2σ Guide

海外資産を持つ被相続人の
財産目録の作り方

国外の銀行口座、不動産、証券、保険、信託、暗号資産まで、法務・税務・現地手続を混線させない財産目録の設計を整理します。

3層 法務・税務・現地手続
3か月 放棄・限定承認の目安
10か月 相続税申告の原則期限
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海外資産を持つ被相続人の 財産目録の作り方

国外の銀行口座、不動産、証券、保険、信託、暗号資産まで、法務・税務・現地手続を混線させない財産目録の設計を整理します。

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海外資産を持つ被相続人の 財産目録の作り方
国外の銀行口座、不動産、証券、保険、信託、暗号資産まで、法務・税務・現地手続を混線させない財産目録の設計を整理します。
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  • 海外資産を持つ被相続人の 財産目録の作り方
  • 国外の銀行口座、不動産、証券、保険、信託、暗号資産まで、法務・税務・現地手続を混線させない財産目録の設計を整理します。

POINT 1

  • 海外資産の財産目録は三層で作る
  • 単なる一覧表ではなく、遺産分割、相続 税申告、現地承継手続を同時に管理する資料です。
  • 相続法上の財産目録
  • 相続税申告用の財産評価表
  • 現地手続用の資産台帳

POINT 2

  • 海外資産の財産目録で最初にそろえる用語
  • 被相続人、国外財産、準拠法、probate など、後の判断に影響する言葉を区別します。
  • 基本用語の違いは、どの資料を集めるか、どの専門家に確認するか、どの欄を目録に置くかを左右します。
  • 実際には、日本側の専門家に加え、資産所在地国の専門家、翻訳者、公証実務者の確認が必要になることがあります。

POINT 3

  • 海外資産の財産目録で初動期限を落とさない
  • 1. 相続放棄と限定承認の熟慮期間:自己のために相続の開始があったことを知った時から、単純承認、限定承認、相続放棄を判断する期間が問題になります。
  • 2. 相続税申告の原則期限:被相続人が死亡したことを知った日の翌日から十か月以内が原則です。
  • 3. 国内不動産がある場合の相続登記義務:国内不動産を取得した相続人は、一定の起算点から三年以内の申請義務に注意します。
  • 4. 現地法上の期限

POINT 4

  • 海外資産の財産目録を作る十工程
  • 1. 1 相続関係の確定:相続人一覧、法定相続情報一覧図、戸籍等をそろえます。
  • 2. 2 住所、国籍、居住履歴の確認:国際私法と相続税の判定メモを作ります。
  • 3. 3 端緒資料の収集:郵便、メール、申告書、口座通知、契約書を集めます。
  • 4. 4 国別の仕分け:資産所在地、金融機関所在地、発行体所在地を分けます。
  • 5. 5 権利帰属の確認:名義人、実質所有者、共同名義、信託、受益者指定を確認します。
  • 6. 6 評価資料の取得:残高証明、鑑定書、broker statementを集めます。
  • 7. 7 債務と担保の確認:控除可否を判断する前に、存在と負担者を記録します。
  • 8. 8 円換算と相続税評価:評価根拠表と為替レート表を作ります。
  • 9. 9 現地手続との整合:probate、名義変更、送金、売却予定を並行管理します。
  • 10. 10 開示と更新管理:統合財産目録、改訂履歴、証拠ファイルを相続人に共有します。

POINT 5

  • 海外資産の財産目録は情報収集の入口を広げる
  • 紙、デジタル、公的・税務資料、第三者情報を別々に管理します。
  • 海外資産は、相続人が存在を知らないことも珍しくありません。
  • 見落としを防ぐには、資料の種類ごとに読み取る情報を決め、取得権限と保全方法も記録します。
  • メール、クラウド、オンラインバンキング、証券アプリ、暗号資産ウォレット、パスワード管理アプリを確認します。

POINT 6

  • 海外資産の統合財産目録に置く基本項目
  • 法務、税務、現地手続を橋渡しできる欄を先に設計します。
  • 統合財産目録は、税務申告書の形式へ急いで寄せすぎないことが重要です。
  • 未確定の項目は空欄にせず、未定、要判定、照会中などのステータスを入れます。
  • 国際相続では、未確定情報の存在自体が重要な管理情報です。

POINT 7

  • 海外資産の財産目録を支える三つの補助表
  • 証拠資料一覧
  • 評価根拠表
  • 現地手続進捗表
  • 証拠、評価、現地進捗を分けると、後日の説明と修正がしやすくなります。

POINT 8

  • 海外資産の区分ごとに財産目録の欄を変える
  • 銀行、証券、不動産、保険、退職口座、会社持分、信託、暗号資産、債務を分けます。
  • 海外銀行預金
  • 海外証券口座、外国株式、外国債券、投資信託
  • 海外不動産

まとめ

  • 海外資産を持つ被相続人の 財産目録の作り方
  • 海外資産の財産目録は三層で作る:単なる一覧表ではなく、遺産分割、相続 税申告、現地承継手続を同時に管理する資料です。
  • 海外資産の財産目録で最初にそろえる用語:被相続人、国外財産、準拠法、probate など、後の判断に影響する言葉を区別します。
  • 海外資産の財産目録で初動期限を落とさない:三か月、十か月、三年、現地期限を別欄で管理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

海外資産の財産目録は三層で作る

単なる一覧表ではなく、遺産分割、相続税申告、現地承継手続を同時に管理する資料です。

海外資産を持つ被相続人の財産目録は、国内財産だけの調査とは性質が異なります。預金、不動産、株式を並べるだけでは、準拠法、現地の名義移転制度、外国税、外貨換算、評価基準日、翻訳と認証、相続人間の説明資料が分断されます。

そのため、海外資産の財産目録は、目的の違う三つの資料を親表でつなぐ発想が重要です。次の一覧は、何を表し、なぜ分ける必要があり、読者がどの目的で使う資料かを読み取るための整理です。

Layer 01

相続法上の財産目録

遺産分割、限定承認、遺言執行、相続人間の紛争予防に使う目録です。資産の帰属、分割可能性、証拠、争点を中心に管理します。

Layer 02

相続税申告用の財産評価表

課税価格、債務控除、外国税額控除、外貨換算、国外財産評価を整理します。死亡日評価と税務上の所在地判定を明確にします。

Layer 03

現地手続用の資産台帳

外国の金融機関、登記機関、裁判所、税務当局、証券会社へ提出する証拠と進捗を管理します。国別の要件差を見える化します。

三層を一つの表に押し込むと、評価日、通貨、所有権、税務上の財産所在地、現地法上の承継方法が混線します。親表として統合財産目録を置き、補助表として評価根拠表、証拠資料一覧、現地手続進捗表を作る構成が実務上は堅牢です。

次の強調部分は、ページ全体の結論を示します。海外資産の財産目録が何を統合する資料か、なぜ初動で設計する必要があるか、まずどの四点をそろえるべきかを読み取ってください。

統合財産目録は相続全体の管理軸です

海外資産では、見つける、評価する、移す、税を払う、相続人に説明するという工程が並行します。財産目録はこの工程を一つの管理体系にまとめる資料です。

Section 01

海外資産の財産目録で最初にそろえる用語

被相続人、国外財産、準拠法、probate など、後の判断に影響する言葉を区別します。

このページでいう海外資産を持つ被相続人とは、亡くなった人が日本国外の銀行預金、不動産、有価証券、投資口座、生命保険、退職口座、会社持分、信託受益権、暗号資産、貸付金、知的財産、動産などを保有していた可能性があるケースを指します。

基本用語の違いは、どの資料を集めるか、どの専門家に確認するか、どの欄を目録に置くかを左右します。次の比較表は、それぞれの用語が何を意味し、なぜ海外資産の財産目録で重要か、どの注意点を読み取るべきかを整理したものです。

用語意味財産目録での注意点
被相続人亡くなり、相続の対象となる財産や債務を残した人相続人は相続開始時から一切の権利義務を承継するのが原則ですが、本人専属の権利義務は承継されません。
財産目録プラス財産、マイナス財産、税務上の加算や控除、現地手続上の権利を証拠とともに一覧化した書面限定承認、相続財産清算人、遺言執行、紛争予防でも重要です。
海外資産外国にある財産や外国通貨建ての財産を広く指す日常的な表現税法上の国外財産とは必ずしも一致しません。外貨預金でも国内金融機関の営業所にある場合は所在地判定が別問題になります。
積極財産と消極財産預金、不動産、株式などのプラス財産と、借入金、未払税金、保証債務などのマイナス財産債務控除は死亡時に現に存在し、確実と認められるものを中心に確認します。
準拠法どの国の法律で相続関係を判断するかという問題日本国籍なら日本法が相続人や相続分の基準となることが多い一方、外国の不動産法、信託法、会社法、税法は別に関係します。
probate英米法系で遺言の有効性や遺産管理人の権限を裁判所が確認する手続国や州により名称、要否、期間、提出書類が違うため、国別に管理します。

このページは一般的な制度説明です。個別案件の法律意見、税務代理、登記代理、現地法意見ではありません。実際には、日本側の専門家に加え、資産所在地国の専門家、翻訳者、公証実務者の確認が必要になることがあります。

Section 02

海外資産の財産目録で初動期限を落とさない

三か月、十か月、三年、現地期限を別欄で管理します。

海外資産がある場合、残高証明、現地評価、翻訳、認証、送金記録の取得に時間がかかります。だからこそ、財産目録には資産ごとの金額だけでなく、日本と現地の期限を分けて置く必要があります。

次の時系列は、期限が何を表し、なぜ海外資産の相続で重要か、読者がどの時点で調査や専門家確認を前倒しすべきかを読み取るための整理です。

三か月以内

相続放棄と限定承認の熟慮期間

自己のために相続の開始があったことを知った時から、単純承認、限定承認、相続放棄を判断する期間が問題になります。国外債務や保証の疑いがあれば期間伸長の検討が必要になることがあります。

十か月以内

相続税申告の原則期限

被相続人が死亡したことを知った日の翌日から十か月以内が原則です。海外資産では評価資料と外国税の証明が遅れやすいため、早い段階で仮評価を置きます。

三年以内

国内不動産がある場合の相続登記義務

国内不動産を取得した相続人は、一定の起算点から三年以内の申請義務に注意します。正当な理由なく怠ると十万円以下の過料の対象となる場合があります。

国・州・機関ごと

現地法上の期限

estate tax、inheritance tax、probate filing、固定資産税、管理組合費、保険請求、退職口座の beneficiary claim などは別々に管理します。

財産目録を作る目的は、一覧表の作成だけではありません。次の比較表は、財産目録がどの目的に使われ、なぜ管理項目を分ける必要があり、主にどの専門職と確認するかを読み取るためのものです。

目的財産目録で管理する事項主に関わる専門職
遺産分割資産の帰属、評価、分割可能性、換価予定、代償金弁護士、司法書士、行政書士
相続税申告課税価格、国外財産評価、外貨換算、債務控除、外国税額控除税理士
限定承認、相続放棄判断プラス財産と債務の比較、潜在債務、保証、訴訟弁護士
遺言執行遺言対象財産、受遺者、執行可能性、現地書類遺言執行者、弁護士、信託銀行
現地手続probate、名義変更、送金、売却、現地納税現地弁護士、現地税理士
紛争予防証拠、評価根拠、調査過程、開示履歴弁護士、調停実務者
資産保全凍結、保険、管理費、固定資産税、為替変動、情報セキュリティリスク弁護士、FP、不動産管理業者
Section 03

海外資産の財産目録を作る十工程

評価額を先に埋めるのではなく、存在、名義、所在、資料の有無から固めます。

海外資産の財産目録では、初めから金額を確定しようとすると手戻りが増えます。次の判断の流れは、作業順序が何を表し、なぜ資産の存在確認から始めるべきか、どの成果物を順に作るかを読み取るためのものです。

海外資産の財産目録を作る十工程

1 相続関係の確定

相続人一覧、法定相続情報一覧図、戸籍等をそろえます。

2 住所、国籍、居住履歴の確認

国際私法と相続税の判定メモを作ります。

3 端緒資料の収集

郵便、メール、申告書、口座通知、契約書を集めます。

4 国別の仕分け

資産所在地、金融機関所在地、発行体所在地を分けます。

5 権利帰属の確認

名義人、実質所有者、共同名義、信託、受益者指定を確認します。

6 評価資料の取得

残高証明、鑑定書、broker statement を集めます。

7 債務と担保の確認

控除可否を判断する前に、存在と負担者を記録します。

8 円換算と相続税評価

評価根拠表と為替レート表を作ります。

9 現地手続との整合

probate、名義変更、送金、売却予定を並行管理します。

10 開示と更新管理

統合財産目録、改訂履歴、証拠ファイルを相続人に共有します。

複数国に資産がある場合は、財産目録の前に国別資産マップを作ります。次の比較表は、国ごとの資産の疑い、必要な専門家、優先度、リスクが何を表すか、どの国から調査すべきかを読み取るための整理です。

国、地域資産の疑い端緒資料必要な現地専門家優先度主なリスク
米国カリフォルニア州証券口座、IRA、不動産broker statement、納税資料probate lawyer、CPAprobate、estate tax、州法、beneficiary designation
シンガポール銀行預金、投資口座銀行メール、口座関連書類lawyer、tax adviser銀行の相続書類、本人確認、送金規制
香港法人口座、株式会社登記資料、監査報告solicitor、CPA会社持分評価、取締役権限
オーストラリア不動産title search、固定資産税通知solicitor、valuer不動産売却、非居住者規制、源泉税
スイスプライベートバンクstatement、relationship manager 情報lawyer、bank officer守秘、相続人確認、税務資料
Section 04

海外資産の財産目録は情報収集の入口を広げる

紙、デジタル、公的・税務資料、第三者情報を別々に管理します。

海外資産は、相続人が存在を知らないことも珍しくありません。見落としを防ぐには、資料の種類ごとに読み取る情報を決め、取得権限と保全方法も記録します。

次の一覧は、情報の入口が何を表し、なぜ複数経路で確認する必要があるか、読者がどの資料から資産の所在や権利関係を読み取るかを整理したものです。

01

紙の資料

自宅、貸金庫、書斎、別荘、会社事務所にある statement、title deed、保険証券、税務申告書、信託契約、遺言書を確認します。

端緒資料
02

デジタル資料

メール、クラウド、オンラインバンキング、証券アプリ、暗号資産ウォレット、パスワード管理アプリを確認します。無断ログインや本人なりすましに見える操作は避け、権限確認を先行します。

要注意
03

公的資料と税務資料

所得税確定申告書、国外財産調書、財産債務調書、外国税額控除資料、国外送金記録、現地 tax return は重要な手がかりになります。

税務確認
04

第三者からの情報

資産管理会社、金融機関担当者、現地不動産管理会社、会計士、保険代理店、共同株主、親族などから情報を得ます。対立があるときは聞き取り内容を記録化します。

証拠化

紙の資料は、資産の種類ごとに読むべき情報が違います。次の比較表は、どの書類が何を表し、なぜ目録の欄に反映すべきか、読者が見落としやすい項目を読み取るためのものです。

資料読み取る情報
外国銀行の statement口座番号、支店、通貨、残高、連絡先
外国証券会社の statement銘柄、数量、評価額、受益者指定、保管機関
不動産 title deed、固定資産税通知所在地、持分、評価額、税番号、担保
生命保険証券保険者、契約者、被保険者、受取人、通貨
退職口座書類beneficiary、残高、引出制限、税務書類
現地税務申告書資産、収入、税番号、代理人
管理会社との契約賃貸不動産、管理費、未収賃料
金銭消費貸借契約貸付金、借入金、利息、担保
信託契約trustee、beneficiary、settlor、trust property
遺言書、letter of wishes遺産分配意向、現地遺言の有無

デジタル資料を調べるときは、bank、brokerage、portfolio、trust、insurance、policy、estate、will、probate、beneficiary、tax、property tax、rent、loan、mortgage、crypto、wallet、exchange、custodian、dividend、interest などの語を手がかりにします。

Section 05

海外資産の統合財産目録に置く基本項目

法務、税務、現地手続を橋渡しできる欄を先に設計します。

統合財産目録は、税務申告書の形式へ急いで寄せすぎないことが重要です。次の比較表は、各欄が何を表し、なぜ海外資産の管理に必要か、どの欄を見れば評価・帰属・手続状況を読み取れるかを整理しています。

項目意味注意点
No資産や債務を識別する管理番号証拠資料一覧、評価根拠表、現地手続進捗表と同じ番号で結びます。
国、地域資産所在地、支店所在地、発行体所在地など税務上の所在地と現地手続国が違うことがあります。
資産区分預金、不動産、株式、保険、会社持分、債権、暗号資産など税務申告区分と一致しないことがあります。
資産名、現地名称金融機関名、登記上の名称、現地の登録名外国語名称と日本語訳を併記すると提出資料との照合がしやすくなります。
名義人口座名義、不動産登記名義、株主名簿上の名義共同名義、nominee、trustee に注意します。
実質所有者の疑い名義と実質が違う可能性名義預金、信託、家族名義資産で重要です。
所在、口座、識別番号銀行支店、証券口座、parcel number、ISIN など公開用資料では一部マスクし、原本管理表で詳細を保管します。
数量、面積、持分株数、面積、共有割合、受益権割合金額だけでなく数量を残すことで評価の再計算ができます。
評価基準日原則として相続開始日現地 probate 用評価日と異なる場合があります。
現地通貨、現地評価額外貨建て評価額評価書、残高証明、statement の日付を明記します。
為替レートTTB、TTS、予約相場など財産と債務で扱いが異なります。
円換算額相続税申告や遺産分割の説明用の円建て額どの金融機関のどの日の相場かを記録します。
債務、担保mortgage、loan、lien、未払税、管理費控除可能性は別途税理士が確認します。
相続税上の所在地国内財産、国外財産、判定保留相続税法上の財産所在地判定が必要です。
証拠資料残高証明、登記簿、鑑定書、契約書原本、写し、翻訳、認証の有無を管理します。
帰属確認状況確定、仮、争点あり、不明遺産分割で争いになりやすい項目です。
現地手続状況未着手、照会中、probate 中、名義変更済み国別に進捗を管理します。
担当者、備考担当専門家と補足情報次の対応、保留理由、期限を残します。

未確定の項目は空欄にせず、未定、要判定、照会中などのステータスを入れます。国際相続では、未確定情報の存在自体が重要な管理情報です。

Section 06

海外資産の財産目録を支える三つの補助表

証拠、評価、現地進捗を分けると、後日の説明と修正がしやすくなります。

証拠資料一覧

証拠資料一覧は、金額の正しさだけでなく、資料をどの権限で取得したかを示すために重要です。次の比較表は、証拠の番号、発行者、原本、翻訳、認証の欄が何を表し、どの資料を追加取得すべきかを読み取るためのものです。

証拠No資産No書類名発行者発行日対象期間原本の所在翻訳認証、アポスティーユ取得者備考
E-001A-001Bank statementABC Bank Singapore2026-02-152025-01-01から死亡日相続人代表保管不要、銀行確認中弁護士死亡日残高証明を追加請求
E-002R-001Title registerCounty Recorder2026-03-01現況司法書士保管現地弁護士mortgage 記載あり

外国手続では、日本の戸籍、死亡届受理証明書、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書について、公印確認、アポスティーユ、署名証明、翻訳を求められることがあります。海外在住の相続人がいる場合、日本の印鑑証明に代えて在外公館の署名証明などを使う場面もあります。

評価根拠表

評価根拠表は、法律上の評価、税務上の評価、現地手続上の評価を分けて示すために重要です。次の比較表は、評価目的ごとに基準日、外貨額、為替、円換算、留意点が何を表し、どこで専門家確認が必要かを読み取るためのものです。

資産No評価目的評価基準日現地評価額評価方法根拠資料為替円換算留意点
B-001相続税死亡日USD 250,000死亡日残高bank certificateTTB 150.0037,500,000円利息未収分を確認
S-001遺産分割死亡日USD 620,000statement 評価brokerage statementTTB 150.0093,000,000円売却時評価との差額を別記
R-001相続税死亡日USD 900,000現地鑑定appraisal reportTTB 150.00135,000,000円mortgage は債務表へ
L-001債務控除検討死亡日USD 300,000loan payoff statementlender statementTTS 151.0045,300,000円控除可否は税理士判断

相続税や贈与税を計算する場合の外貨は、原則として課税時期の最終の対顧客直物電信買相場、いわゆる TTB またはこれに準ずる相場で邦貨換算します。課税時期に相場がない場合は、課税時期前の相場のうち最も近い日の相場を用います。

外貨建て債務は、財産の TTB と同じ処理にしない点が重要です。評価通達上、TTB を TTS と読み替える扱いがあるため、どの金融機関の、どの日の、どの種類の相場を使ったかを欄に残します。

現地手続進捗表

現地手続進捗表は、財産目録に載せた資産を実際に移すための管理表です。次の比較表は、手続先、必要書類、期限、進捗、次の対応が何を表し、どの資産で手続が止まっているかを読み取るためのものです。

資産No国、地域手続先必要手続必要書類現地代理人期限進捗次の対応
B-001シンガポールABC Bank相続払戻し死亡証明、戸籍、相続人証明、翻訳現地弁護士未定書類照会中bank requirement letter を取得
R-001米国ハワイ州Land Court不動産名義移転または売却probate order、deed、tax clearanceprobate lawyer固定資産税期限ありprobate 準備中相続人代表の権限証明
S-001米国証券会社Custodian口座移管、売却、分配death certificate、tax form、letters testamentaryCPA、弁護士broker 指定未着手受益者指定の有無確認

現地手続欄には、完了日だけでなく、照会日、回答日、提出日、不備連絡日、再提出日を残します。相続人間の争いでは、誰がいつ何をしたかが重要な証拠になります。

Section 07

海外資産の区分ごとに財産目録の欄を変える

銀行、証券、不動産、保険、退職口座、会社持分、信託、暗号資産、債務を分けます。

海外銀行預金

海外銀行預金は、税務上の所在地と現地手続先を特定するために重要です。次の比較表は、確認項目が何を表し、なぜ口座名義や通貨を分ける必要があるか、どの情報から相続税評価や払戻し手続を読み取るかを整理しています。

確認項目実務上の意味
銀行名、支店、国税務上の所在地、現地手続先を特定します。
口座種類普通、定期、投資連動、プライベートバンクなどを分けます。
口座名義単独、共同名義、trust account、nominee を確認します。
通貨USD、EUR、SGD、HKD などを記載します。
死亡日残高相続税評価の基礎になります。
未収利息死亡日までの利息を確認します。
凍結状況死亡通知後の引出制限を確認します。
送金制限AML、KYC、外為規制を確認します。
必要書類death certificate、戸籍、遺産分割協議書、probate order などを確認します。

共同名義口座は、現地法上 survivorship により生存名義人に帰属するように見えても、日本の相続法、相続税、実質負担関係では別評価が必要になる場合があります。名義だけで目録から除外しないことが重要です。

海外証券口座、外国株式、外国債券、投資信託

証券口座は、口座全体の評価額だけでは根拠が不足しやすい資産です。次の比較表は、数量、銘柄、受益者指定、税務フォームが何を表し、読者がどの資料を残すべきかを読み取るためのものです。

項目注意点
口座単位の残高現金、株式、債券、ファンドを分けます。
銘柄単位の数量statement の market value だけでなく数量も残します。
評価基準日死亡日、現地市場の終値、休場日の扱いを確認します。
税務フォームW-8BEN、W-9、現地源泉税、estate tax 関連を確認します。
受益者指定TOD、beneficiary designation の有無を確認します。
口座閉鎖条件probate、letters、medallion signature guarantee などを確認します。

日本の相続税評価では、国外財産も原則として財産評価基本通達の評価方法が出発点です。通達で評価できない財産は、通達に準じる方法、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。

海外不動産

海外不動産は、権利形態、持分、担保、収益、費用、現地移転手続が重なりやすい資産です。次の比較表は、各欄が何を表し、なぜ日本の評価制度だけでは足りないか、どの資料で時価の合理性を説明するかを読み取るためのものです。

項目具体例
所在地国、州、郡、市、番地、parcel number
権利形態freehold、leasehold、condominium、timeshare、joint tenancy
持分単独、共有、夫婦共有、法人保有、信託保有
登記資料title register、deed、tax assessment
評価鑑定評価、売買実例、固定資産税評価、broker opinion
債務mortgage、lien、未払管理費、未払固定資産税
収益賃料、敷金、管理委託、airbnb 等
費用HOA、insurance、property tax、repairs
現地手続probate、transfer deed、tax clearance、売却許可

国外不動産では、日本の路線価や固定資産税評価額の制度がそのまま使えない場合が多くあります。現地鑑定、売買事例、課税評価、取得価額の時点修正、相続開始後の売却価額などを比較し、死亡時の時価として合理的かを説明できるようにします。

生命保険、死亡退職金、海外退職口座

保険と退職口座は、民法上の遺産分割対象かどうかと、相続税上の課税対象かどうかがずれることがあります。次の比較表は、契約関係、受取人、非課税限度、通貨、請求期限が何を表し、どの欄を分けるべきかを読み取るための整理です。

項目注意点
保険会社、国現地保険規制、請求書類に影響します。
契約者、被保険者、受取人誰が保険料を負担したかが税務上重要です。
保険金額、通貨外貨換算が必要です。
受取人指定遺産分割対象外でも相続税対象となることがあります。
解約返戻金死亡保険金ではなく契約権利の場合に重要です。
請求期限国や保険会社により異なります。
死亡退職金五百万円に法定相続人の数を乗じる非課税限度額の検討が必要です。
海外退職口座401(k)、IRA、Superannuation、pension fund、provident fund などは受益者指定、源泉税、日本の所得税・相続税との関係を分けます。

会社持分、信託、暗号資産、債権債務

非上場会社持分、信託、暗号資産、貸付金、債務は、通常の残高証明だけでは全体像を把握しにくい資産です。次の比較表は、各区分が何を表し、なぜ権利性や回収可能性を分ける必要があるか、どの証拠を追加確認するかを読み取るためのものです。

区分財産目録で確認すること主な注意点
海外会社持分設立国、持分割合、議決権、利益分配権、譲渡制限、財務諸表、関連者取引公認会計士、税理士、現地評価専門家の関与が必要になることがあります。
信託、foundation、nomineesettlor、trustee、protector、beneficiary、remainder beneficiary、letter of wishes、trust deed現地法上の遺産該当性、日本の相続税、遺留分、特別受益、詐害行為の検討を分けます。
暗号資産、NFT取引所、ウォレットアドレス、秘密鍵、銘柄、数量、死亡日の価格、参照取引所、ロックやステーキング秘密鍵や seed phrase は不用意に共有せず、権限確認と保全記録を優先します。
貸付金、未収金、訴訟債権契約書、送金記録、利息、返済期日、担保、時効、相手方所在地回収不能の疑いがあっても、回収可能性低、評価要検討として残します。
債務、保証、担保、未払税金mortgage、margin loan、credit line、現地所得税、固定資産税、HOA、事業債務、訴訟債務、personal guarantee相続放棄、限定承認、債務控除に直結するため、プラス財産より見落としが危険です。
Section 08

海外資産の財産目録で相続税の論点を分ける

課税範囲、基礎控除、みなし相続財産、外国税額控除を別欄で管理します。

海外資産が日本の相続税の対象になるかは、被相続人と取得者の住所、国籍、居住履歴、在留資格、納税義務者区分などによって変わります。財産目録には、財産そのものの欄とは別に課税範囲の判定欄を置きます。

次の比較表は、課税範囲の判定欄が何を表し、なぜ財産評価の前に必要か、どの情報を確認中として残すべきかを読み取るためのものです。

判定欄記載例
被相続人の死亡時住所日本、米国、シンガポールなど
被相続人の国籍日本、外国、重国籍の有無
相続人、受遺者の住所日本、外国
相続人、受遺者の国籍日本、外国
十年以内の日本住所履歴あり、なし、確認中
財産所在地判定国内財産、国外財産、保留
課税範囲国内外課税、国内財産のみ、要確認

相続税の要否は基礎控除との比較でも確認します。次の強調部分は、基礎控除の計算式が何を表し、なぜ海外資産の評価漏れがあると判断が変わるか、どの金額を財産目録から拾うべきかを示します。

基礎控除正味の遺産額が「三千万円+六百万円×法定相続人の数」を超える場合、相続税申告と納税が必要になるのが基本です。海外不動産、外国証券、みなし相続財産、生前贈与加算、相続時精算課税適用財産が加わると、当初の見込みが変わることがあります。

みなし相続財産や外国税額控除は、遺産分割の見え方と税務上の扱いがずれやすい論点です。次の比較表は、論点ごとに何を表し、なぜ別欄で管理すべきか、税理士へどの証明書を渡すかを読み取るための整理です。

論点財産目録で管理する事項注意点
みなし相続財産死亡保険金、死亡退職金、海外退職口座、海外信託の給付民法上の遺産分割対象かどうかと、相続税の課税対象かどうかを分けます。
生命保険金保険料負担者、受取人、保険金額、通貨、請求日相続人が受取人である場合、五百万円×法定相続人の数の非課税限度額を検討します。
死亡退職金退職手当金等、取得者、支給者、支給日、通貨死亡退職金も一定の場合に相続税の課税対象となり、非課税限度額の確認が必要です。
外国税額控除外国で課された税額、対象財産、納付日、税目名、納税者、証明書、円換算額外国で税を払えば自動的に全額控除される制度ではありません。対象税目、控除限度、添付資料を確認します。
Section 09

海外資産の現地手続と日本手続のずれを財産目録に残す

日本の遺産分割協議書だけで足りるとは限らず、現地の権限証明や裁判所手続が必要になることがあります。

海外資産では、日本の相続人全員で遺産分割協議書を作っても、外国の金融機関や登記機関がそのまま受け入れるとは限りません。逆に、現地の probate order があっても、日本の相続税申告や遺産分割の説明として十分とは限りません。

次の比較表は、日本手続と現地手続のずれが何を表し、なぜ財産目録に注記すべきか、読者がどの対応を先に確認するかを読み取るためのものです。

ずれ具体例対応
日本法上の相続人と現地法上の申請権者が違う現地裁判所が executor、personal representative を要求現地弁護士に権限取得を依頼
日本の遺産分割協議書が現地でそのまま使えない翻訳、公証、アポスティーユ、領事認証が必要書類仕様を先に確認
受益者指定が遺産分割より優先されるTOD、life insurance beneficiary税務上の課税対象と分けて記載
外国不動産が現地法で分割不能売却、持分移転、法人化が必要換価分割、代償分割を検討
現地評価額と日本の税務評価額が違うproperty tax assessment と相続税時価が違う評価根拠表に併記
現地税の納税者と日本の相続税納税者が違うestate が納税、受益者が受領外国税額控除の可否を検討

財産目録には、現地裁判所手続が必要か、金融機関がどの書類を求めるか、日本の遺産分割協議書だけで足りるかを資産ごとに記録します。

Section 10

海外資産の財産目録は争い・放棄・遺言執行にも使う

中立的な証拠台帳として、帰属争い、評価争い、債務性争いを隠さず示します。

相続人間で争いがある場合、財産目録は特定の相続人に有利な資料ではなく、中立的な証拠台帳として作ります。評価額に争いがある場合は、複数評価を併記し、除外候補も根拠とともに残します。

次の比較表は、ステータス欄が何を表し、なぜ未確定情報を残すべきか、読者がどの争点を専門家へ確認すべきかを読み取るためのものです。

ステータス意味
確定証拠により存在、帰属、金額がほぼ確認できた
仮計上存在は確認できたが評価資料が未完了
帰属争い名義と実質、贈与、信託、共有で争いがある
評価争い複数評価があり、相続人間で争いがある
債務性争い債務の存在、確実性、控除可否が争点
要現地確認現地法、現地税、金融機関手続が未確認
除外候補遺産ではない可能性があるが、根拠を残す

情報開示では、原本と写しを区別し、個人情報や口座番号、秘密鍵を安全にマスキングし、全相続人に同じ版を配布します。改訂履歴を残し、現地専門家の回答は要約だけでなく原文と翻訳を保存します。

限定承認や相続放棄を視野に入れる場合は、プラス財産が大きく見えても、外国ローン、保証、税務債務、環境責任、管理費滞納が潜んでいないかを確認します。次の比較表は、限定承認で確認する論点が何を表し、なぜ財産目録の網羅性が重要か、どの点を早期に調べるべきかを示します。

論点注意点
全相続人の共同申述相続放棄者を除く相続人全員の協力が必要になることがあります。
財産目録の網羅性不明資産、国外債務、保証を注記します。
現地債権者外国債権者への通知、公告、現地法対応を確認します。
為替変動評価時点と弁済時点の差額に注意します。
税務みなし譲渡、準確定申告、相続税との関係を確認します。

遺言執行者がいる場合は、遅滞なく相続財産の目録を作成して相続人に交付する義務が問題になります。次の比較表は、遺言執行で確認する欄が何を表し、なぜ複数国の遺言や現地権限を分ける必要があるか、読者がどの書類を照合すべきかを整理したものです。

項目記載すべき内容
遺言の種類日本の公正証書、自筆証書、外国遺言、複数遺言
遺言対象財産包括遺贈、特定遺贈、国別遺言の対象
執行権限日本での権限、外国で認められる権限
現地遺言との関係抵触、撤回、国別分離の有無
受遺者国内、国外、法人、信託
必要書類遺言書情報証明、検認、翻訳、アポスティーユ
Section 11

海外資産の財産目録は法定相続情報と版管理で支える

一度で完成しない前提で、更新履歴とサンプル形式を残します。

法定相続情報一覧図は、被相続人と法定相続人の関係を一覧化し、法務局の認証を受ける制度です。海外資産の現地手続でそのまま使えるとは限りませんが、日本側の相続関係を説明する資料として有用です。外国提出用には翻訳、公証、アポスティーユ、領事認証が求められることがあります。

海外資産の財産目録は一度で完成しません。次の比較表は、版ごとの作成日、変更内容、作成者、承認者が何を表し、なぜ削除した資産も履歴に残す必要があるか、読者がどの版を申告や共有に使うかを読み取るためのものです。

作成日主な変更作成者承認者
v0.12026-02-01端緒資料から仮作成相続人代表未承認
v0.22026-02-20シンガポール銀行残高追加税理士弁護士確認中
v0.32026-03-10米国不動産鑑定額追加現地弁護士税理士確認中
v1.02026-04-30相続税申告用評価を確定税理士相続人全員確認

統合財産目録の簡易例では、未確定項目を空欄にせず、未定、要判定、照会中と明示します。次の比較表は、具体例の各行が何を表し、なぜ未確定情報を残すことが相続人間の説明に役立つか、どの資産で追加調査が必要かを読み取るためのものです。

No国、地域資産区分資産名名義人数量、持分現地通貨現地評価額為替円換算額状況備考
A-001シンガポール預金ABC Bank USD savings被相続人100%USD250,000TTB 150.0037,500,000残高証明取得済み未収利息確認中
A-002米国証券XYZ Brokerage被相続人100%USD620,000TTB 150.0093,000,000statement 取得済み受益者指定照会中
A-003米国ハワイ州不動産Condominium Unit被相続人、配偶者共有50%USD900,000TTB 150.00135,000,000鑑定中共有形態確認中
D-001米国債務Mortgage loan被相続人、配偶者50%相当検討USD300,000TTS 151.0045,300,000payoff 取得済み控除可否確認中
A-004香港非上場株式HK Trading Ltd.被相続人30%HKD未定未定未定財務資料請求中公認会計士評価予定
A-005不明暗号資産BTC wallet不明2 BTC疑いUSD未定TTB未定秘密鍵保全中無断移転防止
Section 12

海外資産の財産目録を作る相続人向けチェックリスト

死後一か月、三か月、六か月、十か月でやることを分けます。

海外資産の調査は、時間の経過とともに取得できる資料や判断すべき論点が変わります。次の比較表は、時期ごとの作業が何を表し、なぜ期限から逆算すべきか、読者がどの時点で目録を更新するかを読み取るためのものです。

時期主な確認事項
死後一か月以内死亡診断書、戸籍、住民票除票、パスポート、在留資格関係書類、遺言書の有無、海外金融機関・保険会社・証券会社・不動産管理会社からの郵便、パソコンやスマートフォン、クラウド、メール、端緒資料の国別分類、相続放棄や限定承認の可能性を確認します。海外資産を勝手に引き出したり、売却したり、送金したりしないことも重要です。
三か月以内相続人、主要な海外資産と債務、債務超過、保証、訴訟、税務債務、相続放棄・限定承認・期間伸長の要否、現地弁護士が必要な国、財産目録 v0.1 を確認します。
六か月以内残高証明、broker statement、不動産 title、鑑定資料、外貨換算方針、外国税、現地 probate、送金、売却の見通し、相続人間の共有、不明資産の追加調査、遺産分割案、納税資金案、換価方針を確認します。
十か月以内相続税申告用評価額、債務控除、葬式費用、みなし相続財産、生前贈与加算、外国税額控除、未分割の場合の申告方針、財産目録 v1.0、申告書添付資料との整合を確認します。

海外資産を持つ相続では、専門職を早期に分けて配置することが重要です。次の比較表は、各専門職の役割が何を表し、なぜ一人にすべて任せず責任範囲を明示すべきか、どの論点を誰に相談するかを読み取るためのものです。

専門職主な役割
弁護士相続人間紛争、遺産分割、遺留分、使い込み疑い、限定承認、現地弁護士との連携
司法書士国内相続登記、法定相続情報一覧図、戸籍収集、登記関係書類
税理士相続税申告、国外財産評価、外貨換算、外国税額控除、税務調査対応
行政書士紛争性のない書類整理、遺産分割協議書作成支援、相続関係説明資料
公証人、遺言執行者、信託銀行等公正証書、宣誓認証、遺言関連手続、遺言内容の実現、財産目録作成、財産整理
不動産鑑定士、土地家屋調査士、不動産業者海外不動産の評価方針、国内不動産評価、境界、分筆、売却、換価、取引実務
公認会計士、中小企業診断士、弁理士海外会社持分、非上場株式、事業価値評価、事業承継、知的財産の名義変更
FP、社会保険労務士、現地専門家、翻訳者納税資金、保険、家計、遺族年金、現地不動産、現地税、金融機関手続、翻訳
Section 13

海外資産の財産目録でよくある失敗

外貨建て、死亡日評価、共同名義、受益者指定、現地税、デジタル資産の扱いに注意します。

失敗例を先に知っておくと、財産目録の欄をどう設計すべきかが見えやすくなります。次の注意点一覧は、どの誤りが何を表し、なぜ後で税務・現地手続・相続人間の説明に影響するか、読者がどの欄を追加すべきかを読み取るためのものです。

外貨建て資産をすべて国外財産と扱う

外貨建てかどうかと、税法上の財産所在地は別問題です。通貨欄と所在地欄を分けます。

死亡日ではなく発見日の残高を使う

死亡後の利息、売買、為替変動、手数料が混入するため、相続開始時点の資料を確認します。

TTM や実際の送金レートだけで円換算する

相続税評価の外貨換算では TTB の考え方が出発点となり、債務では TTS の検討が必要です。

共同名義口座を自動的に除外する

現地法上の survivorship と、日本の相続税や実質負担関係は一致しないことがあります。

受益者指定を見落とす

生命保険、退職口座、証券口座、TOD、POD、信託では、遺産分割と税務上の扱いがずれる場合があります。

現地税と日本の相続税を別々に処理する

外国税の納付証明、課税明細、対象財産、納税者、納付日を残さないと、外国税額控除の検討が難しくなります。

証拠の翻訳、認証を後回しにする

書類仕様を後から知ると、全相続人の再署名や再取得が必要になることがあります。

デジタル資産を不用意に動かす

暗号資産やオンライン口座を権限確認なしに移すと、使い込みや遺産隠しを疑われることがあります。

Section 14

海外資産の財産目録に置く注記と難しさの理由

暫定額、国外財産判定、証拠管理の前提を相続人に明示します。

財産目録の冒頭には、作成目的、評価の暫定性、国外財産表示が税務上の最終判断ではないこと、証拠資料の別紙管理、個人情報や秘密鍵のマスキングを記載すると、相続人への説明がしやすくなります。

注記例本財産目録は、国内外の財産および債務を、遺産分割協議、相続税申告、現地相続手続、限定承認または相続放棄判断、遺言執行の検討に供する目的で作成したものです。評価額は相続開始日現在の資料に基づく暫定額であり、専門家確認により変更される可能性があります。

海外資産の目録化が難しい理由は、情報、法制度、評価の三つが一致しない点にあります。次の一覧は、三つの非対称性が何を表し、なぜ財産目録を単なる事務資料ではなく管理資料にする必要があるか、読者がどの視点で不明点を残すべきかを読み取るためのものです。

Issue 01

情報の非対称性

被相続人は資産の存在を知っていても、相続人は知らないことがあります。海外銀行は本人確認を理由に情報開示を制限し、相続人は相続人である証明が必要になります。

Issue 02

法制度の非対称性

日本の相続法は包括承継が基本ですが、外国不動産、信託、退職口座、受益者指定、probate は別制度で動くことがあります。

Issue 03

評価の非対称性

日本の相続税は死亡時の時価を問題にしますが、外国では estate tax value、probate inventory value、property tax assessment、market appraisal、実際売却価格が別々に存在します。

Section 15

海外資産の財産目録に関するFAQ

個別判断ではなく、一般的な制度理解と確認ポイントを整理します。

Q1. 海外資産が一つだけでも専門家に依頼する必要がありますか。

一般的には、金額が小さく、現地手続が簡単で、相続人間に争いがなく、相続税申告も不要であれば、相続人側で整理できる場合もあるとされています。ただし、外国不動産、外国証券、外国税、共同名義、信託、退職口座、暗号資産、相続人間の不信がある場合は、結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、資料を整理したうえで弁護士、税理士、現地専門家等へ相談する必要があります。

Q2. 日本の遺産分割協議書に海外資産を記載すれば足りますか。

一般的には、日本の遺産分割協議書が説明資料になる場合はあります。ただし、外国の金融機関や登記機関が、戸籍、法定相続情報一覧図、翻訳、公証、アポスティーユ、probate order、現地裁判所書類を求めることがあり、提出先の要件によって結論が変わる可能性があります。具体的な対応は、提出先の書類仕様を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q3. 海外不動産の評価は現地の固定資産税評価額でよいですか。

一般的には、国外財産についても財産評価基本通達が出発点となり、通達で評価できない場合は売買実例価額、精通者意見価格等を参酌するとされています。ただし、現地固定資産税評価額が死亡時の時価を合理的に示すかどうかは、不動産の所在地、評価制度、売買事例、鑑定資料によって変わる可能性があります。具体的な評価方針は、税理士や評価専門家へ相談する必要があります。

Q4. 外国で相続税を払えば、日本の相続税は不要ですか。

一般的には、日本の相続税の課税対象となる場合、外国で課税されたこととは別に日本の申告義務が生じる可能性があります。ただし、外国で支払った相続税相当の税については、要件を満たす範囲で外国税額控除を検討できる場合があります。対象税目、対象財産、控除限度、添付資料によって結論は変わるため、具体的には税理士等へ相談する必要があります。

Q5. 被相続人の海外口座のパスワードを知っている場合、ログインしてもよいですか。

一般的には、アカウント規約、現地法、個人情報、通信秘密、不正アクセス、相続人間の公平性に関わるため、慎重な確認が必要とされています。ただし、資産保全の必要性、証拠の状態、相続人間の関係、金融機関の正式手続によって対応は変わる可能性があります。具体的には、弁護士等へ相談し、正式な相続手続や証拠保全の方法を確認する必要があります。

Q6. 財産目録に不明資産を載せる必要がありますか。

一般的には、金額未定でも存在の疑いがある資産は、調査中、端緒資料あり、照会中などのステータスで記載することが望ましいとされています。ただし、記載方法や開示範囲は、相続人間の対立、個人情報、秘密鍵、現地手続の進捗によって変わる可能性があります。具体的には、資料管理方法を整理したうえで専門家へ相談する必要があります。

Q7. 海外在住の相続人がいる場合、印鑑証明はどうしますか。

一般的には、日本に住民登録がない海外在住者は日本の印鑑証明を取得できない場合があり、在外公館の署名証明や現地公証人の証明などが使われることがあります。ただし、銀行、法務局、現地機関、提出先の国の要件によって形式が変わる可能性があります。具体的には、提出先の要件を確認したうえで専門家へ相談する必要があります。

Section 16

海外資産の財産目録は相続全体の設計図

一覧化よりも、法務、税務、現地法、証拠、評価、期限の統合が重要です。

海外資産を持つ被相続人の財産目録の作り方で最も重要なのは、財産を一覧化することではなく、相続法、税務、現地法、証拠、評価、期限を一つの管理体系に統合することです。

  1. 海外資産は、国別、資産区分別、名義別、税務所在地別に分けます。
  2. 財産目録は、統合財産目録、評価根拠表、証拠資料一覧、現地手続進捗表の四点セットで作ります。
  3. 外貨換算は、財産と債務を分け、死亡日、金融機関、TTB、TTS、予約相場を記録します。
  4. 国外財産評価は、日本の財産評価基本通達を出発点とし、通達で評価できない場合は現地鑑定、売買実例、精通者意見等を検討します。
  5. 相続税の課税範囲は、被相続人と取得者の住所、国籍、居住履歴により変わるため、目録に判定欄を置きます。
  6. 現地手続は、日本の遺産分割協議と別に動くことがあるため、現地弁護士、税務専門家、金融機関に早期照会します。
  7. 争いがある相続では、目録を中立的な証拠台帳として作り、改訂履歴と根拠資料を残します。
  8. 不明資産、帰属争い、評価争いは隠さず、ステータスとして明示します。

海外資産の相続は、国内相続よりも時間と専門性を要します。しかし、初動で財産目録の設計を誤らなければ、相続人間の不信、税務申告の遅延、現地手続の手戻り、評価争いを減らしやすくなります。

Reference

参考資料

法令・公的機関

  • e-Gov法令検索「民法」第896条、第915条、第924条、第1011条等
  • e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」第36条、第37条
  • e-Gov法令検索「相続税法」第10条、第20条の2、第27条等
  • 法務省「相続登記の申請義務化について」
  • 法務局「法定相続情報証明制度について」

国税庁資料

  • 国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」
  • 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
  • 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
  • 国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」
  • 国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」
  • 国税庁「No.4665 外貨(現金)の邦貨換算」
  • 国税庁「財産評価基本通達 第1章 総則 5-2 国外財産の評価」
  • 国税庁「相続税法基本通達 第20条の2 在外財産に対する相続税額の控除 関係」
  • 国税庁「No.7456 国外財産調書の提出義務」

裁判所・外務省資料

  • 裁判所「相続の限定承認の申述書」
  • 裁判所「相続財産清算人の選任の申立書」
  • 裁判所「相続の放棄の申述」
  • 外務省「公印確認・アポスティーユとは」
  • 外務省「在外公館における証明」