2σ Guide

法定後見で家庭裁判所が
後見人を選ぶ基準

親族候補者がいても、家庭裁判所は本人の利益、中立性、財産管理能力、相続上の利害対立を総合して後見人を選びます。親族が選ばれない典型事情と準備のポイントを整理します。

16.4% 令和7年の親族選任割合
83.6% 親族以外の選任割合
3年以内 相続登記の原則期限
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法定後見で家庭裁判所が 後見人を選ぶ基準

親族候補者がいても、家庭裁判所は本人の利益、中立性、財産管理能力、相続上の利害対立を総合して後見人を選びます。

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法定後見で家庭裁判所が 後見人を選ぶ基準
親族候補者がいても、家庭裁判所は本人の利益、中立性、財産管理能力、相続上の利害対立を総合して後見人を選びます。
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2σ GUIDE ・ VIDEO

  • 法定後見で家庭裁判所が 後見人を選ぶ基準
  • 親族候補者がいても、家庭裁判所は本人の利益、中立性、財産管理能力、相続上の利害対立を総合して後見人を選びます。

POINT 1

  • 法定後見で家庭裁判所が後見人を選ぶ基準の全体像
  • 親族候補者がいる場合でも、家庭裁判所は本人保護を中心に総合判断します。
  • 生活と財産を本人のために守れるか
  • 利害対立や親族間対立がないか
  • 記録、報告、分別管理を続けられるか

POINT 2

  • 法定後見とは何か ― 任意後見との違いと後見人の役割
  • 制度の入口を誤ると、相続手続や財産管理の見通しも変わります。
  • 成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人を保護し、財産管理や法律行為を支援する制度です。
  • 利用時期と誰が支援者を決めるかが違うため、相続手続や財産管理で必要な場面を読み分けることが重要です。
  • 判断能力がどの程度残っているかで、必要な権限や家庭裁判所の関与が変わる点を確認してください。

POINT 3

  • 家庭裁判所が法定後見で後見人を選ぶ判断要素
  • 1. 本人の状態と生活を確認:判断能力、医療、介護、住まい、本人の意向を把握します。
  • 2. 財産と予定事務を確認:預貯金、不動産、有価証券、相続、税務、契約などの複雑さを見ます。
  • 3. 候補者との利害関係を確認:遺産分割、借入、贈与、過去の引出し、共有不動産などを確認します。
  • 4. 専門職や監督人を検討:中立性や専門性を補う体制が検討されます。
  • 5. 親族候補者も検討:本人をよく知る強みを生かせる可能性があります。

POINT 4

  • 令和7年統計で見る親族後見人と専門職後見人の割合
  • 割合だけで単純化せず、事件の背景と一緒に読む必要があります。
  • 親族以外では司法書士11,966人、弁護士8,903人、社会福祉士7,280人などの専門職が大きな割合を占めます。
  • 次の横方向の比較は、令和7年の選任割合を視覚的に整理したものです。
  • 割合が大きいほど横方向に長く表示され、現在の実務では親族以外が多いことを読み取れます。

POINT 5

  • 親族が法定後見人に選ばれない典型的な理由
  • 相続人間の対立
  • 遺産分割、遺留分、特別受益、寄与分、使い込み疑いがあると、本人の取得分や財産保全で利害が分かれます。
  • 同じ遺産分割の当事者
  • 本人と候補者が共同相続人である場合、候補者は自分の相続分を増やしたい立場にもなり得ます。

POINT 6

  • 親族が法定後見人に選ばれやすくなる準備
  • 本人をよく知る強みを、記録と説明責任で支えることが大切です。
  • 必要に応じて専門職に相談する姿勢も重要です。
  • 過去の引出しに不明点があっても、避けずに時系列で整理することが読み取りのポイントです。
  • 各項目は、本人財産と家族財産の境界を守るために重要です。

POINT 7

  • 相続案件で法定後見人選任に影響する論点
  • 遺産分割、利益相反、相続登記、不動産処分が選任判断とつながります。
  • 本人が相続人である場合、遺産分割協議に参加するには判断能力が必要です。
  • 本人が内容を理解できないときは、成年後見人等が本人を代理して協議を行うことがあります。
  • 候補者自身が争点の当事者になっている場合ほど、中立的な関与が必要になりやすいと読み取ります。

POINT 8

  • 法定後見で専門職が関与する場面と役割
  • 争点の種類ごとに、必要となる専門性が変わります。
  • 家庭裁判所が専門職後見人を選ぶ背景には、本人の財産や相続関係を安全に管理するための専門性があります。
  • 争点と役割を対応させて読むと、なぜ親族だけでは足りないと判断される場面があるかを把握できます。
  • 専門職が選ばれるのは、親族を疑うためだけではありません。

まとめ

  • 法定後見で家庭裁判所が 後見人を選ぶ基準
  • 法定後見で家庭裁判所が後見人を選ぶ基準の全体像:親族候補者がいる場合でも、家庭裁判所は本人保護を中心に総合判断します。
  • 法定後見とは何か ― 任意後見との違いと後見人の役割:制度の入口を誤ると、相続手続や財産管理の見通しも変わります。
  • 家庭裁判所が法定後見で後見人を選ぶ判断要素:民法上の考慮要素と、候補者が必ず選ばれるわけではない理由を整理します。
  • 本動画は一般的な情報提供であり、法律上の助言ではありません。記載の数値・金額・期間は目安です。個別事情で結論は変わります。
Overview

法定後見で家庭裁判所が後見人を選ぶ基準の全体像

親族候補者がいる場合でも、家庭裁判所は本人保護を中心に総合判断します。

法定後見で家庭裁判所が後見人を選ぶ基準は、申立人や親族の希望をそのまま実現する仕組みではありません。本人の心身の状態、生活状況、財産状況、候補者の職業や経歴、本人との利害関係、本人の意向、親族関係、予定される後見事務を総合して、本人にとって最も適切な支援体制を選ぶ仕組みです。

結論親族だから不適格ということではありません。ただし、相続、贈与、使い込み疑い、不動産処分、親族間対立、多額又は複雑な財産があると、家庭裁判所は中立性と専門性を重視しやすくなります。

最初に、選任判断で見られる代表的な要素を整理します。この一覧は、親族候補者が選ばれにくくなる事情と、専門職や監督人の関与が検討される事情をまとめたものです。各項目が本人保護にどう関わるかを読み取ると、単に「家族だから選ばれる」とは言えない理由が見えてきます。

本人保護

生活と財産を本人のために守れるか

医療、介護、住まい、生活費、財産管理を本人の利益として扱えるかが中心です。将来の相続人の利益とは区別されます。

中立性

利害対立や親族間対立がないか

遺産分割、贈与、借入金、過去の預金引出しなどがあると、本人の代理人として中立に動けるかが問題になります。

実務能力

記録、報告、分別管理を続けられるか

通帳、領収書、契約書、収支予定、財産目録を整理し、家庭裁判所に説明できる管理体制が必要です。

Section 01

法定後見とは何か ― 任意後見との違いと後見人の役割

制度の入口を誤ると、相続手続や財産管理の見通しも変わります。

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人を保護し、財産管理や法律行為を支援する制度です。法定後見は、すでに判断能力が不十分になった後に、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などの申立てにより家庭裁判所が後見人等を選任する仕組みです。

次の比較表は、法定後見と任意後見の入口の違いを表しています。利用時期と誰が支援者を決めるかが違うため、相続手続や財産管理で必要な場面を読み分けることが重要です。

区分概要相続場面での意味
法定後見判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が後見人等を選任する制度です。預貯金解約、不動産売却、遺産分割協議などが止まった後に検討されます。
任意後見本人が判断能力のあるうちに、将来支援してもらう人と公正証書で契約する制度です。将来の財産管理や介護契約に備える制度であり、すでに契約能力がない場合には新規契約が難しくなります。

法定後見には、本人の判断能力の程度に応じた3つの類型があります。この表では、類型ごとの本人の状態と選任される人を並べています。判断能力がどの程度残っているかで、必要な権限や家庭裁判所の関与が変わる点を確認してください。

類型本人の状態の目安選任される人
後見判断能力を欠くのが通常の状態です。成年後見人
保佐判断能力が著しく不十分です。保佐人
補助判断能力が不十分です。補助人

成年後見人の役割は、本人の財産を管理し、本人のために法律行為を行うことです。預貯金、年金、保険、不動産、株式、投資信託の管理、医療契約、介護契約、施設入所契約、生活費や税金の支払い、不動産売却、賃貸借契約、遺産分割協議、家庭裁判所への報告などが含まれます。

注意成年後見人は、本人の身の回りの世話や医療行為そのものを当然に行う立場ではありません。また、本人財産を家族の財産として使うことはできず、親族への援助、孫への贈与、相続税対策などは本人利益との関係で慎重に扱われます。
Section 02

家庭裁判所が法定後見で後見人を選ぶ判断要素

民法上の考慮要素と、候補者が必ず選ばれるわけではない理由を整理します。

民法は、成年後見人の選任について、家庭裁判所が一切の事情を考慮して選ぶ仕組みを採っています。重要な要素は、本人の心身の状態、生活の状況、財産の状況、候補者の職業、経歴、候補者と本人との利害関係、本人の意見、その他一切の事情です。

次の判断の流れは、候補者欄に親族名を書いた後も、家庭裁判所がどの順番で事情を確認するかを表しています。上から順に本人の状態、財産と事務の難しさ、利害関係を確認し、最後に親族単独で足りるか、専門職や監督人の関与が必要かを読み取ります。

後見人選任で確認される主な順番

本人の状態と生活を確認

判断能力、医療、介護、住まい、本人の意向を把握します。

財産と予定事務を確認

預貯金、不動産、有価証券、相続、税務、契約などの複雑さを見ます。

候補者との利害関係を確認

遺産分割、借入、贈与、過去の引出し、共有不動産などを確認します。

懸念あり
専門職や監督人を検討

中立性や専門性を補う体制が検討されます。

懸念が小さい
親族候補者も検討

本人をよく知る強みを生かせる可能性があります。

次の表は、家庭裁判所が確認する具体的な判断要素を、本人側の事情と候補者側の事情に分けて整理したものです。各列を横に読むと、単独の事情だけではなく、生活、財産、利害関係、本人の意向、親族の反対理由を合わせて見る必要があることが分かります。

判断要素確認される内容選任判断での意味
本人の心身の状態認知症、精神障害、知的障害、脳血管障害、高次脳機能障害の状態、意思表示の可否を確認します。後見人が広い財産管理を担うのか、本人の意向をどのようにくみ取るのかに関わります。
本人の生活状況自宅、施設、病院、独居、配偶者との同居、介護保険サービス、医療、住まいを確認します。施設契約、医療費支払い、住宅改修、在宅支援など、必要な後見事務が変わります。
本人の財産状況預貯金、不動産、収益物件、有価証券、会社関係、借入金、保証債務、未分割財産を確認します。財産が多い又は複雑なほど、記録管理、法的判断、税務判断、専門職連携が重視されます。
候補者の状況職業、経歴、年齢、健康、居住地、収入、負債、過去の本人財産管理を確認します。長期的に後見事務を続け、家庭裁判所へ説明できるかが見られます。
本人との利害関係遺産分割、借金、保証、不動産利用、生前贈与、過去の預金引出し、相続税対策の意向を確認します。本人の利益より候補者や相続人の利益が優先されるおそれがあると、中立性が問題になります。
本人と親族の意向本人が意思を示せる場合の希望、親族の賛否、反対理由の具体性を確認します。本人の希望は尊重されますが、利害対立や管理能力の問題がある場合は本人保護が優先されます。

候補者欄に親族の名前を書いても、その人が必ず成年後見人に選任されるわけではありません。候補者以外の弁護士、司法書士、社会福祉士などの第三者専門職が選任される場合があり、候補者が選ばれなかったことだけを理由に不服申立てをすることは通常できないとされています。

家庭裁判所の中心軸は本人の利益です。本人の生活を安定させ、医療、介護、住まい、福祉サービスを確保し、本人の意思や生活歴を尊重し、本人財産を本人のために使い、親族間の争いから本人を守ることが重視されます。相続人の将来の利益ではなく、現在生きている本人の権利が優先されます。

Section 03

令和7年統計で見る親族後見人と専門職後見人の割合

割合だけで単純化せず、事件の背景と一緒に読む必要があります。

最高裁判所事務総局家庭局の成年後見関係事件の概況では、令和7年の成年後見人等と本人との関係として、親族が7,014人で16.4%、親族以外が35,718人で83.6%、合計42,732人とされています。親族以外では司法書士11,966人、弁護士8,903人、社会福祉士7,280人などの専門職が大きな割合を占めます。

次の横方向の比較は、令和7年の選任割合を視覚的に整理したものです。割合が大きいほど横方向に長く表示され、現在の実務では親族以外が多いことを読み取れます。ただし、親族候補者がいない事件、紛争がある事件、財産管理が複雑な事件も含まれるため、個別の事件で親族が必ず選ばれないという意味ではありません。

親族以外
83.6%
親族
16.4%
人数は親族7,014人、親族以外35,718人、合計42,732人です。

次の表は、同じ統計を人数で確認するためのものです。割合だけでなく人数を併せて見ると、専門職や法人が選任される実務の広がりと、親族後見がなお存在することの両方を確認できます。

区分人数割合
親族7,014人16.4%
親族以外35,718人83.6%
合計42,732人100.0%
Section 04

親族が法定後見人に選ばれない典型的な理由

家族関係の近さよりも、本人財産を守れるかが問われます。

親族が選ばれない理由は一つではありません。本人と候補者の利害対立、親族間対立、財産の複雑さ、分別管理への不安、候補者自身の事情などが重なって判断されます。

次の一覧は、親族候補者が選ばれにくくなる典型事情をまとめたものです。それぞれの項目は、本人の利益を守るうえでどこに不安があるかを示しています。複数に当てはまるほど、中立的な専門職や監督人の関与が検討されやすいと読めます。

相続人間の対立

遺産分割、遺留分、特別受益、寄与分、使い込み疑いがあると、本人の取得分や財産保全で利害が分かれます。

同じ遺産分割の当事者

本人と候補者が共同相続人である場合、候補者は自分の相続分を増やしたい立場にもなり得ます。

過去の預金引出し

使途不明の現金引出し、領収書不足、候補者口座への送金、説明の変遷があると中立性が疑われます。

財産の混同

本人の年金や口座が家族の生活費、住宅ローン、教育費、事業資金と混ざると、本人のための支出か説明しにくくなります。

多額又は複雑な財産

複数不動産、収益物件、有価証券、非上場株式、借入金、保証債務、未分割財産などは専門性を要します。

候補者自身の事情

多額の負債、税金滞納、破産歴、健康不安、遠方居住、多忙、虐待や支配の疑いは慎重判断につながります。

次の表は、親族候補者が選ばれない方向に働きやすい事情を、より実務的な場面ごとに整理したものです。左列は問題になりやすい場面、右列は家庭裁判所が本人保護の観点から何を懸念するかを示しています。

場面本人保護の観点からの懸念
家族だから当然という発想これまで通帳を預かっていた、長男である、同居している、介護してきたという事情だけでは、法的な後見人としての適格性は決まりません。
同じ遺産分割協議の当事者候補者が本人と同じ共同相続人である場合、自分の相続分と本人の取得分が対立する可能性があります。
使途不明の預金引出し領収書やメモがない、本人の年金が親族の生活費に使われている、候補者口座へ送金されているなどの事情は説明責任を重くします。
不動産処分の予定居住用不動産の売却、賃貸、解除、取壊し、抵当権設定では、住まい、売却価格、利益相反、家庭裁判所の許可が問題になります。
相続税対策や生前贈与の意向孫への贈与、子への住宅資金援助、不動産の組替えなどが本人の生活や医療、介護に直接必要かが厳しく見られます。
候補者の経済、健康、居住地多額の借入れ、税金滞納、破産歴、高齢、持病、遠方居住、多忙などは、流用リスクや継続可能性の不安につながります。
虐待、支配、圧力の疑い本人の年金を取り上げる、医療や介護を受けさせない、本人を孤立させる、本人名義不動産を自分に有利に処分しようとする事情が問題になります。
申立ての目的が親族都合に見える遺産分割を有利に進める、他の相続人を排除する、親の財産を早く売る、過去の使い込みを正当化する目的に見えると慎重に判断されます。

不動産処分が予定されている場合も注意が必要です。本人の居住用不動産を売却、賃貸、賃貸借解除、抵当権設定、建物取壊しなどで処分する場合、成年後見人は家庭裁判所の許可を得る必要があります。親族候補者がその不動産に住んでいる、買い取りたい、売却代金を相続対策に使いたいなどの事情があると、中立性が問題になります。

重要成年後見制度は、相続税対策や生前贈与を進める制度ではありません。本人の生活、医療、介護に直接必要とは言いにくい財産移転を目的にすると、親族候補者は選ばれにくくなります。
Section 05

親族が法定後見人に選ばれやすくなる準備

本人をよく知る強みを、記録と説明責任で支えることが大切です。

親族が選ばれる可能性が高いのは、本人との関係が良好で、本人が候補者を信頼し、他の親族から強い反対がなく、財産内容が比較的単純で、過去の資金管理が明朗であり、候補者が財産管理と記録保存を理解している場合です。必要に応じて専門職に相談する姿勢も重要です。

次の表は、申立て前に整理しておく資料と、その資料がなぜ必要かを示しています。左列は資料の種類、右列は家庭裁判所や専門職へ説明するときの意味です。過去の引出しに不明点があっても、避けずに時系列で整理することが読み取りのポイントです。

項目準備内容
財産資料預貯金通帳、証券口座、不動産登記事項証明書、固定資産税通知書、保険証券、借入金資料を整理します。
収支資料年金額、家賃収入、医療費、介護費、施設費、税金、生活費を把握します。
過去の管理資料預金引出し履歴、領収書、支出メモ、親族への送金理由を時系列で説明できるようにします。
親族関係推定相続人、親族の意見、対立の有無を整理します。
本人の生活介護認定、ケアプラン、施設契約、医療状況、今後の住まいを確認します。
候補者情報職業、住所、健康状態、本人との関係、管理方針を説明できるようにします。

次の一覧は、親族候補者が事前に理解しておきたい禁止領域をまとめたものです。各項目は、本人財産と家族財産の境界を守るために重要です。本人の利益に結びつかない支出や取引は、家庭裁判所又は監督人等の関与が必要になり得ると読み取ってください。

01

親族のために使わない

本人財産から親族への贈与、貸付け、生活費援助を安易に行うことは避けます。

分別管理
02

相続税対策を目的にしない

相続人の税負担を下げるために本人財産を減らす発想は、本人保護と衝突しやすい領域です。

本人利益
03

利益相反を自分で処理しない

本人と後見人の利益が対立する取引では、家庭裁判所、後見監督人、特別代理人等の関与を確認します。

裁判所関与
04

居住用不動産を無断で処分しない

本人の居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要です。

不動産

親族か専門職かの二者択一ではなく、親族後見人単独、親族後見人と後見監督人、専門職後見人単独、親族と専門職の複数後見人、専門職が初期処理後に親族へ交代する方法など、事件の性質に応じた組み合わせもあります。

Section 06

相続案件で法定後見人選任に影響する論点

遺産分割、利益相反、相続登記、不動産処分が選任判断とつながります。

本人が相続人である場合、遺産分割協議に参加するには判断能力が必要です。本人が内容を理解できないときは、成年後見人等が本人を代理して協議を行うことがあります。ただし、本人が本来取得できる法定相続分を大きく下回る内容や、本人が受け取るべき財産を他の相続人に譲る内容は、本人の利益を害する可能性があります。

次の表は、相続案件で後見人選任にも影響しやすい争点を整理したものです。左列は争点、右列は選任判断への影響です。候補者自身が争点の当事者になっている場合ほど、中立的な関与が必要になりやすいと読み取ります。

争点後見人選任への影響
遺留分本人が請求する側、又は請求される側になる可能性があります。
使い込み疑い候補者が過去の資金移動の相手方なら中立性が疑われます。
特別受益候補者が生前贈与を受けていると利益対立が生じます。
寄与分候補者が介護貢献を主張する場合、本人利益と候補者利益が分かれる可能性があります。
遺産不動産価格評価、代償金、売却、共有解消で専門性が必要になります。

相続登記は2024年4月1日から義務化されています。相続により不動産を取得した相続人は、原則として取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。本人が相続人で、判断能力が不十分なために協議や登記が進まない場合、成年後見制度の利用が検討されます。

注意成年後見は相続登記だけのための一時的な代理制度ではありません。開始後は、原則として本人の判断能力が回復するか本人が死亡するまで続く制度である点を理解する必要があります。
Section 07

法定後見で専門職が関与する場面と役割

争点の種類ごとに、必要となる専門性が変わります。

家庭裁判所が専門職後見人を選ぶ背景には、本人の財産や相続関係を安全に管理するための専門性があります。次の一覧は、専門職ごとの主な役割を示しています。争点と役割を対応させて読むと、なぜ親族だけでは足りないと判断される場面があるかを把握できます。

専門職、関係者主な役割
弁護士相続人間の紛争、遺留分、使い込み疑い、調停、審判、訴訟、契約解除などに対応します。
司法書士不動産登記、相続登記、戸籍収集、家庭裁判所提出書類、財産管理で重要な役割を担います。
税理士相続税申告、準確定申告、贈与税、譲渡所得税、財産評価、税務調査対応を担います。
行政書士紛争性のない書類作成や行政手続で関与しますが、紛争、税務、登記申請代理、訴訟代理は範囲外です。
不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士不動産評価、境界確認、測量、分筆、表示登記、売却、賃貸管理に関与します。
公認会計士、中小企業診断士、弁理士非上場株式、会社財務、事業承継、知的財産の評価や管理に関与します。
家庭裁判所関係者裁判官、書記官、調査官が申立書、診断書、本人情報シート、親族の意向、財産資料、面接結果を踏まえて判断します。

専門職が選ばれるのは、親族を疑うためだけではありません。財産管理の複雑性、相続手続、法的問題、監督の必要性から、本人財産を安全に管理する体制として選ばれることがあります。

Section 08

親族後見人になった後と選ばれなかった後の対応

選任後も選任外でも、本人の支援者としての役割は続きます。

成年後見は、申立ての目的が達成されたら終わる制度ではありません。後見開始後は、本人の判断能力が回復するか、本人が死亡するまで続くのが原則です。審判前に「専門職が選ばれそうだから取り下げたい」と考えても、家庭裁判所の許可が必要になる場合があります。

次の時系列は、後見開始後に親族や後見人が意識する主な対応を並べています。上から順に、就任直後の整理、継続中の報告、支出判断、体制変更の可能性へ進みます。手続が長期に続く点を読み取ってください。

就任直後

財産目録と収支予定を整える

通帳、領収書、請求書、契約書、税務資料を保存し、本人のための支出であることを説明できる状態にします。

継続中

家庭裁判所への報告を続ける

報告を怠る、不正確な報告をする、本人財産を私的に使う行為は、解任、損害賠償、刑事問題につながることがあります。

支出判断

本人の生活の質を守る

過度な節約で必要な医療、介護、生活環境を提供しないことも問題です。財産を相続人のために残す発想ではなく、本人らしい生活のために使います。

体制変更

専門職から親族への移行が検討される場合もある

初期の財産整理、相続手続、紛争処理、不動産処分が終わった後、家庭裁判所の判断で体制変更が検討される場合があります。

親族候補者が選ばれなかった場合でも、親族の役割がなくなるわけではありません。本人の生活歴、性格、価値観、医療機関、介護事業所、年金、保険、預貯金、不動産、借入金、過去の支出や親族間の取り決めを、選任された専門職へ整理して伝えることが本人支援につながります。

本人に一定の預貯金がある場合、後見制度支援信託又は後見制度支援預貯金の利用が検討されることがあります。日常的な支払いに必要な金額を後見人が管理し、それ以外のまとまった資金を信託銀行や金融機関で管理することで、不正使用や管理ミスを防ぎ、親族後見人自身を疑いから守る効果もあります。

Section 09

申立て前に確認したいチェックリストとよくある誤解

親族候補者の適格性と相続案件固有のリスクを分けて確認します。

申立て前には、親族候補者としての適格性と、相続案件としての追加リスクを分けて確認します。次の表は、本人との関係、親族関係、財産管理能力、利害関係、過去の管理、候補者の状況、専門性、本人の意向を並べています。各行で懸念がある場合は、専門職や家庭裁判所への説明準備が必要だと読み取ってください。

チェック項目確認ポイント
本人との関係本人が信頼しているか、虐待や支配の疑いがないか。
親族関係強い反対や紛争がないか、反対理由は具体的か。
財産管理能力通帳、領収書、契約書、収支表を管理できるか。
利害関係相続、贈与、借入、不動産共有、保証などの対立がないか。
過去の管理使途不明金や説明困難な支出がないか。
候補者の状況年齢、健康、居住地、負債、職業に問題がないか。
専門性不動産、税務、訴訟、事業承継などに専門職連携が必要か。
本人の意向本人が意思表示できる場合、その意向を把握しているか。

相続案件では、本人が相続人か、候補者も相続人か、遺言の有無、使い込み疑い、不動産、税務、紛争の有無を追加で確認します。特に、遺産分割協議、相続税申告、相続登記、不動産売却、調停や訴訟の可能性は、後見人の中立性と専門性に直結します。

よくある誤解

長男又は長女なら当然に選ばれるわけではありません。続柄は考慮要素の一つですが、本人の利益、財産状況、利害関係、管理能力、親族間対立を総合判断します。

同居や介護実績だけで決まるわけではありません。同居により家計が混ざっている、本人の年金が生活費に使われている、他の親族が不透明な管理を疑っている場合には慎重に判断されます。

親族全員の同意があっても必ず選ばれるわけではありません。財産が多額又は複雑な場合、専門性が必要な場合、本人の意向や候補者の事情に問題がある場合には、専門職が選ばれることがあります。

専門職への報酬は本人財産から支払われます。申立人や親族が個人的に負担するものではない場合でも、本人財産から支払われるため、本人の生活、介護、医療を優先して考える必要があります。

2026年時点の制度見直し

2026年4月3日、成年後見制度の見直しを含む民法等の改正法案が国会に提出されています。成年後見や保佐を終了可能な制度として再構成すること、補助制度を拡充すること、判断能力が一定期間不十分な場合の特則、任意後見制度との関係見直しなどが示されています。2026年5月14日時点では現行法と現行実務を前提に確認し、実際の申立て時には最新の法令、公表情報、家庭裁判所の運用を確認する必要があります。

実務上の進め方

親族候補者は、申立て前から本人財産を本人のためだけに使う姿勢を明確にし、支出を領収書とメモで記録し、使途不明金があれば隠さず整理し、相続や税務に関する自分の利益と本人の利益を区別する必要があります。

相続、使い込み、遺産分割、遺留分、不動産処分をめぐる争いがある場合は、後見申立てだけで解決しようとせず、早い段階で弁護士等へ相談し、候補者を誰にするか、専門職後見人を前提にするか、特別代理人や後見監督人が必要になり得るかを整理することが重要です。

不動産がある場合は司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士などとの連携が、相続税申告、準確定申告、不動産売却、収益不動産、贈与税、非上場株式が絡む場合は税理士との連携が重要になります。

まとめ法定後見は、相続手続を進めるための単なる道具ではありません。本人の尊厳、生活、財産、意思を守る制度であり、その理解が家庭裁判所の選任判断を読み解く出発点になります。
Reference

法定後見で後見人を選ぶ基準の参考資料

公的資料と法令

  • 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 令和7年1月から12月」
  • 裁判所「成年後見人、保佐人、補助人、未成年後見人の選任」
  • 大阪家庭裁判所「成年後見制度に関するFAQ」
  • 旭川家庭裁判所「後見等手続案内」
  • 法務省「成年後見制度に関するQ&A」
  • 厚生労働省「成年後見制度利用促進ポータルサイト 成年後見人等の選任について」
  • 厚生労働省「適切な後見人の選任のための検討状況等について」
  • e-Gov法令検索「民法」
  • 法務省「相続登記の申請義務化」
  • 内閣法制局、法務省「民法等の一部を改正する法律案 令和8年4月3日国会提出」