2σ Guide

相続対策で
最初にやるべき
財産の棚卸しと
評価額の把握

遺言や生前贈与の前に、何があり、誰のもので、いくらと見るのかを整理します。財産目録、評価目的、期限、専門家相談まで、相続対策の土台を実務目線で確認できます。

10か月 申告期限
3か月 熟慮期間
3年 登記期限
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相続対策で 最初にやるべき 財産の棚卸しと 評価額の把握

遺言や生前贈与の前に、何があり、誰のもので、いくらと見るのかを整理します。

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相続対策で 最初にやるべき 財産の棚卸しと 評価額の把握
遺言や生前贈与の前に、何があり、誰のもので、いくらと見るのかを整理します。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 相続対策で 最初にやるべき 財産の棚卸しと 評価額の把握
  • 遺言や生前贈与の前に、何があり、誰のもので、いくらと見るのかを整理します。

POINT 1

  • 相続対策の財産棚卸しは財産目録づくりではなくリスクの見える化です
  • 相続対策は、財産の種類、名義、評価額、評価時点、利用目的を同時に整理するところから始まります。
  • 何があるか
  • 誰のものか
  • いくらか

POINT 2

  • 相続対策の財産棚卸しで押さえる用語と評価額の違い
  • 財産の棚卸し、評価額、相続開始時、正味の遺産額を分けて理解します。
  • 財産の棚卸しとは何を指すか
  • 相続開始時と正味の遺産額
  • 相続開始時とは、原則として被相続人が死亡した時点です。

POINT 3

  • 相続対策で最初に財産の棚卸しと評価額把握が必要な理由
  • 相続税の要否判定
  • 預金残高だけでは判断できません。
  • 相続放棄・限定承認
  • 熟慮期間は原則3か月です。

POINT 4

  • 相続対策の財産棚卸しを進める七段階の基本手順
  • 1. 相続人と遺言書を確認する
  • 2. 資料を保全する
  • 3. プラス財産を抽出する
  • 4. マイナス財産と葬式費用を抽出する
  • 5. 評価目的ごとに評価額を分ける:相続税評価額、遺産分割上の参考時価、売却見込額、手取見込額、担保評価、鑑定評価額を分けて記載します。
  • 6. 未確定論点を分離する
  • 7. 対策シナリオに落とし込む

POINT 5

  • 相続対策の財産種類別に棚卸しと評価方法を確認する
  • 預貯金、不動産、保険、非上場株式、デジタル資産まで、財産ごとの見落としを防ぎます。
  • 金融資産と保険・退職金
  • 不動産と小規模宅地等の特例
  • 事業、動産、知的財産、デジタル資産、海外財産

POINT 6

  • 相続対策で使える財産目録と評価目的別の評価額一覧
  • 専門家が見ても検討できる粒度で、評価方法、証拠資料、未確定事項まで残します。
  • 相続税評価額と遺産分割評価額は違います
  • 相続税評価額は、課税公平や事務処理の必要から一定のルールで計算されます。
  • 一方、遺産分割評価額は相続人間で公平に分けるための金額です。

POINT 7

  • 相続対策の財産棚卸しを10か月期限と未分割申告につなげる
  • 1. 財産と債務を確認:証拠資料付き財産目録を作り、評価目的と未確定事項を分けます。
  • 2. 評価額と納税資金を試算:相続税評価額、売却見込額、手取見込額を分けて確認します。
  • 3. 10か月以内に分割できる見込みがあるか:相続人全員の合意、特例利用、納税資金の準備を確認します。
  • 4. 分割内容を申告へ反映:小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の要件も確認します。
  • 5. 未分割申告を検討:法定相続分 等で申告する扱いになり、特例や税額軽減が制限される場合があります。

POINT 8

  • 相続対策の財産棚卸しで専門職に渡す資料と30日アクション
  • 1. 保全:葬儀費用、医療費、介護費の領収書も分けて保存します。
  • 2. 相続人・遺言確認:戸籍取得の準備をし、遺言書の有無、公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言の照会を検討します。
  • 3. 財産資料収集:金融機関や証券会社の残高証明、保険会社への照会、名寄帳、登記事項証明書、借入先の残債確認を進めます。
  • 4. 一次財産目録作成:プラス財産、マイナス財産、みなし相続財産、非課税財産、調査中財産に分け、評価額が概算でも評価方法と資料を明記します。
  • 5. 専門家相談と方針決定

まとめ

  • 相続対策で 最初にやるべき 財産の棚卸しと 評価額の把握
  • 相続対策の財産棚卸しは財産目録づくりではなくリスクの見える化です:相続対策は、財産の種類、名義、評価額、評価時点、利用目的を同時に整理するところから始まります。
  • 相続対策の財産棚卸しで押さえる用語と評価額の違い:財産の棚卸し、評価額、相続開始時、正味の遺産額を分けて理解します。
  • 相続対策で最初に財産の棚卸しと評価額把握が必要な理由:相続税、相続放棄、遺産分割、登記、納税資金の判断がすべて財産情報に依存します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

相続対策の財産棚卸しは財産目録づくりではなくリスクの見える化です

相続対策は、財産の種類、名義、評価額、評価時点、利用目的を同時に整理するところから始まります。

相続対策で最初にやるべきことは、遺言書を書くことでも、生前贈与を始めることでも、節税商品を選ぶことでもありません。第一歩は、財産の棚卸しと評価額の把握です。相続対策は、何を、誰に、いくらで、どの根拠に基づき、どの時点で承継させるかを設計する作業だからです。

財産一覧と評価額が不正確なまま進めると、遺産分割、遺留分、相続税、納税資金、不動産登記、事業承継、家族間の説明責任が不安定になります。税務上の確認だけでなく、相続人同士が同じ資料を見て話せる状態を作ることが大切です。

最初に確認すべき五つの視点を一覧にしています。左から順に、財産を漏れなく探し、名義と実質を比べ、目的別の金額を分け、評価する時点をそろえ、最後に何の判断へ使うかを確認します。この順番を守ると、後から争点になりやすい部分を早い段階で切り分けやすくなります。

Point 01

何があるか

現金、預貯金、有価証券、不動産、保険、退職金、非上場株式、貸付金、知的財産、デジタル資産、動産、債務まで抽出します。

Point 02

誰のものか

名義人だけでなく、実質的な出資者、管理者、使用者、受益者、契約者、受取人を確認します。

Point 03

いくらか

相続税評価額、時価、売却見込額、分割協議上の評価額、鑑定評価額を混同しないように整理します。

Point 04

いつ見るか

相続開始時、生前対策時、遺産分割時、売却時、申告期限時など、評価時点を明確にします。

Point 05

何に使うか

相続税申告、遺産分割、遺留分、納税資金、相続登記、事業承継、老後資金計画のどれに使う評価かを分けます。

相続対策の初期成果物は、後の判断を支える四つの資料に整理できます。どの資料が何を補うのかを押さえることが重要で、家族説明、税務試算、登記準備、専門家相談の出発点になります。

最初に作るべき四つの資料

証拠資料付き財産目録、評価目的別の評価額一覧、債務・葬式費用・保証債務一覧、未確定論点と専門家相談リストをそろえると、遺言、生前贈与、生命保険、家族信託、不動産売却、相続登記、相続税申告へ進みやすくなります。

注意ここでいう棚卸しは、単なる一覧表づくりではありません。名義預金、生前の多額出金、保証債務、境界未確定地、非上場株式、海外財産など、後から相続リスクになりやすい論点を早めに分ける調査です。
Section 01

相続対策の財産棚卸しで押さえる用語と評価額の違い

財産の棚卸し、評価額、相続開始時、正味の遺産額を分けて理解します。

財産の棚卸しとは何を指すか

財産の棚卸しとは、本人が保有し、または実質的に支配し、将来相続に影響を与える財産、債務、契約、権利義務を、証拠資料に基づいて一覧化する作業です。銀行通帳に載る財産だけでなく、家族名義の預金、保険料を本人が負担した生命保険、会社への貸付金、未収家賃、同族会社株式、ネット証券口座、暗号資産、会員権、著作権、特許権、骨とう品、車両、農地、山林、借地権、賃貸不動産の敷金返還債務、保証債務の可能性まで検討対象になり得ます。

評価額は一つではありません

同じ財産でも、固定資産税評価額、相続税評価額、路線価を基にした概算額、不動産会社の査定額、不動産鑑定士による鑑定評価額、実際に売れる見込額、売却費用や譲渡所得税等を控除した手取額、遺産分割協議で合意した評価額は一致しないことがあります。

評価額を混同すると、税務上は正しくても家族間では不公平に見える、または売却すれば納税できるはずなのに実際の手取額が足りない、といった問題が起こります。次の表では、目的ごとにどの評価を見ればよいかを整理しています。

評価の種類主な意味使う場面確認したい資料
相続税評価額相続税の課税価格を計算するための金額相続税申告、概算税額試算路線価、倍率表、残高証明、評価明細
遺産分割上の参考時価相続人間で公平に分けるための金額代償金、換価分割、協議の説明査定書、鑑定評価、取引事例
売却見込額市場で売れる可能性がある価格納税資金、換金計画不動産査定、証券価格、買付見込
手取見込額売却費用と税金を控除した後の資金納税、代償金、生活資金計画譲渡所得税試算、測量費、仲介手数料
鑑定評価額専門的評価基準に基づく価格紛争、調停、審判、訴訟鑑定評価書、裁判所提出資料

相続開始時と正味の遺産額

相続開始時とは、原則として被相続人が死亡した時点です。相続税では、この時点の価額評価が基礎になります。相続税の申告・納税期限は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。

正味の遺産額は、概略として遺産総額等から非課税財産、葬式費用、債務を控除し、一定の贈与財産を加算して考えます。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。ただし、税務上の正味の遺産額と、遺産分割で相続人が分ける対象財産は一致しないことがあります。死亡保険金、死亡退職金、祭祀財産、生前贈与、特別受益、寄与分、遺留分算定の基礎財産が絡むためです。

Section 02

相続対策で最初に財産の棚卸しと評価額把握が必要な理由

相続税、相続放棄、遺産分割、登記、納税資金の判断がすべて財産情報に依存します。

財産の棚卸しが遅れると、相続税がかかるかどうかの判定、相続放棄や限定承認の検討、遺産分割協議、相続登記、納税資金の確保が同時に遅れます。下の一覧は、棚卸し不足がどの実務に影響するかを示すもので、各項目の内容から自分の家庭で優先すべき調査を読み取ることができます。

相続税の要否判定

預金残高だけでは判断できません。不動産評価、生命保険金の非課税枠、死亡退職金、債務控除、葬式費用、過去の贈与、相続時精算課税、小規模宅地等の特例まで確認します。

相続放棄・限定承認

熟慮期間は原則3か月です。借入金、保証債務、未払税金、事業債務、リース債務、原状回復費用などを急いで確認する必要があります。

遺産分割協議

相続人全員の合意には、何が遺産でいくらと見るかの共通認識が必要です。家庭裁判所の調停や審判に移る場合も、財産目録と評価資料が重要になります。

相続登記義務化

2024年4月1日から相続登記が義務化され、基本的に取得を知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。

所有不動産の把握

2026年2月2日から所有不動産記録証明制度が施行されています。不動産の所在漏れを減らすため、今後の実務で重要な確認手段になります。

納税資金と生活資金

相続税は原則として金銭で期限までに納めます。換金しやすい資産と、売却や評価に時間がかかる資産を分けることが必要です。

特に不動産と自社株が中心の家庭では、相続税評価額だけを見ても納税資金の有無は判断できません。代償金、葬儀費用、準確定申告、固定資産税、管理費、修繕費、専門家報酬など、相続後すぐに出ていく資金も合わせて整理します。

重要財産調査をしても3か月以内に相続放棄の判断ができない場合、一般的には家庭裁判所への熟慮期間伸長の申立てを検討する場面があります。具体的な可否や必要資料は、個別事情により異なります。
Section 03

相続対策の財産棚卸しを進める七段階の基本手順

相続人と遺言書の確認から、未確定論点の分離、対策シナリオへの落とし込みまでを順に進めます。

棚卸しは、思いついた財産を書き出すだけでは漏れが出ます。次の時系列は、専門職が通常確認する七つの段階を並べたものです。順番に意味があり、先に相続人や遺言書を確認することで、誰がどの資料を取得できるか、後続手続にどの書類が必要かを判断しやすくなります。

第1段階

相続人と遺言書を確認する

出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、住民票、遺言書、公正証書遺言検索、法務局保管の自筆証書遺言照会、法定相続情報一覧図を確認します。

第2段階

資料を保全する

通帳、キャッシュカード、郵便物、スマートフォン、パソコン、貸金庫の鍵、保険証券、固定資産税納税通知書、証券会社書類、借入契約書を散逸させないようにします。

第3段階

プラス財産を抽出する

現金、預貯金、株式、投資信託、不動産、保険、退職金、非上場株式、貸付金、未収金、動産、知的財産、会員権、暗号資産、海外財産まで確認します。

第4段階

マイナス財産と葬式費用を抽出する

住宅ローン、事業借入、未払医療費、未払介護費、未払税金、リース債務、敷金返還債務、連帯保証、損害賠償債務、葬儀費用などを整理します。

第5段階

評価目的ごとに評価額を分ける

相続税評価額、遺産分割上の参考時価、売却見込額、手取見込額、担保評価、鑑定評価額を分けて記載します。

第6段階

未確定論点を分離する

家族名義預金、多額出金、生命保険金の扱い、住宅資金援助、寄与分、同族会社貸付金、借地権、境界未確定土地、海外財産などを別管理します。

第7段階

対策シナリオに落とし込む

遺言書、生前贈与、生命保険、家族信託、任意後見、不動産の売却・組替え、共有解消、小規模宅地等の特例、非上場株式承継、納税資金、遺留分対策へつなげます。

資料重要性注意点
通帳・入出金明細預金残高、生活費、贈与、使い込み疑いの確認死亡前3年から10年程度を確認することがあります
固定資産税納税通知書不動産の所在と固定資産税評価額の把握共有持分、非課税地、未登記建物は漏れやすい項目です
名寄帳市区町村内の所有不動産一覧市区町村ごとに取得が必要です
登記事項証明書不動産の名義、抵当権、共有、地番・家屋番号の確認住所表示と地番は異なります
保険証券死亡保険金、契約者、被保険者、受取人の確認遺産分割対象か税務対象かを分けます
証券会社書類上場株式、投資信託、債券、外国証券の確認ネット証券は郵便物が少ないため見落としやすいです
借入契約書債務控除、保証債務、担保不動産の確認団体信用生命保険の有無も確認します
確定申告書不動産所得、事業所得、配当、貸付金の手掛かり申告書控えと青色申告決算書を確認します
貸金庫資料貴金属、証券、遺言書、契約書の発見開扉には相続人関係資料が必要になることがあります
スマホ・PCネット銀行、暗号資産、サブスク、電子契約の手掛かりパスワード管理とプライバシーへの配慮が必要です
Section 04

相続対策の財産種類別に棚卸しと評価方法を確認する

預貯金、不動産、保険、非上場株式、デジタル資産まで、財産ごとの見落としを防ぎます。

金融資産と保険・退職金

金融資産は評価しやすく見えても、入出金履歴、名義、税務上の扱いで争点化しやすい分野です。次の一覧では、財産ごとに何を確認し、どの数字に注意すべきかをまとめています。資料と注意点をセットで見ると、相続開始日の残高だけでは足りない理由が分かります。

財産種類確認資料評価・注意点
現金・預貯金通帳、定期預金証書、残高証明書、取引履歴、ネットバンキング画面、郵便物、家計簿、領収書相続開始日の残高に加え、死亡前後の多額出金、定期預金解約、家族名義口座への移動、葬儀費への充当を確認します。休眠口座も調査対象です。
上場株式・ETF・REIT残高証明書、取引残高報告書、年間取引報告書、配当通知、NISA口座資料相続税評価では課税時期の最終価格を基礎に、課税時期の属する月、前月、前々月の月平均額のうち低い価額を使える場合があります。
投資信託・債券・外貨建資産口数、基準価額、信託財産留保額、未収分配金、源泉徴収相当額、為替レート、口座区分解約請求または買取請求をした場合に受け取れる価額を基礎に考えます。債券では経過利息、利払日、償還期限、信用リスクも確認します。
生命保険金・損害保険金保険会社名、証券番号、契約者、被保険者、受取人、保険料負担者、保険金額、解約返戻金保険料を被相続人が負担していた死亡保険金は相続税上のみなし相続財産になり得ます。受取人が相続人の場合、500万円×法定相続人の数まで非課税限度額があります。
死亡退職金退職金規程、定款、議事録、役員報酬履歴、功績倍率、会社資金繰り500万円×法定相続人の数まで非課税となる部分があります。会社役員では法人税、役員退職給与、株価評価、納税資金にも影響します。

不動産と小規模宅地等の特例

不動産は金額が大きく、分割・登記・境界・賃貸借・売却が絡むため、相続対策の中心になりやすい財産です。次の比較表は、不動産評価で分けるべき価格を示しています。価格の種類ごとに利用場面が異なるため、どの金額で家族に説明するかを慎重に決めます。

価格の種類意味主な利用場面
固定資産税評価額市区町村が固定資産税課税のために用いる評価家屋評価、倍率方式、税額確認
相続税評価額相続税申告のための評価相続税申告、概算税額
公示価格・基準地価格公的な土地価格指標市場水準の参考
実勢価格・査定価格実際の売買見込価格換価分割、納税資金
鑑定評価額不動産鑑定士が評価基準に基づき算定紛争、調停、審判、訴訟

土地は宅地、田、畑、山林など地目ごとに評価し、路線価方式または倍率方式を用います。路線価方式では路線価を土地の形状などに応じた補正率で補正し、面積を乗じます。倍率方式では固定資産税評価額に一定倍率を乗じます。家屋は固定資産税評価額に1.0を乗じて評価し、結果として固定資産税評価額と同じ金額になります。

小規模宅地等の特例は相続税額に大きく影響します。区分ごとの限度面積と減額割合を整理した一覧です。面積と割合だけでなく、取得者、居住・事業継続、申告期限までの分割、添付書類が絡む点を読み取ることが重要です。

区分限度面積減額割合棚卸しで見る点
特定居住用宅地等330㎡まで80%誰が取得すれば要件を満たすか、二次相続で不利にならないかを確認します。
特定事業用宅地等400㎡まで80%事業継続、保有継続、事業承継の計画と合わせて確認します。
貸付事業用宅地等200㎡まで50%賃貸借契約、空室、管理状況、貸付事業性を確認します。

不動産の棚卸しでは、固定資産税納税通知書、課税明細書、名寄帳、登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面、売買契約書、重要事項説明書、建築確認済証、検査済証、賃貸借契約書、管理委託契約書、修繕履歴、境界確認書、借地契約書、農地法関係書類、マンション管理規約、管理費・修繕積立金明細を集めます。境界・測量・分筆が必要な場合、土地家屋調査士の関与も重要です。

事業、動産、知的財産、デジタル資産、海外財産

相続財産は、預金や不動産だけではありません。次の一覧は見落としやすい財産を種類別にまとめています。どの財産が現金化しにくく、どの財産が名義や契約の確認を要するかを読み取ることで、専門家に相談する優先順位を付けやすくなります。

非上場株式・同族会社株式

同族株主等かどうかにより原則的評価方式または配当還元方式を検討します。類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式、株主名簿、定款、決算書、役員借入金、生命保険、退職金規程、株式移動履歴を確認します。

事業承継換金困難

貸付金・未収金・会社への貸付金

親族への貸付、会社への役員貸付金、未収家賃、未収配当、立替金を確認します。会社に返済能力がない場合、財産として課税されても現金化しにくい問題があります。

回収可能性課税と資金

動産・美術品・貴金属・自動車

貴金属、宝石、骨とう品、絵画、時計、コレクション、クラシックカー、船舶は高額になり得ます。購入資料、鑑定書、保証書、保険証券、写真、保管場所を確認します。

形見分け高額動産

知的財産・著作権・特許権・商標権

作家、音楽家、研究者、発明者、デザイナー、経営者では、著作権、印税請求権、特許権、商標権、ライセンス契約が相続財産になることがあります。

権利期間契約確認

デジタル資産・オンライン資産

ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネー、ポイント、クラウドストレージ、SNS、サブスクリプション、オンライン事業収益、デジタルコンテンツ販売アカウントを整理します。

二段階認証秘密鍵

海外財産

海外預金、海外証券、海外不動産、外国籍保険、海外法人株式では、納税義務、財産所在地、外国税額控除、現地手続、為替換算、翻訳が問題になります。

為替換算現地手続
Section 05

相続対策で使える財産目録と評価目的別の評価額一覧

専門家が見ても検討できる粒度で、評価方法、証拠資料、未確定事項まで残します。

財産目録は、税理士の相続税試算、弁護士の遺産分割案、司法書士の登記準備、不動産会社の売却査定、FPの納税資金計画が同じ情報を使える形式にすることが重要です。次の表では、どの列に何を書くか、何のために必要かを確認できます。

項目記載例趣旨
財産番号A-001資料や相談メモと紐付けて参照しやすくします。
財産区分土地、預金、株式など分類ごとに評価方法と担当専門家を分けます。
財産名○○銀行普通預金財産を特定します。
名義人被相続人、配偶者、会社など名義と実質所有のズレを確認します。
実質所有者メモ原資は被相続人の年金等名義預金や家族名義資産の検討に使います。
所在・口座・銘柄支店、口座番号、地番等証拠資料と紐付けます。
数量・面積・持分100株、土地120㎡、持分2分の1評価計算の基礎を明確にします。
相続開始時評価額12,000,000円相続税と分割検討の起点にします。
評価方法残高証明、路線価、鑑定等金額の根拠を説明できるようにします。
評価時点相続開始日、協議日など価格変動による争いを減らします。
証拠資料残高証明書、登記簿等立証資料をすぐ確認できる状態にします。
債務・担保抵当権、借入残高等純資産と換金可能性を把握します。
取得者案長男、売却して分割等遺言や分割案に接続します。
専門家確認税理士、不動産鑑定士等次の相談先を明確にします。
未確定事項境界未確定、残高証明未取得等リスクと調査中事項を分離します。

相続税評価額と遺産分割評価額は違います

相続税評価額は、課税公平や事務処理の必要から一定のルールで計算されます。一方、遺産分割評価額は相続人間で公平に分けるための金額です。相続税評価額5,000万円の土地が実勢価格8,000万円で売れる地域にある場合、どちらを代償金の基準にするかで結果が大きく変わります。

評価目的の違いは、遺留分や売却手取額にも及びます。次の一覧では、何を目的にどの金額を見ればよいかを比較しています。相続税だけでなく、家族間の公平、支払原資、売却費用を同時に読んでください。

目的見るべき金額確認すべき論点
相続税申告相続税評価額財産評価基本通達、小規模宅地等の特例、みなし相続財産、債務控除
遺産分割相続人が合意できる参考時価査定、鑑定、収益性、代償金、価格変動の扱い
遺留分相続開始時の財産評価を基礎とする金額生前贈与、特別受益、債務、生命保険金の扱い
売却・納税資金売却見込額と手取見込額仲介手数料、測量費、解体費、残置物処分費、譲渡所得税、登記費用、借家人対応

換価分割や納税資金計画では、売却価格そのものではなく手取額が重要です。仲介手数料、測量費、境界確定費用、建物解体費、残置物処分費、譲渡所得税・住民税、登記費用、抵当権抹消費用、管理費・修繕積立金の滞納精算、借家人退去費用を見込みます。売却まで半年以上かかる場合もあるため、棚卸し段階で換金可能性を評価します。

Section 06

相続対策の財産棚卸しを10か月期限と未分割申告につなげる

申告期限、未分割時の不利益、家族間の説明、共有リスクまで一体で考えます。

相続税の申告・納税は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。この間に財産調査、評価、分割協議、申告書作成、納税資金準備を終える必要があります。下の判断の流れは、棚卸しの進み具合が申告と分割にどのように影響するかを示しています。分岐では、期限内に合意できるかだけでなく、特例や税額軽減の利用可能性を読むことが重要です。

財産棚卸しから申告・分割へ進む判断の流れ

財産と債務を確認

証拠資料付き財産目録を作り、評価目的と未確定事項を分けます。

評価額と納税資金を試算

相続税評価額、売却見込額、手取見込額を分けて確認します。

10か月以内に分割できる見込みがあるか

相続人全員の合意、特例利用、納税資金の準備を確認します。

見込みあり
分割内容を申告へ反映

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の要件も確認します。

見込みなし
未分割申告を検討

法定相続分等で申告する扱いになり、特例や税額軽減が制限される場合があります。

遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続税申告期限は延びません。未分割の場合は、民法上の相続分または包括遺贈割合に従って財産を取得したものとして申告・納税することになり、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減が使えない申告になることがあります。後に修正申告や更正の請求が必要になる場合もあります。

家族間紛争を防ぐ整理の作法

相続紛争の多くは、財産の多寡だけでなく、誰かが情報を隠しているのではないかという疑念から始まります。財産目録は説明資料としても機能します。誰が見ても、どの資料に基づいて、どの評価額を記載したかが分かる形にします。

  • 生前贈与・特別受益は、日付、金額、贈与者、受贈者、目的、証拠、贈与税申告の有無、特別受益該当性のメモを別表で管理します。
  • 死亡前後の出金は、日付、金額、引出方法、引出場所、使途、領収書、判断能力、介護状況を整理します。
  • 医療費、介護費、生活費、葬儀費、家屋修繕費、贈与、私的流用の可能性を客観資料で区別します。
  • 不動産共有は、将来の売却、賃貸、修繕、建替え、担保設定、次世代相続を複雑にするため、代償分割、換価分割、分筆、信託化、共有者間協定も比較します。
注意相続人だけで話し合える場合でも、不動産、非上場株式、相続税、認知症、未成年者、海外財産、負債、遺留分、使い込み疑いがあるときは、早期に専門家へ相談した方が整理しやすいことがあります。
Section 07

相続対策の財産棚卸しで専門職に渡す資料と30日アクション

相談先の役割を分け、初動30日で資料収集から方針決定まで進めます。

財産の棚卸しと評価額の把握は、単一の専門職だけで完結しません。次の表は、専門職ごとの主な役割と相談すべき場面をまとめたものです。自分の財産構成と未確定事項を照らし合わせると、誰に何を相談するかを決めやすくなります。

専門職主な役割相談すべき場面
弁護士紛争予防、遺産分割、遺留分、使い込み疑い、交渉、調停、審判、訴訟不信や対立がある、遺留分が問題、財産開示に応じない人がいる
司法書士相続登記、戸籍収集、法定相続情報、登記用書類、裁判所提出書類作成不動産がある、登記名義が古い、共有・数次相続がある
税理士相続税申告、税務相談、財産評価、税務調査対応基礎控除超過の可能性、不動産・株式・贈与がある
行政書士遺産分割協議書、相続人関係説明図、遺言作成支援争いがなく、書類作成を整理したい
公証人公正証書遺言遺言の安全性を高めたい、推定相続人間の争いを予防したい
不動産鑑定士不動産の適正価格評価不動産評価で対立、代償金算定、裁判所手続がある
土地家屋調査士境界確認、測量、分筆、表示登記土地を分ける、境界不明、未登記建物、地積不一致がある
宅地建物取引士・不動産会社売却査定、媒介、重要事項説明、売買実務換価分割、納税資金確保、不動産処分を検討する
公認会計士非上場株式、会社財務、組織再編同族会社、事業承継、株価が高い
中小企業診断士事業承継計画、経営改善、後継者育成会社を誰が継ぐか、経営改善が必要
弁理士特許・商標などの知的財産知的財産権の名義変更、評価、承継がある
FP家計、保険、老後資金、納税資金全体設計、資金繰り、保険活用を考える
社会保険労務士遺族年金などの周辺手続死亡後の年金・社会保険手続がある
金融機関・信託銀行残高証明、預金払戻し、遺言信託、遺言執行金融資産が多い、遺言執行を外部に任せたい

初動30日は、資料の散逸を防ぎながら、相続人・遺言確認、財産資料収集、一次財産目録、専門家相談へ進む期間です。次の時系列では、期間ごとにやることと、その段階で何を読み取るべきかを示しています。早い時期に資料を分けるほど、3か月や10か月の期限に対応しやすくなります。

1日目から3日目

保全

通帳、印鑑、保険証券、権利証、固定資産税納税通知書を保管し、郵便物を捨てず、スマホ、PC、メール、クラウド、ネット証券の存在を確認します。葬儀費用、医療費、介護費の領収書も分けて保存します。

4日目から7日目

相続人・遺言確認

戸籍取得の準備をし、遺言書の有無、公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言の照会を検討します。法定相続情報一覧図の作成も検討します。

8日目から14日目

財産資料収集

金融機関や証券会社の残高証明、保険会社への照会、名寄帳、登記事項証明書、借入先の残債確認を進めます。

15日目から21日目

一次財産目録作成

プラス財産、マイナス財産、みなし相続財産、非課税財産、調査中財産に分け、評価額が概算でも評価方法と資料を明記します。名義と実質所有にズレがありそうな財産も抽出します。

22日目から30日目

専門家相談と方針決定

税理士に相続税申告要否と概算税額、司法書士に相続登記、弁護士に紛争の兆候、不動産鑑定士に評価争い、負債超過の可能性がある場合は相続放棄・限定承認・熟慮期間伸長を相談します。

初回相談時に持参したい資料

相談時間を有効に使うには、専門職ごとに必要資料を分けて準備します。次の表は、誰に何を渡すと検討が進みやすいかを整理したものです。自分で全てを完璧にそろえる必要はありませんが、不足資料が分かるだけでも相談の精度が上がります。

相談先渡したい資料
共通死亡診断書または死亡記載の戸籍、相続人関係図、戸籍一式、遺言書、財産目録案、借入・債務一覧、葬儀費用一覧、生前贈与一覧、直近の確定申告書
税理士預金残高証明書、証券残高証明書、生命保険支払通知書、固定資産税納税通知書、名寄帳、不動産登記事項証明書、賃貸借契約書、会社決算書・申告書、贈与税申告書、医療費・葬儀費領収書
司法書士登記事項証明書、権利証・登記識別情報、固定資産評価証明書、遺産分割協議書案、相続人の印鑑証明書、住民票、法定相続情報一覧図
弁護士財産目録、相続人間のやり取り、通帳履歴、出金一覧、生前贈与資料、介護記録、遺言書、不動産評価資料、争点メモ
不動産鑑定士・不動産会社登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税評価証明書、建物図面、賃貸借契約書、修繕履歴、境界確認書、都市計画情報
Section 08

相続対策の財産棚卸しで見落としやすい財産と危険サイン

金融資産、不動産、保険、事業、権利、デジタル資産を横断して確認します。

見落としやすい財産は、金額が大きいものだけではありません。存在に気付きにくいもの、名義と実質がズレやすいもの、評価に専門性が必要なものが問題になります。次の一覧では、分類ごとに何を探すべきかをまとめているため、手元資料と照合して漏れを確認できます。

金融資産

口座・証券の漏れ

古い銀行口座、休眠口座、ネット銀行、ネット証券、外貨預金、定期積金、財形貯蓄、証券会社のMRF、未受領配当金、貸株サービス、NISA口座、外国株式、外国ETF、個人向け国債を確認します。

不動産

登記と現況のズレ

私道持分、共有持分、山林、原野、農地、未登記建物、増築未登記部分、借地権、底地、境界未確定地、固定資産税非課税の土地、遠方の土地、相続登記未了の不動産を確認します。

保険・年金

請求漏れと税務区分

死亡保険金、医療保険・入院給付金の未請求、個人年金保険、損害保険の死亡保険金、勤務先の死亡退職金、弔慰金、遺族年金を確認します。

事業・会社

換金できない財産

非上場株式、出資金、会社への貸付金、会社からの借入金、役員退職金、個人保証、事業用車両、機械、在庫、屋号名義の口座、取引先への売掛金を確認します。

権利・請求権

契約で見つかる財産

貸付金、損害賠償請求権、未収家賃、敷金返還請求権、ゴルフ会員権、リゾート会員権、著作権、印税、特許権、商標権を確認します。

デジタル

オンライン上の資産

暗号資産、NFT、電子マネー、ポイント、アフィリエイト収益、オンラインショップ売上、サブスクリプション契約、クラウド会計アカウント、パスワード管理アプリを確認します。

次の事情がある場合は、財産の存在や評価だけでなく、相続人間の対立、期限徒過、納税資金不足につながる可能性があります。一覧の各項目は、早期相談の目安として読むことが重要です。

資料を開示しない人がいる

情報の非対称性が強く、協議や調停で争点化しやすい状態です。

死亡前に多額の出金がある

医療費・介護費・生活費・贈与・私的流用の区別が必要です。

認知症だった時期に財産移動がある

判断能力と財産移動の合理性が問題になることがあります。

家族名義預金が多い

原資、管理、贈与の有無、通帳・印鑑保管状況を確認します。

不動産が共有・未登記・境界不明

売却、分筆、登記、次世代相続が難しくなる可能性があります。

会社株式や貸付金が中心

評価額が高いのに換金できない、後継者以外への代償金が不足する問題があります。

保証債務や海外財産がある

負債調査、現地手続、為替換算、証明書類の翻訳が必要になることがあります。

相続人に未成年者・認知症・行方不明者がいる

協議能力や代理手続が問題になり、手続期間が延びる可能性があります。

遺言が不公平または遺留分侵害が疑われる

評価額、支払原資、生命保険、代償金、分割払いの検討が必要です。

申告期限まで時間がない

未分割申告、概算納税、特例適用の可否を急いで整理します。

Section 09

相続対策の財産棚卸しをケース別・生前対策・遺言作成へつなげる

家庭の財産構成ごとに、棚卸しで何を確認すべきかが変わります。

同じ財産目録でも、自宅中心の家庭、賃貸アパートがある家庭、同族会社オーナー、使い込み疑いがある家庭では、見るべき論点が異なります。次の比較一覧は、ケースごとに最初に確認すべき資料と、ありがちな失敗を整理したものです。自分の状況に近い項目を読み、どの評価や説明が不足しやすいかを確認します。

Case 01

自宅と預金だけの家庭

自宅土地建物と預金1,500万円、相続人が子2人のようなケースでは、固定資産税納税通知書、名寄帳、登記事項証明書、預金残高証明、通帳履歴、生命保険の有無を確認します。小規模宅地等の特例、代償金支払能力、売却時の手取額、別居相続人の納得可能性が重要です。

Case 02

賃貸アパートと借入金

賃貸アパート2棟、借入金、預金、生命保険がある場合は、家賃収入、敷金、借入残高、金利、修繕予定、空室率、固定資産税、管理会社契約、相続税評価、収益価格、売却価格を確認します。一次相続だけでなく二次相続も見ます。

Case 03

同族会社オーナー

会社株式、会社への貸付金、自宅、事業用不動産がある場合は、非上場株式評価、役員退職金、個人保証、事業用不動産、後継者の議決権、代償金、遺留分対策を一体で考えます。

Case 04

使い込み疑いがある家庭

死亡前3年間で合計1,200万円の出金があるようなケースでは、日付、金額、引出方法、引出場所、使途、領収書、判断能力、介護状況を整理します。感情的な主張の前に、客観資料の整理が重要です。

生前に棚卸しを行う利点

相続発生後の棚卸しは、時間制限と感情対立の中で行うため負担が大きくなります。生前に本人主導で整理しておくと、本人しか知らない財産、取得経緯、名義預金、家族への援助、遺言内容の根拠、納税資金不足、不要不動産、登記未了不動産、認知症発症前の財産管理体制を確認できます。

生前の財産目録は、毎年1回の見直しに加え、次のタイミングで更新すると実務上のズレを減らせます。いつ更新すべきかを一覧にすることで、財産の増減だけでなく、相続人関係や判断能力の変化にも気付きやすくなります。

更新タイミング見直す内容
不動産を買った・売った所在地、評価額、売却手取額、登記、管理費、固定資産税
退職金を受け取った預金増加、運用方針、贈与、納税資金、老後資金
生命保険を契約・見直しした契約者、被保険者、受取人、保険料負担者、非課税枠
大きな贈与をした贈与契約、振込記録、贈与税申告、特別受益、加算対象
会社株式を移転した株価評価、議決権、後継者、代償金、遺留分
借入をした債務残高、担保、保証、団体信用生命保険
配偶者が死亡した二次相続、財産再配分、生活資金、遺言見直し
認知症や介護の兆候が出た財産管理、任意後見、家族信託、出金記録
相続人の関係が変化した遺留分、付言事項、説明方針、取得者案

遺言作成へ進むときの注意点

財産目録ができると遺言作成に進めますが、遺言は単なる配分表ではありません。遺留分を侵害しないか、侵害する場合の支払原資があるか、不動産を特定できているか、預金口座を特定しすぎて口座変更時に不都合が生じないか、包括遺贈と特定遺贈の違い、遺言執行者、予備的遺言、付言事項、祭祀承継者、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度の利用を確認します。

Section 10

相続対策の財産棚卸しと評価額把握でよくある質問

個別の結論は財産構成や証拠関係で変わるため、一般的な考え方として整理します。

Q1. 財産が少なくても棚卸しは必要ですか。

一般的には、相続税がかからない場合でも、遺産分割、預金払戻し、不動産登記、債務確認、相続放棄判断のために財産と債務の把握は必要とされています。ただし、必要な調査範囲は財産の種類、不動産の有無、債務の可能性、相続人関係によって変わります。具体的な整理方法は、資料を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q2. 財産目録は誰が作るべきですか。

一般的には、生前であれば本人が作るのが望ましく、相続発生後は相続人代表、遺言執行者、専門家が協力して作ることが多いとされています。ただし、争いがある場合は特定の相続人だけで作成した目録の信用性が問題になる可能性があります。証拠資料を添付し、必要に応じて弁護士や税理士などへ相談する必要があります。

Q3. 不動産の評価は固定資産税評価額でよいですか。

一般的には、家屋評価や倍率方式の土地評価では固定資産税評価額が重要とされています。ただし、遺産分割や売却では実勢価格、査定価格、鑑定評価額が問題になる可能性があります。目的によって使う評価額が変わるため、具体的には不動産資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q4. 相続税評価額が分かれば、遺産分割もできますか。

一般的には、相続人全員が相続税評価額を使うことに合意すれば、それを協議の参考にできる場合があります。ただし、不動産、非上場株式、美術品、収益物件などは相続税評価額と市場価値が大きく異なることがあります。公平性の判断は財産内容や相続人間の合意状況で変わるため、具体的には別の評価資料も含めて相談する必要があります。

Q5. 死亡保険金は財産目録に載せるべきですか。

一般的には、死亡保険金も財産目録に記載し、遺産分割対象財産、相続税上のみなし相続財産、受取人固有財産という区分を明記することが望ましいとされています。ただし、保険料負担者、受取人、保険金額、遺留分・特別受益上の扱いで判断が変わる可能性があります。具体的には保険証券や支払通知を確認して専門家へ相談する必要があります。

Q6. 家族名義の預金も調べる必要がありますか。

一般的には、名義が家族でも、原資、管理、贈与の有無、通帳・印鑑の保管状況によっては、被相続人の財産として問題になる可能性があります。税務調査でも確認されやすい論点とされています。ただし、個別の結論は証拠関係で変わるため、通帳履歴や贈与資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q7. 借金があるか分からない場合はどうすればよいですか。

一般的には、信用情報、金融機関、郵便物、通帳引落し、契約書、確定申告書、担保登記、会社決算書を確認するとされています。負債超過の可能性がある場合は、3か月の熟慮期間内に相続放棄、限定承認、期間伸長を検討する場面があります。ただし、具体的な選択は債務額、財産額、期限、相続人関係によって変わるため、早めに専門家へ相談する必要があります。

Q8. 遺産分割協議がまとまらない場合、申告期限は延びますか。

一般的には、相続財産が分割されていない場合でも相続税申告期限は延びないとされています。未分割の場合は、原則として法定相続分等で取得したものとして申告する扱いになります。ただし、特例適用や後日の手続は個別事情で変わるため、申告期限が近い場合は税理士等へ相談する必要があります。

Q9. 相続登記はいつまでに必要ですか。

一般的には、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があるとされています。2024年4月1日より前に開始した相続も対象となり、一定の猶予期限があります。ただし、具体的な期限や正当な理由の有無は事情で変わる可能性があるため、不動産資料を整理して司法書士等へ相談する必要があります。

Q10. 専門家費用を抑えるにはどうすればよいですか。

一般的には、最初に資料を整理し、財産目録案を作ることで相談時間を短縮しやすいとされています。財産番号、資料、評価目的、未確定事項を整理して渡すと、専門家が論点を把握しやすくなります。ただし、財産構成や争点によって必要な調査は変わるため、無理に自己判断で省略せず、不明点は相談時に確認する必要があります。

Section 11

相続対策は財産の見える化から始める

財産目録、評価額一覧、債務一覧、未確定論点が整えば、次の対策へ進めます。

相続対策で最初にやるべき財産の棚卸しと評価額の把握は、単なる事務作業ではありません。相続税、遺産分割、遺留分、登記、納税資金、事業承継、家族関係を同時に安定させるための基礎です。

最後に整える四つの資料を一覧にしています。各資料がどの後続手続につながるかを読み取ることで、次に何をすべきかを決めやすくなります。

Final 01

証拠資料付き財産目録

財産番号、名義、実質所有、所在、数量、評価額、証拠資料をひと続きで管理します。

Final 02

評価目的別の評価額一覧

相続税、遺産分割、遺留分、売却、手取額を分け、評価時点と評価方法を明記します。

Final 03

債務・葬式費用・保証債務一覧

確実な債務、税務上控除できるもの、民事上の承継リスク、保証可能性を分けます。

Final 04

未確定論点と専門家相談リスト

名義預金、多額出金、境界、非上場株式、海外財産、遺留分などを相談先と一緒に整理します。

この四点が整うと、遺言、生前贈与、生命保険、家族信託、不動産売却、相続登記、相続税申告、事業承継、遺産分割協議を合理的に進められます。出発点は、誰に何を渡すかではなく、そもそも何があり、それはいくらで、どの根拠に基づくのかを明らかにすることです。

Reference

参考情報源

相続税・財産評価

  • 国税庁 No.4202 相続税の申告のために必要な準備
  • 国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
  • 国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
  • 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
  • 国税庁 No.4632 上場株式の評価
  • 国税庁 No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価
  • 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
  • 国税庁 No.4108 相続税がかからない財産
  • 国税庁 No.4602 土地家屋の評価
  • 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例
  • 国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価
  • 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

裁判所・法務省・金融庁

  • 裁判所 相続の承認又は放棄の期間の伸長
  • 裁判所 遺産分割調停
  • 法務省 相続登記の申請義務化について
  • 法務省 所有不動産記録証明制度について
  • 法務局 法定相続情報証明制度について
  • 金融庁 長い間、お取引のない預金等はありませんか?