人身事故の点数制度、付加点数、取消し基準、意見の聴取、刑事・民事との関係を、実務で確認する順番に沿って整理します。
人身事故の点数制度、付加点数、取消し基準、意見の聴取、刑事・民事との関係を、実務で確認する順番に沿って整理します。
事故原因の基礎点数、負傷結果の付加点数、累積点数、前歴、特定違反の有無を順番に確認します。
人身事故で免許が取り消されるかどうかは、「人身事故を起こした」という事実だけで機械的に決まるものではありません。事故原因となった違反、負傷者の治療見込期間、死亡または後遺障害の有無、運転者側の不注意の程度、過去3年間の累積点数、行政処分前歴を順番に見ます。
安全運転義務違反、信号無視、横断歩行者等妨害などは2点、携帯電話使用等の交通の危険は6点、速度超過50km以上は12点、酒気帯びは13点または25点、酒酔いは35点と整理されます。
死亡、3か月以上または後遺障害、30日以上3か月未満、15日以上30日未満、15日未満で点数が変わります。
前歴1回なら10点以上、前歴2回なら5点以上、前歴3回以上なら4点以上で取消し対象になります。
安全運転義務違反、信号無視、速度超過、飲酒など
診断書、追加診断書、死亡・後遺障害の有無
実況見分、映像、相手方の動き、道路状況
取消し・90日以上停止なら意見の聴取に備える
人身事故で免許が取り消されるかどうかは、「人身事故を起こした」という事実だけで機械的に決まるものではありません。日本の運転免許行政では、交通違反と交通事故に点数を付け、原則として過去3年間の累積点数、行政処分前歴、事故原因となった違反の種類、負傷者の治療見込期間、死亡または後遺障害の有無、運転者側の不注意の程度を総合して、免許停止または免許取消しの行政処分を判断します。
結論からいうと、行政処分前歴がない人でも、一般違反行為では累積15点以上になると免許取消しの対象です。たとえば、安全運転義務違反2点を原因とする人身事故で、被害者の治療期間が3か月以上または後遺障害が残る事故に該当し、かつ事故が専ら運転者の不注意による場合は、付加点数13点が加わり、合計15点となるため、前歴なしでも免許取消しの基準に達します。死亡事故では、付加点数が20点または13点であるため、安全運転義務違反2点を加えると、通常は前歴なしでも取消し基準に達します。
一方で、治療期間15日未満の軽傷事故では、安全運転義務違反2点に付加点数2点または3点が加わるだけで、前歴なし、過去の累積点数なしであれば、免許取消しどころか免許停止にもならない場合があります。ただし、前歴がある人、既に累積点数がある人、酒気帯び運転、酒酔い運転、ひき逃げ、危険運転致死傷、携帯電話使用等の交通の危険、無保険運行などが絡む場合は、同じ負傷程度でも処分が大きく変わります。
このページでは、「人身事故で免許取り消しになる場合の点数と処分基準」を、点数表、計算式、取消し基準、実務上の争点、意見の聴取、弁護士相談の要否まで体系的に解説します。
人身事故とは、交通事故によって人が負傷し、または死亡した事故をいいます。相手方の歩行者、自転車利用者、二輪車運転者、同乗者、自車の同乗者など、事故によって人の身体に損害が生じた場合が対象です。
人身事故か物損事故かは、単なる呼び名ではありません。運転免許行政では、人身事故になると「事故原因となった違反の基礎点数」に「交通事故の付加点数」が加わります。付加点数は、死亡、治療期間3か月以上または後遺障害、治療期間30日以上3か月未満、治療期間15日以上30日未満、治療期間15日未満という段階で異なります。
運転免許の取消しや停止は、刑事裁判で科される罰金や拘禁刑とは別の「行政処分」です。行政処分は、過去の行為に対する制裁そのものではなく、将来における道路交通上の危険を防止する目的で行われます。愛知県警察も、交通違反や交通事故を起こした場合には刑事罰のほかに公安委員会が行う免許の停止や取消しなどの行政処分を受ける場合があり、行政処分は刑事処分とは目的や手続が本質的に異なると説明しています。
したがって、人身事故後に問題となる責任は、少なくとも次の3層に分かれます。
| 分野 | 主な内容 | 主な担当機関、関係者 |
|---|---|---|
| 行政処分 | 免許停止、免許取消し、欠格期間、意見の聴取 | 公安委員会、警察本部、運転免許本部 |
| 刑事責任 | 過失運転致死傷、危険運転致死傷、道路交通法違反、罰金、拘禁刑 | 警察、検察、裁判所、刑事弁護人 |
| 民事責任 | 治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益、後遺障害、示談 | 被害者、加害者、保険会社、弁護士 |
行政処分の点数が軽くても刑事処分や民事賠償が重いことがあります。逆に、示談が成立しても、免許取消しの点数が当然に消えるわけではありません。
基礎点数とは、個々の交通違反に付けられる基本点数です。警視庁の点数一覧表では、たとえば安全運転義務違反、信号無視、横断歩行者等妨害等、指定場所一時不停止等はいずれも2点、携帯電話使用等のうち交通の危険は6点、速度超過50km以上は12点、酒気帯び運転はアルコール濃度に応じて13点または25点、酒酔い運転は35点とされています。
人身事故では、多くの場合、事故原因として安全運転義務違反2点が問題になります。ただし、赤信号無視、横断歩行者等妨害、速度超過、携帯電話使用等、酒気帯び運転、無車検運行、無保険運行など、具体的な事故原因によって基礎点数は変わります。
付加点数とは、交通事故を起こした場合に基礎点数へ加算される点数です。警視庁は、追突事故で軽傷を負わせ、責任の程度が重い場合の例として、安全運転義務違反2点に、責任の程度が重い軽傷事故の付加点数6点を加え、合計8点と評価されると説明しています。
累積点数とは、一定期間内の交通違反や交通事故の点数を合計したものです。警視庁は、点数制度を「自動車等の運転者の交通違反や交通事故に一定の点数を付けて、その過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止や取消等の処分を行う制度」と説明しています。
重要なのは、事故当日の点数だけでなく、過去3年間の累積点数が加わることです。たとえば、過去に4点の違反がある人が、今回の人身事故で11点になれば、合計15点となり、前歴なしでも取消し基準に達します。
前歴とは、処分対象となる違反や事故を基準に、過去一定期間に免許停止や取消しなどの行政処分を受けた回数を指します。前歴が多いほど、少ない点数でも免許停止や免許取消しになります。
神奈川県警察の表では、一般違反行為の場合、前歴なしでは15点以上で取消しですが、前歴1回では10点以上、前歴2回では5点以上、前歴3回以上では4点以上で取消しの対象になります。
欠格期間とは、免許取消し後、新たに運転免許試験を受けることができない期間です。神奈川県警察は、欠格期間を「免許の試験を受けることのできない期間」と説明しています。
一般違反行為では、欠格期間は1年から5年が基本です。特定違反行為では、3年から10年が基本です。免許取消歴等保有者は、表の括弧内のように欠格期間が延長されることがあります。
点数制度では、違反行為は一般違反行為と特定違反行為に分けられます。警視庁は、平成21年6月1日の道路交通法改正により、悪質で危険な違反行為を特定違反行為、それ以外を一般違反行為としたと説明しています。
特定違反行為には、運転殺人等、運転傷害等、危険運転致死傷等、酒酔い運転、麻薬等運転、救護義務違反などが含まれます。特定違反行為は、基礎点数も欠格期間も重く、前歴なしでも35点以上で取消しになり、欠格期間は原則3年以上です。
人身事故の付加点数は、事故の結果の重大性と不注意の程度によって決まります。警視庁、神奈川県警察、愛知県警察などの公表内容を整理すると、次のとおりです。
| 事故の種別 | 事故が専ら違反者の不注意による場合 | 左記以外の場合 |
|---|---|---|
| 死亡事故 | 20点 | 13点 |
| 治療期間3か月以上または後遺障害がある傷害事故 | 13点 | 9点 |
| 治療期間30日以上3か月未満の傷害事故 | 9点 | 6点 |
| 治療期間15日以上30日未満の傷害事故 | 6点 | 4点 |
| 治療期間15日未満の傷害事故 | 3点 | 2点 |
警視庁は、負傷者が2人以上いる場合の「治療に要する期間」は、最も負傷の程度が重い人の治療期間によると説明しています。
表の「専ら」とは、事故が専ら違反行為者の不注意によって発生した場合を指します。一般には、追突、信号無視、横断歩行者妨害、明らかな前方不注意、センターラインオーバーなど、運転者側の危険性が強く認定される場面で問題になります。
ただし、これは民事上の過失割合と完全に同じではありません。民事賠償では「80対20」「90対10」などの割合で損害分担を議論しますが、免許行政では、行政処分上の点数評価として「専ら」か「その他」かを判断します。したがって、保険会社との過失割合交渉によってが、そのまま免許行政の付加点数を決定するわけではありません。
点数表の治療期間は、通常、診断書に記載される「全治」「加療見込み」「治療を要する期間」などを基礎に把握されます。実務上は、初診時の診断書、追加診断書、後遺障害の有無、画像所見、症状経過などが重要になります。
注意すべき点は、14日と15日、29日と30日、2か月台と3か月以上の境界で付加点数が変わることです。たとえば、治療期間15日未満なら付加点数は2点または3点ですが、15日以上30日未満になると4点または6点に上がります。30日以上3か月未満では6点または9点、3か月以上または後遺障害がある場合は9点または13点です。
治療期間が3か月未満でも、後遺障害が存すると評価される場合は、「治療期間3か月以上または後遺障害」の区分に入ることがあります。交通事故では、頚椎捻挫後の神経症状、骨折後の可動域制限、脳外傷後の高次脳機能障害、外傷性てんかん、視力や聴力の障害、顔面瘢痕などが争点になることがあります。
ただし、免許行政上の後遺障害区分と、自賠責保険の後遺障害等級認定は、制度目的が異なります。自賠責の等級が認定された、または認定されなかったという事実は重要な資料になり得ますが、免許点数の判断を当然に左右するものではありません。
人身事故で免許取消しになるかを考えるときは、次の順序で見ます。
追加で問題となる違反点数の典型例は、救護義務違反、酒気帯び運転、酒酔い運転、麻薬等運転、無車検運行、無保険運行、携帯電話使用等です。ひき逃げの場合、救護義務違反35点だけでも取消し基準に達します。高知県警察も、救護義務違反の行政処分点数は35点であり、これだけで運転免許は取り消され、取消日から3年間は免許取得ができないと説明しています。
ここでは、もっとも相談が多い「行政処分前歴なし、過去の累積点数なし、事故原因が安全運転義務違反2点」という前提で、人身事故の結果だけを見た処分見込みを整理します。
| 事故の結果 | 付加点数 | 合計点数 | 前歴なしの場合の基本的処分 |
|---|---|---|---|
| 治療期間15日未満、専ら | 3点 | 5点 | 原則として停止なし。ただし累積点数があれば別 |
| 治療期間15日未満、その他 | 2点 | 4点 | 原則として停止なし。ただし累積点数があれば別 |
| 治療期間15日以上30日未満、専ら | 6点 | 8点 | 免許停止30日 |
| 治療期間15日以上30日未満、その他 | 4点 | 6点 | 免許停止30日 |
| 治療期間30日以上3か月未満、専ら | 9点 | 11点 | 免許停止60日 |
| 治療期間30日以上3か月未満、その他 | 6点 | 8点 | 免許停止30日 |
| 治療期間3か月以上または後遺障害、専ら | 13点 | 15点 | 免許取消し、欠格期間1年が基本 |
| 治療期間3か月以上または後遺障害、その他 | 9点 | 11点 | 免許停止60日 |
| 死亡事故、専ら | 20点 | 22点 | 免許取消し、欠格期間1年が基本 |
| 死亡事故、その他 | 13点 | 15点 | 免許取消し、欠格期間1年が基本 |
この表から分かるように、前歴なし、累積点数なし、安全運転義務違反2点の事案では、治療期間3か月以上または後遺障害がある事故のうち「専ら」に該当する場合と、死亡事故の場合に、取消し基準に達しやすくなります。
ただし、この早見表はあくまで典型例です。信号無視2点、横断歩行者等妨害2点のように同じ2点の違反なら近い結果になりますが、携帯電話使用等の交通の危険6点、速度超過12点、酒気帯び13点または25点などが事故原因になると、軽傷事故でも取消しに近づく、または取消しに達します。
一般違反行為の免許取消し基準は、行政処分前歴と累積点数によって決まります。神奈川県警察の取消し表を整理すると、次のとおりです。
| 過去3年以内の運転免許停止等の処分回数 | 欠格1年 | 欠格2年 | 欠格3年 | 欠格4年 | 欠格5年 |
|---|---|---|---|---|---|
| なし | 15点から24点 | 25点から34点 | 35点から39点 | 40点から44点 | 45点以上 |
| 1回 | 10点から19点 | 20点から29点 | 30点から34点 | 35点から39点 | 40点以上 |
| 2回 | 5点から14点 | 15点から24点 | 25点から29点 | 30点から34点 | 35点以上 |
| 3回以上 | 4点から9点 | 10点から19点 | 20点から24点 | 25点から29点 | 30点以上 |
前歴なしの場合、一般違反行為では15点から取消しです。安全運転義務違反2点を前提にすると、死亡事故、または治療期間3か月以上もしくは後遺障害がある事故で「専ら」の場合に15点以上になります。
また、過去の累積点数がある場合は、より軽い人身事故でも取消しに達します。たとえば、過去に7点の累積がある人が、治療期間15日以上30日未満の専ら事故で8点となれば、合計15点です。
前歴1回の場合、一般違反行為では10点以上で取消しです。安全運転義務違反2点を前提にすると、治療期間30日以上3か月未満の専ら事故は合計11点となり、取消し基準に達します。前歴なしなら60日の停止で済む事案でも、前歴1回では取消しになることがある点に注意が必要です。
前歴2回の場合、一般違反行為では5点以上で取消しです。安全運転義務違反2点に、治療期間15日未満の専ら事故の付加点数3点が加わるだけで合計5点となり、取消し基準に達します。つまり、前歴2回の運転者にとっては、軽傷事故でも免許取消しが現実的なリスクになります。
前歴3回以上では、一般違反行為でも4点以上で取消しです。安全運転義務違反2点に、治療期間15日未満のその他事故の付加点数2点が加わるだけで、合計4点となります。前歴が重い場合は、軽微な人身事故でも取消しになる構造です。
特定違反行為は、悪質性、危険性が高い行為として、一般違反行為よりも重い処分基準が設けられています。神奈川県警察の表では、特定違反行為の欠格期間は次のように整理されています。
| 過去3年以内の運転免許停止等の処分回数 | 欠格3年 | 欠格4年 | 欠格5年 | 欠格6年 | 欠格7年 | 欠格8年 | 欠格9年 | 欠格10年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| なし | 35点から39点 | 40点から44点 | 45点から49点 | 50点から54点 | 55点から59点 | 60点から64点 | 65点から69点 | 70点以上 |
| 1回 | 該当なし | 35点から39点 | 40点から44点 | 45点から49点 | 50点から54点 | 55点から59点 | 60点から64点 | 65点以上 |
| 2回 | 該当なし | 該当なし | 35点から39点 | 40点から44点 | 45点から49点 | 50点から54点 | 55点から59点 | 60点以上 |
| 3回以上 | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 35点から39点 | 40点から44点 | 45点から49点 | 50点から54点 | 55点以上 |
危険運転致死傷は、特定違反行為として非常に重い点数になります。愛知県警察は、特定違反行為の基礎点数として、危険運転致死62点、危険運転致傷45点から55点を掲げています。
危険運転致死なら62点ですから、前歴なしでも特定違反行為の表で欠格8年の範囲に入ります。危険運転致傷でも45点以上になり、前歴なしでも少なくとも欠格5年の範囲に入ります。
酒酔い運転と麻薬等運転は35点です。35点は前歴なしでも特定違反行為の取消し基準に達し、欠格期間3年が基本になります。これに人身事故の付加点数や救護義務違反が加わると、さらに重い欠格期間に進む可能性があります。
人身事故で特に重大なのが救護義務違反です。交通事故があった場合、運転者等は直ちに車両の運転を停止し、負傷者を救護し、道路上の危険を防止し、警察官に報告しなければなりません。警視庁が公表する道路交通法第72条の抜粋でも、交通事故があったときの停止、救護、危険防止、警察官への報告義務が明記されています。
救護義務違反は35点です。人身事故後に現場を離れた場合、単に事故の点数が加算されるだけではなく、救護義務違反として特定違反行為に該当し、免許取消し、欠格期間3年以上が現実的になります。
前方不注意による追突事故で、被害者の診断書が「加療約2週間」、行政上「治療期間15日未満」と扱われ、事故が専ら運転者の不注意によると評価された場合を考えます。
前歴なし、過去の累積点数なしであれば、6点未満なので、通常は免許停止にも取消しにも至りません。ただし、既に1点以上の累積点数があれば停止の可能性があり、前歴2回なら5点で取消し基準に達します。
前歴なしなら、6点から8点の範囲に入り、免許停止30日が基本です。取消しではありません。
前歴なしなら、9点から11点の範囲に入り、免許停止60日が基本です。前歴1回なら10点以上で取消し基準です。
前歴なしでも15点に達し、一般違反行為の取消し基準です。欠格期間は1年が基本です。ただし、免許取消歴等保有者に該当する場合は、欠格期間が延長される可能性があります。
死亡事故では、「専ら」ではなく「その他」と評価されても、付加点数13点に基礎点数2点が加わると15点です。前歴なしでも取消し基準に達します。
呼気1リットル中0.15mg以上0.25mg未満の酒気帯び運転は13点です。治療期間15日未満の軽傷事故で付加点数が2点でも、合計15点になります。
前歴なしでも一般違反行為の取消し基準に達します。呼気0.25mg以上なら酒気帯び運転だけで25点であり、さらに付加点数が加わるため、欠格期間も重くなります。
救護義務違反は35点です。救護義務違反だけで特定違反行為の取消し基準に達します。さらに事故原因となった違反や事故の付加点数が問題となる可能性があるため、欠格期間は3年にとどまらない場合があります。
事故直後に「大丈夫そうだった」「急いでいた」「あとで連絡するつもりだった」という弁解があっても、負傷者の救護と警察への報告は直ちに行うべき義務です。人身事故の現場を離れることは、免許行政、刑事責任、民事責任のすべてで重大な不利益を生じさせます。
免許停止は、一定期間、免許の効力が停止される処分です。期間が満了すれば、原則として免許の効力は回復します。神奈川県警察の表では、前歴なしの場合、6点から8点で30日、9点から11点で60日、12点から14点で90日の停止です。
停止処分者講習を受けることで、停止期間が短縮されることがあります。ただし、短縮日数は講習成績や受講態度等により異なり、当然に最大短縮されるわけではありません。
免許取消しは、免許の効力を将来に向かって失わせる処分です。警視庁は、取消処分について、交通違反や交通事故を起こしたとき、または自動車等を運転することが著しく道路交通の危険を生じさせるおそれがあるとき、その人の免許を取り消すものと説明しています。
取消し後は、公安委員会が指定した欠格期間が経過するまで、新たに免許を取得できません。新たに免許を取得する場合、原則として運転免許試験を受ける前1年以内に取消処分者講習を受ける必要があります。
交通事故が発生しても、すべての事故で必ず点数が加算されるわけではありません。警察庁資料では、交通事故が不可抗力によって起きた場合や、違反行為をした者の不注意の程度が極めて軽微で、事故時の具体的事情において結果予見および結果回避を期待することが困難であったと認められる場合には、点数は加算されないと説明されています。
たとえば、相手車両が突然センターラインを越えてきた、歩行者が見通し不能な位置から極めて突然飛び出した、道路構造や第三者行為により回避不能だったなど、事故態様によっては、点数加算の前提となる違反や不注意の有無が争点になります。
行政処分では、一定の要件のもとで処分軽減が問題となることがあります。警視庁の処分基準資料では、運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情があるとき、取消し等の処分を軽減できる場合があるとされています。また、前歴のない人が安全運転義務違反により交通事故を起こした場合で、不注意の程度が極めて軽微で、かつ事故が専ら相手側の不注意によって発生したときには、欠格期間1年または2年に相当する処分を、一定の停止処分に軽減できる場合があるとされています。
ただし、軽減は当然の権利ではありません。診断書、実況見分調書、ドライブレコーダー、相手方の供述、信号サイクル、防犯カメラ、車両損傷、ブレーキ痕、道路環境、反応可能性など、客観的資料に基づく主張が必要です。
免許取消しまたは90日以上の免許停止に該当する場合、原則として意見の聴取が行われます。警視庁は、意見の聴取について、道路交通法第104条により、運転免許の停止90日以上または免許取消処分に該当する場合に、意見を述べ、有利な証拠を提出する機会を与え、処分が公正適切に行われることを保障する制度と説明しています。
神奈川県警察も、点数制度による免許取消しまたは90日以上の停止に該当する場合は、公安委員会または警察本部長の主宰する意見の聴取が行われ、処分を受ける人または代理人は、処分理由について意見を述べ、有利な証拠を提出できると説明しています。
意見の聴取通知書が届いたら、少なくとも次の点を確認します。
| 確認事項 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 処分理由 | どの違反、どの事故を理由にしているか |
| 累積点数 | 今回の点数と過去の点数が正しいか |
| 前歴 | 停止処分や取消処分の回数が正しく扱われているか |
| 事故の種別 | 死亡、治療期間、後遺障害の区分が正しいか |
| 不注意の程度 | 「専ら」か「その他」かが争えるか |
| 事故原因 | 安全運転義務違反、信号無視、速度超過などの認定が正しいか |
| 証拠 | ドライブレコーダー、診断書、防犯カメラ、写真、目撃者などがあるか |
| 生活、職業への影響 | 運転業務、通院、介護などの事情をどう整理するか |
意見の聴取を欠席すると、書面審査で処分が決定されることがあります。警視庁は、意見の聴取を欠席すると書面審査で処分が決定されると説明しています。
仕事や病気などで出席できない場合は、代理人出席や必要書類の提出を検討することが考えられます。警視庁は、意見の聴取には弁護人、補佐人等とともに出席できるが、その際には補佐人出頭許可申請書等を提出する必要があると案内しています。
人身事故では、行政処分とは別に、刑事事件として過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、道路交通法違反などが問題になります。
自動車運転死傷処罰法の過失運転致死傷では、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた者は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処されます。ただし、傷害が軽いときは、情状により刑を免除できるとされています。
刑事事件では、過失の程度、被害の重大性、被害者感情、示談、反省、前科前歴、危険運転該当性、飲酒、速度、スマートフォン使用、救護義務違反などが重要になります。行政処分の点数と刑事処分は連動する面がありますが、同じものではありません。
被害者との示談は、刑事処分や民事賠償では非常に重要です。しかし、行政処分の点数は、交通違反と交通事故の客観的な発生、結果、不注意の程度をもとに判断されます。示談成立だけで点数が消えるわけではありません。
もっとも、被害弁償、謝罪、再発防止策、運転業務の見直しなどは、刑事処分や意見の聴取における事情説明の一部として意味を持つことがあります。特に取消しの軽減を求める場合は、事故原因の争いだけでなく、運転者としての危険性がより低いと評価される資料を整える必要があります。
人身事故の付加点数は、負傷者の治療期間や後遺障害の有無によって大きく変わります。そのため、医療資料は免許行政にも重要です。
交通事故では、頚椎捻挫、腰椎捻挫、骨折、打撲、靱帯損傷、半月板損傷、腱板損傷などが多く見られます。初診時診断書が「2週間」の場合でも、その後に骨折が判明したり、症状が長期化したりすれば、診断内容や治療期間が変わることがあります。
頭部外傷では、急性硬膜下血腫、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷、高次脳機能障害などが問題になります。初期には意識清明でも、画像所見や神経症状により重症評価が変わることがあります。
後遺障害があると、付加点数表では「治療期間3か月以上または後遺障害」の区分に入ります。後遺障害の有無は、医師の診断、画像、神経学的所見、リハビリ経過、症状固定時の状態などから判断されます。
行政処分の場面で、加害者側が「軽傷だと思っていた」と説明しても、診断書や医療記録上、重傷区分に該当すれば、付加点数は重くなります。逆に、治療期間や後遺障害評価に明らかな疑義がある場合は、医学的資料の確認が重要です。
免許取消しが問題になる人身事故では、単に「事故が起きた」だけでなく、「なぜ事故が起きたか」「回避可能だったか」「どちらの不注意がどの程度だったか」が重要になります。
有力な証拠には、次のようなものがあります。
| 証拠 | 主な確認内容 |
|---|---|
| ドライブレコーダー | 信号、速度、車間距離、相手の動き、衝突前の反応 |
| 防犯カメラ | 事故前後の位置関係、信号周期、歩行者や自転車の動き |
| 車両損傷写真 | 衝突角度、速度感、接触位置、回避行動 |
| 現場写真 | 見通し、停止線、標識、道路照明、路面状況 |
| 実況見分調書 | 警察が把握した事故状況、指示説明、見取図 |
| EDR、車両データ | ブレーキ、アクセル、速度、シートベルト、衝突データ |
| スマートフォン履歴 | ながら運転、通話、メッセージ操作の有無 |
| 診断書、画像 | 負傷程度、治療期間、後遺障害の有無 |
特に「専ら」か「その他」かの争い、信号表示の争い、相手の飛び出し、夜間の視認性、車両不具合、道路環境の問題がある場合は、事故鑑定や映像解析が重要になることがあります。
自分の累積点数や行政処分歴を正確に知りたい場合、警察署や電話で簡単に個人情報を照会できるとは限りません。千葉県警察は、特定の個人の累積点数や登録されている違反内容、行政処分歴は重要な個人情報であり回答できないとし、点数が一定基準に達していない人は、自動車安全運転センターが発行する運転経歴証明書を取得することで現在の行政処分歴と累積点数を知ることができると案内しています。
自動車安全運転センターは、運転経歴に係る証明書として、無事故無違反証明書、運転記録証明書、累積点数等証明書、運転免許経歴証明書を発行しています。
人身事故後に取消しリスクがある場合は、通知書が来る前でも、過去の違反歴や前歴を把握しておくことが重要です。
次のいずれかに該当する場合は、早期に交通事故、刑事事件、運転免許行政処分に詳しい弁護士へ相談する必要性が高いといえます。
| 場面 | 相談すべき理由 |
|---|---|
| 死亡事故 | 行政処分、刑事処分、遺族対応、賠償がすべて重大 |
| 治療期間3か月以上、後遺障害の可能性 | 15点以上や重い付加点数の可能性がある |
| 意見の聴取通知書が届いた | 取消しまたは90日以上停止の可能性が高い |
| 前歴がある | 軽傷事故でも取消し基準に達することがある |
| 酒気帯び、酒酔い、薬物、ひき逃げ | 特定違反行為または高点数になり得る |
| ドラレコなどで相手の過失が大きい | 「専ら」や違反認定を争える可能性がある |
| 違反事実を争いたい | 信号、速度、スマホ使用、横断歩行者妨害などの認定が重要 |
| 職業上運転が必要 | 生活、勤務、再発防止策を整理する必要がある |
| 被害者対応が難航している | 刑事処分や示談、民事賠償にも影響する |
弁護士相談では、次の資料をできるだけ準備します。
| 資料 | 目的 |
|---|---|
| 交通事故証明書 | 事故日時、場所、当事者、事故類型の確認 |
| 意見の聴取通知書、行政処分関係通知 | 点数、前歴、処分予定の確認 |
| 診断書、入通院資料 | 治療期間、負傷程度、後遺障害の確認 |
| ドライブレコーダー映像 | 事故態様、速度、信号、相手方動静の確認 |
| 現場写真、車両写真 | 道路環境、損傷、見通しの確認 |
| 保険会社との書面 | 示談状況、過失割合、損害内容の確認 |
| 警察、検察からの呼出状 | 刑事手続の段階確認 |
| 運転記録証明書、累積点数等証明書 | 過去の違反、前歴、累積点数の確認 |
| 勤務先資料 | 運転業務、生活影響、再発防止策の説明 |
誤りです。人身事故でも、治療期間15日未満の軽傷事故で、基礎点数2点、付加点数2点または3点にとどまり、前歴や累積点数がなければ、免許停止にも至らない場合があります。
物損事故として処理されていても、後日、被害者が診断書を提出し、人身事故として扱われることがあります。人身事故に切り替われば、付加点数が問題になります。事故直後に症状が軽く見えても、むち打ち、頭部外傷、骨折などが後から判明することがあります。
誤りです。保険会社の過失割合は民事賠償上の損害分担です。免許点数では、道路交通法令違反、事故結果、不注意の程度が問題になります。過失割合は参考資料になり得ますが、そのまま行政処分の点数を決めるものではありません。
誤りです。示談は刑事処分や民事紛争の解決では重要ですが、行政処分の点数は自動的には消えません。ただし、反省、被害回復、再発防止策、運転者としての危険性が低い事情として、意見の聴取で説明する余地がある場合はあります。
現場の警察官の説明は、正式な行政処分の決定ではありません。交通事故の点数は、事故捜査、診断書、違反認定、前歴、累積点数などを踏まえて後日決まります。正式には、通知書や公安委員会の手続を確認する必要があります。
| 行動 | 理由 |
|---|---|
| 停止、負傷者救護、119番、110番 | 救護義務違反、報告義務違反を避けるため |
| 二次事故防止 | 発炎筒、三角表示板、安全な退避 |
| 現場保存と記録 | 後の事故態様争いに備える |
| 相手方情報の確認 | 保険、示談、刑事手続に必要 |
| 保険会社へ連絡 | 対人賠償、弁護士費用特約の確認 |
| ドラレコ保全 | 上書き消去を防ぐ |
| 行動 | 理由 |
|---|---|
| 点数内訳を確認 | 基礎点数、付加点数、累積点数、前歴を確認 |
| 事故区分を確認 | 治療期間、後遺障害、死亡、専らの有無を確認 |
| 証拠を整理 | 映像、写真、診断書、事故証明書、保険資料 |
| 意見の聴取に備える | 欠席による書面審査を避ける |
| 弁護士相談 | 取消し、刑事、民事を横断して対応 |
| 行動 | 理由 |
|---|---|
| 欠格期間を確認 | 再取得可能時期を把握する |
| 取消処分者講習を確認 | 再取得前に必要になることが多い |
| 再発防止策を実行 | 飲酒対策、業務運転管理、運転教育、通勤手段見直し |
| 刑事、民事手続を継続 | 免許行政とは別に責任が残る |
警察と公安委員会は、道路交通の安全確保、将来の危険防止、違反事実と事故結果の正確な把握を重視します。実況見分、供述調書、診断書、違反報告、点数登録、意見の聴取が中心です。
医師は、負傷部位、治療見込期間、画像所見、後遺症の可能性を医学的に評価します。免許点数のために診断書を書くわけではありませんが、診断書の内容は付加点数に大きく影響します。
弁護士は、行政処分、刑事処分、民事賠償を分けつつ、相互の影響を見ます。意見の聴取では、事故態様、点数、前歴、軽減事情を整理し、刑事事件では供述対応や示談、民事では損害賠償と保険対応を扱います。
保険会社は、過失割合、損害額、治療の相当性、休業損害、慰謝料、後遺障害、車両損害を確認します。行政処分の点数とは制度が異なりますが、事故態様や診断書などの資料は重なります。
事故鑑定では、速度、衝突角度、制動距離、視認可能性、回避可能性、信号認識、車両損傷、EDRなどを分析します。違反認定や「専ら」の判断に影響することがあります。
免許取消しは、運送業、営業職、介護、通勤、家族の送迎など生活に大きく影響します。業務中事故では労災、休職、復職、配置転換、障害年金、福祉制度なども問題になります。
人身事故で免許取消しになるかどうかは、単に「人身事故かどうか」ではなく、次の要素で決まります。
前歴なしで安全運転義務違反2点の典型例では、治療期間15日未満の軽傷事故なら取消しに至らないことが多い一方、死亡事故や、治療期間3か月以上または後遺障害がある事故で「専ら」と評価される場合は、取消し基準に達します。前歴がある場合は、軽傷事故でも取消しになることがあります。酒気帯び、酒酔い、ひき逃げ、危険運転が絡む場合は、さらに重い処分が見込まれます。
人身事故後に免許取消しの不安がある場合、最初に行うべきことは、感覚的な予想ではなく、基礎点数、付加点数、累積点数、前歴、事故区分を正確に把握することです。そのうえで、意見の聴取通知書が届いた、死亡事故や重傷事故である、前歴がある、違反事実や事故態様を争う余地がある、職業上運転が不可欠である、といった場合は、早期に弁護士へ相談し、行政処分、刑事処分、民事賠償を一体として整理することが重要です。