2σ Guide

相続人が行方不明の場合に
不在者財産管理人を選任する

遺産分割協議を止めないために、不在者本人の保護、家庭裁判所の許可、相続登記、相続税申告を一体で確認します。

800円選任申立ての印紙額
10か月相続税申告の原則期限
3年相続登記義務の期限
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相続人が行方不明の場合に 不在者財産管理人を選任する

遺産分割協議を止めないために、不在者本人の保護、家庭裁判所の許可、相続登記、相続税申告を一体で確認します。

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相続人が行方不明の場合に 不在者財産管理人を選任する
遺産分割協議を止めないために、不在者本人の保護、家庭裁判所の許可、相続登記、相続税申告を一体で確認します。
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  • 相続人が行方不明の場合に 不在者財産管理人を選任する
  • 遺産分割協議を止めないために、不在者本人の保護、家庭裁判所の許可、相続登記、相続税申告を一体で確認します。

POINT 1

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 要旨
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 不在者本人の保護が中心
  • 遺産分割には許可が必要
  • 税務と登記は別に進む

POINT 2

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 問題の所在
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 1.1 行方不明の相続人がいると遺産分割が止まる理由
  • 1.2 不在者財産管理人制度の基本的な位置付け
  • 1.3 制度の本質は「他の相続人の便宜」ではなく「不在者の保護」

POINT 3

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 用語の定義
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 2.1 相続人
  • 2.2 行方不明
  • 2.3 不在者

POINT 4

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 法的根拠の全体像
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 3.1 民法第25条 ― 不在者の財産管理
  • 3.2 民法第27条 ― 管理人の職務
  • 3.3 民法第28条と第103条 ― 管理人の権限と限界

POINT 5

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 選任を申し立てる前に行う所在調査
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 5.1 家庭裁判所は「連絡が取れない」だけでは足りません
  • 5.2 戸籍附票、住民票、除票の確認
  • 5.3 郵便物の返戻、現地調査、親族聴取

POINT 6

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 申立人、管轄、費用、必要書類
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 6.1 申立人
  • 6.2 申立先
  • 6.3 申立費用

POINT 7

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 不在者財産管理人は誰が選ばれるか
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 7.1 候補者を立てても家庭裁判所が決める
  • 7.2 共同相続人が管理人になることは難しい
  • 7.3 弁護士など専門職が選任されることがあります

POINT 8

  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する― 選任後の職務と権限
  • 不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 8.1 財産目録の作成
  • 8.2 分別管理
  • 8.3 管理報告

まとめ

  • 相続人が行方不明の場合に 不在者財産管理人を選任する
  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 要旨:不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 問題の所在:不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 用語の定義:不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 要旨

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

次の重要ポイント一覧は、相続人が行方不明の場合に最初に分けて考える3つの軸を示しています。選任、権限外行為許可、税務・登記期限が別問題だということを読み取ってください。

選任

不在者本人の保護が中心

管理人は署名代行者ではなく、不在者の財産を守る立場です。

許可

遺産分割には許可が必要

管理人が選任されただけでは遺産分割協議は完成しません。

期限

税務と登記は別に進む

10か月の相続税申告期限と3年の登記期限は別に確認します。

相続人の一人が行方不明の場合、他の相続人だけで有効な遺産分割協議を完成させることはできません。遺産分割は、原則として相続人全員が関与して行う手続だからです。行方不明の相続人が「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者」に当たるときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割協議に参加するという構成を検討します。

ただし、不在者財産管理人は他の相続人のために遺産分割を早める人ではありません。不在者本人の利益を守る法的な財産管理者です。そのため、不在者の法定相続分を不当に害する分割案、不在者に無償で相続分を放棄させるような分割案、他の相続人に一方的に有利な売却案は、許可されない可能性が高くなります。大阪家庭裁判所の手引きも、遺産分割目的の申立てでは、不在者に不利な内容の協議には同意できず、例外的事情がない限り少なくとも法定相続分の確保が必要という趣旨を示しています。

相続税については、遺産分割ができないからといって申告期限が延びるわけではありません。相続税の申告と納税は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、未分割の場合には法定相続分などに従って申告することになります。未分割申告では、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などを直ちに使えないことがあるため、税理士による期限管理が重要です。

また、不動産がある相続では、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が必要です。行方不明相続人がいると遺産分割が止まりやすいため、不在者財産管理人の選任、遺産分割、相続登記、場合によっては相続人申告登記を組み合わせて、期限徒過と権利関係の長期放置を避ける必要があります。

Section 01

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 問題の所在

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

1.1 行方不明の相続人がいると遺産分割が止まる理由

相続が発生すると、遺言により処理できる範囲を除き、相続人は遺産の帰属を決める必要があります。遺言がない場合、または遺言では処理しきれない財産がある場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。国税庁の相続税準備案内も、遺言書がない場合には相続人全員で遺産の分割について協議し、成立した場合には遺産分割協議書を作成するものと説明しています。

ここで、共同相続人の一人が行方不明だと、次のような実務上の支障が生じます。

  1. 遺産分割協議書に署名押印してもらえません。
  2. 印鑑証明書を取得してもらえません。
  3. 銀行預金の解約や名義変更の手続が止まる。
  4. 不動産の相続登記に必要な遺産分割協議書を完成できません。
  5. 相続不動産を売却して代金を分ける換価分割ができません。
  6. 相続税申告に必要な取得者、取得額、特例適用の前提が確定しません。
  7. 相続人間の争いがある場合、調停や審判の手続設計が複雑になります。

行方不明相続人を無視して、他の相続人だけで「全員で協議したことにする」ことは、法的には極めて危険です。後日、その相続人が現れた場合、遺産分割協議の効力、登記、売却代金の分配、税務申告、損害賠償責任が一挙に問題化します。

1.2 不在者財産管理人制度の基本的な位置付け

不在者財産管理人制度は、行方不明者の財産を保全し、本人および利害関係人の利益を保護するために、家庭裁判所が管理人を選任する制度です。裁判所は、不在者財産管理人選任について、従来の住所または居所を去り容易に戻る見込みのない者に財産管理人がいない場合、申立てにより家庭裁判所が財産管理人選任等の処分を行うことができると説明しています。

相続の文脈では、行方不明相続人の財産には、被相続人の遺産に対する相続分も含まれます。不在者財産管理人は、不在者の代理的立場で財産を管理し、必要な場合には家庭裁判所の許可を得て、遺産分割協議に参加します。裁判所の案内も、不在者財産管理人は財産を管理、保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割や不動産の売却等を行うことができると説明しています。

1.3 制度の本質は「他の相続人の便宜」ではなく「不在者の保護」

重要なのは、不在者財産管理人が「残された相続人の手続を進めるための便宜的な署名代行者」ではないことです。管理人は、不在者本人の財産を守るために選任されます。

したがって、他の相続人が「不在者は昔から家を出ていたから相続分はいらないはずだ」「連絡が取れないのだから、残りの相続人で全部分けたい」と考えても、家庭裁判所がそのような分割案を当然に認めるわけではありません。不在者の相続分を確保すること、不在者に不利益な分割を避けること、分割の必要性と相当性を資料で説明することが中心課題になります。

Section 02

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 用語の定義

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

2.1 相続人

相続人とは、被相続人の死亡により、民法上、被相続人の財産上の権利義務を承継する地位にある人をいいます。配偶者は常に相続人となり、子、直系尊属、兄弟姉妹が順位に応じて相続人になります。実務では、戸籍を被相続人の出生から死亡までたどり、相続人を確定します。

2.2 行方不明

「行方不明」は日常用語です。法律上の要件を厳密に示す語ではありません。電話がつながらない、郵便の返事がない、数年会っていないというだけでは、直ちに不在者財産管理人を選任できるとは限りません。

家庭裁判所に説明する核心は、単に連絡が取りづらいことではなく、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みがないことです。大阪家庭裁判所の手引きも、単に最近連絡がない、連絡が取れないというだけで直ちに不在者とはいえず、本当に不在者ですかを調査し、裏付け資料を提出する必要がありますと説明しています。

2.3 不在者

民法上の不在者とは、従来の住所または居所を去った者をいいます。家庭裁判所実務では、これに「容易に戻る見込みがない」という要素が重視されます。裁判所の手続案内も、「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者」を不在者として説明しています。

不在者は、死亡者ではありません。生死不明であっても、失踪宣告がされるまでは法律上当然に死亡したものとは扱われません。相続人としての地位を有する可能性があるため、その相続分を保護する必要があります。

2.4 不在者財産管理人

不在者財産管理人とは、家庭裁判所により選任され、不在者の財産を管理する人です。民法第25条は、不在者が財産管理人を置かなかったとき、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求により、財産管理について必要な処分を命ずることができる旨を定めています。

相続実務では、行方不明相続人の代理的役割を果たすように見えますが、その職務の基礎は「不在者の財産保護」です。遺産分割協議に参加する場合も、家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります。

2.5 権限外行為許可

不在者財産管理人が通常の管理権限を超える行為を行うために、家庭裁判所から受ける許可をいいます。裁判所は、不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議をしたり、不在者の財産を処分したりするなど、民法第103条に定められた権限を超える行為をするためには、家庭裁判所の許可が必要ですと案内しています。

2.6 法定相続分

法定相続分とは、民法が定める相続分の基準です。遺産分割協議では法定相続分と異なる分け方も可能ですが、行方不明相続人について不在者財産管理人が関与する場合は、不在者本人が自由に意思表示できないため、不在者の法定相続分を下回る分割案には厳格な検討が必要です。

2.7 失踪宣告

失踪宣告とは、生死不明の者について、一定期間の経過後、家庭裁判所の宣告により法律上死亡したものとみなす制度です。裁判所は、普通失踪では生死が7年間明らかでないとき、危難失踪では戦争、船舶沈没、震災などの死亡原因となる危難が去った後1年間生死が明らかでないときに、申立てにより失踪宣告をすることができると説明しています。

失踪宣告は、不在者財産管理人とは効果が異なります。不在者財産管理人は不在者が生きている可能性を前提に財産を管理する制度で、失踪宣告は法律上死亡したものとみなす制度です。

Section 04

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 不在者財産管理人を選任する必要がある場面

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

4.1 遺産分割協議ができない場合

最も典型的なのは、遺言がなく、相続人全員で遺産分割協議をしなければならないのに、一人の相続人の所在が不明で協議書が完成しない場合です。

このような場合、他の相続人は、行方不明相続人の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に、不在者財産管理人選任を申し立てます。選任後、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するためには、別途、権限外行為許可を得る必要があります。

4.2 相続不動産の売却が必要な場合

相続財産が空き家、老朽建物、収益性の低い土地、固定資産税負担の重い不動産の場合、売却して現金で分ける換価分割が現実的な選択肢になります。しかし、相続人の一人が行方不明だと、売買契約、所有権移転登記、代金分配が進みません。

不在者財産管理人を選任したうえで、遺産分割協議または不動産処分について家庭裁判所の許可を得る必要があります。不動産売却では、売買契約書案、固定資産評価証明書、不動産業者の査定書、不動産鑑定評価、登記事項証明書などの資料が重要になります。熊本家庭裁判所の職務説明資料も、不動産の処分では売買契約書、評価証明、査定資料などを添付する例を示しています。

4.3 預貯金、有価証券、保険契約の手続が止まっている場合

銀行預金や証券口座の相続手続では、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、戸籍一式などを求められるのが通常です。行方不明相続人がいると、相続手続担当窓口で必要書類が整わず、解約や名義変更が止まります。

預貯金のみであれば法定相続分に応じた払戻し制度など別の論点もありますが、最終的な分配、他財産との調整、税務、債務精算が必要であれば、不在者財産管理人の選任を検討する必要があります。

4.4 相続税申告期限が迫っている場合

相続税申告は、遺産分割未了でも期限が延びません。行方不明相続人がいるために協議ができない場合、未分割申告を行ったうえで、後日分割が成立した段階で修正申告または更正の請求を検討することになります。

ただし、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減などは、分割済みになっていることが重要な要件になることがあります。期限内に分割できない場合は、申告期限後3年以内の分割見込書の添付や、やむを得ない事由がある場合の承認申請なども視野に入ります。

4.5 相続人間に争いがある場合

相続人が行方不明なだけでなく、他の相続人間にも使い込み疑い、特別受益、寄与分、遺留分、遺言の有効性、財産評価の争いがある場合は、慎重な設計が必要です。不在者財産管理人は不在者の利益を守る立場で、他の相続人間の紛争を整理する調停委員や仲裁人ではありません。

このような事案では、まず弁護士が全体の紛争構造を整理し、必要に応じて遺産分割調停、遺産分割審判、不当利得返還請求、遺留分侵害額請求、使途不明金調査を検討します。不在者財産管理人の選任は、その中の一部として位置付けるべきです。

Section 05

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 選任を申し立てる前に行う所在調査

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

次の比較表は、所在調査で集める資料と、それぞれが示す意味を整理したものです。単に連絡が取れないだけでは不在者といえない場合があるため、資料ごとに何を裏付けるのかを読み取ってください。

資料示す意味
戸籍附票、住民票、除票住所履歴と現在住所を確認します。
返戻郵便登録住所に居住していないことを補助します。
現地調査報告書表札、近隣聴取、建物状況を具体化します。
親族・知人の聴取書最後の連絡時期や失踪経緯を時系列化します。

5.1 家庭裁判所は「連絡が取れない」だけでは足りません

不在者財産管理人を選任してもらうには、所在不明だということを資料で示す必要があります。単に「長年会っていない」「電話番号を知らない」「親族が嫌っているので連絡したくない」では足りません。

大阪家庭裁判所の手引きは、単に最近連絡がない、連絡が取れないということで直ちに不在者とはいえず、本当に不在者ですかを調査して裏付け資料を提出する必要がありますとしています。

5.2 戸籍附票、住民票、除票の確認

まず、不在者の戸籍謄本、戸籍附票、住民票、住民票除票を確認します。戸籍附票には、戸籍に記載されている人の住所の履歴が記録されます。現在の本籍地が分からない場合は、親族関係の戸籍をたどって本籍地を確認します。

札幌家庭裁判所の案内も、不在者の所在が本当に不明かを確認するため、不在者の戸籍附票などを取得し、現在の住所を調査するよう促しています。

5.3 郵便物の返戻、現地調査、親族聴取

所在調査では、以下の資料が実務上よく用いられます。

資料意味
あて所尋ねあたらず、転居先不明で返戻された郵便物登録住所に実際に居住していないことの補助資料
現地調査報告書表札、近隣聴取、建物状況、管理人聴取などの結果
親族、知人からの事情聴取書最後の連絡時期、生活状況、失踪経緯の説明
警察への行方不明者届、捜索願の受理資料探索努力の補助資料
勤務先、施設、病院、福祉関係の照会結果生存、居住可能性の確認
海外渡航、在留関係資料海外所在の可能性がある場合の調査資料

札幌家庭裁判所の案内は、不在を証明する資料の例として、返戻郵便物、家出人捜索願受理証明書写し、現地調査報告書、親族からの事情聴取書等を挙げています。

5.4 調査の目的は「探したが見つからない」を示すこと

家庭裁判所は、申立人がどの程度真剣に所在調査をしたかを見ます。調査の目的は、不在者を排除することではなく、本人がどこにいるか分からず、本人に直接手続参加してもらうことが現実に困難だということを示す点にあります。

調査が不十分なまま申立てをすると、追加資料を求められたり、申立てが認められなかったりします。特に、戸籍附票上の住所が判明しているのに現地調査や郵便照会をしていない場合は、補充を求められる可能性があります。

Section 06

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 申立人、管轄、費用、必要書類

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

6.1 申立人

裁判所の案内によれば、不在者財産管理人選任の申立人は、利害関係人または検察官です。利害関係人の例として、不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者などが挙げられています。

相続の場面では、次の人が申立人となることが多いです。

申立人候補利害関係の内容
他の共同相続人遺産分割協議、相続登記、預金解約を進める必要があります
遺言執行者遺言執行や財産引渡しのため不在者対応が必要
相続債権者不在者の相続分に関係して債権回収上の利害がある
受遺者遺贈の履行、登記、財産移転に不在者の関与が必要
不動産共有者、隣地所有者境界、共有物、売却などで不在者の財産管理が必要

6.2 申立先

裁判所の案内では、申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所です。

不在者の従来の住所地が分からない場合や、日本国内に住所地がない場合は、家事事件手続法の管轄規定や各家庭裁判所の実務案内を確認する必要があります。札幌家庭裁判所の案内では、従来の住所地または居所地が不明な場合、不在者の財産所在地または東京家庭裁判所を挙げています。

6.3 申立費用

裁判所の案内では、不在者財産管理人選任の申立手数料は収入印紙800円分です。連絡用郵便切手または保管金の金額は裁判所ごとに異なります。また、不在者財産の内容から管理費用や管理人報酬に不足が出る可能性がある場合には、申立人に予納金の納付を求められることがあります。

権限外行為許可の申立手数料も、裁判所の案内上、収入印紙800円分です。郵便料は裁判所ごとに異なります。

6.4 必要書類

裁判所の標準的な案内では、不在者財産管理人選任の添付書類として、次のようなものが挙げられています。

書類実務上の意味
申立書申立ての趣旨、理由、不在者、申立人、候補者等を記載
不在者の戸籍謄本不在者の身分関係を確認
不在者の戸籍附票住所履歴、現在住所の探索
財産管理人候補者の住民票または戸籍附票候補者の特定と連絡先確認
不在の事実を証する資料返戻郵便、現地調査、親族聴取書など
不在者の財産に関する資料不動産登記事項証明書、通帳写し、残高証明書、有価証券資料など
利害関係を証する資料戸籍謄本、相続関係説明図、契約書、債権資料など

相続目的の場合は、これに加えて次の資料が重要です。

相続関連資料意味
被相続人の出生から死亡までの戸籍相続人確定
相続人全員の戸籍相続関係のつながり確認
相続関係説明図相続人関係の可視化
遺産目録分割対象財産の範囲
遺産分割協議書案不在者の取得内容、法定相続分確保の確認
不動産評価資料固定資産評価証明書、査定書、鑑定評価書など
預貯金残高資料相続開始時残高、現在残高、入出金履歴
債務資料借入金、未払税、葬儀費用、保証債務など

札幌家庭裁判所の案内は、遺産分割目的の場合の資料として、遺産分割協議書案、不在者の法定相続分が確保されていること、事前に相続人の合意を得ていること、被相続人の出生から死亡までの戸籍、各相続人につながる戸籍、相続関係図、被相続人の財産目録などを挙げています。

Section 07

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 不在者財産管理人は誰が選ばれるか

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

7.1 候補者を立てても家庭裁判所が決める

申立書には財産管理人候補者を記載できる場合があります。しかし、候補者を記載したからといって、その人が当然に選ばれるわけではありません。家庭裁判所は、不在者の利益を守れるか、利害関係がないか、管理能力があるか、事案の複雑性に対応できるかを見て選任します。

7.2 共同相続人が管理人になることは難しい

遺産分割を目的とする申立てでは、他の共同相続人が不在者財産管理人になると、遺産分割において利益相反が生じます。大阪家庭裁判所の手引きは、遺産分割目的の申立ての場合、共同相続人が財産管理人になると後の遺産分割で利益相反が生じるため、共同相続人を財産管理人として選任することはできないと説明しています。

この点は実務上極めて重要です。相続人の一人が「自分が管理人になれば手続が早い」と考えても、遺産分割では自らも取得者ですため、中立性に疑義が生じます。

7.3 弁護士など専門職が選任されることがあります

相続財産が多い、相続人間で争いがある、不動産売却が必要、税務申告が絡む、行方不明者の財産管理が長期化しそう、候補者に利害関係があるという場合には、弁護士など専門職が選任されることがあります。大阪家庭裁判所の手引きも、同庁本庁では原則として申立人の推薦を受けず、事件につき利害関係のない大阪弁護士会所属の弁護士を選任している旨を示しています。

裁判所ごとに運用は異なりますが、遺産分割目的の案件では、利害関係のない専門職が選任される可能性を前提に、予納金や報酬を見込んでおく必要があります。

7.4 管理人の報酬と予納金

管理人報酬は、不在者の財産から支払われることがあります。財産が十分でない場合、申立人に予納金が求められることがあります。予納金の有無や金額は、財産内容、管理期間、管理人候補、家庭裁判所の判断によります。

申立人としては、費用を嫌って手続を遅らせると、相続登記義務、相続税申告、空き家管理、固定資産税、不動産価値下落などの別コストが増える可能性があるため、総コストで判断する必要があります。

Section 08

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 選任後の職務と権限

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

8.1 財産目録の作成

不在者財産管理人は、就任後、不在者の財産を調査し、財産目録を作成します。熊本家庭裁判所の職務説明資料は、管理人は就職後直ちに不在者の財産状況を調査して財産目録を作成し、その一通を家庭裁判所に提出しなければならないと説明しています。

相続案件では、不在者固有の財産だけでなく、相続財産に対する不在者の相続分が管理対象になります。そのため、被相続人の遺産目録、相続開始時の財産額、債務、葬儀費用、特別受益、寄与分、遺言の有無なども確認対象になります。

8.2 分別管理

管理人は、不在者の財産と管理人個人の財産を混同してはいけません。熊本家庭裁判所の資料は、新たに取得した不在者財産を預貯金等で管理する場合、管理人個人の財産と紛れないよう、不在者名義の財産管理人口座で管理するよう説明しています。

これは、不在者の相続分として現金を取得する分割案を作る場合に重要です。たとえば、行方不明相続人の取得分を現金で確保する場合、その現金を不在者財産管理人口座で保管し、家庭裁判所へ報告する設計が必要になります。

8.3 管理報告

管理人は、家庭裁判所に対して管理状況を報告します。熊本家庭裁判所の資料は、就任後2か月以内の初回報告、毎年1回の定期報告、管理方針変更や財産変動時の臨時報告を説明しています。

遺産分割のために選任された場合でも、遺産分割が終わるまで、またはその後の財産引継ぎ、供託、取消しまで、報告義務が続くことがあります。

8.4 権限の限界

不在者財産管理人が当然にできるのは、原則として管理、保存、性質を変えない利用、改良の範囲です。遺産分割、不動産売却、保険解約、訴訟上の和解などは処分行為に当たり得るため、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。

熊本家庭裁判所の資料は、財産管理人は管理行為はできますが処分行為はできず、財産の売却、遺産分割等の処分を必要とする特別の事情がある場合には、家庭裁判所に権限外行為許可申立てをして許可を受ける必要がありますと説明しています。

Section 09

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 遺産分割協議に参加するための権限外行為許可

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

次の判断の流れは、管理人選任から遺産分割協議へ進む順番を示しています。選任と許可が別手続で、不在者の法定相続分確保が審査の中心になります点を読み取ってください。

遺産分割協議へ進む順番

不在者財産管理人を選任

従来住所地などを管轄する家庭裁判所へ申立てます。

分割案と評価資料を整える

相続人、遺産範囲、評価、債務、不在者取得分を確認します。

権限外行為許可を申し立てる

申立人は管理人で、選任した家庭裁判所に申し立てます。

許可後に協議参加

許可内容の範囲で協議に参加します。

9.1 選任だけでは遺産分割協議は完成しません

不在者財産管理人が選任されても、それだけで遺産分割協議に当然参加できるわけではありません。遺産分割協議は、相続財産の帰属を最終的に決める処分的行為です。したがって、不在者財産管理人が遺産分割協議を行うには、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。

この点を誤解すると、「管理人が選任されたのに銀行や法務局が進まない」「遺産分割協議書に管理人が署名してくれない」という事態が生じます。選任申立てと権限外行為許可申立ては、目的、申立人、審理資料が異なります。

9.2 権限外行為許可の申立人

裁判所の案内では、権限外行為許可の申立人は不在者財産管理人です。申立先は、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所です。

他の相続人が直接「この遺産分割案を許可してほしい」と申し立てるのではなく、選任された不在者財産管理人が、不在者の利益の観点から内容を検討し、必要資料を整えて申し立てる構造になります。

9.3 許可審理で見られるポイント

遺産分割協議について権限外行為許可を得るには、概ね次の点が重要です。

審査上の観点説明
不在者の相続人性不在者が本当に共同相続人にあたること
相続人の確定被相続人の出生から死亡までの戸籍で全相続人が確定していること
遺産の範囲分割対象財産が漏れなく示されていること
財産評価不動産、株式、事業財産などの評価根拠があること
不在者の取得内容法定相続分相当が確保されているか
債務負担不在者が過大な債務や不利益を負わないか
分割方法の必要性現物分割、代償分割、換価分割の合理性
他の相続人間の合意不在者以外の相続人間で合意が形成されているか
手続後の管理不在者取得分をどのように保管、供託、管理するか

9.4 不在者の法定相続分を確保する設計

大阪家庭裁判所の手引きは、特別受益や寄与分が認められるような例外的事案を除けば、少なくとも不在者の法定相続分が確保されていなければ、遺産分割協議に参加させるための権限外行為許可は出せない旨を説明しています。

これは、相続実務上の最重要ポイントです。不在者本人が自ら納得して「自分は何もいらない」と意思表示しているわけではないため、管理人による不在者に不利な合意は慎重に制限されます。

9.5 不在者以外の相続人間の事前合意

大阪家庭裁判所の手引きは、管理人は遺産分割協議に積極的に関与することは通常なく、申立時には不在者以外の法定相続人間では遺産分割についての合意ができていることが前提になると説明しています。

つまり、不在者財産管理人の選任を「揉めている相続人間の話し合いをまとめるための人選」と考えてはいけません。他の相続人間で分割方針が固まっていない場合は、先に弁護士を交えて交渉し、必要に応じて遺産分割調停を検討する必要があります。

Section 10

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 行方不明相続人を含む遺産分割案の作り方

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

10.1 現物分割

現物分割とは、特定の財産を特定の相続人に取得させる方法です。たとえば、長男が土地建物を取得し、長女が預貯金を取得し、不在者が別の預貯金を取得するという形です。

不在者が取得する現物財産が預金など管理しやすい財産であれば比較的設計しやすいですが、不在者に老朽空き家、管理困難な土地、未収益不動産を取得させると、管理人の負担が大きくなり、不在者に不利益となります可能性があります。

10.2 代償分割

代償分割とは、特定の相続人が不動産などを取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法です。不在者には法定相続分相当の代償金を支払い、不在者財産管理人口座で管理する設計が考えられます。

この方法では、代償金額が適正だということ、支払能力があること、不動産評価が合理的だということが重要です。不動産鑑定士による鑑定評価、複数業者の査定、固定資産税評価額、路線価、公示価格などを総合し、家庭裁判所に説明できます資料を整えるべきです。

10.3 換価分割

換価分割とは、相続財産を売却して現金化し、売却代金を相続人間で分ける方法です。老朽不動産、共有が不適切な不動産、相続人全員が不動産取得を望まない場合に有効です。

ただし、不在者財産管理人が不動産売却に関与する場合、遺産分割協議だけでなく不動産売却についても権限外行為許可の問題が生じます。売却価格の相当性、売却先の信用性、仲介手数料、測量費、解体費、譲渡所得税、固定資産税精算、不在者取得分の管理方法まで設計する必要があります。

10.4 共有分割は慎重に

共有分割とは、相続財産を相続人間の共有のままにする方法です。形式的には法定相続分を確保しやすいように見えますが、行方不明相続人との共有は将来の管理、売却、賃貸、修繕、境界確認、担保設定を困難にします。

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する目的が、相続手続の停滞を解消することにあるなら、共有分割は問題を先送りするだけになりがちです。不在者の利益にも、他の相続人の利益にもならない場合があります。

10.5 不在者取得分の保管、供託、引継ぎ

不在者が現金を取得する分割案では、取得金をどこで、誰が、いつまで管理するかが重要です。管理人名義の管理口座で保管する方法、必要に応じて供託する方法、不在者が現れた場合に引き渡す方法、失踪宣告や死亡確認がされた場合に不在者の相続人へ引き継ぐ方法を検討します。

家事事件手続法には、家庭裁判所が選任した管理人が不在者の財産管理、処分等により金銭を生じたとき、不在者のために供託できます規定もあります。

Section 11

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 不動産がある場合の登記、売却、評価

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

11.1 相続登記義務化の影響

2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。法務省のQ&Aは、相続人は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする義務があり、正当な理由がないのにしない場合は10万円以下の過料が科される可能性があると説明しています。

行方不明相続人がいる場合、遺産分割が進まず、相続登記も遅れやすくなります。特に、相続開始から長期間経っている古い相続では、さらに次の相続が発生し、相続人が増え、所在不明者が増えることがあります。

11.2 相続人申告登記の利用可能性

法務省は、早期の遺産分割が難しい場合、新たに作られた相続人申告登記により義務を果たすこともできると説明しています。相続人申告登記は、登記簿上の所有者の相続人にあたること等を期限内に登記官へ申し出ることで、相続登記義務を履行したものとみなす制度です。ただし、権利関係を最終的に公示する相続登記そのものではなく、売却や抵当権設定などには相続登記が必要になります。

したがって、行方不明相続人がいる場合の対応は、次のように整理できます。

状況対応の方向性
期限が迫っているが分割未了相続人申告登記で義務履行を検討
不動産を売却したい不在者財産管理人、権限外行為許可、相続登記、売却を設計
遺産分割方針が固まっている不在者財産管理人選任後、権限外行為許可を得て分割協議
他の相続人間で争いがある弁護士による交渉、遺産分割調停、審判を検討

11.3 不動産評価の重要性

不在者の法定相続分を確保するには、遺産総額を合理的に評価する必要があります。不動産評価が低すぎると、不在者が受け取る代償金が不足し、不在者に不利な分割案になります。逆に高すぎると、不動産取得者に過大な代償金負担が生じ、協議が破綻します。

評価資料としては、以下が考えられます。

  1. 固定資産評価証明書
  2. 相続税路線価、倍率評価資料
  3. 公示地価、基準地価
  4. 不動産業者の査定書
  5. 不動産鑑定士の鑑定評価書
  6. 近隣取引事例
  7. 建物の老朽化、解体費、越境、境界未確定、接道問題の資料

争いが大きい場合や不動産が高額な場合は、不動産鑑定士の鑑定を検討する必要があります。境界や地積が問題になる場合は、土地家屋調査士による調査、測量、境界確認が必要です。

11.4 売却前に検討する法務、税務、実務

相続不動産を売却する場合、宅地建物取引士、不動産仲介業者、司法書士、税理士、弁護士の連携が必要です。少なくとも次の論点を確認します。

項目確認内容
所有名義被相続人名義のままか、相続登記が必要か
相続関係相続人全員、行方不明相続人の地位、代襲相続の有無
管理人権限売却、遺産分割、登記協力に権限外行為許可があるか
売買価格査定、鑑定、入札、相場との比較
契約条件手付、違約金、契約不適合責任、引渡時期
測量、境界確定測量、越境、私道、未登記建物
税務譲渡所得税、取得費、譲渡費用、特例適用の可否
代金管理不在者分の保管、供託、管理報告

国税庁は、不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て不在者の財産を譲渡した場合、その譲渡についての納税申告は保存行為に該当すると解され、管理人は別途権限外行為許可を得ることなく不在者の代理人として所得税申告を行うことができるとする質疑応答事例を公表しています。

Section 12

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 相続税申告と税務リスク

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

12.1 相続税申告期限は遺産分割未了でも延びない

国税庁は、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うと説明しています。

また、相続財産が分割されていない場合でも申告期限までに申告しなければならず、未分割だということにより申告期限が延びることはないと説明しています。

したがって、行方不明相続人がいる場合でも、相続税が発生する可能性があるなら、税理士は早期に関与する必要があります。

12.2 未分割申告の基本

期限までに遺産分割が成立しない場合、各相続人は民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税を計算し、申告と納税を行うことになります。

このような場合、分割後の実際の取得額と申告額が異なれば、後日、修正申告または更正の請求を検討します。

12.3 小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減

未分割申告で特に大きいのは、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減です。国税庁は、未分割の場合、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などが適用できない申告になりますため注意が必要ですと説明しています。

配偶者の税額軽減についても、国税庁は、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりませんが、申告期限後3年以内の分割見込書を添付し、申告期限から3年以内に分割したときなどには対象になる旨を説明しています。

行方不明相続人がいる事案では、不在者財産管理人選任の申立て、権限外行為許可、遺産分割、申告期限後3年以内の分割見込書、やむを得ない事由の承認申請の期限を一覧化することが重要です。

12.4 不在者の納税資金

不在者も相続税の納税義務者とになる場合があります。不在者財産管理人が選任されている場合、管理人が不在者の財産から納税を行う必要が生じることがあります。納税原資が相続財産の分割後にしか確保できない場合、期限内納付に支障が出るため、税理士と弁護士が連携して、未分割申告、納税資金、延納、換価、権限外行為許可の要否を検討します。

12.5 譲渡所得税の申告

相続不動産を売却する場合、不在者の持分または取得分に対応する譲渡所得税の問題が生じます。国税庁の質疑応答事例では、不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て不在者所有土地を売却した場合、当該譲渡についての所得税申告は保存行為に該当し、管理人が不在者の代理人として申告書を提出できるとされています。

ただし、これは照会事例に基づく一般的回答で、具体的な取得費、譲渡費用、居住用財産特例、空き家特例、相続税取得費加算などの適用可否は個別に判断されます。

Section 13

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 失踪宣告との違い

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

次の比較表は、不在者財産管理人と失踪宣告の違いを整理したものです。生存可能性を前提に管理する制度か、法律上死亡したものとみなす制度かの違いを読み取ってください。

比較項目不在者財産管理人失踪宣告
本人の扱い生存可能性を前提に財産を管理法律上死亡したものとみなす
主な目的財産保全、遺産分割、不動産処分身分関係と相続関係の確定
期間要件7年などの固定期間要件ではない普通失踪7年、危難失踪1年

13.1 不在者財産管理人は「生きている可能性」を前提にする

不在者財産管理人制度は、不在者が生きている可能性を前提に、その人の財産を管理する制度です。本人が現れた場合には、管理財産を本人に引き継ぐことが想定されます。

13.2 失踪宣告は「法律上死亡したものとみなす」制度

失踪宣告は、生死不明状態が長期化した場合に、法律上死亡したものとみなす制度です。裁判所は、普通失踪では生死が7年間明らかでないとき、危難失踪では死亡原因となる危難が去った後1年間生死が明らかでないときに、申立てにより失踪宣告ができると説明しています。

失踪宣告が確定すると、その人について相続が開始したものとして扱われます。行方不明の相続人が被相続人より先に死亡したものとみなされるのか、後に死亡したものとみなされるのかにより、代襲相続、数次相続、相続人の範囲が大きく変わります。

13.3 どちらを選ぶべきか

比較項目不在者財産管理人失踪宣告
本人の扱い生存可能性を前提に財産管理法律上死亡したものとみなす
主な目的財産保全、遺産分割、不動産処分身分関係、相続関係の確定
期間要件7年などの固定期間要件ではない普通失踪7年、危難失踪1年
相続手続への影響不在者の相続分を管理人が保護不在者自身の相続が発生し得る
向く事案生存可能性があるが所在不明、早期に遺産分割したい長期生死不明で死亡扱いにする必要があります

札幌家庭裁判所の案内も、不在者について失踪宣告の要件を満たしていませんか確認し、満たしている場合は失踪宣告の申立てを検討するよう注意喚起しています。

13.4 失踪宣告のリスク

失踪宣告は相続関係を確定する強い効果がありますが、後日本人が生存していたことが判明する可能性もあります。その場合、失踪宣告の取消し、財産返還、善意でした行為の保護など複雑な問題が生じます。

行方不明期間が長いからといって常に失踪宣告が最善とは限りません。相続財産の管理と遺産分割を進めるだけなら、不在者財産管理人の方が適切な場合があります。

Section 14

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 相続人申告登記、遺産分割調停、相続財産清算人との違い

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

14.1 相続人申告登記との違い

相続人申告登記は、相続登記義務を履行するための簡易な方法です。法務省は、期限内に登記官へ申し出ることで義務を履行できる制度で、特定の相続人が単独で申し出ることができると説明しています。ただし、権利関係を公示するものではなく、不動産を売却したり抵当権を設定したりするには相続登記が必要です。

したがって、相続人申告登記は、行方不明相続人がいるために分割が間に合わないときの期限対策にはなり得ますが、遺産分割を完成させる制度ではありません。

14.2 遺産分割調停、審判との違い

遺産分割調停は、家庭裁判所で相続人間の話し合いを行う手続です。審判は、協議や調停でまとまらない場合に、家庭裁判所が分割方法を判断する手続です。

行方不明相続人がいる場合、調停や審判をするにも、その相続人の手続関与をどう確保するかが問題になります。不在者財産管理人の選任は、調停や審判の前提として必要になることがあります。

他方、相続人間の実質的な対立が中心であれば、不在者財産管理人を選任しても争いは解決しません。その場合は、弁護士が代理人として調停、審判、関連訴訟を設計する必要があります。

14.3 相続財産清算人との違い

相続財産清算人は、相続人の存在、不存在が明らかでない場合や相続人全員が相続放棄した場合などに、被相続人の相続財産を清算するための制度です。これに対し、不在者財産管理人は、所在不明の人本人の財産を管理する制度です。

「相続人がいることは分かっているが、その相続人の所在が不明」という場合は、通常、不在者財産管理人を検討します。「そもそも相続人がいるか分からない」「相続人が全員放棄した」という場合は、相続財産清算人の問題になります。

14.4 特別代理人との違い

未成年者や成年被後見人が共同相続人で、親権者や成年後見人との間で利益相反がある場合には、特別代理人の選任が必要になることがあります。これは、本人の所在が不明です不在者財産管理人とは別制度です。

たとえば、相続人の一人が未成年で、親も同じ相続の共同相続人の場合は特別代理人が問題になります。一方、相続人の一人が成人しているが所在不明の場合は、不在者財産管理人が問題になります。

Section 15

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 典型事例別の検討

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

15.1 兄弟の一人が20年前から音信不通の事例

被相続人です母が死亡し、相続人は長男、長女、次男の3人です。次男は20年前に家を出て以来、連絡がありません。戸籍附票を取得すると、最後の住所は判明しましたが、現地調査では居住しておらず、郵便も転居先不明で戻りました。

このような場合、次男を不在者として、不在者財産管理人選任を検討します。申立人は長男または長女が考えられます。遺産分割案としては、母の自宅を長男が取得し、預貯金と代償金により次男の法定相続分相当額を確保する設計が考えられます。次男以外の相続人間で合意内容を整理し、遺産分割協議書案、不動産評価資料、代償金支払能力資料を準備します。

15.2 空き家を売却して現金で分けたい事例

相続財産が老朽化した空き家だけで、相続人の一人が行方不明です。固定資産税と管理費用が発生し続け、近隣から苦情も出ています。

このような場合、不在者財産管理人を選任し、換価分割を前提に、売却についても権限外行為許可を検討します。不動産業者の査定書を複数取得し、必要に応じて不動産鑑定評価、建物解体見積、境界確認資料を準備します。不在者の取得分は売却代金から確保し、管理人口座で保管または供託を検討します。

15.3 相続税申告期限まで3か月しかない事例

被相続人の遺産が基礎控除を超える可能性があり、相続税申告期限まで3か月です。相続人の一人が行方不明で、遺産分割協議ができません。

このような場合、税理士は未分割申告の準備を直ちに始めます。同時に、弁護士または司法書士が不在者財産管理人選任申立ての準備を進めます。期限内に分割が成立しない場合、法定相続分などに基づいて申告し、必要に応じて申告期限後3年以内の分割見込書を添付します。後日分割が成立すれば、更正の請求または修正申告を検討します。

15.4 不在者に多額の特別受益が疑われる事例

行方不明相続人が、生前に被相続人から多額の資金援助を受けていた疑いがあります。他の相続人は、不在者の具体的相続分は法定相続分より少ないと主張しています。

このような場合、単純に法定相続分相当額を確保する分割案に納得できない相続人が出る可能性があります。一方、不在者財産管理人は不在者の不利益になる合意を簡単にはできません。特別受益の証拠、金額、持戻し免除の有無、時効や証明可能性を弁護士が検討し、必要に応じて遺産分割調停、審判で主張することになります。

15.5 不在者が海外にいる可能性がある事例

相続人の一人が海外に渡航した後、所在が分からなくなりました。日本の戸籍附票では国内住所が古いままです。

このような場合、海外在留、領事関係、SNS、メール、勤務先、親族、出入国関係で調査可能な範囲を検討します。海外に所在することが判明すれば、不在者ではなく、海外在住相続人として署名、証明、領事認証、サイン証明、翻訳などの実務対応になります。所在が判明しない場合に初めて不在者財産管理人を検討します。

15.6 行方不明相続人が実は死亡していた事例

所在調査の過程で、行方不明相続人が既に死亡していたことが判明する場合があります。このような場合、その人の相続人がさらに相続手続に関与することになり、数次相続の問題が生じます。

死亡が確認された場合、不在者財産管理人ではなく、死亡した相続人の相続人を確定し、その人たちを含めて遺産分割を行う必要があります。戸籍調査の範囲が大きく広がるため、司法書士、行政書士、弁護士の連携が必要です。

Section 16

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 専門職の役割分担

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

16.1 弁護士

弁護士は、相続人間で争いがある場合、不在者財産管理人選任の申立て、権限外行為許可、遺産分割調停、審判、使い込み疑い、遺留分、特別受益、寄与分、訴訟対応を総合的に扱います。不在者の利益保護と他相続人の主張が衝突する場面では、弁護士の関与が特に重要です。

16.2 司法書士

司法書士は、戸籍収集、相続関係説明図、相続登記、法務局提出書類、家庭裁判所提出書類作成の支援で重要です。不動産がある相続では、相続登記義務化への対応、相続人申告登記、遺産分割後の所有権移転登記を担います。

16.3 税理士

税理士は、相続税申告、未分割申告、分割見込書、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、譲渡所得税、税務調査対応を担当します。行方不明相続人がいる場合、税務上の期限は止まらないため、最初から関与する必要があります専門職です。

16.4 行政書士

行政書士は、紛争性、税務代理、登記申請代理を除く範囲で、戸籍収集、相続人関係説明図、遺産分割協議書案、各種相続手続書類の作成支援を行います。争いがない書類整理では有用ですが、不在者財産管理人選任や権限外行為許可が絡む場合は、弁護士、司法書士との役割分担を明確にする必要があります。

16.5 不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の適正価格が争点とになる場合に鑑定評価を行います。不在者の法定相続分を確保するには、評価の合理性が重要で、代償分割や換価分割では専門的評価が有効です。

16.6 土地家屋調査士

土地家屋調査士は、境界確認、測量、分筆、建物表題登記、地積更正などを担当します。相続不動産を売却する場合、境界未確定や越境が売却価格に影響するため、早期に関与することがあります。

16.7 宅地建物取引士、不動産仲介業者

宅地建物取引士や不動産仲介業者は、売却価格査定、買主探索、重要事項説明、売買契約実務を担います。不在者財産管理人が関わる売却では、家庭裁判所許可の条件、契約解除条件、決済時期を契約に反映させる必要があります。

16.8 公証人、公証実務

遺言がある場合、公正証書遺言の内容により遺産分割が不要になることがあります。将来の予防としては、公証人が関与する公正証書遺言を作成し、遺言執行者を指定しておくことが、行方不明相続人リスクを抑える有力な方法です。

16.9 金融機関、信託銀行、生命保険会社

金融機関や保険会社は、相続手続の必要書類を確認します。不在者財産管理人が選任されている場合、審判書謄本、権限外行為許可審判書、遺産分割協議書、印鑑証明書などを求められることがあります。事前に必要書類を確認しておくと、許可後の手続が円滑になります。

Section 17

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 実務チェックリスト

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17.1 初期判断チェックリスト

確認項目はい、いいえ
被相続人の死亡日、相続開始日を確認した
遺言書の有無を確認した
相続人を戸籍で確定した
行方不明者が共同相続人にあたることを確認した
行方不明者の戸籍附票、住民票、除票を取得した
最終住所地に郵便を送付した
返戻郵便、現地調査、親族聴取などの資料を集めた
生死不明期間が7年または危難後1年に当たるか確認した
不在者財産管理人と失踪宣告のどちらが適切か検討した
相続税申告の要否を確認した
相続登記義務の期限を確認した

17.2 申立準備チェックリスト

資料準備状況
申立書
不在者の戸籍謄本
不在者の戸籍附票
不在者の住民票または除票
不在の事実を示す資料
申立人の戸籍、住民票、本人確認資料
利害関係を示す戸籍、契約書、相続関係資料
被相続人の出生から死亡までの戸籍
相続人全員の戸籍
相続関係説明図
遺産目録
不動産登記事項証明書
固定資産評価証明書
預貯金残高証明書、通帳写し
有価証券、保険、事業財産資料
遺産分割協議書案
不動産査定書、鑑定評価書
予納金準備

17.3 遺産分割案チェックリスト

観点確認内容
相続人確定すべての相続人が漏れていないか
遺産範囲預金、不動産、有価証券、債務が漏れていないか
評価不動産評価、非上場株式評価、債務評価の根拠があるか
不在者取得分法定相続分相当が確保されているか
取得方法現物、代償金、売却代金のいずれで確保するか
管理方法不在者取得分を管理人口座で保管するか、供託するか
税務相続税、譲渡所得税、固定資産税を考慮したか
登記相続登記、売却登記、住所氏名変更などを確認したか
許可資料家庭裁判所に説明できます資料があるか
Section 18

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― よくある質問

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

Q1. 行方不明の相続人を除いて遺産分割協議書を作ってもよいですか。

一般的には、行方不明の相続人を除いて遺産分割協議を進めることは避ける必要があります。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、行方不明相続人がいる場合は、不在者財産管理人の選任と権限外行為許可を検討します。具体的な進め方は、所在調査の状況や財産内容で変わります。

Q2. 不在者財産管理人が選任されれば、すぐに遺産分割協議書に署名してもらえますか。

一般的には、選任後すぐに署名できるわけではありません。遺産分割協議に参加するには、通常、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。管理人は、不在者に不利益がないか、法定相続分が確保されているか、財産評価が適正かを確認します。

Q3. 不在者の相続分をゼロにできますか。

一般的には、不在者本人が有効に同意しているわけではないため、極めて慎重に考える必要があります。家庭裁判所の実務では、例外的事情を除き、少なくとも不在者の法定相続分が確保されているかが重視されます。特別受益などを主張する場合も、証拠と手続を整理する必要があります。

Q4. 他の相続人の一人が不在者財産管理人になれますか。

一般的には、遺産分割目的では共同相続人に利益相反があるため、選任は難しいとされています。家庭裁判所の手引きでも、共同相続人を財産管理人として選任することはできない旨が示されています。候補者の適否は、利害関係や管理能力を踏まえて判断されます。

Q5. 申立てにはどのくらい費用がかかりますか。

裁判所の案内上、申立手数料は収入印紙800円分です。郵便料は裁判所ごとに異なります。管理費用や報酬に不足が見込まれる場合、予納金が必要になることがあります。具体的な金額は、申立先の家庭裁判所で確認する必要があります。

Q6. 相続税の申告期限は、行方不明相続人がいる場合でも延びますか。

一般的には、行方不明相続人がいることだけで相続税の申告期限は延びません。相続税の申告と納税は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。未分割でも期限までに申告が必要になるため、税理士等へ早めに相談する必要があります。

Q7. 未分割申告をすれば、小規模宅地等の特例や配偶者控除は使えますか。

一般的には、未分割のままでは小規模宅地等の特例や配偶者控除を適用できない申告になることがあります。申告期限後3年以内の分割見込書を添付し、その後分割が成立した場合など、後日適用を受けられる余地があります。期限管理は税理士等へ確認する必要があります。

Q8. 不在者財産管理人と失踪宣告はどちらが早いですか。

事案によります。失踪宣告には普通失踪7年、危難失踪1年という生死不明期間の要件があります。不在者財産管理人は、固定の年数ではなく不在者の財産管理が必要かを中心に判断されます。どちらが適切かは、目的と所在調査の状況で比較する必要があります。

Q9. 行方不明相続人が後から戻ってきたらどうなりますか。

一般的には、不在者財産管理人が管理している財産は本人に引き継ぐことになります。家庭裁判所の許可を得て遺産分割や売却が行われている場合でも、手続の適法性、本人への引継ぎ、管理報告が問題になります。許可を得ずに処分することは避ける必要があります。

Q10. 相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する手続は自分でできますか。

申立て自体は本人で行える場合があります。ただし、相続人調査、不在調査、遺産分割協議書案、不動産評価、相続税申告、相続登記、権限外行為許可が絡むため、専門職に相談する必要性が高い手続です。争いがある場合は弁護士、不動産登記が中心なら司法書士、相続税があるなら税理士への相談が考えられます。

Section 19

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する ― 結論

不在者本人の保護、家庭裁判所手続、登記、税務を一体で確認します。

次の強調表示は、最終確認として見るべき実務の中心を示しています。管理人選任だけで安心せず、許可、登記、税務を別々に期限管理することを読み取ってください。

選任、許可、登記、税務を別々に管理する

不在者財産管理人が選任されても、遺産分割の権限外行為許可、相続登記の3年期限、相続税申告の10か月期限はそれぞれ別に確認する必要があります。

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任することは、単なる相続手続の形式的な穴埋めではありません。それは、不在者本人の財産権を保護しながら、他の相続人、債権者、登記制度、税務制度、不動産取引の安全を調整する家庭裁判所の手続です。

実務上の核心は、次の五点に集約されます。

  1. 行方不明相続人を除外して遺産分割協議を進めないこと。
  2. 戸籍附票、返戻郵便、現地調査などで不在の事実を丁寧に示すこと。
  3. 不在者財産管理人の選任後、遺産分割や売却には権限外行為許可が必要だということ。
  4. 不在者の法定相続分を確保し、不利益な分割案を避けること。
  5. 相続税申告期限と相続登記義務の期限を別途管理すること。

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する場面では、弁護士、司法書士、税理士を中心に、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、金融機関担当者などが連携することで、紛争、期限徒過、登記不能、税務不利益、不動産価値下落を防ぎやすくなります。

Reference

相続人が行方不明の場合に不在者財産管理人を選任する参考情報源

公的機関、裁判所、税務資料を中心に整理しています。

法令・裁判所資料

  • 裁判所「不在者財産管理人選任」。不在者の定義、申立人、申立先、費用、必要書類、権限外行為許可を得た遺産分割や不動産売却の説明
  • 裁判所「不在者財産管理人の権限外行為許可」。遺産分割協議や財産処分など民法第103条を超える行為には家庭裁判所の許可が必要という趣旨
  • e-Gov法令検索「民法」。民法第25条、第27条、第28条、第29条、第30条、第31条、第32条、第103条、第907条等
  • e-Gov法令検索「家事事件手続法」。不在者の財産管理に関する処分の審判事件、管理人、供託、取消し等
  • 裁判所「失踪宣告」。普通失踪7年、危難失踪1年、法律上死亡したものとみなす制度です旨
  • 大阪家庭裁判所「不在者財産管理人選任申立ての手引き」。遺産分割目的の場合の不在者保護、法定相続分確保、共同相続人の利益相反、不在の証明等

公的機関・税務資料

  • 熊本家庭裁判所「不在者財産管理人の職務について」。財産目録、管理報告、権限外行為、処分行為、終了手続等
  • 広島家庭裁判所「不在者財産管理人選任について」。管理人の職務継続、本人出現、失踪宣告、死亡確認、財産消滅、取消し等
  • 札幌家庭裁判所「不在者財産管理人選任事件手続案内シート」。所在調査、管轄、必要書類、遺産分割目的の資料、失踪宣告の検討等
  • 国税庁「No.4202 相続税の申告のために必要な準備」。相続人全員での遺産分割協議、期限までに分割できない場合の申告など
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」。相続税申告は死亡を知った日の翌日から10か月以内
  • 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」。未分割でも申告期限は延びず、法定相続分等で申告し、特例適用に注意する旨

その他の参考資料

  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」。未分割財産は原則として税額軽減の対象にならず、分割見込書等により後日対象になり得る旨
  • 国税庁「B1-6 遺産が未分割だということについてやむを得ない事由がある旨の承認申請手続」。申告期限後3年を経過する日後に特例適用を受けるための承認申請
  • 国税庁「不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者の財産を譲渡した場合の申告」。譲渡所得申告は保存行為に該当し、管理人が代理申告できる旨
  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」。相続登記義務化、3年以内の登記、過料、相続人申告登記等