交通事故後の骨折が癒合せず偽関節となった場合に、第7級・第8級・第12級のどこで評価されるのか、画像所見、装具必要性、症状固定、損害賠償まで一体で整理します。
病名だけで等級は決まらず、骨の部位・癒合不全の程度・硬性補装具の必要性・症状固定時の機能障害を総合して確認します。
病名だけで等級は決まらず、骨の部位・癒合不全の程度・硬性補装具の必要性・症状固定時の機能障害を総合して確認します。
交通事故で上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨などを骨折した後、十分な治療を経ても骨折部が癒合せず、本来の関節ではない場所が動く状態になることがあります。この状態は一般に偽関節と呼ばれます。
自賠責保険の後遺障害等級表では、上肢では第7級9号と第8級8号、下肢では第7級10号と第8級9号が中心になります。さらに、骨端部の癒合不全、単独骨の癒合不全、不正癒合や変形では、第12級8号の長管骨変形として評価される可能性があります。
最初に、偽関節で後遺障害等級が問題になるときの大枠を比較します。表の左側ほど重い類型で、中央の等級と右側の実務上の中心論点を見比べると、単に「骨がついていない」だけでなく、保持性や支持性がどこまで失われているかを確認する重要性が分かります。
| 整理の層 | 主な等級 | 典型的な評価 | 中心論点 |
|---|---|---|---|
| 重い偽関節 | 上肢 第7級9号 下肢 第7級10号 | 偽関節を残し、著しい運動障害を残す | 常に硬性補装具を必要とするほど、保持性や支持性が失われているか。 |
| 中間的な偽関節 | 上肢 第8級8号 下肢 第8級9号 | 偽関節を残す | 癒合不全部位、両骨か単骨か、補装具の使用場面、異常可動性。 |
| 変形障害としての評価 | 第12級8号 | 長管骨に変形を残す | 骨端部の癒合不全、単独骨の癒合不全、外部から想見できる変形、回旋変形。 |
等級判断で特に重要になる確認事項は、次の4つです。どれか一つだけで結論を出すのではなく、画像、診断書、装具資料、日常生活や職業生活への影響をつなげて読む必要があります。
X線やCTで、骨折部の癒合不全、骨欠損、架橋骨の不足、内固定材の状態を確認します。
事故直後の骨折、手術、治療経過、症状固定時の状態が医学的に連続しているかを整理します。
異常可動性、疼痛、支持性低下、把持障害、歩行障害などが残っているかを確認します。
第7級では、常に硬性補装具を必要とするほどの著しい運動障害があるかが大きな分岐です。
第7級と第8級は偽関節そのもの、第12級は長管骨変形として問題になる場面を整理します。
等級表の文言だけを見ると、上肢と下肢で似た構造になっています。違いは、対象となる骨、骨幹部等か骨端部か、常時の硬性補装具が必要か、歩行や把持などの実用機能にどの程度影響しているかです。
次の比較表は、偽関節でよく問題になる等級、自賠責保険金額、労働能力喪失率表の数値を並べたものです。金額は自賠責の支払限度額であり、示談や裁判での最終的な損害賠償額そのものではない点を読み取ってください。
| 等級 | 上肢 | 下肢 | 自賠責保険金額 | 労働能力喪失率表の数値 |
|---|---|---|---|---|
| 第7級 | 9号。一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの。 | 10号。一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの。 | 1,051万円 | 56パーセント |
| 第8級 | 8号。一上肢に偽関節を残すもの。 | 9号。一下肢に偽関節を残すもの。 | 819万円 | 45パーセント |
| 第12級 | 8号。長管骨に変形を残すもの。 | 8号。長管骨に変形を残すもの。 | 224万円 | 14パーセント |
労働能力喪失率表の数値は、損害算定の出発点として参照されます。横棒グラフでは第7級、第8級、第12級の差を割合で示し、等級が一つ変わるだけで逸失利益の前提が大きく変わることを確認できます。
第7級と第8級の違いは、偽関節が残ることに加えて、常に硬性補装具を必要とするほどの著しい運動障害があるかにあります。第12級8号は、医学的には癒合不全があっても、等級表上は長管骨変形として扱われる場面で問題になります。
治療途中の癒合遅延、最終的な癒合不全、形が悪くくっついた状態を分けて理解します。
偽関節とは、骨折部の骨片間で本来進むはずの骨癒合が停止し、関節ではない場所に異常な動きが残る状態をいいます。医学的には nonunion と呼ばれ、米国FDAの定義として、骨折後少なくとも9か月が経過し、直近3か月に治癒の進行がない場合という考え方が広く参照されています。
ただし、この9か月と3か月は絶対的な線引きではありません。骨の部位、骨折型、治療内容、感染の有無、患者側の状態によって判断は変わります。事故後数週間から数か月の段階で「骨がまだついていない」と言われても、それだけで後遺障害としての偽関節が確定するとは限りません。
次の一覧は、偽関節、遷延癒合、不正癒合、骨端部の癒合不全を比較したものです。似た言葉でも後遺障害等級での扱いが変わるため、診断名だけでなく、どの状態を示しているのかを読み分けることが重要です。
癒合機転が止まり、骨折部に異常可動性が残る状態です。等級上は骨幹部等の癒合不全と装具必要性が大きな論点になります。
通常より癒合が遅れているものの、まだ癒合が進む可能性がある状態です。再手術や骨移植などで改善が期待できる段階では症状固定を慎重に考えます。
骨は一応くっついたものの、曲がり、ねじれ、短縮などが残った状態です。長管骨変形として第12級8号などが問題になることがあります。
関節に近い端の部分の癒合不全は、第7級や第8級の中心類型ではなく、第12級8号として扱われる可能性があります。
上肢・下肢の偽関節等級では、骨幹部または骨幹端部の癒合不全が中心になります。骨端部、つまり関節に近い端の部分の癒合不全は、医学的に重大であっても、制度上は長管骨変形として検討される可能性があります。
そのため、後遺障害診断書や医師意見書では、骨折部位が関節内、骨端部、骨幹端部、骨幹部のどこなのかを明確にする必要があります。CTは、単純X線では分かりにくい骨癒合の有無や位置関係を把握するうえで役立ちます。
後遺症と後遺障害は同じではなく、医学的確認、事故との因果関係、等級表への該当性が必要です。
日常語では、事故後に残った痛み、しびれ、動かしにくさ、変形を後遺症と呼びます。一方、自賠責保険や交通事故賠償でいう後遺障害は、事故による傷害が治ったときに残った精神的または肉体的な毀損状態で、事故との相当因果関係があり、医学的に認められ、等級表に該当するものを指します。
後遺障害として認定されるには、次の要件を順に確認します。判断の流れでは、上から下へ進むほど、事故による受傷から症状固定時の障害、等級表への該当性へと焦点が移ります。どこで資料が不足しているかを見つけることが、偽関節の申請準備で重要です。
事故直後の診断書、画像、救急搬送記録などで骨折を確認します。
手術、リハビリ、装具、感染治療などの経過を時系列で整理します。
これ以上大きな改善が見込みにくい時点の画像、疼痛、異常可動性、機能障害を確認します。
癒合不全が事故による骨折から連続しているか、既往症や感染などの影響も検討します。
第7級、第8級、第12級など、制度上の類型に当てはまるかを確認します。
自賠責保険に請求があると、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所などが、保険会社から送付された請求書類をもとに調査します。主治医は、傷病名、症状固定日、自覚症状、他覚所見、検査結果、可動域、画像所見、補装具の必要性などを医学的に記載しますが、等級該当性は自賠責側で審査されます。
偽関節では、単に「右脛骨骨折後」や「疼痛残存」と書かれるだけでは足りないことがあります。どの骨のどの部位に癒合不全があるのか、異常可動性があるのか、硬性補装具を必要とするのか、CTやX線で何が確認できるのかが重要です。
自賠責の支払基準では、後遺障害による損害は逸失利益と慰謝料等とされ、等級認定は原則として労災保険の障害等級認定基準に準じて行うとされています。そのため、偽関節の細かな解釈では、厚生労働省の労災系基準が実務上重要な参照資料になります。
もっとも、自賠責と労災は制度目的、審査方法、提出資料、認定機関が異なるため、同じ結果になるとは限りません。通勤災害や業務中事故で双方が関係する場合は、両制度の資料と認定結果を相互に確認する必要があります。
上腕骨、橈骨、尺骨のどこに癒合不全が残るかで、第7級9号、第8級8号、第12級8号の検討が変わります。
上肢の偽関節で中心になる骨は、上腕骨、橈骨、尺骨です。上腕骨は肩から肘までの長い骨、橈骨と尺骨は前腕を構成する2本の骨で、親指側が橈骨、小指側が尺骨です。肩関節、肘関節、手関節の可動域制限、前腕の回内・回外制限、手指障害、神経障害が併存することもあります。
次の比較表は、上肢の偽関節で問題になる等級を、対象部位と硬性補装具の必要性で整理したものです。第7級は常時の硬性補装具、第8級は癒合不全の部位や補装具の使用場面、第12級は骨端部や単独骨の扱いを読み取ってください。
| 等級 | 対象になりやすい状態 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 第7級9号 | 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの。橈骨および尺骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの。 | 常に硬性補装具を必要とするほど、保持性や支持性が失われているか。 |
| 第8級8号 | 上腕骨または橈骨・尺骨両方の骨幹部等に癒合不全が残るが、常時の硬性補装具までは必要としないもの。橈骨または尺骨の片方で、時々硬性補装具を必要とするもの。 | 単骨か両骨か、硬性補装具をどの場面で必要とするか。 |
| 第12級8号 | 上腕骨、橈骨、尺骨の骨端部の癒合不全、硬性補装具を必要としない単独骨の癒合不全、外部から想見できる15度以上の屈曲変形、一定以上の回旋変形など。 | 偽関節という病名ではなく、長管骨変形として評価される可能性。 |
第7級9号の著しい運動障害は、単に動かすと痛いという意味ではありません。長管骨としての保持性や支持性が失われ、常に硬性補装具が必要になる程度を指します。硬い装具の処方記録、装具を常時使用している診療録やリハビリ記録、装具がないと疼痛や動揺が増える医師所見が重要です。
橈骨または尺骨の片方だけの癒合不全では、常に第8級になるわけではありません。もう一方の骨が支持性を保つため、時々硬性補装具を必要とするかが分岐になり、硬性補装具を必要としない場合には第12級8号として検討される可能性があります。
上肢では、握る、持ち上げる、支える、肘や手関節を使う、利き腕で工具やパソコンを扱うなど、日常動作と職業動作への具体的影響も整理します。関節機能障害や神経症状が併存する場合は、同じ骨折から通常派生する障害か、別系列の障害かを確認します。
大腿骨、脛骨、腓骨では、歩行・荷重・転倒リスクと硬性補装具の必要性が重要です。
下肢の偽関節で中心になる骨は、大腿骨、脛骨、腓骨です。大腿骨は股関節から膝まで、脛骨はすねの内側で体重支持に重要な骨、腓骨はすねの外側で足関節周辺の安定性などに関与する骨です。バイク事故、歩行者事故、自転車事故、高エネルギー外傷では、開放骨折、粉砕骨折、骨欠損、感染、軟部組織損傷を伴うことがあります。
次の比較表は、下肢の偽関節で問題になる等級を、対象部位と歩行・荷重への影響で整理したものです。大腿骨や脛骨は体重支持に直結し、腓骨単独は第12級8号や足関節機能障害との関係が検討されやすい点を確認してください。
| 等級 | 対象になりやすい状態 | 実務上の確認事項 |
|---|---|---|
| 第7級10号 | 大腿骨の骨幹部または骨幹端部、脛骨および腓骨の両方の骨幹部または骨幹端部、脛骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残すもの。 | 常に硬性補装具を必要とし、装具なしでは下肢の支持性が保ちにくいか。 |
| 第8級9号 | 大腿骨、脛骨および腓骨、または脛骨の骨幹部等に癒合不全を残すが、常時の硬性補装具までは必要としないもの。 | 第7級との違いとして、常時必要性、歩行能力、疼痛、荷重制限を確認します。 |
| 第12級8号 | 大腿骨または脛骨の骨端部の癒合不全、腓骨の骨幹部等の癒合不全、外部から想見できる15度以上の屈曲変形、腓骨のみでも著しい変形など。 | 腓骨単独では、足関節不安定性や足関節可動域制限が併存するかも確認します。 |
下肢では、歩行、立位、階段昇降、荷重、転倒リスクが直接問題になります。次の一覧は、後遺障害申請で重要になりやすい証拠を、医学資料、装具資料、生活機能の3方向で整理したものです。どの資料が不足しているかを確認すると、診断書や意見書で補うべき点が見えます。
CT、X線、骨欠損、内固定材の状態、手術記録、感染性偽関節を示す検査結果を整理します。
医学資料長下肢装具、短下肢装具、膝装具、免荷装具などの処方、適合記録、使用場面を示します。
装具第7級の分岐装具なし歩行での疼痛、動揺性、転倒リスク、杖や歩行器が必要な理由、リハビリ記録を確認します。
生活機能「装具を使っている」だけでは十分ではありません。なぜ必要なのか、医師が必要と判断しているのか、どの場面で必要なのか、装具なしではどのような危険や制限があるのかを診療録と後遺障害診断書に反映させることが重要です。
X線・CTなどの画像だけでなく、異常可動性、疼痛、装具なしの不安定性、日常動作への影響をあわせて整理します。
偽関節の立証では、X線とCTが中心になります。画像比較で骨折部に持続する隙間があること、数か月にわたり骨癒合の進行がないこと、通常なら癒合してよい期間に不十分な癒合であることなどを確認します。
次の時系列は、事故直後から症状固定時までに確保したい画像・医学資料を順番に示したものです。時期ごとの画像を比較できると、癒合不全が治療経過の途中でどう推移したかを説明しやすくなります。
X線、CT、救急搬送記録、開放骨折、粉砕骨折、骨欠損、血管神経損傷の有無を確認します。
プレート、髄内釘、スクリュー、骨移植などの内容、術後の骨片位置、内固定材の状態を整理します。
経時的なX線で、仮骨形成、骨折線、骨欠損、内固定材の緩みや折損、荷重制限の経過を確認します。
症状固定前後のX線やCTで、架橋骨の不足、骨端部か骨幹端部か、装具必要性と機能障害を結び付けます。
画像だけでなく、骨折部の荷重時痛、歩行時痛、骨折部の動き、感染兆候、神経血管状態、軟部組織の状態も重要です。上肢では把持、挙上、肘屈伸、回内回外、手関節機能への影響、下肢では歩行、階段、片脚立位、しゃがみ込み、長距離移動への影響を確認します。
医学的なリスク因子も、因果関係の検討で問題になることがあります。次の一覧は、偽関節が生じやすい背景と、交通事故実務で争点化されやすい見方をまとめたものです。リスク因子があることと、事故による骨折が主要な契機であることは別問題である点を読み取ってください。
自動車衝突、歩行者事故、バイク事故などでは、血流障害、骨欠損、軟部組織損傷を伴いやすくなります。
感染性偽関節では、炎症反応、培養結果、抗菌薬治療、再手術歴、瘻孔や排膿の有無が重要です。
保険会社側が因果関係や寄与度を争う材料にすることがあります。事故前の状態と事故後の画像推移を時系列で整理します。
治療経過が不安定な場合、症状固定時期や後遺障害申請の適切なタイミングが問題になります。
痛みの訴えは重要ですが、偽関節の等級では、痛みだけでなく、骨折部の保持性、支持性、画像上の癒合不全、補装具必要性が中核になります。
治療で改善が見込める段階と、障害像が安定して申請を検討する段階を分けます。
症状固定とは、一般に、医学上相当な治療を行っても、これ以上大きな改善が見込みにくい状態をいいます。偽関節では、治療期間が長く、再手術や感染治療の有無によって、申請時期が大きく変わります。
次の比較表は、まだ症状固定としにくい場面と、症状固定を検討する段階を分けたものです。左側は治療継続により障害像が変わる可能性がある場面、右側は残った障害を後遺障害として整理し始める場面として読んでください。
| まだ症状固定としにくい場面 | 症状固定を検討する段階 |
|---|---|
| 骨移植、再固定、髄内釘交換、プレート再固定などの再手術が予定されている。 | 長期間の治療にもかかわらず、画像上の骨癒合進行が止まっている。 |
| 感染治療が継続中である。 | 主治医が、追加治療による大幅な改善は見込みにくいと判断している。 |
| 骨癒合を促す治療により、今後の改善が期待されている。 | 再手術の適応が乏しい、または全身状態や感染リスクなどから実施困難である。 |
| 内固定材料の抜去により可動域や疼痛が変わる可能性が高い。 | 装具使用を前提に生活する状態が固定化している。 |
| 荷重制限や装具療法の途中で、機能評価が安定していない。 | 痛み、歩行障害、把持障害、変形が安定している。 |
骨折部に金属釘や固定材料を用いたことが機能障害の原因となる場合、その除去を待って等級認定を行う考え方があります。固定材料そのものが痛みや可動域制限の主因で、抜釘により改善が見込まれる場合は、症状固定時期を慎重に検討する必要があります。
偽関節の後遺障害申請では、傷病名、画像所見、装具必要性、日常生活・職業生活への影響が不足しやすくなります。次の一覧は、診断書や補足資料で具体化したい項目を示しています。どの骨のどの部位か、どの資料で示すかを確認することが重要です。
右脛骨骨幹部開放骨折後癒合不全、左大腿骨骨幹部骨折後偽関節、左橈骨尺骨骨幹部骨折後癒合不全など、骨と部位を具体化します。
診断名骨折線、骨欠損、仮骨形成、架橋骨の欠如、内固定材の緩み、感染所見、癒合進行が止まった期間を記載します。
X線・CT装具の名称、処方日、常時使用か屋外使用か、装具を外すと生じる危険や機能障害、医師の必要性判断を整理します。
硬性補装具等級分岐立ち仕事、重量物、階段、通勤、利き腕での操作、工具使用、パソコン作業、配置転換や減収を別紙資料で補います。
損害算定事前認定は、通常、加害者側の任意保険会社が後遺障害診断書などを取りまとめ、自賠責側へ等級認定を求める手続です。事務負担は軽くなりますが、提出資料を被害者側で十分にコントロールしにくいことがあります。
被害者請求は、被害者が加害者の自賠責保険会社に直接請求する方法です。画像、診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書、手術記録、医師意見書、装具資料などを被害者側で整理して提出できます。重い後遺障害が見込まれる場合や、異議申立てを見据える場合には、弁護士と相談して被害者請求を選ぶことがあります。
次のチェックリストは、事故発生から損害算定までに整理したい資料を段階別にまとめたものです。左から順に事故直後、治療経過、症状固定、損害算定へ進むため、抜けている段階を探しながら確認してください。
| 段階 | 主な資料 |
|---|---|
| 事故発生と初期診断 | 交通事故証明書、救急搬送記録、事故直後の診断書、X線・CT、受傷部位、開放骨折、粉砕骨折、骨欠損、血管神経損傷の記録、実況見分調書、刑事記録、ドライブレコーダー映像。 |
| 治療経過 | 入院診療録、手術記録、インプラントの種類、固定方法、術後画像、外来診療録、リハビリ記録、荷重制限、可動域訓練、装具使用の指示、感染、再手術、骨移植、抜釘予定。 |
| 症状固定時資料 | 後遺障害診断書、症状固定時前後のX線・CT、装具処方箋、装具費領収書、装具適合記録、可動域測定、筋力、歩行能力、把持能力、医師意見書、日常生活状況報告書、勤務先資料。 |
| 損害算定資料 | 源泉徴収票、給与明細、課税証明書、確定申告書、休業損害証明書、職務内容を示す資料、将来装具費の見積書、交通費、付添費、医療費領収書、労災給付や障害年金などの給付資料。 |
第7級または第8級が見込まれる重い偽関節、装具の常時必要性が争われそうな場合、骨端部や腓骨単独など分類が難しい場合、労災では認定されたのに自賠責で低い等級になった場合は、資料の出し方そのものが重要になります。
癒合遅延との境界、硬性補装具、骨端部・腓骨単独、同一部位の複数障害、因果関係を整理します。
偽関節の等級認定では、医学的な言葉と等級表上の要件がずれるところで争いが生じやすくなります。次の一覧は、代表的な争点を示しています。どの争点でも、画像、診療録、装具資料、医師意見、事故前後の状態を時系列で示すことが重要です。
治療途中で骨がついていないだけでは足りません。長期間の癒合進行停止と、今後の骨癒合可能性に関する主治医判断が重要です。
第7級では、屋外だけ、長距離だけ、疼痛時だけ、自己判断ではないかといった反論が出る可能性があります。
骨端部の癒合不全は第7級・第8級ではなく、第12級8号として扱われる可能性があるため、画像上の位置関係が不可欠です。
腓骨単独では第12級8号が問題になりやすく、足関節不安定性、可動域制限、疼痛、神経症状の併存も検討します。
偽関節に関節可動域制限、短縮障害、神経症状、醜状障害が併存する場合、単純に全部を併合できるとは限りません。
既往骨折、手術歴、骨髄炎、糖尿病、骨粗鬆症がある場合、事故直前の生活状況と事故後の画像推移を丁寧に整理します。
自賠責の認定結果に不服がある場合、異議申立てを検討します。異議申立てで重要なのは、前回と同じ資料をもう一度出すだけにしないことです。次の一覧は、追加資料の方向性を示しています。どの等級を主張するかによって、必要資料は変わります。
| 追加資料 | 補う論点 |
|---|---|
| 症状固定時CTの追加提出、画像比較表 | 癒合不全の有無、架橋骨の不足、骨幹部等か骨端部か。 |
| 画像所見に関する主治医意見書 | 偽関節か遷延癒合か、今後の治療見込み、事故との連続性。 |
| 装具必要性に関する意見書 | 常時使用か、時々使用か、支持性・保持性を補う目的か。 |
| リハビリ記録、歩行・把持能力の評価 | 実用機能、日常生活、職業生活への影響。 |
| 労災認定資料、勤務先資料 | 別制度での評価、就労制限、減収、配置転換、業務制限。 |
第12級8号とされたが第8級9号を主張するのか、第8級9号とされたが第7級10号を主張するのか、非該当から第12級8号を主張するのかで、集めるべき証拠は異なります。自賠責保険・共済紛争処理機構の調停制度が関係する場面もあります。
等級が変わると、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来装具費、将来治療費、休業損害の検討が変わります。
偽関節の後遺障害等級が第7級、第8級、第12級のどれになるかは、損害賠償額に大きく影響します。自賠責限度額を超える賠償が問題になることも少なくありません。
次の一覧は、偽関節で検討されやすい損害項目をまとめたものです。各項目が何を補償するのか、どの資料が必要になりやすいのかを確認すると、等級認定後の示談交渉で見るべき点が分かります。
後遺障害が残った精神的苦痛に対する賠償です。自賠責基準、任意保険会社内部基準、裁判基準で金額が異なります。
将来の収入減を補償する項目です。職業、年齢、収入、作業内容、実際の就労制限、減収の有無が問題になります。
硬性補装具の作り替え、感染性偽関節、金属材料の緩み、将来の再手術可能性などが争点になります。
治療中の休業、症状固定後の逸失利益、退職や転職と事故との関係を資料で整理します。
逸失利益は、次の一般式で検討されます。この式では、基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間に対応するライプニッツ係数が掛け合わされるため、等級差だけでなく、収入や職業上の支障も重要になります。
偽関節では、立ち仕事、運転、現場作業、介護職、看護職、配送、製造、警備、整備、建設、農業、スポーツ指導、理美容、調理など、身体負荷の大きい職業で減収や職務制限が深刻になりやすいです。デスクワークでも、通勤困難、長時間座位後の疼痛、利き腕障害による入力作業制限などが問題になります。
将来装具費を検討するには、装具の種類、耐用年数、単価、医学的必要性、交換見込みを資料化します。将来治療費は、必要性と相当性の立証が必要で、単に将来手術になる可能性があるという不確実な見通しだけでは評価されにくいことがあります。
医学的判断に介入するのではなく、医学的事実を後遺障害認定と損害賠償の枠組みに沿って整理します。
偽関節は、後遺障害の中でも医学的・法的に専門性が高い分野です。骨折後6か月以上経過しても癒合が進まない、再手術や骨移植、感染治療、抜釘などの方針が定まっていない、保険会社から治療費終了や症状固定を求められているといった場面では、後遺障害申請前に相談を検討する価値があります。
次の一覧は、偽関節案件で関わる専門職と役割を整理したものです。誰が何を判断し、どの資料が後遺障害申請や賠償交渉に役立つのかを読み取ることで、相談先と準備資料を分けやすくなります。
骨折の診断、手術、骨癒合判断、症状固定判断、後遺障害診断書の作成を担います。
X線、CT、MRIなどの撮影を担います。読影所見だけでなく、撮影時期と画像データの確保が重要です。
歩行、荷重、可動域、筋力、ADL、上肢操作能力を継続的に評価します。
治療費、休業損害、後遺障害申請、示談の窓口になりますが、相手方保険会社は被害者の代理人ではありません。
被害者請求、異議申立て、示談交渉、訴訟、損害額算定を担い、医学的所見を等級要件に対応させます。
労災、傷病手当金、障害年金、身体障害者手帳、就労支援、生活再建支援などで関与します。
弁護士の役割は、医師の医学的判断に置き換わることではありません。必要な検査、画像、記載事項を整理し、主治医の判断を尊重しながら、後遺障害診断書と提出資料に医学的事実が漏れなく反映されるよう準備することです。
第7級、第8級、第12級の見通しが立たない場合、既往症や生活習慣を理由に因果関係を争われている場合、事前認定で非該当または低い等級になった場合、自賠責の等級は出たが示談提示額が妥当か分からない場合は、資料を整理したうえで専門家に確認する必要があります。
個別事情で結論が変わるため、一般的な制度説明として確認してください。
一般的には、後遺障害等級上の評価は、骨の種類、部位、癒合不全の程度、硬性補装具の必要性によって変わるとされています。骨端部や腓骨単独の癒合不全などでは、第12級8号が問題になる可能性があります。具体的な見通しは、画像や診断書を整理したうえで弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、一律の月数だけでは決まらず、長期間癒合が進まず、治療による改善が見込みにくい状態かが重要とされています。医学文献では9か月、直近3か月の治癒進行なしという定義が参照されますが、部位や治療経過で判断は変わります。申請時期は主治医の医学的判断を確認する必要があります。
一般的には、金属材料が入っていること自体で直ちに後遺障害等級が決まるわけではないとされています。症状固定時にどのような障害が残っているか、金属材料が機能障害の原因か、除去により改善する可能性があるかによって検討が変わります。具体的には医師の判断と資料確認が必要です。
一般的には、骨癒合が進んでいる場合、偽関節の等級ではなく、関節機能障害、神経症状、変形障害、短縮障害などが問題になる可能性があります。痛みの原因は、画像、神経所見、可動域、診療経過によって判断が変わります。個別の整理は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、このページで中心に扱う上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨など四肢長管骨の偽関節とは、評価類型が異なる可能性があります。鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨の変形は別の等級類型が問題になることがあります。具体的な分類は資料確認が必要です。
一般的には、必ず同じ結果になるとは限らないとされています。自賠責の等級認定は原則として労災の障害等級認定基準に準じるとされますが、制度目的、審査方法、提出資料が異なります。労災認定資料は有力資料になり得ますが、自賠責用に画像と診断書を整理する必要があります。
一般的には、後遺障害が残る可能性がある段階で後遺障害分を含めずに示談すると、後から追加請求が難しくなる可能性があります。偽関節が疑われる場合は、症状固定、後遺障害診断書、等級認定、損害算定を確認することが重要です。具体的な対応は弁護士等の専門家へ相談する必要があります。
一般的には、弁護士は医師に等級を決めさせる立場ではなく、医学的事実を正確に書類化するために、必要な検査、画像、記載事項を整理する役割とされています。医師の医学的判断を尊重しつつ、後遺障害診断書に必要な事実が反映されているかを確認することが重要です。
制度、医学、損害調査に関する中立的資料を参照しています。