2σ Guide

関連当事者取引一覧の
作成方法

関連当事者取引一覧は、開示資料だけでなく、利益相反、監査、税務、IPO審査、内部統制をつなぐ管理台帳です。作成手順、判定軸、証跡化の実務を横断的に整理します。

10段階 作成手順の中核
10%以上 売上等の重要性目安
1,000万円超 個人グループの目安
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関連当事者取引一覧の 作成方法

関連当事者取引一覧は、開示資料だけでなく、利益相反、監査、税務、IPO審査、内部統制をつなぐ管理台帳です。

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関連当事者取引一覧の 作成方法
関連当事者取引一覧は、開示資料だけでなく、利益相反、監査、税務、IPO審査、内部統制をつなぐ管理台帳です。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 関連当事者取引一覧の 作成方法
  • 関連当事者取引一覧は、開示資料だけでなく、利益相反、監査、税務、IPO審査、内部統制をつなぐ管理台帳です。

POINT 1

  • 関連当事者取引一覧の作成方法の全体像
  • 1. 目的を定義する:開示、承認、監査、税務、IPOなど、一覧の用途を明確にします。
  • 2. 対象範囲を決める:対象会社、対象期間、会計基準、通貨、連結消去、重要性基準を決めます。
  • 3. 関連当事者マスターを作る:人・法人・企業年金・ファンドなどを、関係根拠と証跡付きで整理します。
  • 4. 取引データを集める:会計、契約、銀行、保証、担保、取締役 会資料を横断して候補を集めます。
  • 5. 目的別に判定する:開示、承認、監査、税務、ガバナンスを別々に判定し、根拠を残します。

POINT 2

  • 関連当事者取引一覧とは何か
  • 主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 1.1 用語の整理
  • 関連当事者とは、会社との間で支配、被支配、共通支配、重要な影響力、役員・主要株主・近親者等の関係を有する者をいいます。
  • 関連当事者との取引とは、対価の有無にかかわらず、資源・債務の移転または役務提供を伴う会社と関連当事者との取引をいいます。

POINT 3

  • 関連当事者取引一覧が必要な理由
  • 範囲検討の不足
  • 実質的な主要株主、役員に準ずる者、退任後も影響力を持つ創業者、第三者経由取引を拾えない状態です。
  • 識別手続の不備
  • 役員質問票だけに依存し、取引先マスター、銀行明細、契約管理、取締役会資料との照合が不足する状態です。

POINT 4

  • 関連当事者取引一覧の設計事項
  • 主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 3.1 目的を明確にする
  • 3.2 対象会社を決める
  • 3.3 対象期間を決める

POINT 5

  • 関連当事者マスターの作成方法
  • 主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 4.1 一覧作成の第一歩は「取引」ではなく「人・法人」の洗い出し
  • 4.2 関連当事者マスターの基本列
  • 4.3 情報源別の洗い出し方法

POINT 6

  • 関連当事者取引データの収集方法
  • 主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 5.1 会計データだけでは足りない
  • 5.2 取引データ収集の実務手順
  • 関連当事者取引の抽出は、総勘定元帳、補助元帳、債権債務残高、取引先マスターから始めるのが一般的です。

POINT 7

  • 関連当事者取引候補の判定方法
  • 主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 6.1 関連当事者該当性と取引該当性を分ける
  • 6.2 取引類型ごとの判定
  • 6.3 「一般取引と同様であることが明白」の扱い

POINT 8

  • 関連当事者取引一覧の重要性判定
  • 主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 7.1 会計上の重要性は、法人グループと個人グループで異なる
  • 7.2 実務用の重要性判定表
  • 7.3 継続性の観点

まとめ

  • 関連当事者取引一覧の 作成方法
  • 関連当事者取引一覧の作成方法の全体像:主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 関連当事者取引一覧とは何か:主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 関連当事者取引一覧が必要な理由:主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

関連当事者取引一覧の作成方法の全体像

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

次の判断の流れは、関連当事者取引一覧を作る十段階を表します。順番に意味があり、先に相手方を洗い出し、その後に取引を照合し、最後に目的別の判定へ進むことが重要です。読者は、期末に表を埋める作業ではなく、期中から更新する管理手順として読み取ってください。

関連当事者取引一覧を作る十段階

目的を定義する

開示、承認、監査、税務、IPOなど、一覧の用途を明確にします。

対象範囲を決める

対象会社、対象期間、会計基準、通貨、連結消去、重要性基準を決めます。

関連当事者マスターを作る

人・法人・企業年金・ファンドなどを、関係根拠と証跡付きで整理します。

取引データを集める

会計、契約、銀行、保証、担保、取締役会資料を横断して候補を集めます。

目的別に判定する

開示、承認、監査、税務、ガバナンスを別々に判定し、根拠を残します。

「関連当事者取引一覧」は、単なる経理部門の表ではありません。親会社、子会社、兄弟会社、関連会社、主要株主、役員、近親者、役員等が支配する会社、企業年金などとの取引を、開示・承認・監査・税務・ガバナンスの各目的に耐える形で識別し、証跡化し、判断過程を残す管理台帳です。

関連当事者との取引は、対等な独立第三者間取引とは限らず、会社の財政状態・経営成績に影響を及ぼし得る。そのため、日本基準では企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第13号が基本的な会計上の枠組みを示しています。会社法実務では利益相反取引規制、計算書類注記、取締役会承認、監査役監査が問題となり、上場会社ではコーポレートガバナンス・コード原則1-7に基づく事前手続・監視・開示も重要となります。さらに、有価証券報告書レビューや証券取引等監視委員会の開示検査事例からは、関連当事者の範囲の検討不足、識別手続の不備、重要性判定の誤り、取締役会承認証跡の欠落が典型的なリスクとして明らかになっています。

したがって、関連当事者取引一覧の作成方法の中核は、次の十段階に整理できます。

  1. 一覧の目的を定義する。
  2. 対象会社・対象期間・会計基準を決める。
  3. 関連当事者マスターを作る。
  4. 取引データを網羅的に収集する。
  5. 関連当事者との取引を抽出・照合する。
  6. 取引の性質、金額、残高、条件、証跡を整理します。
  7. 会計上の重要性、会社法上の利益相反、ガバナンス上の重要性、税務上の重要性を別々に判定する。
  8. 開示対象、承認対象、監査確認対象、税務検討対象を区分する。
  9. 経理、法務、内部監査、取締役会事務局、監査役等、会計監査人、税理士・弁護士でレビューする。
  10. 毎期更新し、発見事項を内部統制に反映する。

このページでは、この十段階を、一般の読者にも理解できるように用語定義から説明しつつ、専門家が実務で利用できる表形式、判断の流れ、内部統制設計、チェックリストまで展開します。

Section 01

関連当事者取引一覧とは何か

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

1.1 用語の整理

まず、このページで用いる言葉を定義する。

関連当事者とは、会社との間で支配、被支配、共通支配、重要な影響力、役員・主要株主・近親者等の関係を有する者をいいます。日本基準では、親会社、子会社、同一の親会社をもつ会社、その他の関係会社、その親会社・子会社、関連会社およびその子会社、主要株主およびその近親者、役員およびその近親者、親会社の役員およびその近親者、重要な子会社の役員およびその近親者、これらの者が議決権の過半数を所有する会社およびその子会社、一定の企業年金などが列挙される。企業会計基準第11号は、主要株主を「保有態様を勘案した上で、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主」と定義し、近親者を二親等以内の親族としている。

関連当事者との取引とは、対価の有無にかかわらず、資源・債務の移転または役務提供を伴う会社と関連当事者との取引をいいます。直接取引だけでなく、関連当事者が第三者のために会社との間で行う取引や、会社と第三者との間の取引で関連当事者が重要な影響を及ぼしているものも含まれ得る。企業会計基準第11号は、無償取引や低廉取引、形式的・名目的に第三者を経由した取引も、重要性判断や開示対象の検討に含める考え方を示しています。

関連当事者取引一覧とは、関連当事者および関連当事者との取引を、取引類型、金額、残高、取引条件、証跡、重要性判定、承認状況、開示要否、税務検討要否などの観点から一覧化した管理資料です。会計基準上の正式名称ではないが、実務上は「関連当事者取引リスト」「関連当事者取引台帳」「関連当事者一覧」「RPTリスト」「Related Party Transaction List」などと呼ばれます。

ここで重要なのは、関連当事者取引一覧を「注記作成のためだけの表」と狭く理解しないことです。実務上は、少なくとも次の四つの機能を持ちます。

次の表は、関連当事者取引一覧とは何かで確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

機能目的主な利用者
開示機能計算書類、連結財務諸表、有価証券報告書、IPO申請書類等の基礎資料にする経理、開示担当、公認会計士、監査法人
承認・監督機能会社法上の利益相反取引、取締役会・株主総会承認、上場会社の関連当事者間取引手続の対象を把握する法務、取締役会事務局、監査役、社外取締役、弁護士
内部統制機能取引の網羅性、適正条件、証跡、権限、例外処理を管理する内部統制、内部監査、コンプライアンス、リスク管理
税務・価格検証機能移転価格、寄附金、役員給与、同族会社取引、低廉譲渡等の税務リスクを把握する税務、税理士、国際税務担当、経営企画

したがって、「関連当事者取引一覧の作成方法」を正しく設計するには、会計だけでなく、会社法、上場規則、税務、内部統制、M&A・IPO実務を横断する必要があります。

Section 02

関連当事者取引一覧が必要な理由

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

次のリスク一覧は、開示検査やレビューで問題になりやすい観点をまとめたものです。項目ごとに弱点の所在が異なるため、読者は自社の台帳で同じ弱点を説明できるかを確認してください。

範囲検討の不足

実質的な主要株主、役員に準ずる者、退任後も影響力を持つ創業者、第三者経由取引を拾えない状態です。

識別手続の不備

役員質問票だけに依存し、取引先マスター、銀行明細、契約管理、取締役会資料との照合が不足する状態です。

重要性判定の誤り

期末残高だけで判断し、発生総額、質的重要性、継続性、個人グループの基準を見落とす状態です。

承認証跡の欠落

取締役会承認、利害関係取締役の扱い、事後報告、条件の公正性資料が後から確認できない状態です。

2.1 財務諸表利用者のための透明性

関連当事者との取引は、独立第三者間の競争的な条件で行われるとは限りません。役員や主要株主が関与する取引では、価格、支払条件、保証、担保、債権回収、資産売買、役務提供の条件が通常の市場条件と異なる可能性があります。企業会計基準第11号は、関連当事者の存在や取引が会社の財政状態・経営成績に影響を及ぼすことがあり、財務諸表利用者がその影響を把握できるよう適切な情報提供が必要であるという考え方を採っています。

関連当事者取引一覧は、この情報提供の前工程です。開示注記は最終成果物にすぎず、その裏側には、関連当事者を特定した根拠、取引を抽出した方法、金額・残高を集計した方法、取引条件を確認した資料、重要性を判定したメモ、非開示とした理由、承認の有無といった一連の判断過程が必要になります。

2.2 利益相反を予防するガバナンス

関連当事者取引は、必ず違法・不適切というわけではありません。親子会社間の経営指導料、グループ内資金貸借、親会社保証、役員所有会社との業務委託、創業者保有不動産の賃借などは、合理的な理由があれば通常の企業活動として行われることがあります。

しかし、これらの取引は、会社の利益と役員・主要株主・支配株主等の利益が衝突しやすい。会社法上は、取締役が自己または第三者のために会社と取引する場合、会社が取締役の債務を保証する場合など、一定の競業・利益相反取引について、重要な事実の開示と承認が求められる。取締役会設置会社では取締役会承認が中心となります。

上場会社については、コーポレートガバナンス・コード原則1-7が、役員や主要株主等との関連当事者間取引について、会社や株主共同の利益を害しないよう、取締役会があらかじめ取引の重要性や性質に応じた適切な手続を定め、その枠組みを開示し、手続に基づく監視・承認を行うべきですと定めている。

つまり、関連当事者取引一覧は、過去の開示資料であると同時に、将来の利益相反を未然に管理するガバナンス・ツールです。

2.3 開示検査・有価証券報告書レビューで問題になりやすい

証券取引等監視委員会の開示検査事例集では、関連当事者取引に係る注記の不記載が取り上げられている。たとえば、実質的な主要株主・役員に準ずる者が議決権の過半数を所有する複数会社との取引が売上の過半を占めていたにもかかわらず、必要な調査を行わず注記しなかった事例、取締役への多額の送金を資金貸借取引として注記しなかった事例、元代表取締役が重要な影響力を有する法人との取引を注記しなかった事例が示されている。

また、金融庁の有価証券報告書レビューでは、関連当事者の範囲に関する検討結果、関連当事者との取引を識別するための内部統制と実施結果、開示対象を決定するための重要性判定過程・結果が確認対象とされ、重要性基準を超える取引の未注記、一般取引と同様であることが明白でない取引の未注記、役員等が代表者を務める会社との取引を調査票で十分に拾えていない事例、利益相反取引の取締役会承認漏れ・承認証跡なしの事例が指摘されている。

この点は実務的に極めて重要です。監査法人や当局が確認するのは、単なる表の有無ではありません。関連当事者をどう洗い出したか、取引をどう抽出したか、なぜ開示対象外と判断したか、取締役会承認の証跡があるか、というプロセスの信頼性です。

Section 03

関連当事者取引一覧の設計事項

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

3.1 目的を明確にする

関連当事者取引一覧は、目的によって粒度が変わる。作成前に、少なくとも次の目的を区別する。

次の表は、関連当事者取引一覧の設計事項で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

目的必要な粒度注意点
会社計算規則に基づく計算書類注記事業年度、単体、重要な取引中心会計監査人設置会社か否か、個別注記表の様式を確認する
金商法開示・有価証券報告書連結・単体、注記、開示レビュー対応監査法人との事前合意、重要性判定メモが重要
IPO準備直近期だけでなく過年度・将来解消予定も含む証券会社・監査法人・取引所審査で厳しく確認される
取締役会承認・利益相反管理金額が小さくても利益相反性があるものを含む会計上の重要性と会社法上の承認要否を混同しない
上場会社のCGコード対応手続設計、独立社外取締役・監査役等の関与手続の枠組み開示と実際の監視が必要
M&A・組織再編・事業承継価格条件、依存取引、解消可能性、利益移転デューデリジェンスで取引実態と契約書を確認する
税務・移転価格価格算定、機能・リスク、国外関連者との取引会計上の関連当事者と税務上の国外関連者は範囲が異なる

一つの表で全目的を兼ねることは可能ですが、列設計を誤ると、会計上は十分でも法務上は不十分、または税務上は不十分という状態になります。実務では、共通マスター目的別判定欄を分けるのが望ましいです。

3.2 対象会社を決める

次に、一覧の対象会社を決める。単体財務諸表のための一覧か、連結財務諸表のための一覧かによって、対象となる「会社」の範囲は異なる。企業会計基準第11号では、連結財務諸表上は連結会社、個別財務諸表上は財務諸表作成会社を基準にする。連結財務諸表において相殺消去された取引は、開示対象外とされる。ただし、親会社情報や重要な関連会社の存在に関する開示は別途問題となります。

具体的には、次を決める。

次の表は、関連当事者取引一覧の設計事項で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

項目決定事項
対象会社提出会社単体、連結会社全体、国内子会社、海外子会社、持分法適用会社をどこまで含めるか
対象期間事業年度、四半期、IPO審査対象期間、M&A調査対象期間
会計基準日本基準、IFRS、米国基準など
通貨円換算方法、外貨建取引の集計方法
連結消去連結内部取引、連結外関連会社取引、取得・売却期間中の扱い
重要性基準ASBJ適用指針、会社独自基準、監査法人との合意基準

IFRS適用会社では、IAS 24「Related Party Disclosures」も確認すべきです。IAS 24は、関連当事者関係の性質、取引、残高、コミットメント等の開示を要求し、経営幹部報酬の開示も含む。

3.3 対象期間を決める

関連当事者に該当した期間だけを対象にする点も重要です。企業会計基準適用指針第13号は、連結会計年度または事業年度の途中で関連当事者に該当することとなった場合、または該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引が開示対象になると説明している。

したがって、一覧には「関係開始日」「関係終了日」「期中該当期間」を列として持たせるべきです。たとえば、6月30日に取締役に就任した者との取引について、4月から6月までの取引と7月以降の取引を同じ扱いにしてよいとは限りません。逆に、期末時点では退任していても、期中に関連当事者であった期間中の取引は検討対象になり得る。

Section 04

関連当事者マスターの作成方法

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

4.1 一覧作成の第一歩は「取引」ではなく「人・法人」の洗い出し

関連当事者取引一覧を作る際、多くの会社は、総勘定元帳や取引先マスターからいきなり取引を探し始める。しかし、これは危険です。取引先名がわからなければ、会計データから関連当事者取引を抽出できないからです。

正しい順序は次の通りです。

  1. 関連当事者候補を洗い出す。
  2. 関連当事者マスターを作る。
  3. 取引先マスター、契約管理、支払先、入金先、銀行取引、役員経費、固定資産取引等と照合する。
  4. 取引候補を抽出する。
  5. 重要性・開示・承認を判定する。

4.2 関連当事者マスターの基本列

関連当事者マスターは、少なくとも次の列を持つべきです。

次の表は、関連当事者マスターの作成方法で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

列名内容実務上のポイント
関連当事者IDRPT-P-001などの一意番号人・法人・ファンド・年金等を一元管理する
名称・氏名法人名、個人名旧社名、通称、英語名、略称も別欄で管理する
区分親会社、子会社、兄弟会社、関連会社、主要株主、役員、近親者等会計基準上の区分と会社独自区分を分ける
法人・個人法人、個人、組合、信託、企業年金等重要性判定で法人グループ・個人グループの区分が必要になる
関係根拠持株比率、役員兼任、支配、重要な影響力、近親者関係等「なぜ関連当事者か」を明文化する
議決権所有割合会社が保有する割合、相手方が会社を保有する割合自己名義だけでなく実質保有・他人名義も確認する
役員等との関係役員本人、近親者、役員が支配する会社、役員が代表者の会社等役員質問票と連動させる
関係開始日就任日、株式取得日、支配獲得日等期中該当期間の判定に必要
関係終了日退任日、株式売却日、支配喪失日等退任後も実質影響力が残る場合がある
証跡株主名簿、登記事項証明書、役員質問票、組織図、契約書等監査対応で必須
データ提供部門法務、経理、人事、経営企画、子会社管理等責任部署を明確にする
確認日・確認者最終確認日、確認者年次更新・四半期更新の証跡にする
機密性個人情報・近親者情報・センシティブ情報の管理区分アクセス権限を限定する

4.3 情報源別の洗い出し方法

関連当事者候補は、複数の情報源から集める。単一の情報源では網羅性を担保できない。

次の表は、関連当事者マスターの作成方法で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

情報源取得できる情報注意点
株主名簿・大量保有報告・主要株主一覧主要株主、親会社、支配株主候補名義株主と実質保有者を区別する
グループ会社組織図親会社、子会社、兄弟会社、関連会社海外子会社、休眠会社、SPC、ファンドを漏らさない
役員一覧・人事情報取締役、監査役、執行役、執行役員、相談役、顧問「これらに準ずる者」の実質判断が必要
役員質問票近親者、役員等が支配する会社、兼職先、代表者就任先質問項目が不十分だと網羅性に欠ける
商業登記・法人番号公表サイト法人の代表者、所在地、商号変更役員が代表を務める会社との照合に使う
契約管理システム契約相手、契約金額、条件、更新日契約名義と実際の支払先が異なる場合に注意
会計システム売上、仕入、支払、入金、残高取引先コードの名寄せが重要
銀行取引明細資金貸借、役員への送金、保証料、立替金取引先マスターに載らない送金を拾う
取締役会・稟議・決裁資料承認対象取引、利益相反取引、例外条件会計データだけでは承認漏れを検出できない
税務資料国外関連者、移転価格、寄附金、役員給与会計上の関連当事者と税務上の関連者の差異に注意

4.4 役員質問票の設計

役員質問票は、関連当事者取引一覧の網羅性を左右する。単に「関連当事者との取引がありますか」と聞くのでは不十分です。多くの役員は、会計基準上の関連当事者の範囲を正確に理解していないからです。

質問票には、少なくとも次の質問を含める。

  1. あなたが役員、代表者、業務執行者、顧問、相談役、実質的支配者である会社・団体はありますか。
  2. あなたまたは近親者が議決権の過半数を所有する会社はありますか。
  3. あなたの近親者が役員、主要株主、実質的支配者である会社はありますか。
  4. あなたが会社との取引に関与した、または取引条件の決定に影響を与えた第三者はありますか。
  5. 会社からあなたまたは近親者への貸付、立替、債務保証、担保提供、資産譲渡、役務提供、賃貸借、業務委託はありますか。
  6. 会社があなたまたは近親者から不動産、知的財産、設備、資金、保証、役務を受けている取引はありますか。
  7. 会社とあなたの兼職先・代表先・支配会社との取引はありますか。
  8. 退任後も会社の経営判断に強い影響を及ぼしている元役員、創業者、顧問、相談役に関する取引はありますか。
  9. 第三者名義であっても、実質的に関連当事者が利益を受ける取引はありますか。
  10. 前年度から変更があった事項はありますか。

企業会計基準適用指針第13号は、役員に準ずる者として、相談役、顧問、執行役員その他類似の者で実質的に会社経営に強い影響を及ぼす者を例示し、創業者等で役員を退任した者についても実質的に判定する考え方を示しています。 このため、質問票は現役取締役だけでなく、必要に応じて顧問・相談役・執行役員・退任直後の役員にも拡張します。

Section 05

関連当事者取引データの収集方法

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

5.1 会計データだけでは足りない

関連当事者取引の抽出は、総勘定元帳、補助元帳、債権債務残高、取引先マスターから始めるのが一般的です。しかし、会計データだけでは、次の取引を見落としやすい。

  • 無償取引
  • 低廉取引
  • 債務保証
  • 担保提供・担保受入れ
  • 役員への立替金・仮払金・未収入金
  • 役員所有会社を介した実質取引
  • 会社と第三者の取引だが関連当事者が重要な影響を及ぼす取引
  • 契約上は通常取引に見えるが、価格・支払条件が特殊な取引
  • 資本取引、株式発行、新株予約権行使、自己株式取引
  • 不動産賃貸、知的財産ライセンス、経営指導料、業務委託
  • グループ内キャッシュマネジメント、親子ローン、保証料

企業会計基準第11号は、無償取引や低廉な価格での取引について、独立第三者間取引であったと仮定した金額を見積もって重要性を判断するとしている。また、形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合も開示対象に含めるとしている。

5.2 取引データ収集の実務手順

取引データは、以下の順に集めると効率的です。

手順1 ― 取引先マスターの名寄せ

取引先マスターには、同じ相手が複数コードで登録されていることがあります。商号変更、略称、英語名、旧社名、支店名、個人事業名、屋号、金融機関口座名義の違いが原因です。関連当事者マスターと照合する前に、名称の名寄せを行う。

実務上は、次の列を持たせる。

手順2 ― 総勘定元帳・補助元帳から候補を抽出

次の勘定科目は特に確認します。

次の表は、関連当事者取引データの収集方法で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

区分勘定科目例確認ポイント
売上・仕入売上高、売上原価、仕入高、外注費価格条件、継続性、売上依存度
販管費支払手数料、業務委託費、賃借料、顧問料、広告宣伝費役員関連会社、創業者関連会社との契約
営業外損益受取利息、支払利息、受取配当金、保証料グループ内貸借、保証取引
特別損益固定資産売却益・売却損、債務免除益、貸倒損失非反復取引、低廉譲渡、債権放棄
債権債務売掛金、買掛金、未収入金、未払金、貸付金、借入金期末残高、滞留、条件変更
固定資産土地、建物、設備、ソフトウェア、投資有価証券売買、リース、賃貸、評価額
資本取引資本金、資本剰余金、自己株式、新株予約権主要株主・役員との資本取引
仮勘定仮払金、仮受金、立替金、預り金役員・関連会社との一時的取引を拾う

手順3 ― 契約管理・稟議・取締役会資料と照合

会計データに表れた金額だけでは、取引条件や承認状況はわからない。契約書、注文書、見積書、稟議書、取締役会議事録、株主総会議事録、監査役会資料、価格算定資料、鑑定評価書等を照合する。

特に、次の資料は重要です。

  • 契約書および変更契約書
  • 発注書・請求書・納品書
  • 価格算定メモ
  • 見積比較表
  • 不動産鑑定評価書
  • 利率算定資料
  • 保証料算定資料
  • 稟議書・決裁書
  • 取締役会議事録
  • 利害関係取締役の議決不参加記録
  • 監査役・監査等委員の確認記録
  • 監査法人への提出資料

手順4 ― 非会計データを確認する

無償取引や保証取引は、総勘定元帳だけでは把握できないことがあります。次のデータを別途確認します。

次の表は、関連当事者取引データの収集方法で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

データ確認対象
保証管理台帳親会社保証、子会社保証、役員債務保証、金融機関保証
担保管理台帳不動産担保、有価証券担保、預金担保、債務に対応する担保
リース・賃貸借台帳役員所有不動産、関連会社設備、サブリース
知的財産台帳商標、特許、著作権、ノウハウ、ライセンス料
人事・福利厚生資料役員貸付、社宅、役員報酬との区分
銀行借入契約保証人、担保提供者、コベナンツ
グループ内資金管理資料キャッシュプーリング、親子ローン、貸付利率
M&A・組織再編資料株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割、DD資料
Section 06

関連当事者取引候補の判定方法

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

6.1 関連当事者該当性と取引該当性を分ける

関連当事者取引一覧の作成では、二つの判定を分ける必要がある。

第一は、相手方が関連当事者に該当するかという「関連当事者該当性」の判定です。第二は、その相手方とのやり取りが開示・承認・管理対象となる取引に該当するかという「取引該当性」の判定です。

たとえば、役員は関連当事者に該当するが、通常の役員報酬は関連当事者取引の開示対象外とされる。一方で、役員への貸付、役員所有不動産の賃借、役員が支配する会社への業務委託は取引該当性が問題になります。

6.2 取引類型ごとの判定

関連当事者取引一覧では、取引類型を細かく分類する。分類が粗いと、重要性判定や開示文言が不正確になります。

次の表は、関連当事者取引候補の判定方法で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

大分類具体例主な論点
商品・製品取引売上、仕入、原材料供給、外注加工価格、利益率、依存度、継続性
役務提供経営指導、業務委託、開発委託、販売支援対価の算定根拠、成果物、実体
賃貸借・リース不動産賃貸、設備リース、社宅市場賃料、更新条件、敷金保証金
資金貸借貸付、借入、立替、未収入金利率、返済期限、担保、滞留
債務保証親会社保証、役員債務保証、子会社保証保証料、被保証債務、期末残高
担保提供不動産担保、有価証券担保、預金担保対応債務、会社のリスク
資産売買土地、建物、設備、株式、知財時価、公正価値、鑑定、損益
資本取引増資、自己株式、新株予約権、株式譲渡発行条件、希薄化、支配権、開示
債権放棄・条件変更返済猶予、金利減免、債務免除損失、寄附金、利益移転
無償・低廉取引無償提供、低廉賃料、無利息貸付独立第三者間価格の見積り
第三者経由取引形式上は第三者だが実質相手が関連当事者実質判定、証跡、説明責任

6.3 「一般取引と同様であることが明白」の扱い

企業会計基準第11号は、一般競争入札による取引、預金利息、配当の受取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引を開示対象外としている。

しかし、この例外は慎重に使うべきです。金融庁の有価証券報告書レビューでは、一般の取引と同様であることが明白ではないものの注記されていない事例が指摘され、第三者との取引と同等な条件であっても、関連当事者との取引に関する開示を省略できない場合があると注意喚起されている。

実務上は、次の三段階で検討する。

  1. 取引の性質から当然に一般取引と同様といえるか。
  2. 価格・利率・支払条件・保証・担保・解約条件が第三者取引と同等であることを示す証拠があるか。
  3. それでも財務諸表利用者にとって関連当事者との関係を知る必要がないと説明できるか。

「第三者と同じ価格だから非開示」と短絡してはなりません。関連当事者との関係そのものに情報価値がある場合があります。

Section 07

関連当事者取引一覧の重要性判定

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

次の横棒グラフは、重要性判定で特に見落としやすい数値目安を比較したものです。棒の長さは絶対的な法的優先順位ではなく、確認すべき数値水準の相対感を示します。読者は、法人グループと個人グループを別々に読む必要があります。

売上等10%超
100%
総資産1%超
45%
個人1,000万円超
35%
最新の適用指針、会社の重要性基準、監査法人との合意に合わせて確認します。

7.1 会計上の重要性は、法人グループと個人グループで異なる

企業会計基準適用指針第13号は、関連当事者を大きく四つのグループに区分し、さらに法人グループと個人グループに分けて重要性を判断する枠組みを示しています。四つのグループとは、親会社および法人主要株主等、関連会社等、兄弟会社等、役員および個人主要株主等です。

法人グループでは、損益計算書項目、貸借対照表項目、債務保証、担保提供、事業譲渡等について、売上高等の10%、総資産の1%などの数値基準が示されている。個人グループでは、関連当事者との取引が連結損益計算書項目・連結貸借対照表項目等のいずれに係る取引であっても、1,000万円を超える取引はすべて開示対象とされる。

7.2 実務用の重要性判定表

以下は、実務で使える判定表の例です。実際には最新の適用指針、会計監査人との合意、会社の重要性基準に合わせて調整する。

次の表は、関連当事者取引一覧の重要性判定で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

判定対象法人グループの目安個人グループの目安注意点
売上高売上高の10%超1,000万円超類似・反復取引は合算
売上原価・販管費売上原価と販管費合計の10%超1,000万円超外注費、業務委託費、賃料に注意
営業外収益・費用営業外収益または営業外費用合計の10%超1,000万円超利息、保証料、為替等
特別利益・特別損失1,000万円超の損益に係る取引1,000万円超取引総額と損益が異なる場合に注意
貸借対照表残高総資産の1%超1,000万円超債権債務残高、貸付金、借入金
資金貸借発生額残高が1%以下でも発生総額が総資産の1%超なら検討1,000万円超期末残高だけで判断しない
債務保証期末保証債務等で判断1,000万円超保証をしているか受けているか明記
担保提供・受入れ対応する債務残高で判断1,000万円超担保資産の評価も確認
事業譲渡・譲受対象資産または負債の総額の大きい方が総資産の1%超1,000万円超一体取引として把握

重要性判定では、期末残高だけを見るのではなく、発生総額、損益、残高、条件変更、質的重要性を分けて見ます。たとえば、期末には返済されて残高がゼロでも、期中に多額の役員貸付があった場合、重要な関連当事者取引として検討しなければならない場合があります。

7.3 継続性の観点

企業会計基準適用指針第13号は、これまで開示対象となっていた取引等について、ある年度に数値基準を下回っても、それが一時的であると判断される場合には、直ちに開示対象から除外するなどの画一的取扱いをせず、開示の継続性が保たれるよう留意すべきとしています。

したがって、一覧には「前期開示対象」「当期数値基準」「継続開示要否」「除外理由」を持たせます。監査対応では、前期開示していた取引を当期非開示にした理由を確認されやすいためです。

7.4 会計上の重要性と法務上の重要性は違う

会計上の重要性基準を下回る取引でも、会社法上の利益相反取引として承認が必要な場合があります。たとえば、取締役所有会社との少額取引であっても、取引の性質上、取締役が自己または第三者のために会社と取引する構造に該当すれば、会社法上の承認要否を検討する必要があります。

逆に、会計上は開示対象となる取引でも、会社法上の利益相反取引には該当しない場合があります。たとえば、親会社との通常の商取引は関連当事者取引には該当し得るが、必ずしも取締役の利益相反取引ではありません。

このため、関連当事者取引一覧では、次の判定欄を分ける。

次の表は、関連当事者取引一覧の重要性判定で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

判定欄内容
会計上の関連当事者取引該当性ASBJ等に基づく開示対象候補か
会計上の重要性数値基準・質的重要性により注記対象か
会社法上の利益相反該当性会社法356条・365条等の承認対象か
CGコード上の監視対象上場会社の関連当事者間取引手続の対象か
税務検討対象移転価格、寄附金、役員給与、時価課税等の検討が必要か
監査重点対象監査法人・内部監査が追加証跡を確認すべきか
Section 08

会社法・ガバナンス上の確認

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

8.1 関連当事者取引と利益相反取引の違い

関連当事者取引と利益相反取引は重なりますが、同じではありません。

次の表は、会社法・ガバナンス上の確認で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

項目関連当事者取引会社法上の利益相反取引
主な目的財務諸表利用者への情報提供、透明性確保会社利益の保護、取締役の利益相反防止
主な根拠会計基準、会社計算規則、財務諸表等規則、連結財務諸表規則等会社法356条、365条等
主な対象親会社、子会社、兄弟会社、関連会社、主要株主、役員、近親者等主に取締役が自己または第三者のために会社と取引する場合等
金額基準会計上の重要性基準あり金額だけでなく取引構造で判断
実務成果物注記、関連当事者取引一覧、監査資料取締役会・株主総会承認、議事録、事後報告

会社法上の利益相反取引については、取締役会非設置会社では株主総会、取締役会設置会社では取締役会で、重要な事実を開示して承認を受けることが問題となります。取締役会設置会社では、取引後の重要な事実の報告も問題となります。

8.2 取締役会承認欄の設計

関連当事者取引一覧には、次の承認欄を設ける。

次の表は、会社法・ガバナンス上の確認で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

列名内容
利益相反該当性該当、非該当、要確認
利害関係取締役氏名、関係、議決参加の有無
承認機関取締役会、株主総会、代表取締役決裁、その他
承認日承認決議日
議事録番号議事録・決議書の参照番号
開示された重要事実取引相手、内容、金額、条件、会社への影響
事後報告日取引後報告の実施日
承認証跡議事録、稟議、資料、弁護士意見書
未承認の場合の対応追認、取引停止、条件変更、専門家相談

上場会社では、さらに独立社外取締役、監査役・監査等委員会、特別委員会、指名・報酬委員会等の関与を記録することが望ましいです。

8.3 コーポレートガバナンス・コード原則1-7への対応

上場会社は、関連当事者間取引について、取引の重要性や性質に応じた適切な手続を定め、その枠組みを開示し、手続に基づく監視・承認を行うことが求められる。JPXのコーポレート・ガバナンスに関する報告書記載要領でも、コード原則1-7の内容が示されている。

実務上、上場会社は次のような手続を整備する。

  1. 関連当事者間取引管理規程を定める。
  2. 関連当事者の定義と調査方法を明記する。
  3. 金額基準・質的基準・利益相反基準を定める。
  4. 取締役会承認、独立社外取締役確認、監査役確認の要件を定める。
  5. 事後報告・モニタリングの頻度を定める。
  6. 年次で関連当事者取引一覧を取締役会または監査役等に報告する。
  7. コーポレートガバナンス報告書で手続の枠組みを説明する。
Section 09

税務・移転価格の確認

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

9.1 会計上の関連当事者と税務上の関連者は一致しない

税務では、関連当事者取引が、移転価格、寄附金、役員給与、低額譲渡、同族会社行為計算否認、源泉税、消費税、グループ法人税制などの論点につながることがあります。特に海外子会社・海外親会社との取引では、国外関連者との国外関連取引として移転価格税制の対象になる可能性があります。

国税庁資料では、ローカルファイルの同時文書化義務について、一の国外関連者との国外関連取引について、国外関連取引の対価の額の合計額が前事業年度で50億円未満、かつ無形資産取引の対価の額の合計額が3億円未満である場合には、その一の国外関連者との国外関連取引について免除されるとの説明がある。 ただし、同時文書化義務が免除される場合でも、税務調査で価格算定根拠の説明が求められることがあります。

OECD移転価格ガイドラインは、関連企業間のクロスボーダー取引について、税務目的の評価における独立企業原則の適用に関する国際的なコンセンサスを示しています。

9.2 税務確認欄の設計

関連当事者取引一覧には、税務検討欄を設ける。

次の表は、税務・移転価格の確認で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

列名内容
国内・国外国内関連者、国外関連者
税務区分移転価格、寄附金、役員給与、低額譲渡、貸倒、源泉税、消費税等
価格算定根拠比較対象取引、原価加算、再販売価格、利益分割、評価書等
無形資産取引ロイヤルティ、技術供与、商標使用料、ノウハウ
金融取引貸付、借入、保証、キャッシュプーリング
ローカルファイル要否要、不要、要確認
税理士確認確認日、確認者、コメント
移転価格文書作成済、作成中、不要、要更新

税務の観点では、会計上の開示対象外だから安全という発想は危険です。少額でも役員への経済的利益供与が役員給与・寄附金・源泉税の問題になることがあります。逆に、会計上は関連当事者取引として開示されるが、税務上は独立企業間価格で適正に処理されている場合もある。

Section 10

関連当事者取引一覧の標準フォーマット

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

10.1 一覧の全体構造

実務で使いやすい関連当事者取引一覧は、次の三層構造にするとよい。

次の表は、関連当事者取引一覧の標準フォーマットで確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

シート内容主な利用者
関連当事者マスター関連当事者の属性、関係、期間、証跡法務、経理、監査法人
取引明細一覧取引ごとの金額、残高、条件、証跡経理、内部監査、税務
判定・開示一覧重要性、承認、開示、税務、監査対応開示担当、法務、取締役会事務局

10.2 取引明細一覧のサンプル

以下は、実務にそのまま展開しやすい列設計です。

次の表は、関連当事者取引一覧の標準フォーマットで確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

列名記載例説明
取引IDRPT-T-2026-001一意番号
関連当事者IDRPT-P-001マスターと連携
関連当事者名A株式会社名称
区分親会社、役員支配会社等会計基準上の区分
法人・個人法人重要性判定に使用
関係内容当社代表取締役が議決権60%を所有関連当事者該当根拠
関係期間2026/4/1〜2027/3/31期中該当期間
取引類型業務委託売上、仕入、貸付、保証等
契約番号LEG-2026-045契約書と紐づけ
勘定科目業務委託費会計データと紐づけ
取引金額30,000,000円税抜・税込の方針を統一
期末残高5,000,000円債権債務残高
発生総額30,000,000円貸付等では発生総額も記載
取引条件月額250万円、30日サイト条件の具体性が重要
条件決定方針見積3社比較、取締役会承認開示文言の基礎
市場価格根拠見積書、鑑定、ベンチマーク第三者条件の証跡
会計重要性開示対象判定結果
会社法利益相反該当承認要否
承認日2026/5/20議事録と紐づけ
開示案注記対象注記作成の基礎
税務検討寄附金・役員関連要確認税理士確認欄
証跡契約書、請求書、議事録ファイルパスでもよい
担当部署法務・経理責任者
レビュー状況監査法人確認済進捗管理

10.3 判定・開示一覧のサンプル

注記作成のためには、取引明細を開示単位にまとめる必要がある。次のような開示一覧を作成する。

次の表は、関連当事者取引一覧の標準フォーマットで確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

関連当事者の種類会社等の名称または氏名所在地・資本金・事業内容等議決権所有割合関係取引内容取引金額科目期末残高取引条件・決定方針
役員が議決権の過半数を所有する会社A株式会社東京都、資本金1,000万円、ITコンサルなし当社代表取締役が60%所有システム開発委託30,000,000未払金5,000,000見積比較により決定
親会社B株式会社大阪府、資本金1億円、持株会社被所有80%親会社資金借入100,000,000短期借入金100,000,000市場金利を参考に決定
主要株主C氏個人、投資家被所有12%主要株主不動産賃借12,000,000前払費用1,000,000近隣相場を参考に決定

実際の開示では、会社計算規則、財務諸表等規則、連結財務諸表規則、会計基準、監査法人の指摘に応じて様式を調整する。会社計算規則112条は、関連当事者との取引に関する注記を規定している。 金商法開示では、財務諸表等規則8条の10、連結財務諸表規則15条の4の2等も確認します。

Section 11

内部統制としての運用設計

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

次の時系列は、年間運用の推奨スケジュールを示します。順番は、期首にマスターを更新し、四半期ごとに照合し、重要取引発生時に事前相談し、期末に残高と判定を固める流れです。読者は、決算作業ではなく内部統制として回すことを読み取ってください。

期首

関連当事者マスター更新

役員質問票、主要株主確認、グループ図更新を行います。

四半期ごと

取引データ抽出と照合

関連当事者照合、利益相反候補確認、承認状況確認を行います。

重要取引発生時

事前相談と承認要否判定

法務・経理・税務・取締役会事務局へ事前に相談します。

期末直後

残高確定と証跡収集

期末残高、発生総額、重要性判定、証跡を揃えます。

決算後

改善点の反映

質問票、規程、手順を更新し、次期の統制へ反映します。

11.1 年間スケジュール

関連当事者取引一覧は、期末に一度作るだけでは不十分です。期末になってから役員質問票を配布しても、過去の取引、取締役会承認、契約条件の修正が間に合わないことがあります。

推奨スケジュールは次の通りです。

次の表は、内部統制としての運用設計で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

時期実施事項
期首関連当事者マスター更新、役員質問票、主要株主確認、グループ図更新
四半期ごと取引データ抽出、関連当事者照合、利益相反候補確認、承認状況確認
重要取引発生時法務・経理・税務・取締役会事務局への事前相談、承認要否判定
第3四半期末年度末開示に向けた予備判定、監査法人との論点共有
期末直後期末残高確定、発生総額集計、重要性判定、証跡収集
決算作業中注記案作成、監査法人レビュー、法務レビュー、税務レビュー
取締役会前取締役会・監査役等への報告資料作成、必要に応じて承認・確認
決算後改善点整理、質問票改定、規程・流れ更新

11.2 RACIマトリクス

関連当事者取引一覧は、経理だけでは作れない。役割分担を明確にする。

次の表は、内部統制としての運用設計で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

業務法務経理税務内部監査取締役会事務局監査役等会計監査人
関連当事者定義・規程整備RCCCACC
役員質問票作成RCCCACC
取引データ抽出CRCCIIC
関連当事者照合CRCCIIC
重要性判定CRCCIIC
利益相反判定RCCCACI
税務判定CCRIIII
取締役会承認CIIIRCI
注記作成CRCIIIC
内部監査ICCRICI

RはResponsible、AはAccountable、CはConsulted、IはInformedを意味する。会社規模や機関設計に応じて調整する。

11.3 Excel管理の統制

多くの会社では、関連当事者取引一覧をExcelで管理する。Excelでも運用可能ですが、次の統制を入れなければ監査対応で弱い。

  • 入力欄、計算欄、判定欄を分ける。
  • 数式セルを保護する。
  • バージョン番号を付ける。
  • 更新者、更新日、変更理由を記録する。
  • 取引データの抽出元と抽出条件を保存する。
  • 関連当事者マスターとの照合ロジックを文書化する。
  • 手入力による除外・追加には理由欄を設ける。
  • ファイルアクセス権限を限定する。
  • 個人情報を含むシートは閲覧者を制限する。
  • 監査法人提出版と社内作業版を区別する。

将来的には、契約管理システム、会計システム、取引先マスター、役員情報、ワーク流れを連携させることが望ましいです。リーガルオペレーションの観点では、関連当事者管理を法務DXの対象に含める価値が高い。

Section 12

よくある失敗と予防策

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

12.1 役員質問票が抽象的すぎる

「関連当事者取引がありますか」という質問だけでは、役員が自分の兼職先、近親者の会社、所有会社、代表者を務める会社、第三者経由取引を申告しない可能性が高い。質問票は、具体的な取引類型と関係類型に分解する。

12.2 残高だけで判断して発生総額を見ない

貸付金や借入金は、期末残高が小さくても、期中の発生総額が大きい場合があります。企業会計基準適用指針第13号も、資金貸借取引では期末残高だけでなく発生総額の重要性判断を示しています。

12.3 「第三者と同条件」として安易に除外する

第三者と同条件であることが明白な取引でなければ、単に「条件は同じ」と記載するだけでは不十分です。見積比較、相場資料、価格算定メモ、鑑定評価などの証跡を残す。

12.4 利益相反承認と会計開示を混同する

会計上の開示対象外でも、会社法上の利益相反承認が必要な場合があります。逆に、会計上の注記対象でも利益相反取引ではない場合があります。判定欄を分ける。

12.5 関連当事者の範囲を形式でしか見ない

実質的主要株主、退任した創業者、顧問、相談役、役員に準ずる者、他人名義保有、親族支配会社などを見落とすと、一覧の網羅性が失われる。ASBJ適用指針は、退任役員についても会社に対して役員と同等の影響力を及ぼしているかを個々のケースごとに実質判定する考え方を示しています。

12.6 取締役会承認の証跡がない

関連当事者取引が発見されても、承認議事録、利害関係取締役の議決不参加、開示された重要事実、事後報告の証跡がないと、ガバナンス上の問題になります。金融庁レビューでも、取締役の利益相反取引について承認漏れまたは承認証跡がない事例が確認されている。

12.7 子会社・海外拠点に調査が届いていない

連結会社全体を対象にする場合、国内本社だけの調査では足りない。子会社、海外拠点、地域統括会社、持分法適用会社、休眠会社、SPC、ファンド、合弁会社の情報を確認します。

Section 13

中小企業・非上場会社における実務

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

非上場会社や中小企業でも、関連当事者取引一覧は有用です。特に次の場面では、一覧がないことが重大なリスクになります。

  • IPO準備を始めるとき
  • 金融機関から融資を受けるとき
  • 事業承継を行うとき
  • 親族内で株式を移転するとき
  • 役員所有不動産を会社が借りているとき
  • 役員から会社へ貸付があるとき
  • 会社から役員へ貸付があるとき
  • オーナー会社間で取引があるとき
  • M&Aで売却を検討するとき
  • 少数株主との紛争があるとき
  • 税務調査を受けるとき

中小企業では、オーナー経営者、親族、資産管理会社、不動産所有会社、別会社、個人保証、役員貸付、役員借入が密接に絡むことが多い。これらは、違法でなくても、金融機関、買主、監査法人、税務当局、少数株主から説明を求められる。

中小企業向けには、まず簡易版として次の表から始めるとよい。

次の表は、中小企業・非上場会社における実務で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

関連者関係取引内容年間金額期末残高契約書価格根拠承認税務確認備考
代表取締役役員会社への貸付20,000,00020,000,000金銭消費貸借契約利率0%要確認要確認無利息の理由
代表者所有会社役員支配会社事務所賃借6,000,000500,000賃貸借契約近隣相場要確認確認済敷金あり
親族近親者業務委託3,000,0000業務委託契約見積なし要確認要確認成果物確認

中小企業では、最初から完璧な一覧を作るよりも、「誰と、何を、いくらで、なぜその条件で、誰が承認したか」を整理することが第一歩です。

Section 14

IPO準備会社における高度な対応

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

IPO準備会社では、関連当事者取引は極めて重要な審査論点です。なぜなら、上場後は一般株主が入るため、支配株主、創業者、役員、親族、関連会社への利益移転が厳しく見られるからです。

IPO準備会社では、通常の関連当事者取引一覧に加え、次の情報を管理する。

次の表は、IPO準備会社における高度な対応で確認する項目を整理したものです。列ごとの違いを把握することで、読者は判断に必要な情報、証跡、注意点を読み取れます。

追加列内容
上場前解消予定解消する、継続する、条件変更する
解消理由・継続理由事業上必要、代替困難、市場条件等
証券会社確認主幹事証券の確認状況
監査法人確認監査上の論点、要修正事項
取引所審査説明審査で説明する合理性
公正性資料第三者見積、不動産鑑定、価格算定書
反社・コンプライアンス確認相手方チェック
利益相反管理独立社外役員、監査役会、特別委員会等の確認

IPOでは、関連当事者取引を単に開示するだけでなく、上場会社として継続する合理性があるかが問われる。創業者関連会社への高額委託、役員所有不動産の高額賃料、親会社への過大な経営指導料、主要株主への有利な取引条件などは、上場前に解消または条件変更を求められることがあります。

Section 15

専門家別のレビュー観点

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

15.1 弁護士・企業内弁護士

弁護士は、会社法上の利益相反取引該当性、取締役会承認、議事録、利害関係取締役、善管注意義務・忠実義務、少数株主保護、契約条件の公正性、紛争リスクを確認します。

特に、次を確認します。

  • 取締役が自己または第三者のために会社と取引していないか。
  • 取締役の債務保証など間接取引に該当しないか。
  • 利害関係取締役が決議に参加していないか。
  • 取引条件の合理性が取締役会資料に記載されているか。
  • 事後報告が必要な場合に行われているか。
  • 少数株主・債権者・税務当局から問題視され得る利益移転がないか。

15.2 公認会計士・監査法人

公認会計士は、関連当事者の網羅性、取引の識別、重要性判定、注記の正確性、証跡、内部統制、開示の継続性を確認します。

重点は次の通りです。

  • 関連当事者マスターの作成根拠
  • 役員質問票の網羅性
  • 会計データ抽出条件
  • 取引金額と期末残高の一致
  • 無償・低廉取引の見積り
  • 重要性判定メモ
  • 前期開示との比較
  • 非開示判断の理由

15.3 税理士・国際税務専門家

税理士は、役員給与、寄附金、貸付利息、債務免除、低額譲渡、時価、源泉税、消費税、移転価格、国外関連者取引を確認します。

特に海外取引では、ローカルファイル、マスターファイル、国別報告事項、無形資産取引、金融取引、役務提供取引の価格算定根拠を確認します。

15.4 内部監査・内部統制担当

内部監査は、一覧の作成プロセスが機能しているかを確認します。具体的には、役員質問票の回収率、取引先マスターとの照合、承認権限、例外処理、証跡保管、アクセス管理、過年度指摘の改善状況を点検する。

15.5 司法書士・商事法務担当

司法書士や商事法務担当は、取締役会議事録、株主総会議事録、商業登記、役員変更、担保設定、不動産登記、利益相反承認書類の整合性を確認します。特に不動産取引や担保設定では、登記申請に取締役会議事録等が必要になる場合があります。

Section 16

実務チェックリスト

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

16.1 関連当事者マスターのチェック

  • [ ] 親会社、子会社、兄弟会社、関連会社を網羅している。
  • [ ] 主要株主を議決権ベースで確認している。
  • [ ] 役員、監査役、執行役、執行役員、相談役、顧問を確認している。
  • [ ] 近親者を質問票で確認している。
  • [ ] 役員等が議決権の過半数を所有する会社を確認している。
  • [ ] 役員等が代表者を務める会社を確認している。
  • [ ] 退任役員・創業者の実質影響力を検討している。
  • [ ] 企業年金、ファンド、組合、SPCを確認している。
  • [ ] 関係開始日・終了日を記録している。
  • [ ] 証跡を保存している。

16.2 取引抽出のチェック

  • [ ] 総勘定元帳を抽出している。
  • [ ] 補助元帳・取引先マスターを照合している。
  • [ ] 契約管理システムを確認している。
  • [ ] 銀行明細を確認している。
  • [ ] 保証・担保台帳を確認している。
  • [ ] 取締役会・稟議資料を確認している。
  • [ ] 無償・低廉取引を確認している。
  • [ ] 資本取引を確認している。
  • [ ] 期末残高だけでなく発生総額を確認している。
  • [ ] 第三者経由取引を検討している。

16.3 判定・承認・開示のチェック

  • [ ] 法人グループ・個人グループの区分をしている。
  • [ ] 重要性基準に基づく判定を記録している。
  • [ ] 質的重要性を検討している。
  • [ ] 前期開示との比較を行っている。
  • [ ] 非開示理由を記録している。
  • [ ] 会社法上の利益相反該当性を判定している。
  • [ ] 取締役会または株主総会承認を確認している。
  • [ ] 利害関係取締役の扱いを確認している。
  • [ ] 取引条件の公正性資料を保存している。
  • [ ] 税務上の検討欄を記入している。
  • [ ] 監査法人、税理士、弁護士への確認事項を記録している。
Section 17

関連当事者取引一覧のFAQ

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

Q1. 関連当事者取引一覧は誰が作るべきですか。

一般的には、経理が事務局になることが多いとされています。ただし、経理だけでは利益相反、契約、取締役会承認、移転価格、内部統制、監査対応を十分に見きれない場合があります。実務上の体制は会社規模や取引内容で変わるため、必要に応じて弁護士・公認会計士・税理士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 少額取引も一覧に入れるべきですか。

一般的には、一次リストには少額取引も含めて整理する方法が有用とされています。最終的に開示対象外となる場合でも、最初から除外すると利益相反、税務、継続取引、将来の増加、質的重要性を見落とす可能性があります。具体的な除外基準は、会社の規程、取引内容、監査対応により変わるため、専門家へ確認する必要があります。

Q3. 役員報酬は関連当事者取引一覧に入れるべきですか。

一般的には、役員報酬、賞与、退職慰労金の支払いは関連当事者の開示対象外とされています。ただし、役員への貸付、社宅、資産譲渡、経済的利益、役員所有会社との取引などは別途検討が必要になる可能性があります。具体的な区分は制度や事実関係で変わるため、専門家へ相談する必要があります。

Q4. 取引条件が市場価格と同じなら開示しなくてよいですか。

一般的には、市場価格と同じという事情だけで直ちに開示不要になるとは限らないとされています。取引の性質から一般取引と同様であることが明白か、価格比較、見積、鑑定、利率算定、取引条件決定方針の証跡があるかを確認する必要があります。具体的な開示要否は、取引の性質や重要性で変わるため、専門家へ相談する必要があります。

Q5. 期末残高がゼロなら開示不要ですか。

一般的には、期末残高がゼロでも開示対象となる可能性があります。資金貸借取引や資産売買では、期中の発生総額が重要になる場合があるためです。具体的な判断は、取引金額、継続性、質的重要性、証跡の状況によって変わります。

Q6. 非上場会社でも必要ですか。

一般的には、非上場会社でも必要になる場面が多いとされています。会計監査、金融機関対応、事業承継、M&A、税務調査、少数株主対応、IPO準備では、関連当事者取引一覧がないと説明が難しくなることがあります。必要性は会社規模や取引内容で変わるため、専門家へ確認する必要があります。

Q7. 親会社との取引は連結で消えるなら無視してよいですか。

一般的には、連結財務諸表で相殺消去される取引は関連当事者取引の開示対象外となる場合があります。ただし、個別財務諸表、会社計算規則、親会社情報、重要な関連会社情報、税務、利益相反、少数株主保護、上場会社のガバナンスでは別途問題になる可能性があります。具体的には制度と事実関係を確認する必要があります。

Q8. 関連当事者取引一覧はどのくらい保存すべきですか。

一般的には、会社の文書保存規程、会社法・金商法・税法上の保存期間、監査対応、税務調査、IPO審査、M&A対応を踏まえて決める必要があります。注記・承認・税務判断に関する証跡は、決算書類や税務資料と整合する期間保存することが望ましいとされています。具体的な保存期間は会社の規程と法令で確認する必要があります。

Section 18

関連当事者取引一覧は判断過程です

主要論点を整理し、実務で確認すべき情報と証跡を確認します。

関連当事者取引一覧の作成方法を一言でいえば、関連当事者の範囲を実質的に把握し、取引を網羅的に抽出し、会計・法務・税務・ガバナンスの観点で別々に判定し、その根拠を証跡化する方法です。

優れた関連当事者取引一覧には、次の特徴がある。

  1. 関連当事者マスターがある。
  2. 役員質問票が具体的です。
  3. 会計データだけでなく契約、銀行、保証、担保、取締役会資料を確認している。
  4. 期末残高だけでなく発生総額を見ている。
  5. 無償・低廉取引、第三者経由取引、資本取引を拾っている。
  6. 会計上の重要性、会社法上の利益相反、CGコード上の監視、税務上の検討を分けている。
  7. 取引条件の公正性資料がある。
  8. 取締役会承認・事後報告の証跡がある。
  9. 非開示判断の理由が残っている。
  10. 毎期更新され、内部統制として運用されている。

関連当事者取引は、会社にとって必要な取引である場合も多いです。しかし、必要な取引であるほど、透明性、公正性、説明可能性が必要です。関連当事者取引一覧は、その説明可能性を支える中核資料であり、企業法務、会計、税務、内部統制、ガバナンスの交差点に位置します。

Reference

この記事の参考情報源

  • 企業会計基準委員会(ASBJ)「企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準」
  • 企業会計基準委員会(ASBJ)「企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」(2024年改正反映版)
  • e-Gov法令検索「会社法」。特に会社法356条・365条の競業および利益相反取引の制限に関する規定を参照
  • e-Gov法令検索「会社計算規則」。特に112条「関連当事者との取引に関する注記」を参照
  • e-Gov法令検索「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」。特に8条の10「関連当事者との取引に関する注記」を参照
  • e-Gov法令検索「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」。特に関連当事者との取引に関する注記規定を参照
  • 株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日)。原則1-7「関連当事者間の取引」
  • 株式会社東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領」(2024年4月改訂版)
  • 証券取引等監視委員会「開示検査事例集」(2024年9月)。関連当事者取引に係る注記の不記載事例を参照
  • 金融庁「平成31年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」(2020年3月27日)。重点テーマ審査(関連当事者取引)を参照
  • 国税庁「移転価格税制に係る文書化制度(FAQ)」。ローカルファイルの同時文書化義務の免除基準等を参照
  • OECD, “OECD Transfer Pricing Guidelines for Multinational Enterprises and Tax Administrations.”
  • IFRS Foundation, “IAS 24 Related Party Disclosures.”