2σ Guide

遺留分を算定するための
基礎財産の求め方

相続開始時の財産に、法律上算入される贈与を加え、債務を控除する。遺留分の金額を考える前に、まず母数となる基礎財産を正しく固めるためのページです。

1043条 基礎式の中心
1年・10年 贈与算入の原則
2019年 現行法の境目
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遺留分を算定するための 基礎財産の求め方

相続開始時の財産に、法律上算入される贈与を加え、債務を控除する。

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遺留分を算定するための 基礎財産の求め方
相続開始時の財産に、法律上算入される贈与を加え、債務を控除する。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 遺留分を算定するための 基礎財産の求め方
  • 相続開始時の財産に、法律上算入される贈与を加え、債務を控除する。

POINT 1

  • 遺留分を算定するための基礎財産の求め方の全体像
  • 死亡時の残高だけでなく、生前贈与、債務、評価時点を同時に見る必要があります。
  • 基礎財産 = 相続開始時の積極財産 + 算入すべき贈与の価額 - 相続開始時の債務全額
  • 民法上の正式な表現は「遺留分を算定するための財産の価額」で、実務では「基礎財産」と呼ばれます。
  • 次の強調部分は、遺留分計算の出発点を表しています。

POINT 2

  • 遺留分を算定するための基礎財産で混同しやすい用語
  • 基礎財産、遺留分額、侵害額を分けると、計算の見通しがよくなります。
  • 基礎財産を確定する
  • 各人の遺留分額を出す
  • 侵害額を調整する

POINT 3

  • 遺留分を算定するための基礎財産と2019年7月1日の適用法
  • 1. 死亡日を確認:2019年7月1日以後に開始した相続かを見ます。
  • 2. 遺留分権利者を確定:兄弟姉妹以外の相続人か、代襲相続があるかを戸籍で確認します。
  • 3. 相続開始時財産を一覧化:預貯金、不動産、株式、債権、事業資産を拾います。
  • 4. 1年・10年・双方の認識を検討:相手方と目的により算入可否が変わります。
  • 5. 債務と評価へ進む:控除できる債務と評価資料を整えます。

POINT 4

  • 遺留分を算定するための基礎財産に入る積極財産
  • 名義だけでなく、死亡時に誰へ実質的に帰属していたかを確認します。
  • 最初に拾うのは、被相続人が相続開始時に有していた積極財産です。
  • 漏れやすい資産を拾うことが重要であり、名義、実質帰属、評価資料の三点を読み取ってください。
  • 基礎財産は資料で裏づける必要があるため、どの資料から実質帰属や金額を確認するかを読み取ってください。

POINT 5

  • 遺留分を算定するための基礎財産に足し戻す生前贈与
  • 通常の扶養と特別受益
  • 通常の生活費や相当範囲の学費は直ちに生計の資本とはいえないことがあります。
  • 双方の損害加害認識
  • 期間外贈与を問題にするには、贈与者と受贈者の双方が遺留分権利者を害することを認識していた事情が重要です。

POINT 6

  • 遺留分を算定するための基礎財産から控除する債務
  • 相続開始時の存在
  • 死亡後に新たに発生した費用まで当然に1043条の債務として控除できるわけではありません。
  • 被相続人本人の債務
  • 会社の債務、相続人固有の債務、親族間の名目的な貸付は、本人債務かを確認します。

POINT 7

  • 遺留分を算定するための基礎財産の評価方法
  • 相続税評価は重要な参考資料ですが、民事上の価額を当然に固定するものではありません。
  • 非上場株式
  • 事業承継特例
  • 基礎財産の争いの主戦場は、何を入れるかだけでなく、いくらで見るかです。

POINT 8

  • 遺留分を算定するための基礎財産の計算例
  • 数字を当てはめると、基礎財産と最終請求額の違いが見えやすくなります。
  • 基礎財産は請求額そのものではありません
  • ここでは、複数の典型例を使って、基礎財産の計算を確認します。
  • 総体的遺留分と法定相続分を掛けることが重要であり、配偶者は4分の1、各子は8分の1になることを読み取ってください。

まとめ

  • 遺留分を算定するための 基礎財産の求め方
  • 遺留分を算定するための基礎財産の求め方の全体像:死亡時の残高だけでなく、生前贈与、債務、評価時点を同時に見る必要があります。
  • 遺留分を算定するための基礎財産で混同しやすい用語:基礎財産、遺留分額、侵害額を分けると、計算の見通しがよくなります。
  • 遺留分を算定するための基礎財産と2019年7月1日の適用法:現行法か旧法かで、贈与の算入範囲や請求の性質が変わります。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

遺留分を算定するための基礎財産の求め方の全体像

死亡時の残高だけでなく、生前贈与、債務、評価時点を同時に見る必要があります。

遺留分を算定するための基礎財産の求め方を一言でまとめると、相続開始時に被相続人が有していた積極財産に、法律上算入される贈与を足し戻し、相続開始時の債務を控除する作業です。民法上の正式な表現は「遺留分を算定するための財産の価額」で、実務では「基礎財産」と呼ばれます。

次の強調部分は、遺留分計算の出発点を表しています。最終的な請求額を急いで出す前に、まず母数を正しく作ることが重要であり、ここから積極財産、算入贈与、債務控除の三要素を読み取ってください。

基礎財産 = 相続開始時の積極財産 + 算入すべき贈与の価額 - 相続開始時の債務全額

この金額に総体的遺留分割合と各人の法定相続分を掛けることで、各遺留分権利者の遺留分額へ進みます。

次の比較表は、基礎財産から最終的な遺留分侵害額へ進む段階を表しています。段階を混同すると請求額の見立てがずれるため、どの段階で何を調整するのかを読み取ることが大切です。

段階見るもの実務上の注意
基礎財産死亡時財産、算入贈与、債務不動産や株式の評価、贈与の範囲、債務の立証で金額が大きく変わります。
遺留分額基礎財産、総体的遺留分率、法定相続分直系尊属のみなら3分の1、それ以外は2分の1を出発点にします。
遺留分侵害額既に受けた遺贈、特別受益、取得すべき遺産、承継債務基礎財産が正しくても、ここで個別事情を調整しないと最終額は出ません。

実務で争われやすいのは、何が相続開始時の財産に入るのか、どの生前贈与をどこまで足し戻すのか、どの負債を控除できるのか、不動産・非上場株式・条件付き権利をどう評価するのか、という四点です。このページでは、この四点を順番に整理します。

Section 01

遺留分を算定するための基礎財産で混同しやすい用語

基礎財産、遺留分額、侵害額を分けると、計算の見通しがよくなります。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の一定の相続人に法律上保障される最低限の取り分です。配偶者、子、代襲相続人、直系尊属が問題になり、兄弟姉妹には遺留分がありません。現行法では、侵害された遺留分は原則として金銭の支払を求める遺留分侵害額請求として処理されます。

次の比較表は、似ている用語の役割の違いを表しています。言葉の違いを押さえることが重要であり、基礎財産は全体の母数、遺留分額は理論上の取り分、侵害額は実際の請求額に近い数字だと読み取ってください。

用語意味計算上の位置づけ
基礎財産遺留分割合を掛ける前提となる財産価額死亡時財産に一定の贈与を加え、債務を控除します。
総体的遺留分遺留分権利者全体に留保される割合直系尊属のみなら3分の1、それ以外は2分の1です。
個別的遺留分各人ごとの割合総体的遺留分に各人の法定相続分を掛けます。
遺留分額各人の理論上の遺留分基礎財産に個別的遺留分割合を掛けます。
遺留分侵害額最終的に金銭請求の対象となり得る額既取得財産、特別受益、承継債務などをさらに調整します。

次の一覧は、基礎財産を作る前後で確認する三つの計算段階を表しています。どこで法定相続分を使い、どこで特別受益を調整するのかが重要で、順番を入れ替えないことを読み取ってください。

Step 1

基礎財産を確定する

相続開始時財産、算入贈与、債務を整理します。ここでは全体の土台を作ります。

Step 2

各人の遺留分額を出す

総体的遺留分率と法定相続分を掛け、各人の理論上の遺留分額を出します。

Step 3

侵害額を調整する

遺贈、特別受益、取得すべき遺産、承継債務を反映し、最終額を検討します。

そのため、基礎財産を正しく求めても、それだけで請求額が確定するわけではありません。ただし、基礎財産が誤れば、その後の計算はすべてずれるため、最初の設計が重要です。

Section 02

遺留分を算定するための基礎財産と2019年7月1日の適用法

現行法か旧法かで、贈与の算入範囲や請求の性質が変わります。

遺留分制度の見直しは、原則として2019年7月1日以後に開始した相続に適用されます。同日以後の相続では、遺留分侵害額請求は金銭債権として整理されます。2019年6月30日以前に開始した相続では、旧法上の遺留分減殺請求が問題になるため、まず死亡日を確認する必要があります。

次の判断の流れは、遺留分を算定するための基礎財産へ入る前に確認すべき順序を表しています。最初の分岐を誤ると、贈与の期間制限や請求の組み立てが変わるため、死亡日から順番に読むことが重要です。

初動で確認する順序

死亡日を確認

2019年7月1日以後に開始した相続かを見ます。

遺留分権利者を確定

兄弟姉妹以外の相続人か、代襲相続があるかを戸籍で確認します。

相続開始時財産を一覧化

預貯金、不動産、株式、債権、事業資産を拾います。

贈与あり
1年・10年・双方の認識を検討

相手方と目的により算入可否が変わります。

贈与なし
債務と評価へ進む

控除できる債務と評価資料を整えます。

次の時系列は、現行法と期間制限の関係を表しています。どの時点からどの制限が動くのかは請求の安全性に直結するため、死亡日、知った時、相続開始からの経過期間を読み取ってください。

2019年6月30日以前

旧法相続の可能性

現行法の相続人への10年制限をそのまま使えない可能性があります。

2019年7月1日以後

現行法が原則

遺留分侵害額請求として、金銭請求を中心に整理します。

知った時から1年

権利行使期間に注意

調停申立てだけでは相手方への意思表示にならないため、別途の意思表示が重要です。

相続開始から10年

長期の期間制限

相続開始からの期間も別に問題になります。

条文構造としては、民法1042条で遺留分の割合、1043条で基礎財産、1044条で算入される贈与、1045条で負担付贈与や低額譲渡、1046条で最終的な侵害額を見ます。1043条だけでは足りず、1044条、1045条、904条の評価原則まで合わせて確認する必要があります。

Section 03

遺留分を算定するための基礎財産に入る積極財産

名義だけでなく、死亡時に誰へ実質的に帰属していたかを確認します。

最初に拾うのは、被相続人が相続開始時に有していた積極財産です。預貯金、現金、不動産、有価証券、非上場株式、貸付金、売掛金、知的財産権、会員権、暗号資産、損害賠償請求権など、換価性や金銭的価値のある権利を広く確認します。

次の比較表は、基礎財産に入る可能性がある財産類型と、確認すべき資料を表しています。漏れやすい資産を拾うことが重要であり、名義、実質帰属、評価資料の三点を読み取ってください。

財産類型主な資料注意点
預貯金・現金残高証明、通帳、取引履歴死亡直前の出金、名義預金、家族口座への移転を確認します。
不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、路線価、査定、鑑定登記名義は重要ですが、仮登記、信託、共有持分、使用貸借も確認します。
上場株式・投資信託証券口座明細、残高報告書、配当履歴死亡日の市場価格や税務上の評価資料を参考にします。
非上場株式・事業資産決算書、株主名簿、定款、会社資料会社財産と個人財産を峻別し、株式そのものの価値を検討します。
債権・契約上の権利契約書、請求書、返済記録、権利証書回収可能性、譲渡可能性、条件付き権利の評価が問題になります。
生命保険金保険証券、受取人指定、保険料負担資料受取人固有の権利とされる場面があり、一律に入るとも入らないともいえません。

次の一覧は、積極財産を拾うときに特に見落としやすい調査対象を表しています。基礎財産は資料で裏づける必要があるため、どの資料から実質帰属や金額を確認するかを読み取ってください。

名義預金

通帳名義だけでなく、原資、管理者、印鑑や認証媒体の保管、入出金権限を確認します。

実質帰属

不動産の権利関係

所有権、共有持分、借地借家関係、仮登記、収益物件の賃貸条件を整理します。

評価資料

会社関係の財産

法人名義財産は原則として会社財産ですが、被相続人の株式や会社への貸付金は個人財産になり得ます。

区別が重要

条件付き権利

条件付き権利や存続期間不確定の権利は、家庭裁判所選任鑑定人の評価が予定されることがあります。

鑑定

被相続人が経営者であっても、法人名義の預金や不動産は原則として会社財産です。一方、非上場株式そのもの、会社への貸付金、役員貸付金や役員借入金は、個人財産や評価論として問題になることがあります。

Section 04

遺留分を算定するための基礎財産に足し戻す生前贈与

相手方、時期、目的、双方の認識によって算入可否が変わります。

遺留分を算定するための基礎財産の中核は、生前贈与をどこまで足し戻すかです。死亡時の残財産だけを見ていると、生前に大きく財産を移していた事案に対応できません。一方で、すべての支出が当然に入るわけでもありません。

次の比較表は、贈与の相手方ごとの算入範囲を表しています。相手方と贈与目的を分けることが重要であり、相続人以外は原則1年、相続人は10年以内の一定贈与、双方の認識があれば期間外も問題になることを読み取ってください。

相手方原則主な対象例外
相続人以外相続開始前1年以内の贈与内縁者、友人、知人、孫などへの贈与贈与者と受贈者の双方が遺留分権利者への損害を知っていた場合は期間外も問題になります。
相続人相続開始前10年以内の一定贈与婚姻、養子縁組、生計の資本としての贈与双方の損害加害認識があれば10年より前も問題になり得ます。
負担付贈与目的財産価額から負担価額を控除不動産贈与とローン引受け、生活費支払義務付き移転など名目上の負担が実際に履行されていたかを確認します。
低額譲渡一定の場合に負担付贈与とみなされる時価より著しく低い親族間売買など双方の損害加害認識が要件になります。

次の注意点一覧は、贈与の算入で結論が分かれやすい要素を表しています。期間だけで判断しないことが重要であり、金額、使途、証拠、家族関係、経済実態を総合して読む必要があります。

通常の扶養と特別受益

通常の生活費や相当範囲の学費は直ちに生計の資本とはいえないことがあります。多額・一括・資産形成目的なら検討が強まります。

双方の損害加害認識

期間外贈与を問題にするには、贈与者と受贈者の双方が遺留分権利者を害することを認識していた事情が重要です。

受贈後の増減価

民法904条の準用により、受贈者の行為による滅失や増減価があっても、原状のまま相続開始時に存在したものとして評価する考え方があります。

無償の相続分譲渡

共同相続人間の無償相続分譲渡も、財産的価値の移転があれば贈与として問題になる可能性があります。

負担付贈与では、贈与財産の価額から負担の価額を控除した純額を見ます。たとえば、評価3,000万円の不動産を移転し、受贈者が1,200万円相当の負担を引き受けた場合、算入額の出発点は1,800万円です。ただし、実際には被相続人が返済を続けていたような事案では、負担の実体を精査する必要があります。

注意相続人への贈与は全部10年分入る、学費なら必ず除外、住宅資金なら必ず算入、という機械的な判断はできません。金額、時期、目的、生活水準、扶養関係、証拠の有無で結論が変わります。
Section 05

遺留分を算定するための基礎財産から控除する債務

控除できるのは、原則として相続開始時に被相続人が負っていた債務です。

民法1043条は、基礎財産から債務の全額を控除すると定めています。典型的には銀行借入、住宅ローン、事業借入、買掛金、未払税金、未払医療費、損害賠償債務、返還義務のある預り金などが問題になります。

次の比較表は、控除対象になりやすい債務と、慎重な検討が必要な負担を表しています。基礎財産を過大にも過小にも見積もらないため、相続開始時に法的に存在した債務か、証拠で確認できるかを読み取ってください。

項目扱いの方向性確認資料
銀行借入・住宅ローン相続開始時残額を控除対象として検討します。金銭消費貸借契約書、残高証明、返済予定表
未払税金・未払医療費死亡時に発生していたものは控除対象になり得ます。税額通知、請求書、領収書、医療費明細
保証債務直ちに全額控除できるとは限らず、履行可能性や求償可能性を見ます。保証契約書、主債務者資料、督促資料
葬儀費用通常、相続開始時に被相続人が既に負っていた債務とは性質が異なります。領収書、相続人間の清算資料
親族間の貸付貸付か贈与かが争われやすく、実体確認が必要です。借用書、送金履歴、返済履歴、メッセージ

次の注意点一覧は、債務控除で金額がぶれやすい要素を表しています。控除額は基礎財産を直接減らすため、名目ではなく実体と証拠を読み取ることが重要です。

相続開始時の存在

死亡後に新たに発生した費用まで当然に1043条の債務として控除できるわけではありません。

被相続人本人の債務

会社の債務、相続人固有の債務、親族間の名目的な貸付は、本人債務かを確認します。

最終侵害額との違い

基礎財産からの債務控除と、1046条での承継債務の調整は段階が異なります。

債務を過大評価すると基礎財産が不当に小さくなり、過小評価すると遺留分額が大きくなりすぎます。借入契約書、残高証明、返済履歴、請求書、判決資料などで、存在と金額を具体化することが必要です。

Section 06

遺留分を算定するための基礎財産の評価方法

相続税評価は重要な参考資料ですが、民事上の価額を当然に固定するものではありません。

基礎財産の争いの主戦場は、何を入れるかだけでなく、いくらで見るかです。評価基準時は原則として相続開始時です。贈与財産については、民法904条の準用により、受贈者の行為で滅失・増減価していても、相続開始時に原状のままであるものとみなす発想が重要です。

次の比較表は、財産類型ごとに使われやすい評価資料と争点を表しています。税務資料と民事評価の違いが金額に直結するため、どの資料が何を示すのかを読み取ってください。

財産類型評価資料争点
土地・建物固定資産評価証明書、路線価、倍率表、成約事例、鑑定評価税務評価、実勢価格、収益価格、共有持分、底地・借地などの差
収益物件賃貸借契約書、賃料、空室率、修繕履歴、管理資料収益還元、敷金返還債務、借地借家関係
上場株式市場価格、証券口座資料、税務評価資料死亡日、月平均、流動性、権利落ちなど
非上場株式決算書、株主名簿、税務評価明細、会社価値資料純資産価値、収益価値、支配権、少数株主性、譲渡制限
生命保険金保険証券、受取人指定、保険料負担資料受取人固有権、特別受益に準じる扱いの余地、金額比率
知的財産・会員権契約書、相場資料、収益資料、預託金資料譲渡制限、回収可能性、将来収益、権利内容

次の一覧は、不動産・株式・事業承継で専門評価が必要になりやすい場面を表しています。評価差が遺留分額に直結するため、どの専門家の関与を検討するかを読み取ってください。

Real Estate

不動産

都市部の収益不動産、大規模地、無道路地、不整形地、共有持分、再建築不可物件では鑑定評価が重要になりやすいです。

Private Shares

非上場株式

税務上の評価だけでなく、会社の継続価値、純資産、支配権、配当政策などを検討します。

Business Succession

事業承継特例

一定の非上場株式等について、遺留分算定からの除外や価額固定の合意を検討できる制度があります。

相続税の評価では、路線価方式、倍率方式、固定資産税評価額、上場株式の税務評価、取引相場のない株式の評価などが用いられます。これらは強い参考資料ですが、遺留分紛争は民事上の公平を図る制度であり、最終的には死亡時の客観的な価値が争点になります。

ポイント相続税申告の評価額を使って合意できることもありますが、当事者の利害が大きく割れる不動産や非上場株式では、不動産鑑定士、公認会計士、税理士などの評価資料を組み合わせる必要があります。
Section 07

遺留分を算定するための基礎財産の計算例

数字を当てはめると、基礎財産と最終請求額の違いが見えやすくなります。

ここでは、複数の典型例を使って、基礎財産の計算を確認します。どの贈与を足し戻し、どの債務を控除するかが重要であり、表の各行から「入るもの」「入らないもの」「純額で見るもの」を読み取ってください。

設例相続開始時財産算入贈与控除債務基礎財産
基本例自宅6,000万円、預貯金2,000万円、上場株式1,000万円子への住宅資金2,000万円、孫への1年以内贈与500万円借入金1,500万円1億円
負担付贈与別途の基礎財産に加算する前提土地3,000万円から負担1,200万円を控除負担部分は贈与価額から控除算入額1,800万円
低額譲渡を含む例不動産6,000万円、預貯金1,800万円、上場株式1,200万円、貸付金500万円内縁者700万円、長男住宅資金1,500万円、甥への低額譲渡差額2,500万円銀行借入900万円、介護施設未払金100万円1億3,200万円

次の比較表は、1億円の基礎財産を前提に、配偶者と子2人がいる場合の個別的遺留分を表しています。総体的遺留分と法定相続分を掛けることが重要であり、配偶者は4分の1、各子は8分の1になることを読み取ってください。

相続人法定相続分個別的遺留分割合遺留分額
配偶者B2分の12分の1 × 2分の1 = 4分の12,500万円
子C4分の12分の1 × 4分の1 = 8分の11,250万円
子D4分の12分の1 × 4分の1 = 8分の11,250万円

次の強調部分は、基礎財産に入ることと最終的に請求できることが別である点を表しています。計算途中の数字を請求額と誤解しないため、1046条でさらに調整が入ることを読み取ってください。

基礎財産は請求額そのものではありません

すでに受けた遺贈や特別受益、相続で取得すべき遺産、承継債務を調整して、最終的な遺留分侵害額を検討します。

たとえば長男がすでに住宅取得資金2,000万円を受けている場合、その贈与は基礎財産には足し戻されますが、長男自身の最終的な侵害額計算では控除対象にもなり得ます。この二段階を分けて考えることが重要です。

Section 08

遺留分を算定するための基礎財産を証拠で固める方法

条文理解だけでなく、資料収集と専門家連携が金額を左右します。

遺留分事件では、正しい式を知っているだけでは足りません。どの財産を、どの資料で、どの時点の価額として立証するかが核心です。時間が経つほど、預金移動、生前贈与、低額譲渡、名義預金の立証は難しくなります。

次の時系列は、基礎財産の調査を進める順番を表しています。手順を飛ばすと資料の整合性が崩れるため、相続関係、財産、贈与、債務、評価の順に読み取ってください。

Step 1

相続関係を確認する

戸籍、法定相続情報、遺言書、代襲相続、養子縁組の有無を確認します。

Step 2

死亡時財産を一覧化する

預貯金、不動産、有価証券、会社資料、債権、保険契約を資料付きで整理します。

Step 3

贈与と資金移動を追う

通帳履歴、振込明細、贈与契約書、贈与税申告書、住宅取得資料を確認します。

Step 4

評価資料を整える

不動産査定、鑑定、決算書、株式評価資料、税務申告資料を比較します。

次の比較表は、立証に必要な主な資料を表しています。各資料が何を裏づけるのかが重要であり、財産、贈与、債務、評価の根拠を分けて読み取ってください。

対象主な資料確認すること
相続関係戸籍一式、法定相続情報一覧図、遺言書権利者、法定相続分、適用法、遺言内容
預貯金・有価証券残高証明、取引履歴、通帳写し、証券口座報告書死亡時残高、直前出金、名義預金、配当履歴
不動産登記事項証明書、名寄帳、固定資産評価証明書、査定、鑑定権利関係、評価額、賃貸条件、特殊事情
生前贈与贈与契約書、振込明細、贈与税申告書、メール、メモ贈与の有無、時期、目的、双方の認識
債務借入契約書、返済予定表、残高証明、請求書、保証契約書相続開始時の存在、金額、本人債務かどうか

次の一覧は、専門家ごとの役割を表しています。遺留分を算定するための基礎財産は法務、税務、登記、評価が重なるため、どの論点で誰に確認するかを読み取ってください。

弁護士

遺留分侵害額請求、内容証明、交渉、調停、訴訟、使途不明金、特別受益の主張立証を整理します。

紛争対応

司法書士・土地家屋調査士

相続登記、戸籍収集、登記資料、境界、分筆、表示登記など、不動産の前提資料を整えます。

登記資料

税理士

相続税申告、贈与税申告、税務評価、申告済み資料の分析、税務調査対応を担います。

税務評価

不動産鑑定士・公認会計士

不動産の適正評価、収益物件、非上場株式、会社価値、事業承継の評価資料を検討します。

高額資産

相続登記は2024年4月1日から義務化されています。不動産がある事案では、遺留分評価だけでなく登記手続や遺産分割との関係も早期に確認しておくと、後の資料整理が進めやすくなります。

Section 09

遺留分を算定するための基礎財産のFAQ

個別の結論ではなく、一般的な考え方として整理します。

死亡時に残っていた財産だけで遺留分を計算できますか

一般的には、死亡時に残っていた財産だけでは足りず、一定の生前贈与を加え、相続開始時の債務を控除して基礎財産を求めるとされています。ただし、贈与の時期、相手方、目的、証拠関係によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

相続人への贈与はすべて10年分入りますか

一般的には、現行法で10年以内に算入される相続人への贈与は、婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与に限られるとされています。ただし、通常の扶養か特別受益か、双方の損害加害認識があるか、旧法相続かによって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

不動産は固定資産税評価額で決まりますか

一般的には、固定資産税評価額や路線価は重要な参考資料とされています。ただし、遺留分紛争では民事上の価額が問題になり、収益物件、共有持分、底地・借地、再建築不可物件などでは評価が変わる可能性があります。具体的な評価は、不動産鑑定士や弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

調停を申し立てれば1年の期間制限は安心ですか

一般的には、遺留分侵害額請求の調停申立てだけでは、相手方に対する権利行使の意思表示にならないとされています。ただし、通知の方法、相手方への到達、時期、相続開始や侵害行為を知った時期によって判断が変わる可能性があります。具体的な対応は、期間を意識して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

生命保険金は必ず基礎財産に入りますか

一般的には、受取人指定のある生命保険金は受取人固有の権利として扱われ、相続財産そのものに属しないとされる場面があります。ただし、保険契約の構造、保険料負担者、金額比率、共同相続人間の不公平の程度によって評価が変わる可能性があります。具体的な対応は、契約資料を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Reference

参考法令・公的資料

法令、公的機関、裁判例、税務評価資料を中心に整理しています。

法令・制度資料

  • 民法
  • 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」
  • 法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」

裁判所・裁判例

  • 裁判所「遺留分侵害額の請求調停」
  • 裁判所「遺産分割調停」
  • 最高裁平成16年10月29日第二小法廷決定
  • 最高裁平成21年3月24日第三小法廷判決
  • 最高裁平成30年10月19日第二小法廷判決
  • 最高裁令和4年4月19日第三小法廷判決

税務・事業承継資料

  • 国税庁「財産評価基本通達」
  • 国税庁「土地家屋の評価」
  • 国税庁「上場株式の評価」
  • 国税庁「取引相場のない株式の評価」
  • 国税庁「ゴルフ会員権の評価」
  • 中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」
  • 中小企業庁「遺留分に関する民法特例のポイント」