2σ Guide

利益相反取引とは何か
会社法・会計税務・M&A実務から整理

会社法356条・365条の承認手続、直接取引・間接取引、取締役責任、関連当事者取引、親子会社・M&Aまで、実務で確認すべき論点を体系的に解説します。

356・365会社法の中心条文
3類型競業・直接・間接
25項目実務チェックの軸
本ページは株式会社Dプロフェッションズ(医師/医療機関/弁護士/弁護士法人ではありません)が運営しています。
一般的な情報提供を目的としており医療上の助言や法律相談等を行うものではありません。
広告(PR)を掲載しています。広告は編集内容や推奨を意味しません。
Video

利益相反取引とは何か 会社法・会計税務・M&A実務から整理

会社法356条・365条を軸に、取締役会、会計、税務、M&A まで一体で確認します。

動画を読み込み中…
2σ GUIDE ・ VIDEO
利益相反取引とは何か 会社法・会計税務・M&A実務から整理
会社法356条・365条を軸に、取締役会、会計、税務、M&A まで一体で確認します。
動画の文字起こし(全文テキスト)

2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 利益相反取引とは何か 会社法・会計税務・M&A実務から整理
  • 会社法356条・365条を軸に、取締役会、会計、税務、M&A まで一体で確認します。

POINT 1

  • 利益相反取引の全体像をつかむ
  • 会社法356条・365条を軸に、取締役会、会計、税務、M&A まで一体で確認します。
  • 最初に重要な観点を一覧化します。
  • 左側の観点は利益相反取引を早期に拾うための入口で、右側の確認事項は手続漏れや説明不足を防ぐために重要です。
  • 自社の取引を当てはめ、どの部門がどこまで確認するかを読み取ってください。

POINT 2

  • 利益相反取引の定義と直接取引・間接取引の違い
  • 1. 関係者の有無を確認:取締役、役員、主要株主、親会社、関係会社、親族会社が関与しているかを確認します。
  • 2. 会社との取引関係を確認:会社と取締役本人、または取締役が利害を持つ第三者との取引かを見ます。
  • 3. 直接取引を検討:売買、貸付、賃貸借、業務委託、債務免除などを承認対象として確認します。
  • 4. 次の観点へ進む:保証、担保、債務引受、競業、関連当事者開示の観点で確認します。

POINT 3

  • 利益相反取引の承認手続と重要な事実の開示
  • 1. 取引案と関係者を把握します:事業部が取引案を作成し、役員、主要株主、親族、関係会社との関係を確認します。
  • 2. 法務・経理・税務で該当性を検討します:会社法、関連当事者取引、税務上の時価、会計注記、開示の観点を横断的に確認します。
  • 3. 承認資料をそろえて付議します:重要な事実、価格根拠、代替案、契約書案、利害関係者の扱いを資料化して承認機関に付議します。
  • 4. 契約締結後に実績を報告します:取引実績、条件変更、残高、未払、保証残高、承認範囲との整合を定期的に確認します。

POINT 4

  • 利益相反取引の典型場面と証跡管理
  • 1. 事業部が取引案を起案:相手方、金額、期間、取引目的、取締役との関係を記載します。
  • 2. 管理部門が横断確認:法務、経理、税務、内部統制が該当性、時価、開示、契約条件を確認します。
  • 3. 承認機関に付議:利害関係取締役を除き、重要な事実を示して審議・採決します。
  • 4. 契約後も報告:実績、残高、条件変更、承認範囲超過の有無を定期的に確認します。

POINT 5

  • 利益相反取引に違反した場合の効力と取締役責任
  • 会社に対する責任
  • 取締役の善管注意義務・忠実義務、会社法423条の任務懈怠責任、損害賠償責任が問題になります。
  • 株主からの責任追及
  • 会社が責任追及をしない場合、株主代表訴訟で会社財産の流出や私的利益取得が争われる可能性があります。

POINT 6

  • 利益相反取引と関連当事者取引・上場会社・M&A
  • 会社法承認と、会計開示、少数株主保護、構造的な利益相反を分けて整理します。
  • 関連当事者取引とは同じではありません
  • 上場会社では公正性と説明可能性が問われます
  • 親子会社・M&Aでは構造的な利益相反を見ます

POINT 7

  • 利益相反取引を管理する社内規程・チェックリスト・専門家連携
  • 中小企業、同族会社、スタートアップ、上場準備で使える実務運用に落とし込みます。
  • 中小企業・同族会社・スタートアップの論点
  • 取引前チェックリスト
  • 税務・会計・監査の視点

POINT 8

  • 利益相反取引の実務上の結論
  • 禁止するだけでなく、公正な判断と説明可能な記録を残すことが中心です。
  • 利益相反取引は企業統治の実力が表れやすい領域です
  • 該当性を広めに拾います
  • 承認機関を間違えません

まとめ

  • 利益相反取引とは何か 会社法・会計税務・M&A実務から整理
  • 利益相反取引の全体像をつかむ:会社法356条・365条を軸に、取締役会、会計、税務、M&A まで一体で確認します。
  • 利益相反取引の定義と直接取引・間接取引の違い:会社法の類型、民法108条、競業取引との違いを整理します。
  • 利益相反取引の承認手続と重要な事実の開示:誰が、いつ、何を承認するかを、議事録に残せる粒度で確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

利益相反取引の全体像をつかむ

会社法356条・365条を軸に、取締役会、会計、税務、M&Aまで一体で確認します。

利益相反取引とは、会社の利益を守る立場にある取締役等が、自己または第三者の利益にも関わるため、会社の判断が歪むおそれのある取引です。典型例には、会社が取締役に金銭を貸す取引、会社が取締役の債務を保証する取引、取締役が支配する会社との業務委託、親子会社間の不利な資産移転、MBOや支配株主による買収があります。

このページは、会社経営者、取締役、監査役、法務・商事法務・コンプライアンス・内部監査・経理財務・M&A・税務の担当者が、外部専門家へ相談する前に論点を整理できるように構成しています。記載は一般的な情報提供であり、個別案件の承認要否、取引の効力、役員責任、開示、税務処理は、機関設計、定款、取引条件、上場の有無、会計監査、グループ関係、株式保有状況によって変わる可能性があります。

注意取引条件が公正に見える場合、少額の場合、従来から続いている場合、代表者が了承している場合でも、会社法上の承認、取引後報告、関連当事者開示、税務・会計処理の確認が必要になることがあります。

最初に重要な観点を一覧化します。左側の観点は利益相反取引を早期に拾うための入口で、右側の確認事項は手続漏れや説明不足を防ぐために重要です。自社の取引を当てはめ、どの部門がどこまで確認するかを読み取ってください。

観点確認する内容主なリスク
会社法会社法356条1項2号・3号、取締役会設置会社の会社法365条、利害関係取締役の扱いを確認します。承認漏れ、取引効力、任務懈怠責任、株主代表訴訟です。
取引条件価格、利率、手数料、保証料、担保、支払条件、解除条件、代替取引先を確認します。会社財産の流出、回収不能、条件変更時の再承認漏れです。
証跡重要な事実の開示、議事録、稟議、比較資料、契約書案、取引後報告を保存します。監査、金融機関、M&A、税務調査で説明できない状態です。
開示・会計税務関連当事者取引、事業報告、有価証券報告書、偶発債務、時価、認定利息を確認します。注記漏れ、税務否認、監査指摘、投資家からの信用低下です。

実務では、会社法承認だけで完結させず、公正な条件、公正な手続、説明可能な記録をそろえることが中心になります。以下では、定義、類型、承認、証跡、責任、開示、社内運用、FAQの順に確認します。

Section 01

利益相反取引の定義と直接取引・間接取引の違い

会社法の類型、民法108条、競業取引との違いを整理します。

利益相反と利益相反取引の意味

利益相反とは、一方の利益を守るべき立場にある者が、同時に自己または第三者の利益を得る立場にもあるため、判断が歪められる危険がある状態です。不正や悪意がある場合だけでなく、客観的に会社以外の利益に影響され得る構造があれば問題になります。

利益相反取引は、会社と取締役等との間で利害が対立し、会社の利益が害されるおそれがある取引です。日本の株式会社では、会社法356条が取締役による競業取引、直接取引、間接取引について承認を求め、取締役会設置会社では会社法365条により取締役会承認と取引後報告が問題になります。

次の比較表は、会社法上の主要な取引類型と、実務で注意すべき焦点を整理したものです。類型ごとに必要な資料や承認機関が変わるため、自社取引がどの欄に近いかを読み取ることが大切です。

類型典型例実務上の焦点
自己のための直接取引取締役本人が会社から不動産を買う、会社が取締役に貸付を行う取引です。取締役が会社側と自己側の双方に関与し、条件を自己に有利にできる点です。
第三者のための直接取引取締役が代表する会社、保有会社、親族会社と会社が取引する場面です。取締役が第三者の利益を通じて実質的利益を得る点です。
間接取引会社が取締役個人の借入を保証し、担保を提供し、債務を引き受ける取引です。契約相手は銀行など第三者でも、取締役の信用や負担を会社が支える点です。
競業取引取締役が会社の事業と同種の取引を自己または第三者のために行う場面です。会社の事業機会、顧客、ノウハウ、営業秘密、人材、信用が流出する点です。

価格だけでは判断できません

利益相反取引では、価格が時価に見えるかどうかだけでなく、取引の必要性、相手方選定理由、代替案、利率、保証料、担保、支払条件、解除条件、会社が負う信用リスク、取締役側の経済的利益、独立した比較検討、承認機関への重要事実の開示、利害関係者の審議関与、取引後の条件変更まで確認します。

次の判断の流れは、取締役や関係者が関わる取引を見つけたときに、直接取引、間接取引、競業取引、関連当事者取引のどれを優先的に確認するかを示します。分岐は結論を断定するものではなく、社内で追加調査を進める順番を読み取るためのものです。

利益相反取引の該当性を確認する判断の流れ

関係者の有無を確認

取締役、役員、主要株主、親会社、関係会社、親族会社が関与しているかを確認します。

会社との取引関係を確認

会社と取締役本人、または取締役が利害を持つ第三者との取引かを見ます。

該当しそうな場合
直接取引を検討

売買、貸付、賃貸借、業務委託、債務免除などを承認対象として確認します。

違う場合
次の観点へ進む

保証、担保、債務引受、競業、関連当事者開示の観点で確認します。

民法108条との関係

自己契約は、代理人が本人の代理人でありながら自分自身を相手方とする契約です。双方代理は、同一人物が契約当事者双方の代理人となる契約です。代表取締役が会社と自己または自己が代表する別会社との契約を締結する場合、会社法356条・365条の承認に加え、代表権の行使、署名権限、双方代理、議事録上の表示を総合的に確認します。

契約書の署名者が同一人物になっていないか、双方の代表者が同じではないか、利害関係のない代表者や取締役が契約締結を行えるか、承認決議と契約締結権限が整合しているかを確認すると、後日の説明がしやすくなります。

Section 02

利益相反取引の承認手続と重要な事実の開示

誰が、いつ、何を承認するかを、議事録に残せる粒度で確認します。

承認機関は機関設計で変わります

利益相反取引の承認機関は、取締役会の有無や会社の機関設計によって変わります。代表取締役の承諾、社長決裁、稟議、経営会議の了承は有用な社内手続ですが、会社法上の承認機関の決議を当然に代替するものではありません。

次の表は、会社の類型ごとに、承認と監督の中心になる機関を整理したものです。列の違いは手続の入口を示すため、実際には定款、取締役会規程、監査役等の権限、上場規則、社内規程を合わせて確認します。

会社の類型原則的な承認・確認実務上の補足
取締役会非設置会社株主総会承認が中心です。中小企業でも、役員会や社長決裁だけで済ませず、株主総会議事録として証跡化します。
取締役会設置会社会社法365条により取締役会承認が中心です。承認後、取引をした取締役による遅滞ない重要事実の報告も確認します。
監査役会設置会社取締役会承認に加え、監査役監査の観点を確認します。監査役の意見、取引後報告、会計処理との整合が重要です。
監査等委員会設置会社取締役会承認と監査等委員会の監査・意見形成が重要です。社外取締役の実効的関与を記録します。
上場会社取締役会承認に加え、独立社外取締役、開示、取引所ルールを確認します。適法性だけでなく、少数株主保護と説明可能性が問われます。

承認の時期と利害関係者の扱い

承認は、原則として取引前に行います。契約締結後、支払い後、年度末一括、監査法人や金融機関から指摘された後、M&Aデューデリジェンスで発見された後の形式的な承認は、実質的な審査として弱くなりやすいです。継続取引では、取引類型、上限額、期間、単価、条件、モニタリング方法を定めた包括承認を設計することがありますが、白紙委任にならないように範囲を明確にします。

利益相反取引では、利害関係のある取締役が審議・採決を主導しないことが重要です。事実説明のために一時的に出席する場合でも、審議と採決には参加しない運用を基本にし、議事録には利害関係、重要な事実の開示、審議・議決不参加、必要に応じた退席、監査役や社外取締役の意見を記録します。

次の時系列は、社内で取引案が出てから契約締結後の報告までの順番を示します。各段階の順序を守ると、承認漏れ、資料不足、利害関係者の関与、取引後の報告漏れを早めに発見できます。

Step 01

取引案と関係者を把握します

事業部が取引案を作成し、役員、主要株主、親族、関係会社との関係を確認します。

Step 02

法務・経理・税務で該当性を検討します

会社法、関連当事者取引、税務上の時価、会計注記、開示の観点を横断的に確認します。

Step 03

承認資料をそろえて付議します

重要な事実、価格根拠、代替案、契約書案、利害関係者の扱いを資料化して承認機関に付議します。

Step 04

契約締結後に実績を報告します

取引実績、条件変更、残高、未払、保証残高、承認範囲との整合を定期的に確認します。

重要な事実の開示項目

重要な事実とは、承認機関がその取引を承認すべきか判断するために必要な事実です。相手方が取締役関係会社であるという情報だけでは足りず、会社に不利益がないか、公正な条件か、必要性や代替案があるかを判断できる資料が必要です。

次の表は、承認資料に入れる標準項目をまとめたものです。項目ごとに、承認機関が何を比較し、どのリスクを読めばよいかを明確にしておくと、承認の実効性が高まります。

項目具体例
関係者情報取締役名、相手方、取締役との関係、株式保有割合、役職、親族関係です。
取引内容と金額売買、貸付、保証、担保提供、業務委託、賃貸借、単価、上限額、残高、累計額です。
条件と期間契約期間、更新条件、中途解約条件、担保、保証、支払条件、期限の利益喪失条項です。
価格根拠見積り、鑑定、算定書、相場、第三者比較、過去取引との比較です。
会社の必要性取引目的、相手方選定理由、代替案、取引しない場合の影響です。
会社リスクと取締役の利益信用リスク、回収不能、担保処分、風評、報酬、配当、債務軽減、株価影響です。
会計・税務・開示時価、寄附金、役員給与、関連当事者注記、偶発債務、適時開示の要否です。
モニタリング取引後報告、残高管理、年次レビュー、内部監査、条件変更時の再承認です。

承認議案は、「A社との取引を承認する」という抽象的な内容では弱くなります。取引相手、取引内容、金額または上限、期間、価格決定方法、支払条件、担保、保証、取締役との関係、会社にとっての合理性、利害関係取締役の不参加を具体的に記載します。

Section 03

利益相反取引の典型場面と証跡管理

貸付、借入、資産売買、業務委託、保証、親族取引を、記録と合わせて確認します。

典型場面を早めに拾います

利益相反取引は、特別なM&Aだけでなく、日常の貸付、借入、資産売買、業務委託、保証、顧問料、親族会社への外注にも現れます。特に中小企業や同族会社では、役員貸付金、仮払金、立替金、未収入金、社長個人の保証、親族会社への支払いとして処理され、会社法手続が抜けることがあります。

次の表は、利益相反取引として問題になりやすい場面と、確認すべき資料を整理したものです。取引名だけで判断せず、会社が何を失い、取締役側が何を得るかを読み取ることが重要です。

場面確認事項必要になりやすい証跡
会社が取締役に貸し付ける必要性、利率、返済条件、担保、回収可能性、認定利息、役員給与課税を確認します。金銭消費貸借契約書、返済予定表、資力資料、承認議事録です。
会社が取締役から借り入れる高利率、過大な担保、期限前返済制限、会社財産への強い担保権を確認します。借入契約、金融機関条件との比較、資金繰り資料です。
会社資産を取締役へ売却する時価、第三者売却可能性、簿価との差、税務上の時価、会社財産の流出を確認します。鑑定評価、査定、見積り、市場価格資料、価格決定メモです。
取締役関係会社へ業務委託する成果物、相場、販売手数料、中間マージン、親族会社への外注、退任後顧問契約を確認します。業務範囲、SLA、成果物、第三者見積り、取引実績表です。
会社が取締役債務を保証する保証限度額、保証期間、主債務者の返済能力、求償権担保、保証料、偶発債務を確認します。保証契約、主債務資料、保証料算定、会計注記資料です。
親族・資産管理会社との取引取締役の実質的利益、相手方支配、利益移転、関連当事者取引の該当性を確認します。役員申告書、株主構成、親族関係、取引先マスター照合です。

議事録だけでは足りません

利益相反取引では、慎重に検討していても、過程が記録されていなければ後日説明できません。株主代表訴訟、監査法人対応、金融機関審査、M&Aデューデリジェンス、税務調査、内部通報対応では、当時の意思決定過程が確認されます。

次の一覧は、議事録と一体で保存すべき資料を示します。案件ごとにひも付けて保存すると、契約、承認、支払、会計、取引後報告を横断して確認できます。

Planning

取引前の資料

取引案、利益相反申告書、関係会社・親族会社の確認資料、代替案、見積書、鑑定書、算定書を保存します。

Approval

承認時の資料

取締役会資料、株主総会資料、契約書案、法務レビュー記録、税務・会計メモ、監査役や社外取締役への説明資料を保存します。

Monitoring

取引後の資料

契約締結後の取引実績表、支払・回収状況、残高、更新期限、条件変更、年次レビュー結果を保存します。

稟議と取締役会承認を接続します

稟議は社内決裁手続であり、会社法上の承認機関の決議とは別です。稟議で法務、経理、財務、事業部が確認していることは有用ですが、会社法365条の承認が必要な取引では、稟議だけでは足りません。

次の手順は、電子契約、電子稟議、契約管理システムを使う会社でも、利益相反取引の情報を一体管理するための順番です。システムが分かれていても、案件単位で承認日、承認機関、承認範囲、取引実績、更新期限を読み取れる状態にします。

証跡を残すための社内手順

事業部が取引案を起案

相手方、金額、期間、取引目的、取締役との関係を記載します。

管理部門が横断確認

法務、経理、税務、内部統制が該当性、時価、開示、契約条件を確認します。

承認機関に付議

利害関係取締役を除き、重要な事実を示して審議・採決します。

契約後も報告

実績、残高、条件変更、承認範囲超過の有無を定期的に確認します。

取締役会議事録には、議案名、取引の概要、取引相手と取締役との関係、重要な事実の開示、取引条件、価格・条件の公正性を裏付ける資料、会社にとっての合理性、利害関係取締役の審議・議決不参加、監査役・社外取締役の意見、決議結果、取引後報告の予定を記録します。

Section 04

利益相反取引に違反した場合の効力と取締役責任

取引効力、損害賠償、株主代表訴訟、刑事リスク、契約・金融・M&Aへの波及を確認します。

承認漏れの評価は類型で変わります

必要な承認を欠いた利益相反取引では、取引の効力が問題になります。会社と取締役本人との直接取引では、会社が無効または効力否定を主張しやすい場面があります。一方、第三者が関与する取引では、第三者保護、相手方の認識、会社の追認、取引後の履行状況などによって評価が分かれる可能性があります。

違反が見つかった場合、取引類型、必要な承認機関、相手方や第三者の認識、会社損害、追認・再承認、条件変更、原状回復、役員責任、開示訂正、税務修正、内部統制上の再発防止策を同時に検討します。

次の一覧は、承認漏れや不公正な条件が判明したときに広がりやすいリスクを整理したものです。各項目は単独で終わらず、複数の部門や専門家にまたがるため、初動で範囲を読み取ることが重要です。

会社に対する責任

取締役の善管注意義務・忠実義務、会社法423条の任務懈怠責任、損害賠償責任が問題になります。

株主からの責任追及

会社が責任追及をしない場合、株主代表訴訟で会社財産の流出や私的利益取得が争われる可能性があります。

第三者に対する責任

悪意または重大な過失による任務懈怠で債権者などに損害が生じた場合、会社法429条の責任が問題になることがあります。

刑事・不祥事対応

悪質な財産流出では、特別背任、業務上横領、詐欺、金融商品取引法違反、会社法上の罰則が問題になることがあります。

契約・金融・M&Aにも影響します

利益相反取引の不備は、会社法だけでなく、銀行借入、M&A、IPO、会計監査、税務、上場会社の開示、内部統制にも影響します。契約の表明保証や財務制限条項に波及する場合があるため、違反発見時には管理部門が連携して影響範囲を確認します。

次の表は、場面ごとの波及リスクをまとめたものです。左列の場面を自社の予定や進行中案件に当てはめ、右列のリスクがすでに発生していないかを確認してください。

場面波及リスク
銀行借入財務制限条項違反、表明保証違反、資金使途違反、信用低下が問題になります。
M&A表明保証違反、補償請求、買収価格減額、クロージング条件不充足が問題になります。
IPO関連当事者取引の整理、役員貸付金の解消、内部統制不備が問題になります。
会計監査関連当事者取引の注記、偶発債務、貸倒引当、監査上の主要論点が問題になります。
税務役員給与、寄附金、受贈益、移転価格、時価否認が問題になります。
上場会社適時開示、コーポレートガバナンス報告書、投資家説明、株価影響が問題になります。
内部統制J-SOX、権限規程、決裁統制、関連当事者マスター管理の不備が問題になります。

刑事リスクが疑われる場合の初動

取締役が自己または第三者の利益を図り、会社に損害を与える目的で会社財産を流出させた疑いがある場合、単なる手続不備として扱うのは危険です。社内調査、証拠保全、デジタルフォレンジック、関係者ヒアリング、取締役会・監査役への報告、外部専門家の起用、当局対応、適時開示・公表要否の判断を検討します。

Section 05

利益相反取引と関連当事者取引・上場会社・M&A

会社法承認と、会計開示、少数株主保護、構造的な利益相反を分けて整理します。

関連当事者取引とは同じではありません

会社法上の利益相反取引は、主に取締役と会社の利害衝突に着目します。一方、会計上の関連当事者取引は、親会社、子会社、同一親会社の会社、関連会社、主要株主、役員、その近親者、それらが支配する会社など、より広い関係者との取引を対象にします。

次の比較表は、会社法上の承認と会計・開示上の関連当事者取引の違いを示します。どちらか一方だけを確認すると漏れが起きるため、承認、契約、支払、注記、事業報告、有価証券報告書をつなげて管理することが重要です。

観点利益相反取引関連当事者取引
主な目的取締役による会社財産の犠牲や判断の歪みを防ぎます。財務諸表利用者に、独立第三者間と異なる可能性のある取引を示します。
対象者主に取締役本人、取締役が利害を持つ第三者、取締役の債務に関わる取引です。親会社、子会社、関連会社、主要株主、役員、近親者、支配会社など広い範囲です。
主な手続株主総会または取締役会承認、取引後報告、利害関係者の不参加です。関連当事者リスト、取引一覧、注記、監査法人・監査役との連携です。
漏れた場合効力、役員責任、株主代表訴訟、再承認、損害確認が問題になります。注記漏れ、監査指摘、有価証券報告書・事業報告の訂正が問題になります。

上場会社では公正性と説明可能性が問われます

上場会社では、法的に有効な取引でも、投資家から経営陣や支配株主による私的利益取得と見られれば、企業価値、株価、市場からの信頼に影響します。東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード原則1-7は、関連当事者間の取引について、会社や株主共同の利益を害しないよう、取締役会が手続を定め、重要な取引を適切に監視することを求めています。

2026年4月には、金融庁・東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コード改訂案を公表し、パブリックコメント手続を実施しました。関連当事者取引に関する原則の構成や位置づけは、公開時点のコード本文、取引所資料、金融庁資料で確認する必要があります。

次の一覧は、上場会社で必要になりやすい統制をまとめたものです。各項目は投資家への説明可能性につながるため、会社法承認の有無だけでなく、取締役会がどのように予防・監視しているかを読み取れる状態にします。

年次申告と取引先照合

役員、主要株主、親会社、子会社、関連会社、近親者、支配会社の情報を年次申告で集め、取引先マスターと照合します。

網羅性

取引前審査と重要性基準

新規取引先登録、契約審査、稟議、発注、支払の段階で関連当事者の印を付け、承認・報告・開示の基準を確認します。

予防

独立社外取締役と監査役等の関与

支配株主、親会社、創業者、CEO、主要株主が関係する取引では、業務執行側だけで処理しない体制を整えます。

監督

開示・注記・報告との連携

有価証券報告書、事業報告、コーポレートガバナンス報告書、適時開示、会計注記の要否を早期に確認します。

説明

親子会社・M&Aでは構造的な利益相反を見ます

親会社と子会社は同じ企業グループでも法人格が別であり、子会社取締役は子会社に対して善管注意義務・忠実義務を負います。親会社の方針に従ったとしても、子会社に不利益があれば子会社取締役の責任が問題になる可能性があります。特に上場子会社や少数株主のいる子会社では、親会社利益と子会社少数株主利益が構造的に対立します。

次の表は、親子会社・グループ内取引とM&Aで注意すべき利益相反の焦点を整理したものです。取引相手がグループ内かどうかだけでなく、どの株主・債権者・投資家に不利益が移転するかを読み取ります。

取引利益相反の焦点公正性確保の手段
親会社への低価格販売子会社利益が親会社へ移転する点です。第三者価格、市場価格、子会社取締役会での独自検証を行います。
親会社からの高価格仕入れ子会社利益が圧迫される点です。代替仕入先、価格比較、継続取引の年次レビューを行います。
ブランド料・経営指導料対価の実態と算定根拠が不明確になりやすい点です。業務内容、成果、算定式、類似取引との比較を記録します。
キャッシュマネジメント子会社資金が親会社の資金繰りに使われる点です。金利、返済可能性、上限、担保、取締役会報告を確認します。
MBO経営陣が買収価格を低くしたいインセンティブを持つ点です。特別委員会、独立助言者、第三者算定、十分な開示を使います。
支配株主による買収支配株主が会社運営に影響力を持ち、少数株主が交渉上不利になる点です。対象会社側の独立性、少数株主の価格公正性、情報開示を重視します。

公正なM&Aのための措置

MBO、支配株主による買収、親会社による上場子会社の完全子会社化、役員が買収者側に参加する取引では、買収者側と一般株主側の利益が対立します。経営陣は内部情報を持ち、買収後の地位や経済的利益を得る可能性があるため、交渉過程の公正性が強く問われます。

次の一覧は、公正なM&Aで用いられる代表的な措置です。どれか一つを形式的に置くだけでなく、独立性、情報アクセス、交渉関与、開示、取締役会による尊重の仕組みまで読み取れることが重要です。

Committee

特別委員会

利害関係のない独立者が、取引条件、手続、価格公正性、少数株主保護を検討します。

Adviser

独立した専門家

外部法律顧問、ファイナンシャル・アドバイザー、第三者算定、フェアネス・オピニオンを活用します。

Process

少数株主保護

マーケット・チェック、マジョリティ・オブ・マイノリティ、利害関係者の不参加、充実した開示を検討します。

Section 06

利益相反取引を管理する社内規程・チェックリスト・専門家連携

中小企業、同族会社、スタートアップ、上場準備で使える実務運用に落とし込みます。

中小企業・同族会社・スタートアップの論点

中小企業・同族会社では、株主、取締役、代表者、親族、取引先、資金提供者が重なりやすく、会社と個人の財布が混同されやすい傾向があります。社長への役員貸付金、会社資金の私的利用、社長個人借入の会社保証、会社不動産の低額賃貸、資産管理会社への手数料、親族会社への外注費、株主総会議事録の未作成が問題になりやすいです。

スタートアップでは、創業者、投資家、役員、アドバイザー、関連会社、業務委託先が密接に関係します。創業者への貸付・立替金、創業者保有会社への外注、知財譲渡・ライセンス、創業者所有不動産の会社利用、投資家関係会社との取引、役員兼業、会社機会の流用、アドバイザー報酬、ストックオプションとの関係が、資金調達、IPO、M&Aで確認されます。

次の表は、規程とチェックリストに入れるべき項目をまとめたものです。左列で管理対象を広く拾い、右列で承認、価格、記録、取引後報告までつなげて読み取ると、実務に落とし込みやすくなります。

項目規程・チェックリストで定める内容
対象者取締役、監査役、執行役、執行役員、主要株主、親会社、子会社、関連会社、近親者、支配会社、顧問、退任役員を含めます。
対象取引売買、貸付、保証、担保提供、債務引受、債権放棄、業務委託、賃貸借、知財取引、M&Aを含めます。
申告義務事前申告、年次申告、変更時の随時報告、近親者・支配会社・兼業の情報を含めます。
審査手続取引前審査、重要性基準、承認機関、利害関係者の審議・議決不参加、価格算定資料の取得基準を定めます。
契約・証跡契約書作成、議事録、稟議、見積り、鑑定、算定書、取引実績表、記録保存期間を定めます。
連携開示、会計、税務、監査役、内部監査、外部専門家との連携、違反時の是正措置、教育研修を定めます。

取引前チェックリスト

利益相反取引のチェックは、金額の大きさだけでなく、取引相手、利害関係、会社が負うリスク、価格根拠、承認機関、開示・税務への影響を並べて確認します。次の表は、承認前に最低限確認したい質問です。はい・いいえの結果だけで終わらせず、備考欄に資料名と担当部門を残すことが重要です。

No.確認項目主な証跡
1取引相手が役員、主要株主、親会社、子会社、関連会社、親族会社に該当するかを確認します。取引先確認票、役員申告書、登記事項証明書です。
2会社法356条1項2号または3号、競業取引、関連当事者取引の該当性を検討します。法務メモ、付議判断表、競業確認メモです。
3承認機関、利害関係取締役、重要な事実の開示、審議・採決不参加の設計を確認します。定款、登記簿、開示書、議事録案です。
4取引の必要性、代替取引先、価格・利率・保証料・手数料の公正性を確認します。稟議書、比較表、見積り、算定書、鑑定書です。
5税務上の時価、認定課税、関連当事者注記、事業報告、有価証券報告書、CG報告書への影響を確認します。税務メモ、開示判断メモ、注記案、開示チェック表です。
6契約締結後の実績、支払、回収、残高、条件変更、再承認、年次レビューの担当を決めます。契約書、実績表、年間取締役会予定、内部監査計画です。

税務・会計・監査の視点

会社法上の承認があっても、税務上の時価、役員給与、寄附金、認定利息、関連当事者注記、偶発債務、会計監査上の評価は別に確認します。会社が取締役に低額で資産を譲渡する場合、高額で資産を購入する場合、無利息または低利の役員貸付金が滞留する場合は、税理士、公認会計士、弁護士が連携して確認します。

次の一覧は、監査対応で必要になりやすい資料です。監査法人は、関連当事者取引の網羅性、実在性、条件の妥当性、開示の適切性を確認するため、契約や議事録だけでなく、取引先マスターや残高明細まで読み取ります。

Accounting

会計・開示資料

関連当事者取引一覧、注記案、事業報告、有価証券報告書との整合資料、保証・担保・偶発債務一覧を準備します。

Tax

税務資料

時価資料、認定利息、役員給与、寄附金、譲渡損益、源泉税、消費税、組織再編税制の検討資料を準備します。

Audit

監査資料

役員・主要株主の申告書、取引先マスター照合、契約書、議事録、価格算定資料、債権債務残高明細を準備します。

専門家・部門の役割分担

利益相反取引は、法律だけで完結しません。企業法務、会計、税務、監査、ガバナンス、M&A、内部統制が交差するため、どの専門家・部門がどの資料を確認するかを先に決めると、承認と開示の漏れを抑えやすくなります。

次の一覧は、主な部門・専門家の役割をまとめたものです。案件の種類に応じて、どの役割を早めに巻き込むべきかを読み取ってください。

法務・商事法務

該当性判断、契約審査、承認手続、議事録、社内規程、株主総会・取締役会運営を担当します。

会社法

経理・公認会計士

関連当事者取引、会計処理、監査、内部統制、算定支援、注記案の整合を確認します。

開示

税務・税理士

時価、認定利息、役員給与、寄附金、組織再編税制、消費税、源泉税を確認します。

時価

監査役・内部監査・社外取締役

取締役の職務執行、公正性、少数株主保護、承認漏れ、取引実績、支払・回収状況を監督します。

監督
M

M&A・FA・外部専門家

MBO、支配株主取引、特別委員会、企業価値評価、価格交渉、フェアネス・オピニオンを支援します。

M&A

相談前に準備するとよい資料

外部専門家に相談する際は、事実関係と証跡がまとまっているほど検討が早くなります。次の表は、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、M&Aアドバイザーに共有すると有用な資料です。資料の有無から、社内で不足している記録も読み取れます。

分類準備する資料
会社情報定款、登記事項証明書、役員・株主構成、取締役会規程、稟議規程、関連当事者取引管理規程です。
相手方情報取引相手の登記事項証明書、役員との関係、株式保有、親族関係、支配関係を示す資料です。
取引資料契約書案または既存契約書、金額、期間、支払条件、見積書、鑑定書、算定書、市場価格資料です。
承認・実績取締役会議事録、株主総会議事録、支払実績、債権債務残高、保証・担保資料です。
会計・税務・開示会計処理、税務処理、関連当事者注記、有価証券報告書、事業報告の該当箇所です。
今後の予定契約更新、資金調達、M&A、IPO、問題発覚の経緯、今後予定される取引です。
Section 07

利益相反取引の実務上の結論

禁止するだけでなく、公正な判断と説明可能な記録を残すことが中心です。

利益相反取引の管理で最も重要なのは、すべての取引を止めることではありません。会社の利益を害しないように、適切な手続で、十分な情報に基づき、独立性ある判断を行い、その過程を説明可能な形で残すことです。

次の強調欄は、このページ全体の結論を一つにまとめたものです。会社法承認、関連当事者開示、税務、会計、M&A、内部統制を別々に処理せず、一つの管理サイクルとして読むことが重要です。

利益相反取引は企業統治の実力が表れやすい領域です

取締役会、法務、経理、税務、監査、内部統制、開示が連携していれば、会社と役員、親会社と子会社、支配株主と少数株主、経営陣と投資家の境界を説明しやすくなります。

次の一覧は、実務対応を五つの視点に整理したものです。左から順に確認すると、該当性の拾い漏れ、承認機関の誤り、利害関係者の関与、価格根拠の不足、会計・税務・開示の漏れを減らせます。

01

該当性を広めに拾います

会社法上の該当性が微妙でも、役員、主要株主、親会社、関係会社、親族会社が関与する取引は関連当事者取引として把握します。

02

承認機関を間違えません

取締役会設置会社では取締役会、非設置会社では株主総会を中心に確認し、社長決裁や稟議だけで終わらせません。

03

利害関係者を外します

利害関係取締役が審議・議決を主導すると、公正性が疑われるため、説明と採決を分けて記録します。

04

価格と条件を客観化します

第三者見積り、鑑定、算定書、市場価格、過去取引、独立専門家意見により、なぜその条件なのかを説明します。

05

法務・会計・税務・開示を連動させます

会社法承認、関連当事者注記、事業報告、有価証券報告書、税務処理、内部統制、M&A確認を一体で管理します。

中小企業やスタートアップでは、最低限、取引基本契約書または金銭消費貸借契約書、利益相反取引承認の株主総会議事録または取締役会議事録、価格・利率・条件の根拠資料、返済予定表または取引実績表、関連当事者一覧、年次レビュー記録を整備します。事業承継、相続、資金調達、IPO、M&Aの前には、役員貸付金、役員借入金、親族会社取引、会社不動産利用、保証、担保提供、関連当事者取引を棚卸しします。

Section 08

利益相反取引のFAQ

よくある疑問を、一般的な制度説明として整理します。

Q1. 取締役が会社から少額の備品を買うだけでも利益相反取引ですか。

一般的には、会社と取締役本人との取引であれば、少額でも利益相反取引の検討対象になるとされています。ただし、金額、反復性、価格の公正性、会社規程、全従業員と同一条件かどうかによってリスク評価は変わります。具体的な承認要否は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 会社に有利な取引でも承認は必要ですか。

一般的には、会社法上の利益相反取引は、結果的に会社に有利かどうかだけで決まるものではなく、取締役と会社の利害が対立し得る類型かどうかが問題になるとされています。ただし、会社に明らかに有利な条件であることは、承認時の説明や責任リスク評価で重要な事情になります。

Q3. 取締役会で社長が承認しただけで足りますか。

一般的には、取締役会設置会社で会社法365条の承認が必要な取引では、代表取締役個人の承認や稟議だけでは足りず、取締役会決議が必要になるとされています。ただし、会社の機関設計や取引類型によって確認事項が変わるため、定款、登記、議事録、取引資料を整理して確認する必要があります。

Q4. 利害関係取締役は取締役会に出席できますか。

一般的には、事実説明のために一時的に出席することはあり得ますが、審議・採決には参加しない運用が基本とされています。議事録には、特別利害関係を有すること、重要な事実を開示したこと、議決に参加しなかったことを記録する必要があります。

Q5. 事後承認で治癒できますか。

一般的には、事後的な承認や追認が一定の意味を持つ場合はあり得るとされています。ただし、会社法が予定する中心的な手続は、取引前に重要な事実を開示して承認を受けることです。違反が見つかった場合は、事後承認だけで済ませず、損害、条件の公正性、継続可否、開示訂正、役員責任、再発防止を検討する必要があります。

Q6. 代表取締役が自分の別会社と契約する場合、署名者はどう整理しますか。

一般的には、同一人物が双方を代表して署名する場合、自己契約・双方代理、会社法上の利益相反承認、代表権行使の適正性が問題になるとされています。承認決議を整備し、可能であれば利害関係のない代表者、取締役、代理人が契約締結を行うなど、契約締結権限を慎重に設計します。

Q7. 親会社と子会社の取引も利益相反取引ですか。

一般的には、親子会社間取引が会社法356条の利益相反取引に当然に該当するとは限りません。ただし、子会社取締役が親会社役員を兼ねる場合、子会社と親会社の利益が対立する場合、上場子会社に少数株主がいる場合は、利益相反、関連当事者取引、少数株主保護の観点から慎重な手続が必要になります。

Q8. 関連当事者取引の注記をすれば会社法承認は不要になりますか。

一般的には、会計上の注記と会社法上の承認は目的も要件も異なるため、注記をしたことだけで会社法上の承認が不要になるわけではありません。会社法上の承認が必要な取引では、注記の有無にかかわらず、適切な承認手続を検討する必要があります。

Q9. 会社法承認を受ければ、会計・税務上も問題は解消しますか。

一般的には、会社法上の承認は、税務上の時価、役員給与、寄附金、認定利息、関連当事者注記、偶発債務、会計監査上の評価を自動的に解決するものではありません。会計・税務の処理は、別途専門家と確認する必要があります。

Q10. M&Aで利益相反取引が問題になるのはなぜですか。

一般的には、MBOや支配株主による買収では、買収者側が会社情報や経営権に近い立場にあり、一般株主より有利な情報や交渉力を持つことがあるとされています。買収価格を低くしたい買収者と高く売りたい一般株主の利益が対立し得るため、特別委員会、独立専門家、十分な開示などによる公正手続が重要になります。

Q11. 内部監査では何を確認しますか。

一般的には、関連当事者リストの網羅性、新規取引先登録時のチェック、契約審査での印付け、承認機関の適正性、議事録記載、利害関係者の議決不参加、取引実績と承認範囲の整合、支払・回収状況、開示・注記との整合を確認します。会社の規程や取引規模により重点項目は変わります。

Q12. 利益相反取引が発覚したら最初に何を確認しますか。

一般的には、取引を止めるべきか、継続してよいかを判断するため、事実関係の保全と整理を行います。契約書、議事録、稟議、支払記録、メール、見積り、価格資料、取締役との関係を確認し、法務、経理、監査役、外部専門家と連携して、承認漏れ、損害、開示、税務、役員責任を評価します。

Guide

利益相反取引で次に確認したいこと

目的に近い詳しい解説へ進めるよう、関連するテーマを整理しました。

知りたい内容を選ぶと、手続、費用、地域、具体的な論点などの詳しい解説に進めます。

このテーマから次に確認されやすい詳しい解説を8件表示しています。

Reference

参考文献・公式資料

法令、公的機関、会計基準、取引所資料、M&A指針を中心に整理しています。

法令

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • e-Gov法令検索「会社法施行規則」
  • e-Gov法令検索「会社計算規則」
  • e-Gov法令検索「民法」

会計基準・開示

  • 企業会計基準委員会「関連当事者の開示に関する会計基準」企業会計基準第11号
  • 企業会計基準委員会「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」企業会計基準適用指針第13号

コーポレートガバナンス・取引所資料

  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」
  • 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」
  • 東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードの改訂について」
  • 金融庁「コーポレートガバナンス・コード改訂案の公表について」

M&A・グループガバナンス

  • 経済産業省「公正なM&Aの在り方に関する指針」
  • 経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」

裁判実務・紛争対応

  • 裁判所「取締役の任務懈怠責任に関する訴訟資料例」