2σ Guide

行方不明の相続人がいる場合の
不在者財産管理人の選任手続き

相続人の一人と連絡が取れないとき、遺産分割、預貯金の解約、不動産登記、相続税申告は止まりやすくなります。不在者本人の利益を守りながら手続きを進めるための制度と実務上の注意点を整理します。

800円 選任申立ての収入印紙
7年/1年 普通失踪・危難失踪の目安
10か月 相続税申告期限
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行方不明の相続人がいる場合の 不在者財産管理人の選任手続き

相続人の一人と連絡が取れないとき、遺産分割、預貯金の解約、不動産登記、相続税申告は止まりやすくなります。

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行方不明の相続人がいる場合の 不在者財産管理人の選任手続き
相続人の一人と連絡が取れないとき、遺産分割、預貯金の解約、不動産登記、相続税申告は止まりやすくなります。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 行方不明の相続人がいる場合の 不在者財産管理人の選任手続き
  • 相続人の一人と連絡が取れないとき、遺産分割、預貯金の解約、不動産登記、相続税申告は止まりやすくなります。

POINT 1

  • 行方不明の相続人と不在者財産管理人の全体像
  • 相続人を除外せず、本人の利益を保護しながら相続を進めるための入口を確認します。
  • 相続人から除外できません
  • 選任後も許可が必要です
  • 税務と登記は止まりません

POINT 2

  • 行方不明の相続人で相続手続きが止まる理由
  • 預貯金、登記、売却、相続税申告で止まりやすい場面を整理します。
  • これが遺産分割です。
  • 実務上、遺産分割協議は共同相続人全員の関与を前提に扱われます。
  • 相続人の一部を除外して作成した遺産分割協議書は、後に無効ややり直しの問題を生じさせます。

POINT 3

  • 不在者財産管理人の基本概念を整理する
  • 不在者、不在者財産管理人、本人保護という制度の軸を確認します。
  • 2.1 不在者とは何か
  • 2.2 不在者財産管理人とは何か
  • 2.3 不在者財産管理人は誰の味方か

POINT 4

  • 不在者財産管理人と失踪宣告の違い
  • 財産管理の制度と死亡みなしの制度を混同しないための比較です。
  • 3.1 失踪宣告とは
  • 3.2 不在者財産管理人と失踪宣告の比較
  • 行方不明の相続人がいる場合に混同されやすい制度として、失踪宣告があります。

POINT 5

  • 不在者財産管理人の申立前に確認すること
  • 所在調査、連絡拒絶との違い、分割案の準備を確認します。
  • 4.1 本当に所在不明か
  • 4.2 連絡拒絶と所在不明を分ける
  • 4.3 遺産分割案を先に検討する

POINT 6

  • 不在者財産管理人を申し立てできる人
  • 共同相続人や債権者など、利害関係人の範囲を整理します。
  • 裁判所は、不在者財産管理人選任の申立人として、利害関係人と検察官を挙げています。
  • 利害関係人の例としては、不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者などがあります。
  • 相続案件では、次の人が申立人になり得ます。

POINT 7

  • 不在者財産管理人の申立先となる家庭裁判所
  • 最後の住所地や居所地を手がかりに管轄を確認します。
  • 裁判所の案内では、申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所です。
  • 従来の住所地とは、通常は戸籍附票や住民票上の最後の住所地を手がかりに考えます。
  • 居所地とは、住民票上の住所とは異なるものの、実際に生活の本拠または滞在場所として把握されていた場所を指します。

POINT 8

  • 不在者財産管理人の申立費用と予納金
  • 収入印紙、郵便料、予納金、専門家費用の見方を整理します。
  • 裁判所の不在者財産管理人選任の案内では、申立てに必要な費用として、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が挙げられています。
  • 郵便料は裁判所ごとに異なります。
  • 予納金は、管理人が事務を円滑に行うための費用です。

まとめ

  • 行方不明の相続人がいる場合の 不在者財産管理人の選任手続き
  • 行方不明の相続人と不在者財産管理人の全体像:相続人を除外せず、本人の利益を保護しながら相続を進めるための入口を確認します。
  • 行方不明の相続人で相続手続きが止まる理由:預貯金、登記、売却、相続税申告で止まりやすい場面を整理します。
  • 不在者財産管理人の基本概念を整理する:不在者、不在者財産管理人、本人保護という制度の軸を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

行方不明の相続人と不在者財産管理人の全体像

相続人を除外せず、本人の利益を保護しながら相続を進めるための入口を確認します。

相続人の一人と連絡が取れない。戸籍を追っても現在の生活実態が分からない。遺産分割協議書に署名押印してもらえない。相続不動産の名義変更、預貯金の払戻し、相続税申告の準備が進まない。

このような場面で中心的な選択肢となるのが、家庭裁判所に対する不在者財産管理人の選任申立てです。裁判所の説明によれば、不在者財産管理人は、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない人について、本人や本人の財産に利害関係を持つ人の利益を保護するために選任される管理人です。不在者財産管理人は、本人の財産を管理、保存し、さらに家庭裁判所の権限外行為許可を得ることで、不在者に代わって遺産分割や不動産売却等を行うことができます。

ただし、ここで最も重要なのは、不在者財産管理人が「他の相続人に都合よく遺産分割を成立させるための代理人」ではないという点です。制度の本質は、不在者本人の財産を管理し、保全することにあります。したがって、行方不明の相続人がいるからといって、その人を遺産分割協議から外すことはできません。不在者財産管理人を選任してもらい、必要な場合には権限外行為許可を得て、不在者の利益を害しない形で手続きを進める必要があります。

この記事は、一般の読者にも理解できるよう語の定義から説明しつつ、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、公証実務、不動産評価、不動産登記、家事事件実務、税務実務の視点を統合した専門ウェブサイト向けの解説として整理しています。個別案件では、相続人の関係、遺言の有無、相続財産の内容、相続税の有無、行方不明者の生死不明期間、家庭裁判所の運用により結論が変わります。必要に応じて弁護士、司法書士、税理士等に確認してください。

次の重要ポイント一覧は、行方不明の相続人がいる相続で最初に押さえるべき論点を整理したものです。読者にとって重要なのは、協議から外せるかではなく、どの制度で本人の利益を守りながら手続きを進めるかを見極めることです。各項目では、手続きの入口、許可の必要性、期限管理の3点を読み取ってください。

POINT 1

相続人から除外できません

所在が分からない相続人がいても、その人を抜いた遺産分割協議は後で無効ややり直しの問題を生じさせます。

POINT 2

選任後も許可が必要です

管理人が選ばれても、遺産分割協議や不動産売却などは原則として家庭裁判所の権限外行為許可を確認します。

POINT 3

税務と登記は止まりません

相続税申告の10か月や相続登記の3年といった期限は、家庭裁判所手続きと並行して管理する必要があります。

Section 01

行方不明の相続人で相続手続きが止まる理由

預貯金、登記、売却、相続税申告で止まりやすい場面を整理します。

相続が開始すると、遺言で明確に財産の帰属が決まっている場合を除き、共同相続人は遺産をどのように分けるかを決める必要があります。これが遺産分割です。民法は、共同相続人が協議で遺産の全部または一部を分割できること、協議が調わない場合や協議できない場合には家庭裁判所に分割を請求できることを定めています。

実務上、遺産分割協議は共同相続人全員の関与を前提に扱われます。相続人の一部を除外して作成した遺産分割協議書は、後に無効ややり直しの問題を生じさせます。たとえば、相続人A、B、CのうちCが行方不明であるにもかかわらず、AとBだけで「Aが不動産を取得し、Bが預金を取得する」と合意しても、Cの相続分を処理できていません。金融機関、法務局、税務署、買主、抵当権者などの第三者に対しても、適正な相続手続きとして扱われない可能性が高くなります。

行方不明の相続人がいる場合、現実に問題となりやすいのは次の場面です。

  1. 被相続人名義の預貯金を解約、払戻ししたいが、金融機関から相続人全員の同意を求められる。
  2. 不動産の相続登記をしたいが、遺産分割協議書に行方不明者の署名押印がない。
  3. 相続不動産を売却して代金を分けたいが、共有者または相続人の一人が所在不明で売買契約に進めない。
  4. 相続税申告期限が迫っているが、遺産分割がまとまらない。
  5. 相続人の一人が長期間生死不明で、そもそも相続人として扱うべきか、失踪宣告を検討すべきか迷う。

このような問題を処理するための制度が、不在者財産管理人の選任手続きです。

Section 02

不在者財産管理人の基本概念を整理する

不在者、不在者財産管理人、本人保護という制度の軸を確認します。

2.1 不在者とは何か

不在者とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない人をいいます。裁判所も、不在者財産管理人選任の制度について、このような人に財産管理人がいない場合、家庭裁判所が申立てにより財産管理人選任等の処分を行うことができると説明しています。

ここでいう「行方不明」は、単に連絡を無視している、感情的対立により返事をしない、住所は判明しているが協議に応じない、という状態とは区別する必要があります。住所や居所が分かっており、郵便が届き、本人が生存していることも明らかであるなら、原則として不在者財産管理人ではなく、交渉、遺産分割調停、遺産分割審判など別の手続きが中心になります。

一方で、戸籍附票を取得しても現在の生活実態が確認できない、郵便物が返戻される、親族にも所在が分からない、長年音信不通である、住民票が職権消除されている、海外へ行ったまま所在が分からない、といった事情があれば、不在者財産管理人選任の検討対象になります。

2.2 不在者財産管理人とは何か

不在者財産管理人とは、不在者本人の財産を管理、保存するために家庭裁判所が選任する人です。民法上の根拠は、主に民法25条から29条です。民法25条は、従来の住所または居所を去った者が財産管理人を置かなかった場合、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求により財産管理について必要な処分を命じることができる旨を定めています。民法27条は管理人による財産目録の作成等を、民法28条は権限外行為の許可を、民法29条は担保や報酬を定めています。

相続の文脈では、不在者財産管理人は次のような機能を持ちます。

  1. 行方不明の相続人本人の財産を調査し、財産目録を作成する。
  2. 本人の財産を保存し、必要に応じて管理する。
  3. 家庭裁判所の許可を得て、本人に代わり遺産分割協議に参加する。
  4. 本人が取得すべき相続財産を受領し、管理する。
  5. 家庭裁判所に管理状況を報告する。
  6. 本人が現れたとき、失踪宣告がされたとき、死亡が確認されたときなどに、財産を適切な相手へ引き継ぐ。

裁判所の家事事件Q&Aでも、所在の分からない相続人がいるため遺産分割協議ができない場合には、不在者財産管理人の選任申立てをし、選任された管理人が不在者に代わって遺産分割協議に加わることで遺産分割をすることができると説明されています。

2.3 不在者財産管理人は誰の味方か

不在者財産管理人は、申立人の代理人ではありません。他の相続人の代理人でもありません。職務の中心は、不在者本人の利益を保護することです。

したがって、他の相続人が「不在者は長年連絡がないから、何も取得しなくてよい」と考えていても、そのような遺産分割案が当然に認められるわけではありません。札幌家庭裁判所の不在者財産管理人選任事件手続案内シートでは、不在者が共同相続人である場合の遺産分割協議を目的として申立てをする際、事前に他の相続人と協議して遺産分割協議案を作成すること、その遺産分割案では不在者の法定相続分が確保されていることが必要であると案内されています。

この案内は一庁の実務資料ですが、制度趣旨に照らして重要です。不在者本人の保護が目的である以上、管理人が不在者に不利益な内容の遺産分割に安易に同意することは想定されていません。特別受益、寄与分、債務、遺言、過去の贈与、遺留分、使い込み疑いなど、相続分に影響する事情がある場合には、弁護士による法的検討が必要です。

Section 03

不在者財産管理人と失踪宣告の違い

財産管理の制度と死亡みなしの制度を混同しないための比較です。

行方不明の相続人がいる場合に混同されやすい制度として、失踪宣告があります。不在者財産管理人と失踪宣告は、目的も効果も大きく異なります。

3.1 失踪宣告とは

裁判所は、失踪宣告について、不在者の生死が7年間明らかでないとき、または戦争、船舶の沈没、震災など死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が明らかでないときに、家庭裁判所が申立てにより失踪宣告をすることができると説明しています。失踪宣告は、生死不明の者に対して法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

普通失踪では7年、危難失踪では危難が去った後1年という期間が問題になります。失踪宣告がされると、普通失踪では7年間の期間満了時、危難失踪では危難が去った時に死亡したものとみなされます。死亡とみなされる時点が、被相続人の死亡前なのか後なのかにより、相続関係が大きく変わります。

3.2 不在者財産管理人と失踪宣告の比較

不在者財産管理人と失踪宣告の違いの整理では、観点、不在者財産管理人、失踪宣告を横に比較すると判断材料を見落としにくくなります。この比較表は各項目の違いと注意点を確認するためのもので、左から順に条件、内容、実務上の読み取りどころを追うと全体像をつかみやすくなります。

観点不在者財産管理人失踪宣告
制度の目的不在者の財産を管理、保全する生死不明者を法律上死亡したものとみなす
主な根拠民法25条から29条民法30条から32条
生死不明が必須か必ずしも生死不明である必要はない生死不明期間が要件になる
期間要件法律上の固定期間ではなく、従来の住所等を去り容易に戻る見込みがないことが中心普通失踪7年、危難失踪1年
相続での使い方行方不明の相続人に代わって、許可を得て遺産分割に関与する行方不明者を死亡したものとして、相続人関係を組み直す
効果の重さ財産管理のための制度身分関係、相続関係に死亡と同様の重大な効果を生じさせる
典型場面相続人の一人が所在不明だが、死亡とみなすほどの要件や必要性はない長期間生死不明で、死亡扱いを前提に相続や戸籍を処理する必要がある

実務上は、次のように整理します。

  1. 行方不明者が生存している可能性を前提に、その人の相続分を保護しながら遺産分割を進めたい場合は、不在者財産管理人を検討する。
  2. 生死不明期間が長く、死亡したものとみなすことにより相続関係を確定する必要がある場合は、失踪宣告を検討する。
  3. 不在者財産管理人選任は、失踪宣告までの暫定的な財産管理制度として機能することもある。
  4. どちらを選ぶべきかは、行方不明期間、失踪の原因、被相続人との死亡時期の前後、代襲相続人の有無、相続税申告期限、不動産売却の必要性を踏まえて判断する。

失踪宣告は相続人関係そのものを変動させる可能性があるため、安易に選ぶべきではありません。たとえば、行方不明者が被相続人より前に死亡したものとみなされるなら、行方不明者に子がいる場合は代襲相続の問題が生じます。行方不明者が被相続人より後に死亡したものとみなされるなら、行方不明者がいったん被相続人を相続し、その後に行方不明者自身の相続が開始したものとして処理される可能性があります。

Section 04

不在者財産管理人の申立前に確認すること

所在調査、連絡拒絶との違い、分割案の準備を確認します。

4.1 本当に所在不明か

不在者財産管理人選任の申立てでは、「不在の事実を証する資料」が重要です。裁判所の標準的な添付書類にも、不在の事実を証する資料が挙げられています。

申立前には、少なくとも次の調査を行います。

  1. 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を取得し、相続人関係を確定する。
  2. 行方不明者の戸籍附票を取得し、住民票上の住所の移転履歴を確認する。
  3. 判明した住所へ書留郵便、配達証明郵便、普通郵便等を送る。
  4. 郵便が返戻された場合は封筒、返戻理由、発送記録を保存する。
  5. 親族、知人、勤務先、旧住所地の関係者から事情を聴き、記録化する。
  6. 住民票が職権消除されている場合は、その証明資料を取得する。
  7. 警察への行方不明者届、捜索願に関する資料がある場合は写しを保管する。
  8. 海外転出の可能性がある場合は、戸籍附票、在外関係資料、過去の連絡記録を確認する。

重要なのは、申立人が「探したつもり」では足りないということです。家庭裁判所は、申立書や所在不明となった事実を裏付ける資料を確認し、必要に応じて申立人から事情を聴いたり、不在者の親族に照会したりします。

4.2 連絡拒絶と所在不明を分ける

相続人同士で感情的対立がある場合、相手が電話に出ない、メールに返信しない、協議に応じないということがあります。しかし、住所が判明しており、郵便も届いているなら、制度上の不在者には当たらない可能性があります。

この場合の主な選択肢は、不在者財産管理人ではなく、次の手続きです。

  1. 弁護士による交渉通知
  2. 遺産分割調停
  3. 遺産分割審判
  4. 遺言の有効性や遺産範囲に争いがある場合の関連訴訟
  5. 使い込み疑いがある場合の返還請求、損害賠償請求、不当利得返還請求等

不在者財産管理人選任は、協議に応じない相続人を迂回するための制度ではありません。

4.3 遺産分割案を先に検討する

相続人が行方不明である場合、家庭裁判所に申立てをして管理人が選ばれてから初めて遺産分割案を考える、という進め方では時間がかかります。とくに相続税申告期限や不動産売却期限がある場合は、申立前に他の相続人の間で遺産分割案を整理しておく必要があります。

実務上は、次の資料を先に整えます。

  1. 相続人関係図
  2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  3. 各相続人につながる現在戸籍
  4. 遺産目録
  5. 不動産登記事項証明書
  6. 固定資産評価証明書
  7. 預貯金残高証明書
  8. 有価証券、保険、貸付金、債務等の資料
  9. 遺言書の有無に関する資料
  10. 遺産分割協議書案
  11. 不在者の法定相続分相当をどのように確保するかの説明
  12. 代償分割や換価分割を行う場合の資金計画、売却見込、査定資料

不動産しか遺産がない場合に、不在者の法定相続分を現金で確保するには、代償分割や換価分割を検討する必要があります。札幌家庭裁判所の案内でも、不動産のみで現物分割が相当でない場合には、代償分割または換価分割を検討することになると説明されています。

Section 05

不在者財産管理人を申し立てできる人

共同相続人や債権者など、利害関係人の範囲を整理します。

裁判所は、不在者財産管理人選任の申立人として、利害関係人と検察官を挙げています。利害関係人の例としては、不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者などがあります。

相続案件では、次の人が申立人になり得ます。

  1. 行方不明者と共同相続人になっている人
  2. 被相続人の配偶者や子など、遺産分割を必要とする相続人
  3. 不在者の債権者
  4. 不在者名義の不動産に関係する担保権者
  5. 不在者の財産を時効取得したと主張する者
  6. 境界確定を求める隣地所有者
  7. 不在者の財産を買収する必要がある公共団体等

相続目的の申立てでは、共同相続人が申立人となることが多いです。この場合、申立人は、自分が不在者との間で法律上の利害関係を有することを戸籍等で示す必要があります。

Section 06

不在者財産管理人の申立先となる家庭裁判所

最後の住所地や居所地を手がかりに管轄を確認します。

裁判所の案内では、申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所です。

従来の住所地とは、通常は戸籍附票や住民票上の最後の住所地を手がかりに考えます。居所地とは、住民票上の住所とは異なるものの、実際に生活の本拠または滞在場所として把握されていた場所を指します。

住所地が不明確な場合、家庭裁判所ごとの運用確認が必要です。申立てを急ぐ場合でも、管轄を誤ると移送や補正で時間を失います。申立前に、最後の住所地を管轄する家庭裁判所の家事受付係に確認するのが安全です。

Section 07

不在者財産管理人の申立費用と予納金

収入印紙、郵便料、予納金、専門家費用の見方を整理します。

裁判所の不在者財産管理人選任の案内では、申立てに必要な費用として、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が挙げられています。郵便料は裁判所ごとに異なります。

さらに、不在者の財産内容から管理費用や管理人報酬に不足が出る可能性がある場合、申立人に相当額の予納金の納付が求められることがあります。予納金は、管理人が事務を円滑に行うための費用です。

費用項目を整理すると、次のとおりです。

不在者財産管理人の申立費用と予納金の整理では、費用項目、内容、注意点を横に比較すると判断材料を見落としにくくなります。この比較表は各項目の違いと注意点を確認するためのもので、左から順に条件、内容、実務上の読み取りどころを追うと全体像をつかみやすくなります。

費用項目内容注意点
申立手数料収入印紙800円不在者財産管理人選任申立ての基本費用
郵便料連絡用郵便切手または保管金金額は裁判所ごとに異なる
予納金管理人報酬や管理費用の不足に備える金銭事案により求められる。金額は裁判官の判断による
戸籍等取得費戸籍謄本、除籍謄本、戸籍附票、住民票等相続人確定と所在調査に必要
登記事項証明書等不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書等不動産がある場合に必要
専門家費用弁護士、司法書士、税理士、行政書士等紛争性、登記、税務の有無により必要性が変わる

予納金はよく相談を受ける項目です。相続財産が大きく、管理人報酬を不在者の財産から賄える見込みがある場合と、管理対象財産が乏しく申立人側の予納が必要になる場合では、資金計画が異なります。

Section 08

不在者財産管理人の必要書類と所在調査資料

標準書類に加え、相続案件で有用な資料を確認します。

裁判所が公表する標準的な添付書類は、次のとおりです。

  1. 申立書
  2. 不在者の戸籍謄本、全部事項証明書
  3. 不在者の戸籍附票
  4. 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  5. 不在の事実を証する資料
  6. 不在者の財産に関する資料
  7. 利害関係人からの申立ての場合は、利害関係を証する資料

相続案件では、これに加えて、次の資料が必要または有用になります。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍
  2. 被相続人から各相続人につながる戸籍
  3. 相続人全員の現在戸籍
  4. 相続関係図
  5. 遺産目録
  6. 遺産分割協議書案
  7. 不動産登記事項証明書
  8. 固定資産評価証明書
  9. 預貯金残高証明書、通帳写し
  10. 有価証券残高証明書
  11. 債務資料
  12. 遺言書、検認済証明書、遺言書情報証明書等
  13. 不在者の法定相続分を確保していることの説明資料
  14. 不在者の所在調査報告書
  15. 返戻郵便物の写し
  16. 親族からの事情聴取書
  17. 警察への届出に関する資料がある場合はその写し

裁判所の申立書式ページでは、不在者財産管理人選任申立書、財産目録、相続関係図の書式等が公開されています。実際に申立てを受けた家庭裁判所では、判断のためにさらに書面照会や事情聴取を行うことがあるとされています。

8.1 不在の事実を証する資料の作り方

不在の事実は、単一の資料で完全に証明できるとは限りません。複数の資料を組み合わせ、行方不明の経過を時系列で説明します。

所在調査報告書の構成例は次のとおりです。

  1. 最後に本人と連絡が取れた年月日、方法、内容
  2. 最後に確認された住所、勤務先、生活状況
  3. 戸籍附票で判明した住所履歴
  4. 住民票や戸籍附票上の最新住所へ郵送した事実
  5. 郵便物が返戻された場合の返戻理由
  6. 親族、知人、近隣者への照会結果
  7. 電話、メール、SNS、勤務先等への照会結果
  8. 警察への届出や相談の有無
  9. 海外渡航、海外在住の可能性
  10. 現時点で本人の所在が確認できない結論

記載は客観的に行います。「たぶん生きていない」「昔から無責任だった」などの評価ではなく、「いつ、誰が、どこに、どのような方法で調査し、どのような結果だったか」を示すことが重要です。

8.2 財産資料の範囲

不在者財産管理人は、不在者の特定の財産だけを管理する人ではありません。不在者の財産全般を管理する制度です。札幌家庭裁判所の案内でも、不在者の特定の財産だけの管理、処分を行うことはできず、管理人は選任後、不在者の財産調査を行い、不在者が所有するすべての財産について管理すると説明されています。

相続目的の申立てでは、被相続人の遺産に関する資料だけでなく、不在者本人の既存財産が判明している場合にはその資料も提出します。たとえば、不在者名義の不動産、預貯金、保険、有価証券、負債などです。

Section 09

不在者財産管理人選任手続きの流れ

選任だけで終わらず、権限外行為許可まで見据える流れです。

次の判断の流れは、所在調査から権限外行為許可までの順番をまとめたものです。順序が重要なのは、調査不足や分割案の未整理があると、家庭裁判所の照会や補正で時間を失いやすいためです。上から順に、準備、申立て、選任、許可、実行という段階を確認してください。

不在者財産管理人選任から遺産分割までの進め方

所在調査と相続人確定

戸籍附票、返戻郵便、親族照会などを時系列で整理します。

遺産目録と分割案の準備

不在者の法定相続分をどう確保するかを説明できる形にします。

家庭裁判所へ選任申立て

最後の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

管理人の財産調査

財産目録や管理報告を整え、不在者本人の利益を確認します。

権限外行為許可後に実行

許可後に協議書署名、預金解約、相続登記、不動産売却へ進みます。

標準的な流れは次のとおりです。

  1. 相続人調査と所在調査を行う。
  2. 遺産の内容を調査し、遺産目録を作成する。
  3. 不在者の法定相続分や取得見込財産を整理する。
  4. 他の相続人間で遺産分割協議書案を作成する。
  5. 申立書、添付書類、所在調査資料、財産資料を準備する。
  6. 不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所へ申立てをする。
  7. 家庭裁判所が書面を審査し、必要に応じて照会、審問、追加資料提出を求める。
  8. 家庭裁判所が不在者財産管理人を選任する。
  9. 管理人が不在者の財産を調査し、財産目録や管理報告書を作成する。
  10. 遺産分割を行う必要がある場合、管理人が家庭裁判所へ権限外行為許可を申し立てる。
  11. 家庭裁判所が遺産分割協議書案や不在者の利益保護を審査する。
  12. 権限外行為許可が出た後、管理人が不在者に代わり遺産分割協議書に署名押印する。
  13. 遺産分割の結果に基づき、預貯金解約、相続登記、不動産売却、相続税申告等を進める。
  14. 管理人はその後も、本人が現れる、失踪宣告がされる、死亡が確認される、管理財産がなくなる等まで管理を継続する。

重要な点は、8で管理人が選ばれても、それだけで遺産分割協議ができるわけではないことです。遺産分割協議は、管理人の通常権限を超える行為とされるため、原則として権限外行為許可が必要です。

Section 10

不在者財産管理人に選ばれる人の考え方

親族候補者と専門職選任の分かれ目を確認します。

裁判所の家事事件Q&Aでは、不在者財産管理人になるために資格は必要ないものの、不在者の財産を管理するために選ばれる人であるため、職務を適切に行えることが必要であり、通常、不在者との関係や利害関係の有無などを考慮して適格性が判断されると説明されています。場合によっては、弁護士、司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

申立人は候補者を立てることができますが、候補者が必ず選任されるわけではありません。次のような場合は、親族候補者ではなく専門職が選任される可能性が高くなります。

  1. 申立人と不在者の利害が対立している。
  2. 遺産分割案で不在者の取得分が争点になっている。
  3. 不動産売却、代償分割、換価分割など財産処分が必要である。
  4. 相続人間に紛争がある。
  5. 管理対象財産が多額または複雑である。
  6. 会社株式、事業用資産、知的財産、賃貸不動産など専門的財産が含まれる。
  7. 不在者の債務、保証、税務、訴訟が問題になる。
  8. 候補者が不在者の利益を十分に守れるか疑義がある。

親族が候補者になる場合でも、管理人になった後は申立人側の意向に従う立場ではありません。不在者の利益を守る法的責任を負うことを理解する必要があります。

Section 11

不在者財産管理人の職務と責任

財産目録、管理報告、管理財産の分別管理を確認します。

裁判所の家事事件Q&Aでは、不在者財産管理人の主な職務は、不在者のために財産を管理し、財産目録を作り、家庭裁判所に報告することであると説明されています。最初の職務は、不在者の財産を調査して財産目録や管理報告書を作成し、家庭裁判所に提出することです。その後も、家庭裁判所から定期的に財産状況の報告を求められることがあります。

不在者財産管理人は、管理財産を自分の財産と混同してはいけません。預金口座、現金、通帳、印鑑、証券、不動産権利関係書類、賃料、配当、保険金、相続で取得した金銭等は、管理財産として区別して扱います。

不正な費消があれば、改任、損害賠償、業務上横領等の民事上、刑事上の責任が問題になり得ます。裁判所のQ&Aでも、不在者財産管理人が本人の財産を不正に費消した場合には、改任のほか、損害賠償請求や業務上横領などの刑事責任を問われることがあると説明されています。

Section 12

不在者財産管理人の権限外行為許可

遺産分割や不動産売却に必要な許可の考え方です。

12.1 通常権限と権限外行為

民法103条は、権限の定めのない代理人の権限として、保存行為と、代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲での利用、改良行為を定めています。不在者財産管理人の通常権限も、基本的にはこの範囲で理解されます。

一方で、遺産分割協議、不動産の売却、保険解約、訴訟上の和解などは、財産の性質や帰属を変える重大な行為です。裁判所の権限外行為許可の案内では、不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議をしたり、不在者の財産を処分するなど、民法103条に定められた権限を超える行為をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があるとされています。

12.2 権限外行為許可が必要となる典型例

相続案件では、次の行為が権限外行為許可の対象になりやすいです。

  1. 不在者に代わって遺産分割協議を成立させる。
  2. 遺産分割協議書に署名押印する。
  3. 不在者が取得する相続不動産を売却する。
  4. 換価分割のために不動産売却契約を締結する。
  5. 代償分割で代償金を受領する。
  6. 遺産中の保険、株式、投資信託等を解約、売却する。
  7. 訴訟を提起し、取り下げ、和解する。
  8. 調停で合意する。

権限外行為許可の申立人は、不在者財産管理人です。申立先は、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所です。費用としては、収入印紙800円分が必要で、郵便料は裁判所ごとに異なります。必要書類として、申立書と権限外行為となる事項の資料が挙げられています。

12.3 遺産分割協議案の審査で重要な点

家庭裁判所が権限外行為許可を判断する際、遺産分割協議案が不在者の利益を害しないかが中心的に見られます。実務上、とくに重要なのは次の点です。

  1. 不在者の法定相続分が確保されているか。
  2. 不在者が取得する財産の評価は適正か。
  3. 不動産を特定の相続人が取得する場合、代償金額は合理的か。
  4. 換価分割の場合、売却価格や仲介条件は合理的か。
  5. 不在者が債務を引き受ける場合、その必要性と不利益が検討されているか。
  6. 特別受益や寄与分を理由に不在者の取得分を減らす場合、証拠があるか。
  7. 遺言書がある場合、遺言内容との整合性があるか。
  8. 申立人または管理人候補者に利益相反がないか。
  9. 相続税、不動産譲渡税、登録免許税等の負担を踏まえているか。

不在者に取得させる財産が不動産持分だけで、現実には管理困難な状態が続く場合、将来の管理コストや処分可能性も検討が必要です。反対に、他の相続人が不動産を取得し、不在者には代償金を確保する案は、不在者の財産保全という観点から説明しやすい場合があります。ただし、代償金支払者の資力や支払時期、担保の有無も重要です。

Section 13

不在者財産管理人と相続登記の関係

相続登記義務化と相続人申告登記の使い分けを整理します。

相続財産に不動産が含まれる場合、行方不明の相続人がいることは相続登記の大きな障害になります。2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっています。法務省は、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続開始があったことを知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があると説明しています。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。施行日前に開始した相続も対象となり、一定の経過措置があります。

13.1 不在者がいる場合の相続登記実務

不在者がいる場合の登記は、遺産分割の成否により分かれます。

  1. 遺産分割が未了の場合は、法定相続分による相続登記を検討することがある。
  2. 不在者財産管理人が選任され、権限外行為許可を得て遺産分割協議が成立した場合は、その協議内容に基づく相続登記を行う。
  3. 期限内に相続登記が難しい場合は、相続人申告登記を検討する。
  4. 失踪宣告がされた場合は、死亡とみなされる時点を前提に相続関係を再構成し、必要な戸籍や審判書等を踏まえて登記を行う。

13.2 相続人申告登記という暫定的な義務履行手段

法務省は、期限内に相続登記の申請をすることが難しい場合、簡易に相続登記の申請義務を履行できる仕組みとして、相続人申告登記が設けられたと説明しています。相続人申告登記は、特定の相続人が単独で申出でき、法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定が不要で、登録免許税もかかりません。ただし、不動産の権利関係を公示するものではないため、売却や抵当権設定には別途相続登記が必要であり、遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできません。

行方不明の相続人がいるため遺産分割が長期化する場合、相続人申告登記は過料リスクを抑える暫定策として有用です。ただし、これは遺産分割を成立させる制度ではありません。不動産を売却したい、担保設定したい、共有状態を解消したいという目的がある場合は、不在者財産管理人の選任と権限外行為許可を組み合わせて検討する必要があります。

Section 14

不在者財産管理人と相続税申告の関係

10か月の申告期限と未分割申告の注意点を確認します。

14.1 相続税申告期限は延びない

国税庁は、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっていると説明しています。申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告した場合には、加算税や延滞税がかかることがあります。

また、相続財産が分割されていない場合でも、相続税の申告期限は延びません。国税庁は、分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税を行うことになると説明しています。

したがって、行方不明の相続人がいること自体は、相続税申告期限を当然に延ばす理由にはなりません。税務上は、法務手続きと並行して期限管理を行う必要があります。

14.2 未分割申告の注意点

遺産分割が申告期限までに成立しない場合、未分割の状態で申告することがあります。この場合、国税庁は、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などが適用できない申告になるため注意が必要であると説明しています。その後、分割が行われ、分割に基づく税額と当初申告税額が異なるときは、修正申告または更正の請求が可能です。更正の請求は、分割を知った日の翌日から4か月以内です。特例の適用ができるのは、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合に限られます。

税務実務上は、申告期限後3年以内の分割見込書、やむを得ない事由がある旨の承認申請、更正の請求などを組み合わせて検討する場面があります。小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、農地等の納税猶予、非上場株式の納税猶予など、相続税の特例は要件が細かく、期限徒過の影響が大きいです。行方不明の相続人がいる案件では、早期に税理士へ相談してください。

14.3 不在者財産管理人と税務手続き

不在者財産管理人が選任された場合でも、相続税申告の実務は単純ではありません。不在者本人が納税義務者となる可能性があるため、管理人がどの範囲で税務書類に関与できるか、納税資金をどのように確保するか、家庭裁判所の許可が必要かを検討する必要があります。

実務では、次の点を確認します。

  1. 不在者の取得財産額はいくらか。
  2. 不在者本人に相続税の納付義務が生じるか。
  3. 未分割申告をする必要があるか。
  4. 不在者の申告書提出に管理人が関与する場合、家庭裁判所への確認や許可が必要か。
  5. 税理士が税務代理を行う場合、委任関係をどのように整理するか。
  6. 納税資金を不在者の管理財産から支払う場合、管理行為として足りるか、別途許可が必要か。
  7. 遺産分割成立後に修正申告または更正の請求が必要か。

税務は期限が厳格です。不在者財産管理人選任の審理や権限外行為許可に時間がかかることを前提に、申告期限の数か月前から逆算して動く必要があります。

Section 15

不在者財産管理人手続きで関与する専門職

弁護士、司法書士、税理士などの役割を切り分けます。

15.1 弁護士

弁護士は、行方不明の相続人がいる相続案件で最も中心的な専門職です。とくに、次の問題がある場合は弁護士の関与が重要です。

  1. 相続人間で遺産分割内容に争いがある。
  2. 特別受益、寄与分、遺留分、使い込み疑いがある。
  3. 不在者の法定相続分を減らす根拠を検討する必要がある。
  4. 遺産分割調停、審判に移行する可能性がある。
  5. 権限外行為許可の遺産分割案に法的説明が必要である。
  6. 不在者財産管理人候補者として専門職選任が見込まれる。
  7. 失踪宣告を選ぶべきか判断が難しい。
  8. 不動産売却、訴訟、和解、債務処理が含まれる。

15.2 司法書士

司法書士は、相続登記、法定相続情報、戸籍収集、登記用書類、家庭裁判所提出書類作成の面で重要です。相続登記が義務化されたため、不動産がある相続では早期の関与が有用です。

司法書士が関与する典型場面は次のとおりです。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍収集
  2. 相続関係説明図の作成
  3. 法定相続情報一覧図の作成、申出
  4. 不動産登記事項証明書、評価証明書の取得
  5. 相続人申告登記の検討
  6. 遺産分割成立後の相続登記
  7. 不在者財産管理人選任申立書類の作成支援

ただし、相続人間に紛争がある場合の代理交渉、法律判断、訴訟対応は弁護士領域です。

15.3 税理士

税理士は、相続税申告、未分割申告、分割見込書、特例適用、税務調査対応の専門家です。行方不明の相続人がいる案件では、10か月の申告期限と家庭裁判所手続きの時間差が重大な問題になります。

税理士が確認すべき主な事項は次のとおりです。

  1. 相続税申告が必要か。
  2. 基礎控除を超えるか。
  3. 未分割申告が必要か。
  4. 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減をどう確保するか。
  5. 不在者の取得分に対応する税額をどう納付するか。
  6. 分割成立後の修正申告、更正の請求をどう行うか。
  7. 不動産売却時の譲渡所得税をどう見込むか。

15.4 行政書士

行政書士は、紛争、税務代理、登記申請を除く範囲で、戸籍整理、相続人関係説明図、遺産分割協議書案、各種書類作成を支援できます。ただし、紛争性がある場合や家庭裁判所での法的主張が必要な場合は、弁護士との連携が必要です。

15.5 不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士

不動産が遺産に含まれる場合、不在者の法定相続分を確保するには、不動産評価が重要になります。

  1. 不動産鑑定士は、適正価格を評価する。
  2. 土地家屋調査士は、境界、分筆、表示登記の問題を扱う。
  3. 宅地建物取引士、不動産仲介業者は、換価分割や売却の実務を担う。

とくに、代償分割では不動産評価額が不在者の取得分に直結します。固定資産評価額、路線価、実勢価格、不動産鑑定評価額、仲介査定額の違いを理解し、家庭裁判所に説明できる資料を用意する必要があります。

15.6 公認会計士、中小企業診断士、弁理士

相続財産に非上場株式、事業用資産、知的財産が含まれる場合、評価や承継の難度が上がります。

  1. 公認会計士は、非上場株式評価、会社財務、事業承継分析に関与する。
  2. 中小企業診断士は、事業承継計画、経営改善、後継者支援に関与する。
  3. 弁理士は、特許、商標等の知的財産の名義変更や権利管理に関与する。

不在者が会社株式を取得する案では、議決権、配当、経営支配、株式譲渡制限、納税資金の問題が生じます。単純な預金分割よりも慎重な設計が必要です。

Section 16

不在者財産管理人でよくある失敗と対策

手続きのやり直しや期限徒過を防ぐための注意点です。

16.1 行方不明者を除外して協議書を作ってしまう

相続人の一部を除外した遺産分割協議書は、後に重大な問題を生じます。金融機関や法務局で手続きが通らないだけでなく、不在者本人が現れた場合に紛争化する可能性があります。

対策は、相続人調査を最初に徹底し、行方不明者がいる場合は不在者財産管理人または失踪宣告の検討に切り替えることです。

16.2 管理人が選ばれれば自由に遺産分割できると思い込む

管理人の選任だけでは不十分です。遺産分割協議は権限外行為に当たるため、原則として家庭裁判所の許可が必要です。許可前に協議書へ署名押印しても、手続き上問題が残ります。

対策は、選任申立ての段階から権限外行為許可を見据えて遺産分割案を作ることです。

16.3 不在者の法定相続分を確保していない

「長年連絡がないから何もいらないだろう」という推測は通用しません。不在者本人の意思が確認できない以上、管理人は本人の利益を保護する必要があります。

対策は、不在者の法定相続分相当の現金、不動産持分、代償金を確保する案を原則として検討することです。

16.4 相続税申告期限を軽視する

家庭裁判所手続きには時間がかかります。申立て、照会、選任、財産調査、権限外行為許可まで進めると、相続税申告期限内に分割が完了しないことがあります。

対策は、税理士と連携し、未分割申告、分割見込書、特例適用の見通し、更正の請求期限を早期に確認することです。

16.5 相続登記義務化を見落とす

不動産がある場合、相続登記の申請義務化により、3年以内の対応が必要です。行方不明者がいるため遺産分割が長期化する場合、相続人申告登記を含めて検討します。

対策は、司法書士に早期相談し、相続登記、相続人申告登記、遺産分割成立後の追加登記を整理することです。

16.6 失踪宣告を安易に選ぶ

失踪宣告は、死亡とみなす制度です。相続関係、婚姻関係、戸籍、生命保険、税務に重大な影響を及ぼします。

対策は、死亡とみなされる時点が被相続人の死亡前か後か、代襲相続人がいるか、相続税申告にどう影響するかを検討してから選択することです。

Section 17

不在者財産管理人を使うケース別の実務設計

預貯金、不動産、税務期限、海外所在など場面別に整理します。

17.1 預貯金だけの相続で、行方不明の子が一人いる場合

被相続人の遺産が預貯金のみで、相続人が配偶者と子2人、そのうち子1人が行方不明という事案では、比較的整理しやすいです。

まず相続人調査と所在調査を行い、行方不明の子について不在者財産管理人選任を申し立てます。他の相続人の間で、法定相続分に従う案または不在者の法定相続分を確保した協議案を作ります。管理人選任後、管理人が権限外行為許可を申し立て、許可後に協議書へ署名押印します。金融機関で預金解約を行い、不在者取得分は管理人が管理します。

17.2 不動産だけの相続で、不在者の法定相続分をどう確保するか

不動産だけの相続では、不在者に法定相続分相当をどう確保するかが難しくなります。

選択肢は主に次の3つです。

  1. 不在者に不動産持分を取得させる。
  2. 他の相続人が不動産を取得し、不在者へ代償金を支払う。
  3. 不動産を売却し、売却代金を法定相続分または協議割合で分ける。

不在者に持分を取得させると、不動産の管理、固定資産税、将来売却の同意、共有関係の解消が問題になります。代償分割では、不動産取得者が代償金を支払えるかが問題になります。換価分割では、売却価格、売却時期、譲渡税、仲介手数料、測量、境界確認が問題になります。

権限外行為許可では、これらの点を資料で説明する必要があります。不動産鑑定士、不動産会社、土地家屋調査士、税理士、司法書士との連携が重要です。

17.3 相続税申告期限が迫っている場合

相続開始からすでに8か月以上経過している場合、家庭裁判所手続きだけに期待するのは危険です。

この場合の実務方針は次のとおりです。

  1. 税理士が相続税申告の要否を直ちに判定する。
  2. 未分割申告が必要か確認する。
  3. 不在者財産管理人選任申立てを並行して進める。
  4. 遺産分割案と権限外行為許可資料を同時に準備する。
  5. 期限内分割が困難なら、未分割申告と後日の更正の請求を見据える。
  6. 小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、納税資金を個別に検討する。

17.4 相続人が海外で所在不明の場合

海外在住または海外転出後に所在不明となった場合、国内の戸籍附票だけでは情報が不足することがあります。在外公館、過去の勤務先、国際郵便、メール、SNS、親族からの聴取などを組み合わせて調査します。

住所が判明している海外在住者であれば、不在者ではなく、署名証明、在留証明、公証、領事認証などを使って遺産分割協議書を作成することもあります。所在不明なのか、海外在住だが連絡可能なのかを分けることが重要です。

17.5 行方不明者に子がいる場合

行方不明の相続人に子がいる場合、失踪宣告を検討すると代襲相続または数次相続が問題になることがあります。不在者財産管理人を使う場合は、行方不明者本人が共同相続人として扱われますが、失踪宣告で死亡時点が被相続人より前とされれば、その子が代襲相続人になる可能性があります。

この点は相続人関係の根本に関わるため、弁護士と司法書士が共同で戸籍と時系列を確認する必要があります。

Section 18

不在者財産管理人の申立書作成ポイント

申立ての趣旨、理由、協議書案の作り方を確認します。

18.1 申立ての趣旨

申立ての趣旨では、不在者について財産管理人を選任することを求めます。候補者を立てる場合は候補者を記載しますが、選任は家庭裁判所の判断です。

18.2 申立ての理由

申立ての理由では、次の順序で記載すると整理しやすくなります。

  1. 被相続人の死亡日、相続開始の事実
  2. 相続人関係
  3. 不在者が相続人であること
  4. 不在者の最後の住所、最後の連絡時期
  5. 所在調査の内容と結果
  6. 遺産分割が必要な理由
  7. 遺産の内容
  8. 不在者の財産管理人がいないこと
  9. 管理人選任が必要な理由
  10. 候補者がいる場合は候補者の適格性

18.3 遺産分割協議書案の作り方

遺産分割協議書案は、権限外行為許可を見据えて作成します。少なくとも次の点を明確にします。

  1. 被相続人の表示
  2. 相続人全員の表示
  3. 不在者財産管理人が不在者を代理して参加すること
  4. 対象遺産の特定
  5. 各財産の取得者
  6. 不在者が取得する財産または代償金
  7. 代償金の支払期限、支払方法、遅延時の扱い
  8. 不動産売却を予定する場合の売却条件
  9. 預貯金解約や名義変更に必要な協力条項
  10. 税金、費用、登記費用の負担
  11. 清算条項

不在者が取得する財産の価値を示す資料を添付することが重要です。不動産の場合は、固定資産評価証明書だけでなく、必要に応じて不動産会社の査定書や鑑定評価書を用意します。

Section 19

不在者財産管理人の手続きにかかる期間

戸籍収集から許可まで、遅れる要因も含めて逆算します。

不在者財産管理人選任にかかる期間は、事案により大きく異なります。所在調査資料が十分で、財産関係も単純で、候補者の適格性に問題がなければ比較的早く進むこともあります。一方で、相続人関係が複雑、戸籍が不足、所在不明の根拠が弱い、遺産分割案に不在者の不利益がある、候補者に利益相反がある、財産が多額といった場合は時間がかかります。

実務上は、次の期間を見込んで逆算します。

不在者財産管理人の手続きにかかる期間の整理では、段階、目安、遅れる要因を横に比較すると判断材料を見落としにくくなります。この比較表は各項目の違いと注意点を確認するためのもので、左から順に条件、内容、実務上の読み取りどころを追うと全体像をつかみやすくなります。

段階目安遅れる要因
戸籍収集、相続人確定数週間から2か月程度転籍多数、兄弟姉妹相続、代襲相続、海外関係
所在調査数週間から数か月旧住所多数、海外、親族照会困難
申立書類作成1週間から1か月程度財産資料不足、遺産分割案未確定
家庭裁判所の審理数週間から数か月照会、追加資料、候補者適格性、予納金
管理人選任後の財産調査数週間から数か月預金照会、不動産、債務、会社株式
権限外行為許可数週間から数か月遺産分割案の不備、不在者の利益確保不足

相続税申告期限がある場合は、家庭裁判所手続きが完了しない可能性を常に想定し、未分割申告の準備を並行します。

Section 20

不在者財産管理人の職務終了と引継ぎ

遺産分割後も管理が続く場合がある点を確認します。

不在者財産管理人の職務は、遺産分割協議が終わっただけで当然に終了するわけではありません。裁判所の家事事件Q&Aでも、不在者財産管理人の職務は、不在者が現れたとき、不在者について失踪宣告がされたとき、不在者が死亡したことが確認されたとき、不在者の財産がなくなったとき等まで続き、申立てのきっかけとなった当初の目的を果たしたら終わりというものではないと説明されています。

終了時には、管理財産を適切な相手に引き継ぐ必要があります。

  1. 不在者が現れた場合は、不在者本人へ引き継ぐ。
  2. 不在者の死亡が確認された場合は、不在者の相続人へ引き継ぐ。
  3. 失踪宣告がされた場合は、死亡とみなされた時点を前提に相続人へ引き継ぐ。
  4. 管理財産がなくなった場合は、家庭裁判所の手続きに従い終了を検討する。

管理人が報酬を求める場合、家庭裁判所に報酬付与の申立てをし、家庭裁判所が報酬額を定めた場合に不在者の財産から支払われます。裁判所Q&Aでも、不在者財産管理人から請求があった場合、家庭裁判所の判断により、不在者の財産から支払われると説明されています。

Section 21

不在者財産管理人の実務チェックリスト

初動、申立準備、権限外行為許可の確認項目です。

21.1 初動チェックリスト

  1. 被相続人の死亡日を確認した。
  2. 遺言書の有無を確認した。
  3. 相続人候補者を洗い出した。
  4. 被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得した。
  5. 相続人全員の現在戸籍を取得した。
  6. 行方不明者の戸籍附票を取得した。
  7. 行方不明者の最後の住所へ郵便を送った。
  8. 郵便返戻の証拠を保存した。
  9. 親族、知人への照会結果を記録した。
  10. 住民票職権消除の有無を確認した。
  11. 生死不明期間が7年または危難後1年を満たすか確認した。
  12. 不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを優先するか検討した。
  13. 相続税申告の要否を確認した。
  14. 不動産がある場合、相続登記期限を確認した。

21.2 申立準備チェックリスト

  1. 不在者財産管理人選任申立書を準備した。
  2. 不在者の戸籍謄本を準備した。
  3. 不在者の戸籍附票を準備した。
  4. 不在の事実を証する資料を準備した。
  5. 申立人の利害関係を示す戸籍等を準備した。
  6. 不在者の財産資料を準備した。
  7. 被相続人の戸籍一式を準備した。
  8. 相続関係図を作成した。
  9. 遺産目録を作成した。
  10. 遺産分割協議書案を作成した。
  11. 不在者の法定相続分確保を説明できる資料を作成した。
  12. 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票を準備した。
  13. 収入印紙と郵便料を確認した。
  14. 予納金の可能性を確認した。
  15. 申立先家庭裁判所の運用を確認した。

21.3 権限外行為許可チェックリスト

  1. 管理人が選任された。
  2. 管理人が財産目録を作成した。
  3. 遺産分割協議書案が確定している。
  4. 不在者の法定相続分が確保されている。
  5. 不動産評価資料がある。
  6. 代償金の支払能力が確認できる。
  7. 換価分割の場合、売却条件が合理的である。
  8. 税務影響を確認した。
  9. 登記手続きを確認した。
  10. 権限外行為許可申立書を作成した。
  11. 権限外行為となる事項の資料を添付した。
  12. 家庭裁判所の許可後に署名押印する運用を徹底した。
Section 22

行方不明の相続人と不在者財産管理人のFAQ

一般的な制度説明として、判断が分かれやすい疑問を整理します。

Q1. 行方不明の相続人がいても、他の相続人全員が合意すれば遺産分割できますか。

一般的には、共同相続人の一人が行方不明である場合、その人を除外した遺産分割協議は有効性に問題が生じやすいとされています。ただし、遺言の有無、相続人関係、所在調査の状況によって整理は変わる可能性があります。具体的な対応は、戸籍や財産資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 不在者財産管理人を選任すれば、すぐに遺産分割協議書へ署名できますか。

一般的には、管理人が選任されただけで直ちに遺産分割協議書へ署名できるわけではなく、遺産分割協議は権限外行為許可の対象になりやすいとされています。ただし、対象行為や財産内容、家庭裁判所の判断によって必要な手続きは変わる可能性があります。具体的な対応は、協議書案と財産資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q3. 不在者財産管理人には親族を候補者として立てられますか。

一般的には、親族を候補者として記載することは可能とされています。ただし、家庭裁判所は不在者との関係、利害関係、財産内容、職務を適切に行えるかを考慮するため、候補者がそのまま選任されるとは限りません。具体的な見通しは、事案の利害関係を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q4. 不在者には必ず法定相続分を渡さなければなりませんか。

一般的には、不在者財産管理人制度は不在者本人の財産保護を目的とするため、不在者の法定相続分を確保する案が基本になりやすいとされています。ただし、特別受益、寄与分、債務、遺言などの事情によって評価は変わる可能性があります。具体的な分割案は、証拠資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. 相続税申告期限は、不在者財産管理人選任まで延長されますか。

一般的には、不在者財産管理人の選任手続きが進行中であっても、相続税の申告期限は原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内とされています。ただし、未分割申告、分割見込書、分割後の更正の請求など、事案に応じた税務対応が必要になる可能性があります。具体的には税理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q6. 相続登記は、不在者がいる場合でも義務化の対象ですか。

一般的には、不在者がいる場合でも、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記申請義務の対象になるとされています。ただし、遺産分割が進まない場合には、相続人申告登記など暫定的な対応を検討する場面があります。具体的な登記方針は、登記簿や相続関係を確認したうえで司法書士等の専門家へ相談する必要があります。

Q7. 失踪宣告のほうが簡単ですか。

一般的には、失踪宣告は死亡とみなす効果を持つため、不在者財産管理人より簡単な制度とは限らないとされています。普通失踪7年、危難失踪1年という期間要件や、死亡とみなされる時点、代襲相続人の有無で結論が変わる可能性があります。具体的な選択は、戸籍と時系列を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q8. 行方不明者が後で戻ってきたらどうなりますか。

一般的には、不在者が現れた場合、不在者財産管理人は管理財産を本人へ引き継ぐ方向で整理されます。ただし、すでに家庭裁判所の許可を得て遺産分割が行われている場合の効力関係は、手続き内容や資料によって変わる可能性があります。具体的には、所在調査資料と許可内容を確認したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

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不在者財産管理人選任手続きのまとめ

家庭裁判所手続き、税務、登記を同時に設計する要点です。

行方不明の相続人がいる場合、相続人の一部だけで遺産分割協議を進めることはできません。正しい実務の入口は、所在調査、相続人確定、遺産調査を行い、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることです。

もっとも、管理人が選任されただけでは遺産分割協議は完了しません。不在者財産管理人が遺産分割協議を行うには、原則として家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。遺産分割案では、不在者の法定相続分をどのように確保するか、財産評価は適正か、税務や登記に支障がないかを丁寧に示す必要があります。

また、相続税申告期限は遺産未分割を理由に延びず、相続登記も義務化されています。したがって、行方不明の相続人がいる相続では、家庭裁判所手続き、税務申告、登記、不動産評価、必要に応じた失踪宣告を同時並行で設計することが重要です。

「行方不明の相続人がいる場合の不在者財産管理人の選任手続き」は、単なる書類提出手続きではありません。不在者本人の財産保護、他の相続人の相続手続き、税務期限、不動産登記義務、将来の紛争予防を同時に扱う総合的な家事事件実務です。早期に戸籍と所在調査を始め、弁護士、司法書士、税理士を中心に必要な専門職を組み合わせることが、最も確実な解決への近道です。

Reference

不在者財産管理人選任手続きの参考資料

公的機関・制度資料

  • 裁判所「不在者財産管理人選任」
  • 裁判所「不在者財産管理人の権限外行為許可」
  • 裁判所「裁判手続 家事事件Q&A」
  • 裁判所「不在者財産管理人選任の申立書」
  • 裁判所「失踪宣告」
  • 札幌家庭裁判所「不在者財産管理人選任事件手続案内シート」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • e-Gov法令検索「家事事件手続法」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務省「相続人申告登記について」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」