遺言書の内容の書き方で実現不能になりやすい10例
文言が曖昧、財産が特定できない、制度と手続を見落とすと、目的が実現しません。
内容面のミスは、常に遺言全体の無効を意味するわけではありません。ただし、相続人や受遺者、法務局、金融機関、税務署が同じ文言を同じ意味に読めないと、手続が止まります。次の一覧では、実現不能や紛争につながりやすい10の例を、どう書き換えるべきかと合わせて整理します。
| 想定例 | つまずく理由 | 予防策 |
|---|---|---|
| 19. 長男に多めに渡す | 「多め」が2分の1なのか、3分の2なのか、どの財産なのか分かりません。 | 割合または特定財産を明確にし、氏名・生年月日・続柄で受取人を特定します。 |
| 20. 不動産を住所だけで記載 | 住居表示と登記上の所在・地番・家屋番号は一致しないことがあります。 | 登記事項証明書に基づき、土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を書きます。 |
| 21. 預金を銀行のお金とだけ記載 | 金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、対象残高が不明です。 | 口座情報を具体化し、将来の変更に備えて包括条項も検討します。 |
| 22. 相続人以外に相続させると書く | 相続は法律上の相続人に生じる承継です。相続人以外には通常、遺贈するという表現が適しています。 | 相続人には相続させる、相続人以外には遺贈する、と文言を使い分けます。 |
| 23. 受遺者が先に死亡した場合の予備条項がない | 受遺者が先に亡くなると、対象財産が法定相続や遺産分割に戻ることがあります。 | 予備的な受取人を定めます。 |
| 24. 残余財産条項がない | 書かれていない預金、証券、車、貸金債権などで遺産分割協議が必要になることがあります。 | その他一切の財産を誰に承継させるかを定めます。 |
| 25. 遺留分を完全に無視 | 配偶者や子には遺留分があり、侵害した遺言は金銭請求の対象になり得ます。 | 配分、生命保険、代償金原資、付言事項、遺言執行者、説明記録を検討します。 |
| 26. 他人名義の財産を処分 | 遺言で処分できるのは原則として遺言者に帰属する財産です。名義預金や実質所有も争点になります。 | 財産名義、実質所有、夫婦間・親子間の移動、会社貸付金、未分割遺産を整理します。 |
| 27. 保険金受取人を遺言だけで変更 | 死亡保険金は契約上の受取人固有の権利として扱われることが多く、保険会社所定の手続が必要な場合があります。 | 保険会社に受取人変更手続を確認し、相続財産との公平調整を別に整理します。 |
| 28. 農地・非上場株式・事業用資産を単純に記載 | 農地法、会社法、定款、事業承継税務、知的財産手続が関わります。 | 弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁理士、不動産鑑定士等と連携します。 |
内容面では、「何を誰に渡すか」だけでなく、書いていない財産と受取人が先に死亡した場合も確認します。次の判断の流れは、遺言書の文言を具体化する順番を示しています。上から順に確認すると、登記・金融機関・遺留分のつまずきを発見しやすくなります。
内容を具体化するための判断の流れ
受取人を氏名・生年月日・続柄で特定
相続人か相続人以外かで、相続させる・遺贈するを使い分けます。
財産を登記・口座・証券情報で特定
不動産、預金、株式、保険、事業用資産を別々に確認します。
残余財産と予備的受取人を確認
書き漏れ財産や受取人の先死亡で協議に戻らないようにします。
遺留分・税務・登記まで見直す
有効な遺言でも、金銭請求や手続停滞が残る場合があります。