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事業承継計画書の作成手順
法務・税務・労務・M&Aを統合する

事業承継計画書は、後継者名と承継日だけを書く書類ではありません。株式、代表権、契約、許認可、債務、保証、労務、知的財産、親族関係、M&A代替案までを、実行できる工程へ落とし込むための総合計画です。

12 作成手順の段階
3 人・資産・知的資産
年1回 最低限の見直し目安
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事業承継計画書の作成手順 法務・税務・労務・M&Aを統合する

事業承継計画書は、後継者名と承継日だけを書く書類ではありません。

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事業承継計画書の作成手順 法務・税務・労務・M&Aを統合する
事業承継計画書は、後継者名と承継日だけを書く書類ではありません。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 事業承継計画書の作成手順 法務・税務・労務・M&Aを統合する
  • 事業承継計画書は、後継者名と承継日だけを書く書類ではありません。

POINT 1

  • 事業承継計画書の作成手順の全体像
  • 1. 定義と目的を確認:承継対象、作成目的、関係者、守秘範囲を決めます。
  • 2. 現状を見える化:会社、株式、契約、許認可、債務、労務、知財を棚卸しします。
  • 3. 承継類型を比較:親族内承継、従業員承継、第三者承継・M&Aを比較します。
  • 4. 株式・税務・契約を設計:移転方法、納税資金、保証、登記、許認可、契約承継を整理します。
  • 5. 承認・実行・見直し:工程表で実行し、年1回または重要イベント時に改訂します。

POINT 2

  • 事業承継計画書とは何か ― 特例承継計画との違い
  • 制度上の提出書類と、会社独自の実務計画を分けて理解します。
  • 事業承継計画書と特例承継計画は、目的も提出先も異なります。

POINT 3

  • 事業承継計画書の作成手順を12段階で整理する
  • いきなり様式に記入せず、現状把握から実行管理まで分解します。
  • 事業承継計画書の作成手順は、12段階に分けると管理しやすくなります。
  • 成果物の有無は、後から専門家や金融機関が検証できる状態かどうかを判断するうえで重要です。
  • 読者は、単に書類名を確認するのではなく、各段階が次の手続の前提資料になることを読み取ってください。

POINT 4

  • 事業承継計画書の作成手順0・1 ― プロジェクト化と承継目的
  • 最初に誰が何を決めるか、何を残し何を変えるかを明文化します。
  • 最初に、事業承継計画書の作成をプロジェクトとして位置づけ、関与者と決定権限を明確にします。
  • 誰に何を確認するかを早期に分けることは、後から「聞いていない」「決める権限がない」といった混乱を避けるために重要です。
  • 読者は、承継意思だけでなく、保証、株主、親族、取引先、専門家まで確認範囲に含める点を読み取ってください。

POINT 5

  • 事業承継計画書の作成手順2・3 ― 見える化と磨き上げ
  • 株主名簿の不備
  • 名簿上の株主と実際の株主が一致しない場合、譲渡承認や株主総会運営の前提が崩れます。
  • 株式の共有・分散
  • 過去の相続で共有状態になっている株式や分散した株式は、後継者への支配権集中を難しくします。

POINT 6

  • 事業承継計画書の作成手順4・5 ― 承継類型と後継者育成
  • 1. 現場理解と主要顧客訪問:事業の現場、顧客、仕入先、従業員との関係を把握します。
  • 2. 財務と金融機関対応:月次資料、資金繰り、借入、保証、銀行説明に参加します。
  • 3. 部門責任と人材管理:部門責任、採用、評価、労務対応を経験します。
  • 4. 取締役就任と重要意思決定:取締役会、投資判断、契約判断、リスク判断に関与します。
  • 5. 代表権移転と株式移転:代表権、株式、保証、主要取引先説明を一体で実行します。

POINT 7

  • 事業承継計画書の作成手順6 ― 株式・資産・債務・保証の設計
  • 遺留分侵害額請求
  • 後継者が自社株式を承継した後、非後継者から金銭請求を受けると、資金繰りや株式保有に影響し得ます。
  • 民法特例の限界

POINT 8

  • 事業承継計画書の作成手順7 ― 税務・資金調達の設計
  • 納税猶予、株式買取資金、退職金、保証、設備投資まで同時に見ます。
  • 法人版事業承継税制は、一定の要件の下で非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予・免除を認める制度です。
  • ただし、単純に税金が完全になくなる制度と理解してはいけません。
  • 要件違反、株式譲渡、廃業、報告義務違反などにより、猶予税額の納付が問題となる場合があります。

まとめ

  • 事業承継計画書の作成手順 法務・税務・労務・M&Aを統合する
  • 事業承継計画書の作成手順の全体像:最初に、計画書を何のために作り、どの順番で検討するかを整理します。
  • 事業承継計画書とは何か ― 特例承継計画との違い:制度上の提出書類と、会社独自の実務計画を分けて理解します。
  • 事業承継計画書の作成手順を12段階で整理する:いきなり様式に記入せず、現状把握から実行管理まで分解します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

事業承継計画書の作成手順の全体像

最初に、計画書を何のために作り、どの順番で検討するかを整理します。

事業承継計画書の作成手順は、経営者、後継者候補、親族、法務・総務・経理担当者、金融機関、支援機関が同じ前提で議論するための道筋です。内容は一般読者にも分かるように整理しつつ、企業法務、税務、会計、労務、登記、M&A、ガバナンスの各担当者が横断的に確認できる水準で作る必要があります。

結論として、事業承継計画書は「後継者の名前と承継日を書くだけの書類」ではありません。事業、株式、代表権、役員権限、契約、許認可、債務、保証、担保、労務、知的財産、税務、親族関係、取引先関係、M&A代替案、承継後の成長戦略を、時系列の実行計画として統合する文書です。

中小企業庁の整理では、事業承継は「人(経営)」「資産」「知的資産」の三要素を引き継ぐものとされています。この3つの要素を分けて見せることは、株式移転や相続税対策だけに議論が偏ることを防ぐために重要です。読者は、下の重要ポイントから、計画書が単なる提出書類ではなく合意形成と実行管理の道具であることを読み取ってください。

事業承継計画書は合意形成と実行管理の道具です

現経営者の想い、後継者の意思、親族の納得、従業員の安心、取引先の信頼、金融機関の協力、税務・法務上の適正性を同じ工程表に載せることで、承継の実行可能性を高めます。

このページで扱う作成手順は、定義を理解し、資料を集め、会社と事業を見える化し、承継類型を比較し、後継者・時期・方法・資金・関係者説明を設計し、最後に承認・実行・見直しへ進む順番です。下の判断の流れは、どの順番で検討を進めるかを示すためのものです。前の段階が曖昧なまま次に進むと、株式、保証、契約、親族説明のいずれかで手戻りが起きやすい点を読み取ってください。

事業承継計画書の基本的な実行順

定義と目的を確認

承継対象、作成目的、関係者、守秘範囲を決めます。

現状を見える化

会社、株式、契約、許認可、債務、労務、知財を棚卸しします。

承継類型を比較

親族内承継、従業員承継、第三者承継・M&Aを比較します。

株式・税務・契約を設計

移転方法、納税資金、保証、登記、許認可、契約承継を整理します。

承認・実行・見直し

工程表で実行し、年1回または重要イベント時に改訂します。

Section 01

事業承継計画書とは何か ― 特例承継計画との違い

制度上の提出書類と、会社独自の実務計画を分けて理解します。

事業承継計画書とは、現経営者から後継者または第三者へ事業を引き継ぐために、承継対象、承継時期、承継方法、実行責任者、必要な法務・税務・会計・労務・金融手続、関係者説明、リスク対応、承継後の経営方針を整理した計画文書です。

ここでいう事業には、店舗、工場、商品、サービス、営業権、顧客リスト、取引先関係、従業員、技能、ブランド、許認可、契約、ノウハウ、資金繰り、借入、保証、経営理念が含まれます。会社形態では株式と代表権の承継が中心になり、個人事業主では事業用資産、契約、屋号、許認可、従業員、取引関係を個別に検討する必要があります。

事業承継計画書と特例承継計画は、目的も提出先も異なります。次の比較表は、両者を混同しないためのものです。制度上の提出書類だけでは契約、許認可、従業員説明、保証解除、親族間紛争、M&A代替案まで管理しにくいため、読者は「どちらを上位の実務計画として扱うべきか」を読み取ってください。

項目事業承継計画書特例承継計画
主な目的経営・法務・税務・労務・資金繰りを含む承継全体の設計法人版事業承継税制の特例適用に向けた制度上の提出書類
作成者会社、現経営者、後継者、支援専門家会社。認定経営革新等支援機関の指導・助言が必要
提出先原則として社内、金融機関、専門家、関係者都道府県庁
内容会社概要、経営課題、株式、資産、後継者、承継方法、税務、資金、労務、契約、リスク、工程表後継者、承継予定時期、承継時までの経営見通し、承継後の事業計画など
注意点実行可能性、関係者合意、更新管理が重要提出期限、認定要件、年次報告、継続届出などの制度要件が重要

特例承継計画は重要ですが、それだけでは契約、許認可、従業員説明、経営者保証解除、親族間紛争、M&A代替案、承継後の事業再構築まで十分に管理できません。事業承継計画書を上位の実務計画として作成し、必要に応じて特例承継計画、遺言、株式譲渡契約、贈与契約、株主間契約、取締役会議事録、株主総会議事録、登記申請書、金融機関説明資料へ展開するのが合理的です。

Section 02

事業承継計画書の作成手順を12段階で整理する

いきなり様式に記入せず、現状把握から実行管理まで分解します。

事業承継計画書の作成手順は、12段階に分けると管理しやすくなります。次の一覧は、各段階で何を決め、どの成果物を残すかを示しています。成果物の有無は、後から専門家や金融機関が検証できる状態かどうかを判断するうえで重要です。読者は、単に書類名を確認するのではなく、各段階が次の手続の前提資料になることを読み取ってください。

手順作業名主な成果物
0プロジェクト化作成方針、守秘範囲、関係者一覧、スケジュール
1経営理念・承継目的の整理承継目的メモ、創業史、経営理念、現経営者の意向書
2現状把握・見える化会社概要、財務分析、株主名簿、契約一覧、許認可一覧、リスク一覧
3事業の磨き上げ経営改善計画、不要資産整理、組織改善、内部統制改善
4承継類型の選択親族内承継、従業員承継、M&Aなどの比較表
5後継者の選定・育成後継者候補評価表、育成計画、権限移譲計画
6株式・資産・債務・保証の設計株式移転計画、相続・贈与・売買方針、保証解除方針
7税務・資金調達の設計株価評価、納税資金計画、事業承継税制検討メモ、融資・保証方針
8法務・登記・契約・許認可の設計必要決議一覧、契約承継表、許認可手続表、登記手続表
9労務・知財・個人情報・コンプライアンスの設計従業員説明計画、知財一覧、情報管理計画、社内規程改訂案
10計画書本文の作成事業承継計画書ドラフト、工程表、リスク対応表
11承認・実行・モニタリング取締役会・株主総会資料、実行管理表、改訂履歴

この12段階は、計画書の見栄えを整えるためではなく、関係者の意識を共有するための順番です。計画書が整っていても、後継者が納得していない、金融機関が保証解除に応じない、主要取引先が代表者交代を不安視している、親族が株式移転に反対している状態では、承継は失敗し得ます。

Section 03

事業承継計画書の作成手順0・1 ― プロジェクト化と承継目的

最初に誰が何を決めるか、何を残し何を変えるかを明文化します。

事業承継は、経営者の個人的問題であると同時に、会社の存続、雇用、取引、地域経済、金融機関の回収可能性、相続紛争に関わる組織的問題です。最初に、事業承継計画書の作成をプロジェクトとして位置づけ、関与者と決定権限を明確にします。

次の一覧は、関係者ごとに確認すべき事項を整理したものです。誰に何を確認するかを早期に分けることは、後から「聞いていない」「決める権限がない」といった混乱を避けるために重要です。読者は、承継意思だけでなく、保証、株主、親族、取引先、専門家まで確認範囲に含める点を読み取ってください。

関係者確認すべき事項
現経営者承継意思、引退時期、引退後の役割、個人保証、個人資産、親族関係
後継者候補承継意思、能力、資金力、家族の理解、経営理念への理解
株主株式保有状況、譲渡意思、相続予定、所在不明株主の有無
役員代表権移転、取締役会構成、監査役・社外役員の役割
親族遺留分、相続財産、非後継者への配慮、家族会議の要否
金融機関借入条件、担保、保証、コベナンツ、代表者変更時の対応
従業員主要人材、退職リスク、労働条件、説明時期
取引先主要契約、属人的取引、信用不安防止、通知・承諾条項
専門家弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、社労士、弁理士、中小企業診断士、M&Aアドバイザーなど

事業承継では、情報管理を誤ると親族紛争、従業員の動揺、取引先の信用不安、金融機関の警戒、競合への情報流出が起こり得ます。次の一覧は、情報の機微度と開示対象を分けるためのものです。読者は、同じ承継情報でも、株価評価やM&A候補と従業員説明情報では開示時期と範囲が違う点を読み取ってください。

情報層開示対象
極秘情報株価評価、相続財産、M&A候補、役員交代案現経営者、後継者、限定された専門家
限定共有情報承継時期案、金融機関交渉、組織再編案役員、主要管理職、金融機関など
社内説明情報後継者就任方針、組織体制、従業員への影響従業員
対外説明情報代表者変更、事業継続方針、取引継続依頼取引先、行政、許認可庁など

承継目的は、単なる株式移転の作業表にしないための軸です。次の一覧は、計画書に記載すべき理念・目的の項目を示します。何を守り、何を変えるかを先に言語化することで、二重権力、従業員の不安、親族の感情的対立を減らしやすくなります。

項目記載する内容
創業の背景なぜこの事業を始めたのか
事業の使命顧客、地域、従業員にどの価値を提供しているのか
競争優位技術、品質、納期、顧客対応、ブランド、許認可、地域密着性
守るべきもの主要取引先、雇用、品質基準、社風、信用、地域貢献
変えるべきもの属人的営業、古い会計処理、過剰在庫、低収益取引、紙中心業務
承継目的親族内承継、従業員承継、第三者承継、M&A、再生型承継のいずれか
引退後の関与会長、相談役、顧問、完全引退、一定期間の引継ぎ支援
Section 04

事業承継計画書の作成手順2・3 ― 見える化と磨き上げ

会社の価値・リスク・依存関係を第三者が検証できる状態にします。

見える化とは、単に決算書を並べることではありません。会社の価値、リスク、依存関係、承継障害を第三者が検証できる状態にすることです。弁護士は契約・紛争・ガバナンスを、税理士は株価・相続税贈与税・組織再編税制を、公認会計士は財務諸表・内部統制・不正リスクを、司法書士は登記・株主名簿・定款を、社労士は労働条件・未払残業・退職金を確認します。

次の資料一覧は、現状把握で集めるべき情報を分野別に示します。資料が欠けると、株式移転、金融機関交渉、M&A、許認可、労務説明のどこかで判断が止まります。読者は、決算書だけでなく契約、許認可、知財、IT、紛争まで棚卸し対象になる点を読み取ってください。

分野資料
会社基本定款、登記事項証明書、株主名簿、役員名簿、組織図、規程集
株式・資本株式発行履歴、譲渡制限規定、種類株式、株券発行有無、新株予約権、自己株式
会計・税務直近3〜5期の決算書、勘定科目内訳明細、税務申告書、固定資産台帳、試算表
借入・担保借入契約、保証契約、担保設定契約、返済予定表、金融機関別残高、コベナンツ
契約主要取引基本契約、賃貸借契約、代理店契約、業務委託契約、ライセンス契約、リース契約
許認可許可証、認可証、届出控え、更新期限、名義変更・承継手続の要否
労務雇用契約書、就業規則、賃金台帳、労使協定、退職金規程、社会保険加入状況
知財商標、特許、意匠、著作物、営業秘密、ノウハウ、ドメイン、SNSアカウント
不動産登記簿、賃貸借契約、担保設定、土壌汚染・境界・越境・未登記建物の有無
IT・個人情報システム契約、クラウド契約、個人情報台帳、委託先一覧、セキュリティ規程
紛争・リスク訴訟、クレーム、行政指導、労務紛争、知財紛争、税務調査、反社チェック

株主名簿と定款は、事業承継で最優先に確認すべき資料です。次の注意点は、後から発覚すると代表者交代やM&Aの直前で支障になりやすいものです。読者は、株式の分散や名義の不一致が、経営権の安定に直接影響することを読み取ってください。

株主名簿の不備

名簿上の株主と実際の株主が一致しない場合、譲渡承認や株主総会運営の前提が崩れます。

株式の共有・分散

過去の相続で共有状態になっている株式や分散した株式は、後継者への支配権集中を難しくします。

定款規定の未確認

譲渡制限、承認機関、株券発行会社か否か、種類株式、相続人売渡請求規定の有無を確認します。

磨き上げは、「誰に渡すか」より先に「何を渡せる状態にするか」を検討する段階です。次の比較表は、売上や利益だけでなく、法務、労務、税務、IT、ガバナンスの改善対象を示します。読者は、承継前の改善が後継者の心理的負担、金融機関・取引先の信頼、M&A時の評価に関わる点を読み取ってください。

領域問題例改善策
営業社長個人の人脈に売上が依存顧客情報の共有、営業担当の複線化、CRM導入
財務月次試算表が遅い、原価が見えない月次決算、部門別損益、資金繰り表の整備
法務口頭契約が多い、契約書が古い契約書レビュー、契約管理台帳、更新期限管理
労務未払残業リスク、就業規則未改訂勤怠管理、36協定、就業規則改定、労務監査
知財商標未登録、ノウハウ管理不備商標出願、営業秘密管理規程、アクセス権限管理
税務役員借入金・貸付金が多い返済計画、債権債務整理、税務影響の検討
IT社長だけがパスワードを管理管理者権限整理、情報セキュリティ規程、バックアップ
ガバナンス取締役会・株主総会議事録がない議事録整備、決裁規程、権限規程、内部統制整備
Section 05

事業承継計画書の作成手順4・5 ― 承継類型と後継者育成

親族内承継、従業員承継、第三者承継・M&Aを比較し、後継者を育てます。

承継類型は感情だけで決めるべきではありません。経営能力、株式取得可能性、相続紛争リスク、金融機関対応、従業員維持、取引先維持、許認可承継、税務負担、実行期間を比較します。次の比較表は、主要な3類型の特徴を示します。読者は、第一候補だけでなく、後継者が辞退した場合の代替案も計画書に入れる必要があることを読み取ってください。

類型概要主な利点主なリスク
親族内承継子、配偶者、兄弟姉妹、親族に承継経営理念の継承、親族内での連続性、従業員の納得を得やすい場合がある後継者能力、非後継者との相続紛争、株式・財産の偏り
従業員承継役員、幹部、従業員に承継事業理解が深く、取引先・従業員の信頼を維持しやすい株式買取資金、個人保証、親族株主の同意
第三者承継・M&A外部企業・個人へ承継後継者不在でも事業継続可能で、譲渡対価を得られる可能性がある価格・条件交渉、従業員雇用、取引先継続、情報漏えい、買手リスク

後継者選定は、経営者が心の中で決めるだけでは足りません。次の一覧は、後継者候補について確認すべき能力と確認方法を示します。読者は、血縁や社歴だけでなく、財務、顧客、人材、法務、変革、資金・保証対応を含めて評価する点を読み取ってください。

能力確認方法
経営理念の理解現経営者との対話、経営方針書の作成
財務理解月次試算表、資金繰り表、銀行対応への参加
営業・顧客対応主要顧客訪問、価格交渉、クレーム対応
人材管理幹部面談、採用、評価、労務問題対応
法務・リスク感度契約、許認可、労務、個人情報、コンプライアンス研修
変革力新規事業、DX、事業再構築、設備投資計画
資金・保証対応株式取得資金、納税資金、保証引受可能性、金融機関面談

育成計画は会社規模や業種に応じて設計します。次の時系列は、典型的な5年間の権限移譲を示します。順番を明示することは、後継者の経験不足や従業員の不安を減らすために重要です。読者は、代表権移転の直前だけでなく、1年目から顧客、財務、管理、意思決定へ段階的に関与させる点を読み取ってください。

1年目

現場理解と主要顧客訪問

事業の現場、顧客、仕入先、従業員との関係を把握します。

2年目

財務と金融機関対応

月次資料、資金繰り、借入、保証、銀行説明に参加します。

3年目

部門責任と人材管理

部門責任、採用、評価、労務対応を経験します。

4年目

取締役就任と重要意思決定

取締役会、投資判断、契約判断、リスク判断に関与します。

5年目

代表権移転と株式移転

代表権、株式、保証、主要取引先説明を一体で実行します。

Section 06

事業承継計画書の作成手順6 ― 株式・資産・債務・保証の設計

経営権を安定させるため、代表権だけでなく株式と保証を一体で設計します。

株式会社では、事業用資産の多くは会社に属し、会社の支配権は株式を通じて行使されます。代表取締役を交代しても株式が後継者へ移転していなければ、経営権は安定しません。逆に、株式だけを移転しても、後継者が経営能力や取引先信頼を得ていなければ、事業は安定しません。

次の比較表は、株式・事業の移転方法ごとの特徴と注意点を示します。移転方法によって税務、資金、決議、契約、許認可の論点が変わるため、読者は「どの方法が一番安いか」ではなく、承継目的と実行可能性に合うかを読み取ってください。

方法主な特徴注意点
生前贈与承継時期をコントロールしやすい贈与税、特別受益、遺留分、税制要件
相続先代死亡時に移転遺言、遺産分割、遺留分、株式分散リスク
売買対価を明確にできる後継者資金、譲渡所得税、適正価格、金融機関対応
自己株式取得会社が株式を取得分配可能額、みなし配当、財源規制、株主平等原則
種類株式議決権や拒否権を設計可能定款変更、株主同意、複雑化リスク
M&A株式譲渡会社全体を譲渡しやすいDD、表明保証、補償、クロージング条件
事業譲渡事業の一部承継に向く個別契約、許認可、従業員承継が課題

親族内承継では、後継者に株式や事業用資産を集中させると、非後継者の遺留分が問題になることがあります。次の注意点は、株式移転と家族関係を同時に検討するためのものです。読者は、法律上の制度があっても全員合意や資金準備が必要になる点を読み取ってください。

遺留分侵害額請求

後継者が自社株式を承継した後、非後継者から金銭請求を受けると、資金繰りや株式保有に影響し得ます。

民法特例の限界

一定要件の下で除外合意や固定合意を使える場合がありますが、推定相続人全員の合意、経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可が必要です。

経営者保証の残存

後継者保証を求められると承継の心理的負担になり、先代保証が残ると先代の実質関与が続く要因になります。

事業承継計画書には、金融機関別に、保証人、担保、残高、返済予定、解除交渉時期、財務改善条件、後継者保証の要否を記載します。保証解除や保証切替の交渉には時間がかかるため、株式移転や代表者交代と同じ工程表で管理する必要があります。

Section 07

事業承継計画書の作成手順7 ― 税務・資金調達の設計

納税猶予、株式買取資金、退職金、保証、設備投資まで同時に見ます。

法人版事業承継税制は、一定の要件の下で非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予・免除を認める制度です。ただし、単純に税金が完全になくなる制度と理解してはいけません。要件違反、株式譲渡、廃業、報告義務違反などにより、猶予税額の納付が問題となる場合があります。

次の一覧は、事業承継計画書で検討すべき税目・制度を整理したものです。税目ごとに必要資料、評価時点、資金手当、継続要件が異なるため、読者は税制利用の可否だけでなく、制度を使い続ける管理体制まで検討する点を読み取ってください。

税目・制度検討事項
相続税自社株評価、事業用資産、遺産総額、納税資金、遺留分との関係
贈与税生前贈与、暦年課税、相続時精算課税、事業承継税制
所得税株式譲渡所得、役員退職金、個人事業資産譲渡
法人税自己株式取得、組織再編、役員退職金、グループ再編
消費税事業譲渡、資産譲渡、インボイス対応
登録免許税・不動産取得税不動産承継、組織再編、M&A時の不動産移転
地方税事業所税、固定資産税、法人住民税など
国際税務海外子会社、海外居住相続人、クロスボーダー承継

資金調達では、納税資金だけを見ても足りません。次の一覧は、事業承継で資金需要になりやすい項目をまとめたものです。資金の使途、調達先、返済原資、担保、保証、実行時期を分けることが重要で、読者は承継後の設備投資やM&A専門家費用まで見込む必要がある点を読み取ってください。

1

株式・税金の資金

後継者による株式買取資金、相続税・贈与税の納税資金、先代への退職金、非後継者への代償金を整理します。

資金使途
2

金融機関・保証の資金

借入の返済・借換資金、保証解除交渉、担保、金融支援制度の利用可能性を検討します。

保証
3

承継後の成長資金

事業再生の運転資金、設備投資、DX投資、M&A専門家費用、DD費用、登記・許認可費用を見込みます。

成長投資

中小企業経営承継円滑化法による金融支援では、事業承継に際して代表者個人が必要とする資金の融資や、会社・個人事業主向けの信用保証枠が用意されています。計画書では、必要資金、調達先、返済原資、担保、保証、実行時期を具体的に記載します。

Section 09

事業承継計画書の作成手順9 ― 労務・知財・個人情報・コンプライアンス

従業員への説明、主要人材維持、知的財産と情報管理を設計します。

事業承継は、従業員にとって雇用、処遇、上司、評価、将来性に関わる重大事項です。説明が遅すぎると不信感が生じ、早すぎると混乱します。計画書には、従業員説明の時期、対象者、説明内容、想定質問、労働条件変更の有無を記載します。

次の一覧は、説明対象ごとの内容を整理したものです。対象者ごとに知りたい情報が違うため、説明順序と内容を分けることが重要です。読者は、雇用継続だけでなく、幹部の役割、従業員代表との協議、キーパーソンの退職防止まで入れる点を読み取ってください。

対象説明内容
幹部承継目的、後継者体制、役割、組織変更、協力依頼
一般従業員雇用継続、労働条件、社名・代表者変更、問い合わせ窓口
労働組合・従業員代表労働条件変更の有無、協議事項、労使協定
キーパーソン処遇、役割、退職防止、秘密保持、競業避止

中小企業では、技術、職人技能、顧客対応、仕入先関係、製造ノウハウ、ブランド、商標、レシピ、図面、ソースコード、営業資料が会社価値の中核になることがあります。次の一覧は、労務以外にも承継時に管理すべき無形資産と情報を整理したものです。読者は、権利者が会社か個人か、情報が移転できるか、秘密保持や個人情報管理が整っているかを確認する必要がある点を読み取ってください。

知的財産・営業秘密

登録商標、特許、意匠、著作物、未登録商標、ブランド、営業秘密、製造ノウハウ、顧客情報を棚卸しします。

知財

ライセンス・共同開発

ソフトウェア、ライセンス契約、共同開発契約、秘密保持契約、権利帰属を確認します。

契約

個人情報・IT

顧客情報、従業員情報、EC購買履歴、クラウド契約、アクセス権限、漏えい対応を確認します。

情報管理

M&Aや事業譲渡では、個人情報データベースの移転、共同利用、第三者提供、委託関係の整理が問題になることがあります。承継後も顧客や従業員の信頼を維持するため、プライバシーポリシー、委託先管理、クラウド契約、アクセス権限、情報漏えい時の対応手順を事前に確認します。

Section 10

事業承継計画書の作成手順10 ― 本文構成とテンプレート

読み手に応じた版を分けながら、基本版には15章を入れます。

事業承継計画書は、読み手によって必要情報が異なります。社内用、金融機関用、親族説明用、専門家用、M&A用で版を分けても構いません。基本版には、作成目的、会社概要、経営理念、現状分析、株主、後継者、承継方法、税務、法務、労務、説明計画、リスク対応、工程表、見直し、添付資料を含めます。

次の構成表は、基本版に入れるべき章と内容を示します。読み手ごとに版を分ける場合でも、この基本構成を崩さないことで、関係者説明、金融機関交渉、税務検討、登記・契約手続を同じ前提で進めやすくなります。読者は、計画書本文が単なる文章ではなく、工程表とリスク対応表を含む実行資料である点を読み取ってください。

見出し内容
1作成目的・前提作成日、対象会社、対象事業、承継目的、守秘区分
2会社概要沿革、事業内容、組織、役員、従業員、拠点、許認可
3経営理念・承継方針創業理念、守るもの、変えるもの、承継後のビジョン
4現状分析財務、事業、顧客、商品、競合、SWOT、リスク
5株主・資本政策株主名簿、株式移転方針、議決権、定款、種類株式
6後継者計画後継者、選定理由、育成計画、権限移譲、引退後の役割
7承継スキーム親族内、従業員、M&A、組織再編、資産移転、工程
8税務・資金株価評価、税負担、納税資金、融資、保証、退職金
9法務・登記・許認可決議、契約、許認可、登記、紛争、コンプライアンス
10労務・知財・IT従業員説明、労務リスク、知財、個人情報、システム
11関係者説明計画親族、従業員、金融機関、取引先、行政への説明順序
12リスク対応相続、病気、死亡、後継者辞退、金融機関不同意、M&A不成立
13実行工程表年月、タスク、担当者、必要書類、完了条件
14モニタリングKPI、見直し時期、改訂責任者、会議体
15添付資料株主名簿、財務資料、契約一覧、許認可一覧、専門家意見など

計画書テンプレートでは、各章に空欄を用意するだけでなく、担当者、期限、完了条件、関与専門家、見直し責任者を入れることが重要です。次の一覧は、テンプレート化する際の必須項目を示します。読者は、単なる記入欄ではなく、誰がいつ何を完了させるかを追える構造にする点を読み取ってください。

Basic

基本情報と承継目的

会社名、所在地、代表者、作成日、対象期間、守秘区分、作成責任者、関与専門家、承継目的、承継類型、承継予定時期を記載します。

Design

株式・税務・法務・労務

株主構成、株式移転方法、資産、借入、担保、保証、税務・資金計画、登記、契約、許認可、従業員説明、知財、情報管理を整理します。

Control

工程表・リスク対応・見直し

年月、タスク、担当者、関与専門家、完了条件、発生可能性、影響、対応策、見直し頻度、次回改訂予定日を管理します。

Section 11

事業承継計画書の作成手順11 ― 承認・実行・モニタリング

誰が承認し、何を証跡として残し、いつ見直すかを決めます。

計画書は、誰が承認するかを明確にします。個人事業主であれば現経営者と後継者の合意が中心になりますが、株式会社では取締役会、株主総会、株主間合意、金融機関同意、許認可庁届出、親族間合意が必要になることがあります。

実行段階では、工程表を週次または月次で管理します。次の一覧は、タスク管理に入れるべき項目を示します。期限や証跡を残すことは、税制、登記、許認可、金融機関手続で後から説明できる状態にするために重要です。読者は、タスク名だけでなく、依存関係と未完了時の影響まで管理する点を読み取ってください。

項目内容
タスク株式贈与契約締結、代表者変更登記、金融機関説明など
期限法定期限、契約上期限、社内期限
担当者社内責任者、専門家責任者
依存関係事前に必要な決議、評価、同意、書類
完了証跡議事録、契約書、登記簿、受領印、メール、届出控え
リスク未完了時の影響と代替策

事業承継計画書は、一度作って終わりではありません。次の時系列は、計画見直しの典型的なタイミングを示します。状況変化を反映しない計画は実行管理の役に立たないため、読者は定期見直しと重要イベント時の臨時改訂を分ける点を読み取ってください。

毎年

少なくとも年1回の定期見直し

後継者の意思、財務状況、株価、税制、家族構成、金融機関対応、許認可、M&A市場、業績、健康状態を確認します。

重要イベント時

臨時改訂

株主死亡、主要取引先喪失、借入条件変更、税制改正、許認可制度改正、主要従業員退職、不祥事、訴訟、大規模設備投資などで見直します。

制度利用後

報告・届出の継続管理

法人版事業承継税制を利用する場合は、年次報告や税務署への継続届出など、制度利用後の手続も管理します。

Section 12

M&Aを選ぶ場合の事業承継計画書の作成手順

第三者承継では、通常の承継計画に情報開示・買手探索・PMIを加えます。

第三者承継・M&Aは、親族や従業員に後継者がいない場合の選択肢であると同時に、より大きな企業グループの中で事業を成長させる戦略でもあります。中小M&Aガイドラインの2024年第3版改訂では、手数料、広告・営業、利益相反、テール条項、最終契約後のリスク、経営者保証、不適切な譲受け側への対応などが拡充されています。

次の一覧は、M&A型の事業承継計画書で追加する工程を示します。情報開示や買手探索は一度外に出ると戻せないため、守秘と段階管理が重要です。読者は、価格だけでなく、情報の正確性、利益相反、契約条件、従業員処遇、PMIまで計画書に入れる必要がある点を読み取ってください。

段階主な作業注意点
準備磨き上げ、資料整理、株主整理、財務確認情報の正確性、簿外債務、労務リスク
支援機関選定仲介者・FA・専門家の選定手数料、利益相反、業務範囲、テール条項
買手探索ノンネーム、候補先選定、NDA情報漏えい、競合への開示
トップ面談経営理念、条件、文化の確認価格だけで判断しない
基本合意価格目安、独占交渉、DD範囲法的拘束力の範囲に注意
DD財務・税務・法務・労務・ビジネス調査資料の完全性、説明責任
最終契約表明保証、補償、前提条件、誓約事項経営者保証解除、従業員処遇
クロージング株式・資産移転、代金決済、登記など許認可、取引先承諾
PMI統合、従業員説明、システム統合離職防止、顧客維持

M&A型の計画書では、譲渡目的、譲渡範囲、希望条件、支援機関、情報開示方針、買手候補の選定基準、契約工程、PMIを記載します。特に仲介契約・FA契約では、最低報酬、中間金、テール条項、専任条項、直接交渉制限、利益相反、業務範囲を確認します。

Section 13

事業承継計画書の作成手順を支える専門家と公的支援機関

一人の専門家に丸投げせず、役割を分けて連携します。

事業承継計画書の作成手順では、専門家の役割を明確にしなければなりません。全てを一人の専門家に任せると、見落としが生じます。企業法務では、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、弁理士、行政書士、中小企業診断士、金融機関、M&Aアドバイザー、内部監査・コンプライアンス担当が連携します。

次の一覧は、専門家・担当者ごとの主な役割を示します。役割分担を明確にすることは、同じ論点を重複確認したり、逆に誰も確認していない空白を作ったりしないために重要です。読者は、法務、税務、会計、労務、知財、許認可、金融、M&A、内部統制を横断する体制が必要な点を読み取ってください。

専門家・担当者主な役割
弁護士承継スキーム、契約、会社法、相続紛争、遺留分、M&A契約、紛争予防
企業内弁護士・法務担当社内調整、契約管理、取締役会・株主総会、リスク管理
外部弁護士複雑案件、親族紛争、M&A、訴訟、保証、許認可法務
司法書士商業登記、不動産登記、株主名簿・定款確認、相続登記
税理士自社株評価、相続税・贈与税、事業承継税制、納税資金、組織再編税制
公認会計士財務DD、内部統制、会計処理、不正リスク、企業価値評価支援
社会保険労務士労務監査、就業規則、労働条件、社会保険、従業員説明
弁理士特許、商標、意匠、ライセンス、営業秘密、知財承継
行政書士許認可、届出、行政書類、業法手続
中小企業診断士経営診断、磨き上げ、事業計画、後継者育成、補助金
金融機関借入、保証、担保、資金調達、財務改善助言
M&A仲介者・FA買手探索、条件交渉、工程管理、マッチング
内部監査・コンプライアンス担当規程、証跡、リスク評価、内部統制、通報制度

公的支援機関は、後継者が決まらない、親族内で反対がある、株主が分散している、従業員承継をしたいが株式買取資金がない、経営者保証がネックになっている、M&Aを検討したいが相手先が分からない、廃業か承継か迷っている場面で役立ちます。次の一覧は、公的支援の使いどころを整理したものです。読者は、相談先を早めに確保することで、選択肢を狭めずに検討できる点を読み取ってください。

相談

事業承継・引継ぎ支援センター

国が設置する公的相談窓口として、親族内承継、第三者承継、中小企業の事業承継に関する相談に対応します。

制度

経営承継円滑化法による支援

事業承継税制、金融支援、遺留分に関する民法特例などを検討する際の制度基盤になります。

連携

金融機関・認定支援機関

資金調達、保証解除、事業計画、税制利用、経営改善を進める際に、外部説明の相手になります。

Section 14

事業承継計画書の作成手順でよくある失敗と予防策

税務だけ、後継者の思い込み、保証放置などを避けます。

事業承継計画書の失敗は、書式の不備よりも、重要論点を後回しにすることから起こります。次の一覧は、代表的な失敗と予防策をまとめたものです。予防策を先に計画書へ入れることは、承継後の業績悪化、親族紛争、保証問題、M&A条件悪化を防ぐために重要です。読者は、各項目を自社の計画書に入れるべきリスク対応として読み取ってください。

税金対策だけで計画を作る

節税を目的化すると、事業の競争力や後継者の経営能力を軽視しやすくなります。事業戦略、組織、顧客、財務、法務、労務を含めます。

後継者の意思確認が曖昧

子どもや幹部なら当然引き受けるという思い込みは危険です。意思確認日、説明内容、懸念、支援策を記録します。

株式と代表権の時期がずれる

代表者になっても株式がなければ支配権が安定せず、株式だけあっても実務経験がなければ経営できません。一体で設計します。

親族への説明を後回しにする

後継者以外の相続人に不公平感が生じやすいため、家族会議、遺言、代償金、生命保険、民法特例を早期に検討します。

経営者保証を最後まで放置する

保証解除・保証切替には時間がかかります。金融機関別の交渉工程を計画書に入れます。

M&A支援機関の契約を読まない

手数料、最低報酬、中間金、テール条項、専任条項、直接交渉制限、利益相反、業務範囲を確認します。

Section 15

事業承継計画書の作成手順を点検する品質チェックリスト

最後に、作成目的から改訂責任者まで抜け漏れを確認します。

品質チェックリストは、計画書が完成したかを見た目で判断しないためのものです。次の一覧は、作成目的、後継者、株式、税務、保証、契約、労務、M&A、工程表、見直し責任者を確認するために重要です。読者は、各項目の確認欄に印を付けるだけでなく、証拠資料や担当者が存在するかまで読み取ってください。

チェック項目確認
作成目的、対象期間、承継類型が明確か
現経営者の引退時期と引退後の役割が明確か
後継者の意思確認と育成計画が記載されているか
株主名簿、定款、議決権、株式移転方法が確認されているか
相続・遺留分・非後継者への配慮が記載されているか
自社株評価と税務方針が検討されているか
事業承継税制の利用可否と継続要件が確認されているか
借入、担保、経営者保証、金融機関交渉が記載されているか
主要契約、許認可、登記手続が一覧化されているか
労務リスク、従業員説明、主要人材維持策があるか
知財、個人情報、IT、営業秘密が棚卸しされているか
M&Aを代替案として比較したか
取締役会・株主総会・家族会議・金融機関説明の順序が明確か
実行工程表に担当者、期限、完了条件があるか
計画の見直し時期と改訂責任者が決まっているか
Section 16

事業承継計画書の作成手順で最も重要なこと

会社が次世代に何を残すのかを定義し、実現可能性を検証します。

事業承継計画書の作成手順で最も重要なのは、計画書を提出書類ではなく、合意形成と実行管理の道具として扱うことです。事業承継は、現経営者の想い、後継者の意思、親族の納得、従業員の安心、取引先の信頼、金融機関の協力、税務・法務上の適正性がそろって初めて成功に近づきます。

この重要ポイントは、全体の結論を短く整理したものです。何を表すかを先に明確にすることで、実務担当者は自社の計画書に足りない要素を確認できます。読者は、見える化、承継類型の選択、工程表化、関係者との対話、継続的な更新が一続きのプロセスであることを読み取ってください。

事業承継計画書は次世代に残すものを定義する文書です

第一に現経営者の意思と会社の現状を見える化し、第二に後継者と承継類型を選び、第三に株式・資産・債務・保証・税務・労務・契約・許認可を工程表に落とし込み、第四に関係者との対話を通じて更新し続けます。

専門的には、事業承継計画書は、会社法、民法、相続法、税法、労働法、知的財産法、個人情報保護法、業法規制、金融実務、会計、内部統制、M&A実務を統合する文書です。一般読者にとって難しく見える場合でも、作成手順を分解すれば、最初に行うべきことは明確になります。

Reference

この記事の参考情報源

公的機関・法令・制度資料を中心に整理しています。

事業承継・税制・制度資料

  • 中小企業庁「事業承継ガイドライン」
  • 中小企業庁「事業承継を実施する」
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
  • 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)の前提となる認定に関する申請手続関係書類」
  • 中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」
  • 国税庁「No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)」

法令・M&A・支援機関

  • e-Gov法令検索「会社法」
  • 経済産業省・中小企業庁「中小M&Aガイドライン」
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」
  • 中小企業庁「遺留分に関する民法特例のポイント(会社向け)」
  • 中小企業庁「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」