2σ Guide

デジタル遺産を生前整理する
エンディングノートの書き方

相続、税務、情報セキュリティ、オンラインサービスの実務を横断し、家族と専門家が手続へ進めるノートの作り方を整理します。

3層 情報の分離
30日 作成手順
10か月 相続税期限
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デジタル遺産を生前整理する エンディングノートの書き方

相続、税務、情報セキュリティ、オンラインサービスの実務を横断し、家族と専門家が手続へ進めるノートの作り方を整理します。

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デジタル遺産を生前整理する エンディングノートの書き方
相続、税務、情報セキュリティ、オンラインサービスの実務を横断し、家族と専門家が手続へ進めるノートの作り方を整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • デジタル遺産を生前整理する エンディングノートの書き方
  • 相続、税務、情報セキュリティ、オンラインサービスの実務を横断し、家族と専門家が手続へ進めるノートの作り方を整理します。

POINT 1

  • デジタル遺産エンディングノートの全体像
  • 情報を単に列挙するのではなく、家族と専門家が手続へ進むための案内図として設計します。
  • デジタル遺産の整理は三層で考える
  • 以下の重要ポイントは、デジタル遺産用エンディングノートの役割を整理したものです。
  • 読者にとって重要なのは、パスワード一覧ではなく、相続人と専門家が正しい手続へ進める案内図として作る点です。

POINT 2

  • デジタル遺産に含まれるものと相続財産性
  • 財産、契約、人格情報が混在するため、まず分類してから書く情報を決めます。
  • 1-1. 用語の整理
  • 1-2. 相続財産になるもの、ならないもの、判断が難しいもの
  • 「デジタル遺産」という語は、法律上の厳密な定義が確立しているわけではありません。

POINT 3

  • デジタル遺産を生前整理する理由
  • 見えない財産、端末ロック、サブスク、暗号資産、期限管理が家族の負担になります。
  • 2-1. デジタル遺産は相続人に見えにくい
  • 2-2. 端末ロックと暗号化は、死後の調査を難しくする
  • 2-3. サブスクは請求が続く

POINT 4

  • デジタル遺産エンディングノートと遺言書の違い
  • エンディングノートは希望と情報の整理、遺言書は財産承継の法的文書です。
  • 3-1. エンディングノートは「希望と情報の整理」である
  • 3-2. 遺言書は「財産承継の法的文書」である
  • 3-3. エンディングノートは遺言書を補助する

POINT 5

  • デジタル遺産エンディングノートに書く情報と書かない情報
  • 発見に必要な情報は書き、秘密情報は本体に直接載せない設計にします。
  • 4-1. 書くべき情報
  • 4-2. 書いてはいけない情報
  • 4-3. セキュリティ実務の基本

POINT 6

  • デジタル遺産エンディングノートの標準構成
  • 5-1. 表紙と基本方針
  • 表紙、本人確認、機器、メール、金融、暗号資産、サブスク、SNS、事業を一つずつ整理します。

POINT 7

  • デジタル遺産のパスワードと秘密情報の安全な残し方
  • 生前の不正利用を防ぎながら、死亡後に権限ある人が到達できる設計にします。
  • 6-1. 基本原則
  • 6-2. 三層構造による保管
  • 6-3. 封印カード方式

POINT 8

  • デジタル遺産と相続税・相続登記の期限管理
  • 相続税、準確定申告、相続登記は、デジタル資料の所在が分からないと遅れやすくなります。
  • 7-1. 相続税申告との関係
  • 7-2. 準確定申告との関係
  • 7-3. 相続登記との関係

まとめ

  • デジタル遺産を生前整理する エンディングノートの書き方
  • デジタル遺産エンディングノートの全体像:情報を単に列挙するのではなく、家族と専門家が手続へ進むための案内図として設計します。
  • デジタル遺産に含まれるものと相続財産性:財産、契約、人格情報が混在するため、まず分類してから書く情報を決めます。
  • デジタル遺産を生前整理する理由:見えない財産、端末ロック、サブスク、暗号資産、期限管理が家族の負担になります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

デジタル遺産エンディングノートの全体像

情報を単に列挙するのではなく、家族と専門家が手続へ進むための案内図として設計します。

以下の重要ポイントは、デジタル遺産用エンディングノートの役割を整理したものです。読者にとって重要なのは、パスワード一覧ではなく、相続人と専門家が正しい手続へ進める案内図として作る点です。3層、30日、10か月という数字から、優先して準備する順番を読み取ってください。

デジタル遺産の整理は三層で考える

家族が見てよい情報、専門家や遺言執行者が確認すべき情報、直ちに開示してはいけないパスワードや秘密鍵を分けると、生前の安全と死後の手続を両立しやすくなります。

このページは、日本法を前提に、デジタル遺産、相続実務、税務、情報セキュリティ、オンラインサービスの利用規約実務を横断して整理した一般向けの専門解説です。個別案件では、財産構成、相続人関係、遺言の有無、税額、サービスの規約、端末の暗号化状態、紛争の有無により結論が変わる。争いがある場合、相続税申告が必要な場合、不動産や会社株式や暗号資産など高額または特殊な財産がある場合は、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談することが望ましいです。

このページにおける「専門家の総合的視点」とは、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、公証人、遺言執行者、信託銀行等の相続・遺言担当、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、家庭裁判所関係者、公認会計士、中小企業診断士、弁理士、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士、金融機関や保険会社の相続手続担当などが実務上見る論点を統合するという意味で用いる。実際の依頼では、各専門職の法定業務範囲と守秘義務、利益相反、報酬体系を確認する必要があります。

デジタル遺産を生前に整理する目的は、単にパスワード一覧を家族に残すことではありません。より正確には、本人の死亡後または判断能力低下後に、相続人、遺言執行者、任意後見人、死後事務受任者、専門家が、財産の存在を把握し、適法な手続に接続し、不必要な請求を止め、個人情報と秘密情報を守り、相続税や相続登記などの期限を落とさないようにすることです。

そのため、デジタル遺産用のエンディングノートは、次の三層で設計するのが合理的です。

  1. 家族が見てよい情報を書く層
  2. 専門家や遺言執行者に渡すべき情報を書く層
  3. 直ちに開示してはいけないパスワード、秘密鍵、リカバリーコード等を安全に保管する層

エンディングノートは、法的効力を持つ遺言書とは異なる。誰に何を相続させるか、遺言執行者を誰にするか、特定の財産を誰に承継させるかを確実に決めるには、民法の方式に従った遺言書が必要です。エンディングノートは、遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約、生命保険、信託、事業承継計画、税務資料を見つけるための「実務上の案内図」と位置付けるべきです。

Section 01

デジタル遺産に含まれるものと相続財産性

財産、契約、人格情報が混在するため、まず分類してから書く情報を決めます。

1-1. 用語の整理

「デジタル遺産」という語は、法律上の厳密な定義が確立しているわけではありません。実務では、次のような意味で使われることが多い。

次の比較表は、用語、このページでの意味、主な例を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

用語このページでの意味主な例
デジタル遺産死亡後の相続、解約、承継、保存、削除、税務評価の対象になり得るデジタル関連の財産、契約、データ、アカウント情報ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネー、ポイント、ドメイン、クラウドデータ、SNSアカウント、サブスク契約
デジタル遺品故人が利用していたデジタル機器、オンラインサービス、データ、アカウントなどを含む広い実務用語スマートフォン内の写真、メール、アプリ、クラウド、契約情報
デジタル資産金銭的価値または換金可能性のあるデジタル上の資産暗号資産、電子マネー、ポイント、NFT、ドメイン、アフィリエイト報酬債権
デジタル契約オンラインで締結、管理、更新される契約サブスク、クラウドストレージ、SaaS、動画配信、ゲーム課金、オンラインサロン
デジタル人格情報金銭評価しにくいが、人格、名誉、プライバシー、思い出に関わる情報写真、日記、メッセージ、SNS投稿、医療アプリの記録、位置情報

国民生活センターは、デジタル遺品について、明確な定義はないとしつつ、故人がネット上に保有していた資産のデータやサブスクリプション契約のアカウントなども含めて呼ばれていると説明している。また、IDやパスワードの手掛かりがないため、遺族が契約内容の確認や解約に困る相談があると指摘している。

1-2. 相続財産になるもの、ならないもの、判断が難しいもの

相続では、まず「何が財産として承継されるのか」を区別する必要があります。デジタル遺産では、この区別が特に難しい。

相続財産になりやすいもの

金銭的価値があり、契約上または法律上、相続人への承継や払戻しが認められるものは、相続財産として扱われる可能性が高い。

次の比較表は、分類、例、エンディングノートに書くべき事項を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

分類エンディングノートに書くべき事項
ネット銀行普通預金、定期預金、外貨預金金融機関名、支店名、口座種別、口座番号の一部、ログインIDの所在、届出電話番号、届出メールアドレス
ネット証券上場株式、投資信託、債券、NISA口座証券会社名、口座種別、保有商品の概要、年間取引報告書の所在
暗号資産Bitcoin、Ethereum、ステーブルコイン、取引所残高、自己管理ウォレット取引所名、ウォレットの種類、秘密鍵やシードフレーズの保管場所、税務資料の所在
電子マネー、コード決済残高、売上金、チャージ残高サービス名、残高確認方法、相続や払戻し窓口
ポイント、マイル利用規約上承継可能なポイント、マイルサービス名、会員番号、規約上の承継可否、期限
ドメイン、ウェブサイト独自ドメイン、レンタルサーバー、ECサイト、ブログ収益レジストラ名、サーバー会社、管理画面、更新期限、収益振込先
デジタル収益債権アフィリエイト報酬、広告収益、電子書籍印税、動画収益事業者名、契約名義、振込先、確定申告資料

相続財産になりにくいもの

アカウントそのもの、サービスの利用権、ゲーム内アイテム、SNSのプロフィールなどは、利用規約により譲渡や相続が制限されることが多い。相続人が「ログインできるから承継できる」と考えるのは危険です。

次の比較表は、分類、例、注意点を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

分類注意点
SNSアカウントFacebook、Instagram、X、LINEなど追悼化、削除、閉鎖など、各サービスの規約と手続に従う
メールアカウントGmail、iCloudメール、プロバイダメールメール本文には契約情報が含まれるが、無断ログインはリスクがある
動画、音楽、電子書籍購入済みコンテンツ、サブスク視聴権多くは利用権であり、所有物として相続できるとは限らない
ゲームアカウントキャラクター、アイテム、ゲーム内通貨規約で譲渡禁止、アカウント共有禁止が定められることがある
クラウドデータ写真、動画、書類データの取得や削除には、本人指定機能や法的書類が必要なことがある

判断が難しいもの

次のものは、財産性、人格性、契約上の制限が混在する。

次の比較表は、対象、争点、実務上の対応を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

対象争点実務上の対応
NFT権利内容、利用規約、秘密鍵管理、時価評価取引履歴、マーケットプレイス、ウォレット、作品利用条件を記録する
非上場会社のオンライン株主管理株式の有無、株主名簿、譲渡制限会社関係書類、株主名簿管理人、顧問税理士や公認会計士を記録する
オンライン事業売上債権、契約、顧客情報、個人情報保護事業承継方針、閉鎖方針、顧客対応、委託先を記録する
医療、介護、見守りアプリ個人情報、家族の連絡先、契約緊急時閲覧者と削除方針を記録する
写真、日記、メッセージ相続財産性よりもプライバシーと人格的利益が問題見てよい人、削除してほしいもの、保存してほしいものを分ける
Section 02

デジタル遺産を生前整理する理由

見えない財産、端末ロック、サブスク、暗号資産、期限管理が家族の負担になります。

2-1. デジタル遺産は相続人に見えにくい

紙の預金通帳、不動産権利証、保険証券、郵便物があれば、相続人は財産の存在を推測しやすい。しかし、デジタル遺産は、スマートフォン、パソコン、メール、クラウド、アプリの中に集約されている。本人が何を利用しているかを家族が知らなければ、相続財産から漏れる。

国民生活センターは、故人が利用していたネット銀行の契約先がスマートフォンのロックにより分からない事例、コード決済サービスの相続手続が長期化する事例、サブスクの請求を止められない事例を紹介している。

2-2. 端末ロックと暗号化は、死後の調査を難しくする

スマートフォンやパソコンには、金融アプリ、メール、クラウド、契約確認メール、二段階認証アプリ、パスワード管理アプリが入っている。端末が開けなければ、相続人は財産の存在を調べにくい。

一方で、端末ロックを日頃から家族に共有することは、プライバシー侵害、不正利用、夫婦や親子間の紛争、第三者による盗み見のリスクを生む。したがって、端末ロックの解除情報は「日常的に共有する情報」ではなく、「死亡時または重篤時に、指定された人が、指定された条件で確認できる情報」として設計する必要があります。

2-3. サブスクは請求が続く

動画配信、音楽配信、クラウド、セキュリティソフト、オンラインサロン、ニュースサイト、学習サービス、ゲーム課金などのサブスクは、本人が死亡しても事業者が死亡事実を自動的に知るわけではありません。国民生活センターも、サブスクは解約手続をしない限り請求が続き、遺族が請求元やID、パスワードを把握していないことで困る相談があると説明している。

2-4. 暗号資産は秘密鍵を失うと回復不能になり得る

暗号資産には、取引所に預けているものと、本人がウォレットで自己管理しているものがある。取引所に預けている暗号資産は、相続人が取引所の相続手続に従うことで対応できる場合があります。他方、自己管理ウォレットの秘密鍵、シードフレーズ、リカバリーフレーズを失うと、相続人も専門家も復元できないことがあります。

暗号資産は相続税の対象にもなり得る。国税庁の暗号資産等に関する税務上のFAQは、相続や贈与により取得した暗号資産について、相続税または贈与税が課されると説明している。また、活発な市場が存在する暗号資産は、原則として、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格により評価するとしている。

2-5. 期限管理を誤ると実害が出る

相続手続には期限がある。相続税の申告と納税は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。 また、相続により不動産を取得した相続人は、一定の期限内に相続登記を申請する義務を負う。相続登記の申請義務化は2024年4月1日から施行され、正当な理由なく義務に違反した場合は過料の対象になり得る。

デジタル遺産が見つからないと、財産目録、相続税申告、遺産分割協議、不動産の換価、債務整理、サブスク解約、事業停止の判断が遅れる。したがって、デジタル遺産の整理は、単なる家族向けメモではなく、相続実務の期限管理に直結する。

Section 03

デジタル遺産エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートは希望と情報の整理、遺言書は財産承継の法的文書です。

3-1. エンディングノートは「希望と情報の整理」である

エンディングノートは、本人が家族や専門家に向けて、財産、契約、医療、介護、葬儀、連絡先、思い出、希望を記録する文書です。デジタル遺産の分野では、サービス名、契約先、IDの所在、端末情報、パスワード保管方法、解約希望、保存希望、削除希望を伝える役割を持つ。

ただし、エンディングノートは、通常、民法上の遺言書の方式を満たさない。そのため、「長男に暗号資産をすべて相続させる」「長女にネット証券口座の株式を相続させる」とエンディングノートに書いても、それだけで遺言としての法的効力が認められるとは限らない。

3-2. 遺言書は「財産承継の法的文書」である

遺言書には、主に自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がある。一般に利用が多いのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。

法務省は、自筆証書遺言について、民法968条に基づき、全文、日付、氏名を自書し、押印する必要があると説明している。財産目録については、パソコンで作成した目録や通帳の写しなどを添付できるが、その各ページに署名押印が必要です。

デジタル遺産について法的に承継先を決める場合、エンディングノートではなく、遺言書に次のような事項を整理して入れることを検討する。

次の比較表は、項目、遺言書に書くべき可能性がある内容、エンディングノートに書く内容を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目遺言書に書くべき可能性がある内容エンディングノートに書く内容
ネット証券口座の株式誰に相続させるか証券会社名、口座番号の一部、年間取引報告書の所在
暗号資産誰に相続させるか、遺言執行者の権限取引所名、ウォレットの所在、秘密鍵の保管方法
ドメイン、ウェブサイト事業承継者、譲渡先、売却方針レジストラ、サーバー、更新日、管理者連絡先
著作権、電子書籍収益承継者、管理者出版プラットフォーム、契約、印税明細
オンライン事業株式や事業用資産の承継取引先、顧客対応、閉鎖または承継手順

3-3. エンディングノートは遺言書を補助する

デジタル遺産の相続では、遺言書だけでは実務が回らないことがあります。遺言書にすべてのサービス名、ログイン情報、秘密鍵、サブスク一覧を書いてしまうと、変更のたびに遺言を作り直す必要があり、保管や秘匿の面でも危険です。

実務上は、次の役割分担が合理的です。

次の比較表は、文書、目的、書く内容、更新頻度を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

文書目的書く内容更新頻度
遺言書財産の承継先を法的に定める誰に何を相続させるか、遺言執行者、祭祀承継者など重要な財産構成や家族関係が変わったとき
エンディングノート相続人や専門家が財産と契約を発見するサービス名、所在、手続窓口、希望、保管場所半年から1年に1回
パスワード保管資料端末やアカウントにアクセスする手掛かりロック解除情報、パスワード管理アプリ、緊急アクセス方法パスワード変更時
税務資料ファイル相続税や所得税に必要な資料年間取引報告書、残高証明、取引履歴、取得価額確定申告時、年1回
死後事務委任契約葬儀、納骨、SNS削除、契約解約などを委任受任者、委任事務、費用、報酬契約内容変更時

3-4. 法務局の自筆証書遺言書保管制度

自筆証書遺言は、自宅で保管すると紛失、改ざん、発見されないリスクがある。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言を法務局で保管できる。法務省は、同制度について、遺言者本人の申請、相続人等による証明書請求や閲覧請求、通知制度などを案内している。

デジタル遺産について遺言書を作る場合でも、パスワードや秘密鍵を遺言書本文に直接書くことは慎重に避けるべきです。遺言書は相続開始後に関係者が確認する可能性があり、秘密情報の露出につながる。遺言書には「別紙デジタル資産管理資料の所在を遺言執行者に通知する」など、所在や権限設計を中心に書くのが安全です。

3-5. 公正証書遺言、遺言執行者、死後事務委任契約

高額なデジタル資産、暗号資産、オンライン事業、非上場株式、収益サイト、複数の相続人間で争いが予想される財産がある場合は、公正証書遺言を検討する価値がある。公正証書遺言は、公証人が関与して作成され、公証役場で原本が保管される。

また、デジタル遺産では、遺言執行者の指定が特に重要です。遺言執行者は、遺言の内容を実現する立場にある。相続人同士の対立がある場合、専門家を遺言執行者に指定することで、金融機関、暗号資産交換業者、ドメイン管理会社、プラットフォームとのやり取りを一元化しやすくなる。

ただし、SNSの削除、クラウドデータの保存、サブスク解約、葬儀、納骨、医療費精算、賃貸借契約終了などは、遺言だけで十分に処理できない場合があります。この場合、死後事務委任契約を検討する。死後事務委任契約では、死亡後に誰が何を行うか、費用をどこから支払うか、どの範囲のデジタル情報を扱うかを定める。

Section 04

デジタル遺産エンディングノートに書く情報と書かない情報

発見に必要な情報は書き、秘密情報は本体に直接載せない設計にします。

4-1. 書くべき情報

デジタル遺産のエンディングノートには、相続人が「何があるか」を把握し、専門家が「どの窓口に連絡すべきか」を判断できる情報を書く。

次の比較表は、分類、書くべき内容、書き方の例を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

分類書くべき内容書き方の例
サービス名正式名称、アプリ名、会社名例: 〇〇銀行インターネット支店、〇〇証券、〇〇クラウド
契約の性質財産、債務、サブスク、SNS、思い出データ例: 相続財産、毎月課金、削除希望
IDの手掛かりログインIDの一部、メールアドレスの一部、会員番号の一部例: IDはメインメールの前半と同じ
連絡先相続手続窓口、サポートページ、担当者例: 相続手続はカスタマーセンターへ
保管場所契約書、メール、紙資料、税務資料の所在例: 書斎の青いファイル、クラウドの「Tax」フォルダ
希望残す、削除する、家族に見せない、事業を継続する例: 写真は配偶者に渡す。私的日記は削除する
優先順位すぐ止める、期限までに確認する、税理士へ渡す例: クラウドは請求停止前に写真を保存する

4-2. 書いてはいけない情報

エンディングノートは、家族が読みやすい場所に置かれることが多い。そのため、すべてのパスワード、秘密鍵、二段階認証コード、リカバリーコード、PIN、バックアップコードをそのまま一覧化するのは危険です。

特に次の情報は、通常のエンディングノート本体には直接書かない方がよい。

次の比較表は、情報、理由、代替策を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

情報理由代替策
端末ロック解除パスコード生前の盗み見、不正利用、紛争を招く封印カード、貸金庫、専門家保管、合言葉方式
全アカウントのパスワード漏えい時の被害が大きいパスワード管理アプリと緊急アクセス情報を記載
暗号資産の秘密鍵、シードフレーズ見た人が資産を移転できる分割保管、封印保管、専門家と設計
二段階認証のバックアップコードパスワードと組み合わされると危険別封筒で保管し、開封条件を明記
マイナンバー、本人確認画像個人情報流出リスク必要書類の保管場所だけを書く
私的日記や秘密の詳細相続人間の感情的対立を招く保存、削除、非開示の方針だけを書く

4-3. セキュリティ実務の基本

IPAは、不正ログイン対策として、パスワードの使い回しを避け、長く複雑なパスワードを設定し、多要素認証を有効にすることを推奨している。 警察庁も、不正アクセスについて、他人のIDやパスワードを使用してサービスにログインする行為などを説明し、注意喚起している。

したがって、デジタル遺産の整理は「家族にパスワードを全部教える」ことではありません。本人が生きている間は本人のセキュリティを守り、死亡後は相続人や専門家が適法に手続できるようにするという両立が必要です。

Section 05

デジタル遺産エンディングノートの標準構成

表紙、本人確認、機器、メール、金融、暗号資産、サブスク、SNS、事業を一つずつ整理します。

5-1. 表紙と基本方針

最初のページには、目的、作成日、更新日、読むべき人、緊急時の連絡先を書く。

記載例:

このノートは、私が死亡したとき、または自分で財産管理や契約管理ができなくなったときに、家族と専門家が必要な手続を進めるための案内です。

      財産の分け方は、別途作成した遺言書を確認してください。このノートは遺言書ではありません。

      最初に連絡してほしい人:
      1. 配偶者 〇〇
      2. 長男 〇〇
      3. 顧問税理士 〇〇
      4. 遺言執行者候補 〇〇弁護士

      作成日: 2026年5月21日
      最終更新日: 2026年5月21日
      次回見直し予定: 2026年11月

5-2. 本人確認と相続手続の入口

デジタル遺産は、金融機関、暗号資産交換業者、プラットフォーム、通信会社、クラウド事業者とのやり取りが多い。本人確認書類、戸籍、死亡診断書、相続関係書類の所在をまとめる。

次の比較表は、項目、記載内容を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目記載内容
本籍地戸籍取得の起点として必要になる
住民票住所相続税申告、不動産登記、金融機関手続で使う
マイナンバーカード保管場所だけを書く。番号の記載は慎重に避ける
運転免許証、保険証保管場所、返納予定
印鑑、印鑑登録証実印の保管場所、印鑑登録証の所在
年金手帳、基礎年金番号通知書遺族年金や死亡届関連手続のための所在
遺言書種類、保管場所、公証役場、法務局保管の有無
顧問専門家弁護士、司法書士、税理士、行政書士、FPなど

5-3. デジタル機器一覧

デジタル遺産の入口は端末です。端末一覧には、機器名、設置場所、利用目的、ロック解除情報の保管場所を書く。

次の比較表は、機器、場所、用途、ロック解除情報の所在、死後の方針を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

機器場所用途ロック解除情報の所在死後の方針
iPhone自宅寝室メイン端末、金融アプリ、認証アプリ封印カードA写真を保存後、初期化
ノートPC書斎確定申告、事業メール、暗号資産管理貸金庫の封筒B税理士確認後、初期化
外付けHDD書斎キャビネット写真、事業資料鍵付き引き出し家族写真のみ保存
USBメモリ金庫重要書類バックアップ金庫内遺言執行者が確認
NAS自宅共有写真、業務ファイル管理者情報は封筒C顧客情報は専門家確認後削除

5-4. メールアカウント一覧

メールは、契約、請求、本人確認、二段階認証、金融機関通知、クラウド通知の中心です。メールの存在を把握できないと、デジタル遺産調査が難しくなる。

次の比較表は、メールアドレス、用途、主な契約、死後の方針を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

メールアドレス用途主な契約死後の方針
main@example.com生活全般、金融、家族連絡銀行、証券、保険、サブスク相続手続完了まで保持
business@example.com個人事業、取引先EC、広告、請求書顧客対応後に閉鎖
private@example.com私的連絡、SNSSNS、写真クラウド家族に見せず削除希望

Googleは、アカウント無効化管理ツールにより、一定期間利用がない場合に通知やデータ共有の相手を指定できる仕組みを提供している。最大10人まで指定でき、共有するデータの種類も設定できる。

Appleは、故人アカウント管理連絡先を設定することで、死亡後にApple Accountの特定データへアクセスできる人を指定できる。ただし、アクセスできるデータとできないデータがあり、アクセスキーと死亡を証明する書類などが必要です。

5-5. 金融、決済、投資アカウント一覧

このページは、相続税、遺産分割遺留分、使い込み疑い、財産調査に直結する。できる限り正確に書く。

次の比較表は、分類、サービス名、口座や契約の手掛かり、資料の所在、相続上の注意を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

分類サービス名口座や契約の手掛かり資料の所在相続上の注意
ネット銀行〇〇銀行口座番号末尾1234書斎の金融ファイル残高証明を取得
証券〇〇証券特定口座あり年間取引報告書はクラウドTax相続税評価と準確定申告を確認
NISA〇〇証券新NISA口座あり証券会社サイト税理士へ相談
コード決済〇〇Pay携帯番号下4桁5678アプリ内残高とポイントを確認
クレジットカード〇〇カード家族カードあり明細メールサブスク請求の洗い出し
保険〇〇生命保険証券番号末尾9999保険ファイル受取人、死亡保険金を確認

口座番号、会員番号、IDは全桁を書かなくてもよい。相続人が金融機関に照会できる程度の手掛かりを書き、パスワードは別管理にする。

5-6. 暗号資産、NFT、ウォレット

暗号資産は、デジタル遺産の中でも特に専門性が高い。エンディングノートでは、秘密鍵そのものではなく、秘密鍵に到達するための正当な手順と保管場所を書く。

次の比較表は、項目、記載内容を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目記載内容
取引所名国内交換業者、海外取引所、分散型取引所の利用有無
アカウント名義本人名義か法人名義か
登録メールどのメールで登録したか
二段階認証認証アプリ、SMS、ハードウェアキーの種類
ウォレットハードウェアウォレット、ソフトウェアウォレット、ペーパーウォレット
秘密鍵等の所在直接記載せず、封印保管、貸金庫、専門家保管などの所在を書く
税務資料取引履歴、取得価額、損益計算ツール、確定申告書の所在
死後方針換価、保有、特定相続人への承継、専門家への依頼

記載例:

暗号資産については、〇〇取引所とハードウェアウォレットを利用しています。取引履歴と確定申告資料は、書斎PCのTaxフォルダと紙ファイルにあります。秘密鍵とリカバリーフレーズはこのノートには記載していません。保管場所は、貸金庫内の封筒「Crypto A」に記載しています。開封は、配偶者、長男、税理士、弁護士のうち2名以上の立会いで行ってください。

5-7. サブスク、クラウド、通信契約

サブスク一覧は、相続人の金銭的負担を止めるために重要です。クレジットカード明細を見れば分かると考えがちだが、請求名とサービス名が一致しないこともある。

次の比較表は、サービス、月額または年額、支払方法、解約優先度、注意事項を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

サービス月額または年額支払方法解約優先度注意事項
クラウドストレージ月額1,300円〇〇カード写真を保存してから解約
動画配信月額1,200円〇〇Payすぐ解約可
セキュリティソフト年額12,000円〇〇カードPC初期化後に解約
オンラインサロン月額3,000円クレジットカード死亡通知で退会
レンタルサーバー年額15,000円銀行振替サイト承継の判断後に解約

5-8. SNS、メッセージ、クラウド写真

SNSは、相続財産というより、人格、名誉、プライバシー、家族の記憶に関わる。本人の希望を明確にしておく。

次の比較表は、サービス、方針、理由、連絡先や設定を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

サービス方針理由連絡先や設定
Facebook追悼アカウント化友人が思い出を残せる追悼アカウント管理人を設定
Instagram削除希望私的投稿が多い死亡証明書で申請
LINE引継ぎ不可を前提に閉鎖希望私的連絡が多い遺族から問い合わせ
写真クラウド家族写真のみ保存思い出として残す「Family」フォルダを保存
私的日記アプリ削除希望家族に見せない端末確認後に削除

LINEは、アカウントの利用は登録本人に限られ、遺族であってもアカウントを引き継ぐことはできないと案内している。故人のアカウント削除を希望する場合は、問い合わせフォームから連絡する扱いです。

5-9. 事業用デジタル資産

個人事業主、会社経営者、士業、医師、クリエイター、YouTuber、ブロガー、EC運営者、フリーランスは、事業用デジタル資産を特に丁寧に整理する必要があります。

次の比較表は、分類、例、死後の主な課題を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

分類死後の主な課題
顧客管理CRM、メールマガジン、予約システム個人情報保護、顧客通知、契約継続
売上管理EC、決済代行、請求書システム売上債権、返金、未発送商品
コンテンツブログ、動画、電子書籍、講座著作権、収益継続、閉鎖方針
ドメイン、サーバー公式サイト、メールサーバー更新期限、移管、閉鎖
事業アカウントSNS、広告アカウント管理権限、炎上対応、告知
会計、税務会計ソフト、電子帳簿、請求書準確定申告、消費税、インボイス

事業用デジタル資産では、相続人の感情よりも、顧客、取引先、従業員、共同経営者、株主、債権者への影響が大きい。弁護士、税理士、公認会計士、中小企業診断士、司法書士、弁理士、社会保険労務士などの関与を前提に、承継手順を作るべきです。

Section 06

デジタル遺産のパスワードと秘密情報の安全な残し方

生前の不正利用を防ぎながら、死亡後に権限ある人が到達できる設計にします。

6-1. 基本原則

パスワードを残す方法は、次の三条件を満たす必要があります。

  1. 本人の生前には、第三者が容易に不正利用できないこと
  2. 本人の死亡後には、相続人や権限ある人が必要な情報に到達できること
  3. 到達の過程が、利用規約、法律、相続人間の公平、税務調査に耐えられること

この三条件を満たすには、情報を一か所に集めすぎないことが重要です。

6-2. 三層構造による保管

推奨される設計は、次の三層構造です。

次の比較表は、層、内容、保管場所、開示条件を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

内容保管場所開示条件
第1層サービス一覧、契約先、手続窓口、希望エンディングノート本体家族が閲覧可
第2層パスワード管理アプリ、端末ロック、保管場所の案内封印資料、金庫、貸金庫死亡時、重篤時、指定者立会い
第3層秘密鍵、シードフレーズ、バックアップコード分割保管、専門家保管、貸金庫遺言執行者または複数人立会い

6-3. 封印カード方式

国民生活センターは、スマートフォンやパソコンのロック解除情報について、名刺大の紙にパスワード等を記入し、パスワード部分に修正テープを重ねてマスキングして保管する方法を紹介している。削られた形跡があれば、本人がパスワードを変更するなどの対応ができる。

封印カード方式の記載例:

封印カードA
      対象: メインスマートフォン
      保管場所: 自宅金庫内の赤い封筒
      開封条件: 私の死亡時、または医師により意思表示が困難と判断されたとき
      開封者: 配偶者、長男、または遺言執行者
      注意: 開封後は、金融機関、税理士、弁護士への連絡を優先し、SNSや私的メッセージを無断で閲覧しないこと

6-4. パスワード管理アプリを使う方法

パスワード管理アプリを利用している場合、エンディングノートには次を書く。

次の比較表は、項目、記載内容を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目記載内容
利用アプリ例: 1Password、Bitwarden、Appleパスワード、Googleパスワードマネージャーなど
マスターパスワード本体には書かず、封印保管場所を書く
緊急アクセス機能設定の有無、指定相手、待機期間
二段階認証認証アプリ、バックアップコード、ハードウェアキーの所在
注意点家族に共有してよい範囲、見てはいけない範囲

パスワード管理アプリは便利だが、マスターパスワードと二段階認証の両方を失うと開けない。逆に両方が漏れるとすべてのアカウントが危険になる。したがって、マスターパスワード、二段階認証、バックアップコードは別々に管理する。

6-5. 合言葉方式

パスワードそのものを書かず、本人と家族だけが分かる合言葉を書く方法もある。たとえば「母の旧姓をローマ字小文字で、結婚記念日4桁を後ろにつける」などです。

ただし、合言葉方式は、家族が思い出せない、複数の候補がある、第三者に推測されるという弱点がある。金融、暗号資産、重要メールには単独で使わず、封印カードや専門家保管と組み合わせる。

6-6. 暗号資産の秘密鍵管理

暗号資産の秘密鍵やシードフレーズは、銀行口座のパスワードよりも危険性が高い。見た人が資産を移転でき、移転後の回復が難しいことがあるからです。

推奨される対策:

次の比較表は、対策、内容、注意点を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

対策内容注意点
取引所保管分を明記取引所名、登録メール、相続窓口パスワード直接記載は避ける
自己管理分を分けるハードウェアウォレット、紙、金属バックアップ秘密鍵本体はノートに書かない
分割保管複数の封筒、貸金庫、専門家保管分割方法を本人以外が理解できるようにする
立会い条件複数相続人、遺言執行者、税理士の立会い単独開封による使い込み疑いを防ぐ
税務資料取得価額、取引履歴、損益計算相続税、準確定申告、所得税に必要
Section 07

デジタル遺産と相続税・相続登記の期限管理

相続税、準確定申告、相続登記は、デジタル資料の所在が分からないと遅れやすくなります。

7-1. 相続税申告との関係

相続税申告では、相続財産の全体像を把握する必要があります。デジタル遺産が漏れると、申告漏れ、過少申告、相続人間の不公平、遺留分侵害額請求、税務調査時の説明困難につながる。

国税庁は、相続税の申告書は、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署に提出し、申告と納税の期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内であると説明している。期限までに申告や納税をしなかった場合、加算税や延滞税がかかる場合があります。

エンディングノートに書くべき税務関連情報:

次の比較表は、項目、理由を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目理由
ネット銀行、証券、暗号資産取引所残高証明、評価、相続税申告に必要
取引履歴暗号資産、株式、FX、先物、収益事業の税務確認に必要
確定申告書控え準確定申告、所得把握に必要
会計ソフト個人事業や副業収入の確認に必要
電子帳簿、請求書事業所得、消費税、売掛金に必要
顧問税理士期限管理と申告方針に必要

7-2. 準確定申告との関係

死亡した人に所得税の申告義務がある場合、相続人は準確定申告を行う必要があります。デジタル遺産のうち、暗号資産取引、株式取引、副業、アフィリエイト、動画配信、電子書籍、EC販売、オンライン講座などがあると、所得税の確認が必要になる。

エンディングノートには、次の資料の所在を書く。

  • 会計ソフトの名称
  • ログイン情報の保管場所
  • 確定申告書控え
  • 青色申告決算書または収支内訳書
  • 売上管理システム
  • 請求書発行システム
  • 決済代行会社
  • 暗号資産の損益計算資料
  • 証券会社の年間取引報告書
  • 顧問税理士の連絡先

7-3. 相続登記との関係

デジタル遺産と不動産は一見別に見える。しかし、不動産の固定資産税通知、賃料振込、管理会社との契約、住宅ローン、火災保険、賃貸管理システム、スマートロック、太陽光売電、民泊管理などがデジタル化されている場合、不動産相続にもデジタル情報が関わる。

法務省は、相続登記の申請義務化について、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があると説明している。2024年4月1日より前に相続した不動産も義務化の対象となる。

エンディングノートには、不動産そのものの情報だけでなく、次を記載する。

次の比較表は、項目、例を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目
固定資産税通知保管場所、電子通知の有無
管理会社賃貸管理、マンション管理、駐車場管理
家賃管理振込口座、管理システム、滞納情報
火災保険、地震保険保険会社、証券番号、代理店
住宅ローン金融機関、団信、残高証明
スマートホームスマートロック、監視カメラ、電力管理
土地測量資料境界確認、分筆、地積測量図の所在
Section 08

デジタル遺産で専門家を使い分ける視点

争い、登記、税務、事業、知的財産、金融、セキュリティで主担当は変わります。

デジタル遺産を含む相続は、専門家を一人だけ選べばよいとは限らない。争い、登記、税務、事業、知的財産、金融、セキュリティ、家事事件のどこに問題があるかで主担当が変わる。

8-1. 中核になる専門職

次の比較表は、専門職、主な役割、デジタル遺産での関与例を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

専門職主な役割デジタル遺産での関与例
弁護士紛争、交渉、調停、審判、訴訟、遺留分、使い込み疑い暗号資産の移転疑い、相続人間のアカウント閲覧紛争、遺言執行、死後事務委任
司法書士相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記書類、裁判所提出書類作成不動産関連の電子契約、相続登記、法務局保管遺言の手続支援
税理士相続税申告、税務相談、税務代理、税務調査対応暗号資産評価、ネット証券、電子帳簿、副業収入、準確定申告
行政書士紛争、税務、登記申請を除く書類作成遺産分割協議書、相続人関係説明図、契約一覧整理、遺言作成支援
公証人公正証書遺言、任意後見契約、死後事務委任契約などの公証デジタル遺産を含む公正証書遺言、死後事務委任契約の作成
遺言執行者遺言内容の実現金融機関、暗号資産交換業者、ドメイン会社への手続
信託銀行等遺言書作成支援、保管、執行、財産管理金融資産中心の遺言信託、相続手続代行

8-2. 不動産がある場合

次の比較表は、専門職、役割を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

専門職役割
不動産鑑定士遺産分割や相続税で不動産評価が争点になる場合の評価
土地家屋調査士境界確認、分筆、表示登記、地積測量
宅地建物取引士、不動産仲介業者相続不動産の売却、重要事項説明、売買契約実務

デジタル遺産の整理では、不動産関連のクラウド契約、管理会社との電子契約、家賃管理システム、固定資産税電子通知、住宅ローンのオンライン明細も忘れずに記載する。

8-3. 家庭裁判所で関わる人

相続人間の協議がまとまらない場合、遺産分割調停や審判に進むことがあります。裁判官、家事調停官、家事調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官、鑑定人、専門委員、特別代理人などが関与する可能性があります。

デジタル遺産に関する争点としては、次のようなものがある。

  • 暗号資産が死亡前に移転されたか
  • ネット銀行から引き出された資金が使い込みか
  • SNSやメール閲覧がプライバシー侵害か
  • オンライン事業の価値をどう評価するか
  • 非上場株式や事業用デジタル資産を誰が承継するか
  • 未成年相続人と親権者の利益相反があるか

8-4. 会社、知的財産、特殊財産がある場合

次の比較表は、専門職、役割を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

専門職役割
公認会計士非上場株式評価、会社財務、事業承継の現状分析
中小企業診断士後継者育成、経営改善、承継計画
弁理士特許、商標、意匠、著作物利用契約、特許庁手続
FP家計、保険、老後資金、資産全体の設計と専門家への接続
社会保険労務士遺族年金、労務、社会保険、死亡後の周辺手続

オンライン事業や知的財産は、単なるアカウントではなく、事業価値、収益権、契約、顧客情報、ブランド、著作権が組み合わさる。エンディングノートには、運営継続か閉鎖か、誰に連絡すべきか、どの専門家に相談すべきかを具体的に書く。

Section 09

デジタル遺産エンディングノートを30日で作る手順

第1週から第4週まで、棚卸し、分類、保管設計、専門家確認の順で進めます。

次の時系列は、30日でデジタル遺産エンディングノートを作る実践手順を表します。重要なのは、棚卸し、分類、保管設計、専門家確認の順番を崩さないことです。各週の成果物を見ながら、自分の作業範囲を区切って読み取ってください。

第1週

棚卸し

アプリ、ブックマーク、メール、カード明細、銀行引落し、税務資料を確認します。

第2週

分類

相続、解約、保存、削除、承継、専門家確認に分けます。

第3週

保管設計

秘密情報、端末ロック、二段階認証、事前設定の扱いを決めます。

第4週

法務と税務の確認

遺言書、相続税、不動産、暗号資産、事業、死後事務を確認します。

9-1. 第1週: 棚卸し

まず、完璧な文章を書こうとせず、利用しているサービスを洗い出す。

作業:

  1. スマートフォンのアプリ一覧を確認する
  2. パソコンのブラウザブックマークを確認する
  3. メールボックスで「請求」「利用明細」「更新」「サブスクリプション」「証券」「銀行」「暗号資産」「保険」を検索する
  4. クレジットカード明細と銀行口座の引落しを確認する
  5. 確定申告書、源泉徴収票、年間取引報告書、保険料控除証明書を確認する
  6. 家族に知られていない金融口座、証券口座、暗号資産、サブスクがないか確認する

成果物:

  • サービス一覧
  • 端末一覧
  • 金融、投資、暗号資産一覧
  • サブスク一覧
  • SNS、メール、クラウド一覧

9-2. 第2週: 分類

洗い出したサービスを、相続、解約、保存、削除、事業承継に分ける。

分類表:

次の比較表は、分類、判断基準、例を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

分類判断基準
相続対象金銭的価値があり、承継または払戻しが問題になる預金、証券、暗号資産、売上債権
解約対象死後も請求が続くサブスク、クラウド、レンタルサーバー
保存対象家族に残したい写真、動画、家系資料、連絡先
削除対象家族に見せたくない、残す必要がない私的日記、不要なSNS、古いメール
承継対象事業や収益を続けるドメイン、EC、動画チャンネル、電子書籍
専門家確認対象税務、紛争、評価、個人情報が問題暗号資産、非上場株式、顧客情報

9-3. 第3週: 保管設計

次に、パスワードや秘密情報をどう保管するかを設計する。

作業:

  1. パスワードの使い回しをやめる
  2. 重要アカウントで多要素認証を有効にする
  3. パスワード管理アプリを使うか決める
  4. 端末ロック解除情報の封印カードを作る
  5. 暗号資産の秘密鍵保管方法を見直す
  6. GoogleやAppleなどの死亡時アクセス機能を設定する
  7. 家族または専門家に、ノートの存在と保管場所だけ伝える

9-4. 第4週: 法務、税務、専門家確認

最後に、エンディングノートだけでは足りない部分を確認する。

確認項目:

次の比較表は、項目、相談先を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

項目相談先
遺言書がない、または古い弁護士、司法書士、行政書士、公証人
相続人間の争いが予想される弁護士
不動産がある司法書士、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士
相続税がかかりそう税理士
暗号資産がある税理士、弁護士、暗号資産実務に詳しい専門家
会社や事業がある税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士
死後のSNS削除や葬儀事務を頼みたい弁護士、司法書士、行政書士、公証人
認知症リスクに備えたい弁護士、司法書士、公証人、任意後見相談先
Section 10

デジタル遺産エンディングノートの記載例

ネット銀行、暗号資産、SNS、サブスク、オンライン事業は書き方を分けます。

10-1. ネット銀行の記載例

分類: 金融資産
      サービス名: 〇〇銀行 インターネット支店
      口座種別: 普通預金、定期預金
      口座番号: 末尾1234
      登録メール: main@example.com
      登録電話: 携帯電話末尾5678
      資料の所在: 書斎の金融ファイル、メールの「銀行」フォルダ
      パスワード: このノートには記載しない。パスワード管理アプリを使用。マスターパスワードの所在は封印カードA。
      死亡後の対応: 残高証明を取得し、税理士に渡す。遺言書がある場合は遺言執行者に連絡。
      注意: 生前に家族がログインしないこと。相続開始後は銀行の相続手続に従うこと。

10-2. 暗号資産の記載例

分類: 暗号資産
      保有形態: 国内取引所、ハードウェアウォレット
      取引所: 〇〇取引所、△△取引所
      登録メール: crypto@example.com
      二段階認証: 認証アプリを利用。バックアップコードは封筒B。
      自己管理ウォレット: ハードウェアウォレット1台。保管場所は貸金庫。
      秘密鍵、シードフレーズ: このノートには記載しない。貸金庫の封筒Cに保管。
      税務資料: 書斎PCのTax/Cryptoフォルダ。過去の確定申告書控えは紙ファイル。
      死亡後の対応: 税理士に評価方法を確認し、遺言執行者の指示で移転または換価する。
      開封条件: 配偶者、長男、税理士、弁護士のうち2名以上の立会い。

10-3. SNSの記載例

分類: SNS、人格情報
      サービス名: Facebook
      方針: 追悼アカウント化を希望
      管理人: 配偶者〇〇を指定済み
      保存してよいもの: 家族写真、公開投稿
      見てほしくないもの: 個別メッセージ
      死亡後の対応: 追悼アカウント化の手続を行い、不要な公開範囲の見直しを依頼
分類: メッセージアプリ
      サービス名: LINE
      方針: アカウント削除を希望
      注意: 遺族への引継ぎはできないことを前提にする
      保存希望: 家族写真は別途クラウドのFamilyフォルダに保存済み
      死亡後の対応: 必要な連絡が済んだら、公式窓口へ削除を依頼

10-4. サブスクの記載例

分類: サブスク
      サービス名: 〇〇クラウド
      料金: 月額1,300円
      支払方法: 〇〇カード
      登録メール: main@example.com
      保存対象: Familyフォルダの写真、Taxフォルダの税務資料
      削除対象: Privateフォルダ
      死亡後の対応: 写真と税務資料を保存してから解約する。解約前に税理士へ確認。

10-5. オンライン事業の記載例

分類: 個人事業、ウェブサイト
      事業名: 〇〇メディア
      ドメイン: example.jp
      レジストラ: 〇〇ドメイン
      サーバー: 〇〇サーバー
      収益: 広告、アフィリエイト、電子書籍
      顧客情報: メール配信システムに登録あり
      会計: 〇〇会計ソフト
      死亡後の方針: 3か月は閉鎖せず、弁護士、税理士、事業承継候補者で継続または売却を判断する。
      注意: 顧客情報を家族が個人的に閲覧しない。専門家の助言を受ける。
Section 11

デジタル遺産の相続人が死亡後に確認する初動

端末を保全し、公式手続と資料確認を優先し、むやみにログインや削除をしないことが重要です。

エンディングノートは、死亡後の初動手順も含めて書くと有効です。遺族が慌てて端末を初期化したり、アカウントを削除したりすると、相続財産や税務資料が失われることがあります。

11-1. 最初の24時間から7日

次の比較表は、優先度、行動、理由を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

優先度行動理由
スマートフォン、PC、外付けHDD、USB、紙資料を保全する財産情報、契約情報、税務資料を失わないため
端末をむやみに初期化しないデータ、メール、認証情報が消える可能性があるため
クレジットカード、銀行、証券、保険を把握する不正利用防止、相続財産確定のため
遺言書の有無を確認する財産承継と遺言執行者の確認のため
サブスク請求を洗い出す不要請求を止めるため
SNSの公開範囲を確認するなりすましや不用意な公開を防ぐため

11-2. 最初の1か月

次の比較表は、行動、関係者を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

行動関係者
金融機関へ死亡連絡、残高証明の取得相続人、遺言執行者、税理士
ネット証券、暗号資産取引所の相続手続確認相続人、税理士、弁護士
クレジットカード明細からサブスクを抽出相続人、行政書士、FP
クラウドから必要資料を保全相続人、遺言執行者、弁護士
顧問税理士へ過去申告書、取引履歴を渡す相続人、税理士
不動産資料、登記情報、固定資産税通知を確認相続人、司法書士、税理士
オンライン事業の継続、停止、売却を判断相続人、弁護士、税理士、公認会計士

11-3. やってはいけない初動

次の比較表は、行為、問題を軸に、この章で扱う情報を整理したものです。デジタル遺産を漏れなく確認するうえで重要です。各行の違いと対応方法を読み取り、エンディングノートに残す項目を選んでください。

行為問題
故人のアカウントに無断でログインし続ける規約違反、不正アクセス、相続人間紛争のリスク
暗号資産を一人で移転する使い込み疑い、税務資料欠落、相続財産隠しの疑い
クラウドを即時解約する写真、税務資料、契約情報が消える
SNSメッセージを興味本位で読むプライバシー侵害、家族関係の悪化
端末を初期化する証拠、契約情報、財産情報が失われる
サブスクの支払カードだけ止める請求、債務、アカウント停止、データ消失の問題が残る
Section 12

デジタル遺産エンディングノートで起きやすい失敗

パスワード、財産分配、暗号資産、サブスク、SNSの失敗は事前に修正できます。

12-1. パスワード一覧を紙に書いて机に置く

問題:

  • 生前に盗み見られる
  • 家族間で不信感が生じる
  • 空き巣、災害、紛失に弱い
  • 暗号資産なら即時流出の危険がある

修正:

  • サービス一覧とパスワードを分ける
  • 重要情報は封印保管する
  • 暗号資産は専門家を交えて保管設計をする
  • パスワード管理アプリと緊急アクセスを使う

12-2. エンディングノートに財産の分け方だけを書く

問題:

  • 遺言書の方式を満たさない可能性がある
  • 相続人間で争いになる
  • 遺留分、特別受益、寄与分、使い込み疑いが発生する

修正:

  • 財産の分け方は遺言書で定める
  • エンディングノートは財産発見と手続案内に使う
  • 争いが予想される場合は弁護士に相談する

12-3. 暗号資産の存在だけ書き、秘密鍵の所在を書かない

問題:

  • 相続人が資産にアクセスできない
  • 相続税申告では財産として把握されても、実際には換価できないことがある
  • 相続人間で疑心暗鬼になる

修正:

  • 取引所保管分と自己管理分を分ける
  • 秘密鍵やシードフレーズの保管場所を書く
  • 開封条件を複数人立会いにする
  • 取引履歴と取得価額を残す

12-4. サブスク一覧を作らない

問題:

  • 死後も請求が続く
  • 請求名からサービス名が分からない
  • 解約前に保存すべきデータが消えることがある

修正:

  • クレジットカード明細と銀行引落しを年1回確認する
  • サブスク一覧に解約優先度を書く
  • クラウドは保存対象を明確にする

12-5. SNSを家族に任せるだけにする

問題:

  • 家族が削除すべきか残すべきか判断できない
  • 友人、取引先、家族の感情が対立する
  • メッセージ閲覧によりプライバシー問題が起きる

修正:

  • 追悼化、削除、保存の方針を書く
  • 見てよい範囲、見てはいけない範囲を書く
  • Google、Apple、Facebookなどの事前設定を活用する
Section 13

デジタル遺産エンディングノートの簡易テンプレート

そのまま項目化できる基本欄を、家族構成、財産規模、事業の有無に合わせて拡張します。

以下は、そのままコピーして使える基本テンプレートです。実際には、家族構成、財産規模、事業の有無、暗号資産の有無に合わせて拡張する。

デジタル遺産エンディングノート

      作成日:
      最終更新日:
      次回見直し予定:

      1. このノートの目的
      このノートは、私が死亡したとき、または判断能力が低下したときに、家族や専門家がデジタル遺産、契約、データ、税務資料を確認するための案内です。財産の分け方は遺言書を確認すること。

      2. 最初に連絡してほしい人
      氏名:
      関係:
      電話:
      メール:
      役割:

      3. 遺言書、契約、専門家
      遺言書の有無:
      種類:
      保管場所:
      遺言執行者:
      弁護士:
      司法書士:
      税理士:
      行政書士:
      その他専門家:

      4. デジタル機器
      機器名:
      場所:
      用途:
      ロック解除情報の保管場所:
      死亡後の方針:

      5. メールアカウント
      メールアドレス:
      用途:
      主な契約:
      死亡後の方針:

      6. 金融、投資、決済
      サービス名:
      分類:
      口座や契約の手掛かり:
      資料の所在:
      相続手続窓口:
      注意事項:

      7. 暗号資産、NFT、ウォレット
      取引所名:
      登録メール:
      ウォレットの種類:
      秘密鍵等の保管場所:
      税務資料の所在:
      開封条件:
      死亡後の方針:

      8. サブスク、クラウド、通信契約
      サービス名:
      料金:
      支払方法:
      保存すべきデータ:
      解約時期:
      注意事項:

      9. SNS、メッセージ、写真
      サービス名:
      方針:
      保存してよいもの:
      削除してほしいもの:
      見てほしくないもの:
      手続方法:

      10. 事業用デジタル資産
      事業名:
      ドメイン:
      サーバー:
      決済代行:
      顧客情報:
      会計ソフト:
      承継または閉鎖方針:
      専門家連絡先:

      11. 税務資料
      確定申告書の所在:
      会計ソフト:
      年間取引報告書:
      暗号資産取引履歴:
      請求書、領収書:
      顧問税理士:

      12. 死後の初動
      端末を初期化しない。
      クラウドをすぐ解約しない。
      暗号資産を単独で移転しない。
      金融機関、税理士、弁護士、司法書士に必要に応じて連絡する。

      13. 私の希望
      残してほしいデータ:
      削除してほしいデータ:
      家族に伝えたいこと:
      専門家に依頼してほしいこと:
Section 14

デジタル遺産エンディングノートのFAQ

個別事情で結論が変わるため、一般的な制度説明と注意点として確認してください。

Q1. エンディングノートにパスワードを書いてもよいですか。

一般的には、通常のエンディングノート本体にすべてのパスワードをそのまま書くことは避ける考え方が安全とされています。サービス一覧、契約先、手続窓口、資料の所在は本体に書き、端末ロック、マスターパスワード、秘密鍵、二段階認証コードは別管理にする方法があります。ただし、財産内容、家族関係、保管環境によって適切な設計は変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. エンディングノートだけで相続できますか。

一般的には、財産の分け方を法的に定めたい場合、エンディングノートだけでは足りず、遺言書の方式を満たす必要があるとされています。エンディングノートは、遺言書を補助し、相続人や専門家が財産と契約を発見するための案内として使います。ただし、個別の財産内容や家族関係で必要な文書は変わる可能性があります。具体的には弁護士等の専門家に相談する必要があります。

Q3. 家族にスマートフォンのパスコードを教えておくべきですか。

一般的には、日常的に共有するとプライバシー侵害や不正利用の危険がある一方で、死亡後に全く手掛かりがないとデジタル遺産の確認が難しくなるとされています。封印資料、合言葉方式、専門家保管、AppleやGoogleの事前設定など、条件付きで確認できる方法があります。ただし、端末内の情報や相続人関係で結論は変わる可能性があります。具体的な対応は専門家へ相談する必要があります。

Q4. 暗号資産はエンディングノートにどう書けばよいですか。

一般的には、取引所名、登録メール、ウォレットの種類、税務資料の所在、秘密鍵等の保管場所、開封条件を書く方法が考えられます。秘密鍵やシードフレーズそのものは本体に直接書かない設計が安全とされています。ただし、保有形態、金額、相続人間の関係、税務資料の状況によって必要な対応は変わります。具体的には税理士や弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q5. SNSアカウントは相続できますか。

一般的には、SNSアカウントは預金や株式のように単純に相続できるとは限らず、各サービスの規約や公式手続に従う必要があるとされています。追悼化、削除、閉鎖、データ取得などの選択肢があります。ただし、サービスごとの規約、投稿内容、家族関係で結論は変わる可能性があります。具体的な対応は公式窓口や専門家へ確認する必要があります。

Q6. サブスクはクレジットカードを止めればよいですか。

一般的には、支払手段を止めるだけでは契約そのものが終了しない場合があるとされています。クラウドやサーバーのように、解約前に保存すべきデータがあるサービスもあります。ただし、契約内容、支払方法、保存データの有無により対応は変わる可能性があります。具体的には契約先の公式手続や専門家の確認が必要です。

Q7. 遺言書にパスワードを書いてもよいですか。

一般的には、遺言書は相続開始後に関係者が確認する可能性があるため、パスワードや秘密鍵を直接書くことは慎重に避ける考え方があります。遺言書には財産の承継先や遺言執行者を定め、秘密情報は別の安全な保管方法にする設計が考えられます。ただし、財産の種類や保管体制によって判断は変わります。具体的には弁護士等の専門家に相談する必要があります。

Q8. 不動産相続とデジタル遺産は関係ありますか。

一般的には、固定資産税の電子通知、賃貸管理システム、住宅ローンのオンライン明細、火災保険、スマートロック、太陽光売電、民泊管理などがデジタル化されている場合、関係があるとされています。ただし、不動産の種類、管理状況、契約内容で必要な情報は変わります。具体的には司法書士や税理士等の専門家と連携して確認する必要があります。

Q9. 相続人が勝手に故人のアカウントへログインしてもよいですか。

一般的には、利用規約、不正アクセス、プライバシー、相続人間の公平、証拠保全の問題があるため、安易なログインは避ける考え方がとられます。相続財産の確認が必要な場合は、サービス事業者の相続手続、遺言執行者、弁護士、税理士などを通じて進める方法があります。ただし、緊急性や権限関係で判断は変わります。具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q10. どのくらいの頻度で見直すべきですか。

一般的には、最低でも年1回、できれば半年に1回の見直しが望ましいとされています。パスワード変更、スマートフォン買替え、金融口座開設、暗号資産取引開始、サブスク追加、不動産取得、相続人関係の変化、遺言書変更、事業開始があったときも見直しの契機になります。ただし、財産内容やサービス利用状況で頻度は変わります。具体的には家庭の状況に合わせて専門家へ相談する必要があります。

Section 15

デジタル遺産で専門家連携を設計する

争いの有無、判断能力低下の備え、事業や特殊財産の有無で、連携方法を変えます。

15-1. 争いがない家族の場合

争いがない場合でも、デジタル遺産が多いと手続は複雑になる。基本設計は次のとおりです。

  1. エンディングノートで財産と契約を見つける
  2. 遺言書の有無を確認する
  3. 金融機関、証券会社、暗号資産取引所へ相続手続を問い合わせる
  4. 税理士に相続税申告の要否を確認する
  5. 不動産があれば司法書士に相続登記を相談する
  6. サブスクやSNSは、保存すべきデータを保全してから解約または削除する

争いがないからといって、相続人の一人が単独で暗号資産を移転したり、メールを全面的に閲覧したりすることは避けるべきです。後から使い込み、隠匿、プライバシー侵害の疑いが生じる可能性があります。

15-2. 争いが予想される家族の場合

争いが予想される場合は、エンディングノートの書き方も変える。感情的な表現を避け、客観的な事実と法的文書への接続を重視する。

書くべきこと:

  • 遺言書の保管場所
  • 遺言執行者の連絡先
  • 財産一覧の客観的情報
  • 取引履歴や税務資料の所在
  • 端末、アカウント、暗号資産の保全方法
  • 相続人が単独で処分してはいけない資産

避けるべきこと:

  • 相続人の悪口
  • 使途不明金についての一方的断定
  • 法的効力を期待した曖昧な財産分配メモ
  • 特定相続人だけが秘密鍵にアクセスできる設計

15-3. 認知症や判断能力低下に備える場合

デジタル遺産の問題は、死亡時だけでなく、判断能力低下時にも起きる。本人が認知症になり、スマートフォンのパスコード、ネット銀行、証券、暗号資産、サブスク、クラウドを管理できなくなることがあります。

この場合、エンディングノートだけでは不十分です。任意後見契約、財産管理委任契約、家族信託、見守り契約、死後事務委任契約などを組み合わせることがあります。金融機関やプラットフォームは、本人以外のログインや操作を認めないことが多いため、事前の法的設計が重要です。

Section 16

デジタル遺産エンディングノートの最終確認

情報を列挙するだけでなく、相続人と専門家が手続へ進める状態にしておきます。

次の一覧は、今すぐ確認したい5つの作業をまとめたものです。重要なのは、この5項目を押さえるだけで、見えない財産の漏れ、秘密情報の漏えい、期限遅れ、家族間の疑いを減らしやすくなる点です。上から順に実行し、完了日を記録するとよいと読み取れます。

01

一覧化する

スマートフォン、パソコン、メール、金融、証券、暗号資産、サブスク、SNSを洗い出します。

02

秘密を分ける

パスワードや秘密鍵を本体に直接書かず、安全な保管方法と開封条件を決めます。

03

遺言書と分ける

財産の分け方は遺言書で定め、エンディングノートは案内図として使います。

04

専門家につなぐ

相続税、不動産、事業、暗号資産、紛争の可能性がある場合は専門家確認を入れます。

05

見直す

半年から1年に1回、ノート、遺言書、パスワード保管、税務資料を更新します。

デジタル遺産を生前に整理しておくためのエンディングノートの書き方で最も重要なのは、情報を単に列挙することではありません。相続人が見つけるべき情報、専門家が確認すべき情報、第三者に見せてはいけない情報を分け、遺言書、税務資料、相続登記、サブスク解約、SNS手続、暗号資産の秘密鍵管理を一つの実務フローに接続することです。

本人が今すぐ行うべきことは、次の五つです。

  1. スマートフォン、パソコン、メール、金融、証券、暗号資産、サブスク、SNSを一覧化する
  2. パスワードや秘密鍵をエンディングノート本体に直接書かず、安全な保管方法を決める
  3. 財産の分け方は遺言書で定め、エンディングノートは案内図として使う
  4. 相続税、不動産、事業、暗号資産、紛争の可能性がある場合は専門家に相談する
  5. 半年から1年に1回、ノート、遺言書、パスワード保管、税務資料を見直す

デジタル遺産は、本人が整理しなければ家族には見えない。見えない財産は、相続から漏れ、税務申告から漏れ、争いの火種になり、思い出のデータは失われ、不要な契約は請求を続ける。だからこそ、エンディングノートは「死後の手紙」ではなく、家族と専門家のための実務文書として作る必要があります。

Reference

参考情報源

制度、税務、セキュリティ、主要サービスの公式情報を中心に確認しています。

公的機関と公式情報

  • 独立行政法人国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』 スマホの中の見えない契約で遺された家族が困らないために」
  • 法務省「遺言書の様式等についての注意事項」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて FAQ」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
  • Google アカウント ヘルプ「アカウント無効化管理ツールについて」
  • Apple サポート「Apple Accountの故人アカウント管理連絡先を追加する方法」
  • LINEヘルプセンター「故人のアカウントを閉鎖するには?」
  • 独立行政法人情報処理推進機構 IPA「不正ログイン対策特集ページ」
  • 警察庁「不正アクセス対策」
  • 法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート あなたに届け、わたしの想い」