相続開始日、対象期間、受贈者、暦年課税、非課税財産、贈与時価額、100万円控除、贈与税額控除を順番に確認します。
相続開始日、対象期間、受贈者、暦年課税、非課税財産、贈与時価額、100万円控除、贈与税額控除を順番に確認します。
相続税の課税価格へ、誰のどの贈与を、どの価額で加えるかを順番に整理します。
生前贈与加算の対象になる贈与を加える方法とは、相続税の申告・計算において、被相続人から相続開始前の一定期間内に受けた暦年課税の贈与を、受贈者ごとに抽出し、贈与時の価額で評価し、その人の相続税の課税価格に加算する一連の実務です。
令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後の暦年課税贈与については、加算対象期間が段階的に相続開始前7年以内へ延長されます。ただし、相続開始前3年以内ではない延長部分の贈与については、一定の場合に総額100万円まで課税価格へ加算しない取扱いがあります。
次の強調欄は、このページで扱う計算の骨格を示します。相続開始前3年以内の贈与はそのまま合計し、それより前の延長部分は合計額から100万円を差し引く、という読み方が重要です。
相続開始前3年以内の加算対象贈与の贈与時価額合計 + max(0, 相続開始前3年以内ではない加算対象期間内の贈与時価額合計 − 100万円) で把握します。
次の一覧は、実務で特に誤りやすい5つの原則をまとめたものです。贈与税がかかったかどうか、相続時の価額か贈与時の価額か、100万円控除を年ごとに使っていないかを読み取ることが重要です。
贈与税がかかっていない贈与でも、加算対象期間内の暦年課税贈与なら相続税の課税価格に加算します。
相続開始時の価額ではなく、贈与により財産を取得した時点の価額で加算します。
令和8年末まで、令和9年から令和12年まで、令和13年以後で確認する期間が異なります。
延長部分の贈与時価額合計から控除するもので、年ごとに100万円ずつ控除する制度ではありません。
加算対象贈与に贈与税が課されている場合、相続税額から対応する贈与税額を控除します。
被相続人、受贈者、暦年課税、相続時精算課税、贈与時価額を分けて理解します。
生前贈与加算では、誰から誰へ、どの課税方式で、いつ、いくらの価額で財産が移ったかを分解して考えます。父の相続税申告で加算するのは、原則として父から受けた暦年課税贈与であり、母からの贈与ではありません。
次の用語一覧は、加算処理で最初に確認する言葉を整理しています。似た言葉を混同すると、対象者、対象財産、評価時点を誤るため、それぞれの意味を読み取ってください。
| 用語 | 意味と注意点 |
|---|---|
| 被相続人 | 亡くなった人です。誰から受けた贈与かが最重要です。 |
| 受贈者 | 贈与を受けた人です。加算は受贈者ごとに行います。 |
| 暦年課税 | 1年間の贈与財産価額合計から110万円を差し引く方式です。110万円以下でも相続税では加算対象になる場合があります。 |
| 相続時精算課税 | 一定の父母・祖父母等から子・孫等への贈与を相続時に精算する制度です。暦年課税分の加算とは別枠で処理します。 |
| 贈与時の価額 | 相続開始時ではなく、贈与により財産を取得した時点の評価額です。 |
次の比較表は、暦年課税の生前贈与加算と相続時精算課税の加算を分けて見るためのものです。同じ被相続人からの贈与でも、課税方式によって申告書上の整理が変わることを読み取ってください。
| 区分 | 扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 暦年課税の贈与 | 一定期間内の贈与時価額を第14表系統で整理します | 贈与税がかかっていない110万円以下の贈与も対象になる場合があります |
| 相続時精算課税の贈与 | 相続時精算課税適用財産として第11の2表系統で整理するイメージです | 令和6年以後は年110万円の基礎控除後の残額を相続税計算上加算します |
| 選択前の暦年贈与 | 相続時精算課税を選ぶ前の暦年課税贈与は別途確認します | 両制度を完全に切り離して見ないことが重要です |
100万円控除と贈与税額控除は、どちらも「控除」という言葉を含みますが、役割が違います。次の一覧は、何から何を差し引くのかを整理したもので、相続税の課税価格へ加算する額と、贈与税額控除の基礎価額が一致しない場合があることを読み取れます。
相続開始前3年以内ではない延長部分の贈与時価額合計から、総額100万円を上限に控除します。
加算対象贈与に贈与税が課されている場合、相続税額から対応する贈与税額を控除します。
父母双方から贈与を受けた年などは、被相続人からの加算対象贈与に対応する部分だけを控除します。
最初に相続開始日を固定し、受贈者ごとに贈与を抽出して申告書へ反映します。
生前贈与加算は、過去の贈与をまとめて足すだけの作業ではありません。次の判断の流れは、相続開始日、対象期間、取得者、贈与一覧、課税方式、評価、100万円控除、贈与税額控除の順番を示しており、どこで誤りが起きやすいかを読み取るために重要です。
死亡日を固定し、申告期限10か月の管理も始めます。
相続開始日に応じて3年、経過期間、7年を判定します。
相続、遺贈、相続時精算課税に係る贈与で財産を取得した人を見ます。
預金移動、契約書、申告書、登記、証券、保険、教育資金等を集めます。
暦年課税、相続時精算課税、非課税財産を分けます。
贈与時価額、3年以内部分、延長部分、100万円控除を整理します。
第14表、第4表の2、第1表への反映を確認します。
次の時系列は、実務で扱う11段階をより細かく並べたものです。上から下へ順番に進むことで、いきなり税額を計算せず、対象者と対象贈与を先に固める必要があることを読み取れます。
死亡診断書、戸籍、住民票除票、申告書の基本情報で死亡日を固定します。
令和8年末まで、令和9年から令和12年まで、令和13年以後のどれかを判定します。
相続、遺贈、相続時精算課税に係る贈与により財産を取得した人を見ます。
取得者ごとに、被相続人から受けた生前贈与を資料から抽出します。
相続時精算課税や非課税財産は別枠で整理します。
加算対象期間内の暦年課税贈与だけを取り出します。
現金、株式、不動産、非上場株式ごとに贈与時の価額を確認します。
100万円控除の対象になる部分を分けます。
延長部分合計から総額100万円を上限に控除します。
第14表等に明細を整理し、各人の課税価格へ反映します。
贈与税が課されている場合は、対応する控除額を第4表の2等で整理します。
実務を抽象化すると、各取得者ごとに被相続人からの贈与一覧を作り、暦年課税分だけを取り出し、対象期間内かどうかを判定します。100万円控除の有無を確認して加算額を出し、贈与税が課されていれば控除計算へ進む、という順番です。
令和6年以後の贈与は、相続開始時期に応じて段階的に確認期間が広がります。
相続開始日は被相続人の死亡日です。生前贈与加算では、この日を基準に加算対象期間が変わります。相続税の申告期限は、通常、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
次の表は、相続開始日ごとの加算対象期間を示します。相続開始時期の行を見て、確認すべき贈与の始期が相続開始前3年なのか、令和6年1月1日なのか、相続開始前7年なのかを読み取ってください。
| 被相続人の相続開始日 | 加算対象期間 | 読み方 |
|---|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 | 令和8年の相続でも7年分を見るわけではありません。 |
| 令和9年1月1日から令和12年12月31日まで | 令和6年1月1日から相続開始日まで | 経過期間であり、令和5年以前の贈与は7年化の対象に含めない整理です。 |
| 令和13年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 | 死亡日から7年前の日を起点に、日単位で判定します。 |
次の時系列は、相続開始時期ごとの確認範囲を感覚的に整理するものです。後の期間ほど確認する過去の範囲が広がり、令和13年以後は死亡日から7年前まで戻ることを読み取れます。
例として令和8年10月1日死亡なら、令和5年10月1日から死亡日までを確認します。
例として令和10年4月1日死亡なら、令和6年1月1日から死亡日までを確認します。
例として令和13年8月10日死亡なら、令和6年8月10日から死亡日までを確認します。
死亡日に行われた預金移動は、贈与なのか、引出しなのか、葬儀費用準備なのか、代理行為なのかが別途問題になります。期間判定だけでなく、資金移動の法的性質も確認が必要です。
相続等により財産を取得した人ごとに、被相続人からの暦年課税贈与を抽出します。
生前贈与加算の対象者は、相続等により財産を取得した人で、その被相続人から加算対象期間内に暦年課税に係る贈与を受けた人です。生前贈与を受けた人なら誰でも必ず加算するわけではありません。
次の一覧は、対象者になるかどうかを判断する場面を整理しています。受贈者が相続、遺贈、みなし相続財産、相続時精算課税に係る贈与で財産を取得しているかを読み取ることが重要です。
相続人だけでなく、遺言で財産を受けた受遺者も検討対象になります。
生命保険金などを受け取る人は、条件次第で加算対象者性を確認します。
被相続人から贈与を受けていても、相続や遺贈で財産を取得しない人は、原則として暦年課税分の加算対象者ではありません。
相続財産を取得するかどうかで、贈与税ではなく相続税側で処理するかが変わることがあります。
次の資料一覧は、贈与一覧表を作るために確認する資料をまとめたものです。贈与税申告書がない110万円以下の贈与もあるため、申告書だけでなく預金移動や登記、証券、保険、特例資料まで横断して読む必要があります。
| 資料 | 確認する事項 |
|---|---|
| 被相続人の預貯金通帳・取引明細 | 相続人・親族への振込、現金引出し、名義預金の形成、定期的送金 |
| 受贈者側の通帳 | 入金日、入金額、被相続人からの入金かどうか |
| 贈与契約書 | 贈与者、受贈者、贈与日、対象財産、受諾意思 |
| 贈与税申告書控え | 暦年課税か相続時精算課税か、申告価額、納税額 |
| 納付書・e-Tax受信通知 | 贈与税額控除の基礎資料 |
| 登記事項証明書 | 不動産贈与の登記原因、登記日、持分移転の有無 |
| 固定資産税評価証明書・路線価図 | 不動産評価の基礎資料 |
| 証券会社の取引報告書 | 株式・投資信託の移管日、数量、評価額 |
| 保険契約資料 | 保険料負担者、契約者変更、死亡保険金の課税関係 |
| 教育資金・結婚子育て資金の契約資料 | 非課税適用額、管理残額、相続時の加算有無 |
贈与は、贈与者が財産を無償で与える意思を表示し、受贈者が受諾することで効力を生じる契約です。通帳上の資金移動だけでなく、贈与意思、受諾、財産管理、印鑑・通帳の管理者、贈与後の支配関係を確認する必要があります。
暦年課税、非課税財産、相続時精算課税を分け、財産ごとに贈与時の価額を評価します。
加算するのは、被相続人から生前に暦年課税に係る贈与によって取得した財産のうち、加算対象期間内に贈与されたものです。贈与税がかかったかどうかは問いません。
次の表は、加算する贈与の典型例を整理したものです。110万円以下かどうかではなく、被相続人からの暦年課税贈与で、対象期間内かどうかを読み取ることが重要です。
| 例 | 加算の考え方 |
|---|---|
| 父から長男へ現金100万円を贈与 | 110万円以下でも加算対象期間内なら加算 |
| 父から長女へ上場株式を贈与 | 贈与時の評価額で加算 |
| 父から配偶者へ現金を贈与 | 相続等により財産を取得し、加算対象期間内なら原則加算 |
| 父から子へ不動産持分を贈与 | 贈与時の相続税評価額を確認して加算 |
| 父から子へ死亡年に現金を贈与し、子が相続財産も取得 | 贈与税申告ではなく相続税側で加算 |
次の表は、加算しないものとして整理される代表例です。非課税適用を受けた金額や配偶者控除額に相当する金額などは、暦年課税分の生前贈与加算とは別に扱われるため、留意点の列を読んで例外を確認してください。
| 加算しないもの | 留意点 |
|---|---|
| 贈与税の配偶者控除の適用を受けている、または受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額 | 配偶者控除を超える部分などは別途確認 |
| 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額 | 非課税適用要件と申告の有無を確認 |
| 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額 | 贈与者死亡時の管理残額は相続税に加算される場合がある |
| 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額 | 管理残額の扱いに注意 |
次の評価一覧は、財産の種類ごとに贈与時価額をどう確認するかを示しています。相続時の値上がりや値下がりではなく、贈与時点の価額を使うことを読み取ってください。
| 財産 | 評価の考え方 |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 原則として贈与額そのもの。振込手数料、外貨換算、複数回送金の合計も確認します。 |
| 上場株式 | 贈与日の最終価格や月平均額など、国税庁の評価方法に従って確認します。 |
| 土地・建物 | 土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を基礎にすることが多いです。 |
| 非上場株式・会社財産 | 会社規模、株主区分、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式など専門的評価が必要です。 |
相続時精算課税適用財産は、暦年課税分の生前贈与加算として第14表に混ぜるのではなく、別の系統で処理します。ただし、選択前の暦年課税贈与が加算対象になることがあるため、制度の切り替わり時期を確認する必要があります。
延長部分の合計から総額100万円を控除し、3年以内部分とは分けて計算します。
100万円控除の対象になるのは、加算対象期間内のうち、相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産です。言い換えると、7年化で延長された4年間の部分です。
次の判断の流れは、100万円控除を適用する前に確認する順番を示します。相続開始日、3年以内部分、延長部分、延長部分合計、総額100万円控除の順に読むことで、年ごとの控除ではない点を確認できます。
令和9年1月2日以後の相続で控除対象部分が生じる可能性を見ます。
相続開始前3年以内の贈与は100万円控除の対象ではありません。
相続開始前3年以内ではない加算対象期間内の贈与時価額を合計します。
延長部分合計から最大100万円を控除します。年ごとに控除しません。
次の計算例は、令和13年8月10日に父が死亡し、長男が父から複数の暦年課税贈与を受けていた場合を示します。区分の列で、延長部分と3年以内部分を分けて読み取ってください。
| 贈与日 | 贈与時価額 | 区分 |
|---|---|---|
| 令和7年9月1日 | 80万円 | 延長部分 |
| 令和9年4月1日 | 150万円 | 延長部分 |
| 令和11年3月1日 | 200万円 | 相続開始前3年以内 |
| 令和12年12月1日 | 100万円 | 相続開始前3年以内 |
この例では、延長部分は80万円と150万円の合計230万円です。ここから100万円を控除して130万円を加算し、相続開始前3年以内の300万円をそのまま足すため、計算結果は430万円になります。
生前贈与加算額 = 300万円 +(230万円 − 100万円)= 430万円。100万円控除は延長部分の合計から1回だけ控除します。
贈与税額控除の按分計算では、延長部分の100万円控除がある場合でも、100万円控除をする前の価額に基づいて計算する場面があります。課税価格へ加算する金額と、控除計算の基礎価額が異なることに注意が必要です。
第14表で加算財産を整理し、第4表の2で対応する贈与税額控除を計算します。
加算対象となる贈与財産について贈与税が課されている場合、その相続税額から対応する贈与税額を控除します。これは、同じ財産について贈与税と相続税が二重に負担されることを調整する仕組みです。ただし、加算税、延滞税、利子税は控除対象に含まれません。
次の計算式は、同一年に複数の贈与者から贈与を受けた場合の按分の考え方です。父の相続税申告で控除できるのは、その年の贈与税額全額ではなく、父からの加算対象贈与に対応する部分だけだと読み取ってください。
控除する贈与税額 = A × C ÷ B。Aはその年分の該当区分の贈与税額、Bはその年分の該当区分の贈与財産の価額合計、Cはそのうち相続税の課税価格に加算された価額です。
次の表は、相続税申告書への反映の役割を整理したものです。どの表が明細を整理し、どの表が贈与税額控除を計算し、どこへ転記されるかを読み取ることが重要です。
| 様式・流れ | 役割 |
|---|---|
| 第14表 | 純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額などの明細を整理します。 |
| 第4表の2 | 暦年課税分の贈与税額控除額を計算します。 |
| 第1表等への反映 | 第14表の加算額を各人の課税価格へ、第4表の2の控除額を各人の相続税額からの控除へ反映します。 |
次の注意点一覧は、申告書反映で税額が過少または過大になりやすい場面を整理しています。加算漏れは過少申告、贈与税額控除漏れは過大納付につながるため、両方を読み取ってください。
第14表で整理した暦年課税分の贈与財産価額を課税価格へ反映しないと過少申告になり得ます。
加算対象贈与に贈与税が課されている場合、控除を忘れると税額が過大になります。
同じ年に複数の贈与者から贈与を受けている場合、被相続人からの加算対象贈与に対応する部分だけを按分します。
将来の7年加算に対応する様式では欄構成が更新される可能性があるため、相続開始年の様式・手引きを確認します。
110万円以下、経過期間、按分、精算課税、相続財産を取得しない孫を具体例で確認します。
次の具体例一覧は、生前贈与加算で誤りやすい場面を短く整理したものです。どの例でも、対象者、対象期間、課税方式、控除の有無を順番に読み取ることが大切です。
令和8年10月1日に父が死亡し、長男が相続財産を取得した場合、令和7年6月1日の現金100万円贈与は3年以内なので、贈与税申告がなくても長男の課税価格に加算します。
令和10年4月1日死亡では、令和6年1月1日から死亡日までが対象期間です。令和6年3月10日と令和7年3月15日の延長部分合計300万円から100万円を控除します。
同一年に父から200万円、母から300万円を受けた場合、父の相続税から控除できるのは父からの加算対象贈与に対応する部分だけです。
父から令和6年に相続時精算課税を選択して1,000万円の贈与を受けた場合、暦年課税分ではなく精算課税適用財産として処理します。
孫が祖父から200万円の暦年贈与を受けても、祖父の相続で財産も遺贈も生命保険金も受け取らない場合は、加算対象者にならないのが基本です。
次の一覧は、よくある誤りと是正方法をまとめたものです。誤りの列では何を勘違いしやすいか、是正方法の列ではどの確認へ戻るべきかを読み取ってください。
| よくある誤り | 是正方法 |
|---|---|
| 110万円以下だから加算しない | 贈与税申告が不要でも、加算対象期間内の暦年課税贈与なら第14表等に整理します。 |
| 贈与税申告書に載っているものだけを加算する | 預金移動、現金手渡し、不動産持分移転、株式移管なども確認します。 |
| 相続開始時の価額で加算する | 暦年課税分の生前贈与加算は贈与時の価額で加算します。 |
| 100万円控除を毎年適用する | 延長部分の贈与時価額合計から総額100万円を控除します。 |
| 贈与税額控除を年分全額で控除する | 被相続人からの加算対象贈与に対応する部分だけを按分します。 |
| 相続時精算課税を第14表に混ぜる | 相続時精算課税適用財産は暦年課税分とは別に処理します。 |
生前贈与加算の計算は、相続人間の紛争とも接続します。税務上加算したからといって当然に遺産分割で特別受益になるわけではなく、特別受益に当たるからといって必ず税務上の加算対象になるわけでもありません。
税務処理だけで終わらず、民法上の争い、評価、登記、保険契約、信託契約まで接続します。
相続人間で「兄は生前に多額の援助を受けた」「妹名義の口座に父の預金が移っている」と争われる場合、税務上の生前贈与加算と民法上の特別受益を混同しやすくなります。期間、対象者、目的、評価時点、手続が異なるため、制度ごとに整理します。
次の比較表は、生前贈与が問題になる3つの制度を分けるためのものです。税務申告、遺留分、使い込み疑いのどれを扱っているのかを読み取ることが重要です。
| 論点 | 主な内容 | 確認する専門職 |
|---|---|---|
| 税務上の生前贈与加算 | 一定期間内の暦年課税贈与を相続税の課税価格に加算します | 税理士 |
| 民法上の特別受益 | 共同相続人間の公平のため、婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与などを持ち戻して考えます | 弁護士 |
| 使い込み疑い | 送金が贈与、貸付け、立替精算、無断引出しのどれかを確認します | 弁護士、税理士 |
不動産贈与では、登記原因日付、贈与契約書、登記原因証明情報、固定資産税の負担、使用収益の状況を確認します。次の一覧は、専門的留意点を財産別にまとめたもので、贈与時点の状況を復元する必要があることを読み取れます。
登記簿の登記原因日付は重要な証拠ですが、税務上の取得日や実体上の贈与日と常に一致するとは限りません。
生前贈与加算で加えるのは贈与時の価額です。相続時に価格が変わっていても、贈与時評価を確認します。
分筆、合筆、地目変更、共有物分割などがある場合、贈与時点の対象財産を復元します。
親が子に現金を贈与し、子が保険料を払っていた場合、その現金贈与が加算対象になることがあります。
形式的名義、受益権の帰属、委託者・受託者・受益者の関係を契約書で確認します。
次の専門職一覧は、生前贈与加算で関与しやすい役割を整理したものです。申告計算、紛争、登記、評価、非上場株式、金融資料の取得を分けて読むことで、誰に何を確認するかが分かります。
| 専門職・機関 | 主な確認ポイント |
|---|---|
| 税理士 | 加算対象期間、贈与税申告書、贈与税額控除、財産評価、相続時精算課税との区分、申告書様式への転記 |
| 弁護士 | 贈与の有無、特別受益、遺留分、預金使途不明金、贈与契約の有効性、意思能力、無断引出し |
| 司法書士 | 所有権移転登記、登記原因日付、持分、固定資産評価証明書、相続登記 |
| 不動産鑑定士・土地家屋調査士 | 不動産価格、境界確認、分筆登記、表示登記 |
| 公認会計士・中小企業診断士・弁理士 | 非上場株式、事業承継、知的財産の権利関係 |
| 銀行・信託銀行・保険会社 | 残高証明、取引履歴、保険契約照会、死亡保険金請求資料 |
贈与契約書、通帳、申告書控え、評価資料を早めに集め、10か月の期限へ備えます。
生前贈与加算では、過去の資料を後から集めることが多くなります。税務調査を見据えるなら、贈与者、受贈者、贈与日、対象財産、受諾意思、資金移動、評価資料を結びつけて保存することが重要です。
次の一覧は、証拠保存の領域を資料別に整理したものです。契約、通帳、申告書、財産評価を分けて読むことで、加算額と贈与税額控除の根拠を後から説明できる状態にする必要があります。
贈与者、受贈者、贈与日、対象財産、贈与意思、受諾意思を明確にします。
契約贈与の存在、日付、金額を示す基本資料です。金融機関ごとに取得可能期間や手数料が異なります。
資金申告書控え、添付書類、納付書、e-Tax受信通知は贈与税額控除の根拠になります。
控除不動産なら贈与年の路線価図や固定資産税評価証明書、株式なら贈与日の株価や会社決算書を保存します。
評価次のチェック表は、加算対象判定の最後に確認する項目です。左から順に「はい」といえるかを見ることで、第14表等へ整理する前の抜け漏れを発見できます。
| チェック項目 | はいの場合 |
|---|---|
| 受贈者は相続・遺贈・相続時精算課税に係る贈与等で財産を取得したか | 次へ進む |
| 贈与者は被相続人か | 次へ進む |
| 贈与は暦年課税に係るものか | 次へ進む |
| 贈与日は加算対象期間内か | 次へ進む |
| 贈与税非課税財産や特定の非加算財産ではないか | 次へ進む |
| 贈与時の価額を評価できるか | 第14表等へ整理 |
| 贈与税が課されているか | 第4表の2等で控除計算 |
次の表は、100万円控除の確認項目を整理したものです。年ごとではなく延長部分の合計から控除すること、贈与税額控除の按分で控除前価額を使う場面があることを読み取ってください。
| チェック項目 | 判断 |
|---|---|
| 相続開始日は令和9年1月2日以後か | 該当すれば100万円控除の可能性 |
| 贈与は相続開始前3年以内ではない加算対象期間内のものか | 該当部分のみ控除対象 |
| 延長部分の贈与時価額合計はいくらか | 合計額から最大100万円控除 |
| 年ごとに控除していないか | 年ごとの控除は誤り |
| 贈与税額控除の按分で100万円控除後の額を使っていないか | 控除前価額を使う場面に注意 |
申告前には、第14表等に110万円以下の贈与を含めたか、死亡年の贈与を確認したか、贈与税申告書がない贈与も通帳から確認したか、贈与時価額で評価したか、相続時精算課税と暦年課税を混在させていないかを確認します。
単に過去の贈与を足すのではなく、対象者、期間、評価、控除、申告書を順に確認します。
生前贈与加算の対象になる贈与を加える方法は、単に過去の贈与を足す作業ではありません。相続開始日、受贈者、贈与者、課税方式、非課税規定、評価時点、100万円控除、贈与税額控除、申告書様式、相続人間紛争を順に検討する総合実務です。
次のまとめは、最終確認すべき5つの実務原則を整理したものです。各項目を上から順に確認すると、加算漏れ、過大加算、控除漏れ、制度混同を防ぎやすくなります。
| 実務原則 | 意味 |
|---|---|
| 110万円以下でも加算する場合があります | 贈与税がかかっていない贈与でも、加算対象期間内なら課税価格へ加算します。 |
| 贈与時価額で加算します | 相続時価額ではなく、贈与時点の評価額を使います。 |
| 対象期間は段階的に広がります | 令和6年以後の贈与は、相続開始日に応じて3年から7年へ広がります。 |
| 100万円控除は総額控除です | 延長部分の合計から控除し、年ごとには控除しません。 |
| 贈与税額控除を確認します | 贈与税が課されている場合、必要に応じて按分して相続税額から控除します。 |
相続税申告では、税理士が中心となって申告計算を行うのが通常です。ただし、贈与の有無に争いがある場合は弁護士、不動産の名義や評価が絡む場合は司法書士・不動産鑑定士・土地家屋調査士、非上場株式や事業承継が絡む場合は公認会計士・中小企業診断士などの協力が必要になることがあります。