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示談書の清算条項の意味と
後から追加請求できるか

清算条項は、示談書で定めた内容以外の権利義務を終わらせるための重要条項です。原則、後日の追加請求は難しくなりますが、文言、留保、後発損害、取消原因、強行法規、時効によって検討結果が変わります。

8類型 追加請求を検討する主な場面
5年/10年 一般債権の時効の基本枠
昭和43年 後発損害を考える重要判例
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示談書の清算条項の意味と 後から追加請求できるか

清算条項は、示談書で定めた内容以外の権利義務を終わらせるための重要条項です。

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示談書の清算条項の意味と 後から追加請求できるか
清算条項は、示談書で定めた内容以外の権利義務を終わらせるための重要条項です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 示談書の清算条項の意味と 後から追加請求できるか
  • 清算条項は、示談書で定めた内容以外の権利義務を終わらせるための重要条項です。

POINT 1

  • 示談書の清算条項の意味と後から追加請求できるかの全体像
  • まず、清算条項が何を終わらせ、どのような場合に追加請求の余地が残るのかを整理します。
  • 原則は難しいが、例外の検討余地は残る
  • 文言の広さ
  • 損害の見通し

POINT 2

  • 示談書の清算条項を理解する前提 ― 示談書は和解契約として効力を持つ
  • 1. 紛争や損害の発生:交通事故、労務紛争、契約トラブル、消費者被害などで、請求や責任の有無が問題になります。
  • 2. 互いに譲歩して合意:支払額、謝罪、再発防止、守秘義務、違約金、管轄などを調整し、解決内容を決めます。
  • 3. 示談書に文書化:署名押印や電子署名によって、後から確認できる契約内容として残します。
  • 4. 清算条項で終局範囲を確認:示談書に定めたもの以外の債権債務が残るのか、請求を留保するのかを確定します。

POINT 3

  • 示談書の清算条項の意味は文言の範囲で大きく変わる
  • 清算、精算、権利放棄、免責の違いと、「本件」「一切」「将来」「留保」の読み方を確認します。
  • 核心は、この示談書で決めたこと以外は請求しないという終局確認にあります。
  • なぜ重要かというと、似た言葉でも、後から請求できるかを検討するときの焦点が違うためです。
  • 各行の「主要な効果」を見て、どの条項が追加請求を制限しているのかを読み取ってください。

POINT 4

  • 示談書の清算条項があっても後から追加請求を検討できる場合
  • 対象外、留保、後発損害、取消し、無効、不履行、権限問題、第三者請求を分けて確認します。
  • 清算条項があっても、追加請求の余地がある場面はあります。
  • ただし、ここでいう余地は「必ず請求できる」という意味ではありません。
  • 裁判所や相手方は、文言、交渉経緯、当事者の認識、損害の発生時期、証拠、金額、専門資料、法令上の制限を総合的に確認します。

POINT 5

  • 示談書の清算条項で後から追加請求が難しくなる典型ケース
  • 損害が判明または予見可能だった
  • 一切請求しないと明確に書かれている
  • 現在・将来にわたり、名目のいかんを問わず請求しないといった文言は、追加請求を強く制限します。

POINT 6

  • 示談書の清算条項と最高裁昭和43年判決、時効の注意点
  • 後発損害の例外を考える重要判例と、追加請求を検討する際の時間制限を整理します。
  • 示談後の追加請求でよく参照される裁判例に、最高裁判所第二小法廷昭和43年3月15日判決があります。
  • この判決は、交通事故後に早期・少額で示談した後、当時予想できなかった重い症状や後遺症が判明した事案に関するものです。
  • この判例を理由に、清算条項があっても後から請求できると一般化するのは危険です。

POINT 7

  • 示談書の清算条項があるとき追加請求の可否を判断する手順
  • 1. 示談書全文を確認:表題、前文、定義、支払条項、清算条項、留保条項、別紙を確認します。
  • 2. 追加請求の種類を分類:範囲外、留保、後発損害、示談違反、取消し・無効のどれに近いかを分けます。
  • 3. 資料収集を優先:診断書、交渉履歴、入金記録、写真、契約資料、時効に関係する日付を整理します。
  • 4. 通知方法を検討:範囲外または例外に当たる理由、請求額、根拠資料、回答期限を文書で整理します。

POINT 8

  • 示談書の清算条項の文例と分野別の注意点
  • 標準的な文言、広い文言、将来損害を含む文言、留保付き文言、支払完了条件付き文言を比較します。
  • 交通事故・人身事故
  • 漏水・建物・設備事故
  • 労務・退職合意

まとめ

  • 示談書の清算条項の意味と 後から追加請求できるか
  • 示談書の清算条項の意味と後から追加請求できるかの全体像:まず、清算条項が何を終わらせ、どのような場合に追加請求の余地が残るのかを整理します。
  • 示談書の清算条項を理解する前提 ― 示談書は和解契約として効力を持つ:示談書は単なる確認メモではなく、多くの場合、当事者を拘束する契約書として扱われます。
  • 示談書の清算条項の意味は文言の範囲で大きく変わる:清算、精算、権利放棄、免責の違いと、「本件」「一切」「将来」「留保」の読み方を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

示談書の清算条項の意味と後から追加請求できるかの全体像

まず、清算条項が何を終わらせ、どのような場合に追加請求の余地が残るのかを整理します。

示談書に清算条項がある場合、一般的には、示談書で定めた金銭や義務以外の追加請求は難しくなるとされています。清算条項は、紛争を終局的に解決し、後日の蒸し返しを防ぐための条項だからです。

ただし、常に一律に遮断されるわけではありません。示談書の対象範囲、留保条項の有無、示談時に予想できなかった重大な後発損害、錯誤・詐欺・強迫、消費者契約法や労働法などの強行法規、相手方の不履行、署名権限、第三者への請求といった事情で結論は変わる可能性があります。

次の重要ポイントは、清算条項を読むときの出発点を表しています。読者にとって重要なのは、追加請求の可否を「条項があるかないか」だけで決めず、文言・損害・留保・証拠・時効を順に確認する必要があると読み取ることです。

原則は難しいが、例外の検討余地は残る

清算条項は強い終局効果を持ちます。一方で、示談の対象外の損害、明示的に留保された請求、予想できなかった後発損害、取消しや無効を検討できる事情がある場合は、追加請求を検討する余地があります。

次の一覧は、清算条項を確認するときに最初に見るべき3つの視点を表しています。なぜ重要かというと、同じ「清算条項」でも、文言の広さ、示談時の認識、残した請求の書き方で効果が大きく変わるためです。まずは、どの視点に問題がありそうかを読み取ってください。

TEXT

文言の広さ

「本件に関し」と限定されているのか、「当事者間の一切」と広く書かれているのかで、清算される範囲が変わります。

DAMAGE

損害の見通し

示談時に損害が判明していたか、合理的に予見できたか、後から重大な後発損害が判明したかが問題になります。

RESERVE

留保の有無

後遺障害、未確定費用、別紙記載の未払費用などを明示して除外していれば、清算条項の効力を限定しやすくなります。

示談書は、交通事故、漏水事故、近隣トラブル、労務紛争、ハラスメント、契約不履行、消費者トラブルなど幅広い場面で作られます。紛争金額が大きい場合、身体被害・退職・離婚・相続・消費者被害・事業継続に関わる場合、または相手方から請求や督促を受けている場合は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家に相談する必要があります。

Section 02

示談書の清算条項の意味は文言の範囲で大きく変わる

清算、精算、権利放棄、免責の違いと、「本件」「一切」「将来」「留保」の読み方を確認します。

清算条項とは、示談書に定めた事項以外には、当事者間に権利義務や債権債務が存在しないことを確認し、将来の追加請求を防ぐための条項です。典型的には、「本件に関し、本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する」といった文言で表されます。

より強い文言では、「名目のいかんを問わず、裁判上・裁判外を問わず、相互に何らの請求をしない」といった請求権放棄や不行使の趣旨が加わります。核心は、この示談書で決めたこと以外は請求しないという終局確認にあります。

次の比較表は、清算条項と似た用語の違いを表しています。なぜ重要かというと、似た言葉でも、後から請求できるかを検討するときの焦点が違うためです。各行の「主要な効果」を見て、どの条項が追加請求を制限しているのかを読み取ってください。

条項・用語典型的な内容主要な効果
清算条項示談書に定めるほか債権債務はない紛争の終局解決を確認する
権利放棄条項その余の請求権を放棄する請求権を行使しない意思を明確にする
免責条項相手方は責任を負わない責任の発生や範囲を制限する
精算費用・立替金・未払金を計算して過不足を調整する金額の調整を中心に扱う
清算法律関係を終了させ、債権債務がないことを確認する権利義務の終了を中心に扱う

清算条項の効力は、主に4つに分けて理解できます。第1に、示談書に定める義務以外には債権債務が存在しないことを確認する効力です。第2に、今後請求しないという請求権放棄または不行使の合意として働く効力です。第3に、裁判や交渉で契約内容を示す証拠としての効力です。第4に、相手方が「これで終わるなら支払う」と判断する交渉上の終局効果です。

次の比較表は、清算範囲を左右する代表的な文言を表しています。なぜ重要かというと、同じ清算条項でも「本件に関し」と「当事者間の一切」では、清算される範囲がまったく異なるためです。文言ごとに、追加請求の余地がどこで狭くなるかを読み取ってください。

文言読み方注意点
本件に関し清算されるのは定義された紛争に関する債権債務前文や定義で「本件」が広く書かれていると範囲も広がります。
甲乙間の一切同じ当事者間の別の法律関係まで含むと主張されやすい未払金、保証、貸付、返還物、秘密保持、知的財産などを誤って消さない確認が必要です。
本日現在示談締結時点までの権利義務を清算する趣旨と読まれやすい将来の違反行為、将来発生する損害、支払遅延は別問題になり得ます。
将来発生する損害を含む追加請求を非常に強く制限する文言身体被害など将来損害を正確に把握しにくい事案では特に慎重な検討が必要です。
ただし書きで留保明示された請求は清算条項の外に残す趣旨対象、期間、金額、資料、協議期限を具体化するほど争いを減らしやすくなります。

たとえば、交通事故で「本件事故に関し」と限定されていれば、人的損害、物的損害、慰謝料、休業損害などが含まれやすい一方、同じ当事者間の別契約や別事故は通常含まれにくいと考えられます。他方、「甲乙間に名目のいかんを問わず一切の債権債務が存在しない」と書かれていれば、想定より広い範囲が清算されたと主張されるリスクがあります。

留保条項を置く場合は、「後日判明する後遺障害に関する損害」「未確定の治療費」「別紙記載の未払費用」など、残す対象を具体的に書く必要があります。曖昧に「必要に応じて協議する」とだけ書くと、請求権を明確に残したといえるか争われる可能性があります。

Section 03

示談書の清算条項があっても後から追加請求を検討できる場合

対象外、留保、後発損害、取消し、無効、不履行、権限問題、第三者請求を分けて確認します。

清算条項があっても、追加請求の余地がある場面はあります。ただし、ここでいう余地は「必ず請求できる」という意味ではありません。裁判所や相手方は、文言、交渉経緯、当事者の認識、損害の発生時期、証拠、金額、専門資料、法令上の制限を総合的に確認します。

次の一覧は、追加請求を検討する代表的な8つの場面を表しています。なぜ重要かというと、どの場面に当たるかで、集める証拠と相手方への説明が変わるためです。各項目から、清算条項の範囲外なのか、示談自体の効力を争うのか、示談書上の義務違反を問うのかを読み取ってください。

1

清算範囲の外にある請求

「本件事故に関し」と限定されている場合、別事故、別契約、別当事者への請求は対象外といえる可能性があります。

範囲確認
2

明示的に留保された請求

人身損害、後遺障害、将来治療費、未確定費用などを示談書で除外していれば、その部分は後日検討しやすくなります。

留保条項
3

予想できなかった重大な後発損害

早期・少額の示談後に、当時予想できなかった再手術や重い後遺症が判明した場合は、判例上の例外を検討します。

専門資料
4

錯誤による示談

重要な前提事実を誤認し、その誤りが法律行為の目的や社会通念に照らして重要な場合、取消しを検討する余地があります。

取消し
5

詐欺・強迫による示談

虚偽資料、重要事実の偽り、脅しによる署名などがあれば、民法96条の問題として検討されます。

証拠重視
6

強行法規や公序良俗に反する条項

消費者契約法、労働基準法、労働法規、公序良俗に反する内容は、合意があっても効力が制限される可能性があります。

法令制限
7

相手方が示談金を支払っていない

示談金の不払いは追加請求ではなく、まず示談書に基づく支払請求や遅延損害金、期限の利益喪失条項を確認します。

履行請求
8

署名権限・行為能力・第三者請求の問題

署名者に権限がない、代理権に問題がある、未成年者・被後見人の保護が必要、第三者への請求である場合は別途検討します。

当事者確認

たとえば、漏水事故の示談書で清算したのが「2026年1月発生の漏水事故」に限られていた場合、別日に発生した別原因の漏水は対象外と考えられる可能性があります。退職合意書で「雇用契約終了に伴う金銭債権」に限って清算した場合、退職後に発生した秘密保持義務違反は別問題になり得ます。

一方、錯誤や詐欺・強迫を主張する場合は、単に納得していないというだけでは足りません。録音、メール、LINE、面談メモ、同席者の証言、資料の作成者や作成日、医師の診断書、画像、検査結果、経過記録など、具体的な証拠が重要になります。

相手方が示談金を支払わない場合は、示談書で定められた支払義務の履行を求める問題です。裁判上の和解や訴え提起前の和解では、調書化等により確定判決と同一の効力を持つ制度があり、通常の示談書だけで当然に強制執行できるわけではありません。金銭支払を確実にしたい場合は、強制執行認諾文言付き公正証書の利用が検討されます。

Section 04

示談書の清算条項で後から追加請求が難しくなる典型ケース

損害を把握していた場合、広い放棄文言がある場合、金額への後悔だけの場合は慎重な見極めが必要です。

追加請求が難しい典型例もあります。示談は、不確実性を引き受けて紛争を終わらせる契約です。後から自分に不利な事情が分かったとしても、それだけで当然にやり直せるわけではありません。

次の一覧は、清算条項を乗り越えるのが難しくなりやすい事情を表しています。なぜ重要かというと、ここに当てはまるほど、追加請求をする側はより具体的な例外事情を示す必要があるためです。どの事情が相手方の反論として強く出やすいかを読み取ってください。

損害が判明または予見可能だった

治療継続中で後遺症の可能性を説明されていた、追加修理の可能性を知っていた、未払残業代の可能性を認識していた場合などです。

一切請求しないと明確に書かれている

現在・将来にわたり、名目のいかんを問わず請求しないといった文言は、追加請求を強く制限します。

金額が低かっただけの主張

相場より安かった、後からもっと取れたと聞いたという事情だけでは、通常、清算条項の効力は否定されにくいと考えられます。

読んでいなかったという主張だけ

署名した人は、通常、その内容を理解して同意したと扱われます。虚偽説明や差し替えなどの具体的事情が問題になります。

たとえば、治療終了後に後遺障害等級を前提として示談した場合や、損害項目ごとの金額を確認したうえで一括清算した場合は、後から同じ損害項目を追加で請求することは難しくなりやすいです。

ただし、極端な情報格差、虚偽説明、脅迫的交渉、判断能力の問題、消費者・労働者保護法制に反する事情がある場合は別途検討されます。結論は、署名したという事実だけではなく、示談書の文言と交渉経緯、証拠関係によって変わります。

Section 05

示談書の清算条項と最高裁昭和43年判決、時効の注意点

後発損害の例外を考える重要判例と、追加請求を検討する際の時間制限を整理します。

示談後の追加請求でよく参照される裁判例に、最高裁判所第二小法廷昭和43年3月15日判決があります。この判決は、交通事故後に早期・少額で示談した後、当時予想できなかった重い症状や後遺症が判明した事案に関するものです。

最高裁は、一般論として、損害賠償の示談で一定額の支払を受け、その余の請求を放棄した場合、通常は示談額を超える損害を後から請求できないとしました。そのうえで、全損害を正確に把握しにくい状況で早期・少額の示談がされた場合には、放棄した損害は示談時に予想していた損害に限られると解しました。

次の比較表は、最高裁昭和43年判決から読み取れる判断要素を表しています。なぜ重要かというと、判例は「いつでも追加請求できる」という意味ではなく、複数の事情を総合して放棄範囲を限定したものだからです。左列の要素ごとに、どの事情が追加請求を後押しし、どの事情が難しくするかを読み取ってください。

判断要素追加請求を後押しし得る事情追加請求を難しくし得る事情
示談時期事故直後、症状固定前、資料不足治療終了後、十分な資料検討後
損害把握全損害を把握しにくかった損害項目が具体的に算定済み
損害の性質予想外の再手術、重い後遺症既に説明された症状の範囲内
示談金額著しく少額で暫定的損害項目ごとの相当額を反映
文言留保または限定がある将来損害を含む広い放棄
証拠医師の診断、客観資料がある因果関係や予見不能性が不明

この判例を理由に、清算条項があっても後から請求できると一般化するのは危険です。示談時に後遺症の可能性を認識していた、症状固定後に後遺障害等級を前提として示談した、将来損害を含めて明確に合意したといった場合には、追加請求は容易ではありません。

次の比較表は、追加請求を検討するときに確認すべき時効の基本枠を表しています。なぜ重要かというと、清算条項を乗り越えられる余地があっても、請求権が時効で消滅していれば請求が困難になるためです。権利の種類ごとに、短期側と長期側の期限が異なる点を読み取ってください。

請求権の種類基本的な期間確認すべき点
一般的な債権権利行使できることを知った時から5年、または権利行使できる時から10年民法166条を中心に、発生時期と知った時期を確認します。
人の生命・身体侵害による債権長期側に20年の特則民法167条の関係を確認します。
不法行為に基づく損害賠償損害及び加害者を知った時から3年、不法行為時から20年生命・身体侵害の場合は短期側が5年になります。
時効の変動完成猶予・更新などで変わる可能性交渉経緯、催告、訴訟、承認、改正法の適用関係を確認します。

時効は、事案の種類、発生時期、改正法の適用関係、時効完成猶予・更新、示談交渉の経過などで変わります。追加請求を検討する場合は、清算条項の問題と同時に、時効の期限を必ず確認する必要があります。

Section 06

示談書の清算条項があるとき追加請求の可否を判断する手順

対象特定、請求分類、証拠確認、通知方法の順に、実務上の確認ポイントを整理します。

追加請求を検討する際は、まず示談書の対象を特定します。表題、前文、本件事故・本件紛争・本件契約の定義、支払条項、清算条項、権利放棄条項、留保条項、別紙の損害明細や対象期間を確認します。

次に、追加請求がどのタイプなのかを分類します。既存損害の追加なのか、後発損害なのか、範囲外請求なのか、留保請求なのか、示談違反なのか、取消しや無効を主張するものなのかで、検討ポイントが変わります。

次の比較表は、追加請求の種類ごとの検討ポイントを表しています。なぜ重要かというと、同じ「追加で請求したい」という相談でも、法的な入口が違えば、必要な資料と説明の仕方が変わるためです。自分の問題がどの行に近いかを読み取ってください。

追加請求の種類検討ポイント
既存損害の追加休業損害、慰謝料、修理費の不足示談時に把握・予見できたか
後発損害後遺障害、再手術、二次被害因果関係と予見不能性
範囲外請求別契約、別事故、別当事者清算条項の対象外か
留保請求後日認定分、未確定費用留保条項の明確性
示談違反示談金不払い、守秘義務違反示談書上の義務違反か
取消・無効主張詐欺、強迫、錯誤、強行法規違反証拠と法的要件

次の判断の流れは、追加請求を検討する順番を表しています。なぜ重要かというと、いきなり相手方へ連絡すると、時効、取消し、証拠保全、通知文言の面で不利になることがあるためです。上から下へ、先に確認すべき事項と、分岐した後の対応を読み取ってください。

追加請求を検討する順番

示談書全文を確認

表題、前文、定義、支払条項、清算条項、留保条項、別紙を確認します。

追加請求の種類を分類

範囲外、留保、後発損害、示談違反、取消し・無効のどれに近いかを分けます。

証拠が不足
資料収集を優先

診断書、交渉履歴、入金記録、写真、契約資料、時効に関係する日付を整理します。

証拠がある
通知方法を検討

範囲外または例外に当たる理由、請求額、根拠資料、回答期限を文書で整理します。

必要になりやすい資料には、示談書原本、電子契約データ、署名押印ページ、交渉メール、LINE、録音、面談メモ、診断書、診療録、検査画像、後遺障害認定資料、修理見積書、請求書、領収書、写真、動画、給与明細、勤怠記録、退職合意書、就業規則、契約書、注文書、仕様書、納品書、検収書、相手方の説明資料、示談案、示談金の入金記録や不払い記録があります。

相手方へ通知する場合は、どの示談書に関する問題か、追加請求の対象は何か、なぜ清算条項の範囲外または例外に当たると考えるのか、請求金額と算定根拠、添付資料、回答期限、交渉・ADR・調停・訴訟など次の手段を整理します。取消し、時効、証拠保全、刑事・行政対応が絡む場合は、通知前に弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Section 07

示談書の清算条項の文例と分野別の注意点

標準的な文言、広い文言、将来損害を含む文言、留保付き文言、支払完了条件付き文言を比較します。

清算条項は、文言の作り方によって効果が変わります。標準的な文言であっても、対象紛争の定義が曖昧であれば後日争いになり、広すぎる文言は想定外の権利義務まで消すおそれがあります。

次の比較表は、代表的な清算条項の文例とリスクを表しています。なぜ重要かというと、署名前に文言の強さを見分けることで、留保すべき請求や存続させる義務を検討しやすくなるためです。各行の特徴とリスクを見て、どの文例が自分の状況に近いかを読み取ってください。

文例の種類文言の方向性リスクと確認点
標準的な清算条項本件に関し、示談書に定めるほか債権債務はない「本件」の定義が重要です。人身損害、後遺障害、未確定費用、別契約債権が曖昧だと争いになります。
広い清算条項当事者間に名目のいかんを問わず一切の債権債務はない未払報酬、立替金、貸付、秘密保持、返還物、知的財産、保証まで誤って消すおそれがあります。
将来損害を含む清算条項現在判明している損害だけでなく、将来発生または判明する損害を含める身体被害、建物被害、システム障害など、将来損害を把握しにくい事案では重大な不利益が生じ得ます。
留保付き清算条項後日判明する後遺障害、未確定治療費、別紙記載の未払費用などを除外する留保対象を抽象的にしすぎず、資料、期限、協議方法を具体化することが重要です。
支払完了条件付き清算条項示談金全額が支払われた時に清算効が生じる相手方が支払わないまま清算だけを主張することを防ぎます。遅延損害金や期限の利益喪失も確認します。

次の一覧は、分野ごとに清算条項で問題になりやすい点を表しています。なぜ重要かというと、同じ文言でも、交通事故、労務、消費者、SNS、事業間取引では残すべき請求や存続義務が違うためです。自分の紛争分野で、どの損害や義務を確認すべきかを読み取ってください。

ACCIDENT

交通事故・人身事故

症状固定前の全面清算は、後遺障害、将来治療費、逸失利益、介護費用が後から問題になり得ます。物損と人身を分け、後遺障害の可能性があれば留保条項を確認します。

BUILDING

漏水・建物・設備事故

示談後にカビ、床下腐食、電気設備不具合、二次被害が判明することがあります。調査費、追加修理費、仮住まい費用、営業損害を残すかが問題です。

LABOR

労務・退職合意

未払賃金、退職金、解雇紛争、ハラスメント、秘密保持、競業避止、貸与品返還が絡みます。労働基準法上の最低基準を下回る合意は無効となり得ます。

CONSUMER

消費者トラブル

返金、解約料、損害賠償、修理、交換、説明義務違反が問題になります。消費者契約法により、事業者の責任免除条項などの効力が制限される可能性があります。

ONLINE

名誉毀損・SNS・ハラスメント

示談後の再投稿、第三者への拡散、新たな侮辱、守秘義務違反が別問題になります。再発防止、削除、口外禁止、違約金の対象行為を具体化します。

BUSINESS

事業間取引・業務委託

納品物の不具合、検収、知的財産、秘密保持、保守、第三者クレームが絡みます。清算する債権と存続させる義務を別条で整理することが重要です。

広い清算条項を入れる場合でも、残したい権利義務は別条で明確にします。守秘義務、再発防止、返還物、知的財産、保証、将来の保守義務、第三者からの請求に対する補償義務などは、清算条項との関係を整理しておく必要があります。

Section 08

示談書の清算条項で後悔しないための署名前チェックリスト

請求側、支払側、双方共通の確認点と、すでに署名した後に整理すべき資料をまとめます。

示談書では支払金額に注目しがちですが、法的には、清算条項こそが後日の権利関係を決める最重要条項になることがあります。どの紛争を、どの範囲で、どの時点まで、どの請求を含め、どの請求を除外して終わらせるのかを確認する必要があります。

次の一覧は、署名前に確認すべきポイントを立場別に表しています。なぜ重要かというと、請求側は権利を失う範囲、支払側は終局解決の確実性、双方は条項同士の矛盾を確認する必要があるためです。自分の立場に近い欄から、署名前に未確認の項目がないかを読み取ってください。

CLAIMANT

被害者・請求側

  • 損害項目をすべて書き出したか。
  • 後遺障害、将来治療費、追加修理費、休業損害、逸失利益を確認したか。
  • 物損のみか、人身も含むか確認したか。
  • 「本件」「一切」「将来」の意味を確認したか。
  • 留保すべき請求を明記したか。
  • 支払完了前に清算効が生じないか確認したか。
  • 相手方説明と示談書文言にずれがないか。
  • 時効期限を確認したか。
PAYER

加害者・支払側・事業者側

  • 対象紛争を過不足なく定義したか。
  • 支払額の内訳または趣旨を整理したか。
  • 清算条項の範囲が広すぎないか確認したか。
  • 留保事項や存続義務を明確にしたか。
  • 消費者契約法、労働法、強行法規に抵触しないか。
  • 支払方法、期限、遅延時の措置を定めたか。
  • 署名者の権限を確認したか。
  • 守秘義務、再発防止、返還物、違約金を検討したか。
BOTH

双方共通

  • 各条項が矛盾していないか。
  • 清算条項と守秘義務・再発防止義務の関係を整理したか。
  • 分割払いの期限の利益喪失条項があるか。
  • 税務処理や源泉徴収の要否を確認したか。
  • 反社会的勢力排除、準拠法、管轄裁判所を定める必要があるか。
  • 電子契約の場合、本人性・改ざん防止・保存方法を確認したか。

すでに署名した後に追加請求を検討する場合は、まず感情的な連絡を避け、資料をそろえます。示談書全文、示談に至る交渉履歴、損害の発生・判明時期を示す資料、示談時にその損害を予想できなかったことを示す資料、請求額の根拠資料、相手方の説明が誤っていたことを示す資料、支払状況、入金記録、未払記録、時効に関係する日付を整理します。

「追加請求」なのか「示談書に定めた義務を履行させる請求」なのかも分ける必要があります。示談金未払いは示談書に基づく支払請求、守秘義務違反は示談書違反に基づく請求、再発防止条項違反は示談書違反または新たな不法行為、後遺障害の判明は清算条項の範囲・例外の検討、別事故の損害は示談対象外の請求として整理します。

注意個別の見通しは、示談書の数語、交渉経緯、証拠、時効で変わります。資料を時系列で整理し、必要に応じて弁護士等の専門家に相談することが重要です。
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示談書の清算条項と追加請求に関するFAQ

よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 示談書に清算条項があると、絶対に追加請求できませんか。

一般的には、清算条項があると追加請求は難しくなるとされています。ただし、清算条項の対象外、留保条項、示談時に予想できなかった重大な後発損害、錯誤・詐欺・強迫、強行法規違反、相手方の示談違反などによって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 「今後一切請求しない」と書いてあります。もう無理ですか。

一般的には、非常に不利な文言とされています。ただし、「本件」の範囲、将来損害を含むか、示談時の認識、留保の有無、相手方の説明、消費者・労働者保護法制などによって判断が変わる可能性があります。個別の見通しは、示談書全文と交渉経緯を確認したうえで検討する必要があります。

Q3. 交通事故で物損だけ示談しました。人身損害も清算されますか。

一般的には、物損示談の対象が車両修理費や代車費用に限られており、人身損害を清算していないなら、人身損害は別途問題になり得るとされています。ただし、示談書が「本件事故による一切の損害」と広く書かれている場合は、慎重な検討が必要です。

Q4. 示談金が支払われていません。清算条項で請求もできなくなりますか。

一般的には、示談金の支払は示談書に定められた義務であり、相手方が支払わない場合は示談書に基づく支払請求を検討するとされています。これは清算条項に反する追加請求ではなく、示談書の履行を求める問題です。遅延損害金や期限の利益喪失条項の有無も確認が必要です。

Q5. 署名後に金額が低すぎると分かりました。やり直せますか。

一般的には、金額が低いという事情だけでは示談のやり直しは困難とされています。ただし、重要な誤認、虚偽説明、強迫、将来損害の予見不能性、消費者・労働者保護法制に反する事情などがある場合は別途検討されます。具体的には、示談時の説明と証拠を確認する必要があります。

Q6. 口頭では物損だけと言われたのに、示談書には一切清算と書かれています。

一般的には、文書の文言は強い証拠になるとされています。ただし、交渉経緯や口頭説明も全く無関係ではありません。メール、録音、LINE、見積書、示談案の変更履歴など、口頭説明を裏付ける資料があるかによって、検討結果が変わる可能性があります。

Q7. 示談書に「協議する」とだけ書かれています。追加請求できますか。

一般的には、「協議する」という文言だけでは請求権を明確に残す表現として弱い場合があるとされています。何を、どの範囲で、いつまで、どの資料に基づいて協議するのかが不明だと、支払義務の有無が争われる可能性があります。

Q8. 示談書を公正証書にした方がよいですか。

一般的には、金銭支払を確実にしたい場合、強制執行認諾文言付き公正証書は有力な選択肢とされています。ただし、どの債務に執行力を持たせるか、条件付き債務をどう書くかは慎重に設計する必要があります。具体的な作成方針は専門家に確認する必要があります。

Q9. 裁判上の和解と普通の示談書は違いますか。

一般的には、裁判上の和解は裁判手続の中で成立し、調書化等により確定判決と同一の効力を有する制度とされています。通常の示談書は契約としての効力はありますが、それだけで当然に強制執行できるわけではありません。

Q10. 清算条項を削除してもらうべきですか。

一般的には、常に削除すべきものではなく、紛争を終わらせるために必要な場面も多いとされています。問題は、清算の範囲を適切に限定し、未確定の損害や将来損害を必要に応じて留保することです。個別の文言は、事案と証拠に応じて確認する必要があります。

Reference

この記事の参考情報源

法令、公的機関、裁判例、公証制度に関する資料をもとに整理しています。

法令・公的資料

  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「民事訴訟法」
  • e-Gov法令検索「消費者契約法」
  • 厚生労働省兵庫労働局「労働契約等・労働条件の明示」
  • 裁判所「和解調書」
  • 裁判所「確定判決と同一の効力を有するもの」
  • 日本公証人連合会「執行文付与申立て」
  • 法務省「公正証書によって強制執行をするには」

裁判例

  • 最高裁判所第二小法廷昭和43年3月15日判決