売却査定の前に、相続 人、遺言、登記、税務期限、境界、規制、売却権限を同時に確認します。
査定額を見る前に、売主の権限と土地の状態を一枚に集約します。
相続した土地を売りたいときに最初に行う中核作業は、不動産会社への査定依頼そのものではありません。相続人、遺言、土地の範囲、登記名義、税務期限、物理的状態、売却に必要な合意権限を同時に確認し、売却できる状態を作るための初期調査台帳を作成することです。
土地の売却では、権利、登記、税務、境界、都市計画、農地規制、森林届出、近隣関係、契約不適合責任が重なります。相続土地ではさらに、誰が相続人か、遺言があるか、遺産分割協議が成立しているか、相続登記が済んでいるか、税務上の期限や特例を失わないかが問題になります。
次の表は、初期調査台帳で最初に確認する8つの領域を整理したものです。各列は確認事項、資料、相談先の関係を示しており、どの論点を誰に確認すれば売却準備が前へ進むのかを読み取るために重要です。
| 区分 | 最初に確認する事項 | 主な確認資料 | 主な相談先 |
|---|---|---|---|
| 相続開始 | 死亡日、最後の住所、相続開始を知った日 | 死亡診断書、戸籍、住民票除票 | 市区町村窓口、行政書士、司法書士 |
| 遺言 | 遺言書の有無、方式、遺言執行者の有無 | 公正証書遺言、自筆証書遺言、遺言書情報証明書 | 弁護士、司法書士、公証人、遺言書保管官 |
| 相続人 | 法定相続人、相続放棄の可能性、未成年者や後見利用者の有無 | 戸籍一式、法定相続情報一覧図 | 司法書士、行政書士、弁護士 |
| 土地の特定 | 所在、地番、地目、地積、共有持分、抵当権 | 登記事項証明書、公図、地積測量図、名寄帳 | 司法書士、土地家屋調査士 |
| 税務期限 | 相続税、準確定申告、譲渡所得税、特例適用可能性 | 固定資産税評価証明、路線価、取得時資料 | 税理士 |
| 物理状態 | 境界、越境、接道、残置物、建物、擁壁、災害リスク | 現地写真、測量図、都市計画資料 | 土地家屋調査士、建築士、宅地建物取引士 |
| 売却権限 | 誰が売主になるか、全員合意があるか、遺産分割協議書の要否 | 遺産分割協議書、印鑑証明書、登記情報 | 弁護士、司法書士、行政書士 |
| 市場性 | 想定価格、売却方法、仲介か買取か、国庫帰属の検討 | 取引価格情報、査定書、鑑定評価 | 宅地建物取引士、不動産鑑定士 |
台帳を作らず売却活動に入ると、売主が確定しない、相続人の反対で契約前に止まる、税務特例を検討しないまま売る、境界や越境で買主から追加資料を求められる、農地や森林などで別手続が必要になる、といった問題が起こりやすくなります。
言葉の違いを早めに押さえると、登記、税務、売却権限の判断を誤りにくくなります。
相続土地の売却では、相続、遺産分割、相続登記、相続人申告登記、法定相続情報、譲渡所得、境界という言葉が同時に出てきます。次の一覧は、似た用語がどの段階で効いてくるかを示すもので、査定額だけでは分からない手続上の前提を読み取るために重要です。
亡くなった人の財産上の権利義務を一定の人が承継します。亡くなった人を被相続人、承継する人を相続人といいます。
相続人全員で遺産の分け方を合意し、誰がどの財産をどの割合で取得するかを遺産分割協議書に整理します。
不動産の登記名義を亡くなった人から相続人へ変更します。売却で買主へ所有権を移転する前提になります。
相続人申告登記は、自分が登記名義人の相続人である旨を法務局へ申し出る制度です。売却のための完全な名義変更とは別物です。
土地建物の売却代金から取得費、譲渡費用、特別控除を差し引いて考えます。取得時資料の有無が税額に影響します。
筆界は登記された土地の範囲を区画する公法上の線です。筆界特定制度は新たな境界を作る制度ではなく、登記時の筆界を調査して特定する制度です。
査定は有用ですが、査定額は土地が売れる状態にあることを前提にした参考値です。相続登記未了、相続人全員の合意なし、境界不明、農地法上の許可が必要、地中埋設物や越境の疑いがある場合には、査定額どおりに売れるとは限りません。
相続した土地の売却では、売るかどうかだけでなく、相続を承認するか、放棄するか、申告が必要か、登記をいつ行うかを同時に管理します。次の表は主要期限と実務上の意味を並べたもので、早い期限から順に何を見落としてはいけないかを読み取るために重要です。
| 期限 | 手続 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 相続開始を知った時から3か月以内 | 相続放棄、限定承認、熟慮期間伸長の検討 | 借金が多い、管理不能な土地だけがある、全体像が不明な場合に重要です。 |
| 相続開始を知った日の翌日から4か月以内 | 準確定申告 | 被相続人に所得税申告義務がある場合に相続人が行います。 |
| 相続開始を知った日の翌日から10か月以内 | 相続税申告と納税 | 遺産総額が基礎控除額を超える場合に重要です。 |
| 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内 | 相続登記 | 2024年4月1日から義務化され、正当な理由なく怠ると過料の可能性があります。 |
| 2027年3月31日まで | 2024年4月1日前の相続未登記への経過措置 | 古い相続未登記土地でも義務化の対象になります。 |
| 住所や氏名の変更日から2年以内 | 住所等変更登記 | 2026年4月1日から義務化され、売却前の本人確認にも関係します。 |
| 森林の土地を取得した日から90日以内 | 森林の土地所有者届出 | 相続で森林の土地を取得した場合も市町村長への届出が問題になります。 |
初期対応は短い期限から順に確認します。次の時系列は、3か月、4か月、10か月、3年という期限の並びを示しており、最初の1か月で相続放棄の可能性、相続人の範囲、土地の所在、税務申告の要否を見極める理由を読み取るために重要です。
売却査定の準備をしながら、放棄や申告の判断に必要な資料を集めます。
期間内に判断できない場合には、家庭裁判所へ期間伸長の申立てを検討することがあります。
亡くなった人に所得税申告義務がある場合、相続人が申告を行う可能性があります。
土地評価額が大きく現預金が少ない場合、納税資金として売却代金を使う計画も早めに検討します。
売却する土地ほど、買主への所有権移転に備えて相続登記の見通しを早めに立てます。
誰が権利を持ち、誰の合意が必要かを確定します。
相続土地の売却で最初に確認すべき資料は遺言書です。遺言があるかないかで、売主、必要書類、遺産分割協議の要否、遺言執行者の権限、他の相続人との協議方法が変わります。
遺言には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言があります。公正証書遺言は検索や確認のルートがあり、自筆証書遺言は自宅、貸金庫、書類棚、法務局の自筆証書遺言書保管制度を確認します。自宅で見つかった自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要となる場合があるため、安易に開封しないことが重要です。
遺言と相続人調査は、売却権限の有無を段階的に確認する作業です。次の判断の流れは、遺言の有無から相続登記や協議へ進む順番を示しており、どの段階で専門家や家庭裁判所の関与が必要になりやすいかを読み取るために重要です。
公証役場、法務局、自宅、貸金庫、書類棚などを確認します。
遺言内容、遺留分、執行者の権限を確認して登記方針を決めます。
単独取得、共有取得、換価分割のどれにするかを検討します。
出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、住民票、戸籍の附票などを集めます。
利益相反、成年後見、不在者財産管理人などの検討が必要になる場合があります。
相続人調査で見落としやすいのは、前婚の子、認知した子、養子、代襲相続人、兄弟姉妹相続の甥姪、海外在住者、連絡不能者です。相続人の中に未成年者、判断能力を欠く人、行方不明者がいる場合、家族だけで署名押印を代行することはできず、家庭裁判所や専門家の関与が必要となる可能性があります。
戸籍の束を何度も提出する負担を減らすには、法定相続情報証明制度が有効です。法定相続情報一覧図の写しは、相続登記、預金払戻し、相続税申告、年金等手続などで使える場合があります。
所在、地番、地目、地積、名義、抵当権、共有持分を資料で確認します。
「実家の土地」「田舎の山」「祖父の畑」といった日常語だけでは、不動産売却はできません。売却では、登記記録上の所在、地番、地目、地積、所有者、共有持分、抵当権等を確認する必要があります。
土地を正確に特定する資料は、登記と現地と税務の情報をつなぐ役割を持ちます。次の表は、各資料で分かる内容と取得先を整理したもので、どの資料を集めれば売却対象の土地を漏れなく把握できるかを読み取るために重要です。
| 資料 | 分かること | 取得先の例 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 所在、地番、地目、地積、所有者、共有持分、抵当権等 | 法務局 |
| 公図 | 土地の位置関係、隣接地番 | 法務局 |
| 地積測量図 | 測量成果、筆界点、面積計算 | 法務局 |
| 固定資産税課税明細書 | 課税地目、評価額、課税状況 | 市区町村、都税事務所等 |
| 名寄帳 | 被相続人が同一市区町村内に持つ不動産一覧 | 市区町村、都税事務所等 |
| 都市計画情報 | 用途地域、建ぺい率、容積率、防火地域、道路 | 自治体、都市計画課等 |
| ハザード情報 | 洪水、土砂災害、津波、液状化等 | 自治体、国土交通省等 |
| 現地写真 | 境界標、越境、擁壁、残置物、利用状況 | 現地調査 |
2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度が施行されています。特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧化して証明する制度で、相続人が被相続人名義の不動産を見落とさないための手段になります。ただし、登記上の住所や氏名が古い場合には検索条件の不一致で漏れが生じる可能性があるため、名寄帳や固定資産税通知なども併用します。
相続登記は、義務への対応であると同時に、買主へ所有権を移転する前提作業です。次の表は、売却前に選びやすい登記方針を比較したもので、相続人間の合意内容と売却実務の負担がどう変わるかを読み取るために重要です。
| 方法 | 内容 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 単独取得登記 | 遺産分割により一人が土地を取得し、その人が売る | 一人が代表して売却しやすい | 代償金、税務、協議書記載に注意します。 |
| 共有取得登記 | 複数相続人の共有名義にし、全員で売る | 売却代金を持分に応じて分ける | 全員が売買契約、決済、登記書類に関与します。 |
| 換価分割前提 | 遺産分割協議書で売却して代金分配する旨を定める | 誰も土地を使わず現金で分けたい | 代表者権限、経費、税金、残金分配の文言が重要です。 |
| 遺言に基づく登記 | 遺言で取得者が指定されている | 遺言内容が明確な場合 | 遺留分、遺言解釈、遺言執行者の権限に注意します。 |
2024年4月1日から相続登記の申請は義務化されています。相続によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
また、2026年4月1日から住所等変更登記も義務化されています。売却前には、登記上の住所や氏名が現在の印鑑証明書、本人確認書類と一致しているかも確認します。
相続税、準確定申告、譲渡所得税、特例、取得費資料を先に確認します。
相続した土地の売却では、税金を二段階で考えます。第一段階は相続時の税金、第二段階は売却時の税金です。土地は現金化しにくい一方で評価額が大きくなりやすいため、相続税の有無と納税資金の見通しを早期に確認します。
土地の相続税評価では、路線価方式、倍率方式、宅地の形状補正、小規模宅地等の特例などが問題になります。ただし、相続税評価額は売却価格そのものではありません。相続税評価額、固定資産税評価額、公示価格、地価調査価格、実勢価格、査定価格、鑑定評価額は、目的と算定方法が異なります。
売却時の税務では、譲渡所得の計算構造を押さえる必要があります。次の一覧は、税額に影響しやすい要素を並べたもので、どの資料を売却前に探すべきか、どの特例を税理士に確認すべきかを読み取るために重要です。
譲渡所得 = 売却代金 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除で考えます。
売却時相続税を支払った人が一定期間内に相続財産を譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を取得費に加算できる場合があります。
特例被相続人の居住用家屋や敷地を一定要件で売却した場合、令和9年12月31日までの譲渡について、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる場合があります。2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は、控除額が2,000万円までとなる場合があります。
期限あり一定の宅地等について、相続税の課税価格に算入すべき価額を一定割合減額する制度です。売却方針や遺産分割とあわせて確認します。
相続時税務上の特例は、要件、期限、添付書類、併用関係が複雑です。相続税申告が必要な土地、空き家付き土地、取得費不明の土地、共有で売る土地、売却代金を相続人間で分ける土地では、売却前に税理士へ相談する必要が高くなります。
買主が安心して取得できる土地か、建築や利用が可能かを確認します。
相続した土地の売却で多い問題が、境界不明です。古い土地では、境界標がない、公図と現況が一致しない、隣地の塀や樹木が越境している、地積測量図が古い、隣地所有者が不明ということがあります。
境界と現地状態は、価格、買主の安心、金融機関の担保評価、契約不適合責任に直結します。次の一覧は、売却前に最低限確認する物理的な論点を整理したもので、どの不明点が価格減額や契約条件の厳格化につながるかを読み取るために重要です。
境界標の有無、隣地との境界確認書、地積測量図の有無を確認します。
公図と現地の形状が大きく違わないか、筆界点や面積の整合性を確認します。
隣地の塀、樹木、屋根、配管、こちら側の建物や樹木の越境を確認します。
建築基準法上の接道、私道負担、通行掘削承諾、上下水道管の引込みを確認します。
擁壁、崖、排水、土壌汚染、井戸、浄化槽、地中埋設物、残置物を確認します。
土砂災害、浸水、津波、液状化など、買主の利用判断に関わる情報を確認します。
境界が曖昧な土地でも売却自体が不可能とは限りません。ただし、買主や金融機関は将来紛争を嫌うため、境界未確定のまま売る場合には価格が下がる、契約条件が厳しくなる、後日の紛争が起こる可能性があります。境界確認や測量は時間がかかるため、初期調査段階で土地家屋調査士へ相談するのが合理的です。
土地の利用規制は、買主がその土地をどう使えるかを左右します。次の表は、相続土地で特に確認したい規制を整理したもので、宅地として売れるのか、農地や森林として別手続が必要なのか、大規模取引の届出が必要なのかを読み取るために重要です。
| 規制・届出 | 確認する内容 | 売却への影響 |
|---|---|---|
| 都市計画 | 用途地域、建ぺい率、容積率、防火地域、都市計画道路、地区計画 | 建築可能性と価格に影響します。 |
| 災害・造成 | 宅地造成及び特定盛土等規制、土砂災害警戒区域、浸水想定区域 | 買主の利用計画や調査範囲が変わります。 |
| 農地 | 相続時の農業委員会への届出、売買や転用時の許可 | 許可を前提にしない契約は効力や決済に問題を生じさせる可能性があります。 |
| 森林 | 所有者となった日から90日以内の届出、伐採届、土砂災害リスク、立木評価 | 売却先が限られ、管理費用の検討が必要になります。 |
| 大規模土地取引 | 市街化区域2,000平方メートル以上、その他都市計画区域5,000平方メートル以上、都市計画区域外10,000平方メートル以上など | 国土利用計画法に基づく届出が必要となる場合があります。 |
農地を相続した場合は農業委員会への届出、森林を相続した場合は森林の土地所有者届出制度が問題になります。森林の届出書様式は2026年4月から改正され、国籍等の記載事項も追加されています。
仲介、買取、入札、隣地売却、国庫帰属を比較し、反対者がいる場合の対応も整理します。
初期調査、相続登記、税務方針、境界確認、法的規制の把握が進んだら、売却方法を選びます。次の一覧は代表的な出口を比較したもので、早さ、価格、買主層、手続負担の違いからどの選択肢を検討するかを読み取るために重要です。
不動産会社に買主探しを依頼します。市場価格に近い価格を狙えますが、売却まで時間がかかる場合があります。
市場価格不動産会社や買取業者が買主になります。早く現金化しやすい一方、仲介より価格が低くなることがあります。
早期現金化価格、販売戦略、広告方法、手数料、境界や残置物への対応を比較します。相続人間で価格の公平性を説明する材料にもなります。
比較狭小地、袋地、接道不十分な土地、不整形地、私道持分などは、隣地所有者にとって利用価値が高い場合があります。
隣地活用相続等で取得した土地を、一定要件のもと国庫へ帰属させる制度です。建物がある土地、担保権や使用収益権がある土地、境界不明の土地などは対象外または不承認となる可能性があります。
要件確認相続人の一部が売却に反対する場合、問題は単なる不動産売却ではなく相続紛争になります。実家を残したい、価格に納得しない、預金使い込みを疑っている、特別受益や寄与分を主張している、遺留分をめぐる対立がある、といった事情が典型です。
相続人間で納得できる売却を進めるには、価格だけでなく売却しない場合の負担も共有します。次の表は合意形成に使う資料を整理したもので、どの資料が価格の公平性、費用負担、将来コストの説明に役立つかを読み取るために重要です。
| 共有する資料 | 合意形成での役割 |
|---|---|
| 複数の不動産会社の査定書 | 価格の幅と販売戦略を比較できます。 |
| 取引価格情報や近隣成約事例 | 査定額の根拠を相続人間で確認できます。 |
| 固定資産税評価額、路線価、公示価格等 | 市場価格以外の参考指標を確認できます。 |
| 測量費、解体費、残置物処分費、仲介手数料、税金の概算 | 手取り額と経費負担を具体化できます。 |
| 売却代金の分配シミュレーション | 相続人ごとの受取額を見通せます。 |
| 売却しない場合の固定資産税、管理費、草刈り、維持費 | 保有し続けるコストを説明できます。 |
話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用することがあります。調停では当事者双方から事情を聴き、資料提出や鑑定を行い、合意を目指して話合いを進めます。不動産価格が争点となる場合、不動産鑑定士の鑑定評価が重要になることがあります。
相続土地の種類によって、最初に見るべき論点は変わります。次の表はケース別の初動判断を整理したもので、自分の土地がどの類型に近いか、どの専門家や資料を優先するかを読み取るために重要です。
| ケース | 最初に見る論点 |
|---|---|
| 兄弟姉妹で共有しそうな土地 | 共有名義にすると将来の売却、賃貸、担保設定、管理費負担で意見が割れる可能性があります。売却予定なら換価分割を検討します。 |
| 実家建物付き土地 | 建物を残すか解体するか、空き家特例、解体時期、売却時期、耐震基準、相続人の数、居住状況を確認します。 |
| 農地 | 農業委員会への届出、農地として売るか転用目的で売るか、許可や届出の要否を確認します。 |
| 山林 | 境界不明、接道不良、管理困難、森林所有者届出、伐採届、土砂災害リスク、立木評価を確認します。 |
| 抵当権付き土地 | 売却代金で抹消できるか、借入債務や相続放棄の判断に影響しないかを確認します。 |
| 借地人や賃借人がいる土地 | 借地権、賃貸借契約、地代、更新料、立退き、底地価格、契約書、入金履歴を確認します。 |
| 遠方の土地 | 草木の繁茂、倒木、越境、無断使用、不法投棄、建物破損、隣地トラブルを現地写真などで確認します。 |
| 土地だけ放棄したい場合 | 相続放棄は特定の土地だけを放棄する制度ではありません。不要土地と預金を切り分けて選ぶことはできません。 |
最初から全員に相談するのではなく、台帳で論点を見極めて順番を決めます。
相続した土地の売却は、多職種連携が必要です。どの専門家に何を相談するかを誤ると、時間と費用が増えます。次の表は主な専門家の役割を整理したもので、紛争、登記、税務、境界、価格、売却活動のどこで相談先が変わるかを読み取るために重要です。
| 専門職 | 主な役割 | 相談すべき場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 紛争交渉、遺産分割調停、審判、訴訟、遺留分、使い込み疑い | 相続人間でもめている、反対者がいる、裁判所手続が必要 |
| 司法書士 | 相続登記、住所変更登記、法定相続情報、登記書類、裁判所提出書類作成 | 不動産名義変更、戸籍収集、登記義務対応 |
| 税理士 | 相続税申告、準確定申告、譲渡所得税、特例判定、税務調査対応 | 土地評価が大きい、相続税や売却益が出る可能性がある |
| 行政書士 | 遺産分割協議書、相続関係説明図、許認可書類作成 | 紛争がない書類整理、農地や行政手続の補助 |
| 公証人、遺言執行者、信託銀行等 | 遺言確認、遺言内容の実現、資産承継支援 | 遺言で売却、換価、分配が指示されている場合 |
| 不動産鑑定士 | 適正価格評価、裁判所鑑定、遺産分割評価 | 相続人間で価格が争いになる、高額土地 |
| 土地家屋調査士 | 境界確認、測量、分筆、地積更正、表示登記 | 境界不明、分筆売却、面積不一致 |
| 宅地建物取引士、不動産仲介業者 | 査定、媒介、買主探索、重要事項説明、契約実務 | 売却活動、販売戦略、買主対応 |
| 市区町村、法務局、税務署 | 戸籍、固定資産税、登記、相続税申告、遺言保管 | 公的資料の取得、届出、申告 |
一般的には、相続人と遺言を確認し、土地の登記情報、固定資産税情報、現地状況を集め、放棄や紛争の可能性があれば弁護士に相談します。その後、相続登記を司法書士、税務概算を税理士、境界や測量を土地家屋調査士、価格や販売を不動産会社または不動産鑑定士に確認し、相続人全員で売却方針を決めます。
売却査定を現実的に評価できる状態まで、確認項目を埋めていきます。
最初の30日では、相続関係、不動産関係、税務関係、売却関係を並行して確認します。次の一覧は短期間で集めるべき情報を分野別に整理したもので、どの項目が埋まれば不動産会社の査定額を現実的に評価できるかを読み取るために重要です。
売却契約前には、契約条件と相続人間の分配方法も確認します。次の表は契約前に確認する条項を整理したもので、売主の権限、決済、境界、責任、許可、費用精算、代金分配のどこで問題が生じやすいかを読み取るために重要です。
| 確認領域 | 主な条項 |
|---|---|
| 売主と代理 | 売主が誰か、共有者全員が契約当事者か、代理人の委任状の範囲は十分か。 |
| 代金と日程 | 手付金、残代金、決済日、引渡日、仲介手数料の発生時期。 |
| 境界と測量 | 境界明示義務の有無、測量未了の場合の精算方法、私道や承諾の扱い。 |
| 土地のリスク | 契約不適合責任の範囲と期間、地中埋設物、土壌汚染、残置物、建物解体。 |
| 許可と抹消 | 農地法許可、開発許可、隣地承諾などの停止条件、抵当権抹消、差押え解除。 |
| 税金と分配 | 固定資産税、都市計画税の精算、相続人間の売却代金分配方法。 |
宅地建物取引業者が仲介する場合、宅地建物取引士による重要事項説明が重要です。これは買主保護の制度ですが、売主にとっても土地の法的、物理的リスクがどのように整理されているかを確認する機会になります。
土地を売りに出す前に、権利の確定と市場性の形成を分けて進めます。
相続土地の売却でよくある失敗は、相続人全員の同意を取らずに売却活動を始めること、相続登記を後回しにすること、税金を売却後に考えること、境界を軽視すること、高い査定額だけで不動産会社を選ぶこと、不要土地を放置することです。
相続土地売却は、権利の確定と市場性の形成という二段階で考えると整理しやすくなります。次の強調表示はこの二段階の関係を示しており、相続手続と不動産売却を混同しないために重要です。
第一段階では相続人、遺言、遺産分割、相続登記、税務期限を確認します。第二段階では境界、測量、価格、規制、契約、買主探索を整えます。
初期調査台帳は、次の項目をメモとして埋める形で使えます。次の表は記録欄と記録内容を対応させたもので、相続調査と不動産調査を同時に進めるために、何を空欄のままにしないかを読み取るために重要です。
| 台帳欄 | 記録する内容 |
|---|---|
| 被相続人 | 氏名、死亡日、最後の住所、本籍、死亡を知った日。 |
| 遺言 | 有無、種類、保管場所、遺言執行者、検認の要否。 |
| 相続人 | 相続人一覧、連絡先、相続放棄の可能性、未成年者、後見利用者、行方不明者、海外在住者、売却への賛否。 |
| 土地 | 所在、地番、地目、地積、登記名義人、共有持分、抵当権や差押え、固定資産税評価額、名寄帳、所有不動産記録証明制度の利用。 |
| 現地 | 境界標、測量図、越境、接道、建物、残置物、擁壁、崖、排水、災害リスク、農地や森林などの規制。 |
| 税務 | 相続税申告、準確定申告、取得費資料、小規模宅地等の特例、空き家特例、取得費加算の特例、売却益概算。 |
| 売却方針 | 単独取得後売却、共有売却、換価分割、仲介、買取、隣地売却、国庫帰属制度。 |
| 専門家相談 | 弁護士、司法書士、税理士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産会社、その他の相談予定。 |
相続した土地を売りたいときに最初にやるべきことは、土地を売りに出すことではなく、土地を売れる状態にすることです。最初の30日で初期調査台帳を作り、争いがあれば弁護士、登記は司法書士、税務は税理士、境界は土地家屋調査士、価格や販売は不動産鑑定士と宅地建物取引士に相談する順序を意識します。
相続、登記、税務、土地規制、裁判所手続に関する公的情報を中心に整理しています。