2σ Guide

骨折による変形障害の
後遺障害認定基準と弁護士対応

骨折後に変形、偽関節、短縮、可動域制限、痛みが残った場合に、どの等級が問題になり、どの資料を整えるべきかを体系的に整理します。

12級5号 体幹骨の著しい変形
12級8号 長管骨の変形
3年 症状固定翌日からの自賠責請求期限
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骨折による変形障害の 後遺障害認定基準と弁護士対応

骨折後に変形、偽関節、短縮、可動域制限、痛みが残った場合に、どの等級が問題になり、どの資料を整えるべきかを体系的に整理します。

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骨折による変形障害の 後遺障害認定基準と弁護士対応
骨折後に変形、偽関節、短縮、可動域制限、痛みが残った場合に、どの等級が問題になり、どの資料を整えるべきかを体系的に整理します。
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  • 骨折による変形障害の 後遺障害認定基準と弁護士対応
  • 骨折後に変形、偽関節、短縮、可動域制限、痛みが残った場合に、どの等級が問題になり、どの資料を整えるべきかを体系的に整理します。

POINT 1

  • 骨折による変形障害の後遺障害認定基準と弁護士対応の全体像
  • 変形、偽関節、短縮、機能障害、痛みを分けて見ることが出発点です。
  • 症状固定前から資料を整えることが核心です
  • 骨の形がどう残ったか
  • 画像と測定で説明する

POINT 2

  • 骨折による変形障害とは何か
  • 骨折後の形態異常と痛みだけの神経症状を分けて整理します。
  • 1-1. 骨折の基本的な意味
  • 1-2. 変形障害とは何か
  • 1-3. 変形障害と「痛みだけ」の違い

POINT 3

  • 骨折による変形障害の後遺障害認定はどう進むか
  • 1. 事故による骨折を確認:初診時画像、診断名、受傷機転で事故との関係を整理します。
  • 2. 症状固定時の状態を確認:骨癒合、変形、短縮、可動域、痛みの状態を記録します。
  • 3. 医学的に説明できるかを確認:画像、測定値、診療録、診断書が整合するかを見ます。
  • 4. 等級表との照合へ:12級5号、12級8号、11級7号、7級9号などを検討します。
  • 5. 追加確認が必要:症状固定前後の画像、写真、意見書、測定値を補う余地を確認します。

POINT 4

  • 骨折による変形障害で問題になる代表的等級
  • 7級、8級、10級、11級、12級、13級、14級の入口を一覧で確認します。
  • 3-1. 主要等級の全体像
  • 3-2. 変形障害と機能障害は別に検討する
  • 3-3. 等級表の文言をそのまま理解してはいけない理由

POINT 5

  • 骨折による体幹骨の著しい変形と12級5号
  • 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨では外観上明らかかが重要です。
  • 4-1. 対象となる骨
  • 4-2. 「著しい変形」の判断基準
  • 4-3. 鎖骨骨折で多い争点

POINT 6

  • 骨折による長管骨変形と12級8号
  • 上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨の変形を資料で説明します。
  • 5-1. 長管骨とは何か
  • 5-2. 長管骨変形の具体的要件
  • 5-3. 「画像上の変形」と「後遺障害上の変形」は同じではない

POINT 7

  • 骨折後の偽関節、遷延癒合、変形癒合の後遺障害
  • 骨がつながらない、遅れている、曲がって癒合した状態を分けて確認します。
  • 6-1. 偽関節とは何か
  • 6-2. 上肢の偽関節
  • 6-3. 下肢の偽関節

POINT 8

  • 骨折による脊柱変形の後遺障害等級
  • 椎体圧迫骨折、固定術後、既往症との関係を画像で整理します。
  • 7-1. 脊柱変形の代表例
  • 7-2. 労災認定基準上の脊柱変形
  • 7-3. 脊柱変形で必要な資料

まとめ

  • 骨折による変形障害の 後遺障害認定基準と弁護士対応
  • 骨折による変形障害の後遺障害認定基準と弁護士対応の全体像:変形、偽関節、短縮、機能障害、痛みを分けて見ることが出発点です。
  • 骨折による変形障害とは何か:骨折後の形態異常と痛みだけの神経症状を分けて整理します。
  • 骨折による変形障害の後遺障害認定はどう進むか:症状固定、事故との関係、医学的認定、等級表該当性の4要件を確認します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

骨折による変形障害の後遺障害認定基準と弁護士対応の全体像

変形、偽関節、短縮、機能障害、痛みを分けて見ることが出発点です。

このページは、交通事故による骨折後の変形障害について、後遺障害認定基準と弁護士対応を体系的に理解するための一般的解説です。個別事案では、受傷部位、画像所見、治療経過、症状固定時の状態、既往症、職業、事故態様、保険契約、資料の内容によって結論が変わります。医学的判断は主治医または専門医に、法的判断は交通事故実務に詳しい弁護士に確認してください。

交通事故で骨折した後、骨が曲がって癒合した、骨が十分につながらない、鎖骨や肋骨が外見上変形した、脚の長さが短くなった、関節が動きにくくなった、痛みやしびれが残った、という状態は、後遺障害認定の対象になり得ます。ただし、単に「骨折した」「痛い」「レントゲンで少し形が違う」というだけで当然に等級が認定されるわけではありません。

後遺障害として評価されるためには、交通事故による傷害が治った時点、すなわち症状固定時に、身体に残った精神的または肉体的な毀損状態が、事故による傷害と相当因果関係を持ち、医学的に認められ、自賠法施行令の後遺障害等級表に該当すると判断される必要があります。国土交通省は、自賠責保険でいう後遺障害をこのような枠組みで説明しています。

また、自賠責保険の後遺障害等級認定は、原則として労災保険の障害等級認定基準に準じるとされています。骨折による変形障害では、この労災認定基準の理解が非常に重要です。

弁護士対応で最も重要なのは、症状固定後に慌てて等級を争うことではなく、症状固定前から、画像、診断名、骨癒合の状態、偽関節の有無、変形の程度、外観上の変形、関節可動域、脚長差、疼痛の連続性、仕事や日常生活への影響を、医学的に説明できる資料として整えることです。

次の重要ポイントは、骨折による変形障害で後遺障害認定を考える際の判断軸を示しています。結論だけで動くと資料不足になりやすいため、症状固定、医学的裏づけ、等級表該当性の順に読むことが重要です。

症状固定前から資料を整えることが核心です

変形、偽関節、短縮、可動域制限、神経症状は、症状固定時の画像、診断書、測定値、写真、診療録で説明できる形にしておく必要があります。

次の3つの項目は、変形障害の検討で混同しやすい論点を整理したものです。読者にとって重要なのは、痛み、骨の形、関節機能を分けて確認し、どの等級の入口に立つのかを読み取ることです。

形態異常

骨の形がどう残ったか

変形癒合、偽関節、脊柱変形、下肢短縮など、骨の形や長さそのものが評価対象になります。

医学資料

画像と測定で説明する

X線、CT、MRI、下肢全長X線、可動域測定、後遺障害診断書を組み合わせて、症状固定時の状態を示します。

実務判断

等級と賠償を分けて考える

等級認定だけでなく、慰謝料、逸失利益、将来費用、過失割合まで一連の流れで検討します。

Section 01

骨折による変形障害とは何か

骨折後の形態異常と痛みだけの神経症状を分けて整理します。

1-1. 骨折の基本的な意味

骨折とは、骨の連続性が失われた状態をいいます。完全に折れた場合だけでなく、いわゆるひび、陥没、圧迫骨折なども医学的には骨折に含まれます。日本整形外科学会も、骨が壊れることが骨折であり、痛み、腫れ、動かせない状態、外見上の変形などが生じることがあると説明しています。骨折診断では通常、X線検査が基本となり、X線で分かりにくい場合にはCTが有用となります。

交通事故では、歩行者、自転車、バイク、自動車乗員のいずれでも、強い外力により骨折が発生します。骨折部位は、鎖骨、肩甲骨、肋骨、胸骨、上腕骨、橈骨、尺骨、手指骨、骨盤、大腿骨、脛骨、腓骨、足部、脊椎など多岐にわたります。

1-2. 変形障害とは何か

このページでいう「骨折による変形障害」とは、骨折後に骨の形態異常が残り、その形態異常が後遺障害として評価される可能性のある状態をいいます。典型例は次のとおりです。

1-2. 変形障害とは何かについて、次の比較表は類型、内容、実務上のポイントを並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

類型内容実務上のポイント
変形癒合骨が曲がった位置、ずれた位置、短縮した位置で癒合した状態画像上の変形だけでなく、外観、角度、短縮、機能障害の有無が問題になる
偽関節骨折部が十分に癒合せず、異常な可動性や不安定性が残る状態後遺障害等級上、上肢、下肢で重要な類型
遷延癒合通常より骨癒合が遅れている状態症状固定時に治癒過程なのか、後遺障害として固定したのかの判断が重要
体幹骨の著しい変形鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨などの変形が外観上明らかな状態裸体で明らかに分かる程度かが重要
脊柱変形椎体圧迫骨折などにより、脊柱の変形が残る状態X線などの画像所見と変形の程度が重要
下肢短縮大腿骨、脛骨などの骨折後に脚の長さが短くなる状態測定方法と左右差のセンチメートルが重要

1-3. 変形障害と「痛みだけ」の違い

骨折後に痛みが残ることは珍しくありません。しかし、後遺障害認定では、痛みそのものを評価する「神経症状」と、骨の形態異常を評価する「変形障害」は分けて考えられます。

たとえば、骨折部に痛みが残ったが、画像上の変形、偽関節、短縮、関節可動域制限が明確ではない場合には、局部の神経症状として12級13号または14級9号が問題になることがあります。一方、骨の形態異常が明らかであれば、長管骨の変形、体幹骨の著しい変形、脊柱変形、下肢短縮などが検討されます。

弁護士実務では、この区別が極めて重要です。申請書類に「痛みが残る」とだけ書いても、変形障害の等級には直結しません。どの骨が、どのように、どの程度変形し、その状態がどの認定基準に該当するのかを示す必要があります。

Section 02

骨折による変形障害の後遺障害認定はどう進むか

症状固定、事故との関係、医学的認定、等級表該当性の4要件を確認します。

2-1. 後遺障害とは何か

自賠責保険における後遺障害は、事故による傷害が治ったときに身体に残された精神的または肉体的な毀損状態であり、事故との相当因果関係があり、医学的に認められ、等級表に該当するものです。

ここで重要なのは、次の4点です。

2-1. 後遺障害とは何かについて、次の比較表は要件、意味、骨折変形障害での確認事項を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

要件意味骨折変形障害での確認事項
傷害が治った時点症状固定時の状態を評価する骨癒合、手術予定、抜釘予定、リハビリ効果の見込み
事故との相当因果関係交通事故により発生した障害であること初診時画像、事故直後の診断名、受傷機転、既往症の有無
医学的認定医師の診断、画像、検査により裏づけられることX線、CT、MRI、診療録、後遺障害診断書
等級表該当性自賠法施行令別表の等級に該当すること12級5号、12級8号、11級7号、7級9号などの該当性

2-2. 症状固定とは何か

症状固定とは、症状が安定し、医学上一般に認められた治療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいいます。国土交通省は、自賠責保険の請求期限の説明の中で、症状固定についてこの趣旨を示し、医師が判断すると説明しています。

骨折事案では、症状固定時期の判断が難しいことがあります。たとえば、次のような事情がある場合です。

2-2. 症状固定とは何かについて、次の比較表は事情、症状固定判断での注意点を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

事情症状固定判断での注意点
骨癒合が遅れている遷延癒合として経過観察中なのか、偽関節として固定したのかを確認する
プレート、スクリュー、髄内釘が入っている抜釘予定の有無、抜釘による機能改善見込みを確認する
関節可動域が改善中リハビリ継続で改善可能性があるかを確認する
感染、骨髄炎がある難治骨折として専門的治療の必要性を確認する
痛みが強い画像上の異常、神経症状、可動域制限、心理的要因を分けて評価する

2-3. 自賠責の後遺障害認定は誰が調査するのか

自賠責保険の請求では、保険会社または共済が請求書類を受け付け、損害保険料率算出機構に送付します。同機構は、自賠責損害調査事務所を通じて、事故状況、支払適確性、事故と損害との因果関係、損害額などを調査します。必要に応じて当事者照会、事故現場の確認、医療機関への照会などが行われます。

つまり、後遺障害認定は、単なる自己申告や保険会社担当者の印象で決まるものではありません。提出資料を基礎に、画像、診断書、診療経過、事故態様、医学的整合性が審査されます。

2-4. 労災認定基準との関係

自賠責保険の支払基準では、後遺障害等級の認定は、原則として労災保険の障害等級認定基準に準じるとされています。

そのため、交通事故の後遺障害であっても、骨折による変形障害を検討するときには、労災認定基準における次の概念が重要になります。

2-4. 労災認定基準との関係について、次の比較表は概念、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

概念内容
長管骨の変形上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨などの変形
偽関節骨折部が癒合せず、不安定性を残す状態
体幹骨の著しい変形鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨などの外観上明らかな変形
脊柱変形椎体圧迫骨折、脱臼、固定術後などによる変形
関節機能障害関節可動域が一定割合以下に制限される状態
下肢短縮左右の下肢長差が一定以上残る状態

次の判断の流れは、骨折による変形障害が後遺障害として評価されるまでの順番を表します。順番が重要なのは、事故との関係、医学的裏づけ、等級表該当性のどこかが弱いと認定が難しくなるためです。上から順に、どの資料で各段階を支えるかを読み取ってください。

後遺障害認定で確認する順番

事故による骨折を確認

初診時画像、診断名、受傷機転で事故との関係を整理します。

症状固定時の状態を確認

骨癒合、変形、短縮、可動域、痛みの状態を記録します。

医学的に説明できるかを確認

画像、測定値、診療録、診断書が整合するかを見ます。

該当資料あり
等級表との照合へ

12級5号、12級8号、11級7号、7級9号などを検討します。

資料不足
追加確認が必要

症状固定前後の画像、写真、意見書、測定値を補う余地を確認します。

Section 03

骨折による変形障害で問題になる代表的等級

7級、8級、10級、11級、12級、13級、14級の入口を一覧で確認します。

3-1. 主要等級の全体像

骨折による変形障害で問題になりやすい等級は、次のとおりです。

3-1. 主要等級の全体像について、次の比較表は部位または障害、代表的等級、等級表上の表現、実務上の確認事項を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

部位または障害代表的等級等級表上の表現実務上の確認事項
上肢の偽関節かつ著しい運動障害7級9号一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの上腕骨、橈骨尺骨、異常可動性、装具、支持性
下肢の偽関節かつ著しい運動障害7級10号一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの大腿骨、脛骨腓骨、荷重性、歩行障害
上肢の偽関節8級8号一上肢に偽関節を残すもの偽関節の部位、画像、固定性
下肢の偽関節8級9号一下肢に偽関節を残すもの偽関節の部位、支持性、歩行能力
脊柱の著しい変形6級5号脊柱に著しい変形を残すもの圧迫骨折、亀背、側彎、画像所見
脊柱の変形11級7号脊柱に変形を残すもの椎体変形、固定術、椎弓切除など
体幹骨の著しい変形12級5号鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの裸体で外観上明らかか
長管骨の変形12級8号長管骨に変形を残すもの外部から想見できる程度か、画像での変形
下肢短縮8級5号、10級8号、13級8号一下肢を5cm以上、3cm以上、1cm以上短縮したもの測定方法、左右差、骨盤傾斜の影響
関節の著しい機能障害10級10号、10級11号など一上肢または一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの可動域が健側の2分の1以下など
関節の機能障害12級6号、12級7号など一上肢または一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの可動域が健側の4分の3以下など
局部の神経症状12級13号、14級9号局部に頑固な神経症状を残すもの、局部に神経症状を残すもの痛み、しびれ、画像、神経学的所見

国土交通省の自賠責等級表では、7級9号、7級10号、8級8号、8級9号、11級7号、12級5号、12級8号、14級9号などが明示されています。

3-2. 変形障害と機能障害は別に検討する

骨折後の後遺障害では、骨の形そのものを評価する「変形障害」と、関節の動きにくさを評価する「機能障害」が同時に問題になることがあります。

たとえば、上腕骨骨折が変形癒合し、肩関節の可動域も制限された場合、長管骨変形と肩関節機能障害の双方が検討されます。労災認定基準では、同一上肢に関節機能障害と長管骨変形または偽関節がある場合、併合の考え方が問題になる例が示されています。

ただし、同じ原因による評価の重複が常にそのまま認められるわけではありません。どの障害が独立して評価されるのか、同系列の障害として扱われるのか、併合、準用、相当等級のどれになるのかを、具体的な障害内容に応じて検討する必要があります。

3-3. 等級表の文言をそのまま理解してはいけない理由

「長管骨に変形を残すもの」と聞くと、画像上少しでも曲がっていれば12級8号になるように思えます。しかし、労災認定基準では、長管骨の変形について、外部から想見できる程度の変形など、より具体的な要件が定められています。

同様に、「鎖骨に著しい変形」と聞くと、鎖骨の盛り上がりがあればすぐに12級5号になるように思えます。しかし、体幹骨の著しい変形は、裸体となったときに変形または欠損が明らかに分かる程度であり、X線写真ではじめて発見できる程度のものは該当しないとされています。

このように、実務では、等級表の文言、労災認定基準、画像所見、外観、機能、診療録を照合する作業が不可欠です。

Section 04

骨折による体幹骨の著しい変形と12級5号

鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨では外観上明らかかが重要です。

4-1. 対象となる骨

体幹骨の著しい変形として12級5号が問題になる骨は、主に次の骨です。

4-1. 対象となる骨について、次の比較表は骨、交通事故での典型例を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

交通事故での典型例
鎖骨バイク事故、自転車事故、シートベルト外傷、転倒による鎖骨骨折
胸骨ハンドル外傷、シートベルト外傷、前胸部打撲
肋骨胸部打撲、側胸部圧迫、転倒、車両との衝突
肩甲骨高エネルギー外傷、肩背部打撲
骨盤骨歩行者事故、バイク事故、高エネルギー外傷、圧迫外傷

自賠責等級表では、「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」が12級5号とされています。

4-2. 「著しい変形」の判断基準

労災認定基準では、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨の著しい変形について、裸体となったときに変形または欠損が明らかに分かる程度のものをいい、X線写真ではじめて発見できる程度のものは該当しないとされています。

この基準は、交通事故の後遺障害実務でも非常に重要です。次のように整理できます。

4-2. 「著しい変形」の判断基準について、次の比較表は状態、12級5号該当性の方向性を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

状態12級5号該当性の方向性
服を脱いだ状態で、左右差、隆起、陥凹、曲がりが明らか該当可能性が高まる
触ると盛り上がりが分かるが、目で見て明確とはいえない争点化しやすい
X線では変形があるが、外観上は分からない原則として12級5号は難しい
痛みのみが残る神経症状として別途検討
鎖骨変形に加えて肩関節可動域制限がある体幹骨変形と肩関節機能障害の関係を検討

4-3. 鎖骨骨折で多い争点

鎖骨骨折は、交通事故で頻繁に問題になります。保存療法で癒合することもありますが、転位が大きい場合にはプレート固定などが行われることがあります。後遺障害では、次の争点が出やすいです。

4-3. 鎖骨骨折で多い争点について、次の比較表は争点、内容、弁護士対応を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

争点内容弁護士対応
外観上の変形が明らかか鎖骨部の隆起、左右差、肩の高さの差医療機関での所見、写真、診療録、画像を整える
プレート固定中か抜釘後か金属の隆起と骨変形の区別抜釘予定、抜釘後の外観、骨癒合状態を確認
肩関節可動域制限鎖骨骨折後の肩の動きにくさ関節可動域測定、疼痛の原因、肩関節周囲損傷を確認
痛みだけが残る骨折部痛、神経症状、瘢痕痛12級13号または14級9号の可能性も検討

4-4. 肋骨、胸骨、肩甲骨、骨盤骨の注意点

肋骨骨折では、複数本の骨折があっても、肋骨全体として一つの障害として評価される考え方が示されています。

骨盤骨折では、骨盤の変形そのものに加えて、下肢短縮、股関節可動域制限、排尿障害、神経症状、歩行障害が問題になることがあります。骨盤は身体の土台であるため、骨折後の変形が日常生活や就労に与える影響が大きくなる場合があります。

弁護士は、単に「骨盤骨に変形が残ったか」だけでなく、股関節、腰部、下肢長、歩行、仕事上の支障まで確認する必要があります。

Section 05

骨折による長管骨変形と12級8号

上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨の変形を資料で説明します。

5-1. 長管骨とは何か

長管骨とは、四肢の長い骨をいいます。後遺障害実務で特に重要なのは、次の骨です。

5-1. 長管骨とは何かについて、次の比較表は上肢、下肢を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

上肢下肢
上腕骨大腿骨
橈骨脛骨
尺骨腓骨

長管骨の変形は、自賠責等級表上、12級8号として「長管骨に変形を残すもの」とされています。

5-2. 長管骨変形の具体的要件

労災認定基準では、長管骨の変形について、外部から想見できる程度の変形を残す場合などが問題になります。上肢については、上腕骨の変形、橈骨および尺骨の双方の変形などが示され、下肢については、大腿骨、脛骨などの変形が問題になります。骨折部が良方向に短縮なく癒合した場合、単なる骨の肥厚だけでは長管骨の変形に含めないとされています。

実務上は、次の点が重要です。

5-2. 長管骨変形の具体的要件について、次の比較表は確認事項、意味を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

確認事項意味
どの長管骨か上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨のどれか
変形の種類わん曲、角状変形、回旋変形、短縮、転位、肥厚
外部から想見できるか見た目、触診、左右差、姿勢、歩行への影響
画像上の裏づけX線正面像、側面像、CT、必要に応じ3DCT
機能障害の有無関節可動域制限、筋力低下、歩行障害、疼痛
他の等級との関係偽関節、短縮、関節機能障害、神経症状との関係

5-3. 「画像上の変形」と「後遺障害上の変形」は同じではない

骨折後のX線では、骨折部に肥厚、仮骨、軽度のずれが見えることがあります。しかし、それだけで直ちに12級8号が認められるわけではありません。

後遺障害上の長管骨変形では、外部から想見できる程度か、基準上の変形要件を満たすか、骨折部の癒合状態がどのように記録されているかが問われます。

そのため、弁護士が確認すべき資料は次のとおりです。

5-3. 「画像上の変形」と「後遺障害上の変形」は同じではないについて、次の比較表は資料、確認する内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

資料確認する内容
初診時X線、CT事故による骨折の存在、部位、転位、粉砕の程度
手術記録固定方法、整復状態、骨欠損、骨移植の有無
経過X線骨癒合の進行、変形癒合、短縮、仮骨形成
症状固定時画像最終的な変形状態、偽関節の有無
後遺障害診断書長管骨変形、短縮、関節可動域、疼痛の記載
診療録医師がどのような所見を継続的に把握していたか
写真、動画外観上の変形、歩行状態、使用装具など

5-4. 上腕骨、橈骨、尺骨の変形

上腕骨骨折後の変形では、肩関節や肘関節の可動域制限、上肢の筋力低下、日常生活動作の制限が問題になります。橈骨、尺骨骨折では、前腕の回内、回外、手関節機能、握力、手指の動きにも影響が出ることがあります。

長管骨の変形だけを主張するのではなく、次の関連障害を同時に確認することが重要です。

5-4. 上腕骨、橈骨、尺骨の変形について、次の比較表は骨折部位、関連して確認すべき障害を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

骨折部位関連して確認すべき障害
上腕骨近位部肩関節可動域制限、腱板損傷、痛み
上腕骨骨幹部橈骨神経麻痺、変形癒合、偽関節
上腕骨遠位部肘関節可動域制限、尺骨神経症状
橈骨遠位端手関節可動域制限、尺骨突き上げ、手指障害
橈尺骨骨幹部回内回外制限、前腕変形、偽関節

5-5. 大腿骨、脛骨、腓骨の変形

下肢の長管骨変形では、歩行能力、荷重性、脚長差、膝関節、足関節、股関節への影響が問題になります。大腿骨や脛骨の変形癒合は、単なる見た目の問題にとどまらず、長期的には腰、股関節、膝、足関節への負担にもつながり得ます。

実務では、次の資料が重要です。

5-5. 大腿骨、脛骨、腓骨の変形について、次の比較表は資料、目的を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

資料目的
下肢全長X線脚長差、アライメント、内反外反変形の把握
CT回旋変形、骨癒合状態、偽関節の評価
歩行評価跛行、杖使用、装具使用、階段昇降の支障
関節可動域測定股関節、膝関節、足関節の制限確認
筋力評価廃用、神経損傷、疼痛による筋力低下の確認
Section 06

骨折後の偽関節、遷延癒合、変形癒合の後遺障害

骨がつながらない、遅れている、曲がって癒合した状態を分けて確認します。

6-1. 偽関節とは何か

偽関節とは、骨折部が十分に癒合せず、本来動かないはずの骨折部に異常な動きや不安定性が残る状態をいいます。骨がつながりにくい状態として、遷延癒合、不癒合、偽関節という言葉が使われますが、後遺障害認定では、症状固定時にどのような骨癒合状態にあるかが重要です。

大学病院の整形外科外傷分野では、偽関節、変形癒合、難治性骨折、感染、骨髄炎などが専門的治療対象として扱われています。

6-2. 上肢の偽関節

自賠責等級表では、上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すものが7級9号、上肢に偽関節を残すものが8級8号とされています。

労災認定基準では、上肢の偽関節について、上腕骨、橈骨および尺骨の双方、または橈骨もしくは尺骨の一方における偽関節などが具体的に示されています。

6-2. 上肢の偽関節について、次の比較表は等級、典型的な内容、実務上の要点を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

等級典型的な内容実務上の要点
7級9号上肢に偽関節があり、著しい運動障害も残る不安定性、装具、支持性、可動域、日常生活動作を立証
8級8号上肢に偽関節を残す偽関節の画像所見、骨癒合不全、症状固定性を立証

6-3. 下肢の偽関節

自賠責等級表では、下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すものが7級10号、下肢に偽関節を残すものが8級9号とされています。

労災認定基準では、下肢の偽関節について、大腿骨、脛骨および腓骨の双方、または脛骨もしくは腓骨の一方などが問題になります。

6-3. 下肢の偽関節について、次の比較表は等級、典型的な内容、実務上の要点を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

等級典型的な内容実務上の要点
7級10号下肢に偽関節があり、著しい運動障害も残る荷重困難、歩行障害、装具、杖、疼痛、支持性を立証
8級9号下肢に偽関節を残す骨癒合不全、画像所見、治療経過を立証

6-4. 遷延癒合と症状固定の判断

骨折後、骨がなかなかつながらない場合でも、まだ治療により改善が見込まれる段階であれば、直ちに後遺障害として固定されたとはいえないことがあります。骨折の治癒期間は部位や重症度により異なり、難治骨折では専門的治療が必要となることがあります。

弁護士は、次の点を主治医に確認します。

6-4. 遷延癒合と症状固定の判断について、次の比較表は確認事項、理由を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

確認事項理由
骨癒合の見込みまだ治療効果が期待できるなら症状固定ではない可能性
追加手術の予定骨移植、再固定、感染治療などが予定されているか
抜釘予定金属固定具除去で機能改善する可能性があるか
偽関節と診断できるか後遺障害等級の中核事実になる
症状固定日請求期限、逸失利益、損害額算定の基準になる

6-5. 変形癒合の評価

変形癒合とは、骨折部が本来の位置からずれた状態で癒合したことをいいます。変形癒合がある場合、長管骨変形、体幹骨の著しい変形、下肢短縮、関節機能障害、神経症状などが問題になります。

弁護士対応では、変形癒合を抽象的に主張するのではなく、次のように構造化して立証する必要があります。

  1. 事故でどの骨が折れたか
  2. 初診時にどの程度の転位、粉砕、脱臼、短縮があったか
  3. 手術または保存療法後、どのように骨癒合したか
  4. 症状固定時にどの程度の変形が残ったか
  5. その変形が外観、機能、疼痛、歩行、労働能力にどう影響しているか
  6. その状態がどの等級の要件に該当するか
Section 07

骨折による脊柱変形の後遺障害等級

椎体圧迫骨折、固定術後、既往症との関係を画像で整理します。

7-1. 脊柱変形の代表例

交通事故では、椎体圧迫骨折、破裂骨折、脱臼骨折、脊椎固定術後の変形などが問題になります。脊柱変形では、次の等級が検討されます。

7-1. 脊柱変形の代表例について、次の比較表は等級、表現、典型例を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

等級表現典型例
6級5号脊柱に著しい変形を残すもの強度の亀背、側彎など
11級7号脊柱に変形を残すもの椎体圧迫骨折、脱臼、固定術後など
8級相当、6級相当など可動障害を伴う場合脊柱固定、可動域制限の程度による
12級13号、14級9号痛み、しびれなど画像所見や神経学的所見との整合性が重要

自賠責等級表では、脊柱に著しい変形を残すものが6級5号、脊柱に変形を残すものが11級7号とされています。

7-2. 労災認定基準上の脊柱変形

労災認定基準では、脊柱の著しい変形について、X線写真等により明らかな椎体圧迫骨折または脱臼などに基づく強度の亀背、側彎などが示されています。また、脊柱の変形として、X線写真等で明らかな椎体圧迫骨折または脱臼が認められるもの、脊椎固定術後で可動域制限が一定程度に達しないもの、3個以上の椎弓切除などが示されています。

7-3. 脊柱変形で必要な資料

7-3. 脊柱変形で必要な資料について、次の比較表は資料、確認事項を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

資料確認事項
初診時CT椎体圧迫骨折、破裂骨折、後壁損傷、脱臼の有無
X線側面像椎体高の減少、後彎、アライメント
MRI新鮮骨折か陳旧性か、神経圧迫、脊髄損傷
手術記録固定範囲、除圧、椎体形成、インプラント
症状固定時画像最終的な椎体変形、後彎、側彎
神経学的所見麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害
生活状況長時間座位、立位、重量物、前屈、歩行への影響

7-4. 脊柱変形と既往症

高齢者では、事故前から骨粗鬆症、陳旧性圧迫骨折、変形性脊椎症が存在することがあります。保険会社側から「事故前からの変形である」と主張されることもあります。

この場合、弁護士は次の資料を確認します。

7-4. 脊柱変形と既往症について、次の比較表は資料、目的を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

資料目的
事故直後のMRI新鮮骨折か陳旧性かを確認
事故前画像既往変形の有無を確認
初診時診断書事故直後にどの傷病名が付いたか
事故態様背部、腰部に外力が加わったか
治療経過症状の連続性、疼痛部位、通院経過
Section 08

骨折による下肢短縮障害と測定方法

1cm、3cm、5cmの基準に近い場合は測定方法が重要になります。

8-1. 下肢短縮の等級

交通事故で大腿骨、脛骨、骨盤などを骨折した後、脚の長さに左右差が残ることがあります。自賠責等級表では、下肢短縮について次のような等級が定められています。

8-1. 下肢短縮の等級について、次の比較表は等級、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

等級内容
8級5号一下肢を5cm以上短縮したもの
10級8号一下肢を3cm以上短縮したもの
13級8号一下肢を1cm以上短縮したもの

8-2. 測定方法

労災認定基準では、下肢短縮について、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを測定し、健側と比較するとされています。

実務上は、次の点が争点になります。

8-2. 測定方法について、次の比較表は争点、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

争点内容
真の脚長差か骨そのものの短縮か、骨盤傾斜や姿勢の影響か
測定値の安定性測定者、測定方法、測定姿勢で差が出ないか
画像上の裏づけ下肢全長X線、スキャンなどで確認できるか
歩行への影響跛行、靴補正、腰痛、膝痛、股関節痛
他の等級との関係長管骨変形、関節機能障害、神経症状との併合可能性

8-3. 下肢短縮と弁護士対応

脚長差は、数ミリ単位の誤差が生じやすい領域です。1cm、3cm、5cmという基準に近い場合、測定方法が等級認定を左右します。

弁護士は、次の対応を検討します。

  1. 主治医に測定方法を確認する
  2. 後遺障害診断書に左右差を明確に記載してもらう
  3. 下肢全長X線など客観的資料を取得する
  4. 靴補正、インソール、歩行障害の有無を確認する
  5. 骨盤骨折や股関節障害との関連を整理する
Section 09

骨折変形障害と関節機能障害、神経症状の関係

骨の形、関節可動域、痛みやしびれを分けて申請資料に落とし込みます。

9-1. 関節機能障害とは何か

骨折が関節に近い部位で起きた場合、または関節内骨折であった場合、関節可動域制限が残ることがあります。上肢では肩、肘、手関節、下肢では股、膝、足関節が重要です。

労災認定基準では、関節の機能に著しい障害を残すものについて、原則として関節可動域が健側の2分の1以下に制限される状態、関節の機能に障害を残すものについて、原則として健側の4分の3以下に制限される状態が示されています。

9-1. 関節機能障害とは何かについて、次の比較表は障害、目安、代表的等級を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

障害目安代表的等級
著しい機能障害可動域が健側の2分の1以下上肢または下肢の一関節で10級相当が問題になる
機能障害可動域が健側の4分の3以下上肢または下肢の一関節で12級相当が問題になる

9-2. 骨折変形と関節可動域制限

骨が曲がって癒合した場合、関節の動きにも影響することがあります。たとえば、橈骨遠位端骨折後に手関節可動域が制限される、脛骨高原骨折後に膝関節可動域が制限される、大腿骨頚部骨折後に股関節可動域が制限されるといった事案です。

この場合、弁護士は次の3つを分けて整理します。

9-2. 骨折変形と関節可動域制限について、次の比較表は視点、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

視点内容
骨の形態異常変形癒合、短縮、偽関節、骨欠損
関節機能障害可動域制限、強直、不安定性
痛み、神経症状疼痛、しびれ、知覚鈍麻、神経損傷

9-3. 神経症状との関係

骨折後、変形障害の等級までは認められなくても、痛みやしびれが残る場合があります。自賠責等級表では、局部に頑固な神経症状を残すものが12級13号、局部に神経症状を残すものが14級9号とされています。

骨折後の痛みが12級13号になるか、14級9号になるか、非該当になるかは、次の要素が重要です。

9-3. 神経症状との関係について、次の比較表は要素、12級13号方向、14級9号方向、非該当方向を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

要素12級13号方向14級9号方向非該当方向
画像所見骨折、変形、神経圧迫などが明確骨折後の経過と症状が整合客観所見が乏しく経過も不連続
神経学的所見感覚障害、筋力低下などが整合自覚症状が一貫診療録に訴えが少ない
治療経過長期に一貫した疼痛治療通院継続あり中断、部位変更、不自然な訴え
事故態様強い外力骨折を伴う外傷軽微で説明困難

9-4. 金属固定具と認定時期

労災認定基準では、骨折部に金属釘などが挿入され、それが機能障害の原因となっている場合には、原則としてその抜去を待って等級認定するとされています。他方、金属釘などが機能障害の原因とならない場合には、創面治癒をもって認定して差し支えないとされています。

交通事故実務でも、プレートやスクリューが残っている場合、次の点を確認する必要があります。

9-4. 金属固定具と認定時期について、次の比較表は確認事項、理由を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

確認事項理由
抜釘予定があるか抜釘後に可動域、痛み、外観が変化する可能性
金属が痛みの原因か症状固定時期と後遺障害内容に影響
骨癒合は完了しているか抜釘の安全性、偽関節の有無に関係
金属の隆起か骨変形か体幹骨の著しい変形などで争点になる
Section 10

骨折による変形障害を医学的証拠で説明する方法

画像、診断書、測定値、写真、動画を認定基準に沿って整理します。

10-1. 後遺障害は「医学的に説明できる状態」である必要がある

後遺障害認定は、被害者の苦痛を否定する制度ではありません。しかし、認定実務では、医学的に説明できる状態であるかどうかが重視されます。特に骨折による変形障害は、画像や測定値で説明しやすい一方、資料が不足すると、本来評価されるべき障害が適切に評価されないことがあります。

10-2. 画像資料

10-2. 画像資料について、次の比較表は画像、目的、注意点を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

画像目的注意点
X線骨折、癒合、変形、短縮の基本評価正面像、側面像、比較画像が重要
CT骨癒合、偽関節、関節内骨折、回旋変形の評価3D再構成が有用な場合がある
MRI脊椎新鮮骨折、軟部組織、神経圧迫の評価陳旧性変化との区別に有用な場合がある
下肢全長X線脚長差、下肢アライメント評価立位条件、骨盤傾斜に注意
動態撮影不安定性、可動性評価偽関節や脊柱不安定性で問題になることがある

10-3. 後遺障害診断書で重要な記載

後遺障害診断書は、後遺障害認定で中心的資料の一つです。国土交通省の自賠責請求資料一覧でも、後遺障害診断書やレントゲン、CT、MRIなどの画像が、後遺障害請求で必要な資料として示されています。

骨折変形障害では、次の記載が重要です。

10-3. 後遺障害診断書で重要な記載について、次の比較表は項目、記載のポイントを並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

項目記載のポイント
傷病名どの骨のどの部位の骨折かを具体的に記載
治療経過手術、固定、リハビリ、抜釘、合併症を記載
症状固定日医師の判断として明確に記載
自覚症状疼痛、可動域制限、歩行障害、しびれを具体化
他覚所見画像所見、変形、短縮、偽関節、神経学的所見
関節可動域主要運動、参考運動、左右差を正確に測定
変形外観上の変形、骨のわん曲、短縮、偽関節を具体化
画像資料症状固定時画像の有無、画像上の所見

10-4. 「変形あり」だけでは足りない

診断書に「変形あり」と書かれていても、それだけでは十分でないことがあります。重要なのは、次のような具体性です。

10-4. 「変形あり」だけでは足りないについて、次の比較表は不十分な記載、望ましい方向性を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

不十分な記載望ましい方向性
鎖骨変形あり右鎖骨骨幹部骨折後、外観上明らかな隆起、左右差あり
長管骨変形あり右脛骨骨幹部骨折後、前方凸変形、X線上の角状変形、歩行時疼痛あり
骨癒合不良右上腕骨骨幹部偽関節、骨折部の癒合不全、異常可動性あり
足が短い左下肢長が健側比で何cm短縮しているかを測定値で記載
肩が上がらない屈曲、外転、外旋、内旋などの可動域を数値で記載

10-5. 写真と動画の使い方

体幹骨の著しい変形、長管骨の外観上の変形、跛行、装具使用などでは、写真や動画が補助資料として有用な場合があります。

ただし、写真には注意点があります。

10-5. 写真と動画の使い方について、次の比較表は注意点、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

注意点内容
撮影条件姿勢、角度、照明、距離を一定にする
比較健側との比較、正面、側面、斜位を撮る
誇張を避ける不自然な姿勢で変形を強調しない
医学資料との整合写真だけでなく画像所見、診断書と一致させる
プライバシー露出部位、個人情報の管理に注意
Section 11

骨折による変形障害の後遺障害申請手続

事前認定、被害者請求、必要書類、期限を確認します。

11-1. 申請方法の概要

自賠責保険への請求方法には、大きく加害者請求、被害者請求、一括払制度があります。国土交通省は、請求書類が保険会社または共済に提出され、損害保険料率算出機構で調査が行われ、調査結果を踏まえて保険会社または共済が支払額を決定する流れを説明しています。

11-1. 申請方法の概要について、次の比較表は方法、概要、骨折変形障害での実務上の見方を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

方法概要骨折変形障害での実務上の見方
一括対応任意保険会社が治療費対応と自賠責手続をまとめて進めることが多い被害者が資料内容を十分確認しないまま申請されるリスクがある
被害者請求被害者側が自賠責保険に直接請求する方法画像、診断書、意見書、写真などを主体的に整理しやすい
加害者請求加害者側が被害者に賠償後、自賠責に請求する方法後遺障害申請では中心になりにくい

骨折による変形障害では、被害者請求が有効な場合があります。なぜなら、変形障害では、画像、外観写真、医師の追加説明、可動域測定、脚長差測定など、提出資料の組み立てが認定結果に影響しやすいからです。

11-2. 必要書類

後遺障害申請で必要になりやすい資料は、次のとおりです。

11-2. 必要書類について、次の比較表は書類、目的を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

書類目的
交通事故証明書事故発生の公的確認
事故発生状況報告書事故態様、外力の方向、受傷機転を説明
診断書傷病名、治療期間を確認
診療報酬明細書治療内容、通院期間を確認
後遺障害診断書症状固定時の後遺障害内容を確認
X線、CT、MRI画像骨折、変形、偽関節、脊柱変形などを確認
手術記録骨折の重症度、固定法、合併症を確認
関節可動域測定表機能障害の判断
写真、動画外観上の変形、歩行障害を補足
休業損害資料収入減少、仕事への影響を確認

国土交通省の資料でも、後遺障害請求では後遺障害診断書、レントゲン、CT、MRI画像などが必要資料として示されています。

11-3. 請求期限

自賠責保険の被害者請求では、後遺障害に関する請求期限は症状固定日の翌日から3年以内とされています。

一方、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権については、生命または身体を害する不法行為では、被害者または法定代理人が損害および加害者を知った時から5年、または不法行為の時から20年という期間が問題になります。法務省は、2020年施行の民法改正により、人の生命または身体を害する損害賠償請求権について、より長い期間が設けられたと説明しています。

ただし、時効や請求期限は事案によって起算点や中断、更新、完成猶予が問題になります。期限が近い場合は、直ちに弁護士に確認すべきです。

Section 12

骨折による変形障害で弁護士が行う具体的対応

事故直後、治療中、症状固定前、申請時、認定後で役割が変わります。

12-1. 弁護士に相談すべき時期

骨折による変形障害では、症状固定後ではなく、症状固定前に相談する価値が高いです。なぜなら、後遺障害診断書の記載、画像提出、関節可動域測定、脚長差測定、写真資料、主治医への確認事項は、症状固定前後の段階で整える必要があるからです。

12-1. 弁護士に相談すべき時期について、次の比較表は時期、弁護士対応を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

時期弁護士対応
事故直後事故態様、診断名、初診時画像、警察資料を確保する
治療中治療打切り対応、通院継続、専門医受診、画像検査を確認する
症状固定前後遺障害診断書の記載項目、可動域測定、変形所見を整理する
後遺障害申請時被害者請求、提出資料、補足書面、画像添付を整える
認定後等級妥当性を検討し、損害額を算定する
非該当または低等級異議申立て、医療照会、追加資料、紛争処理を検討する
示談交渉後遺障害慰謝料、逸失利益、将来費用、過失割合を交渉する
訴訟医学的主張、鑑定、証拠申出、尋問などを行う

12-2. 初期段階での弁護士対応

骨折事案では、初診時の資料が非常に重要です。事故直後の画像に骨折が写っているか、診断書に正確な傷病名が記載されているか、事故態様と骨折部位が整合しているかが、後の因果関係判断を支えます。

弁護士は、次の資料を早期に確認します。

12-2. 初期段階での弁護士対応について、次の比較表は資料、確認内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

資料確認内容
交通事故証明書事故日、当事者、車両、事故類型
実況見分調書、物件事故報告書など衝突方向、転倒方向、外力の程度
救急搬送記録事故直後の症状、搬送先、意識状態
初診時診断書骨折部位、打撲部位、神経症状
初診時画像骨折の有無、転位、脱臼、圧迫骨折
車両損傷写真外力の大きさ、受傷機転の説明
ドライブレコーダー衝突速度、転倒機序、過失割合

12-3. 治療中の弁護士対応

保険会社から治療費打切りの打診がある場合でも、骨癒合が未完成、手術予定がある、リハビリにより改善中、痛みが強く日常生活に支障があるなどの事情があれば、医学的根拠をもとに治療継続の必要性を検討します。

ただし、治療継続が常に有利とは限りません。症状固定後の後遺障害申請と損害賠償請求に進むべき段階もあります。弁護士は、主治医の医学的判断を尊重しつつ、保険実務、損害賠償、時効、生活再建を踏まえて方針を整理します。

12-4. 症状固定前の弁護士対応

症状固定前は、後遺障害認定の成否を左右する重要な段階です。

弁護士は、主治医に対して、必要に応じて次の点を確認します。

12-4. 症状固定前の弁護士対応について、次の比較表は確認事項、目的を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

確認事項目的
骨癒合状態偽関節、遷延癒合、変形癒合の有無
追加治療予定抜釘、再手術、骨移植、矯正骨切りの予定
変形の程度外観上の変形、画像上の角状変形、短縮
関節可動域主要運動、参考運動、左右差
脚長差測定方法、左右差、補高の必要性
神経症状しびれ、知覚障害、筋力低下、神経伝導検査
労働能力への影響職業動作、重量物、立ち仕事、歩行、手作業

12-5. 後遺障害申請時の弁護士対応

後遺障害申請では、弁護士は次のような作業を行います。

12-5. 後遺障害申請時の弁護士対応について、次の比較表は作業、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

作業内容
資料収集診断書、診療録、画像、手術記録、リハビリ記録を収集
画像確認骨折部位、変形、癒合状態、脊柱変形、脚長差を確認
後遺障害診断書確認記載漏れ、可動域値、左右差、変形所見を確認
補足書面作成認定基準に沿って障害内容を整理
写真資料整理外観上の変形、装具、歩行障害を補足
被害者請求自賠責に直接請求し、提出資料を主体的に管理

12-6. 認定後の弁護士対応

後遺障害等級が認定された後は、損害賠償額の交渉に進みます。ここで重要なのは、自賠責保険の支払額が最終的な示談額そのものではないという点です。

自賠責保険は最低限の補償制度であり、任意保険会社との示談交渉や訴訟では、裁判例の傾向を踏まえた損害算定が問題になります。日弁連交通事故相談センターは、いわゆる青本、赤い本について、交通事故損害賠償を理解するための書籍であり、裁判の動向を踏まえた損害額算定基準を掲載していると説明しています。ただし、実際の損害額は個別事情により異なります。

弁護士は、後遺障害慰謝料、逸失利益、休業損害、将来治療費、装具費、介護費、家屋改造費、通院交通費、過失割合などを総合的に検討します。

次の時系列は、弁護士対応を事故直後から認定後まで並べたものです。早い段階ほど資料を整えやすいため、各時期に何を確認すべきかを上から順に読み取ってください。

事故直後

診断名と初期画像を確保

人身事故の届出、救急搬送記録、初診時X線やCT、受傷機転の資料を残します。

治療中

変形と機能の経過を記録

骨癒合、手術記録、リハビリ、痛み、可動域、外観上の変形を診療録に残します。

症状固定前

診断書と測定値を点検

後遺障害診断書、症状固定時画像、脚長差、可動域、写真資料を確認します。

認定後

賠償項目を総合検討

慰謝料、逸失利益、将来費用、過失割合、異議申立ての必要性を整理します。

Section 13

骨折による変形障害で非該当、低等級になった場合

認定理由を読み、追加画像、意見書、診療録、事故資料で不足を補います。

13-1. 非該当、低等級になる典型理由

骨折による変形障害で、非該当または想定より低い等級になる典型例は次のとおりです。

13-1. 非該当、低等級になる典型理由について、次の比較表は理由、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

理由内容
画像資料不足症状固定時のX線、CTが提出されていない
外観資料不足体幹骨の著しい変形なのに写真や診療録所見がない
診断書記載不足変形、偽関節、短縮、可動域が具体的に書かれていない
基準該当性不足画像上の軽度変形にとどまり、外部から想見できる程度でない
症状の連続性不足通院中に変形や痛みの訴えが乏しい
既往症事故前からの変形、変性、骨粗鬆症が疑われる
治療中扱いまだ症状固定していない、抜釘後評価が必要とされる

13-2. 異議申立ての基本方針

異議申立ては、単に「納得できない」と述べる手続ではありません。前回認定の理由を分析し、不足していた医学的資料を追加し、認定基準との関係を明確にして再審査を求める手続です。

13-2. 異議申立ての基本方針について、次の比較表は追加資料、目的を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

追加資料目的
追加画像CT、3DCT、下肢全長X線、MRIなど
主治医意見書変形、偽関節、症状固定、可動域制限の医学的説明
画像読影意見骨癒合状態、変形角度、椎体変形などの説明
写真外観上の変形、左右差、装具使用
リハビリ記録可動域、筋力、歩行能力の経過
陳述書仕事、家事、移動、睡眠、疼痛の具体的支障
事故資料受傷機転、外力の大きさ、因果関係の補強

13-3. 自賠責保険・共済紛争処理機構

自賠責保険の支払や後遺障害認定に争いがある場合、自賠責保険・共済紛争処理機構による紛争処理を利用できる場合があります。同機構は、自賠責保険や共済からの支払をめぐる紛争について、公正かつ的確な解決を目的として指定された紛争処理機関です。紛争処理委員には少なくとも1名の弁護士が含まれるとされています。

13-4. 日弁連交通事故相談センター、交通事故紛争処理センター

交通事故紛争では、日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センターも重要な相談、あっせん、審査の場になります。国土交通省も、これらの相談先を交通事故被害者向けの相談機関として紹介しています。

13-5. 訴訟での争点

訴訟では、後遺障害等級そのものに加えて、次のような争点が生じます。

13-5. 訴訟での争点について、次の比較表は争点、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

争点内容
事故との因果関係骨折、変形、痛み、可動域制限が事故によるものか
後遺障害等級自賠責認定が妥当か、より高い評価が相当か
労働能力喪失率等級表の率をそのまま使うか、職業事情で調整するか
労働能力喪失期間症状固定時年齢、職業、回復可能性、症状の内容
慰謝料後遺障害慰謝料、傷害慰謝料の水準
将来費用装具、通院、再手術、介護、家屋改造
過失割合事故態様、信号、速度、道路状況、ドラレコ
Section 14

骨折による変形障害が慰謝料、逸失利益、将来費用に与える影響

自賠責限度額だけでなく、職業、生活支障、将来費用を総合的に見ます。

14-1. 自賠責保険の限度額

自賠責保険では、後遺障害による損害について、等級に応じた限度額が定められています。国土交通省は、別表第二の後遺障害について、1級3000万円から14級75万円までの限度額を示しています。

骨折による変形障害で問題になりやすい等級を中心に整理すると、次のとおりです。

14-1. 自賠責保険の限度額について、次の比較表は等級、自賠責限度額、自賠責基準上の後遺障害慰謝料等、労働能力喪失率を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

等級自賠責限度額自賠責基準上の後遺障害慰謝料等労働能力喪失率
7級1051万円419万円56%
8級819万円331万円45%
10級461万円190万円27%
11級331万円136万円20%
12級224万円94万円14%
13級139万円57万円9%
14級75万円32万円5%

自賠責基準上の後遺障害慰謝料等は国土交通省の支払基準に示されています。 労働能力喪失率表では、7級56%、8級45%、10級27%、11級20%、12級14%、13級9%、14級5%などが示されています。

14-2. 逸失利益の考え方

後遺障害逸失利益は、後遺障害によって将来得られたはずの収入が減る損害です。自賠責支払基準では、原則として、年収額などに後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を乗じて算出する考え方が示されています。

基本式は次のように整理できます。

基本式基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

ただし、骨折変形障害では、労働能力への影響が職業により大きく異なります。

14-2. 逸失利益の考え方について、次の比較表は職業類型、影響が大きくなりやすい障害を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

職業類型影響が大きくなりやすい障害
建設、製造、運送、介護、警備下肢短縮、歩行障害、重量物制限、脊柱変形
美容師、調理師、整備士、医療職上肢変形、手関節、肘、肩の可動域制限
営業、販売、接客歩行、立位、外観上の変形、疼痛
事務職長時間座位、通勤、手作業、疼痛の持続
自営業者実収入、代替労働、事業への影響の立証が重要
学生、幼児将来の職業選択への影響を慎重に検討

14-3. 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったこと自体に対する精神的損害です。自賠責基準の金額と、裁判実務を踏まえた交渉水準は異なることがあります。弁護士が介入する意義は、後遺障害等級の適正化だけでなく、認定等級を前提に、適正な慰謝料と逸失利益を主張する点にもあります。

14-4. 将来費用

骨折変形障害では、将来費用も問題になることがあります。

14-4. 将来費用について、次の比較表は将来費用、例を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

将来費用
装具費靴補正、インソール、サポーター、杖、装具
将来治療費抜釘、再手術、疼痛治療、リハビリ
家屋改造費手すり、段差解消、浴室改修
交通費通院、公共交通機関利用困難によるタクシー代など
介護、家事支援重度障害、歩行障害、上肢機能障害の場合

これらは当然に認められるものではなく、医学的必要性、相当性、金額の妥当性、将来発生の蓋然性を立証する必要があります。

Section 15

骨折による変形障害でよくある争点

鎖骨の盛り上がり、長管骨変形、偽関節、痛み、治療打切りを整理します。

15-1. 「鎖骨が盛り上がっているのに12級5号にならない」

鎖骨骨折後の盛り上がりがあっても、12級5号の「著しい変形」に該当するには、裸体で明らかに分かる程度であることが必要です。X線写真では分かるが外観上は明らかでない場合、12級5号は難しくなります。

弁護士は、外観写真、主治医所見、左右比較、プレート隆起と骨変形の区別を確認します。

15-2. 「骨が曲がってついたのに12級8号にならない」

長管骨変形では、単に画像上少し曲がっているというだけでは足りないことがあります。労災認定基準では、外部から想見できる程度の変形や、基準上の具体的条件が問題になります。また、骨折部が良方向に短縮なく癒合した場合、単なる肥厚だけでは長管骨変形とされない考え方が示されています。

15-3. 「偽関節と言われたが等級が分からない」

偽関節は、上肢か下肢か、どの骨か、著しい運動障害を伴うかにより、7級または8級が問題になります。画像所見、骨癒合状態、異常可動性、装具、歩行能力、関節可動域を整理する必要があります。

15-4. 「痛みが残っているが変形障害にはならないのか」

変形障害の基準を満たさなくても、痛みやしびれが残る場合には、局部の神経症状として12級13号または14級9号が問題になることがあります。骨折の存在、画像所見、治療経過、症状の一貫性が重要です。

15-5. 「保険会社から治療打切りを言われた」

保険会社の治療費対応終了と、医学的な症状固定は同じではありません。主治医の医学的判断を確認し、骨癒合、リハビリ効果、追加治療予定を踏まえて対応する必要があります。

15-6. 「後遺障害診断書を書いてもらったが内容が薄い」

後遺障害診断書に、変形、偽関節、短縮、可動域、画像所見が十分記載されていない場合、認定に不利になることがあります。弁護士は、診断書の修正を依頼するのではなく、医学的事実の確認として、記載漏れや必要検査の有無を主治医に丁寧に確認します。

15-7. 「既往症があると言われた」

事故前から変形、骨粗鬆症、変性疾患がある場合でも、事故で新たな骨折や症状悪化が生じたなら、因果関係が問題になります。事故前画像、事故直後MRI、初診時診断、症状経過を比較して検討します。

Section 16

骨折による変形障害で被害者が確認する実務チェックリスト

事故直後から認定結果後まで、確認すべき資料を段階別に整理します。

16-1. 事故直後

16-1. 事故直後について、次の比較表はチェック項目、確認を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

チェック項目確認
警察に人身事故として届け出たか
救急搬送記録、初診時診断書を確保できるか
初診時のX線、CT、MRI画像を保存できるか
事故態様を説明できる写真、ドラレコ、現場資料があるか
痛む部位を医師に漏れなく伝えたか

16-2. 治療中

16-2. 治療中について、次の比較表はチェック項目、確認を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

チェック項目確認
骨癒合の状態を定期的に確認しているか
手術記録、画像、リハビリ記録を取得できるか
可動域制限や痛みを診療録に残しているか
変形が外観上分かる場合、医師に伝えているか
保険会社の治療打切りに対し、主治医の意見を確認したか

16-3. 症状固定前

16-3. 症状固定前について、次の比較表はチェック項目、確認を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

チェック項目確認
症状固定時期について主治医の判断を確認したか
後遺障害診断書に必要事項が記載される見込みか
症状固定時画像があるか
関節可動域を正確に測定しているか
脚長差を正しい方法で測定しているか
外観上の変形写真を適切に準備したか
弁護士に資料を確認してもらったか

16-4. 後遺障害申請時

16-4. 後遺障害申請時について、次の比較表はチェック項目、確認を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

チェック項目確認
被害者請求にするか、一括申請にするか検討したか
画像資料を漏れなく提出するか確認したか
診断書の傷病名、症状固定日、所見を確認したか
変形障害、機能障害、神経症状を分けて整理したか
補足書面で認定基準との関係を説明したか

16-5. 認定結果後

16-5. 認定結果後について、次の比較表はチェック項目、確認を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。

チェック項目確認
認定理由を確認したか
想定等級との差を分析したか
異議申立てに必要な追加資料を検討したか
自賠責額だけで示談してよいか確認したか
逸失利益、慰謝料、将来費用、過失割合を検討したか
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骨折による変形障害のFAQ

制度の一般的な考え方として、個別判断を避けて整理します。

Q1. 骨折しただけで後遺障害になりますか。

一般的には、骨折した事実だけで後遺障害になるわけではありません。症状固定時に変形、偽関節、短縮、可動域制限、神経症状などが残り、事故との関係と医学的裏づけがあり、等級表に該当するかが問題になります。具体的な見通しは、画像や診断書を整理して弁護士等の専門家へ相談する必要があります。

Q2. 骨が曲がってくっついたら必ず12級8号ですか。

一般的には、画像上の軽いずれや肥厚だけで12級8号が認定されるとは限りません。外部から想見できる程度か、長管骨の基準に合うか、機能障害や短縮との関係が重要です。事故態様や画像所見で結論は変わるため、具体的には専門家へ相談する必要があります。

Q3. 鎖骨の盛り上がりは12級5号になりますか。

一般的には、裸体で外観上明らかに分かる程度の著しい変形であれば12級5号が問題になります。ただし、触ると分かる程度やX線で初めて分かる程度では争点になりやすいとされています。写真、診療録、画像、抜釘予定などを整理する必要があります。

Q4. プレートが入っている状態で後遺障害申請できますか。

一般的には、金属固定具が入っていても申請を検討する場面はあります。ただし、抜釘によって外観、痛み、可動域が変わる可能性がある場合、症状固定時期や評価内容が問題になります。治療予定と主治医の判断を確認する必要があります。

Q5. 偽関節なら何級ですか。

一般的には、上肢か下肢か、著しい運動障害を伴うかによって7級または8級が問題になります。画像上の骨癒合不全、異常可動性、装具、歩行や支持性への影響で判断が変わるため、資料を整理して専門家へ確認する必要があります。

Q6. 痛みだけでも後遺障害になりますか。

一般的には、変形障害の基準を満たさなくても、痛みやしびれが局部の神経症状として12級13号または14級9号の検討対象になることがあります。ただし、治療経過、症状の一貫性、画像や神経学的所見によって結論は変わります。

Q7. 症状固定後、いつまでに請求すべきですか。

一般的には、自賠責保険の被害者請求では後遺障害について症状固定日の翌日から3年以内とされています。民事上の損害賠償請求権の時効は別に問題になるため、期限が近い場合は資料を整理して専門家へ相談する必要があります。

Q8. 一括申請と被害者請求はどちらがよいですか。

一般的には、どちらが適切かは資料の量、争点、保険会社との関係、追加意見書の必要性で変わります。変形、偽関節、脚長差、可動域制限、外観写真を丁寧に提出したい場合、被害者請求を検討することがあります。

Q9. 弁護士費用特約がないと相談できませんか。

一般的には、弁護士費用特約がなくても相談自体は可能な場合があります。ただし、費用倒れのリスクや報酬体系は事務所によって異なります。後遺障害等級や賠償額の見通しとあわせて確認する必要があります。

Q10. 医師に何を伝えればよいですか。

一般的には、痛む部位、動作、頻度、可動域、歩行、仕事や家事への支障、しびれ、冷感、外観上の変形などを具体的に伝えることが重要です。ただし、医学的判断や診断書の記載は医師が行うため、不正確な記載を求めてはいけません。

Section 18

骨折による変形障害の後遺障害認定で大切なまとめ

症状固定前から資料を整え、等級認定と損害賠償を一連の流れで考えます。

骨折による変形障害の後遺障害認定では、単に「骨折した」「痛い」「形が少し変わった」という事情だけでは不十分です。後遺障害として評価されるためには、事故との因果関係、症状固定時の医学的状態、画像所見、外観上の変形、偽関節、短縮、可動域制限、神経症状、等級表該当性を、資料で説明する必要があります。

特に重要なのは、次の5点です。

  1. 体幹骨の著しい変形では、裸体で外観上明らかな程度かを確認する
  2. 長管骨変形では、外部から想見できる程度の変形か、単なる肥厚にとどまらないかを確認する
  3. 偽関節では、骨癒合不全の部位、異常可動性、著しい運動障害の有無を確認する
  4. 下肢短縮、関節機能障害、神経症状を別個に整理する
  5. 症状固定前から、後遺障害診断書、画像、測定値、写真、医師所見を整える

弁護士対応の核心は、認定結果が出てから不満を述べることではありません。事故直後の資料、治療経過、症状固定前の医学的確認、後遺障害診断書、被害者請求、異議申立て、損害額交渉までを一連のプロセスとして管理することです。

骨折による変形障害は、医学、保険、法務、生活再建が交差する専門性の高い領域です。等級認定の見込みや損害賠償額に不安がある場合は、整形外科的資料を確認でき、後遺障害実務に精通した弁護士へ早期に相談することが重要です。

Reference

この記事の参考情報源

公的機関・制度資料

  • 国土交通省「限度額と補償内容」。後遺障害の定義、等級表、限度額等の説明
  • 国土交通省「自動車損害賠償責任保険 支払基準」。後遺障害による損害、逸失利益、慰謝料等、労災認定基準への準拠に関する記載
  • 国土交通省「労働能力喪失率表」。後遺障害等級別の労働能力喪失率
  • 国土交通省「支払までの流れと請求方法」。自賠責保険の請求手続、損害調査、請求期限、必要書類に関する説明
  • 損害保険料率算出機構「自賠責保険 損害調査」。自賠責損害調査事務所、地区本部、本部、審査会による調査体制の説明
  • 厚生労働省「労災保険 障害等級認定基準」。脊柱の著しい変形、脊柱の変形に関する基準
  • 厚生労働省「労災保険 障害等級認定基準」。鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨の著しい変形に関する基準
  • 厚生労働省「労災保険 障害等級認定基準」。上肢の変形障害、偽関節、長管骨変形、関節機能障害、金属釘等に関する基準
  • 厚生労働省「労災保険 障害等級認定基準」。下肢の変形障害、偽関節、長管骨変形、下肢短縮、関節機能障害に関する基準
  • 法務省「民法の一部を改正する法律 2020年4月1日施行」。生命または身体を害する損害賠償請求権の期間に関する説明
  • 公益財団法人日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準」。青本、赤い本の位置づけに関する説明
  • 国土交通省「交通事故にあったときには」。日弁連交通事故相談センター、自賠責保険・共済紛争処理機構、交通事故紛争処理センター等の相談先に関する説明
  • 一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構「紛争処理のしくみ」。指定紛争処理機関、紛争処理委員に関する説明

医学・整形外科資料

  • 日本整形外科学会「骨折」。骨折の症状、診断、治療に関する一般向け説明
  • 神戸大学大学院医学研究科外科系講座整形外科学「外傷グループ」。偽関節、変形治癒骨折、難治性骨折等に関する専門診療の説明
  • 昭和大学整形外科学講座「難治骨折センター」。偽関節、遷延治癒、難治骨折等に関する説明