相続登記義務化のもとで、本人申請が現実的なケース、相続人多数で難しくなるポイント、専門家を組み合わせる判断基準を整理します。
相続登記義務化のもとで、本人申請が現実的なケース、相続人多数で難しくなるポイント、専門家を組み合わせる判断基準を整理します。
法的には本人申請が可能ですが、相続人確定、合意形成、書類収集、例外処理の難しさを先に見ます。
相続人が多い場合でも、相続人本人が自分で相続登記を申請することは一般的には可能とされています。相続登記は必ず司法書士に依頼しなければならない手続ではありません。
ただし、相続人多数の案件で難しいのは、申請書を書く作業そのものよりも、相続人を漏れなく確定し、全員の意思を整理し、戸籍や住所証明、不動産資料をそろえ、紛争・税務・未成年者・認知症・海外居住・所在不明・数次相続などの例外を誤らないことです。
次の重要ポイントは、本人申請を検討するときに最初に押さえるべき結論を整理したものです。相続登記の可否だけでなく、時間・費用・紛争リスクのどこを見ればよいかを読み取ることが重要です。
相続人が多い場合は、本人申請にこだわるほど費用や時間、後日の紛争リスクが増えることがあります。自分で進める部分と、司法書士・弁護士・税理士等に確認する部分を分けて考えるのが現実的です。
次の一覧は、相続人多数案件で特に問題になりやすい4つの確認点を示しています。どれか一つでも不確実な場合は、申請前の確認が重要になり、複数当てはまるほど専門家の関与を検討する必要が高まります。
出生から死亡までの戸籍、代襲相続、数次相続、相続放棄、養子・認知・前婚の子などを漏れなく確認します。
遺産分割協議に基づく登記では、原則として相続人全員の合意、実印押印、印鑑証明書が問題になります。
登記簿上の住所、固定資産評価額、名寄帳、私道持分、山林、農地、未登記建物などを確認します。
紛争、相続税、未成年者、成年後見、海外居住者、所在不明者が関係すると、本人だけでの判断は難しくなります。
名義変更という表面だけでなく、所有者情報を公示し、将来の管理・売却・再相続に備える手続です。
相続登記とは、亡くなった人が所有していた土地や建物などの不動産について、登記簿上の所有者名義を相続人等へ移す登記です。法律上は、相続を原因とする所有権移転登記と説明されることが多い手続です。
相続で実体法上の権利が移っていても、登記簿上の名義が亡くなった人のままでは、第三者から見た所有者情報は更新されません。その結果、売却、担保設定、建替え、公共事業、災害復旧、近隣対応、将来の再相続で支障が生じます。
相続登記未了の土地が積み重なると、所有者不明土地が増えます。公的資料では、所有者不明土地の発生原因の約3分の2を相続登記の未了が占めると説明されています。相続人が多い案件ほど、放置により次世代へ関係者が広がりやすい点が重要です。
人数だけでなく、世代、関係性、所在、意思能力、利害対立、不動産や税務の事情を総合して見ます。
相続人が多いという状態は、単に5人以上、10人以上という人数だけでは判断できません。実務上は、戸籍収集、合意形成、書類回収、後発紛争の可能性が同時に増える点を見ます。
次の比較表は、相続人多数案件で難易度が上がる典型要素を整理したものです。左列は確認すべき観点、右列は本人申請の負担や専門判断の必要性が高まりやすい事情を示しています。
| 観点 | 難易度が上がる典型例 |
|---|---|
| 相続人の人数 | 兄弟姉妹相続、甥姪への代襲相続、相続人10人以上 |
| 世代数 | 親の相続を放置し、子も死亡している数次相続 |
| 関係性 | 異母兄弟・異父兄弟、再婚、養子縁組、認知、離縁 |
| 所在 | 住所不明、連絡拒否、海外居住、住民票除票の保存期間問題 |
| 意思能力 | 認知症、成年後見、保佐、補助、意思確認困難 |
| 利害対立 | 遺産分割協議不成立、使い込み疑い、寄与分、特別受益、遺留分 |
| 財産の性質 | 山林、農地、共有私道、未登記建物、境界不明、借地権、会社所有財産との混在 |
| 税務 | 相続税申告の可能性、不動産評価、非上場株式、過去贈与 |
相続人が増えやすい典型は、子が多数いる相続、兄弟姉妹相続、数次相続です。兄弟姉妹がすでに亡くなっていると甥姪が相続人となり、面識や連絡先がないまま協議を進める場面もあります。
祖父名義の土地を放置したまま子世代、孫世代、甥姪世代へ承継が連鎖すると、関係者が数十人に膨らむことがあります。時間の経過は、本人申請の難易度を大きく上げる要因です。
相続人を確定するには、民法上の相続人の範囲を理解する必要があります。配偶者は常に相続人となり、子、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続順位が定まります。
次の表は、相続人の基本順位を整理したものです。誰が相続人になるかを誤ると、遺産分割協議の有効性や相続登記の添付書類に影響するため、まず順位と代襲の有無を読み取ることが重要です。
| 順位 | 相続人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | 法律上の婚姻関係にある配偶者です。内縁関係の人は法定相続人には含まれません。 |
| 第1順位 | 子、子が死亡している場合は孫など | 子が複数いる場合は、子の間で原則として均等に分けます。 |
| 第2順位 | 父母、祖父母などの直系尊属 | 第1順位の相続人がいない場合に問題になります。 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹、死亡している場合はその子 | 兄弟姉妹相続では甥姪が関係し、人数と戸籍が複雑になりやすいです。 |
法定相続分は、相続人間で遺産分割の合意ができなかった場合の持分を示す基準です。必ずその割合で遺産を分けなければならないという意味ではなく、相続人全員の合意があれば異なる配分もあり得ます。
相続登記では、遺言に基づく登記、遺産分割協議に基づく登記、法定相続分による共同相続登記、相続人申告登記、調停・審判・判決等に基づく登記など、複数のルートがあります。相続人が多いほど、どのルートを選ぶかで必要書類や将来の処分可能性が変わります。
本人申請は可能ですが、申請書作成よりも戸籍・住所・合意・補正対応の負担が問題になります。
相続登記は、相続人本人が申請できます。司法書士は登記申請代理の専門職ですが、相続人本人が申請人として必要書類をそろえ、管轄法務局へ申請すること自体は可能です。
本人申請で必要になる主な作業は、被相続人の出生から死亡までの戸籍収集、相続人全員の現在戸籍確認、登記簿上住所と死亡時住所のつながりの証明、固定資産評価額の確認、登記申請書作成、登録免許税計算、協議書・印鑑証明書の回収、補正対応、完了書類の保管です。
相続人が2、3人で全員が協力的な場合、本人申請は現実的です。一方、相続人が10人、20人、30人と増える場合、負担は人数に比例するだけではありません。1人の押印拒否、1通の住所証明不足、1か所の戸籍漏れが全体を止めることがあります。
3年以内の基本義務、義務化前相続の経過措置、遺産分割成立後の追加的義務を分けて確認します。
2024年4月1日から、相続により不動産の所有権を取得した相続人は、原則として自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
次の時系列は、相続登記義務化で特に見落としやすい期限を並べたものです。上から順に、制度開始、義務化前相続の猶予、遺産分割成立後の追加対応を確認し、期限対応と最終的な名義整理を分けて考えることが重要です。
相続で不動産を取得したことを知った日から、原則3年以内の申請が必要とされています。
2024年4月1日より前に発生した相続でも、未登記であれば義務化の対象となります。
施行前相続で未登記の場合、この日まで、または不動産取得を知った日が2024年4月以降ならその日から3年以内の対応が問題になります。
いったん法定相続分で登記していても、遺産分割成立後はその内容を踏まえた登記が必要になります。
相続人が極めて多数で、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合は、正当な理由の一例として挙げられています。ただし、人数が多ければ何もしなくてよいという意味ではありません。戸籍収集、相続人への連絡、法務局や専門家への相談、相続人申告登記の検討など、合理的な対応を進めていることが重要です。
遺言、遺産分割協議、法定相続分登記、相続人申告登記、調停・審判の違いを整理します。
相続人が多い場合、どの登記ルートを採用するかで必要書類、押印、印鑑証明書、将来の売却・管理のしやすさが大きく変わります。
次の比較一覧は、代表的な登記ルートの意味と注意点を並べたものです。各行では、合意形成が必要か、最終的な名義整理まで進むのか、暫定対応にとどまるのかを読み取ることが重要です。
有効な遺言で取得者が明確な場合、遺産分割協議を経ずに登記できることがあります。遺言の有効性、文言、遺留分、遺言執行者、不動産表示の一致を確認します。
取得者明確有効性確認相続人全員で遺産の分け方を決め、特定の相続人を単独名義にできるルートです。相続人全員の合意、実印押印、印鑑証明書が通常問題になります。
単独名義化全員合意協議がまとまらない場合の期限対応になり得ます。ただし共有状態が残り、売却や管理で全員の協力が再び問題になります。
期限対応共有リスク自分が相続人であることなどを申し出る制度です。基本的義務の履行に役立ちますが、最終的な所有者を公示する通常の所有権移転登記ではありません。
簡易対応最終解決ではない相続人間で話合いがつかない場合、家庭裁判所の調停・審判を経て、その結果に基づく登記を検討します。争点がある相続では弁護士と司法書士の連携が重要になります。
紛争対応専門判断相続人申告登記は緊急避難策になり得ますが、遺産分割成立後の追加的義務までは履行できません。期限対応と最終的な名義整理は、分けて設計する必要があります。
不動産の洗い出し、戸籍収集、法定相続情報、協議書、登録免許税、申請・補正まで順番に進めます。
相続人が多い場合は、作業の順番を崩すと、後から相続人漏れや書類不足が判明してやり直しになります。まず不動産、次に相続人、最後に登記ルートと申請書という順序で整理します。
次の判断の流れは、本人申請で進める場合の標準的な順序です。上から順に進み、途中で相続人漏れ、協議不成立、税務や紛争の問題が見つかった場合は、その時点で専門家確認を挟むことが重要です。
固定資産税通知書、名寄帳、登記事項証明書、権利証、私道持分、山林、農地、未登記建物を確認します。
死亡時住所と登記簿上住所がつながるかを確認します。
除籍、改製原戸籍、代襲相続、数次相続を追います。
遺言、遺産分割協議、法定相続分登記、相続人申告登記、調停等を選びます。
不動産表示、代償金、実印押印、印鑑証明書、固定資産評価額を確認します。
完了後は登記識別情報、登記事項証明書、原本還付書類を管理します。
不動産の洗い出しでは、自宅土地・建物だけでなく、私道持分、山林、農地、共有地、倉庫、古家、未登記建物、先代名義の土地も確認します。2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度により、特定の被相続人が登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧的に把握する制度も説明されています。
戸籍収集では、死亡時の戸籍だけでは足りません。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍等と、相続人全員の現在戸籍を確認します。兄弟姉妹相続では、親の出生・婚姻関係まで追う必要が出ることもあります。
法定相続情報証明制度を利用すると、法務局で確認を受けた一覧図を相続登記、預金払戻し、相続税申告などで使いやすくなります。ただし、誰がどの財産を取得するかを決める制度ではありません。
遺産分割協議書では、被相続人の氏名、生年月日、死亡日、最後の本籍・住所、不動産の登記簿どおりの表示、共有持分、取得者、代償金の金額・期限・方法、相続人全員の署名または記名と実印押印、印鑑証明書を確認します。
登録免許税は、原則として固定資産税評価額を基準に計算します。相続登記では0.4%、つまり1000分の4が基本的な税率として案内されています。一定の土地については2027年3月31日までの免税措置が問題になることがありますが、建物は対象外となる場合があるため、土地と建物を分けて確認します。
相続人漏れ、住所のつながり、協議書不備、共有登記、相続税連動を重点的に確認します。
相続人多数の本人申請では、登記申請書の形式だけでなく、相続関係そのものの誤りが後日の紛争につながります。完了した登記でも、実体関係に問題があれば争いが残ることがあります。
次の注意要素の一覧は、本人申請で特に発生しやすい失敗を整理したものです。各項目では、手続が止まる原因と、後日に争いが残る原因を分けて読み取ることが重要です。
前婚の子、認知した子、養子、代襲相続人を見落とすと、遺産分割協議が無効となる可能性があります。
登記簿上住所と死亡時住所が一致しない場合、住民票除票、戸籍の附票、不在住証明、権利証などで同一人物性を説明します。
不動産表示、持分、署名押印、印鑑証明書に不備があると、相続人が多いほど再取得に時間がかかります。
法定相続分で共有登記すると、将来の売却、建替え、抵当権設定、賃貸条件変更などで全員の協力が問題になります。
相続税申告期限は原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。登記の3年期限より短い点に注意します。
相続税の基礎控除額は、3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数です。相続人が多いと基礎控除は増えますが、不動産評価、預貯金、生命保険、過去贈与、債務、葬式費用、配偶者控除、小規模宅地等の特例などを総合的に確認する必要があります。
連絡、協力、戸籍、税務、紛争、不動産の状態が単純であれば、本人申請を検討しやすくなります。
相続人が複数いても、全員と連絡が取れ、協力的で、戸籍や不動産が比較的単純であれば、本人申請を検討できる場合があります。
司法書士、弁護士、税理士、行政書士、不動産関連専門職の役割を、事情に応じて分けて見ます。
相続人が多いからといって、すべてを専門家に任せる必要があるとは限りません。一方で、相続関係が複雑、紛争性がある、相続税が見込まれる、不動産評価や境界が問題になる場合は、分野ごとの専門家確認が重要になります。
次の一覧は、相談先と関与を検討したい典型事情を整理したものです。左列で専門職の担当領域を見て、右列で自分の案件に近いリスクがあるかを確認します。
| 相談先 | 関与を検討したい典型事情 |
|---|---|
| 司法書士 | 相続人10人以上、数次相続、兄弟姉妹・甥姪相続、住所のつながり不明、複数管轄、協議書の登記適格性、法定相続情報一覧図、補正対応、登記後売却予定 |
| 弁護士 | 協議拒否、遺産分割不成立、使い込み疑い、遺言の有効性争い、遺留分、寄与分・特別受益、感情的対立、調停・審判、訴訟 |
| 税理士 | 相続税申告の可能性、都市部の土地、預貯金・有価証券・生命保険が多い、生前贈与、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、非上場株式、農地 |
| 行政書士 | 紛争性がなく、税務代理や登記申請代理を含まない範囲で、相続関係書類や遺産分割協議書などの整理をしたい場合 |
| 不動産鑑定士・土地家屋調査士・宅地建物取引士等 | 不動産価格、境界、分筆、地積更正、未登記建物、売却、換価分割、代償金が問題になる場合 |
相続人が多い案件では、自分で不動産資料や連絡先を整理し、戸籍収集だけを依頼する、協議書だけを確認してもらう、登記申請だけを司法書士に依頼する、相続税申告だけを税理士に依頼するなど、部分的な分担も考えられます。
協議不成立、審判、特別代理人、成年後見など、登記以前に裁判所手続が必要になることがあります。
相続人間で話合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用することがあります。調停では当事者双方から事情を聴き、資料提出や鑑定を踏まえながら合意を目指します。
次の時系列は、話合いで解決できない場合に裁判所手続が進む順番を示しています。上から順に、話合い、調停、審判、登記資料の確認へ移ることを読み取り、登記だけを先に進められない場面を見極めます。
一部相続人の拒否、金額不満、使い込み疑い、評価争いなどがあると協議が成立しません。
事情聴取、資料提出、評価資料の整理を経て、解決案の提示や合意形成が進められます。
遺産の種類・性質その他一切の事情を考慮して分割方法が判断されます。
審判書、確定証明書などが必要となることがあり、司法書士との連携が検討されます。
共同相続人に未成年者がいる場合、親権者と未成年者の利益が対立し、特別代理人の選任が必要になることがあります。相続人が認知症等で判断能力を欠く場合、成年後見制度の利用が必要になることもあります。本人の意思確認が曖昧なまま協議書に署名押印させることは、後日の無効・紛争リスクを高めます。
人数、関係性、協力度、戸籍、不動産、税務、書類、紛争、期限を比較して判断します。
本人申請に向くかどうかは、相続人の人数だけでは決まりません。関係性、協力度、戸籍の難しさ、不動産の数や性質、税務、期限、紛争の有無を総合して判断します。
次の比較表は、本人申請を検討しやすい事情と、専門家関与が望ましい事情を並べたものです。中央の判断項目ごとに、自分の案件が左右どちらに近いかを読み取ります。
| 判断項目 | 本人申請向き | 専門家関与が望ましい |
|---|---|---|
| 相続人の人数 | 2〜5人程度 | 10人以上、または数十人 |
| 関係性 | 配偶者・子中心 | 兄弟姉妹、甥姪、再婚、養子、前婚の子 |
| 協力度 | 全員協力的 | 一部拒否、連絡不能、感情対立 |
| 戸籍 | 本籍移動が少ない | 古い戸籍、多数自治体、数次相続 |
| 不動産 | 自宅1件程度 | 複数管轄、山林、農地、私道、未登記建物 |
| 税務 | 基礎控除内が明らか | 相続税申告可能性あり |
| 書類 | 実印・印鑑証明取得容易 | 海外居住、認知症、未成年、所在不明 |
| 紛争 | なし | 遺留分、使い込み、寄与分、特別受益 |
| 期限 | 十分余裕あり | 期限切迫、義務化前相続の猶予期限が近い |
途中まで自分で進め、重要部分だけ専門家に確認してもらう方法もあります。不動産資料や連絡先は自分で整理し、戸籍収集、協議書確認、登記申請、税務申告、不動産評価などのリスクが高い部分を専門家に分担してもらう形です。
協力的な子6人、甥姪18人、祖父名義の数次相続、一部拒否の4場面で考えます。
相続人多数といっても、全員協力的なケースと、甥姪多数・数次相続・協議拒否があるケースでは難易度が大きく異なります。
次のケース別一覧は、人数だけではなく、合意形成、戸籍、売却予定、裁判所手続の有無によって判断が変わることを示しています。各例では、本人申請の可否よりも、どこにリスクが集中しているかを読み取ります。
配偶者はなく、子6人全員の住所が分かり、自宅土地建物を長男が取得する合意がある場合は、本人申請を検討しやすいです。代償金がある場合は金額、支払期限、支払方法を明記し、相続税の可能性も確認します。
戸籍は親、兄弟姉妹、死亡した兄弟姉妹、その子まで追う必要があります。売却予定があるなら、共有登記にすると18人全員の協力が再び必要になるため、専門家関与を検討します。
祖父の相続登記未了のまま子も一部死亡している場合は数次相続です。各段階の相続人と持分移転、古い戸籍・住所証明、登記原因の組み立てが複雑になります。
7人が合意していても、遺産分割協議は原則として相続人全員の合意が必要です。期限対応として相続人申告登記や法定相続分登記を検討しつつ、根本解決は交渉や調停が問題になります。
着手前、相続人調査、協議・登記の3段階で確認漏れを防ぎます。
中核専門職、不動産関連、家庭裁判所、会社・特殊財産、周辺実務の担当を整理します。
相続人が多い相続では、登記だけでなく、税務、紛争、不動産評価、境界、売却、会社や知的財産、死亡後の周辺手続まで広がることがあります。
次の役割一覧は、どの専門家や機関がどの場面を担うかを整理したものです。左列で関与主体を確認し、右列で登記や遺産分割との関係を読み取ります。
| 関与主体 | 主な役割 |
|---|---|
| 弁護士 | 相続人間の争い、遺留分、使い込み疑い、交渉、調停、審判、訴訟を扱います。 |
| 司法書士 | 相続登記、不動産の名義変更、戸籍収集、登記用書類、裁判所提出書類作成などを担います。 |
| 税理士 | 相続税申告、税務相談、税務代理、税務調査対応を担います。10か月期限が問題になります。 |
| 行政書士・公証人・遺言執行者 | 争いのない書類整理、公正証書遺言、生前対策、遺言内容の実現などで関わります。 |
| 不動産鑑定士・土地家屋調査士・宅地建物取引士等 | 不動産価格、境界、分筆、表示登記、売却、重要事項説明、売買契約実務で関わります。 |
| 家庭裁判所の関係者 | 裁判官、家事調停官、家事調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官、鑑定人、専門委員、特別代理人等が手続に応じて関わります。 |
| 会社や特殊財産の専門職 | 公認会計士、中小企業診断士、弁理士、ファイナンシャル・プランナー、社会保険労務士などが、非上場株式、事業承継、知的財産、保険、年金で関わることがあります。 |
| 公的手続や金融機関等 | 遺言書保管官、市区町村の戸籍担当窓口、医師・検案医、銀行、信託銀行、生命保険会社などが死亡後の手続に関わります。 |
よくある疑問を一般的な制度説明として整理します。個別事情により結論は変わります。
一般的には、相続人本人が登記申請することは可能とされています。ただし、相続人が多い場合は、相続人確定、戸籍収集、遺産分割協議、印鑑証明書回収、相続税確認、紛争対応が難しくなる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで司法書士、弁護士、税理士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、遺産分割協議に基づいて特定の相続人名義にする場合、相続人全員の合意が必要とされています。一方、法定相続分による共同相続登記や相続人申告登記など、全員の協議成立を前提としない方法もあります。ただし、共有状態が残る、最終的な取得者が決まらないなどの問題があり、具体的な選択は事情により変わります。
一般的には、住所調査、戸籍附票、親族経由の連絡などを検討することがあります。それでも所在不明の場合、不在者財産管理人、失踪宣告、遺産分割調停などが問題となる可能性があります。具体的な対応は、戸籍や連絡状況を整理したうえで弁護士または司法書士等へ相談する必要があります。
一般的には、相続人が極めて多数で、戸籍収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合は、正当な理由の一例として挙げられています。ただし、単に人数が多いだけで常に対象外になるわけではありません。期限内にできる対応、相続人申告登記、専門家相談などを検討する必要があります。
一般的には、相続人申告登記、法定相続分による相続登記、遺産分割調停などが検討対象になります。相続人申告登記は基本的義務を簡易に履行する制度ですが、遺産分割後の追加的義務までは履行できないとされています。期限対応と最終解決を分けて考える必要があります。
一般的には、法定相続情報一覧図は相続関係を証明するための資料であり、誰が不動産を取得するかを決めるものではありません。相続登記には、遺言、遺産分割協議書、法定相続分に基づく登記原因など、別途の登記原因・添付書類が必要になります。
一般的には、相続税申告の要否と相続登記義務は別の問題です。相続税が基礎控除内で申告不要でも、不動産を相続した場合には相続登記義務の対象となる可能性があります。基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数ですが、これは税務上の判断基準であり、登記義務の有無を直接決める基準ではありません。
一般的には、費用だけで判断するのではなく、相続関係の複雑さ、協議の状況、税務、売却予定、補正対応の負担を含めて検討する必要があります。本人申請で節約できるのは主に専門家報酬であり、登録免許税、戸籍取得費、郵送費、評価証明書取得費などは基本的に必要です。個別事情によって結論が変わるため、必要に応じて専門家へ相談することが考えられます。
本人申請に向く案件と向かない案件を見極め、義務化時代の放置リスクを避けます。
相続人が多い場合でも、自分で相続登記を申請することは法的には可能です。相続人本人が登記申請人として、必要書類を整え、管轄法務局へ申請することはできます。
しかし、相続人が多い場合の難所は登記申請書そのものではなく、相続人確定、合意形成、必要書類収集、住所のつながり、意思能力、紛争、税務、不動産評価などです。相続人が多いほど、戸籍、印鑑証明書、住所、例外処理が複雑化します。
2024年4月1日以降、相続登記は義務です。期限内に通常の相続登記ができない場合でも、相続人申告登記、法定相続分登記、調停申立て、専門家相談など、放置しないための選択肢を検討する必要があります。
相続人全員が協力的で、戸籍が単純で、税務・紛争・未成年者・海外居住者等の問題がなければ、自分で進めることは現実的です。反対に、兄弟姉妹相続、甥姪多数、数次相続、協議不成立、所在不明、認知症、相続税、不動産評価争いがある場合は、弁護士、司法書士、税理士等を組み合わせることが重要になります。