骨がくっついた後も痛み、しびれ、動かしにくさが残る場合に、12級13号や14級9号が問題になる条件、証拠、申請手続を整理します。
骨がくっついた後も痛み、しびれ、動かしにくさが残る場合に、12級13号や14級9号が問題になる条件、証拠、申請手続を整理します。
骨癒合、症状固定、12級13号、14級9号を切り分けて確認します。
交通事故で骨折し、医師から「骨はくっついた」「骨折は治った」と説明された後でも、痛み、しびれ、違和感、動かしにくさ、力の入りにくさが残ることがあります。この場合に後遺障害が認められる可能性はあります。ただし、痛みが残っているだけで自動的に認定されるわけではありません。
実務上の中心問題は、次の3点です。
国土交通省は、自賠責保険における後遺障害について「自動車事故により受傷した傷害が治ったときに、身体に残された精神的又は肉体的な毀損状態」であり、傷害と後遺障害との間に相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められる症状をいうと説明しています。 つまり、法律上は「傷害が治ったとき」に残る障害こそが後遺障害の問題になります。したがって、「骨折が治ったのに痛い」という状態は、後遺障害の検討対象になり得ます。
ただし、「骨折が完治した」という言葉には注意が必要です。患者本人がいう「完治」は、多くの場合、骨がついたという意味です。医療ではこれを「骨癒合」といいます。しかし、骨癒合が得られたことと、痛みが完全に消えたこと、関節機能が完全に戻ったこと、神経症状がなくなったことは同じではありません。骨はついていても、関節面の不整、軟部組織損傷、神経障害、変形癒合、外傷後関節症、CRPSなどによって痛みが残ることがあります。
このページは、交通事故に関わる整形外科、救急、リハビリテーション、損害調査、弁護士実務、事故解析、生活再建支援の視点を統合した専門解説として構成しています。実在の個人や団体による監修表示ではなく、公開されている公的資料、医学資料、実務上の考え方に基づく解説です。
次の重要ポイントは、骨折が完治したと説明された後に痛みが残る場合の判断軸を示します。読者にとって重要なのは、骨がついたことと後遺障害の検討終了は同じではない点を読み取ることです。
骨はついていても、関節面の不整、軟部組織損傷、神経障害、変形癒合、外傷後関節症、CRPSなどにより、後遺障害の検討対象になる痛みが残ることがあります。
次の3つの項目は、後遺障害として検討されるための中心条件を整理したものです。どれか一つだけでは足りないことがあるため、事故との関係、医学的評価、等級表該当性を並べて確認してください。
骨折部位、事故態様、初診時画像、症状の連続性から、残った痛みとの相当因果関係を確認します。
画像、検査、診療録、リハビリ記録、後遺障害診断書で、痛みの原因や経過を説明します。
他覚所見で証明できるか、医学的に説明可能かにより、検討される等級が変わります。
骨癒合、症状消失、症状固定は同じ意味ではありません。
骨折治療では、レントゲンやCTで骨折部の連続性が回復し、荷重や日常使用に耐えられる状態になることを確認します。これが一般に「骨がついた」と説明される状態です。AAOS、米国整形外科学会の患者向け資料でも、骨折の治癒期間は部位、損傷の程度、年齢、基礎疾患、医師の指示への遵守などにより異なり、数週間から数か月、ときにはさらに長くかかるとされています。
しかし、骨癒合が得られても、痛みが残ることは珍しくありません。原因は単純ではなく、骨そのもの、関節、筋、腱、靭帯、神経、皮膚、瘢痕、固定期間による関節拘縮、心理的負荷などが重なります。交通事故の骨折は、転倒やスポーツ外傷よりも衝撃が大きいことがあり、骨折だけでなく周囲組織の損傷を伴いやすい点も重要です。
後遺障害申請では「症状固定」が重要です。国土交通省は、症状固定について、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても医療効果が期待できなくなった時であり、医師により判断されると説明しています。
症状固定は、患者が「もう治らない」と諦める日ではありません。また、保険会社が治療費対応を打ち切りたい日でもありません。医学的にみて、治療を続けても大きな改善が期待しにくく、残った症状を後遺障害として評価する段階に入ったという意味です。
骨折後の痛みでは、次のような段階整理が必要です。
1-2. 症状固定とは何かについて、次の比較表は段階、医学的意味、後遺障害実務上の意味を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 段階 | 医学的意味 | 後遺障害実務上の意味 |
|---|---|---|
| 骨折直後 | 骨折、腫脹、出血、軟部組織損傷がある | 傷害慰謝料、治療費、休業損害の問題 |
| 骨癒合前 | 骨がまだ十分に固まっていない | 痛みがあって当然の時期 |
| 骨癒合後 | 骨はついているが、機能回復や痛みの改善が続くことがある | リハビリ継続の必要性を検討 |
| 症状固定 | これ以上の大幅な改善が見込めない | 後遺障害診断書、等級認定の検討 |
| 症状固定後 | 痛みや機能制限が残る | 後遺障害慰謝料、逸失利益の問題 |
次の時系列は、骨折直後から症状固定後までの意味を並べたものです。痛みの評価は時期によって変わるため、どの段階で治療費、後遺障害診断書、慰謝料や逸失利益の問題に移るのかを順番に読み取ってください。
腫れ、出血、軟部組織損傷があり、治療費、傷害慰謝料、休業損害が中心になります。
骨がまだ十分に固まっていないため、痛みがあること自体は自然な経過として扱われます。
骨はついていても、リハビリ継続、機能回復、痛みの改善可能性を確認します。
これ以上の大幅な改善が見込めない段階で、診断書と等級認定を検討します。
残った痛みや機能制限について、後遺障害慰謝料や逸失利益が問題になります。
現実に残る症状と、自賠責上評価される障害を分けて考えます。
一般には、治療後に残った症状を広く「後遺症」と呼びます。一方、自賠責保険や損害賠償実務でいう「後遺障害」は、交通事故による傷害が治った後に残った障害のうち、医学的に認められ、事故との相当因果関係があり、後遺障害等級表に該当するものです。国土交通省の説明でも、後遺障害は施行令別表第一または第二に該当するものが対象とされています。
したがって、痛みが現実に残っていることと、自賠責上の後遺障害として認められることは同じではありません。
重要なのは、次の区別です。
骨折後の後遺症と後遺障害の違いについて、次の比較表は用語、意味を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 後遺症 | 治療後に残った症状全般。日常語として幅広い。 |
| 後遺障害 | 自賠責や損害賠償上、等級表に該当すると評価される障害。 |
| 自覚症状 | 本人が訴える痛み、しびれ、違和感など。 |
| 他覚所見 | 画像、検査、診察所見など、医師が確認できる医学的所見。 |
| 相当因果関係 | 交通事故と残存症状との法的、医学的な結びつき。 |
骨癒合後も痛みが残る原因を、関節、神経、変形、CRPSなどから確認します。
骨折部の骨癒合が良好でも、痛みが残る理由には、次のようなものがあります。
AAOSは、骨折後には筋力や可動域が低下し、通常の筋力、関節運動、柔軟性を回復するための運動が必要になることを説明しています。 この点は、交通事故実務でも重要です。骨がついているのに痛いという訴えが、医学的に不自然とは限りません。
「完治した」と説明された場合でも、実際には治癒が不十分なことがあります。AAOSは、骨折部位の痛みが通常の初期痛が消えた後も長期間続く場合、偽関節、つまり骨が十分に癒合しない状態が問題になることがあるとし、診断にはX線、CT、MRIなどの画像検査が用いられると説明しています。
また、骨が異常な位置で治癒する状態は変形癒合です。AAOSは、骨が曲がったり、回旋したり、短縮したりする形で癒合することがあり、下肢の変形癒合では跛行、痛み、関節炎、機能障害が生じ得ると説明しています。 MSD Manualも、骨折の合併症として、関節可動域制限、遷延癒合、偽関節、変形癒合、骨壊死、外傷後関節症などを挙げています。
骨折後の痛みがある場合、「骨がついたか」だけではなく、「どのような形でついたか」「関節面は整っているか」「荷重軸は保たれているか」「周囲関節の可動域はどうか」を確認する必要があります。
骨折では、骨片、腫脹、血腫、手術瘢痕、ギプスや装具、金属固定材料などによって末梢神経が障害されることがあります。痛みだけでなく、しびれ、感覚鈍麻、灼熱感、電撃痛、冷感、筋力低下、巧緻運動障害などを伴うことがあります。
後遺障害実務では、単に「痛い」と書かれているだけでは不十分なことが多く、痛みの場所、神経支配領域との整合性、感覚検査、筋力検査、腱反射、Tinel徴候、神経伝導検査、筋電図などが問題になります。すべてのケースで神経伝導検査が必要というわけではありませんが、神経症状を医学的に説明する資料として有用なことがあります。
骨折後の痛みで見落としてはいけない病態がCRPSです。日本ペインクリニック学会の指針では、CRPSは組織損傷後に創傷が治癒した後にも痛みが遷延する病態と説明されています。 同指針は、厚生労働省研究班によるCRPS判定指標として、持続性または不釣合いな痛み、知覚過敏、関節可動域制限、浮腫、発汗異常、皮膚や爪や毛の萎縮性変化、アロディニアなどを挙げています。
ただし、同指針は重要な注意点も示しています。CRPS判定指標は、専門医療機関への紹介判断や臨床研究対象の絞り込みなどの目的で用いるものであり、具体的な治療方法の選択、補償や訴訟の判断、重症度判定の目的で使用しないとされています。 つまり、CRPSらしい症状があるから直ちに後遺障害等級が決まるわけではなく、交通事故実務では、診断、経過、他覚所見、労働能力への影響を別途検討する必要があります。
厚生労働省の労災障害等級認定基準では、特殊な性状の疼痛としてカウザルギーやRSDに関する基準が示されており、疼痛の部位、性状、発作頻度、強度、持続時間、日内変動、原因となる他覚的所見などにより、労働能力に及ぼす影響を判断するとされています。 自賠責では原則として労災基準に準じるため、CRPSが疑われる事案では、疼痛だけでなく、浮腫、皮膚温、皮膚色、発汗、可動域、骨萎縮、関節拘縮などの資料化が重要になります。
次の一覧は、骨癒合が良好でも痛みが残る代表的な理由を整理しています。理由が複数重なることがあるため、痛みの部位、画像所見、検査結果、生活支障を対応させて読み取ることが重要です。
関節内骨折や段差が残ると、荷重時痛や外傷後関節症の原因になり得ます。
靭帯、腱、関節包、筋膜の損傷により、骨癒合後も動作時痛が残ることがあります。
牽引、圧迫、瘢痕癒着、手術材料などにより、しびれや電撃痛を伴うことがあります。
浮腫、皮膚温、皮膚色、発汗、骨萎縮、可動域制限などをあわせて確認します。
中心は12級13号と14級9号ですが、機能障害や変形障害も別途検討します。
骨折後の痛みが残った場合、実務上まず検討されるのは、自賠責後遺障害等級表のうち次の2つです。
4-1. 典型的には12級13号または14級9号について、次の比較表は等級、自賠責等級表上の文言、労働能力喪失率、自賠責保険金額の上限を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 等級 | 自賠責等級表上の文言 | 労働能力喪失率 | 自賠責保険金額の上限 |
|---|---|---|---|
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 14% | 224万円 |
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 5% | 75万円 |
国土交通省の後遺障害等級表では、12級13号に「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号に「局部に神経症状を残すもの」が掲げられています。 また、労働能力喪失率表では、12級が14%、14級が5%とされています。 自賠責の後遺障害慰謝料等は、支払基準上、12級が94万円、14級が32万円です。
なお、労災の資料では号数表記が「12級の12」となっていることがあります。自賠責等級表では「12級13号」と表記されるため、号数だけを見て混同しないことが大切です。
12級13号と14級9号の違いは、単なる痛みの強さだけで決まるわけではありません。大枠としては、12級は症状の原因が医学的、他覚的に証明できる場合、14級は症状の存在が医学的に説明可能な場合と理解されることが多いです。
厚生労働省の神経系統の障害に関する認定基準では、神経系統の機能または精神の障害について、第12級は他覚的に神経系統の障害が証明されるもの、第14級は第12級より軽度のものが該当するとされています。 また、受傷部位の疼痛については、通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のためある程度差し支えがあるものを第12級、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものを第14級とする考え方が示されています。
交通事故の骨折後疼痛で12級13号が検討される例は、たとえば次のような場合です。
一方、14級9号が検討される例は、次のような場合です。
骨折後の後遺障害は、痛みだけではありません。骨折部位によっては、関節可動域制限、短縮、変形、偽関節、外貌醜状、脊柱変形などが問題になります。
たとえば、上肢や下肢の三大関節の機能障害、長管骨の変形、鎖骨や肋骨や骨盤骨の著しい変形などは、神経症状とは別の等級で評価されることがあります。国土交通省の後遺障害等級表にも、関節機能障害や骨の変形に関する項目が多数掲げられています。
ここで重要なのは、同じ部位に機能障害と神経症状がある場合、単純に二重評価されるとは限らないことです。厚生労働省の認定基準では、器質的または機能的障害を残し、局部に第12級または第14級程度の疼痛などの神経症状を伴う場合、原則として個々の障害として別々にとらえず、上位の等級により認定する考え方が示されています。 交通事故実務でも、どの障害として評価するのが最も適切かを検討する必要があります。
事故態様、骨折態様、画像所見、症状の連続性、診療録を総合して見ます。
次の事情があると、後遺障害認定の可能性が高まります。
5-1. 認定されやすい方向に働く事情について、次の比較表は観点、認定上プラスになりやすい事情を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 観点 | 認定上プラスになりやすい事情 |
|---|---|
| 事故態様 | 高エネルギー外傷、歩行者や自転車やバイクの被害、車両の大きな損傷、救急搬送 |
| 骨折態様 | 開放骨折、粉砕骨折、転位の大きい骨折、関節内骨折、複数骨折、手術を要した骨折 |
| 画像所見 | CTやX線で変形癒合、関節面不整、骨萎縮、外傷後関節症、偽関節などが確認できる |
| 症状の連続性 | 事故直後から症状固定まで同一部位の痛みが一貫している |
| 治療経過 | 通院、投薬、リハビリが合理的に継続している |
| 検査結果 | 可動域測定、神経学的所見、筋力検査、神経伝導検査などが整合する |
| 生活支障 | 歩行、階段、把持、荷物運搬、家事、仕事などへの支障が具体的 |
| 診断書 | 後遺障害診断書の自覚症状、他覚所見、検査結果、可動域の記載が具体的 |
骨折は、むち打ちなどと比べると、事故による外傷の発生自体は画像で確認しやすい傷害です。そのため、痛みの部位と骨折部位が一致し、治療経過が自然であれば、14級9号の検討余地が出やすい類型といえます。もっとも、骨折したこと自体と後遺障害の認定は別問題です。骨折があっても、症状固定時に医学的に評価できる残存症状が乏しければ非該当となることがあります。
次の事情があると、認定は難しくなります。
5-2. 認定されにくい方向に働く事情について、次の比較表は観点、認定上マイナスになりやすい事情を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 観点 | 認定上マイナスになりやすい事情 |
|---|---|
| 診療記録 | 痛みの記載が乏しい、途中から急に痛みの訴えが出た |
| 通院経過 | 長期間の通院中断、自己判断で治療を止めた |
| 症状部位 | 骨折部位と痛みの部位が一致しない |
| 画像所見 | 骨癒合良好で、関節面不整や変形などが見当たらない |
| 他原因 | 加齢性変性、既往症、別事故、スポーツや仕事による負荷が強い |
| 訴えの一貫性 | 医療記録、本人申述、仕事上の支障が一致しない |
| 後遺障害診断書 | 自覚症状だけで、他覚所見や検査結果がほぼ空欄 |
| 申請資料 | 画像、診療録、リハビリ記録、事故資料が不足している |
特に注意すべきなのは、「痛いことを我慢して医師に伝えていなかった」というケースです。本人にとっては痛みが続いていたとしても、診療録に記録されていなければ、後から症状の連続性を立証しにくくなります。
事故態様、骨折部位、症状の連続性、既往症を合わせて確認します。
骨折後の痛みが後遺障害として認められるには、事故と症状との関係が必要です。相当因果関係は、医学的な原因関係だけでなく、法律上どこまで損害として評価するかという問題です。
実務では、次の要素を総合します。
交通事故鑑定や車両損傷の分析は、骨折の受傷機転を裏付ける補助資料になり得ます。ただし、車両損傷が小さいから痛みが残るはずがない、あるいは車両損傷が大きいから必ず後遺障害になる、という単純な判断はできません。医学的資料と事故態様の両方を合わせて検討します。
傷病名、自覚症状、他覚所見、症状固定日を具体的に整理します。
後遺障害申請では、後遺障害診断書が中心資料になります。国土交通省の自賠責請求手続では、請求に必要な書類として、医師の診断書、診療報酬明細書、後遺障害関係の資料などが挙げられています。 損害保険料率算出機構も、保険会社から送付された請求書類に基づき、事故状況、支払いの的確性、損害額などを公正中立に調査し、必要に応じて医療機関に治療状況を確認すると説明しています。
骨折後疼痛の後遺障害診断書では、少なくとも次の点が重要です。
「右橈骨遠位端骨折」「左脛骨高原骨折」「大腿骨骨幹部骨折」「鎖骨骨折」など、事故による傷病名が正確に記載されている必要があります。手術を受けた場合は、手術名、固定材料、抜釘の有無も経過資料として重要です。
「右手関節痛」「左膝痛」「歩行時痛」「荷重時痛」「しびれ」「冷感」「灼熱痛」「可動時痛」など、症状固定時に残っている症状を具体的に記載してもらう必要があります。
抽象的に「痛みあり」だけでは不十分なことがあります。次のように具体化します。
7-2. 自覚症状について、次の比較表は具体化する項目、例を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 具体化する項目 | 例 |
|---|---|
| 部位 | 左膝外側、右手関節橈側、足関節前面 |
| 性質 | ズキズキ、電撃痛、灼熱痛、刺すような痛み |
| 誘因 | 荷重、階段、長時間歩行、把持、寒冷 |
| 頻度 | 常時、歩行時、作業後、夜間 |
| 強度 | 鎮痛薬の必要性、休憩の必要性 |
| 支障 | 仕事、家事、運転、育児、介護、趣味 |
12級13号を目指す場合、ここが特に重要です。画像所見、可動域測定、神経学的所見、筋力、感覚、腫脹、皮膚温、皮膚色、骨萎縮、関節拘縮などを記載してもらいます。
骨折後疼痛で有用になり得る資料は次のとおりです。
7-3. 他覚症状および検査結果について、次の比較表は資料、何を示すかを並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 資料 | 何を示すか |
|---|---|
| 受傷直後のX線、CT | 骨折の存在、転位、粉砕、関節内骨折 |
| 手術記録 | 骨折の重症度、固定方法、術中所見 |
| 経過中のX線 | 骨癒合の進行、変形癒合、骨萎縮 |
| 症状固定時のX線、CT | 最終的な骨形態、関節面、変形 |
| MRI | 軟部組織、骨髄浮腫、軟骨、靭帯、腱 |
| 可動域測定 | 関節機能障害の有無 |
| 神経伝導検査、筋電図 | 末梢神経障害の裏付け |
| リハビリ記録 | 機能回復の経過、残存制限 |
| 痛みの経過表 | 症状の連続性、日常生活支障 |
症状固定日は、後遺障害請求の起算点や損害算定に影響します。国土交通省の手続案内では、被害者請求の後遺障害について、症状固定日の翌日から3年以内が請求期限とされています。 症状固定日が早すぎると、必要な治療やリハビリが尽くされていないと評価されることがあります。逆に、医学的に改善が見込めないのに漫然と治療を続けると、治療費や休業損害の範囲が争われることがあります。
次の判断の流れは、後遺障害診断書を中心に痛みを資料化する順番を表しています。順番が重要なのは、症状名、訴え、他覚所見、症状固定日がそろって初めて認定資料として読みやすくなるためです。
骨折部位、手術名、固定材料、抜釘の有無を確認します。
部位、性質、誘因、頻度、強度、生活支障を整理します。
画像、可動域、神経学的所見、筋力、皮膚変化などを照合します。
診断書、画像、診療録、本人陳述を一貫した内容にします。
症状固定前後の画像、検査、診療録開示、意見書の必要性を確認します。
資料提出を任せる方法と、被害者側で資料を組み立てる方法を比較します。
後遺障害の申請方法には、大きく分けて事前認定と被害者請求があります。
事前認定は、加害者側任意保険会社を通じて後遺障害認定を受ける方法です。書類収集の負担が比較的軽い一方、被害者側が提出資料を十分にコントロールしにくいことがあります。
被害者請求は、被害者側が加害者の自賠責保険会社に直接請求する方法です。国土交通省の手続案内では、自賠責保険金請求書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、医師の診断書、診療報酬明細書などが必要書類として示されています。
被害者請求の利点は、画像、診療録、医師意見書、事故資料、本人の陳述書など、必要な資料を整理して提出しやすい点です。骨折後疼痛のように、症状の連続性や医学的説明を丁寧に示す必要がある案件では、被害者請求が有効なことがあります。
自賠責の損害調査では、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が重要な役割を担います。同機構は、全国の主な都市に地区本部と調査事務所を設置し、自賠責保険の損害調査を行っていると説明しています。 また、保険会社から送付された書類に基づき、公正中立な立場で損害調査を行い、その結果を保険会社に報告するとしています。
そのため、申請前の資料整理が極めて重要です。後から「本当は痛かった」「本当は生活に支障があった」と説明しても、初回申請時の医療記録や画像資料が不十分だと、認定は難しくなります。
認定理由を読み、追加資料で何を補うかを検討します。
後遺障害が非該当になった場合、まず認定理由を精査します。よくある理由は次のとおりです。
非該当の理由を読まずに同じ資料で異議申立てをしても、結果が変わりにくいです。異議申立てでは、何が足りなかったかを特定し、追加資料で補う必要があります。
骨折後疼痛の異議申立てで追加検討される資料には、次のものがあります。
9-2. 異議申立てで検討する資料について、次の比較表は追加資料、目的を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 追加資料 | 目的 |
|---|---|
| 症状固定時のCT | 関節面不整、変形癒合、骨癒合状態を確認 |
| MRI | 軟部組織、軟骨、骨髄浮腫を確認 |
| 神経伝導検査、筋電図 | 末梢神経障害の裏付け |
| 主治医意見書 | 骨折と痛みの医学的関連性を説明 |
| リハビリ記録 | 機能制限、痛みの経過を裏付け |
| 診療録開示 | 症状の連続性を確認 |
| 本人陳述書 | 生活、仕事、家事への具体的支障 |
| 事故資料 | 受傷機転、外力の大きさを説明 |
自賠責の判断に不服がある場合、自賠責保険・共済紛争処理機構への申請や、裁判での争いを検討することがあります。同機構は、弁護士、医師、学識経験者などの専門家で構成する紛争処理委員が中立的な立場から支払内容の適切性を審査し、原則無料で書類審査を行う制度を説明しています。
ただし、紛争処理の結果に不満がある場合、再度の紛争処理申立てはできず、訴訟提起は可能とされています。 どの手段を選ぶかは、資料の強さ、争点、損害額、時間、費用、立証可能性によって異なります。
手関節、鎖骨、肋骨、骨盤、膝、足関節など部位ごとの争点を整理します。
橈骨遠位端骨折は、手をついて受傷する典型的な骨折です。骨癒合が得られても、手関節痛、握力低下、可動域制限、TFCC損傷、正中神経や尺骨神経の症状が残ることがあります。関節内骨折で段差が残る場合、将来的な外傷後関節症も問題になります。
確認すべき資料は、関節面の整復状況、掌屈背屈、橈屈尺屈、回内回外、握力、しびれの分布、手術材料の位置です。
鎖骨骨折や上腕骨近位端骨折では、骨癒合後も肩痛、肩関節可動域制限、筋力低下、肩鎖関節痛、胸郭出口症候群様症状などが問題になることがあります。鎖骨の変形が外観上明らかな場合は、変形障害も検討されます。
後遺障害診断書では、肩関節の屈曲、外転、外旋、内旋などの可動域測定が重要です。単に「肩が痛い」だけでなく、どの動作がどの程度制限されるかを明確にします。
肋骨骨折は、画像上骨癒合しても、深呼吸時痛、体幹回旋時痛、咳嗽時痛、胸郭の違和感が残ることがあります。ただし、後遺障害認定では、痛みの客観的裏付けが難しいことも多く、診療録上の経過、画像、呼吸機能、日常生活支障の具体化が必要です。
骨盤骨折や寛骨臼骨折、大腿骨近位部骨折では、歩行時痛、股関節可動域制限、脚長差、荷重時痛、外傷後股関節症が問題になります。骨癒合後も、長時間歩行、階段、しゃがみ込み、立ち上がり、車の乗降などに支障が出ることがあります。
脛骨高原骨折や膝蓋骨骨折は、関節面が関係するため、骨癒合後も膝痛、可動域制限、正座困難、階段昇降困難、外傷後関節症が残ることがあります。関節面の段差、半月板損傷、靭帯損傷、軟骨損傷、膝蓋大腿関節の不整などを確認します。
足関節果部骨折、距骨骨折、踵骨骨折、中足骨骨折では、荷重時痛、歩行距離の制限、靴が合わない、階段や坂道で痛む、可動域制限、外傷後関節症が問題になります。踵骨骨折では、距骨下関節の障害が長く残ることがあります。
痛いだけでなく、部位、動作、頻度、生活支障を具体的に伝えます。
医師は治療の専門家ですが、後遺障害認定の専門家とは限りません。患者側は、症状を正確に伝える必要があります。ただし、誇張や誘導は禁物です。事実を整理して伝えます。
診察時には、次のような情報を簡潔に伝えると有用です。
「痛いです」だけでなく、「10分歩くと左足関節外側が痛くなり、休まないと続けて歩けない」「右手首の痛みでフライパンを片手で持てない」「階段を降りると左膝の内側が刺すように痛む」のように、生活機能と結びつけて説明します。
治療費打切り、骨癒合だけを理由にした判断、示談前確認を整理します。
保険会社から治療費対応の終了を打診されることがあります。しかし、治療費打切りの打診と、医学的な症状固定は同じではありません。症状固定は医師が医学的に判断するものです。国土交通省の手続案内でも、症状固定は医師により判断されるとされています。
治療費打切りを打診された場合は、主治医に現在の状態、今後の治療必要性、改善見込み、症状固定時期を確認します。漫然と通院を続けるのではなく、リハビリの目的、治療効果、残存症状を整理します。
保険会社担当者から「骨はついているので後遺障害は難しい」と言われることがあります。確かに、骨癒合良好で他覚所見が乏しい場合は、12級13号は難しくなります。しかし、14級9号は、骨折態様や症状経過から痛みの残存が医学的に説明可能な場合に検討されます。したがって、骨がついたことだけで結論を出すべきではありません。
症状固定後に痛みが残っているのに、後遺障害申請をしないまま示談することは慎重に考えるべきです。示談書に清算条項が入ると、後から後遺障害分を請求することが難しくなることがあります。痛みが残っている場合は、示談前に後遺障害申請の要否を検討します。
症状固定前、診断書作成前、非該当後、示談前は資料整備の分岐点です。
骨折後に痛みが残る場合、弁護士相談は早いほど資料整備の選択肢が増えます。特に次の場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談する価値が高いです。
弁護士の役割は、医師に医学的判断を指示することではありません。医師が医学的に判断しやすいよう、事故資料、症状経過、必要な検査、後遺障害診断書の記載漏れ、申請資料の整合性を整理することです。医師、弁護士、リハビリ職、本人の役割を混同しないことが重要です。
警察、救急、整形外科、リハビリ、損害調査、弁護士の役割を混同しないことが重要です。
警察資料や救急搬送記録は、事故直後の受傷状況を示します。人身事故として届出がされているか、交通事故証明書があるか、救急搬送時の主訴や外傷部位が残っているかは、初期資料として重要です。
骨折後疼痛では、初期画像だけでなく、症状固定時画像が重要です。CTが必要な場面もあります。関節内骨折、手術後、変形癒合の疑い、偽関節の疑いがある場合、単純X線だけでは説明しきれないことがあります。
リハビリ記録は、可動域、筋力、歩行、把持、巧緻運動、ADLの改善と残存制限を示します。痛みの訴えだけでなく、機能面の支障を客観化する資料になります。
損害調査では、事故との因果関係、症状の連続性、医療記録、画像所見、後遺障害診断書の整合性が見られます。提出資料の不足は、医学的に存在する症状が十分評価されない原因になります。
弁護士は、等級認定と損害賠償の両面を見ます。後遺障害等級が同じでも、逸失利益、慰謝料、休業損害、将来治療費、過失割合、素因減額、労働能力喪失期間などで争いが生じます。
通勤災害や業務中事故では、労災保険との関係も重要です。重い後遺症では、障害年金、身体障害者手帳、介護保険、福祉制度、就労支援が関係することがあります。自賠責だけで生活再建が完結しないケースもあります。
後遺障害慰謝料、逸失利益、将来治療費、休業損害などを確認します。
後遺障害が認定されると、主に次の損害項目が問題になります。
骨折後の痛みが損害賠償で何を変えるかについて、次の比較表は損害項目、内容を並べて整理したものです。どの要件や資料が重要かを見落とさないために、左から順に分類、内容、確認すべき点を読み取ってください。
| 損害項目 | 内容 |
|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残った精神的苦痛に対する賠償 |
| 後遺障害逸失利益 | 労働能力低下により将来失う収入 |
| 将来治療費 | 症状固定後も必要性が認められる場合に問題 |
| 装具、器具費用 | サポーター、杖、靴、インソールなど |
| 休業損害 | 症状固定前後の就労不能、減収 |
| 家事労働への影響 | 家事従事者の場合の損害評価 |
| 過失相殺 | 被害者側にも過失がある場合の減額 |
| 素因減額 | 既往症や加齢変性の寄与が争われる場合 |
自賠責保険では、後遺障害による損害は逸失利益と慰謝料等から構成され、等級に応じた限度額があります。国土交通省は、後遺障害による損害として、逸失利益と慰謝料等が支払われると説明しています。 ただし、任意保険会社との示談や裁判では、自賠責の限度額だけでなく、個別事情に応じた賠償額を検討します。
制度の一般的な考え方として、個別判断を避けて整理します。
一般的には、骨がついたという説明だけで後遺障害の検討が終わるわけではありません。症状固定時に痛み、しびれ、可動域制限などが残り、事故との関係と医学的説明がある場合、後遺障害が問題になる可能性があります。具体的な見通しは資料を整理して専門家へ相談する必要があります。
一般的には、明確な画像異常が乏しくても、骨折態様、症状の連続性、治療経過、診断書の記載などから14級9号が検討されることがあります。ただし、12級13号は他覚所見の有無がより重要になりやすく、個別資料で判断が変わります。
一般的には、12級13号は痛みの原因を医学的、他覚的に証明できる場合、14級9号は医学的に説明可能な神経症状が残る場合と理解されることが多いです。ただし、画像、検査、治療経過、生活支障で評価は変わります。
一般的には、痛みの強さだけで等級が決まるわけではありません。痛みの部位、原因を示す資料、症状の一貫性、労働や生活への影響が総合的に見られます。具体的な評価は医学資料と事故資料をあわせて確認する必要があります。
一般的には、後遺障害診断書は医師が作成するため、整形外科など医療機関の診断、画像、診療録が重要です。施術記録が補助資料になることはありますが、それだけで十分とは限りません。通院先と資料の整合性を確認する必要があります。
一般的には、医療上の治癒説明と自賠責上の後遺障害評価がずれる場合があります。一方で、主治医が医学的に残存症状を認めない場合もあります。痛みの部位、支障、必要な検査を整理し、不正確な記載を求めずに専門家へ相談する必要があります。
一般的には、非該当理由を分析し、症状固定時画像、MRI、神経伝導検査、診療録、主治医意見書などで不足を補える場合、異議申立てを検討することがあります。ただし、追加資料の内容によって結論は変わります。
一般的には、関節面不整、変形癒合、末梢神経障害、外傷後関節症、CRPSに関する他覚所見がある場合、12級13号への変更を検討する余地があります。ただし、変更は容易ではなく、追加資料の質が重要です。
一般的には、鎮痛薬の使用だけで軽いと決まるわけではありません。服薬内容、痛みの頻度、生活支障、治療経過、医師の所見を総合して見られます。薬の自己判断による中断や過少申告は、症状経過の説明を難しくすることがあります。
一般的には、示談成立後に追加請求ができるかは示談内容や予見可能性などで難しい問題になります。示談前に後遺障害の有無、症状固定、将来の見通しを確認することが重要です。具体的には示談書と医療資料を専門家に確認してもらう必要があります。
医療、事故、生活と仕事の資料を分けて準備します。
骨癒合だけで判断せず、症状固定前から資料を整えることが重要です。
骨折が完治したのに痛みが残る場合に後遺障害は認められるかという問いへの答えは、「認められる可能性はあるが、痛みだけで自動的に認定されるわけではない」です。
骨癒合は、後遺障害の否定を意味しません。骨がついても、関節面不整、変形癒合、軟部組織損傷、末梢神経障害、外傷後関節症、CRPS、可動域制限などによって痛みや機能障害が残ることがあります。
実務上は、12級13号または14級9号が中心になります。12級13号では、痛みの原因を医学的、他覚的に証明できる資料が重要です。14級9号では、明確な画像所見が乏しくても、骨折態様、症状経過、治療内容、生活支障から、痛みの残存が医学的に説明可能かが問題になります。
最も重要なのは、症状固定前から資料を整えることです。診療録に症状を残す、画像を保存する、可動域や神経症状を検査する、後遺障害診断書の記載漏れを防ぐ、事前認定と被害者請求を比較する、非該当理由を分析する。これらの作業は、弁護士に相談することで整理しやすくなります。
骨折後の痛みは、本人にしか分からない苦痛である一方、後遺障害認定では医学的、法的に説明できる形へ翻訳する必要があります。痛みを我慢して記録に残さないこと、示談を急ぐこと、後遺障害診断書を確認せずに提出することは避けるべきです。