2σ Guide

事業承継計画書に
記載すべき項目と作成のステップ

会社、株式、事業用資産、相続人関係、遺留分、税務、納税資金、経営者保証、後継者教育、説明計画を一つの文書に整理するための実務ガイドです。

3年相続登記の原則期限
10か月相続税申告の原則期限
5〜10年承継計画の実務目安
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事業承継計画書に 記載すべき項目と作成のステップ

会社、株式、事業用資産、相続 人関係、遺留分、税務、納税資金、経営者保証、後継者教育、説明計画を一つの文書に整理するための実務ガイドです。

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事業承継計画書に 記載すべき項目と作成のステップ
会社、株式、事業用資産、相続 人関係、遺留分、税務、納税資金、経営者保証、後継者教育、説明計画を一つの文書に整理するための実務ガイドです。
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  • 事業承継計画書に 記載すべき項目と作成のステップ
  • 会社、株式、事業用資産、相続 人関係、遺留分、税務、納税資金、経営者保証、後継者教育、説明計画を一つの文書に整理するための実務ガイドです。

POINT 1

  • 事業承継計画書に記載すべき項目と作成のステップの全体像
  • 経営・財産・法務を一体で整理し、相続 開始後の混乱を防ぐための基本を確認します。
  • 事業を続ける設計
  • 株式と資産を動かす設計
  • 争点を残さない設計

POINT 2

  • 事業承継計画書とは何か ― 計画と特例承継計画との違い
  • 計画書の意味、法的位置づけ、実行書類との関係を整理します。
  • 事業承継計画と計画書の違い
  • 事業承継計画書だけでは完成しない手続
  • 単なる社内メモではなく、後から検証できる前提資料として扱います。

POINT 3

  • 相続で事業承継計画書が必要になる理由
  • 1. 5年から10年程度:後継者教育、株式移転、親族説明、税務設計、金融機関調整を段階的に進めます。
  • 2. 原則10か月以内:相続の開始を知った日の翌日から、相続税の申告と納付期限が進みます。
  • 3. 原則3年以内:相続による不動産取得を知った日から、相続登記の申請義務を意識します。
  • 4. 調停、審判の可能性:遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の手続が問題になります。

POINT 4

  • 事業承継計画書に記載すべき項目一覧
  • 基本情報から株式、資産、相続、税務、保証、説明計画、リスク管理まで体系的に整理します。
  • 基本情報と会社情報
  • 現経営者、後継者、承継類型
  • 株式、評価、事業用資産

POINT 5

  • 事業承継計画書の作成ステップ
  • 1. 1 準備の必要性を認識する:現経営者が60歳超、後継者未定、相続人複数、個人保証あり、事業用不動産が個人名義などを確認します。
  • 2. 2 専門家チームと情報管理を決める:法務、税務、登記、財務、経営、不動産、知財、労務、金融の役割分担を決めます。
  • 3. 3 現状を見える化する:定款、株主名簿、決算書、不動産、借入、保証、契約、人事、知財、戸籍、遺言、生前贈与を集めます。
  • 4. 4 経営課題と相続課題を分類する:売上、組織、借入などの経営課題と、株式分散、遺留分、納税資金などの相続課題を分けます。
  • 5. 5 承継方針と中長期目標を決める:親族内承継、従業員承継、第三者承継、廃業のうち主方針と予備方針を選び、5年から10年の目標を設定します。
  • 6. 6 相続設計と税務設計を行う:遺言、株式贈与、売買、事業承継税制、生命保険、退職金、不動産、遺留分、家族信託等を検討します。
  • 7. 7 本文、計画表、実行書類へ進む:計画書本文、年度別の計画表、契約、遺言、登記、税務申告、金融機関資料へ変換し、年次で更新します。

POINT 6

  • 相続で揉めやすい論点と事業承継計画書の書き方
  • 後継者だけが得をするように見える
  • 株式評価額と換金可能性を分け、保証や雇用維持責任も説明します。
  • 遺留分侵害額請求
  • 代償金、生命保険、遺言、生前贈与、民法特例、別財産配分を比較します。

POINT 7

  • 承継類型別に事業承継計画書へ書くポイント
  • 親族内承継、従業員承継、M&A、個人事業主の承継で重点が変わる部分を確認します。
  • 類型別の記載ポイント
  • 承継類型によって、計画書に書くべき重点は変わります。
  • 次の選択肢一覧は、承継類型ごとに事業承継計画書へ記載する重点をまとめたものです。

POINT 8

  • 事業承継計画書のひな形とチェックリスト
  • 章立ての例と、法務・税務・不動産・金融・親族説明の確認項目をまとめます。
  • 簡易ひな形の構成
  • 作成時のチェックリスト
  • ひな形とチェックリストは、事業承継計画書を実務文書に落とし込むための骨格です。

まとめ

  • 事業承継計画書に 記載すべき項目と作成のステップ
  • 事業承継計画書に記載すべき項目と作成のステップの全体像:経営・財産・法務を一体で整理し、相続 開始後の混乱を防ぐための基本を確認します。
  • 事業承継計画書とは何か ― 計画と特例承継計画との違い:計画書の意味、法的位置づけ、実行書類との関係を整理します。
  • 相続で事業承継計画書が必要になる理由:公平と経営支配の衝突、期限、相続開始後に狭くなる選択肢を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

事業承継計画書に記載すべき項目と作成のステップの全体像

経営・財産・法務を一体で整理し、相続開始後の混乱を防ぐための基本を確認します。

事業承継計画書は、会社や個人事業を誰に、いつ、どの資産や権限とともに承継させるかを、経営、法務、税務、相続、金融、人事の各面から整理する文書です。後継者だけでなく、事業を継がない相続人、従業員、取引先、金融機関、専門家が同じ前提を共有するための設計図になります。

まず全体像をつかむために、事業承継計画書が担う役割を3つの視点に分けて整理します。この整理が重要なのは、経営だけ、税務だけ、相続だけで考えると見落としが生じやすいためです。読者は、自社の課題がどの視点に偏っているかを読み取ってください。

経営

事業を続ける設計

後継者育成、組織体制、取引先対応、経営改善、売上計画を記載し、代表交代後も会社が動く状態を作ります。

財産

株式と資産を動かす設計

非上場株式、事業用不動産、借入金、担保、保険、退職金、納税資金を整理し、相続財産としての見え方をそろえます。

法務

争点を残さない設計

相続人関係、遺言、遺留分、株式譲渡、議決権、登記、許認可、紛争時の記録を実行書類につなげます。

結論として押さえる5点

  1. 事業承継計画書には、承継方針、承継対象、後継者、株式、事業用資産、相続人関係、税務、資金、経営改善、教育、説明計画、実行工程、リスク管理を一体で記載します。
  2. 計画書自体は、遺言、株式譲渡契約、遺産分割協議書、登記申請書、税務申告書、議事録の代わりにはなりません。
  3. 計画書があると、各専門家が作成する法的書類と税務書類の前提がそろいやすくなります。
  4. 作成は、現状把握、財産と株式の棚卸し、相続人関係の整理、経営課題の抽出、承継類型の選択、中長期目標、法務税務設計、計画表化、実行、年次更新の順で進めます。
  5. 相続への不安がある場合は、弁護士、税理士、司法書士、公認会計士、中小企業診断士、不動産鑑定士などを役割分担させ、単独の専門家だけに全論点を背負わせないことが重要です。
重要計画書は一般的な整理文書であり、個別の法律判断や税務判断を完成させるものではありません。紛争の有無、財産構成、株式評価、申告期限、相続人関係、定款、株主名簿、借入契約、担保、保証、許認可、労務、知的財産を確認したうえで、必要な専門家へ相談する必要があります。
Section 01

事業承継計画書とは何か ― 計画と特例承継計画との違い

計画書の意味、法的位置づけ、実行書類との関係を整理します。

事業承継計画書とは、現経営者から後継者へ事業を引き継ぐために、承継の目的、時期、対象、方法、関係者の役割、必要手続、資金計画、相続対策、税務対策、経営改善策を文書化したものです。単なる社内メモではなく、後から検証できる前提資料として扱います。

事業承継計画と計画書の違い

次の比較表は、頭の中にある方針と、第三者が読める文書の違いを示しています。この違いが重要なのは、相続開始後には現経営者本人の説明を聞けないためです。左列と右列を比べ、自社で不足している文書化の範囲を読み取ってください。

区分意味相続での問題点
事業承継計画承継に向けた方針と行動計画です。経営者の頭の中や口頭説明だけでも存在しえます。後継者、配偶者、兄弟姉妹、株主、金融機関、専門家の理解がばらつきやすくなります。
事業承継計画書方針、根拠、数字、手続、説明方法を第三者が読める形に整理した文書です。遺言、契約、登記、税務申告、親族説明、金融機関説明へつなげやすくなります。
特例承継計画法人版事業承継税制の利用に関係する制度上の文書です。都道府県知事への提出や認定支援機関の所見が問題になります。税制利用のための文書であり、相続人説明、遺留分、事業用不動産、後継者教育までは自動的に解決しません。

事業承継計画書だけでは完成しない手続

次の比較表は、計画書で方向性を決めても、別の実行書類や手続が必要になる場面を整理したものです。ここを区別することが重要なのは、計画書を作っただけで権利移転や申告が完了したと誤解しないためです。読者は、目的ごとに必要な次の書類を確認してください。

目的計画書だけで足りるか必要となる別書類、手続の例
後継者に株式を移す足りません株式譲渡契約、贈与契約、株主名簿書換、取締役会承認、税務申告など
死後に株式を後継者へ渡す足りません遺言、公正証書遺言、遺言執行、名義書換など
遺産分割を確定する足りません遺産分割協議書、調停調書、審判書など
相続税を申告する足りません相続税申告書、評価明細、添付資料など
不動産名義を変える足りません登記申請、戸籍、遺産分割協議書、評価証明書など
代表取締役を交代する足りません株主総会議事録、取締役会議事録、就任承諾書、役員変更登記など
経営者保証を解除する足りません金融機関との交渉、財務資料、保証契約の変更など
許認可を承継する足りません業法ごとの届出、承認、許可、更新手続など

計画書は、これらの実行書類の母体になります。方針、基準日、評価方法、関係者の役割を先にそろえることで、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、社会保険労務士、公認会計士などが、それぞれの専門業務に落とし込みやすくなります。

証拠設計事業承継計画書は、後継者選定、株式評価、資金移動、親族説明、保証リスクなどについて、いつ、誰が、何を根拠に判断したのかを残す役割もあります。争いが予想される場合は、文言自体が将来の証拠になりうるため、弁護士等の確認を受けることが望ましいです。
Section 02

相続で事業承継計画書が必要になる理由

公平と経営支配の衝突、期限、相続開始後に狭くなる選択肢を確認します。

相続では公平が重視されますが、事業承継では議決権や重要資産を後継者へ集中させないと経営が不安定になることがあります。ここに、相続人間の公平と経営支配の衝突が生じます。

相続開始後では選択肢が狭くなる論点

次の比較表は、相続開始後に問題化しやすい論点と、事前の計画書で準備できることを並べたものです。この整理が重要なのは、相続開始後に初めて検討すると、株式、税金、不動産、保証、親族説明が同時に動き出してしまうためです。読者は、右列にある準備が未着手の項目を優先課題として確認してください。

論点相続開始後に起こりやすい問題事前計画でできること
株式分散共同相続人に株式が分散し、議決権が不安定になります。生前贈与、売買、遺言、種類株式、持株会社、議決権設計を検討します。
遺留分後継者への集中承継が遺留分侵害額請求の対象になりえます。財産評価、生命保険、代償金、除外合意や固定合意、遺言文言を検討します。
納税資金相続税を払う現金が不足することがあります。生命保険、退職金、不動産売却、借入、事業承継税制の利用可能性を検討します。
事業用不動産会社利用の土地が個人所有のまま相続され、共有化することがあります。賃貸借、使用貸借、法人所有化、遺言、共有回避、境界確認を検討します。
経営者保証後継者が保証を引き継げず、金融機関との関係が悪化することがあります。財務改善、保証解除交渉、担保整理、金融機関説明を行います。
説明不足親族が疑心暗鬼になり、使い込みや不当評価を疑うことがあります。生前説明、議事録、財産目録、資金移動記録、専門家評価を整備します。

相続手続の期限も見据える

次の時系列は、事業承継と相続で特に意識したい期限や準備期間を示しています。順番が重要なのは、相続登記や相続税申告には期限があり、事業承継計画は数年単位で作るのが実務に合うためです。読者は、短期の法定期限と中長期の承継準備を分けて読み取ってください。

事前準備

5年から10年程度

後継者教育、株式移転、親族説明、税務設計、金融機関調整を段階的に進めます。

相続税

原則10か月以内

相続の開始を知った日の翌日から、相続税の申告と納付期限が進みます。

相続登記

原則3年以内

相続による不動産取得を知った日から、相続登記の申請義務を意識します。

協議不成立

調停、審判の可能性

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の手続が問題になります。

期限がある手続と、数年をかける承継準備を同時に見ないと、相続開始後に資料収集、評価、親族説明、金融機関対応が集中します。計画書は、相続開始前から争点を整理し、開始後の手続を迷走させないための準備文書です。

Section 03

事業承継計画書に記載すべき項目一覧

基本情報から株式、資産、相続、税務、保証、説明計画、リスク管理まで体系的に整理します。

事業承継計画書に記載すべき項目は多岐にわたります。すべてを同じ深さで書く必要はありませんが、相続に不安がある場合は、財産、株式、親族説明、遺留分、納税資金を省略しないことが重要です。

基本情報と会社情報

次の一覧は、計画書の冒頭でそろえる基本情報を示しています。基準日や利用範囲が重要なのは、株式評価、財産目録、借入残高、相続人関係が時間とともに変わるためです。読者は、後日検証できる日付と閲覧範囲が入っているかを読み取ってください。

項目記載内容
文書名事業承継計画書
対象会社商号、本店所在地、法人番号、代表者、決算期
対象事業主な事業、許認可、主要商品、事業所
作成日、基準日財産、株式、相続人、借入金、財務数値の基準日
作成者、関与者現経営者、後継者、役員、専門家、金融機関担当者
作成目的事業承継、相続対策、後継者育成、金融機関説明、税制検討など
利用範囲親族説明用、社内共有用、専門家検討用、金融機関説明用など
秘密保持閲覧権限、複製禁止、改訂履歴の管理

次の一覧は、会社や事業の実態を共有するための項目です。帳簿上の資産だけでなく、取引先、従業員、ブランド、技術、地域信用も価値の源泉になるため重要です。読者は、どの事業が会社価値を生んでいるかを説明できる項目になっているかを確認してください。

項目具体例
沿革創業年、法人化、事業拡大、主要な事業転換、過去の合併や分割
事業内容製造、卸売、小売、建設、不動産賃貸、医療、介護、IT、飲食など
収益構造売上構成、粗利率、固定費、主要顧客依存度、季節変動
組織役員、幹部、従業員数、重要人材、親族従業員
許認可建設業許可、宅建業免許、古物商、医療法人、介護指定、酒類販売など
主要契約取引基本契約、リース、賃貸借、代理店契約、フランチャイズ契約
経営課題後継者不足、設備老朽化、顧客高齢化、DX遅れ、資金繰り、債務超過
成長機会新規顧客、販路拡大、事業再構築、海外展開、M&A、知財活用

現経営者、後継者、承継類型

次の比較表は、現経営者と後継者について確認する情報を並べています。この整理が重要なのは、意思能力、保証債務、個人資産、承継意思、教育計画、資金力が、遺言や株式移転の有効性と実行可能性に影響するためです。読者は、人物情報だけでなく、リスクと準備の項目がそろっているかを読み取ってください。

対象記載項目主な確認内容
現経営者氏名、生年月日、住所戸籍、住民票、印鑑証明書との整合性を確認します。
現経営者役職、持株数、議決権代表取締役、取締役、株式数、種類株式、議決権割合を整理します。
現経営者個人資産、個人債務自宅、事業用不動産、金融資産、保険、会社への保証、担保提供を整理します。
現経営者健康状態、家族構成入院歴、認知症リスク、配偶者、子、養子、前婚の子、代襲相続人を確認します。
現経営者遺言、生前贈与、役員退職金遺言の方式、保管場所、贈与履歴、退職金の算定根拠を確認します。
後継者後継者候補、承継意思氏名、年齢、続柄、社内役職、社外経験、本人と配偶者の理解を確認します。
後継者経営能力、教育計画財務理解、営業力、組織運営、現場経験、幹部会議参加、外部研修を整理します。
後継者株式取得方法、資金調達、保証対応贈与、売買、相続、自己資金、借入、経営者保証の引継ぎや解除交渉を整理します。
後継者親族関係、代替候補非承継相続人との関係、後継者が辞退、死亡、病気になった場合の次順位を記載します。

次の比較表は、承継類型ごとの利点と注意点を整理したものです。類型を明示することが重要なのは、親族内承継、従業員承継、第三者承継、廃業では、株式、保証、説明対象、必要書類が変わるためです。読者は、自社の第一候補と予備方針を分けて確認してください。

類型内容主な利点主な注意点
親族内承継子、配偶者、兄弟姉妹、親族が承継します。親族感情と経営理念を引き継ぎやすいです。遺留分、兄弟間不公平、株式集中、後継者適性に注意します。
従業員承継役員、幹部、従業員が承継します。事業理解が深く、従業員の納得を得やすいです。株式取得資金、経営者保証、親族株主との関係に注意します。
第三者承継M&A、事業譲渡、株式譲渡などで承継します。後継者不在でも事業継続が可能です。買手探索、企業価値、従業員処遇、秘密保持に注意します。
廃業、清算事業継続をしない選択です。赤字事業や後継者不在に対応できます。従業員、取引先、借入、資産売却、税務に注意します。

株式、評価、事業用資産

次の一覧は、株主構成と議決権を見える化するための項目です。非上場会社では、誰が議決権を持つかが経営支配の核心になるため重要です。読者は、名義上の株主、実質的な出資者、相続時の予定が一致しているかを読み取ってください。

株主名続柄、属性株式数議決権数議決権割合取得経緯名義株リスク相続予定
現経営者A父、代表者例 600株600個60%設立時引受後継者へ集中
配偶者B例 100株100個10%贈与生活保障を考慮
長男C後継者例 200株200個20%生前贈与追加取得
長女D非承継者例 100株100個10%贈与買取または配当方針を検討

次の比較表は、非上場株式の評価目的を分けて示しています。評価目的の区別が重要なのは、相続税申告の評価、遺産分割上の時価、売買価格、M&A価値は一致しないことがあるためです。読者は、評価額だけでなく、基準日、評価者、評価方法、未確定事項を読み取ってください。

評価目的主な利用場面担当しうる専門家注意点
相続税評価相続税申告、贈与税申告税理士税法上の評価であり、常に売買価格と一致するわけではありません。
遺産分割上の評価相続人間の協議、調停、審判弁護士、不動産鑑定士、公認会計士基準時、評価方法、支配権プレミアムが争点になりえます。
売買価格後継者による株式買取、従業員承継公認会計士、税理士、弁護士みなし贈与、低額譲渡、高額譲渡に注意します。
M&A価値第三者承継、株式譲渡、事業譲渡M&A専門家、公認会計士、弁護士デューデリジェンス、表明保証、偶発債務が重要です。

次の一覧は、会社が使う資産の所有者と利用者を分けて整理するものです。事業用不動産や知的財産の帰属が重要なのは、共有化や名義不一致が経営の停滞につながるためです。読者は、所有者、利用者、契約関係、相続時の方針が同じ方向を向いているかを確認してください。

資産所有者利用者契約関係相続時の方針注意点
工場土地現経営者個人会社賃貸借または使用貸借後継者または会社へ承継共有化すると経営に支障が出る可能性があります。
店舗建物会社会社自己使用会社所有を維持修繕費、減価償却、担保設定を確認します。
代表者貸付金現経営者個人会社金銭消費貸借債権として相続財産回収可能性、債務超過、債権放棄税務に注意します。
商標個人または会社会社使用許諾の有無会社帰属が望ましい場合があります。弁理士確認、登録名義を確認します。
車両、機械会社または個人会社リース、使用貸借所有者確認帳簿と現物の一致を確認します。

相続、税務、金融、人材、説明、リスク

次の比較表は、相続人関係、税務、金融、人材、説明、代替案をまとめて確認するための項目です。これらを同じページで見ることが重要なのは、遺留分、納税資金、保証、説明不足が互いに影響するためです。読者は、自社で特に抜けやすい領域を読み取ってください。

領域記載すべき項目読み取るポイント
相続人関係推定相続人、法定相続分、遺留分、特別受益、寄与分、遺言、遺言執行者、代償金、生命保険、説明方針株式や事業用資産を後継者へ集中させる場合に、他の相続人への配慮と説明根拠があるかを見ます。
税務、納税資金相続税試算、贈与税試算、事業承継税制、納税資金、株価対策、税務調査リスク、申告体制納税猶予は免除と同じではないため、要件維持と取消し時の負担を見ます。
経営改善財務、収益、組織、営業、法務、知財、ITの改善施策後継者と金融機関が会社の状況を理解できる資料になっているかを見ます。
借入金、担保、保証借入先、借入残高、返済期限、金利、担保、保証人、承継時の方針後継者が保証リスクを負う場合に、株式、報酬、代償金設計へ反映されているかを見ます。
後継者教育1年目から5年目の教育、権限移譲、評価方法、代表交代、退職金支給急激な移譲と先送りのどちらにも偏らず、段階的に権限を移す設計かを見ます。
関係者説明配偶者、後継者、非承継相続人、幹部従業員、取引先、金融機関への説明時期と内容早すぎる説明と遅すぎる説明のリスクを避け、資料と同席者を設計しているかを見ます。
M&A予備方針検討条件、売却対象、雇用維持、契約承継、秘密保持、支援機関、親族株主同意、売却代金の配分親族内承継が難しくなった場合でも、従業員と取引先を守る選択肢があるかを見ます。
リスク管理急病、後継者辞退、相続人反対、株価上昇、業績悪化、主要取引先喪失、幹部退職、税制改正、不動産問題予定どおり進まない場合の代替案と更新ルールがあるかを見ます。
Section 04

事業承継計画書の作成ステップ

資料収集、課題分類、方針選択、設計、実行書類化、更新までの順番を示します。

事業承継計画書は、最初から文章を書き始めるより、現状把握、課題分類、方針選択、設計、計画表化、実行、更新の順で進めると整理しやすくなります。ここでは、一般読者にも実行しやすい順番に並べます。

作成の大きな順番

次の判断の流れは、事業承継計画書の作成から更新までの順番を示しています。順番が重要なのは、資料がないまま方針を決めたり、方針がないまま書類を作ったりすると、相続人説明や税務設計が崩れやすいためです。読者は、いま自社がどの段階で止まっているかを読み取ってください。

事業承継計画書を作る順番

1 準備の必要性を認識する

現経営者が60歳超、後継者未定、相続人複数、個人保証あり、事業用不動産が個人名義などを確認します。

2 専門家チームと情報管理を決める

法務、税務、登記、財務、経営、不動産、知財、労務、金融の役割分担を決めます。

3 現状を見える化する

定款、株主名簿、決算書、不動産、借入、保証、契約、人事、知財、戸籍、遺言、生前贈与を集めます。

4 経営課題と相続課題を分類する

売上、組織、借入などの経営課題と、株式分散、遺留分、納税資金などの相続課題を分けます。

5 承継方針と中長期目標を決める

親族内承継、従業員承継、第三者承継、廃業のうち主方針と予備方針を選び、5年から10年の目標を設定します。

6 相続設計と税務設計を行う

遺言、株式贈与、売買、事業承継税制、生命保険、退職金、不動産、遺留分、家族信託等を検討します。

7 本文、計画表、実行書類へ進む

計画書本文、年度別の計画表、契約、遺言、登記、税務申告、金融機関資料へ変換し、年次で更新します。

専門家チームの役割

次の一覧は、計画書作成の初期段階で決める専門家の役割分担です。役割分担が重要なのは、相続紛争、税務申告、登記、株式評価、M&A、労務、知財は担当できる専門職が異なるためです。読者は、ひとりの専門家に過度に依存していないかを確認してください。

役割主担当候補主な担当内容
総合調整現経営者、後継者、顧問専門家進行管理、意思決定、資料収集
法務、紛争予防弁護士遺留分、遺言、株式譲渡、親族説明、調停対応
登記、不動産名義司法書士相続登記、役員変更登記、商業登記、登記書類
税務税理士相続税、贈与税、事業承継税制、申告、税務調査
財務、企業価値公認会計士財務分析、株式評価、M&A資料、内部統制
経営改善中小企業診断士事業計画、後継者育成、組織改善
不動産評価不動産鑑定士遺産分割、賃料、事業用不動産評価
境界、分筆土地家屋調査士境界確認、分筆、表示登記
不動産取引宅地建物取引士、不動産業者売却、賃貸、重要事項説明
知的財産弁理士特許、商標、意匠、名義変更、ライセンス
労務、年金社会保険労務士就業規則、退職金、社会保険、遺族年金
資産設計FP、金融機関保険、老後資金、納税資金、資産配分

収集資料と課題分類

次の一覧は、現状把握で集める資料を分野別に示しています。資料収集が重要なのは、ここを省略すると、後の計画が推測になってしまうためです。読者は、会社、株式、税務、不動産、借入、契約、人事、知財、相続の各資料がそろっているかを読み取ってください。

分野資料例
会社定款、履歴事項全部証明書、株主名簿、法人税申告書、決算書、総勘定元帳
株式株式数、議決権、種類株式、譲渡制限、過去の譲渡、贈与資料
税務相続税試算資料、固定資産税評価証明書、路線価、保険証券
不動産登記事項証明書、公図、測量図、賃貸借契約、担保設定、境界資料
借入金銭消費貸借契約、返済予定表、担保、保証契約、金融機関資料
契約取引基本契約、リース、賃貸借、フランチャイズ、代理店契約
人事役員一覧、従業員名簿、就業規則、退職金規程、親族従業員の給与
知財特許、商標、ドメイン、営業秘密、顧客リスト、ノウハウ資料
相続戸籍、家系図、遺言、生前贈与記録、過去の相続、介護負担

次の比較表は、経営課題と相続課題を同じ行で見比べるための例です。この分類が重要なのは、どの専門家を先に入れるべきか、どの課題を優先すべきかが見えるためです。読者は、経営と相続の両方が高い項目を優先して読み取ってください。

課題経営課題か相続課題か優先度対応方針
代表者が株式の80%を保有遺言、贈与、税制、遺留分対策
主要取引先1社で売上50%顧客分散、後継者同行
工場土地が個人所有賃貸借、遺言、法人移転、代償金
後継者が財務を理解していない教育、月次会議、金融機関面談
長女が会社経営に不信感説明資料、評価根拠、弁護士関与

5年から10年の目標と実行管理

次の一覧は、会社、現経営者、後継者、相続の4区分で中長期目標を置く例です。数値と期限が重要なのは、「後継者を育てる」のような抽象表現だけでは実行管理ができないためです。読者は、期限、担当者、完了確認が入る目標へ具体化できているかを読み取ってください。

区分目標例
会社売上10億円、営業利益率5%、借入金を3億円以下、主要顧客依存30%以下
現経営者3年後に代表権を移譲、5年後に退任、退職金で老後資金確保
後継者2年以内に取締役、4年以内に代表、主要取引先20社を承継
相続株式70%を後継者へ、非承継相続人へ現金と保険、遺言作成

次の時系列は、5年間の計画表の例です。年度ごとの横並びが重要なのは、経営、後継者、株式と資産、相続と税務、関係者対応が互いに連動するためです。読者は、ある年度に作業が集中しすぎていないか、関係者説明が遅れていないかを読み取ってください。

2026年

現状把握と相続税概算

月次決算開始、借入整理、株主名簿確認、相続税概算、遺言案、配偶者への説明を進めます。

2027年

後継者を社外関係へ出す

主要顧客同行、取締役就任、株式20%贈与検討、贈与税と特例承継計画の確認、税理士と銀行面談を進めます。

2028年

不採算事業と不動産方針を決める

不採算事業見直し、幹部会議主宰、工場土地の方針決定、遺言作成、非承継相続人への説明を進めます。

2029年

代表候補を公表する

予算策定移行、代表候補公表、株式追加取得、納税資金確保、主要取引先紹介を進めます。

2030年

代表就任と保証見直し

現経営者退任、後継者の代表就任、議決権過半数確保、遺言更新、金融機関保証見直しを行います。

次の比較表は、計画内容を実行書類へ変換する場面を示しています。この表が重要なのは、計画書と実行書類が矛盾すると、紛争や税務否認の原因になりうるためです。読者は、各計画に対応する主担当と手続を読み取ってください。

計画内容実行書類、手続主担当
株式贈与贈与契約書、株主名簿書換、贈与税申告税理士、弁護士
株式売買株式譲渡契約、譲渡承認、売買代金授受弁護士、税理士
遺言公正証書遺言、自筆証書遺言、遺言執行者指定弁護士、公証人、司法書士
役員交代株主総会議事録、取締役会議事録、役員変更登記司法書士
不動産承継遺言、贈与契約、売買契約、相続登記司法書士、税理士、弁護士
事業承継税制特例承継計画、認定申請、申告書、継続届出税理士、認定支援機関
経営者保証金融機関説明資料、保証契約変更金融機関、税理士、公認会計士
M&A秘密保持契約、意向表明、基本合意、最終契約弁護士、公認会計士、M&A専門家
更新計画書は作って終わりではありません。株主構成、株式評価額、会社業績、借入残高、保証、担保、事業用不動産、相続人の状況、遺言、保険契約、役員人事、税制改正、後継者の意思、M&A市場環境を、少なくとも決算後に見直します。
Section 05

相続で揉めやすい論点と事業承継計画書の書き方

遺留分、使い込み疑い、不動産共有、調停・審判を見据えた記録を整理します。

事業承継では、後継者に株式、役員報酬、退職金、事業用不動産、経営権が集中するため、他の相続人から不公平に見えやすくなります。計画書では、後継者が得る利益だけでなく、借入金や保証、雇用維持、取引先対応、経営悪化リスク、代償金支払義務などの負担も記載します。

揉めやすい論点を先に見える化する

次の注意要素の一覧は、相続で対立しやすい論点をまとめたものです。この整理が重要なのは、感情的な不公平感の背景には、評価、換金性、説明不足、資金混同、不動産共有などの具体的な原因があるためです。読者は、自社でどの要素が重なっているかを読み取ってください。

後継者だけが得をするように見える

株式評価額と換金可能性を分け、保証や雇用維持責任も説明します。

遺留分侵害額請求

代償金、生命保険、遺言、生前贈与、民法特例、別財産配分を比較します。

資金混同や使い込み疑い

会社口座、個人口座、役員報酬、貸付金、介護費、医療費の記録を残します。

事業用不動産の共有化

共有を避ける資産、共有でもよい資産、売却候補資産を分けます。

調停、審判を見据えた記録不足

後継者選定理由、評価根拠、説明経過、保証の実態を記録します。

計画書の文言が逆に争点化する

争いが強い場合は、親族説明用、専門家検討用、金融機関説明用を分けることがあります。

遺留分対策は支払原資まで見る

次の比較表は、後継者への集中承継と遺留分が衝突する場面で検討される対策を整理したものです。この比較が重要なのは、単に「請求しないよう頼む」だけでは不十分で、請求された場合の資金や手続を準備する必要があるためです。読者は、各対策の注意点と組み合わせを読み取ってください。

対策内容注意点
代償金後継者が他の相続人へ金銭を支払います。支払原資、期限、担保を検討します。
生命保険非承継相続人または後継者を受取人にします。税務、特別受益、遺留分との関係を確認します。
遺言株式と事業用資産の帰属を指定します。遺留分を消せるわけではありません。
生前贈与承継を前倒しします。持戻し、税務、評価基準日に注意します。
経営承継円滑化法の民法特例除外合意、固定合意などを検討します。要件、合意、確認手続が必要です。
不動産、金融資産の配分非承継相続人へ別財産を配分します。価値評価と換金性に注意します。

資金混同と不動産問題の記録

次の一覧は、使い込み疑い、会社資金と個人資金の混同、事業用不動産の共有化を防ぐための記録項目です。記録が重要なのは、相続開始後に本人の説明が聞けず、後継者や同居親族への疑いが生じやすいためです。読者は、預金、会社口座、決議、貸付金、不動産の契約関係が残っているかを読み取ってください。

論点整備する資料、方針計画書での書き方
預金引出し、生活費、医療費現経営者個人の預金通帳、介護費、生活費、医療費の負担記録使途、負担者、承認者、記録保管場所を記載します。
会社資金の流用疑い会社口座の入出金記録、領収書、請求書、振込記録、現金管理規程会社と個人の財布を分ける方針を記載します。
役員報酬、退職金役員報酬、役員退職金の決議記録、算定根拠株主総会や取締役会の決議と税務上の相当性を確認します。
親族への貸付金、仮払金会社から親族への貸付金、仮払金、代表者貸付金、代表者借入金債権債務として相続財産に入るかを整理します。
事業用不動産賃貸借契約、使用貸借の実態、境界資料、担保資料、登記情報共有を避ける資産、共有でもよい資産、売却候補資産を分けます。

紛争が予想される場合は、計画書の記載が相手方に利用される可能性もあります。一般的には、親族説明用、専門家検討用、金融機関説明用を分け、具体的な文言や開示範囲は弁護士等に確認する必要があります。

Section 06

承継類型別に事業承継計画書へ書くポイント

親族内承継、従業員承継、M&A、個人事業主の承継で重点が変わる部分を確認します。

承継類型によって、計画書に書くべき重点は変わります。親族内承継では家族関係と遺留分、従業員承継では株式取得資金と保証、第三者承継では秘密保持と買手対応、個人事業主では契約名義や許認可が中心になります。

類型別の記載ポイント

次の選択肢一覧は、承継類型ごとに事業承継計画書へ記載する重点をまとめたものです。この整理が重要なのは、同じ「事業承継」でも、誰が継ぐかによって必要資料、説明対象、リスクが変わるためです。読者は、自社の主方針と予備方針に必要な項目を読み取ってください。

1

親族内承継

後継者の選定理由、兄弟姉妹への配慮、配偶者の生活保障、遺留分、介護負担、親族従業員の処遇、親族会議の履歴、争いが起きた場合の窓口を記載します。

家族関係遺留分
2

従業員承継

従業員後継者の選定理由、親族株主の保有継続または売却、株式取得資金、役員報酬、配当、退職金、経営者保証、株主間契約を記載します。

資金調達保証
3

M&A、第三者承継

売却目的、希望条件、従業員雇用維持、取引先継続、株主同意、買手候補、仲介会社やFAの選定基準、秘密保持、売却代金の配分を記載します。

秘密保持買手対応
4

個人事業主の承継

事業用資産、事業用口座、在庫、売掛金、買掛金、賃貸借契約、リース契約、許認可、従業員、取引先通知、青色申告や消費税を記載します。

契約名義許認可

親族内承継を第一候補とし、後継者が辞退した場合には従業員承継、さらに難しい場合にはM&Aを検討するという予備方針も実務的です。ただし、予備方針を記載する場合は、情報漏えいにより従業員や取引先に不安が広がらないよう、閲覧範囲と秘密保持を明確にします。

次の比較表は、承継類型ごとに特に先に確認したい実務上の障害を示しています。障害の違いを把握することが重要なのは、初期の相談先や資料収集の順番が変わるためです。読者は、自社の類型で最初に確認すべき項目を読み取ってください。

類型先に確認する障害計画書での重点
親族内承継相続人の納得、遺留分、後継者配偶者の理解、介護負担、生前贈与選定理由、非承継相続人への配分、遺言、代償金、生命保険、親族説明
従業員承継株式取得資金、親族株主の保有継続、経営者保証、所有と経営の分離株式買取方法、報酬と配当、保証解除、株主間契約、重要事項の決議ルール
M&A、第三者承継買手探索、企業価値、従業員処遇、情報漏えい、親族株主同意売却条件、秘密保持、資料整備、支援機関の役割、売却代金の相続財産配分
個人事業主契約名義、許認可、事業用資産と家計の混在、税務届出資産一覧、口座分離、取引先通知、雇用継続、個人版事業承継税制の検討
Section 07

事業承継計画書のひな形とチェックリスト

章立ての例と、法務・税務・不動産・金融・親族説明の確認項目をまとめます。

ひな形とチェックリストは、事業承継計画書を実務文書に落とし込むための骨格です。会社規模、相続人関係、財産構成によって項目は増減しますが、最低限の章立てを持つことで、専門家との打ち合わせや親族説明の前提がそろいやすくなります。

簡易ひな形の構成

次の一覧は、事業承継計画書の章立て例を示しています。章立てが重要なのは、基本情報、会社概要、人物、株式、資産、相続、税務、経営改善、実行予定、見直しを同じ文書内で追えるためです。読者は、自社の計画書に不足している章を読み取ってください。

主な項目
第1 基本情報対象会社、作成日、基準日、作成目的、閲覧範囲、秘密保持、関与専門家
第2 会社および事業の概要沿革、事業内容、組織、主要取引先、許認可、契約、経営課題、知的資産
第3 現経営者および後継者現経営者の情報、後継者候補、選定理由、教育計画、代替候補
第4 株式、議決権、会社法務株主構成、議決権割合、種類株式、譲渡制限、名義株、株式移転方針、議事録手続
第5 事業用資産、負債、保証事業用不動産、設備、車両、在庫、知的財産、借入金、担保、経営者保証、貸付金
第6 相続、遺言、遺留分推定相続人、相続財産、生前贈与、遺留分リスク、遺言方針、遺言執行者、代償金、生命保険、親族説明
第7 税務、資金計画株式評価、相続税試算、贈与税試算、事業承継税制、納税資金、役員退職金、税務リスク
第8 経営改善、承継後の事業計画経営目標、財務改善、主要顧客承継、幹部育成、労務、組織、IT、知財、M&A予備方針
第9 実行スケジュール5年から10年の計画表、担当者、必要書類、完了確認
第10 リスク管理、見直し急病時、後継者辞退時、相続紛争時、税制改正時の対応、年次更新日

作成時のチェックリスト

次の比較表は、法務、税務、不動産、金融、親族説明の5分野で確認すべき項目をまとめたものです。分野別の確認が重要なのは、株式や税額だけを見ても、登記、保証、説明不足による問題は残るためです。読者は、未確認の分野を次回の専門家相談に持ち込む項目として読み取ってください。

分野主な確認項目
法務定款、株主名簿、譲渡制限、種類株式、名義株、過去の株式譲渡や贈与、役員変更登記、重要契約、許認可、遺言、遺留分、後見、任意後見、家族信託
税務相続税の概算、納税資金、非上場株式評価、事業承継税制、贈与税と相続税の比較、役員退職金、生命保険、名義預金、名義株、貸付金、不動産評価、税制改正
不動産事業用不動産の所有者、賃貸借契約、賃料、担保、境界、未登記建物、共有不動産、売却可能性、相続登記、会社に不可欠な不動産か
金融借入金残高、返済予定表、担保、経営者保証、後継者と金融機関の面談、資金繰り表、代表者交代時の銀行対応、保証解除の可能性、資産経理の分離
親族説明推定相続人、過去の生前贈与、後継者選定理由、非承継相続人への配分、遺留分試算、代償金原資、生命保険、説明時期、説明資料、弁護士等の関与

チェックリストは、すべてに丸が付けば安全という意味ではありません。個別事情によって結論が変わるため、未確認項目を見つけ、役割分担と次回更新に反映するための道具として使います。

Section 08

事業承継計画書でよくある誤解と専門家の使い分け

単一の専門家や書類だけで完了すると考えないための実務上の整理です。

事業承継計画書では、よくある誤解を早めに解いておくことも重要です。誤解が残ったまま進むと、税務、法務、登記、金融、親族説明のどこかで「聞いていた話と違う」という対立が生じやすくなります。

よくある誤解

次の一覧は、計画書作成で生じやすい誤解と、一般的な考え方を整理したものです。この整理が重要なのは、特定の専門家や単一の書類だけで全てが完了するわけではないためです。読者は、誤解が残るとどの領域に支障が出るかを読み取ってください。

誤解1

税理士に頼めばすべて終わる

税務申告は中心的論点ですが、相続人間の紛争代理、遺留分交渉、登記、会社法務は別の専門領域です。

誤解2

遺言があれば完了する

遺言は重要ですが、後継者教育、金融機関対応、保証、株価対策、納税資金、従業員説明までは完了しません。

誤解3

株式を均等に分けるのが公平

均等配分は直感的に見えますが、非上場会社の議決権が分散すると経営判断が停滞することがあります。

誤解4

会社の価値は決算書だけでわかる

取引先、従業員、技術、ブランド、許認可、地域信用、人脈、営業秘密なども価値の源泉になります。

誤解5

親族に説明しない方がよい

未確定段階の説明には慎重さが必要ですが、何も説明しないまま相続が発生すると疑念が生じやすくなります。

専門家別の関与ポイント

次の比較表は、専門家ごとの主な関与領域を整理したものです。この表が重要なのは、法律相談、税務申告、登記、許認可、財務分析、労務、知財、金融調整は担当できる範囲が異なるためです。読者は、どの論点を誰に確認するかを読み取ってください。

専門家主な関与ポイント
弁護士相続人間の対立、遺留分、株式譲渡、遺言、遺産分割協議、調停、審判、訴訟、会社法上の紛争を扱います。
司法書士相続登記、役員変更登記、商業登記、不動産名義変更、登記に必要な書類整備に関与します。
税理士相続税申告、贈与税申告、事業承継税制、非上場株式評価、税務調査対応、納税資金設計に関与します。
行政書士紛争性のない書類作成、許認可、事業に関係する届出などに関与します。紛争代理、税務申告、登記申請は別の専門職の領域です。
公証人、遺言執行者公正証書遺言の作成や遺言内容の実現に関与します。株式や不動産の移転、金融機関手続との連動が重要です。
公認会計士、中小企業診断士財務分析、企業価値評価、M&A、内部管理体制、経営改善、後継者育成、事業計画、組織改善に関与します。
不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士不動産評価、境界確認、分筆、表示登記、相続不動産の売却や賃貸に関与します。
弁理士、社会保険労務士、FP、金融機関知的財産、退職金、就業規則、社会保険、保険、老後資金、借入、保証、担保、資金繰りに関与します。

FAQ

事業承継計画書を作れば、遺言や遺産分割協議書は不要になりますか。

一般的には、事業承継計画書は方針や前提を整理する文書であり、遺言、遺産分割協議書、株式譲渡契約、登記申請、税務申告の代替にはなりません。必要な実行書類は、財産構成、会社の定款、相続人関係、税務上の扱いによって変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、税理士、司法書士等へ相談する必要があります。

後継者に株式を集中させると、他の相続人に不公平になりますか。

一般的には、経営の安定のために議決権を後継者へ集中させる設計が検討されることがあります。ただし、遺留分、代償金、生命保険、他財産の配分、保証リスク、非上場株式の換金困難性によって結論は変わる可能性があります。具体的な配分や説明方針は、評価資料と相続人関係を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

事業承継税制を使えば、相続税や贈与税の心配はなくなりますか。

一般的には、法人版事業承継税制では一定の要件を満たす非上場株式等について納税猶予等が検討されます。ただし、納税猶予は免除と同じではなく、要件を満たし続ける必要があり、要件を外れた場合には税額や利子税が問題になる可能性があります。制度利用の可否やリスクは税理士等へ確認する必要があります。

親族への説明はいつ行うのがよいですか。

一般的には、未確定案を早く出しすぎると不安を招き、何も説明しないまま相続が発生すると疑念を招くとされています。説明時期、説明資料、同席者、開示範囲は、親族関係、財産構成、紛争の有無によって変わります。争いが予想される場合は、弁護士等に説明方法を確認する必要があります。

Section 09

事業承継計画書に記載すべき項目と作成のステップのまとめ

現状把握から実行書類、説明計画、年次更新までを実務の順番に落とし込みます。

事業承継計画書は、会社を誰に継がせるかを記すだけの文書ではありません。相続人間の公平、後継者の経営支配、従業員の雇用、取引先の信頼、金融機関の与信、納税資金、遺留分、遺言、不動産、知的資産を一つの設計図に統合する文書です。

実務に落とし込む順番

次の一覧は、相続に不安がある人が、事業承継計画書に記載すべき項目と作成のステップを実務へ移す順番です。順番が重要なのは、現状把握、方針決定、実行書類、説明、更新が前後すると、関係者が異なる前提で動き出すためです。読者は、未着手の番号を次の行動として読み取ってください。

順番実務で行うこと
1現経営者が、事業承継を相続問題としても捉えます。
2後継者候補と承継意思を確認します。
3株主名簿、定款、決算書、登記、不動産、借入、保証を集めます。
4推定相続人と遺留分リスクを確認します。
5非上場株式と事業用不動産の評価方針を決めます。
6後継者へ集中させる資産と、他の相続人へ配分する資産を分けます。
7相続税、贈与税、納税資金を試算します。
8事業承継税制の利用可否を検討します。
9借入金、担保、経営者保証を金融機関と確認します。
10後継者教育と権限移譲の年次計画を作ります。
11遺言、株式譲渡、贈与、不動産登記などの実行書類を作ります。
12親族、従業員、取引先、金融機関への説明計画を作ります。
13毎年、決算後に計画書を更新します。

次の重要ポイントは、このページの結論を短く整理したものです。強調しておく必要があるのは、現経営者の意思を誰も正確に知らないまま相続が始まると、相続人、後継者、従業員、金融機関がそれぞれ異なる前提で動き出すためです。読者は、計画書が混乱を防ぐ中核文書であることを読み取ってください。

事業承継計画書は、家族と会社の前提をそろえる文書です

まず会社と個人財産の現状を見える化し、相続人関係と株式の所在を確認します。次に、承継類型、後継者、株式移転、事業用資産、遺言、遺留分、税務、納税資金、経営者保証、説明計画を整理し、遺言、契約、登記、税務申告、金融機関資料、社内規程へ変換します。

Reference

参考情報

公的・中立的な情報源

  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン」
  • J-Net21「事業承継計画の作り方」
  • 中小企業庁「事業承継を知る」
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制」
  • 中小企業庁「特例承継計画申請手続書類」
  • 中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」
  • 裁判所「遺産分割調停」
  • 中小企業庁「経営者保証」
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」
  • 経済産業省「中小M&Aガイドライン改訂に関する公表」
  • 事業承継・引継ぎポータルサイト
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」