後継者、自社株、事業用不動産、遺言、遺留分、納税資金、事業承継 税制、死後の期限管理まで、計画書に入れるべき実務項目を整理します。
経営資源を集中させつつ、親族間の公平と納税資金を同時に設計します。
事業承継計画は、後継者を決めるだけの文書ではありません。経営権、自社株、事業用不動産、金融機関対応、親族間の公平、相続税や贈与税の納税資金、遺留分、相続登記、許認可、知的財産、役員退職金、生命保険、遺言執行までを、同じ計画の中で結び付ける必要があります。
この一覧は、計画に入れるべき相続対策・税務対策の全体像を、経営の継続と親族間の納得という2つの視点から整理したものです。最初に3つの軸を確認すると、どの項目を優先して検討すべきか読み取りやすくなります。
後継者へ経営資源を集中させるだけでは、遺留分や納税資金で会社が止まるおそれがあります。事業承継計画では、承継先、財産配分、税額試算、期限管理、専門家体制を一体化することが重要です。
次の3つの項目は、読者が計画全体の優先順位を見誤らないための入口です。経営権、財産権、期限のどこに弱点があるかを確認すると、後の章で見る表やチェック項目の意味がつかみやすくなります。
後継者に議決権や代表権を集め、会社が意思決定できる状態を維持します。
非後継者に対し、代償金、保険金、現預金、不動産などで説明可能な調整を行います。
相続税、贈与税、納税猶予、登記、申告期限を並行して管理し、手続遅れを防ぎます。
計画本文や別紙に入れる中核項目を、担当専門職と目的ごとに整理します。
事業承継計画の中核項目は、経営・財産・税務・紛争予防・死後手続にまたがります。次の比較表では、どの項目を計画本文または別紙に置くべきか、主な担当専門職と目的を対応させて確認します。
| 区分 | 計画に記載すべき項目 | 主な担当専門職 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 基本方針 | 承継の類型、後継者、承継時期、経営理念、非後継者への説明方針 | 中小企業診断士、弁護士、税理士 | 事業継続と親族調整の方向性を明確にする |
| 財産棚卸し | 自社株、事業用不動産、貸付金、借入金、保証、保険、知財、デジタル資産 | 税理士、公認会計士、司法書士、弁理士 | 相続財産と事業資産を正確に把握する |
| 株式承継 | 株主名簿、議決権割合、種類株式、譲渡制限、所在不明株主、株式評価 | 弁護士、司法書士、税理士、公認会計士 | 経営権の分散を防ぐ |
| 遺言 | 公正証書遺言、自筆証書遺言保管、遺言執行者、予備的遺言 | 弁護士、司法書士、公証人 | 死亡後の権利移転を円滑にする |
| 遺留分対策 | 遺留分試算、代償金、生命保険、民法特例、合意書 | 弁護士、税理士 | 集中承継と公平を調整する |
| 生前贈与 | 暦年課税、相続時精算課税、贈与税申告、贈与契約書、株式贈与 | 税理士、弁護士 | 承継時期と税負担を制御する |
| 事業承継税制 | 特例承継計画、個人事業承継計画、認定、年次報告、継続届出書 | 税理士、中小企業診断士、公認会計士 | 納税猶予制度の要件を維持する |
| 納税資金 | 現金、保険金、役員退職金、金融機関融資、延納、物納可能性 | 税理士、FP、金融機関 | 相続税で会社資金を毀損させない |
| 不動産 | 相続登記、境界、賃貸借、担保、共有解消、小規模宅地等の特例 | 司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、税理士 | 事業用不動産の使用権を確保する |
| 紛争対応 | 使い込み疑い、特別受益、寄与分、調停、審判、訴訟対応 | 弁護士 | 相続人間の対立で事業が止まらないようにする |
| 死後手続 | 3か月、4か月、10か月、3年の期限管理、代表者変更、銀行対応 | 弁護士、税理士、司法書士、社労士 | 相続発生後の実行手順を明確にする |
| モニタリング | 年1回の株価試算、税制改正確認、親族会議、専門家レビュー | すべての関係専門職 | 計画を陳腐化させない |
事業承継計画は、現経営者から後継者へ、経営権、財産、人的関係、信用、ノウハウを段階的に移すための計画です。相続対策は、遺産分割、遺留分、相続登記、遺言執行、相続人間の紛争、事業用財産の分散を予防する設計を指します。
税務対策は、相続税、贈与税、所得税、法人税、消費税、登録免許税、不動産取得税などを、適法に見積もり、申告期限と納税資金を確保し、特例を受けるための要件を満たす設計です。相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数を基礎に考えます。
遺留分は一定の相続人に最低限保障される相続上の利益です。後継者に自社株式や事業用不動産を集中させる場合、金銭支払いの可能性を前提に、代償金、生命保険、民法特例、合意書を検討します。納税猶予は免税そのものではなく、要件違反や届出漏れがあれば猶予税額と利子税の問題が生じ得ます。
承継類型、経営権と財産権の分離、5年以上前からの準備を明確にします。
基本方針では、第一候補だけでなく、第二候補、M&A、廃業を伴う資産承継まで書いておくと、後継者候補の病気、辞退、国外転居、資金不足、金融機関の不同意などに備えやすくなります。次の比較表では、計画書に入れる方針ごとに読み取るべき内容を整理しています。
| 項目 | 記載すべき内容 |
|---|---|
| 第一承継方針 | 長男Aを代表取締役候補とし、発行済株式の過半数をAに集中する |
| 第二承継方針 | Aが承継不能の場合、常務Bによる従業員承継を検討する |
| M&A方針 | 親族内、従業員承継が困難な場合、事業承継・引継ぎ支援センター等への相談を開始する |
| 非後継者方針 | 代償金、生命保険金、収益不動産、現預金等を組み合わせて説明可能な公平を確保する |
| 廃業方針 | 在庫処分、従業員対応、借入返済、保証解除、許認可廃止届を定める |
親族間で誤解が起きやすいのは、「会社を継ぐ」と「財産を多く取得する」が同じ意味だと受け止められることです。計画では、経営権の集中は会社を守るための措置であり、非後継者の生活保障や相続上の公平とは別に調整する、と明記します。
議決権のある株式を後継者に集中させる一方、非後継者には議決権のない株式、配当期待、保険金、代償金、不動産、現預金を組み合わせる選択肢があります。種類株式や議決権制限株式を使う場合は、会社法、定款変更、税務評価、将来の売却可能性を確認します。
承継は一度に終えるより、時間軸を置いて段階的に進める方が安定します。次の時系列では、生前準備から相続発生後までの順番を示しており、早い時点ほど後から修正しにくい論点を扱うことが読み取れます。
後継者選定、株価試算、親族関係の把握、会社の磨き上げ、財務改善を始めます。
生前贈与、相続時精算課税、暦年贈与、遺留分対策、特例承継計画等を確認します。
遺言完成、保険設計、株主名簿整備、金融機関説明、代表権移行準備を進めます。
役員退職金規程、退職慰労金、決算対策、納税資金、許認可変更準備を行います。
相続放棄3か月、準確定申告4か月、相続税申告10か月、相続登記3年以内を管理します。
自社株式、事業用不動産、個人事業用資産、知的財産を一覧化します。
同族会社では、先代が持つ自社株式が相続財産の中心になりやすく、非上場株式は換金しにくい一方で相続税評価が高額になる場合があります。次の一覧では、会社関係財産について確認すべき項目と、見落とすと生じやすい問題を読み取れます。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 発行済株式数 | 普通株式、種類株式、新株予約権の有無 |
| 株主名簿 | 名義株、所在不明株主、死亡株主、未成年株主の有無 |
| 議決権割合 | 後継者単独、後継者グループ、非後継者、外部株主の割合 |
| 株式評価 | 類似業種比準、純資産、配当還元、特定評価会社該当性 |
| 会社資産 | 土地、建物、有価証券、含み益、貸付金、保険積立金 |
| 会社債務 | 借入金、役員借入金、保証、リース、簿外債務 |
| 会社と個人の取引 | 役員貸付金、役員借入金、地代家賃、未払金、仮払金 |
| 規程類 | 定款、株式取扱規程、役員退職金規程、株主間契約 |
事業用不動産は、先代個人が所有し会社へ貸している形だと、所有者は相続人、使用者は会社という構造になります。共有になると賃貸借、担保設定、売却、建替え、境界確認が難しくなるため、誰が取得し、いつ登記するかまで書きます。
次の一覧は、財産棚卸しで別紙化すべき主な資産群を示します。左から右へ、会社・不動産・個人事業・知的財産の順に、承継時に止まりやすい実務を確認してください。
自社株式、議決権、株式評価、貸付金、借入金、保証、定款、株主間契約を確認します。
株式評価所有者、登記名義、抵当権、賃借権、地代家賃、境界、未登記建物、小規模宅地等の特例を整理します。
登記共有回避店舗、機械、車両、工具、棚卸資産、屋号、営業契約、許認可、顧客データ、青色申告帳簿を引き継ぎます。
個人版税制特許、商標、著作権、ドメイン、SNS、EC、クラウド会計、顧客管理、暗号資産の名義と管理権限を確認します。
名義変更権限管理事業承継では、遺言の無効、紛失、隠匿、解釈争いが会社の存続に直結します。公正証書遺言を原則とし、補助的に自筆証書遺言書保管制度を検討することで、死亡後の権利移転を実行しやすくします。次の表では、遺言に書く承継内容を財産別に確認します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 自社株式 | 後継者に取得させる株式数、種類、議決権、予備的受遺者 |
| 事業用不動産 | 工場、店舗、本社、駐車場、倉庫、底地、借地権の取得者 |
| 会社債権債務 | 役員貸付金、役員借入金、保証債務への対応方針 |
| 代償金 | 後継者が非後継者へ支払う金額、期限、原資 |
| 生命保険 | 受取人、保険金の位置づけ、代償金原資との関係 |
| 遺言執行者 | 弁護士、司法書士、信託銀行等、執行権限、報酬 |
| 予備的遺言 | 後継者が先に死亡、辞退、相続放棄した場合の承継先 |
| 付言事項 | 後継者集中の理由、非後継者への配慮、家族への説明 |
付言事項は法的拘束力を持つ条項ではありませんが、後継者に自社株式や事業用不動産を集中させる理由、他の相続人への配慮、従業員や取引先を守る必要性を先代自身の言葉で残す意味があります。
遺留分対策では、法定相続人の確定と不足見込額の試算が出発点になります。次の表では、税務評価額、遺留分算定上の評価、時価、会社価値が一致しないことを前提に、誰にどの財産を予定するかを読み取ります。
| 相続人 | 法定相続分 | 遺留分割合 | 取得予定財産 | 不足見込額 | 対応策 |
|---|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 例 2分の1 | 例 4分の1 | 自宅、現預金 | 0円 | 生活資金確保 |
| 後継者 | 例 4分の1 | 例 8分の1 | 自社株、事業用不動産 | なし | 納税資金確保 |
| 非後継者1 | 例 4分の1 | 例 8分の1 | 現預金、保険金 | 1,000万円 | 代償金、保険金 |
遺留分への備えは、試算、合意、資金、実行の順でつなげる必要があります。次の判断の流れでは、全員合意が見込めるか、代償金原資を準備できるかにより、民法特例、生命保険、調停対応のどこを厚くするかを確認します。
自社株、不動産、現預金、保険、債務を一覧化します。
遺留分算定上の評価と時価の違いも確認します。
金額、期限、原資、説明資料を計画に入れます。
将来の感情対立を減らす説明を残します。
生命保険は納税資金や代償金原資として使いやすく、相続人が受け取る死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税限度額があります。ただし、受取人、契約者、被保険者、保険料負担者の記録が重要で、遺留分算定で争点になる可能性もあります。
暦年課税、相続時精算課税、法人版・個人版の納税猶予を期限管理と一体で確認します。
令和6年1月1日以後の暦年課税では、相続税の課税価格に加算される対象期間が相続開始前7年以内へ広がっています。経過措置として、相続開始日が令和8年12月31日以前なら3年以内、令和9年1月1日から令和12年12月31日までなら令和6年1月1日から死亡日まで、令和13年1月1日以後なら7年以内となります。
贈与制度は、少額を渡すだけではなく、議決権移転、株価変動、申告、特別受益、遺留分まで連動します。次の比較一覧では、暦年課税、相続時精算課税、契約書・実行記録の役割を分けて読み取ります。
自社株式を少しずつ移す場合でも、加算対象期間、株価変動、贈与税申告、遺留分、特別受益を一体で検討します。
令和6年以後は基礎控除110万円と特別控除2,500万円を踏まえ、一律20パーセントの課税関係を確認します。
贈与契約書、株主名簿書換、管理口座への入金、申告書控え、代理権確認を残します。
事業承継税制を使う場合は、提出期限、認定申請、申告、年次報告、継続届出を計画本文に入れます。次の表では、法人版の特例措置で確認する要件と、取消リスクまでをまとめて確認します。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 対象会社要件 | 中小企業者、非上場、資産保有型会社等の該当性、風俗営業該当性等 |
| 後継者要件 | 後継者の人数、代表者就任時期、議決権保有、親族外承継の有無 |
| 先代要件 | 代表者経験、株式保有、贈与時期、相続時期 |
| 特例承継計画 | 提出期限、認定支援機関、経営見通し、5年間の事業計画 |
| 認定申請 | 都道府県への提出期限、必要書類、認定書の保管 |
| 税務申告 | 申告期限、担保、添付書類、税理士確認 |
| 継続義務 | 年次報告、継続届出書、雇用、代表者、株式保有、資産管理会社該当性 |
| 取消リスク | 株式譲渡、代表辞任、廃業、資産管理会社化、届出漏れ |
法人版の特例措置では、令和9年9月30日までの申請、令和9年12月31日までの事業承継という期限整理が重要です。国税庁の整理では、対象株数が全株式、納税猶予割合が100パーセント、複数株主から最大3人の後継者という違いも確認します。
個人版事業承継税制は、青色申告に係る事業の特定事業用資産が対象です。平成31年1月1日から令和10年12月31日までの相続または贈与、個人事業承継計画は令和10年9月30日までの提出を前提に、除外事業、帳簿保存、事業継続、廃業リスクを確認します。
評価の違い、納税原資、死亡退職金、宅地特例を会社資金と分けて検討します。
相続税評価額、時価、経営価値は用途が異なります。次の表は、税額申告、遺産分割、金融機関説明、M&A判断で使う評価を分け、相続税評価が低いことと換金しやすいことが同じではない点を読み取るためのものです。
| 評価の種類 | 用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続税評価額 | 相続税申告、特例適用判断 | 路線価、倍率、自社株評価、債務控除等に基づく |
| 時価 | 遺産分割、売却、金融機関説明 | 不動産鑑定、M&A価格、株式価値評価が必要な場合あり |
| 経営価値 | 後継者、金融機関、M&A判断 | EBITDA、営業利益、顧客基盤、技術、人材、リスクを含む |
相続税は相続人個人の税金であり、会社資金を自由に使えるわけではありません。次の表では、現預金から延納・物納までを順に並べ、どの方法が早く資金化できるか、どこに法務税務上の注意点があるかを確認します。
| 方法 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現預金 | 確実、迅速 | 会社運転資金と個人資金を混同しない |
| 生命保険 | 死亡直後に資金化しやすい | 受取人、非課税枠、保険料負担者を確認 |
| 役員退職金 | 会社から遺族や本人へ資金移転できる場合がある | 規程、功績倍率、過大退職金、会社資金繰りを確認 |
| 配当 | 後継者に資金を渡せる | 法人税、所得税、少数株主、利益剰余金を確認 |
| 金融機関借入 | 大口納税に対応しやすい | 担保、保証、返済原資、会社借入との区分 |
| 不動産売却 | 大きな資金化が可能 | 事業に必要な不動産を売らない、譲渡税を確認 |
| 延納 | 相続税を分割納付できる | 要件、担保、利子税、期限内申請が必要 |
| 物納 | 相続財産で納付できる場合がある | 延納でも金銭納付困難など厳格な要件がある |
死亡退職金は、会社の資金繰りと相続税対策の両方に影響します。相続人が受け取る退職手当金等は、500万円×法定相続人の数を非課税限度額とする扱いがありますが、会社の損金算入、過大役員退職給与、株式評価、資金繰り、遺産分割上の評価にも注意が必要です。
小規模宅地等の特例は、どの土地に適用するかで税額が大きく変わります。次の比較では、面積と減額割合の違いを示し、事業用土地を誰が取得するかが特例要件と事業継続に直結することを読み取ります。
計画では、土地の所有者、会社または個人事業での使用状況、貸付事業かどうか、同族会社への賃貸、相続開始前後の事業継続要件、保有要件、事業承継税制との関係を確認します。事業用土地を非後継者が取得すると、事業継続要件や使用関係に問題が出る可能性があります。
株式分散、代表者死亡時の会社運営、共有回避、境界、評価を事前に整えます。
後継者に最低限どの議決権割合を持たせるかは、過半数、3分の2以上、全株式など会社法上の決議要件と支配権の安定性を踏まえて数値で書きます。次の一覧では、株式が相続で分散する前に確認すべき項目を読み取ります。
譲渡制限、相続による株式移転時の売渡請求、種類株式、拒否権付株式、取得条項付株式を確認します。
株券発行会社かどうか、名義と実質株主が一致しているか、死亡株主、所在不明株主、古い増資記録を確認します。
譲渡制限、買取請求、死亡時承継、競業避止、配当方針、情報提供、対立時の解決方法を検討します。
代表取締役の死亡直後は、取締役会、株主総会、金融機関、取引先、許認可、労務、保険、電子証明書の権限変更が同時に動きます。次の判断の流れでは、初動担当者がどの順番で会社の意思決定を復旧するかを確認します。
印鑑、電子証明書、会計システム、銀行連絡を確認します。
取締役会または株主総会を招集し、代表者変更と議事録を整えます。
借入、保証、担保、手形、小切手、電子記録債権の権限変更を進めます。
代表者変更登記、許認可変更、保険、労務関係の更新を確認します。
事業用不動産の共有は、売却、担保設定、建替え、賃貸借変更、相続登記を難しくします。次の一覧では、不動産を後継者または会社へ集約する際に、代償金や別財産で公平を調整するための確認項目を整理します。
後継者または会社が事業用不動産を単独取得する方針を検討し、非後継者には代償金や別財産で調整します。
単独取得境界確認、分筆、地積更正、未登記建物の表示登記を先に検討し、担保設定や売却の遅れを防ぎます。
調査相続税評価、不動産鑑定評価、売却査定を区別し、代償金や同族会社間取引の根拠を残します。
時価確認使い込み疑い、遺産分割調停、名義預金、役員貸付金を記録で管理します。
後継者が先代の預金を管理していた場合、相続発生後に使い込みを疑われることがあります。次の一覧は、会社と個人のお金を分け、親族間の説明資料と税務調査資料を同時に整えるための確認項目です。
先代個人口座と会社口座を分け、役員報酬、地代家賃、貸付金、立替金を契約書と会計帳簿で処理します。
医療費、介護費、生活費の領収書を保管し、後継者が現金管理をする場合は月次の支出明細を残します。
成年後見、任意後見、家族信託、財産管理委任契約の要否を、判断能力や利益相反の有無と合わせて確認します。
調停になった場合でも会社が止まらないよう、資料を先にそろえる必要があります。次の比較一覧では、家庭裁判所の手続で説明に使う資料と、会社継続の説明に必要な資料を分けて確認します。
株主名簿、定款、登記事項証明書、遺言書、公正証書、遺言執行者指定資料を整えます。
株価評価資料、不動産評価資料、代償金算定根拠、親族会議議事録を保管します。
資金繰り表、従業員数、主要取引先、金融機関借入資料、分散による価値毀損の説明資料を用意します。
同族会社では、会社と個人の境界が曖昧になりやすいため、名義預金、役員貸付金、役員借入金、過大な退職金、不自然な取引を先に点検します。次の一覧では、税務調査で争点になりやすい資金移動を確認します。
家族名義口座の資金源、通帳保管者、印鑑管理者、贈与契約書、贈与税申告の有無を確認します。
実質確認先代が会社に貸している金銭、会社から先代への貸付金、仮払金、未払役員報酬を整理します。
法人税相続直前の多額退職金、不動産売買、資産移転は、合理的な事業目的、適正価額、議事録、資金移動を残します。
複合税務3か月、4か月、10か月、3年の期限を会社運営の初動と合わせて管理します。
相続発生後は、会社運営の初動と税務・登記の期限が重なります。次の表は、期限が早いものから順に並べ、担当者と注意点を同じ行で確認できるようにしたものです。
| 期限 | 手続 | 主担当 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 直後 | 死亡届、役員死亡の社内共有、銀行・取引先初動 | 親族、会社幹部 | 口座凍結、支払権限、印鑑管理 |
| 2週間前後 | 代表者変更、取締役会、株主総会準備 | 司法書士、弁護士 | 登記、議事録、定款確認 |
| 3か月以内 | 相続放棄、限定承認の検討 | 弁護士 | 債務、保証、会社借入を確認 |
| 4か月以内 | 準確定申告 | 税理士 | 個人事業、賃貸所得、譲渡所得等を確認 |
| 8か月前後 | 事業承継税制の認定申請等 | 税理士、中小企業診断士 | 制度ごとの期限を確認 |
| 10か月以内 | 相続税申告、納税、延納物納申請 | 税理士 | 遺産未分割でも申告が必要な場合あり |
| 3年以内 | 相続登記 | 司法書士 | 2024年4月1日以降、義務化に注意 |
| 継続期間 | 年次報告、継続届出書 | 税理士、会社 | 事業承継税制の取消リスクを管理 |
期限は単独で管理するより、会社の権限復旧、税務申告、登記、納税猶予の継続義務を並べた方が漏れを防げます。次の時系列では、短期対応と長期管理の違いを読み取ってください。
死亡届、社内共有、銀行・取引先初動、代表者変更の準備を進めます。
債務、保証、会社借入、個人事業、賃貸所得、譲渡所得を確認します。
事業承継税制の認定、相続税申告、納税、延納、物納申請を管理します。
相続登記と、納税猶予の年次報告・継続届出を続けます。
弁護士、税理士、司法書士、公認会計士、中小企業診断士などの役割を分けます。
事業承継計画は、単独の専門家だけでは完成しにくい文書です。次の表では、どの専門職がどの領域を担当し、計画書上でどの役割を持つかを確認します。
| 専門職 | 担当領域 | 計画書での役割 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺留分、遺産分割、交渉、調停、審判、訴訟、株主間契約 | 紛争予防条項、合意書、遺言文案、調停対応方針 |
| 税理士 | 相続税、贈与税、事業承継税制、税務調査、法人税 | 税額試算、制度適用、申告、届出、納税資金計画 |
| 司法書士 | 相続登記、商業登記、株式関連登記、裁判所提出書類作成 | 不動産名義、代表者変更、登記期限管理 |
| 行政書士 | 遺産分割協議書等の書類作成、許認可、契約書整理 | 紛争や税務代理、登記申請を除く書類整理 |
| 公証人 | 公正証書遺言 | 遺言の方式、本人意思確認、証人手配 |
| 遺言執行者 | 遺言内容の実現 | 株式名義、不動産、金融機関手続の実行 |
| 公認会計士 | 非上場株式評価、財務DD、内部統制 | 株価、会社財務、M&A可能性の評価 |
| 中小企業診断士 | 後継者育成、経営改善、承継計画 | 事業計画、磨き上げ、支援機関連携 |
| 不動産鑑定士 | 不動産時価評価 | 遺産分割、代償金、売買価額の根拠 |
| 土地家屋調査士 | 境界、分筆、表示登記 | 事業用不動産の権利整理 |
| 宅地建物取引士、不動産仲介 | 不動産売却、賃貸、重要事項説明 | 納税資金確保、不要不動産処分 |
| 弁理士 | 特許、商標、知財承継 | 名義変更、権利維持、ライセンス確認 |
| FP | 家計、保険、老後資金 | 納税資金、生活資金、保険設計 |
| 社会保険労務士 | 労務、退職金、遺族年金 | 役員退職金、従業員対応、社会保険 |
| 信託銀行等 | 遺言信託、保管、執行 | 長期的な遺言管理、執行実務 |
計画本文の記載例、失敗例、6領域のチェックリストを別紙化します。
計画書の本文は、方針を抽象的に書くだけでは足りません。次の一覧では、基本方針、税務方針、遺留分方針、遺言方針、モニタリング方針を、実行に移せる粒度で書く例を確認します。
親族内承継を第一方針とし、後継者Aが代表取締役に就任し、議決権の安定的過半数を保有する体制を構築します。自社株式と本社土地建物はAへ、非後継者B・Cには現預金、生命保険金、収益不動産、代償金を組み合わせます。
毎年決算後に非上場株式評価の概算を行い、相続税と贈与税の影響を試算します。法人版事業承継税制の適用可否、特例承継計画、認定申請、継続届出、年次報告の担当者と期限を一覧化します。
後継者Aへの株式集中によりB・Cの遺留分が不足する可能性を試算し、代償金と生命保険金で不足額を補います。必要に応じて民法特例を検討し、推定相続人全員への説明会を設けます。
現経営者は公正証書遺言を作成し、後継者Aに自社株式と本社不動産を取得させます。遺言執行者を指定し、Aが死亡または承継不能となった場合に備え、予備的受遺者も指定します。
毎年の決算後、税制改正後、株主構成変更時、後継者の婚姻または離婚、相続人の死亡、大型投資、借入変更、不動産の取得または売却時に見直します。
失敗例は、どの対策を組み合わせるべきかを理解するために重要です。次の一覧では、単独対策に頼った場合の弱点と、計画書で補うべき改善策を読み取ります。
遺留分請求が起きると金銭支払いを迫られます。遺留分試算、代償金、保険金、民法特例、親族説明を組み合わせます。
非上場株式の評価は利益、純資産、不動産含み益、配当、会社規模で変わります。毎年決算後に更新します。
相続税は相続人個人の税金です。給与、退職金、配当、貸付、自己株式取得は法務税務の検討が必要です。
売却、担保、建替え、賃貸借変更が困難になります。後継者または会社へ集約し、代償金や別財産で調整します。
年次報告、継続届出、代表者要件、株式保有要件、事業継続要件の管理表を作ります。
次のチェックリストは、計画書の別紙として使えるように、相続人、会社、遺言、税務、不動産、死後実行の6領域へ分けています。抜けがある領域から専門家に資料を渡すと、検討の順番が整理しやすくなります。
| 領域 | 確認すべき項目 |
|---|---|
| 相続人と親族関係 | 戸籍確認、前婚の子、養子、認知した子、代襲相続人、住所、国籍、居住地、判断能力、未成年者、成年後見利用者、行方不明者、過去の贈与や会社関与を確認 |
| 会社と株式 | 株主名簿、名義株、死亡株主、所在不明株主、議決権割合、譲渡制限、売渡請求、種類株式、非上場株式評価、株価上昇要因を確認 |
| 遺言と遺留分 | 公正証書遺言、自社株式と事業用不動産の取得者、遺言執行者、予備的遺言、遺留分試算、代償金、生命保険金、民法特例を確認 |
| 税務 | 相続税額、贈与税、相続時精算課税、暦年贈与の加算対象期間、事業承継税制、計画提出期限、小規模宅地等の特例、死亡保険金、死亡退職金、延納、物納を確認 |
| 不動産 | 相続登記未了、共有回避、境界、越境、未登記建物、会社との賃貸借契約、担保、根抵当、借地権、底地、不動産評価の根拠を確認 |
| 死後実行 | 死亡直後の連絡先、代表者変更登記、金融機関、税務署、法務局、許認可庁、3か月、4か月、10か月、3年の期限表、年次報告と継続届出の担当者を確認 |
個別事情で結論が変わるため、一般的な考え方と確認すべき資料を整理します。
一般的には、経営者と後継者が中心になり、税理士、弁護士、司法書士、公認会計士、中小企業診断士などが分担して作成するものとされています。ただし、相続人構成、株主構成、債務、保証、許認可、税務評価によって必要な専門家は変わる可能性があります。具体的な体制は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
一般的には、事業承継税制は一定の要件を満たす場合に納税猶予や免除を受ける制度とされています。ただし、届出漏れ、株式譲渡、代表辞任、廃業、資産管理会社化などにより猶予が取り消される可能性があります。具体的な適用可否や継続管理は、税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、事業継続のために後継者へ議決権を集中させる設計が検討されることがあります。ただし、遺留分、代償金、生命保険、親族説明、会社法上の手続、税務評価によって結論が変わる可能性があります。具体的な配分や書類作成は、弁護士や税理士等へ相談する必要があります。
一般的には、相続税は相続人個人の税金であり、会社資金と個人資金は区別して考える必要があるとされています。ただし、役員退職金、配当、貸付、自己株式取得などの方法が検討される場合もあり、法人税、所得税、会社法、資金繰りで結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、税理士や弁護士等へ相談する必要があります。
一般的には、事業用不動産を共有にすると、売却、担保設定、建替え、賃貸借変更、相続登記で調整が難しくなる可能性があるとされています。ただし、不動産の利用状況、相続人関係、代償金原資、会社との契約内容により検討結果は変わります。具体的な分け方は、資料を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。
会社、従業員、取引先、家族を守るために、毎年更新できる計画へ落とし込みます。
事業承継計画に盛り込むべき相続対策・税務対策の項目は、単なる節税策の列挙ではありません。核心は、後継者に経営資源を集中させる必要性と、非後継者の相続上の納得可能性を、法務、税務、会計、不動産、金融、家族関係のすべてから設計することです。
最後に、計画を実行可能な状態へ近づけるための5項目を整理します。順番は、財産の把握から制度選択、書類整備、継続管理へ進む構成であり、どこが未着手かを確認することが重要です。
自社株式、事業用不動産、会社債権債務を正確に棚卸しします。
後継者に経営権を集中させる一方、遺留分と代償金を事前に設計します。
相続税、贈与税、事業承継税制、小規模宅地等の特例を期限管理と一体で検討します。
公正証書遺言、遺言執行者、株主名簿、定款、相続登記を整備します。
税制改正、株価変動、親族関係、金融機関対応に合わせて計画を更新します。
相続は発生した瞬間から期限が進みます。一方で、事業承継は相続が起きる前に設計できるリスク管理です。計画書の目的は、税金を一時的に減らすことだけでなく、会社、従業員、取引先、家族の生活を守りながら、先代の意思と事業価値を次世代に移すことにあります。