土地の相続登記で登録免許税がかからない二つの場面を、対象財産、価額、期限、申請書の書き方まで一体で確認します。
土地の相続登記で登録免許税がかからない二つの場面を、対象財産、価額、期限、申請書の書き方まで一体で確認します。
二つの免税類型、土地限定の原則、期限、申請書記載を先に押さえます。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件は、大きく二つに整理できます。一つ目は、相続により土地を取得した個人が、その土地の相続登記を受ける前に死亡した場合に、死亡した個人を登記名義人とするための土地の相続登記です。二つ目は、不動産の価額が100万円以下の土地について、相続による所有権移転登記、または表題部所有者の相続人が受ける一定の所有権保存登記をする場合です。
この比較表は、二つの免税類型の違いを横並びで示すものです。対象となる登記、土地か建物か、価額要件の有無、申請書に書く根拠条項が異なるため、まず自分の手続がどちらに近いかを読み取ることが重要です。
| 類型 | 典型例 | 対象登記 | 対象財産 | 価額要件 | 期限 | 申請書の記載例 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 数次相続・中間相続人死亡型 | A名義の土地をBが相続したが、B名義への登記前にBが死亡し、AからBへの相続登記をする場合 | 死亡した個人を土地の登記名義人とするための相続による所有権移転登記 | 土地 | なし | 令和9年3月31日まで | 租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税 |
| 100万円以下土地型 | 固定資産税評価額など、課税標準となる価額が100万円以下の土地を相続登記する場合 | 相続による土地の所有権移転登記、または表題部所有者の相続人が受ける一定の所有権保存登記 | 土地 | 100万円以下 | 令和9年3月31日まで | 租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税 |
どちらの類型でも、「相続登記なら何でも免税」という制度ではありません。建物の相続登記、相続人以外への遺贈、売買、贈与、財産分与を原因とする登記、100万円を超える通常の土地相続登記は、原則として免税対象から外れます。
次の重要ポイントは、相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件で特に見落としやすい三点をまとめたものです。対象が土地に限られること、申請書の記載が必要なこと、古い条文番号のまま申請しないことを読み取ってください。
100万円以下の建物であっても、この相続登記免税措置の対象ではありません。土地と建物が一緒にある場合は、土地分と建物分を分けて考えます。
要件を満たしていても、登録免許税欄に根拠条項を明記しなければ、通常課税として扱われる可能性があります。
令和8年4月時点の資料では第84条の2の2第1項・第2項が示されています。古い記載例の第84条の2の3をそのまま使わない確認が必要です。
登録免許税、相続登記、所有権移転登記、所有権保存登記、表題部所有者の意味を整理します。
相続で不動産を取得した場合、通常は不動産所在地を管轄する法務局に対し、被相続人名義から相続人名義へ所有権移転登記を申請します。この手続が一般に相続登記と呼ばれ、申請時には登録免許税という国税がかかります。
相続による土地・建物の所有権移転登記の本則税率は、一般に不動産の価額の1,000分の4、つまり0.4%です。固定資産税評価額2,000万円の土地であれば、おおむね8万円の登録免許税が生じます。複数の山林、農地、私道、地方の原野など評価額が小さい土地が多数ある場合、税額と手続負担が相続登記を遅らせる要因になりやすい点も重要です。
相続登記の未了は、所有者不明土地問題の主要な原因とされてきました。そのため、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った相続人は、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。免税措置は、この義務化と並行して登記を進めやすくするための制度です。
次の一覧は、相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件を読むうえで必要な基礎用語をまとめたものです。各行の「何を見るか」を確認すると、固定資産評価証明書、登記記録、相続関係資料のどこを確認すべきかが分かります。
| 用語 | 意味 | 実務で見る資料 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 不動産登記など一定の登記・登録を受ける際に納付する国税です。 | 固定資産評価証明書、課税明細書、申請書の登録免許税欄 |
| 相続登記 | 被相続人名義の不動産を、相続を原因として相続人名義へ移す登記です。相続人に対する遺贈も制度上の相続に含まれると説明されています。 | 戸籍、遺産分割協議書、遺言書、相続関係説明図 |
| 所有権移転登記 | すでに登記された所有権を、ある名義人から別の名義人へ移す登記です。 | 登記事項証明書、登記原因証明情報 |
| 所有権保存登記 | まだ所有権の登記がない不動産について、最初に所有権を登記する手続です。 | 表題部記録、所有権保存登記の適格性資料 |
| 表題部所有者 | 所有権保存登記がまだされていない不動産について、表題部に所有者として記録されている人です。 | 登記事項証明書の表題部、旧土地台帳、相続関係資料 |
実務上は、遺産分割協議、法定相続分、遺言、遺贈、相続分の譲渡、代襲相続、数次相続、相続放棄などが絡みます。免税措置の前に、誰が、どの不動産を、どの原因で取得するのかを確定する必要があります。
第一の特例は、相続により土地の所有権を取得した個人が、その相続による土地の所有権移転登記を受ける前に死亡した場合に、その死亡した個人を土地の所有権の登記名義人とするための登記について、登録免許税を課さないという制度です。
次の時系列は、A名義の土地をBが相続した後、AからBへの登記をしないままBが死亡した場面を示しています。順番を追うと、免税されるのはAからBへの中間登記であり、BからCへの登記まで当然に免税されるわけではないことが読み取れます。
土地の登記名義人であるAが死亡し、Bが土地を相続します。
AからBへの相続登記をしないまま、Bが死亡します。
CがBの相続人として、登記の連続性を整える必要があります。
死亡したBを登記名義人とするための登記であるため、要件を満たせば第1項特例の対象になり得ます。
この比較表は、数次相続型で確認する要件と資料を対応させたものです。価額要件はありませんが、土地であること、登記前に死亡したこと、死亡した個人を名義人とする登記であること、期限内申請であることを読み取る必要があります。
| 要件 | 内容 | 実務確認事項 |
|---|---|---|
| 取得原因 | 個人が相続により土地の所有権を取得したこと | 戸籍、遺産分割協議書、遺言書、相続関係説明図 |
| 対象財産 | 土地であること | 登記事項証明書、公図、固定資産評価証明書、名寄帳 |
| 登記未了 | その個人が相続による土地の所有権移転登記を受ける前に死亡したこと | 登記記録、死亡戸籍 |
| 登記の内容 | 死亡した個人を土地の所有権の登記名義人とするための登記であること | 申請情報、登記原因証明情報、相続関係 |
| 期限 | 令和9年3月31日までに登記申請をすること | 申請日、補正可能性、添付書類の準備状況 |
| 申請書記載 | 登録免許税欄に根拠条項を記載すること | 租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税 |
この特例に価額要件はありません。固定資産税評価額が100万円を超える土地でも、中間相続人名義への登記として要件を満たせば免税となり得ます。一方で、AからB、BからCへ二段階の登記が必要な場合、AからBの登録免許税は免税、BからCの登録免許税は原則課税という整理になります。ただし、BからCの登記について100万円以下土地型の要件を満たす場合には、別途第2項特例の検討余地があります。
次の比較表は、数次相続型が使えない典型例と理由をまとめたものです。土地以外、Bが生存している通常登記、Bを名義人としない直接登記、BからCへの二次相続登記、相続人でない第三者への遺贈は、結論が変わることに注意してください。
| ケース | 整理 |
|---|---|
| 建物についてAからBへの相続登記をする | 土地ではないため対象外です。 |
| Bが生存している状態でAからBの通常の相続登記をする | Bが登記前に死亡していないため対象外です。 |
| AからCへ直接登記できる事案で、中間のBを名義人とする登記をしない | Bを名義人とする登記が存在しないため、この特例の問題になりません。 |
| BからCへの二次相続登記 | Bを名義人とするための登記ではなく、BからCへ移す登記であるため、第1項特例の対象外です。 |
| 相続人でない第三者への遺贈による登記 | 相続人に対する遺贈ではないため、対象外となる可能性が高いと考えられます。 |
共有持分がある場合は、一部非課税の処理が問題になります。Aの相続人がBとCであり、Bだけが登記前に死亡しているときは、B持分については免税対象となり得ますが、生存しているC持分は通常の相続登記として課税されるのが原則です。売買が絡む場合も、AからBへの登記は免税対象になり得る一方、Bから第三者への売買による移転登記は相続登記ではないため、この特例の対象ではありません。
少額土地型では、価額の判定対象と土地限定の原則が中心になります。
第二の特例は、個人が令和9年3月31日までに、土地について、表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記、または相続による所有権移転登記を受ける場合で、その登記に係る登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下であるときに、登録免許税を課さないという制度です。
次の比較表は、100万円以下土地型で確認する要件と資料を対応させています。数次相続がなくても使える可能性がありますが、価額、登記種類、申請者、土地であることを行ごとに確認する必要があります。
| 要件 | 内容 | 実務確認事項 |
|---|---|---|
| 申請者 | 個人が登記を受けること | 相続人の属性、法人でないこと |
| 対象財産 | 土地であること | 登記事項証明書、固定資産評価証明書、名寄帳 |
| 登記の種類 | 相続による所有権移転登記、または表題部所有者の相続人が受ける土地の所有権保存登記 | 申請情報、登記原因、表題部記録 |
| 価額要件 | 登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下であること | 固定資産税評価額、登記官認定価額、持分価額 |
| 期限 | 令和9年3月31日までに登記申請をすること | 申請日、書類準備状況 |
| 申請書記載 | 登録免許税欄に根拠条項を記載すること | 租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税 |
「100万円以下」で見る価額は、売買価格、相続税評価額、路線価、時価、不動産会社の査定額ではありません。条文・公的資料上は、登録免許税の課税標準となる不動産の価額で判定します。通常は固定資産税評価額が基礎となり、価格がない場合は登記官認定価額を確認します。
次の一覧は、100万円以下土地型で誤りやすい判定場面をまとめたものです。左から右へ、評価額そのものを見るのか、持分を掛けた価額を見るのか、土地と建物を分けるのかを読み取ってください。
土地全体の評価額が200万円でも、被相続人の持分が2分の1であれば、移転する持分価額は100万円です。この場合は免税対象となる余地があります。
100万円以下の土地と100万円を超える土地が混在するときは、免税対象土地と課税対象土地を分け、申請書上でも対象土地を明確にします。
評価額80万円の土地と評価額50万円の建物を相続する場合、土地は免税の可能性がありますが、建物にはこの相続登記免税措置は適用されません。
相続人に対する遺贈は、免税措置における相続に含まれると説明されています。たとえば、遺言書で土地を長男に遺贈すると記載され、その長男が相続人である場合は、少額土地型の対象となる可能性があります。一方、相続人ではない内縁配偶者、友人、法人、団体などへの遺贈は、相続人に対する遺贈ではないため、免税の可否や税率を慎重に確認する必要があります。
免税は自動適用ではなく、登録免許税欄の書き方が実務上の分岐点になります。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件を満たしていても、登記申請書に免税の根拠条項を記載しなければ、法務局が当然に免税として扱うわけではありません。記載がない場合、通常課税として扱われる可能性があります。
次の一覧は、申請書の登録免許税欄に書く根拠条項の使い分けを示しています。どちらの類型なのか、一部だけ非課税なのかを確認し、申請内容に合わせて記載を選ぶことが重要です。
| 場面 | 登録免許税欄の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 数次相続・中間相続人死亡型 | 租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税 | 死亡した個人を名義人とする登記部分に限られます。 |
| 100万円以下土地型 | 租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税 | 土地の課税標準となる価額が100万円以下であることを確認します。 |
| 一部の土地だけ免税 | 登録免許税額と、非課税となる土地の表示を併記します。 | 課税対象土地と非課税対象土地を分けて計算します。 |
| 一部持分だけ免税 | 一部非課税であることが分かるよう、持分と課税対象部分を整理します。 | 共有者や持分割合に応じた計算が必要です。 |
古い記事、古い記載例、過去の申請書では、根拠条項が「租税特別措置法第84条の2の3」とされていることがあります。しかし、令和8年4月時点の公的資料では、第84条の2の2第1項・第2項として案内されています。申請直前に最新の法務局記載例、国税庁資料、法令検索で確認することが大切です。
次の時系列は、免税を受けたい場合に申請前に確認する順番を示しています。上から順に確認すると、要件の有無、条項の選択、非課税部分の特定、補正リスクの把握まで進めやすくなります。
土地と建物、土地ごとの評価額、共有持分の有無を確認します。
数次相続型か100万円以下土地型か、一部だけ対象かを確認します。
第1項または第2項の非課税記載を、登録免許税欄に明記します。
建物分や対象外持分がある場合は、通常どおり0.4%で計算します。
読者向けには「免税」と呼ばれることが多い一方、申請書上は「非課税」と記載するのが通常です。一般的な説明では「免税」、申請書では「非課税」と理解すると混乱を避けやすくなります。
通常課税、数次相続型、100万円以下土地型、共有持分、土地建物混在を比べます。
固定資産税評価額1,234万5,678円の土地を相続した場合、課税標準額は1,000円未満を切り捨て、算出税額は税率0.4%を掛け、登録免許税額は100円未満を切り捨てます。この例では、通常であれば約4万9,300円の登録免許税が必要です。
次の比較表は、原則課税と免税類型の計算例をまとめたものです。評価額、持分、土地と建物の区分により、0円になる部分と課税される部分が変わることを読み取ってください。
| 例 | 前提 | 登録免許税の整理 | 読み取り方 |
|---|---|---|---|
| 通常の土地相続登記 | 固定資産税評価額1,234万5,678円 | 課税標準1,234万5,000円 × 0.4% = 4万9,380円。100円未満切捨てで4万9,300円 | 免税要件がなければ本則税率で計算します。 |
| 数次相続型 | 2,000万円の土地をBが相続し、AからBへの登記前にBが死亡 | AからBへの登記は要件を満たせば0円。通常なら8万円 | Bを名義人とする中間登記部分だけが第1項特例の対象です。 |
| 100万円以下土地型 | 土地評価額90万円を被相続人から相続人へ移転登記 | 要件を満たせば第2項特例により0円 | 価額、土地、相続原因、期限、申請書記載を満たすか確認します。 |
| 共有持分 | 土地全体200万円、被相続人持分2分の1 | 移転する持分価額は100万円。要件を満たせば免税対象となる可能性 | 土地全体の評価額ではなく、移転する持分価額を見る場面があります。 |
| 土地と建物が混在 | 土地80万円、建物50万円 | 土地は免税の可能性。建物分は50万円 × 0.4% = 2,000円 | 土地分と建物分を分けて計算します。 |
次の強調表示は、計算例から導ける実務上の結論をまとめたものです。免税の有無だけでなく、どの不動産・どの持分が免税対象なのかを区別することが重要だと読み取ってください。
複数土地、共有持分、土地建物混在では、非課税部分と課税部分が同じ申請内に混在します。固定資産評価証明書や名寄帳をもとに、対象ごとに整理します。
免税措置は税負担を軽くする制度であり、相続登記の申請義務を消す制度ではありません。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件を満たしても、相続登記の申請義務そのものがなくなるわけではありません。免税対象土地であっても、相続で不動産を取得したことを知った相続人は、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。
次の時系列は、義務化と免税期限を並べて確認するためのものです。免税期限と義務履行期限は別の観点で動くため、どちらか一方だけを見ないことが重要です。
相続により不動産を取得したことを知った相続人は、原則として3年以内に申請する必要があります。
戸籍、評価証明書、登記事項証明書、遺産分割協議書、遺言書などを確認します。
対象土地について、期限内申請と申請書への根拠条項記載を確認します。
相続人申告登記は、相続登記義務化に対応するための簡易な制度です。ただし、相続人申告登記は所有権を最終的に移転する相続登記そのものではありません。遺産分割成立後の追加的義務については、相続人申告登記だけでは足りない場面があります。
税額計算だけでなく、相続関係、登記原因、価額を示す資料が必要です。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件を満たすかどうかは、固定資産評価額だけでは判断できません。相続関係、登記原因、持分、土地・建物の区分、表題部所有者との関係まで資料で確認します。
次の一覧は、共通して確認する資料と、数次相続型・100万円以下土地型で追加確認する資料を分けたものです。どの資料が、相続関係、価額、登記種類のどれを支えるかを読み取ってください。
| 区分 | 確認資料 | 確認すること |
|---|---|---|
| 共通 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍、相続人の現在戸籍 | 相続人の範囲と相続関係 |
| 共通 | 被相続人の住民票除票または戸籍の附票、相続人の住民票 | 登記記録上の住所とのつながり |
| 共通 | 固定資産評価証明書、課税明細書、名寄帳 | 課税標準となる価額、複数土地、持分、評価額の有無 |
| 共通 | 不動産の登記事項証明書 | 土地・建物の別、登記名義人、表題部所有者、権利部の有無 |
| 共通 | 遺産分割協議書、遺言書、相続関係説明図、法定相続情報一覧図 | 誰がどの不動産を取得するか |
| 共通 | 相続放棄の有無を示す資料、代理人申請の場合の委任状 | 申請人と代理権の確認 |
| 数次相続型 | 中間相続人の死亡戸籍、一次相続と二次相続の相続関係資料 | 登記前に死亡した個人を名義人とする登記か |
| 100万円以下土地型 | 持分割合、地目、公衆用道路・私道負担、登記官認定価額に関する資料 | 100万円以下の価額判定と土地ごとの対象整理 |
表題部所有者の相続人が所有権保存登記をする場合は、表題部所有者との相続関係と、所有権保存登記を受けられる立場にあるかを確認します。評価額のない公衆用道路、地目変更、分筆直後の土地などでは、単純に納税通知書だけで判断できないことがあります。
登記、紛争、税務、書類、不動産実務のどこに論点があるかを整理します。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件は、登記申請の税額だけで完結しません。相続関係が争われている場合、相続税申告が必要な場合、境界や売却が絡む場合は、複数の専門職が別々の論点を確認します。
次の一覧は、専門職ごとの主な確認領域を示しています。誰に何を相談するかを分けて読むと、免税判定と相続全体の手続を混同しにくくなります。
登記原因、相続関係、固定資産評価額、持分計算、申請書の登録免許税欄、免税条項、添付書類の整合性を確認します。
登記申請免税判定遺産分割がまとまらない、遺言の有効性が争われる、遺留分、使い込み疑い、登記協力拒否など、権利帰属の紛争を扱います。
紛争対応権利関係相続税申告、相続税評価、納税資金、税務調査対応を扱います。100万円以下土地型の価額は相続税評価額ではないため、司法書士との連携が実務的です。
相続税評価の違い争いがない相続で、戸籍収集、相続関係説明図、遺産分割協議書案の作成支援を担うことがあります。ただし、登記申請代理は司法書士の業務です。
書類収集業務範囲境界不明、分筆、未登記建物、売却、換価分割、評価、仲介などが絡む場合、登記費用だけでなく不動産実務全体を確認します。
境界・売却換価設計登録免許税の免税は登記費用の一部を軽くする制度です。相続税、譲渡所得税、仲介手数料、測量費、解体費、境界確定費、共有者間の代金分配などは別問題として発生し得ます。
免税対象の範囲、価額の見方、申請書記載、条文番号の誤りを避けます。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件は、制度名だけを見ると広く使えそうに見えます。しかし、実際には土地、相続原因、価額、期限、根拠条項の記載という複数の条件があります。
次の一覧は、実務でつまずきやすい誤解をまとめたものです。各項目では、何が誤解で、どの資料や記載を見直すべきかを読み取ってください。
免税措置は土地についての特定の相続登記に限られます。建物部分や通常の高額土地は原則として課税対象です。
公衆用道路など固定資産税が非課税の土地でも、登録免許税の評価上は登記官認定価額を確認することがあります。
少額土地型は売買見込額、時価、路線価ではなく、登録免許税の課税標準となる価額で判定します。
補正で対応できる場合があるとしても、常に救済されるとは限りません。申請前に根拠条項を整理することが重要です。
古い記載例では第84条の2の3とされることがあります。最新資料では第84条の2の2第1項・第2項の確認が必要です。
一般的には、登記原因、対象財産、価額、期限、申請書記載によって結論が変わる可能性があります。具体的な申請可否や記載方法は、資料を整理したうえで司法書士等の専門家へ確認する必要があります。
土地か、相続原因か、死亡の連鎖か、100万円以下か、期限内かを順に確認します。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件は、順番を決めて確認すると判断しやすくなります。次の判断の流れは、上から下へ進み、分岐ごとに対象外、数次相続型、100万円以下土地型、原則課税のどれに近いかを読み取るためのものです。
建物のみの場合は原則としてこの免税措置の対象外です。
売買、贈与、第三者遺贈などは原則対象外です。
該当する場合は、その死亡個人を名義人とする登記部分について第1項特例を検討します。
該当する場合は、第2項特例を検討します。
第1項または第2項により非課税と記載します。
法改正・延長の有無や通常税額を確認します。
次のチェックリストは、数次相続型と100万円以下土地型を分けて確認するものです。左の類型を選び、右の項目を一つずつ確認すると、申請書記載前の抜け漏れを減らせます。
| 類型 | 確認項目 |
|---|---|
| 数次相続・中間相続人死亡型 | 対象が土地である。中間相続人が相続により土地を取得した。中間相続人がその土地の相続登記前に死亡した。申請する登記が死亡した中間相続人を登記名義人とするための登記である。令和9年3月31日までに申請する。第84条の2の2第1項により非課税と記載する。一部持分のみ免税の場合は課税部分と非課税部分を分ける。 |
| 100万円以下土地型 | 対象が土地である。登記原因が相続または相続人に対する遺贈である。所有権移転登記または表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記である。登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下である。共有持分の場合は移転する持分価額で判定する。固定資産評価額がない場合は登記官認定価額を確認する。令和9年3月31日までに申請する。第84条の2の2第2項により非課税と記載する。複数土地の一部のみ免税の場合は対象土地を特定する。 |
免税要件を満たしても、権利帰属や売却方針が未確定なら別の手続が必要です。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件を満たしていても、遺産分割協議がまとまらなければ、誰の名義に登記するかを決められないことがあります。この場合、家庭裁判所の遺産分割調停・審判が必要になる可能性があります。
次の一覧は、免税判定とは別に問題になりやすい周辺論点を整理したものです。税額が0円になる可能性があっても、権利帰属、代理人選任、売却時の税負担、境界・評価の問題は別に確認する必要があることを読み取ってください。
調停・審判、正当な理由、相続人申告登記、仮処分との関係を検討する必要があります。
利益相反がある場合、特別代理人、臨時保佐人、臨時補助人の選任が必要となることがあります。
登録免許税が免税でも、相続税申告や売却時の譲渡所得税は別途判断されます。
仲介手数料、測量費、解体費、境界確定費、共有者間の代金分配も検討対象です。
争いがある場合、免税措置の期限だけに気を取られて不完全な登記を急ぐのは危険です。一般的には、相続人関係、証拠、遺言、相続放棄、共有状態、財産の評価、売却予定によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応方針は、司法書士、弁護士、税理士、土地家屋調査士、不動産関連職などへ相談する必要があります。
土地、登記原因、価額、死亡の連鎖、申請書記載を外さないことが核心です。
相続登記の登録免許税が免税になる特例の条件は複雑に見えますが、実務判断の核心は五点に集約できます。第一に、対象は原則として土地であり、建物の相続登記はこの免税措置の対象ではありません。第二に、登記原因は相続または相続人に対する遺贈である必要があります。第三に、数次相続型では、相続により土地を取得した個人が登記前に死亡し、その死亡した個人を名義人とする登記でなければなりません。第四に、100万円以下土地型では、登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下でなければなりません。第五に、免税措置は自動適用ではなく、登記申請書に正しい根拠条項を記載する必要があります。
次の重要ポイントは、申請直前に再確認すべき五つの視点をまとめたものです。自分の手続に当てはめる際は、各項目を資料で確認できるかを読み取ってください。
免税措置の中心は土地です。土地と建物が混在する場合は分けて計算します。
相続または相続人に対する遺贈かを確認します。売買、贈与、第三者遺贈は原則別扱いです。
数次相続型では、登記前に死亡した個人を名義人とする登記部分だけを確認します。
100万円以下土地型では、登録免許税の課税標準となる価額を見ます。持分や評価額のない土地に注意します。
第84条の2の2第1項または第2項により非課税と、申請書の登録免許税欄へ明記します。
相続登記は、相続人の権利関係を公示し、将来の売却、担保設定、分筆、国庫帰属、紛争予防につながる基礎手続です。登録免許税の免税措置は負担を軽くする重要な制度ですが、相続関係、登記原因、価額、期限、申請書記載を誤ると利用できません。相続人が多数いる場合、数次相続、未成年者、認知症の相続人、相続放棄、遺言、遺留分、共有不動産、境界問題、売却予定がある場合には、早期に専門家へ相談することが現実的です。