相続時に探すべき正式な入口は、全銀ネットの申込サイトではなく、口座管理法に基づく相続時口座照会です。申込先、必要書類、通知内容、制度の限界、通知後に進める相続実務を順番に整理します。
相続時に探すべき正式な入口は、全銀ネットの申込サイトではなく、口座管理法に基づく相続時口座照会です。
まず、どこに申し込み、何がわかり、何がわからない制度なのかを押さえます。
「全銀ネットで故人の口座を一括照会できるサービス」と検索されることがありますが、実務上の正式な入口は、口座管理法に基づく相続時口座照会または相続時預貯金口座照会です。相続人または包括受遺者が取扱金融機関の窓口等で申し込み、預金保険機構が亡くなった人のマイナンバーを用いて金融機関へ照会し、結果通知書を国内住所へ郵送する仕組みです。
次の強調欄は、この制度の役割を一文で示しています。読者にとって重要なのは、全銀ネットの検索機能ではなく、法令に基づく横断的な所在確認制度だと読み替えることです。
残高、取引履歴、入出金明細、相続税評価額、遺産分割で誰が取得するかまでは通知されません。口座が見つかった後、各金融機関で残高証明書や取引明細を個別に請求します。
次の3つの要点は、申込み前に誤解しやすい境界を整理したものです。どこに申し込むか、誰が処理するか、通知後に何を続けるかを分けて読むと、手続の順番を間違えにくくなります。
相続人が任意の取扱金融機関へ申し込みます。全銀ネットのウェブサイトから申し込む制度ではありません。
受付金融機関から情報を受けた預金保険機構が、J-LISや金融機関と連携して付番済み口座の所在を確認します。
通知書は財産調査の入口です。残高確認、履歴取得、遺産分割、相続税申告、相続登記は別途進めます。
似た言葉を混同すると、申込先や調査できる範囲を誤りやすくなります。
相続時口座照会の核心は、銀行業界の検索サイトで故人口座を探すことではありません。法令に基づく個人番号連携により、預金保険機構を介して、金融機関が保有する付番済み口座情報を照会する点にあります。
次の比較表は、制度名、組織名、関係機関の役割を整理しています。申込み前にこの違いを確認すると、全銀ネット、全銀システム、預金保険機構、受付金融機関のどこが何を担うのかを読み取れます。
| 用語 | 正確な意味 | 相続時口座照会との関係 |
|---|---|---|
| 全銀ネット | 一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク。全銀システム等を運営する組織です。 | 相続時口座照会の申込窓口そのものではありません。 |
| 全銀システム | 全国銀行データ通信システム。銀行間の内国為替取引や清算を行う決済インフラです。 | 故人口座の相続時照会制度の正式名称ではありません。 |
| 口座管理法 | 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律です。 | 相続時に預貯金口座情報の提供を求める根拠法です。 |
| 預貯金口座付番制度 | 金融機関へマイナンバーを届け出て、預貯金口座とマイナンバーを紐付ける制度です。 | 故人が生前に付番していた口座が、相続時照会で見つかる中心対象です。 |
| 相続時口座照会 | 相続人等が、被相続人名義の付番済み預貯金口座の所在を照会する制度です。 | このページの主題です。 |
| 預金保険機構 | 預金保険制度等を担う公的法人です。 | 受付金融機関から情報を受け、J-LISや金融機関と連携して照会・通知を行います。 |
| 受付金融機関 | 相続人から申込みを受け付ける金融機関です。 | 預金保険機構が受付事務を委託する先です。 |
| 確認金融機関 | 預金保険機構から照会を受ける金融機関です。 | 被相続人名義の付番済み口座の有無を確認します。 |
| J-LIS | 地方公共団体情報システム機構です。 | 預金保険機構が被相続人の本人特定事項をもとに個人番号確認を行う際に関係します。 |
この制度が重要になった背景には、通帳レス口座、ネット銀行、スマホアプリ口座、電子交付、郵送物停止、遠方居住、再婚や疎遠親族、相続税申告期限、死亡前後の使い込み疑いなどがあります。2025年4月1日から預貯金口座付番制度等が拡充され、金融機関の窓口等で口座に付番しておくと、相続時や災害時に付番口座の所在把握という利点を得られると案内されています。
相続人1名で照会できる点と、払戻しや遺産分割とは別問題である点を分けて確認します。
中心的な申請主体は相続人です。制度案内では、相続人には包括受遺者を含むと説明されています。包括受遺者とは、遺言により「遺産の全部」「遺産の2分の1」など、割合的または包括的に財産を受ける人をいいます。
次の一覧は、申請を検討する立場と制度利用の意味を整理したものです。誰が照会できる可能性があるかを把握することで、戸籍、遺言、代理関係のどの資料を準備すべきかを読み取れます。
| 申請を検討する人 | 制度利用の意味 |
|---|---|
| 法定相続人 | 子、配偶者、親、兄弟姉妹などです。最も典型的な申請主体です。 |
| 包括受遺者 | 遺言により包括的に遺産を受ける人です。 |
| 遺言執行者 | 遺言内容を実現する立場として、財産調査が必要になることがあります。 |
| 代理人 | 紛争、使い込み疑い、相続人間対立がある場合、弁護士等が関与することがあります。金融機関ごとの取扱確認が必要です。 |
相続人が複数いる場合でも、相続時照会の申込み自体は相続人のうちいずれか1名で行うと案内されています。ただし、これは照会申込みができるという意味であり、預金払戻し、遺産分割、相続登記、相続税申告を単独で自由に完了できるという意味ではありません。
次の時系列は、相続時口座照会の死後10年という利用期限と、相続税や相続登記の期限を並べたものです。期限の長短を比較することで、10年以内なら急がなくてよいという誤解を避けられます。
相続税が発生する場合、申告と納税の原則的な期限です。口座調査が遅れると未分割申告や税務調査リスクにつながります。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った場合の登記申請期限で、正当な理由なく義務に違反すると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
制度上の照会可能期間です。10年を超える相続では、各金融機関への個別照会や生活資料の調査に戻る必要があります。
制度の対象は、原則としてマイナンバーが付番された預貯金口座の所在です。
亡くなった人が生前に預貯金口座への付番を行っていれば、相続人が任意の金融機関で相続時照会を申し込むことで、一部手続きの対象外となる金融機関を除き、すべての金融機関を対象に、亡くなった人のマイナンバーが付番された預貯金口座の所在を確認できると説明されています。
次の注意点の一覧は、照会結果を読むときの限界をまとめたものです。制度で拾える範囲と拾えない範囲を区別することで、「該当口座なし」を絶対的な不存在証明として扱わないことが重要だと読み取れます。
故人がB信用金庫にはマイナンバーを届け出ていなかった場合、実際に口座があっても照会で発見できない可能性があります。
対象外となる金融機関や手続があります。最新の対象外金融機関一覧は公的案内で確認する必要があります。
金融機関名、支店名、預貯金の種類、口座番号等の所在情報が中心です。残高証明書や取引明細は別請求です。
実際に該当口座がない場合だけでなく、回答期間内に金融機関から結果回答がなかった場合や本人特定事項が合わない場合もあり得ます。
つまり、相続時口座照会は財産調査漏れを減らす有力な手段ですが、故人のすべての財産を発見する制度ではありません。ネット銀行、通帳レス口座、証券口座、生命保険、現金、名義預金、不動産、借入金などは、別の調査も組み合わせる必要があります。
申込み前に、費用、期間、本人確認、死亡確認、相続関係資料をそろえます。
金融機関の案内例では、相続時口座照会の手数料は申込み1件につき5,060円(税込)とされています。複数の被相続人について照会したい場合は、被相続人ごとに申込みが必要です。所要期間は、申込みから結果通知まで1か月程度とされる例があります。
次の比較表は、手数料や期間とあわせて、申込み前に確認すべき運用差を整理したものです。金融機関ごとの受付方法や不備時の扱いを読み取ることで、提出後に訂正できないリスクを減らせます。
| 項目 | 目安・内容 | 確認すべき点 |
|---|---|---|
| 手数料 | 申込み1件につき5,060円(税込)と案内される例があります。 | 支払方法、インボイス希望時の申出、返金不可の扱いを確認します。 |
| 所要期間 | 結果通知まで1か月程度とされる例があります。 | 相続税申告期限が迫る場合は、並行して個別調査を進めます。 |
| 申込単位 | 複数の被相続人を1件でまとめることはできない扱いが基本です。 | 被相続人ごとに書類と手数料を準備します。 |
| 受付後の変更 | 申込受付後は取消し、訂正、変更ができないと案内される例があります。 | 提出前に控えを保管し、住所や氏名表記を厳密に確認します。 |
次の書類一覧は、申込み時に一般的に準備する資料を種類別に整理したものです。どの書類が誰の身分や事実を示すのかを分けて読むと、金融機関への事前確認がしやすくなります。
マイナンバーカード表面、運転免許証、運転経歴証明書、在留カード、健康保険関係書類、住民票の写し、戸籍附票、印鑑登録証明書などが案内例にあります。
本人確認住民票の除票、戸籍の附票の除票、戸籍謄本、除籍謄本、認証文付き法定相続情報一覧図の写しなどです。住所は除票の記載に厳密に合わせるのが望ましいです。
住所表記法定相続情報一覧図、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、遺言書、包括受遺者や遺言執行者であることを示す資料、委任状等が候補です。
相続関係金融機関所定の相続時口座照会申込書、個人情報の第三者提供に関する同意書等を提出し、手数料を支払います。
受付前確認相続人と目的の整理から、金融機関選定、書類準備、結果後の個別手続まで進めます。
申込みは、相続人や包括受遺者が、取扱金融機関に相続時口座照会を申し込み、本人確認書類、被相続人の死亡と本人特定事項を示す資料、相続関係を示す資料を提出し、手数料を支払う流れで進みます。マイナポータルから相続時照会の申込みをすることはできないと案内されています。
次の時系列は、申込みから通知後の個別手続までの行動順序を示しています。順番を追って読むことで、受付前に何を確認し、通知後にどの金融機関手続へ進むべきかを把握できます。
誰が相続人か、遺言の有無、相続税申告の可能性、争いの有無、口座が不明な理由を整理します。使い込み疑い、期限切迫、未成年者や後見利用者がいる場合は専門家相談も並行します。
任意の取扱金融機関で申し込めますが、店頭、郵送、予約、現金支払、取引のない人の受付、代理人受付は金融機関により異なります。
戸籍収集には時間がかかります。住所表記の一致が重要なので、法定相続情報一覧図だけでなく住民票の除票も併用するのが実務上望ましいです。
氏名、旧字体、異体字、改姓、住民票上の住所、国内通知先、転居予定、複数被相続人の扱いを確認します。
受付後は預金保険機構へ連携されます。取消し、訂正、変更ができないと案内される例があるため、控えを保管します。
通知書は日本国内に限り、転送不要の書留と案内されています。申込み後に転居すると、再度申請と再度の手数料が必要になる可能性があります。
通知された金融機関へ連絡し、残高証明書、取引明細、払戻手続、遺産分割協議書や遺言書の要否を確認します。
相続人、受付金融機関、預金保険機構、J-LIS、確認金融機関の関係を整理します。
個人情報保護委員会の資料では、相続時における預貯金口座情報提供の流れとして、受付金融機関から預金保険機構へ情報が通知され、預金保険機構がJ-LISを通じて被相続人の個人番号を確認し、金融機関へ口座情報を照会する構造が示されています。
次の判断の流れは、申込み後に情報がどの機関を通って通知へ至るかを示しています。相続人が故人のマイナンバーを直接提出する制度ではなく、本人特定事項の一致確認と金融機関側の照合が重要だと読み取れます。
相続人自身と被相続人の本人特定事項等の確認を受けます。
申込情報が制度の中核機関へ連携されます。
本人特定事項等の一致が確認できた者の個人番号の提供を受けます。
被相続人の本人特定事項等と個人番号をもとに、付番済み口座の存否を確認します。
国内通知先へ郵送され、口座所在情報が確認できます。
次の比較表は、通知書に載る情報と載らない情報を分けたものです。相続税申告や遺産分割に使うには、通知書だけでは足りず、各金融機関への追加請求が必要だと読み取れます。
| 通知される情報 | 通常把握できない情報 |
|---|---|
| 金融機関名 | 口座残高 |
| 支店名 | 取引履歴・入出金明細 |
| 預貯金の種類 | 死亡日前後の出金者・ATM利用場所 |
| 口座番号 | 振込先・振込元の詳細 |
| 預貯金者名 | 相続税評価額、払戻可否、被相続人のマイナンバー、遺産分割で誰が取得すべきか |
通知書を受け取ったら、残高、履歴、凍結対応、遺産分割、相続税へ進みます。
照会結果で金融機関名と口座番号がわかったら、次に行うべきは各金融機関に対する相続手続の開始です。死亡日現在の残高、定期預金、外貨預金、投資信託、公共債、貸金庫、借入金など、同じ金融機関内の関連取引も確認します。
次の手続一覧は、口座判明後に進める作業を目的別に整理しています。何を証明するための書類かを読み取ることで、遺産分割や申告に必要な資料を取りこぼしにくくなります。
相続税申告や遺産分割協議では、死亡日現在の残高を確認します。定期預金、外貨預金、投資信託、公共債、貸金庫、借入金も確認します。
評価資料使い込み疑い、生前贈与、名義預金、現金引出し、家族口座への移動が問題になる場合、死亡前3年、5年、10年などの履歴を取得することがあります。
紛争・税務金融機関が死亡を把握すると取引停止措置が講じられることがあります。葬儀費用や生活費が必要な場合は、相続預金の払戻し制度等を検討します。
資金手当誰がどの口座を取得するか、換金して分けるか、葬儀費用や債務をどう控除するか、既に引き出された金額をどう扱うかを協議します。
協議資料預金残高だけでなく、現金、名義預金、生命保険金、退職金、不動産、非上場株式、生前贈与、債務、葬式費用等を総合して判断します。
申告資料相続預金の払戻し制度では、一般に各相続人は、口座ごとに「相続開始時の預金額 × 1/3 × 払戻しを求める相続人の法定相続分」を上限に、家庭裁判所の判断を経ずに払戻しを受けられるとされています。ただし、同一金融機関からの払戻しは150万円が上限です。必要額が大きい場合は、家庭裁判所の手続等を検討します。
預貯金口座だけで相続財産調査が終わるわけではありません。
相続時口座照会は、預貯金口座の所在確認に強い制度です。一方で、証券、保険、不動産、借入金、年金、事業用財産などは別の調査先が関係します。財産調査の漏れを減らすには、制度を重ねて使う発想が重要です。
次の比較表は、財産や契約の種類ごとに主な調査先と注意点を整理しています。預貯金口座の照会結果だけで財産全体を判断せず、対象ごとに調査先を分ける必要があると読み取れます。
| 財産・契約 | 主な調査先・制度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金口座 | 相続時口座照会、各金融機関への個別照会 | 付番済み口座が中心です。残高・履歴は別請求です。 |
| 上場株式・投資信託等 | 証券保管振替機構、証券会社、信託銀行 | 銀行口座照会では証券口座全体は把握できません。 |
| 生命保険 | 生命保険契約照会制度、各保険会社 | 死亡保険金は民法上の相続財産と税務上のみなし相続財産で扱いが異なることがあります。 |
| 不動産 | 登記情報、固定資産税通知、名寄帳、法務局 | 相続登記義務化に注意します。 |
| 借入金・保証債務 | 信用情報、銀行、契約書、郵便物 | 相続放棄期限との関係で早期確認が必要です。 |
| 年金・未支給年金 | 年金事務所、社会保険労務士 | 相続財産とは別の手続が関係します。 |
| 事業・会社株式 | 会社資料、税理士、公認会計士、中小企業診断士 | 非上場株式評価・事業承継が問題化しやすい領域です。 |
通帳レス口座や情報格差がある場合は有力ですが、既に口座が判明している場合は個別手続を優先することがあります。
相続時口座照会の利用価値が高いのは、故人の金融機関が見えにくいときです。反対に、主要口座が通帳、カード、郵便物で明確に判明しており、残高証明書や取引履歴の取得が進んでいる場合は、個別手続を優先してよいことがあります。
次の比較表は、制度利用を検討しやすい場面と、個別手続を優先しやすい場面を並べたものです。自分の状況がどちらに近いかを読み取ることで、手数料や時間をかけるべきか判断しやすくなります。
| 利用価値が高い場面 | 個別手続を優先しやすい場面 |
|---|---|
| 通帳やキャッシュカードが見つからない。 | 金融機関が通帳・カード・郵便物で明確に判明している。 |
| ネット銀行や通帳レス口座の利用が疑われる。 | 主要金融機関が少数で、残高証明書・取引履歴を取得済みである。 |
| 相続人の一人だけが故人の財産情報を管理していた。 | 故人が生前にマイナンバー付番をしていないことが明らかである。 |
| 故人が転勤・転居を繰り返し、遠方の金融機関に口座がある可能性がある。 | 10年以上前の相続である。 |
| 相続税申告のため財産調査の漏れを減らしたい。 | 争点が預金の所在ではなく、既に判明している口座からの使途不明出金である。 |
「使わない」と決める場合でも、財産調査漏れのリスクは相続人間で共有します。遺産分割協議書に後日判明財産の取扱いを定めておくと、後から口座や財産が見つかった場合の再協議を整理しやすくなります。
情報格差の是正には役立ちますが、使い込み疑いや遺産分割を自動解決する制度ではありません。
相続時口座照会は相続人1名で申し込めるため、情報格差を是正する手段になり得ます。ただし、「親の預金が減っている」「同居していた兄弟がキャッシュカードを管理していた」「死亡直前に大口出金がある」といった問題を自動解決する制度ではありません。
次の注意点の一覧は、紛争になりやすい要素を整理したものです。口座所在の判明後に、どの証拠や論点を確認すべきかを読み取ることで、感情的な対立だけで協議が止まることを避けやすくなります。
出金日時、出金方法、ATM場所、振込先、介護費・生活費・医療費との対応を確認します。
死亡前後の出金では、本人の意思能力、代理権の有無、家族による管理の範囲が問題になることがあります。
遺留分、特別受益、寄与分、不当利得返還請求、損害賠償請求、遺産分割調停、審判、訴訟へ発展する可能性があります。
通知結果を独占すると、協議不信や調停移行の原因になります。相続人間で共有し、残高証明や履歴取得の方針を明確にします。
口座照会は申告書や登記の最終資料ではなく、全体手続の一部です。
税理士の観点では、相続時口座照会は財産把握の補助資料であり、申告書作成の最終資料ではありません。死亡日現在の預金残高、定期預金の既経過利息、外貨預金の円換算、死亡前後の現金引出し、家族名義口座に移った資金、名義預金、生命保険金、死亡退職金、上場株式、投資信託、非上場株式、不動産評価、借入金、未払金、葬式費用、生前贈与、相続時精算課税、暦年課税加算対象などを検討します。
次の一覧は、口座照会と同時に意識すべき税務・登記・生前対策の論点を整理しています。分野ごとに必要な資料が異なるため、通知結果だけで完了と考えず、どの専門手続へつなぐべきかを読み取ることが重要です。
未付番口座や証券、保険、現金、名義預金を別途調査します。申告・納税期限は原則10か月です。
相続財産に不動産がある場合、法定相続情報一覧図、固定資産調査、名寄帳取得、登記事項証明書確認を同時に進めると効率的です。
主要口座、通帳レス口座、ネット銀行、証券口座、保険契約、借入金、保証債務を一覧化し、口座付番や遺言書作成を検討します。
相続時口座照会は相続発生後の救済的な調査手段です。生前に主要口座の一覧表を作る、住所・氏名変更があれば金融機関へ届け出る、エンディングノートに金融機関名だけでも記載する、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を検討する、といった対策が財産調査の負担を減らします。
争い、登記、税務、書類整理、保険、年金、不動産など、論点ごとに相談先が変わります。
専門家選択の基本は、争いがあるなら弁護士、登記があるなら司法書士、税金があるなら税理士、紛争のない書類整理なら行政書士です。複数領域が重なる相続では、最初から専門職を組み合わせるほうが手戻りを減らせます。
次の比較表は、専門家ごとの主な相談場面を整理しています。通知結果を受けて、どの論点が強いかを見分けることで、相談先を選びやすくなります。
| 専門家 | 相談すべき場面 |
|---|---|
| 弁護士 | 相続人間の争い、使い込み疑い、遺留分、交渉、調停、審判、訴訟、代理人申請、情報開示請求。 |
| 司法書士 | 相続登記、法定相続情報一覧図、戸籍収集、不動産名義変更、家庭裁判所提出書類作成。 |
| 税理士 | 相続税申告、名義預金、死亡前出金、生前贈与、税務調査対応、納税資金対策。 |
| 行政書士 | 紛争がない場合の遺産分割協議書、相続関係説明図、遺言作成支援。 |
| 公証人 | 公正証書遺言の作成。 |
| 遺言執行者 | 遺言内容の実現、財産目録作成、金融機関手続。 |
| 信託銀行等 | 遺言信託、遺言保管、遺言執行、相続手続支援。 |
| 不動産鑑定士 | 不動産評価が争点になった場合。 |
| 土地家屋調査士 | 境界、分筆、表示登記、土地の物理的状況確認。 |
| 宅地建物取引士・不動産仲介業者 | 相続不動産の売却、換価分割。 |
| 公認会計士 | 非上場株式、会社価値、事業承継、財務分析。 |
| 中小企業診断士 | 事業承継計画、後継者育成、経営改善。 |
| 弁理士 | 特許・商標など知的財産の相続・名義変更。 |
| FP | 家計、保険、老後資金、相続後の資金計画、専門家への橋渡し。 |
| 社会保険労務士 | 遺族年金、社会保険関係の死亡後手続。 |
申込み前と結果通知後の確認事項を、金融機関へ問い合わせる言い方とあわせて整理します。
追加で確認すべき事項は、住民票除票は原本が必要か、法定相続情報一覧図で足りるか、遺言書がある場合の追加資料は何か、申込書・同意書を事前入手できるか、手数料は現金か口座振替か、結果通知までの目安は何日か、申込後に訂正できない事項は何か、相続時照会後に口座凍結が生じる可能性の説明はあるか、です。
次の注意点の一覧は、申込み前後に特に事故が起きやすいリスクを整理したものです。どの不備が照会漏れ、資金繰り、税務、紛争に影響するかを読み取ることで、早めに補強すべき資料が見えます。
住所表記、旧字体、改姓、住民票除票の記載、金融機関届出住所が一致しない場合、照合に支障が生じる可能性があります。
高齢者の場合、預貯金口座へのマイナンバー届出をしていないことが多く、制度利用結果が限定的になることがあります。
相続時照会を行うことで金融機関が死亡を把握し、取引停止措置に進むことがあります。
通知に載っていないことだけを理由に申告対象外と判断するのは危険です。現金、家族名義口座、証券、保険、不動産、国外財産等は別途調査します。
相続人の一人が単独で照会結果を取得できる利便性は、情報独占にもつながります。結果通知は速やかに共有します。
申込み方法、マイナンバー、手数料、残高、凍結、対象金融機関に関する一般的な整理です。
一般的には、全銀ネットのウェブサイトからの申込みではなく、取扱金融機関に申し込み、預金保険機構が照会・通知を行う制度と案内されています。全銀ネットは全銀システム等の決済インフラを運営する組織であり、相続時口座照会の申込ポータルではありません。
一般的には、相続時照会の申込みをマイナポータルからすることはできないと案内されています。公金受取口座登録や生前の預貯金口座付番と混同しないようにします。
一般的には、被相続人の個人番号は預金保険機構が地方公共団体情報システム機構から取得するため、申込時の提示は不要と案内されています。ただし、氏名、住所、生年月日などの本人特定事項の一致確認が重要です。
一般的には、相続時照会自体は相続人のうちいずれか1名で行うと案内されています。ただし、預金の払戻し、遺産分割協議、相続登記、相続税申告では、別途、相続人全員の関与や合意が必要になる場面があります。
金融機関の案内例では、申込み1件につき5,060円(税込)です。結果として口座が見つからない場合や申請内容に不備がある場合でも、返金されないと案内される例があります。
金融機関の案内例では、申込みから照会結果の通知まで1か月程度を要するとされています。相続税申告期限が迫っている場合は、待っている間に他の財産調査も進める必要があります。
一般的には、通知されるのは口座の所在情報であり、残高や取引履歴は含まれません。残高証明書や取引履歴は、口座が判明した後、各金融機関に個別請求します。
一般的には、相続時口座照会はマイナンバーが付番された預貯金口座の所在確認を可能にする制度です。未付番口座が疑われる場合は、個別の金融機関照会や生活資料の調査も必要です。
金融機関によっては、相続時口座照会の申込みにより被相続人の死亡が通知され、取引停止措置が講じられる場合があると案内されています。葬儀費用や生活費の支払い予定がある場合は、相続預金の払戻し制度や他の資金手当を検討します。
一般的には、通知先は日本国内に限られると案内されています。転送不要の書留であるため、申込み後の転居にも注意が必要です。
断言はできません。未付番口座、対象外金融機関、本人特定事項の不一致、回答期間内に金融機関から回答がなかったケースなどがあり得ます。必要に応じて個別照会を続けます。
制度上の対象金融機関や対象外金融機関は、申込時点の最新情報で確認する必要があります。金融機関の種類名だけで一律に判断せず、最新の対象状況を確認します。
制度の使いどころと限界を押さえ、通知後の相続実務へつなげます。
「全銀ネットで故人の口座を一括照会できるサービスの使い方」を正確にいうなら、正式には全銀ネットのサービスではなく、口座管理法に基づく相続時口座照会です。申込先は取扱金融機関であり、照会・通知の中核は預金保険機構です。
次の要点の一覧は、申込み前後に必ず残したい結論をまとめたものです。制度でできること、できないこと、通知後に進める手続を一度に確認できます。
相続人のうち1名で申し込め、被相続人のマイナンバー提示は不要と案内されています。死後10年まで利用可能です。
手数料は申込み1件につき5,060円(税込)と案内され、通知は国内住所へ郵送されます。口座凍結、本人特定事項不一致にも注意します。
結果でわかるのは口座所在であり、残高、履歴、権利帰属、税額ではありません。各金融機関で残高証明、履歴取得、払戻手続を進めます。
相続時口座照会は、相続財産調査の漏れを減らす有力な制度です。しかし、相続実務の全体から見ると、財産調査の入口にすぎません。争いがある場合は弁護士、登記がある場合は司法書士、税務がある場合は税理士、紛争のない書類整理は行政書士を中心に、必要な専門職を組み合わせることが大切です。
制度の正式名称、申込方法、税務・登記期限などは公的機関や金融機関の案内をもとに整理しています。