所の特定
  • 権利者本人または代理人であることの証明

ECモールでは、商品ページの削除だけでなく、店舗単位の継続監視、同一販売者の別商品ページ、レビュー操作、検索広告の利用状況も確認します。

7.4 メルカリ等フリマサービスでの申告

メルカリでは、権利者または代理人向けに知的財産権侵害に関する問い合わせ窓口が用意されており、侵害が確認された場合には商品削除等の対応が行われると案内されています。申告には、権利者確認書類、商標登録証等の権利証明資料、代理人の場合の委任状等が求められる場合があります。

フリマサービスでは、個別出品ごとのURL保存だけでなく、次の点も重要です。

  • 同一出品者の過去・現在の出品一覧
  • 同一画像の使い回し
  • ハッシュタグの利用状況
  • 販売済み商品の履歴
  • 価格帯
  • 商品説明の文言
  • 発送元地域
  • 購入者レビュー

偽造品販売が継続的に行われている場合、アカウント停止、再出品防止、発信者情報開示、警察相談まで検討します。

7.5 Google広告・検索結果への対応

Google広告では、商標所有者からの申立てにより、一定の広告内の商標使用について制限が行われる場合があります。一方で、Googleの広告ポリシーでは、広告文ではなくキーワードとしての使用や、表示URLのセカンドレベルドメインについては、通常、商標ポリシー上の制限対象とされない場面があると説明されています。

対応のポイントは次のとおりです。

  • 広告表示の証拠を保存する
  • 検索語、地域、日時、デバイスを記録する
  • 広告文に商標が表示されているか確認する
  • 表示URLと実際の遷移先を保存する
  • ランディングページの表示内容を保存する
  • 広告主が競合か、販売店か、比較サイトかを確認する
  • Googleの商標申立フォームを利用する
  • 悪質な場合は警告書・仮処分・訴訟を検討する

検索広告では、プラットフォームポリシー上は削除されなくても、個別事情によって法的請求が検討できる場合があります。逆に、法的には慎重な検討が必要な事案でも、プラットフォームポリシー上は広告停止が可能な場合があります。両者を分けて判断することが重要です。

7.6 Meta、Instagram、Facebookでの申告

Metaは、商標権者が商標権侵害を報告するためのフォームを用意しており、商標が商品・サービスの出所について混同を生じさせる使用を防ぐものであると説明しています。

SNSでは、商標権侵害だけでなく、なりすまし、詐欺、著作権侵害、プライバシー侵害、個人情報詐取が同時に問題となることがあります。そのため、次の申告ルートを整理します。

  • 商標権侵害報告
  • なりすまし報告
  • 詐欺・フィッシング報告
  • 著作権侵害報告
  • 偽アカウント報告
  • 広告違反報告

公式アカウントの認証、プロフィール上の注意喚起、キャンペーンページでの正規情報掲載、顧客向けFAQ整備も重要です。

7.7 Xでの商標権侵害申告

Xは、商標権者または権限を有する代理人による商標権侵害報告を受け付けています。Xの公式ポリシーでは、公正使用、説明的使用、指名的使用、商標登録の範囲外の使用などはポリシー違反に当たらない場合があるとも説明されています。

Xでの対応では、次の点を保存します。

  • 投稿URL
  • アカウントID
  • 表示名
  • プロフィール画像
  • プロフィール文
  • 投稿本文
  • 画像・動画
  • リプライ・引用投稿
  • DM誘導の有無
  • 外部リンク先
  • 広告として配信されているか

なりすましアカウントでは、商標権侵害報告だけでなく、なりすまし・詐欺報告を併用する方が早い場合があります。

7.8 LINEヤフー広告での商標使用制限

LINEヤフーの広告関連ヘルプでは、検索広告等における広告文中の第三者商標使用について、商標権者からの申告により制限を行う仕組みが案内されています。

対応時には、次の情報を整理します。

  • 対象広告の表示画面
  • 検索語
  • 広告文
  • 表示URL
  • 遷移先URL
  • 商標登録番号
  • 商標権者情報
  • 制限を求める対象
  • 許諾済み広告主がいる場合のリスト

広告文中の商標使用を制限する場合、自社の正規代理店や販売パートナーの広告に影響が出ることがあります。そのため、申告前に、正規販売店、代理店、グループ会社、業務委託先、フランチャイズ加盟店などの広告利用状況を確認します。

7.9 独自サイト・ブログ・掲示板・ホスティング事業者への対応

独自ドメインのウェブサイトや掲示板、ブログ、海外ホスティングサイトでは、ECモールやSNSのような定型フォームがない場合があります。この場合、次の順に対応を検討します。

  1. サイト運営者情報を確認する
  2. 問い合わせフォーム、特定商取引法表示、プライバシーポリシーを確認する
  3. ドメイン登録者情報、ホスティング事業者、CDN、DNSを確認する
  4. サイト運営者に警告書または削除要請を送る
  5. ホスティング事業者に権利侵害申告を行う
  6. 情報流通プラットフォーム対処法に基づく送信防止措置申出を検討する
  7. 発信者情報開示、仮処分、訴訟を検討する

海外ホスティングやCDNを利用している場合、国内の削除要請だけでは対応されないことがあります。その場合、英語での申告、海外商標権、UDRP、検索エンジンへの通報、決済事業者への通報、広告ネットワークへの通報など、複数ルートを組み合わせます。

Section 08

商標無断使用で情報流通プラットフォーム対処法を使う場面

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

8.1 同法を利用する場面

情報流通プラットフォーム対処法は、インターネット上の権利侵害情報について、削除申出や発信者情報開示を検討する際に重要です。

商標権侵害の場面では、次のような場合に関係します。

  • SNS投稿で自社商標が無断使用されている
  • ECモールの商品ページで偽造品が販売されている
  • 掲示板・ブログ・動画サイトで自社ロゴが無断使用されている
  • 匿名アカウントが公式を装っている
  • 発信者を特定して損害賠償請求をしたい
  • プラットフォームが削除申出に対応しない

8.2 大規模プラットフォーム事業者の義務

総務省のガイドラインでは、大規模特定電気通信役務提供者について、削除対応の迅速化・運用状況の透明化に関する義務が整理されています。オンラインで申出を行う方法、申出に対する調査、判断結果の通知、削除基準の公表等が問題になります。

実務上、企業側は次の点を確認します。

  • そのサービスが大規模特定電気通信役務提供者に該当するか
  • 申出フォームが用意されているか
  • 申出時に必要な情報が何か
  • 商標権侵害に関するガイドラインがあるか
  • 申出後の通知期限・通知方法はどうか
  • 削除されなかった場合の理由が示されるか
  • 不服申立てや再申告の方法があるか

8.3 商標権関係ガイドラインの位置づけ

商標権関係ガイドラインは、プラットフォーム事業者が商標権侵害の申出を受けた際の判断の参考となる資料です。同ガイドラインは、SNS、ECプラットフォーム、ネットオークション、フリマサービス、ウェブサイト等を対象に、インターネット上の商標権侵害に対する迅速・適切な対応を図ることを目的としています。

ただし、ガイドラインは裁判所の最終判断ではありません。商標権侵害の成否は、最終的には裁判所が個別事情に基づいて判断します。ガイドライン上削除が認められやすい類型であっても、相手方が争えば、最終的には訴訟や仮処分で判断される可能性があります。

8.4 申出書に書くべき内容

送信防止措置を申し出る際は、次の内容を簡潔かつ具体的に記載します。

件名 ― 商標権侵害に基づく送信防止措置申出

1. 申出者
会社名 ―
担当部署 ―
担当者名 ―
連絡先 ―
権利者本人/代理人の別 ―

2. 権利の内容
商標登録番号 ―
登録商標 ―
指定商品・指定役務 ―
権利者名 ―
登録証またはJ-PlatPat情報 ―

3. 侵害情報の特定
対象URL ―
対象アカウント ―
対象商品名・投稿名 ―
掲載日時または確認日時 ―
問題となる表示箇所 ―

4. 侵害理由
対象表示が登録商標と同一または類似である理由 ―
対象商品・サービスが指定商品・指定役務と同一または類似である理由 ―
商標的使用に当たる理由 ―
混同のおそれ・顧客被害の有無 ―

5. 求める措置
当該情報の削除または非表示化 ―
出品停止 ―
アカウント停止 ―
再掲載防止 ―

6. 添付資料
商標登録証 ―
スクリーンショット ―
商品画像 ―
購入証拠 ―
委任状 ―
その他 ―

申出書では、相手を非難する表現を過度に用いるよりも、プラットフォームが判断しやすい事実と法的関係を整理する方が効果的です。

Section 09

商標無断使用への警告書・通知書の使い方

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

9.1 警告書を送るべき場面

プラットフォーム申告だけで解決できない場合、相手方に警告書または通知書を送付します。

警告書が有効な場面は、次のような場合です。

  • 相手方の身元が分かっている
  • 継続的に販売・広告を行っている
  • 任意交渉で停止・損害賠償・再発防止が見込める
  • プラットフォーム削除だけでは再発する
  • 取引先・代理店・元従業員・競合企業が関与している
  • 将来の訴訟に備えて意思表示を残したい

9.2 警告書に記載する内容

警告書には、少なくとも次の事項を記載します。

  • 自社の商標権の表示
  • 相手方の行為の特定
  • 侵害と考える理由
  • 停止を求める行為
  • 削除・廃棄・広告停止等の具体的要求
  • 在庫・売上・販売先情報の開示要求
  • 損害賠償請求を留保する旨
  • 再発防止措置
  • 回答期限
  • 期限までに回答がない場合の対応

9.3 警告書のひな形

以下は、企業内で検討するための骨子例です。実際に送付する前に、事案に応じて専門家の確認を受けることが望まれます。

通知書

当社は、登録商標「○○」(商標登録第○○号、指定商品・指定役務 ― ○○)の商標権者です。

貴社/貴殿は、下記URLにおいて、当社の登録商標と同一または類似する標章を、当社の指定商品・指定役務と同一または類似する商品・サービスについて使用しているものと確認しました。

対象URL ―
確認日時 ―
問題となる表示 ―
対象商品・サービス ―

当該表示は、需要者に対し、当社または当社と関係のある事業者の商品・サービスであるとの誤認を生じさせるおそれがあり、当社の商標権を侵害するものと考えます。

つきましては、貴社/貴殿に対し、以下を求めます。

1. 対象表示の使用停止
2. 対象ページ、広告、投稿、出品の削除または非表示化
3. 在庫品、包装、広告物等からの当該表示の除去
4. 販売数量、販売期間、売上額、仕入先、販売先の開示
5. 再発防止策の提示
6. 本通知受領後○日以内の書面回答

期限までに誠意ある回答がない場合、当社は、差止請求、損害賠償請求、発信者情報開示、仮処分申立て、刑事告訴その他必要な措置を検討します。

なお、本通知は、当社が有する一切の権利および請求を放棄するものではありません。

9.4 警告書を送る際の注意点

警告書は強力な手段ですが、リスクもあります。

注意すべき点は次のとおりです。

  • 権利範囲を過大に主張しない
  • 正当な使用まで一律に侵害と断定しない
  • 事実確認前に「偽造品」「詐欺」などと断定しない
  • 取引先やプラットフォームに過剰な通報をしない
  • SNSで相手方を名指しして非難しない
  • 相手方の反論や無効主張に備える
  • 独占禁止法・不正競争・信用毀損の反撃リスクを意識する

特に競合企業への警告では、過大な権利主張が取引妨害と評価されるリスクがあります。自社商標を守ることと、適法な競争や正当な表現を不当に妨げないことのバランスが重要です。

Section 10

匿名の商標無断使用と発信者情報開示

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

10.1 発信者情報開示が必要になる場面

インターネット上の商標無断使用では、相手方が匿名であることが多くあります。

発信者情報開示を検討すべき典型例は次のとおりです。

  • 偽造品販売者が匿名アカウントを使っている
  • SNSアカウントの運営者が不明
  • 広告主情報が開示されていない
  • ウェブサイトに運営者情報がない
  • プラットフォームが削除しても再発する
  • 損害賠償請求をしたい
  • 差止請求の相手方を特定したい

削除だけで足りる事案もありますが、悪質な反復侵害では、相手方を特定しなければ根本解決になりません。

10.2 ログ保存の重要性

発信者情報開示では、プラットフォームや接続プロバイダが保有するログが重要です。しかし、ログには保存期間があります。対応が遅れると、IPアドレスやタイムスタンプ等が消去され、相手方を特定できなくなる可能性があります。

したがって、匿名侵害者への対応では、削除申請と並行して、ログ保存の要請や発信者情報開示の要否を早期に判断します。重大案件では、弁護士に相談し、開示請求、消去禁止、仮処分、裁判手続を検討します。

10.3 開示請求で整理すべき事項

発信者情報開示を検討する際は、次の事項を整理します。

  • 侵害情報のURL
  • 投稿日時・出品日時
  • 権利侵害の明白性
  • 自社商標権の内容
  • 商標権侵害と考える理由
  • 損害賠償請求等の正当な理由
  • プラットフォームが保有する情報
  • 接続プロバイダの特定可能性
  • ログ保存期間
  • 海外事業者か国内事業者か

発信者情報開示は、単なる問い合わせではなく、法的要件を満たす必要がある手続です。プラットフォームによっては任意開示が難しく、裁判所手続が必要になることがあります。

Section 11

商標無断使用に対する民事上の法的措置

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

11.1 差止請求

商標権者は、商標権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対して、侵害の停止または予防を求めることができます。インターネット上の事案では、次のような措置が問題になります。

  • 商品ページの削除
  • 広告の停止
  • SNS投稿の削除
  • アカウント名の変更
  • ドメイン名の使用停止
  • ロゴ画像の削除
  • メタタグ・タイトルタグの修正
  • 在庫品・包装・広告物の廃棄
  • 再掲載の禁止

差止請求は、損害額の立証とは別に、侵害または侵害のおそれを止めるための手段です。ブランド毀損や顧客混同が続いている場合には、損害賠償よりも先に差止めを優先すべきことがあります。

11.2 仮処分

緊急性が高い場合、通常訴訟の判決を待っていては被害が拡大します。この場合、裁判所に仮処分を申し立てることを検討します。

仮処分を検討すべき典型例は次のとおりです。

  • 偽造品販売が急速に拡散している
  • フィッシングサイトが顧客情報を収集している
  • 重要なキャンペーン期間中に公式誤認広告が出ている
  • 新商品発売直後に模倣サイトが検索上位に出ている
  • 削除申告にプラットフォームが応じない
  • 相手方が警告を無視して再掲載している

仮処分では、権利侵害の疎明、保全の必要性、対象表示の特定、求める措置の明確性が重要です。保証金が必要になる場合もあります。

11.3 損害賠償請求

商標権侵害により売上減少、利益喪失、ブランド毀損、調査費用、広告費の増加等が生じた場合、損害賠償請求を検討します。

商標法では、損害額の立証困難を緩和するため、侵害者利益の推定やライセンス料相当額の請求等の規定があります。特許庁は、商標法38条2項について、侵害者が受けた利益を商標権者の損害額と推定する考え方を説明し、38条3項について、ライセンス料相当額を最低限の損害額として請求できる旨を説明しています。

実務上、損害賠償請求では次の証拠が重要です。

  • 侵害品の販売数量
  • 侵害品の売上額
  • 侵害者の利益率
  • 自社商品の販売減少
  • 自社商品の利益率
  • 市場での競合関係
  • 侵害期間
  • 広告表示回数・クリック数
  • 顧客問い合わせ・苦情
  • ブランド毀損の状況
  • 調査費用・弁護士費用等

インターネット上の侵害では、販売数量や売上額が相手方内部にあるため、証拠収集が難しいことがあります。テスト購入、販売実績表示、レビュー数、ランキング、広告出稿状況、決済情報、発信者情報開示後の資料開示などを組み合わせて立証を検討します。

11.4 信用回復措置

偽造品販売や公式誤認広告により、自社の信用が害された場合、信用回復措置を求めることがあります。典型例は、謝罪広告、訂正文、顧客向け通知、ウェブサイト上の告知等です。

ただし、信用回復措置は表現内容や掲載媒体をめぐって争いになりやすいため、必要性、相当性、効果を慎重に検討します。

Section 12

商標無断使用で刑事対応・警察相談を検討する場面

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

12.1 刑事対応を検討すべき場面

商標権侵害は、事案によって刑事罰の対象になります。特に偽造品販売、組織的販売、反復継続的な悪質販売、詐欺・フィッシングを伴う場合には、警察相談や刑事告訴を検討します。

刑事対応を検討すべき典型例は次のとおりです。

  • 偽ブランド品を大量販売している
  • 顧客に正規品と偽って販売している
  • 海外から偽造品を輸入している
  • 複数アカウントで継続販売している
  • 顧客の個人情報や決済情報を詐取している
  • 警告後も販売を継続している
  • 反社会的勢力や組織的販売網が疑われる

12.2 刑事対応で準備すべき資料

警察相談や告訴では、次の資料を整理します。

  • 商標登録証
  • 権利者であることの証明
  • 侵害ページの証拠
  • テスト購入品
  • 真贋判定書
  • 販売者情報
  • 取引記録
  • 顧客被害の情報
  • 侵害規模の推定
  • 過去の警告履歴
  • プラットフォーム申告履歴

刑事対応では、民事上の権利行使とは異なり、捜査機関が犯罪として取り扱うに足りる資料が必要です。単なる権利範囲の争い、商標類否が微妙な事案、真正品の再販売に関する争いなどでは、刑事対応が適さない場合があります。

Section 13

商標無断使用と偽造品輸入を税関で止める方法

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

13.1 税関差止めが有効な場面

海外から偽造品が流入している場合、税関差止めは非常に重要です。オンライン販売では、販売ページが国内向けであっても、商品は海外から発送されることがあります。税関で止めることができれば、国内市場への流入を抑えることができます。

税関は、知的財産侵害物品について輸入・輸出の差止申立制度を設けています。権利者は、自己の知的財産権を侵害すると認める貨物について、税関長に対し差止申立てを行うことができます。

13.2 個人輸入と偽造品

かつては、個人使用目的の輸入について問題となる場面がありましたが、税関は、海外事業者から日本国内の者に宛てて郵送等される模倣品について、商標権等を侵害する場合には輸入できない旨を案内しています。税関の公式情報では、商標権または意匠権を侵害する物品について、一定の海外事業者から国内者に宛てたものが輸入禁止の対象となることが説明されています。

ただし、真正品の並行輸入、権利者の許諾がある商品、商標権を侵害しない商品は別です。偽造品か真正品か、並行輸入品として適法かは、事案ごとに慎重な判断が必要です。

13.3 税関対応で準備すべき情報

税関差止めでは、次のような情報が役立ちます。

  • 商標登録証
  • 正規品の写真
  • 偽造品の特徴
  • 真贋判定ポイント
  • 正規販売経路
  • 模倣品の販売サイト情報
  • 価格差
  • 発送元国
  • 仕出人情報
  • 輸入者情報
  • 過去の差止実績

税関対応は、オンライン削除とは異なり、物流段階での対策です。ECモール削除、警察相談、税関差止め、顧客向け注意喚起を組み合わせることで、より実効的なブランド保護が可能になります。

Section 14

商標無断使用と偽ドメインへの対応

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

14.1 ドメイン名侵害の特徴

ドメイン名に自社商標が含まれる場合、顧客が公式サイトと誤認するリスクが高くなります。特に、ログイン画面、決済画面、キャンペーンページ、サポートページを装うサイトは危険です。

ドメイン名問題では、次の情報を保存します。

  • ドメイン名
  • URL
  • WHOIS/RDAP情報
  • 登録日
  • レジストラ
  • ネームサーバー
  • DNSレコード
  • SSL証明書情報
  • ウェブサイト画面
  • 遷移先URL
  • フィッシングフォームの有無
  • 決済画面の有無

14.2 JP-DRPとUDRP

.jpドメインでは、JP-DRPの利用を検討します。JP-DRPでは、ドメイン名が申立人の商標等と同一または混同を引き起こすほど類似していること、登録者が正当な利益を有しないこと、登録または使用が不正目的であることが主な要件として整理されています。認められる救済は、原則としてドメイン名の移転または取消しです。

.com.net.orgなどのgTLDでは、UDRPを検討します。ICANNのUDRPは、悪意あるドメイン名登録に関する紛争を、裁判所以外の迅速な手続で処理する制度です。

14.3 ドメイン名対応の選択肢

ドメイン名問題では、次の選択肢があります。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

手段主な目的特徴
レジストラ通報明白な規約違反・詐欺対応迅速な場合があるが、対応は事業者次第
ホスティング事業者通報サイト停止コンテンツ停止に有効な場合がある
UDRP・JP-DRPドメイン移転・取消し損害賠償は原則対象外
仮処分緊急停止裁判所手続。証拠と緊急性が重要
訴訟差止め・損害賠償時間と費用がかかるが包括的解決が可能
警察相談フィッシング・詐欺顧客被害がある場合に重要
Section 15

商標無断使用で必要になる広報・顧客対応

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

15.1 法務対応と広報対応は分けて設計する

商標無断使用は、法務部門だけで完結しないことがあります。顧客が偽サイトで購入した、フィッシングDMを受け取った、偽キャンペーンに応募した、粗悪品を正規品と誤認したという場合、広報・カスタマーサポートの対応が必要です。

広報対応で重要なのは、次の点です。

  • 事実確認前に断定しない
  • 顧客に必要な注意喚起を行う
  • 正規サイト・正規アカウントを明示する
  • 偽サイト・偽アカウントの特徴を説明する
  • 個人情報や決済情報を入力しないよう案内する
  • 被害申告窓口を整備する
  • 法的措置の詳細を過度に公表しない

15.2 顧客向け注意喚起文の例

当社名または当社ブランド名を使用した偽サイト・偽SNSアカウントにご注意ください。

現在、当社名または当社ブランド名を無断で使用し、当社公式サイトまたは公式アカウントであるかのように装うウェブサイト・SNSアカウントが確認されています。

当社の公式サイトおよび公式SNSアカウントは以下のとおりです。

公式サイト ―
公式X ―
公式Instagram ―
公式Facebook ―

不審なサイトやアカウントでは、個人情報、クレジットカード情報、パスワード等を入力しないでください。不審な連絡を受けた場合は、当社お問い合わせ窓口までご連絡ください。

当社は、関係機関および各プラットフォームに対し、必要な対応を進めています。

顧客向け注意喚起では、相手方を過度に刺激する表現や、事実未確認の断定を避けます。一方で、顧客保護のために必要な情報は明確に伝えます。

Section 16

商標無断使用を削除後に再発させない仕組み

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

16.1 商標ポートフォリオの整備

商標無断使用への最も基本的な予防策は、商標登録の整備です。

確認すべき点は次のとおりです。

  • 主要ブランド名を登録しているか
  • ロゴだけでなく文字商標も登録しているか
  • 旧ロゴ・略称・英字表記・カタカナ表記をカバーしているか
  • 主要商品・サービスの指定範囲が適切か
  • EC、アプリ、広告、教育、コンサルティング等の周辺サービスをカバーしているか
  • 海外販売国で登録しているか
  • グループ会社・事業譲渡後の名義が整理されているか
  • 更新期限を管理しているか

インターネット上の侵害は国境を越えます。海外EC、海外SNS、海外広告、海外ドメインでの対応には、当該国・地域での商標登録が重要になる場合があります。

16.2 ブランド使用ガイドラインの整備

正規代理店、販売店、フランチャイズ、アフィリエイト、業務委託先、広告代理店がブランドを使用する場合、ブランド使用ガイドラインを整備します。

ガイドラインには、次の事項を含めます。

  • 使用できる商標
  • 使用できるロゴデータ
  • 使用禁止例
  • 「公式」「認定」「正規代理店」表示の条件
  • 広告文での使用ルール
  • SNSアカウント名での使用ルール
  • ドメイン名での使用禁止
  • ハッシュタグ使用ルール
  • 画像・動画素材の使用範囲
  • 契約終了後の使用停止義務
  • 違反時の措置

ブランド使用ルールが曖昧だと、正規取引先の表示と不正使用の区別が難しくなります。プラットフォーム申告時にも、正規販売店か非正規販売者かを明確に説明できる体制が必要です。

16.3 モニタリング体制

再発防止には、継続的なモニタリングが不可欠です。

監視対象は次のとおりです。

  • Google検索結果
  • Google広告・検索広告
  • ECモール
  • フリマアプリ
  • SNS
  • 動画サイト
  • アプリストア
  • ドメイン名登録
  • 海外EC
  • 画像検索
  • 口コミサイト
  • アフィリエイトサイト

監視頻度は、ブランドの重要度や被害状況に応じて設定します。新商品発売、キャンペーン、セール、メディア露出、炎上時、偽造品発見後は監視頻度を高めます。

16.4 プラットフォームのブランド保護プログラムを活用する

主要EC・SNS・広告プラットフォームには、ブランド保護プログラムや権利者向け窓口が用意されている場合があります。

活用すべき施策は次のとおりです。

  • Amazon Brand Registry
  • ECモールの権利者登録
  • フリマサービスの権利者保護プログラム
  • SNS公式アカウント認証
  • 広告プラットフォームの商標使用制限
  • ドメイン監視サービス
  • 偽サイト監視サービス
  • 税関差止申立て

権利者登録を事前に行っておくと、侵害発見後の申告が迅速になります。

16.5 社内プレイブックの作成

商標無断使用は突然発生します。その場で対応方針を考えると、証拠保全漏れ、申告漏れ、広報遅れが生じます。事前に社内プレイブックを作成します。

プレイブックには、次を含めます。

  • 発見時の連絡先
  • 初動証拠保全チェックリスト
  • リスクランク基準
  • プラットフォーム別申告先
  • 商標登録情報一覧
  • 正規販売店一覧
  • 顧客向け注意喚起テンプレート
  • 警告書テンプレート
  • 外部弁護士・弁理士連絡先
  • 経営報告基準
  • 再発監視方法
Section 17

商標無断使用で弁護士・弁理士等へ相談すべきタイミング

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

17.1 弁護士へ相談すべき場面

次の場面では、弁護士への相談を強く検討すべきです。

  • 差止請求・損害賠償請求を行いたい
  • 仮処分を検討している
  • 発信者情報開示を行いたい
  • 相手方が反論している
  • 相手方が競合企業・取引先である
  • 警告書を送る前に法的リスクを確認したい
  • 刑事告訴を検討している
  • 顧客被害が出ている
  • 海外事業者・海外サイトが関係する
  • プラットフォームが削除に応じない
  • 炎上・報道リスクがある

弁護士を選ぶ際には、単に「企業法務に詳しい」だけでなく、次の経験を確認するとよいでしょう。

  • 商標権侵害事件の経験
  • インターネット上の権利侵害対応の経験
  • 発信者情報開示の経験
  • 仮処分・訴訟の経験
  • EC・SNS・広告プラットフォーム対応の経験
  • 偽造品・税関・刑事対応の経験
  • 海外プラットフォームや英語対応の経験
  • 広報・危機管理との連携経験

17.2 弁理士へ相談すべき場面

弁理士は、商標出願、登録、権利範囲、類否判断、商標ポートフォリオ構築に関する専門家です。

次の場面では、弁理士への相談が有効です。

  • 自社商標の登録状況を確認したい
  • 新しいブランド名を出願したい
  • 指定商品・指定役務を見直したい
  • 海外商標出願を検討したい
  • 類似商標調査をしたい
  • 商標権侵害の前提となる権利範囲を分析したい
  • ブランド保護のための出願戦略を作りたい

実務では、弁護士と弁理士が連携することが多くあります。弁理士が権利範囲や出願戦略を整理し、弁護士が交渉、削除申請、仮処分、訴訟、損害賠償、発信者情報開示を担当するという役割分担が考えられます。

17.3 相談時に持参すべき資料

専門家へ相談する際は、次の資料を準備します。

  • 商標登録証またはJ-PlatPat情報
  • 侵害ページのURL
  • スクリーンショット
  • 商品画像
  • 相手方情報
  • テスト購入品
  • 顧客問い合わせ
  • プラットフォーム申告履歴
  • 相手方とのやり取り
  • 自社商品の販売資料
  • 正規販売店リスト
  • 被害額の概算
  • 緊急性の説明

資料が整理されているほど、初回相談の精度が上がり、対応スピードも向上します。

Section 18

商標無断使用に関するよくある質問

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

Q1. 商標登録していないブランド名でも対応できますか。

対応できる可能性はあります。ただし、登録商標に基づく商標権侵害の主張はできません。未登録の場合は、不正競争防止法、著作権、ドメイン名紛争処理制度、プラットフォーム規約、詐欺・なりすまし報告などを検討します。

未登録商標で不正競争防止法を使う場合、周知性・著名性、混同のおそれ、営業上の利益侵害等の立証が必要になります。将来の紛争を避けるためにも、主要ブランドは早期に商標出願することが重要です。

Q2. 自社商標をハッシュタグで使われただけでも侵害になりますか。

文脈によります。販売促進のために、他社商品や偽造品に自社商標のハッシュタグを付け、検索流入を得ている場合には、商標的使用と評価される可能性があります。一方、消費者が感想投稿で商品名をハッシュタグにする場合など、直ちに侵害とはいえない場面もあります。

判断には、販売目的、反復継続性、対象商品との関係、表示態様、需要者の認識が重要です。

Q3. 競合企業が検索広告のキーワードに自社商標を使っているようです。違法ですか。

検索広告のキーワード使用は、プラットフォームポリシー上の扱いと商標法上の判断を分けて検討する必要があります。広告文に自社商標が表示され、公式サイトや提携先と誤認させる場合は問題になりやすいです。一方、単なるキーワード入札については、証拠取得や法的評価が難しいことがあります。

まずは、広告文、検索語、表示日時、地域、デバイス、リンク先、ランディングページを保存し、プラットフォーム申告と法的対応の両方を検討します。

Q4. フリマアプリで1点だけ自社ブランドの中古品が売られています。削除できますか。

真正品の中古品が単発で販売されているだけであれば、直ちに商標権侵害とはいえない場合があります。商標権は、正規に流通した真正品の通常の再販売まで常に禁止するものではありません。

ただし、偽造品である、公式・認定を装っている、大量・継続販売している、商標を販売促進のために濫用している、商品説明が虚偽であるといった事情があれば、対応を検討します。

Q5. 削除申請を先にしてもよいですか。

緊急性が高い場合は削除申請を急ぐべきことがあります。ただし、削除されると証拠が見られなくなるため、原則として削除申請前に証拠保全を行います。損害賠償請求、発信者情報開示、刑事対応、再発防止を検討する場合、削除前の証拠が重要です。

Q6. プラットフォームが削除に応じません。どうすればよいですか。

まず、申告内容に不足がないかを確認します。商標登録番号、対象URL、侵害箇所、指定商品・指定役務との関係、商標的使用の説明が不十分だと、削除されないことがあります。

再申告、補足資料提出、上位窓口への連絡、情報流通プラットフォーム対処法に基づく申出、発信者情報開示、仮処分、訴訟を検討します。重大案件では専門家への相談が重要です。

Q7. 相手方に直接DMで警告してもよいですか。

軽微な事案では有効な場合もありますが、注意が必要です。相手方が証拠を削除する、アカウントを逃がす、反論を公開する、炎上させる可能性があります。重大案件では、証拠保全を先に行い、警告書の内容を慎重に整えてから連絡するべきです。

Q8. 偽サイトが海外サーバーにあります。国内から対応できますか。

対応できる可能性はありますが、国内手続だけで完結しない場合があります。商標登録国、ドメイン名、レジストラ、ホスティング事業者、CDN、決済事業者、広告ネットワーク、検索エンジン、SNS、税関など、複数のルートを検討します。

海外サイトでは、英語での申告、UDRP、海外商標権、現地弁護士との連携が必要になることがあります。

Q9. 自社商標が広告や比較記事で使われています。すぐ削除できますか。

比較・レビュー・ニュース・説明目的での商標使用は、常に違法とは限りません。公式誤認、虚偽表示、信用毀損、過度な商標利用、競合誘導、画像無断転載、景品表示法上の問題などを個別に検討します。

削除要求を行う前に、問題となる表示、虚偽性、混同のおそれ、商標的使用の有無を整理することが重要です。

Q10. どのくらいの期間で解決しますか。

事案によります。プラットフォーム申告で数日から数週間で削除されることもあります。一方、発信者情報開示、仮処分、訴訟、海外対応、税関対応を伴う場合は、より長期化します。

重要なのは、早期に証拠保全と方針決定を行い、削除だけで終わらせる事案か、相手方特定・損害賠償・再発防止まで進める事案かを見極めることです。

Section 19

商標無断使用対応の実務チェックリスト

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

次の一覧は、実務で使う確認項目を4つのまとまりに整理したものです。各まとまりを順番に確認することで、証拠、権利、判断、手続の抜け漏れを防ぎます。

発見時

証拠と緊急度

発見日時、対象URL、画面全体、画像、顧客被害を確認します。

権利確認

自社商標の状態

登録番号、登録商標、指定商品・指定役務、権利者名義を確認します。

侵害判断

表示と取引実情

標章、商品・サービス、商標的使用、混同のおそれを確認します。

対応選択

手続の組合せ

削除申告、警告書、開示、仮処分、損害賠償を検討します。

19.1 発見時チェックリスト

  • 発見日時を記録した
  • 発見者を記録した
  • 対象URLを保存した
  • 画面全体のスクリーンショットを保存した
  • 商品画像・投稿画像を保存した
  • HTMLソースを保存した
  • 検索広告の場合、検索語・地域・デバイスを記録した
  • SNSの場合、アカウント情報を保存した
  • ECの場合、出品者情報・商品番号を保存した
  • ドメインの場合、WHOIS/RDAPを保存した
  • テスト購入の要否を検討した
  • 顧客被害の有無を確認した
  • 緊急度をランク分けした

19.2 権利確認チェックリスト

  • 商標登録番号を確認した
  • 登録商標の表示を確認した
  • 指定商品・指定役務を確認した
  • 権利者名義を確認した
  • 更新期限を確認した
  • 海外登録の有無を確認した
  • 正規販売店・ライセンシーを確認した
  • 未登録表示の場合、不正競争防止法の可能性を検討した

19.3 侵害判断チェックリスト

  • 相手の標章が同一または類似か確認した
  • 商品・サービスが同一または類似か確認した
  • 商標的使用に当たるか検討した
  • 「業として」の使用に当たるか検討した
  • 正当な使用・真正品再販売・説明的使用の可能性を検討した
  • 混同のおそれを検討した
  • 顧客被害や信用毀損を確認した

19.4 対応ルート選択チェックリスト

  • プラットフォーム申告で足りるか検討した
  • 警告書送付の要否を検討した
  • 発信者情報開示の要否を検討した
  • 仮処分の要否を検討した
  • 損害賠償請求の要否を検討した
  • 刑事相談の要否を検討した
  • 税関差止めの要否を検討した
  • ドメイン名紛争処理の要否を検討した
  • 顧客向け注意喚起の要否を検討した
  • 再発防止策を検討した
Section 20

商標無断使用の事案別対応シナリオ

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

20.1 偽造品がECモールで販売されている場合

  1. 商品ページ、出品者情報、レビュー、価格、画像を保存する
  2. 自社商標権の登録内容を確認する
  3. テスト購入を検討する
  4. 真贋判定を行う
  5. ECモールに商標権侵害・偽造品として申告する
  6. 悪質な場合は警察相談・刑事告訴を検討する
  7. 海外発送の場合は税関差止めを検討する
  8. 同一出品者・類似出品を監視する
  9. 顧客向け注意喚起を検討する
  10. 損害賠償・再発防止合意を検討する

20.2 SNSで公式を装うアカウントが出現した場合

  1. アカウント情報、投稿、プロフィール、画像、外部リンクを保存する
  2. 自社公式アカウントとの混同可能性を確認する
  3. 詐欺・フィッシングの有無を確認する
  4. SNSプラットフォームに商標権侵害・なりすましとして報告する
  5. 顧客向け注意喚起を行う
  6. 外部リンク先のドメイン・ホスティングを調査する
  7. 必要に応じて警察相談・発信者情報開示を検討する
  8. 再発監視を行う

20.3 競合企業が広告文に自社商標を使っている場合

  1. 検索語、広告文、日時、地域、デバイス、URLを保存する
  2. ランディングページを保存する
  3. 広告主を特定する
  4. 商標的使用・混同のおそれを検討する
  5. 広告プラットフォームに商標申立てを行う
  6. 競合企業へ警告書を送るか検討する
  7. 広告停止、再発防止、損害賠償を検討する

20.4 偽ドメインでフィッシングサイトが作られた場合

  1. ドメイン情報、サイト画面、入力フォーム、SSL証明書を保存する
  2. 顧客被害の有無を確認する
  3. レジストラ・ホスティング事業者・CDNに通報する
  4. 検索エンジン・ブラウザ・セキュリティ機関に通報する
  5. SNS・メール経由の拡散を監視する
  6. 顧客向け注意喚起を行う
  7. JP-DRP・UDRPを検討する
  8. 警察相談を検討する
  9. 類似ドメインを追加監視する
Section 21

商標無断使用に備える社内規程・運用設計

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

21.1 ブランド侵害対応規程に入れるべき項目

企業が継続的にブランドを守るには、社内規程または運用マニュアルを整備します。

含めるべき項目は次のとおりです。

  • 目的
  • 適用範囲
  • 対象ブランド・商標一覧
  • 発見時の報告ルート
  • 初動証拠保全手順
  • リスクランク基準
  • 対応権限
  • プラットフォーム申告基準
  • 警告書送付基準
  • 弁護士相談基準
  • 広報発表基準
  • 顧客対応基準
  • 再発監視
  • 記録保存期間
  • 定期レビュー

21.2 対応記録台帳の項目

対応記録台帳には、次の項目を記録します。

次の比較表は、この章の確認事項を整理したものです。列ごとの差を押さえることで、どの証拠を残し、どの対応につなげるかを読み取れます。

項目内容
受付番号案件管理番号
発見日初回発見日時
発見者社内外の発見者
媒体EC、SNS、広告、ウェブサイト等
URL対象URL
相手方出品者、投稿者、広告主等
使用商標問題となる表示
商品・サービス対象商品・サービス
リスクランクS/A/B/C等
証拠保全実施済み資料
対応方針削除、警告、開示等
申告日プラットフォーム申告日
結果削除、却下、保留等
再発有無再掲載・別アカウント
損害推定損害額
備考顧客被害、広報対応等
Section 22

商標無断使用の対処法まとめ

商標無断使用への対応を実務の観点から整理します。

インターネット上で自社の商標を無断使用された場合の対処法は、単純な削除依頼にとどまりません。商標法上の権利範囲、商標的使用、商品・サービスの類似、プラットフォーム規約、情報流通プラットフォーム対処法、発信者情報開示、仮処分、損害賠償、刑事対応、税関差止め、ドメイン名紛争処理、広報対応を総合的に検討する必要があります。

実務上の最重要ポイントは、次の5つです。

  1. 削除より先に証拠を保全する

URL、スクリーンショット、商品ページ、広告、アカウント情報、取引記録を保存します。

  1. 自社商標権の内容を正確に確認する

登録商標、指定商品・指定役務、権利者名義、更新状況を確認します。

  1. 侵害判断を構造的に行う

標章の類否、商品・サービスの類否、商標的使用、「業として」の使用、正当使用を検討します。

  1. 媒体ごとに最適な対応ルートを選ぶ

EC、SNS、広告、フリマ、独自サイト、ドメイン、海外サイトでは手続が異なります。

  1. 削除後の再発防止まで設計する

商標ポートフォリオ、ブランド使用ガイドライン、モニタリング、プラットフォーム登録、税関対応、社内プレイブックを整備します。

商標は、企業の信用と顧客との信頼関係を支える重要な資産です。インターネット上の無断使用は、発見から時間が経つほど拡散し、証拠が消え、相手方特定が難しくなります。早期に証拠を押さえ、法的評価を行い、適切な専門家と連携しながら、削除・差止め・損害回復・再発防止を一体として進めることが、ブランドを守るための実務上の基本です。

Reference

この記事の参考情報源

公的機関、法令、制度資料、主要プラットフォームの公式資料を中心に整理しています。

公的機関・法令・公式資料

  • 法律実務解説(商標権侵害と損害賠償に関する解説)