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日本と海外に財産がある相続
どの国の法律が適用されるか

国際相続では、相続の中身を決める法律、海外財産を動かす現地手続、税金を課す法律が一致しないことがあります。まず日本法の入口を押さえ、遺言、財産所在地、税務、専門家連携を分けて整理します。

36条 通則法の相続準拠法
10か月 相続税申告の原則期限
3年以内 相続登記申請の目安
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日本と海外に財産がある相続 どの国の法律が適用されるか

国際 相続では、相続の中身を決める法律、海外財産を動かす現地手続、税金を課す法律が一致しないことがあります。

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日本と海外に財産がある相続 どの国の法律が適用されるか
国際 相続では、相続の中身を決める法律、海外財産を動かす現地手続、税金を課す法律が一致しないことがあります。
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  • 日本と海外に財産がある相続 どの国の法律が適用されるか
  • 国際 相続では、相続の中身を決める法律、海外財産を動かす現地手続、税金を課す法律が一致しないことがあります。

POINT 1

  • 国際相続の全体像 ― 日本と海外の財産で分けて考える
  • 日本法上の入口、現地手続、税務を混同しないことが出発点です。
  • 日本と海外に財産がある場合の相続で、日本法上まず確認するのは財産の場所ではなく、亡くなった人である被相続人の本国法です。
  • 日本の国際私法である法の適用に関する通則法36条は、相続について被相続人の本国法によると定めています。
  • 日本の裁判所や日本国内の 相続登記、遺産分割の検討では、最初に被相続人の国籍を確認します。

POINT 2

  • 国際相続でどの国の法律が適用されるかの基本原則
  • 1. 被相続人の国籍を確認:日本法上の本国法を特定します。
  • 2. 日本国籍か外国籍かを整理:日本国籍なら日本法、外国籍なら外国法が入口です。
  • 3. 反致と外国国際私法を確認:死亡時住所地法などで日本法に戻る可能性があります。
  • 4. 現地手続を別に確認:海外財産の名義変更や税務は所在地国の制度を確認します。

POINT 3

  • 国際相続の準拠法を理解するための基本用語
  • 本国法、反致、所在地法などの意味を整理します。
  • 所在地法
  • 相続統一主義
  • 相続分割主義

POINT 4

  • 国際相続に関係する日本法の中心規定
  • 通則法36条、37条、38条、41条、42条と遺言方式準拠法を確認します。
  • 日本法の中心規定は、通則法36条です。
  • 同条は相続関係を被相続人の属人的な法律、つまり本国法に結び付けます。
  • 財産が日本にあるか海外にあるかではなく、亡くなった人がどの国の法秩序に属するかを重視する構造です。

POINT 5

  • 国際相続の典型事例 ― 国籍と財産の種類で見る注意点
  • 日本国籍者が海外財産を残した場合
  • 日本法上は日本法が相続準拠法です。
  • 外国籍者が日本と海外に財産を残した場合
  • 日本法の入口は外国の本国法です。

POINT 6

  • 国際相続の遺産分割と紛争解決で注意すること
  • 1. 相続人と財産を確定する:戸籍、外国の身分証明、財産目録、海外口座や不動産の資料を整理します。
  • 2. 日本で協議書を整える:海外居住者の署名証明、在外公館の証明、現地公証人の認証などを確認します。
  • 3. 協議が難しい場合は家庭裁判所を検討する:調停で合意形成を目指し、成立しない場合は審判に移行することがあります。
  • 4. 海外財産の現地実行を確認する:日本の調停や審判が現地で当然に実行できるとは限らないため、承認執行や現地登記を確認します。

POINT 7

  • 国際相続の相続税は準拠法とは別に判断する
  • 住所、国籍、居住期間、財産所在地、外国税額控除を分けて確認します。
  • どの国の法律が適用されるかという問いでは、相続法と税法を分ける必要があります。
  • 相続準拠法が日本法だからといって、すべての税務が日本だけで完結するわけではありません。
  • 逆に、外国法が相続準拠法になる場合でも、日本にある財産や日本との居住関係によって、日本の相続税が問題になることがあります。

POINT 8

  • 国際相続で日本国内財産を動かす手続
  • 不動産、預貯金、株式、投資信託、保険で必要書類が変わります。
  • 日本の不動産が相続財産に含まれる場合、相続登記が必要です。
  • 相続登記は2024年4月1日から義務化されています。
  • 相続により不動産を取得した相続人は、原則として取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

まとめ

  • 日本と海外に財産がある相続 どの国の法律が適用されるか
  • 国際相続の全体像 ― 日本と海外の財産で分けて考える:日本法上の入口、現地手続、税務を混同しないことが出発点です。
  • 国際相続でどの国の法律が適用されるかの基本原則:日本で判断する場合、相続準拠法は原則として被相続人の本国法です。
  • 国際相続の準拠法を理解するための基本用語:本国法、反致、所在地法などの意味を整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

国際相続の全体像 ― 日本と海外の財産で分けて考える

日本法上の入口、現地手続、税務を混同しないことが出発点です。

日本と海外に財産がある場合の相続で、日本法上まず確認するのは財産の場所ではなく、亡くなった人である被相続人の本国法です。日本の国際私法である法の適用に関する通則法36条は、相続について被相続人の本国法によると定めています。日本の裁判所や日本国内の相続登記、遺産分割の検討では、最初に被相続人の国籍を確認します。

ただし、国際相続はこの一文だけでは整理できません。相続人や相続分を決める法律、海外財産を実際に動かす登記・金融機関・裁判所手続、相続税や外国の遺産税を課す法律は、別々に検討する必要があります。

次の比較表は、国際相続で分けて見るべき検討層を整理したものです。どの層の話をしているかを分けることが重要で、読者は「相続の中身」「遺言」「財産所在地の手続」「税務」「紛争解決」が同じ法律で処理されるとは限らない点を読み取る必要があります。

検討層問題の内容典型的に関係する法や実務
相続の準拠法誰が相続人か、相続分はいくらか、遺留分に相当する権利があるか日本では通則法36条により被相続人の本国法
遺言の成立と効力遺言能力、遺言による財産承継の実体的効力通則法37条など
遺言の方式署名、証人、日付、方式の有効性遺言の方式の準拠法に関する法律
財産所在地の移転手続不動産登記、銀行口座解約、証券移管、会社持分移転財産所在地国の登記法、金融機関実務、裁判所手続
税務日本の相続税、外国の相続税や遺産税、二重課税調整各国税法、日本では国税庁実務と相続税法
紛争解決どの裁判所や調停を使い、どの国の証明書を使うか家庭裁判所、外国裁判所、EU規則、プロベート制度など
重要国際相続で多い誤解は、日本人が亡くなったなら海外財産も日本の書類だけで動かせる、海外に不動産があるならその国の相続法だけが適用される、相続税が日本でかかるなら相続法も日本法である、という混同です。これらは分けて確認する必要があります。
Section 01

国際相続でどの国の法律が適用されるかの基本原則

日本で判断する場合、相続準拠法は原則として被相続人の本国法です。

日本でどの国の相続法が適用されるかを判断する場合、中心になるのは通則法36条です。ここでいう本国法とは、基本的には被相続人の国籍国の法律を指します。被相続人が日本国籍者であれば、日本に財産があっても海外に財産があっても、日本法が相続の準拠法になるのが日本法上の原則です。被相続人が外国籍者であれば、その国籍国の法律が入口になります。

もっとも、これは日本の国際私法から見た入口です。海外不動産、海外銀行預金、海外証券口座、外国法人の株式、海外信託、暗号資産取引所のアカウントなどを実際に承継するには、財産所在地国の登記制度、金融機関規約、裁判所のプロベート、現地税務、翻訳認証、アポスティーユ、領事認証が問題になります。

次の判断の流れは、日本法から見た相続準拠法と、海外財産を動かす現地手続を切り分けるための順序を表します。最初の分岐で被相続人の国籍を確認し、その後に反致や財産所在地の手続を確認する点が重要です。

準拠法と現地手続の判断の流れ

被相続人の国籍を確認

日本法上の本国法を特定します。

日本国籍か外国籍かを整理

日本国籍なら日本法、外国籍なら外国法が入口です。

外国法が指定される
反致と外国国際私法を確認

死亡時住所地法などで日本法に戻る可能性があります。

日本法が入口になる
現地手続を別に確認

海外財産の名義変更や税務は所在地国の制度を確認します。

実務上の最短回答は、相続準拠法は原則として被相続人の本国法であり、海外財産については現地の登記、名義変更、裁判所手続、税務、金融機関実務が別途適用される、という整理です。遺言は成立と効力の準拠法と方式の準拠法を分け、相続税は住所、国籍、財産所在地、相続人や被相続人の居住状況により別に判断します。

Section 02

国際相続の準拠法を理解するための基本用語

本国法、反致、所在地法などの意味を整理します。

国際相続とは、相続人、被相続人、財産、住所、国籍、遺言、裁判所、税務のいずれかに複数の国が関係する相続をいいます。日本人が米国の銀行口座を残した場合、外国籍の親が日本の預金を残した場合、日本と外国の重国籍者が亡くなった場合、外国で作成された遺言で日本不動産を移転する場合などが典型です。

次の一覧は、国際相続で何度も出てくる用語を比較したものです。用語の違いを押さえることが重要で、読者は「どの法律を使うか」と「どの場所の手続を使うか」が別の概念であることを確認してください。

TERM 01

準拠法

ある法律問題について、どの国の法律を適用するかという答えです。相続人、相続分、遺言の効力、遺留分に相当する権利などで問題になります。

TERM 02

本国法

原則として人の国籍国の法律です。通則法36条は、相続を被相続人の本国法に結び付けています。

TERM 03

反致

日本法が外国法を指定したところ、外国の国際私法が日本法に戻す場合に、日本法を適用する仕組みです。

TERM 04

所在地法

財産が所在する場所の法律です。不動産登記、現地裁判所手続、現地税務で特に重要になります。

TERM 05

相続統一主義

動産と不動産を問わず、相続全体を一つの法で処理する考え方です。日本の通則法36条はこの構造に近いものです。

TERM 06

相続分割主義

不動産は所在地法、動産は住所地法など、財産の種類で準拠法を分ける考え方です。英米法系の国や州で見られます。

重国籍者、無国籍者、連邦国家や州ごとに法律が異なる国の国籍者については、単純に国名だけでは準拠法を確定できません。通則法38条や外国側の常居所、住所、ドミサイル、地域法、宗教や身分法の扱いまで確認する必要があります。

Section 03

国際相続に関係する日本法の中心規定

通則法36条、37条、38条、41条、42条と遺言方式準拠法を確認します。

日本法の中心規定は、通則法36条です。同条は相続関係を被相続人の属人的な法律、つまり本国法に結び付けます。財産が日本にあるか海外にあるかではなく、亡くなった人がどの国の法秩序に属するかを重視する構造です。

次の比較表は、国際相続で参照頻度の高い日本法上の規定を整理したものです。条文ごとに扱う問題が違うため、読者は相続一般、遺言の効力、遺言の方式、重国籍、反致、公序を混同しないように確認してください。

規定主な役割実務上の注意点
通則法36条相続は被相続人の本国法によると定める中心規定日本国籍者なら日本法が入口になりますが、海外財産の移転手続は現地制度を確認します。
通則法37条遺言の成立と効力、取消しの準拠法を定める規定遺言書の方式とは別に、遺言による財産承継の実体的効力を確認します。
遺言方式準拠法署名、証人、日付、作成形式などの方式を広く有効に扱う規定行為地法、国籍法、住所地法、常居所地法、不動産所在地法などが連結点になります。
通則法38条重国籍、無国籍、地域ごとの法の相違がある場合の本国法を定める規定日本国籍を含む重国籍者では、日本法が本国法として扱われる方向で整理されることがあります。
通則法41条外国の国際私法が日本法に戻す反致を扱う規定外国籍者が日本に長く住んでいた場合などに、日本法へ戻る可能性があります。
通則法42条外国法の適用が公序に反する場合の例外を定める規定単に日本法と違うだけでは外国法を排除できず、例外的に慎重に判断されます。

遺言の方式については、国際的に遺言をできるだけ有効に扱う方向で広く連結点が認められています。海外で作成された遺言でも日本で方式上有効と認められる余地がある一方、日本で作成した遺言が海外財産について現地で問題なく使えるとは限りません。現地裁判所や金融機関が求める形式、証人、翻訳、認証、原本提出、検認類似手続を確認します。

注意公序の発動は例外です。配偶者の権利、非嫡出子、性別、宗教、身分、強制相続分、相続欠格に相当する制度などが問題になることがありますが、外国法を排除できるかは個別事情と関係国の制度により慎重に検討されます。
Section 04

国際相続の典型事例 ― 国籍と財産の種類で見る注意点

日本国籍、外国籍、重国籍、海外不動産、海外金融資産、EU、英米法系を分けて整理します。

典型事例を分けて見ると、準拠法の入口と現地手続の違いが理解しやすくなります。次の一覧は、国籍や財産の種類ごとの注意点を並べたものです。読者は、同じ海外財産でも不動産、預金、証券、暗号資産、EU域内財産、英米法系の財産で確認事項が変わる点を読み取ってください。

日本国籍者が海外財産を残した場合

日本法上は日本法が相続準拠法です。ただし、海外不動産や口座の移転には現地の登記、裁判所、税務、翻訳認証が関係します。

外国籍者が日本と海外に財産を残した場合

日本法の入口は外国の本国法です。州法や地域法がある国では、国名だけで法律を特定できないことがあります。

日本と外国の重国籍者の場合

日本法上は通則法38条を確認します。外国側が同じ結論を採るとは限らず、日本での協議と現地登記がずれることがあります。

海外不動産がある場合

相続法、登記法、税法、外国為替、売却規制、非居住者規制、農地規制、信託制度、共有制度、夫婦財産制などが絡みます。

海外預金・証券・暗号資産がある場合

支店所在地、発行法人所在地、口座管理機関、約款上の準拠法、秘密鍵、本人確認、税務評価を確認します。

EU加盟国や英米法系の国に財産がある場合

EU規則、常居所、国籍法選択、欧州相続証明書、プロベート、遺産管理人、ドミサイル法などが問題になります。

海外不動産では、現地裁判所でのプロベート、遺産管理人の選任、現地公証人、日本の戸籍や協議書の翻訳、アポスティーユまたは領事認証、現地税務申告、不動産評価、境界や地籍の確認、現地専門家の法的意見書が求められることがあります。

海外金融機関は、日本の戸籍制度を前提としていないことがあります。そのため、日本の戸籍謄本、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書をそのまま理解できない場合があります。死亡証明書、婚姻証明書、出生証明書、宣誓供述書、相続証明書、裁判所命令などを要求されることもあります。

Section 05

国際相続で遺言がある場合の実務上の分岐

一つの遺言で全財産を扱う方法と、国ごとに遺言を分ける方法を比較します。

国際相続では、遺言の有無が処理を大きく変えます。遺言がない場合、相続人全員の確定、各国の法定相続分、遺産分割協議、現地手続、翻訳認証が複雑になります。遺言がある場合でも、遺言の方式、実体的効力、遺留分、現地での承認、複数遺言の抵触を確認します。

次の比較表は、一つの遺言で全世界の財産を扱う方法と、国ごとに遺言を作る方法の違いを表します。どちらが常に優れているという話ではなく、読者は統一性、現地適合性、撤回文言、原本保管、遺言執行者の権限の違いを読み取ることが重要です。

方法利点注意点
一つの遺言で全世界の財産を処理全体の統一性を保ちやすく、誰に何を承継させるかを明確にしやすい現地語翻訳、証人要件、ノータリー、公証、プロベート、遺言執行者の権限、現地税務、信託との関係を確認します。
国ごとに別の遺言を作る現地での手続適合性が高く、海外財産の所在地国で使いやすい場合がある後の遺言が前の遺言を撤回するリスクがあります。対象財産、対象国、撤回範囲、準拠法、原本保管を調整します。

日本では、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言などがあります。自筆証書遺言については、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、家庭裁判所の検認が不要になるなどの実務上の利点があります。ただし、海外財産について現地がどのような遺言を受け入れるかは別問題です。

日本法が相続準拠法になる場合、日本の遺留分制度が問題になることがあります。兄弟姉妹以外の一定の相続人には最低限の取得分に相当する権利があり、海外財産を特定の相続人や第三者に遺贈する遺言がある場合でも、遺留分侵害額請求が問題になる可能性があります。ただし、その請求を海外財産そのものにどのように反映できるかは、海外裁判所や登記実務を確認する必要があります。

Section 06

国際相続の遺産分割と紛争解決で注意すること

日本の協議・調停と、海外財産の実行可能性を分けて確認します。

日本法が準拠法となる場合、相続人全員による遺産分割協議が中心になります。遺産分割協議書には、相続人全員の署名押印、印鑑証明書、戸籍、住民票、相続関係説明図、財産目録などが必要になることがあります。

海外居住の相続人がいる場合は、印鑑証明書が取れないため、署名証明、在外公館の証明、現地公証人の認証、アポスティーユなどが必要になることがあります。外国籍相続人がいる場合は、戸籍制度に相当する出生証明、婚姻証明、死亡証明、宣誓供述書などを取得することがあります。

次の時系列は、協議がまとまる場合とまとまらない場合の確認順序を表します。順番を追うことが重要で、読者は日本側の合意形成と海外財産の現地実行を並行して確認する必要がある点を読み取ってください。

STEP 01

相続人と財産を確定する

戸籍、外国の身分証明、財産目録、海外口座や不動産の資料を整理します。

STEP 02

日本で協議書を整える

海外居住者の署名証明、在外公館の証明、現地公証人の認証などを確認します。

STEP 03

協議が難しい場合は家庭裁判所を検討する

調停で合意形成を目指し、成立しない場合は審判に移行することがあります。

STEP 04

海外財産の現地実行を確認する

日本の調停や審判が現地で当然に実行できるとは限らないため、承認執行や現地登記を確認します。

相続人の一部が未成年者で、親権者も共同相続人である場合、利益相反が生じることがあります。この場合、家庭裁判所で特別代理人の選任が必要になることがあります。成年後見、保佐、補助の利用者についても、本人保護の観点から、特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人などが問題になることがあります。

Section 07

国際相続の相続税は準拠法とは別に判断する

住所、国籍、居住期間、財産所在地、外国税額控除を分けて確認します。

どの国の法律が適用されるかという問いでは、相続法と税法を分ける必要があります。相続準拠法が日本法だからといって、すべての税務が日本だけで完結するわけではありません。逆に、外国法が相続準拠法になる場合でも、日本にある財産や日本との居住関係によって、日本の相続税が問題になることがあります。

日本の相続税では、財産の所在判定が重要です。次の比較表は代表的な財産の所在判定をまとめたものです。相続準拠法とは別の税法上の判定である点が重要で、読者は日本法が相続準拠法でも海外財産は国外財産として扱われる場合があることを読み取ってください。

財産の種類所在判定の考え方国際相続での注意点
不動産その不動産の所在海外不動産は日本法上の相続準拠法とは別に、海外所在財産として評価や現地税務を確認します。
動産その動産の所在貴金属や美術品などは保管場所の確認が重要です。
預貯金受入れをした営業所または事業所の所在海外銀行口座では支店所在地や口座管理の実務を確認します。
保険金保険会社の本店または主たる事務所の所在受取人固有の権利と相続税上のみなし相続財産を分けます。
株式発行法人の本店または主たる事務所の所在外国法人株式や証券口座の管理機関所在地も確認します。

日本の相続税申告は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行います。海外財産がある場合、現地評価、翻訳、残高証明、現地税務、為替換算、相続人確認、遺言検認、プロベートが長期化し、10か月以内に資料がそろわないことがあります。

次の一覧は、10か月の申告期限に向けて早期に確認すべき税務項目です。期限と資金繰りを同時に見ることが重要で、読者は国内財産と国外財産、為替、外国税、納税資金を別々に洗い出す必要があります。

01

相続税申告の要否

相続人や被相続人の住所、国籍、居住期間、財産の所在を確認します。

期限確認
02

国内財産と国外財産の範囲

税法上の所在判定により、課税対象になる財産を整理します。

財産整理
03

海外財産の評価と為替換算

評価基準日、現地評価、残高証明、換算レートを確認します。

評価
04

外国税と調整

外国で課される相続税、遺産税、贈与税、移転税と、日本側の調整可否を確認します。

二重課税
05

納税資金

海外口座の凍結や送金規制で納税資金が不足しないかを確認します。

資金繰り

海外財産は、相続人が存在を知らないこともあります。外国銀行口座、海外証券口座、外国生命保険、海外不動産、暗号資産、外国法人株式、信託受益権などは、申告漏れのリスクが高い財産です。国際的な情報交換制度、金融機関の本人確認、国外財産調書、過去の所得税申告、送金記録、被相続人のメールや契約書、パスポート、現地納税通知書などから判明することがあります。

Section 08

国際相続で日本国内財産を動かす手続

不動産、預貯金、株式、投資信託、保険で必要書類が変わります。

日本の不動産が相続財産に含まれる場合、相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されています。相続により不動産を取得した相続人は、原則として取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく申請しない場合、過料の対象となることがあります。

次の比較表は、日本国内財産ごとの主な手続と国際相続で追加されやすい確認事項を整理したものです。財産の種類ごとに提出先と必要書類が違うため、読者は不動産、預貯金、証券・保険を分けて資料を集める必要があります。

国内財産主な手続国際相続で追加されやすい確認事項
日本の不動産相続登記、登記原因証明情報の整備国籍証明、住所証明、署名証明、相続証明、翻訳文、外国専門家との連携
日本の預貯金口座凍結後の払戻し、名義変更遺言書、協議書、戸籍、印鑑証明、法定相続情報、外国語書類の翻訳、宣誓供述書
株式・投資信託・保険証券会社、信託銀行、生命保険会社での相続手続本人確認、税務上の届出、送金規制、租税条約、外国口座への送金手数料

死亡保険金は、受取人固有の権利とされる場面と、相続税上のみなし相続財産として扱われる場面を区別する必要があります。外国居住者が受取人である場合、本人確認、税務上の届出、送金規制、租税条約、外国口座への送金手数料なども問題になります。

Section 09

国際相続で海外財産を動かすための現地手続

現地専門家、プロベート、受益者指定、信託、売却手続を確認します。

海外財産は、現地専門家の関与なしに処理することが難しい場合があります。日本法上の相続人が誰かという問題と、現地の登記簿や金融機関の名義を変える問題は別だからです。

次の一覧は、現地専門家が確認する代表的な項目をまとめたものです。確認対象が多い理由を理解することが重要で、読者は相続法だけでなく裁判所、税務、登記、夫婦財産制、信託、受益者指定まで広がる点を読み取ってください。

現地裁判所とプロベート

裁判所の管轄、プロベートの要否、遺産管理人や遺言執行者の権限を確認します。

現地相続法と国際私法

日本法の説明だけで足りるか、現地国際私法が別の法律を指定するかを確認します。

登記・税務・取得制限

現地不動産登記、税務申告、外国人による不動産取得制限を確認します。

配偶者・夫婦財産制

配偶者の権利、夫婦財産制、共有制度が相続処理に影響することがあります。

信託・受益者指定

ジョイントテナンシー、受益者指定、信託の効力を確認します。

日本書類の受理可能性

戸籍、遺産分割協議書、家庭裁判所審判が現地で使えるかを確認します。

英米法系では、joint tenancy with right of survivorshipのように、一方の共有者が死亡すると残存共有者に権利が移る仕組みがあります。生命保険、退職口座、投資口座では、beneficiary designationにより受取人が指定されていることがあります。信託では、法的所有権と受益権が分かれ、信託契約に従って承継されることがあります。

海外不動産を売却して現金化し、相続人で分ける場合には、相続手続と売却手続が連続します。現地で相続登記または遺産管理手続を完了しなければ売却できないことがあります。売却益に対する現地税、源泉徴収、日本の所得税、為替差損益、送金規制も問題になります。

Section 10

国際相続で関わる専門職と役割分担

一人の専門家だけで完結しにくいため、役割を分けて連携します。

国際相続は、一人の専門家だけで完結しにくい分野です。相続人間の紛争、日本不動産の登記、相続税申告、外国税額控除、遺言、翻訳認証、海外不動産の評価、事業承継、金融機関手続など、論点ごとに担当が分かれます。

次の一覧は、専門職ごとの主な役割を整理したものです。誰に何を相談するかを分けることが重要で、読者は紛争、登記、税務、書類作成、評価、会社・知的財産・年金・金融の領域を切り分けて確認してください。

弁護士

相続人間の争い、遺留分、使い込み疑い、遺産分割交渉、調停、審判、訴訟、外国法調査、外国弁護士との連携、遺言解釈、財産保全を扱います。

紛争

司法書士

日本の相続登記、不動産名義変更、戸籍収集、登記用書類作成、裁判所提出書類作成を担います。

登記

税理士

相続税申告、国外財産評価、外国税額控除、税務相談、税務代理、税務調査対応を担います。

税務

行政書士

紛争、税務、登記申請を除く範囲で、協議書、相続人関係説明図、各種書類作成、翻訳認証の手配、遺言作成支援に関わります。

書類

公証人・遺言執行者・信託銀行

公正証書遺言、遺言内容の実現、遺言書作成相談、保管、執行に関わります。海外手続まで及ぶかは確認が必要です。

遺言

不動産・会社・金融の専門職

不動産鑑定、境界確認、売却、非上場株式評価、事業承継知的財産、遺族年金、金融機関手続に関わります。

評価

家庭裁判所関係者として、裁判官、家事調停官、家事調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官、鑑定人、専門委員が関与することもあります。専門的な争点がある場合、不動産価格、会社価値、医学、建築、会計などの知識が必要になることがあります。

Section 11

国際相続の実務チェックリストと準拠法判断の手順

初動、判断順序、必要書類をまとめて確認します。

国際相続では、初動が遅れると、税務期限、現地手続、財産保全で不利になることがあります。最初に、被相続人の国籍、死亡時住所、常居所、ドミサイル、相続人の国籍・住所・年齢・判断能力、遺言書の有無、日本国内財産、海外財産、債務、税金、保険、信託、期限、争いの有無、未成年者や後見制度利用者の有無を確認します。

次の判断の流れは、準拠法を確認する順序を整理したものです。番号順に確認することが重要で、読者は国籍から始め、重国籍や地域法、反致、遺言、海外財産の所在地国手続、税務、裁判所の順に分解して考える必要があります。

準拠法判断の基本手順

1. 国籍を確認

被相続人の国籍を確認します。

2. 重国籍・無国籍・地域法を確認

一つの国名だけで終わらない場合を整理します。

3. 本国法を特定

日本法から見た相続準拠法を確認します。

4. 反致を確認

外国法が指定される場合、その国の相続法と国際私法を確認します。

5. 遺言と方式を確認

遺言の成立、効力、方式の準拠法を分けて確認します。

6. 手続・税務・裁判所を確認

海外財産の所在地国手続、日本と外国の税務、紛争解決の場所を整理します。

次の比較表は、国際相続でよく求められる書類を分類したものです。書類名だけでなく、どの国の手続で使うかを確認することが重要で、読者は身分関係、財産、遺言、海外手続、認証・翻訳を別々に準備する必要があります。

分類書類の例確認のポイント
身分関係死亡診断書、死亡証明書、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、出生証明書、婚姻証明書、離婚証明書、住民票、戸籍附票、住所証明、パスポート、在留資格関係の書類日本の戸籍で足りるか、外国の身分証明が必要かを確認します。
遺言・分割遺言書原本、検認済証明書または遺言書情報証明書、遺産分割協議書、印鑑証明書、署名証明、法定相続情報一覧図海外居住者や外国籍相続人がいる場合、署名証明や認証が問題になります。
財産資料不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、銀行残高証明書、証券残高証明書、保険証券、保険金支払明細国内財産と国外財産を分け、評価基準日や通貨を確認します。
海外手続海外不動産の権利証、納税通知書、評価書、外国裁判所の命令、プロベート書類、外国法の法的意見書現地裁判所や金融機関が求める形式を確認します。
認証・翻訳翻訳文、アポスティーユ、領事認証提出先がどの認証を求めるかを早めに確認します。
Section 12

国際相続でよくある誤解とFAQ

一般的な制度理解として、断定しすぎずに整理します。

海外に財産があるなら、その国の相続法だけが適用されますか

一般的には、日本法の立場では相続の準拠法は原則として被相続人の本国法とされています。ただし、海外財産の名義変更や税務については現地法が強く関係し、財産の種類、所在地、現地国際私法によって扱いが変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで関係国の専門家へ相談する必要があります。

日本人なら海外財産も日本の遺産分割協議書だけで動かせますか

一般的には、日本法が相続準拠法であっても、海外の登記所や金融機関が日本の遺産分割協議書だけで手続を完了するとは限らないとされています。現地裁判所の手続、翻訳、認証、現地専門家の関与が必要になる可能性があります。具体的な必要書類は財産所在地国や金融機関の実務で変わります。

相続税が日本でかかるなら、相続法も日本法ですか

一般的には、相続税の課税範囲と相続の準拠法は別問題とされています。外国法が相続準拠法になる場合でも、日本国内財産や居住関係によって日本の相続税が問題になることがあります。具体的な課税関係は、住所、国籍、居住期間、財産所在地、外国税の有無によって変わるため、税務専門家に確認する必要があります。

外国で作った遺言は日本では使えませんか

一般的には、外国で作成した遺言でも、遺言の方式の準拠法に関する法律により、一定の連結点の法律に適合していれば日本で方式上有効と認められる可能性があります。ただし、方式上有効であっても、実体的効力、遺留分、登記実務、翻訳、検認、現地手続は別に確認する必要があります。

海外の専門家だけに任せれば日本側の確認は不要ですか

一般的には、海外財産の処理には現地専門家が重要ですが、日本の相続税、日本不動産の登記、日本の相続人間の遺産分割、日本の家庭裁判所手続は日本側の制度として別に扱われます。関係国の専門家をつなぎ、資料と判断範囲を整理する必要があります。

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国際相続のまとめ ― 法律、手続、税務を順番に分解する

一つの答えに押し込めず、関係国ごとの確認事項に分解します。

日本と海外に財産がある相続では、どの国の法律が適用されるかという問いを一つの答えに押し込めることはできません。日本法上の相続準拠法は、原則として被相続人の本国法です。被相続人が日本国籍者なら日本法、外国籍者ならその本国法が出発点になります。重国籍、無国籍、地域法、反致、公序、遺言の方式、外国裁判所の手続があるため、実務ではさらに精査が必要です。

もっとも、相続の準拠法が決まっても、海外財産の名義変更、売却、預金解約、証券移管、現地税務は、財産所在地国の制度に従います。相続税も相続準拠法とは別問題であり、日本の課税範囲、国外財産の所在判定、外国税との調整、申告期限を独立して検討する必要があります。

次の重要ポイントは、最終的な実務判断で順番に答えるべき問いをまとめたものです。上から順に確認することが重要で、読者は国籍、反致、遺言、海外財産、税務、紛争、移転手続、資金確保を抜けなく確認してください。

国際相続は、準拠法・現地手続・税務を分けることで扱いやすくなります

亡くなった人の国籍、重国籍や地域法、反致、遺言の成立・効力・方式、海外財産所在地国の手続、日本と外国の税金、紛争解決の場所、登記・預金・証券・保険・会社・知的財産・暗号資産の移転、納税資金と分配資金を順番に確認します。

国際相続では、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、公証人、遺言執行者、信託銀行、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、家庭裁判所関係者、公認会計士、中小企業診断士、弁理士、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士、金融機関、現地専門家が連携することで、安全に処理できる可能性が高まります。

Reference

参考資料

法令、公的機関、国際機関、専門文献を中心に整理しています。

日本の法令・公的資料

  • 法の適用に関する通則法
  • 遺言の方式の準拠法に関する法律
  • 国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 法務局「相続登記の申請義務化」
  • 政府広報オンライン「相続に関する基礎知識、相続登記の義務化等」
  • 裁判所「遺産分割調停」
  • 裁判所「特別代理人選任」
  • 日本公証人連合会「遺言」

国際機関・専門文献

  • European e-Justice Portal, Succession
  • Hague Conference on Private International Law, Convention of 5 October 1961 on the Conflicts of Laws Relating to the Form of Testamentary Dispositions
  • Tulane Law Review, Situs and Domicile in Choice of Law for Succession Issues